説明

天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体及びそれらの使用

天然生分解性ポリマーの疎水性誘導体及びそれらの使用が記載される。該誘導体は、α(1→4)グルコピラノースポリマー及び非還元性ポリサッカライドの低分子量疎水性誘導体により例示される。かかる疎水性ポリサッカライドは、植込み可能物品のボディー部材、被膜及び消費アイテムを含めて様々な使用のための形成マトリックスであり得る。該マトリックスは、生体内における使用のために有利である望ましい性質を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
非仮出願の本願は、2006年3月15日に出願されたそして天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体という名称のシリアルナンバー60/782,957を有する共通所有の米国仮出願及び2007年2月10日に出願されたそして生分解性疎水性ポリサッカライドをベースとした薬物送達インプラントという名称のシリアルナンバー60/900,853を有する共通所有の米国仮出願(これらの出願は参照することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体、及びこれらの誘導体を含む物品に関する。本発明はまた、該疎水性誘導体で作られた薬物放出性医療インプラント及び該インプラントを製造する方法に関する。本発明は、該疎水性誘導体で作られたところの植込み可能医療物品用生分解性被膜(薬物放出性被膜を含めて)に関する。本発明はまた、眼病及び心臓血管病を含めて医学的病態の処置に関する。
【0003】
背景
ポリラクチド(PLA)は、広く様々なアイテムの製造において大いに用いられているところの乳酸から誘導された合成生分解性熱可塑性樹脂である。特に、PLAは、袋、容器、オムツ及び包装材のような生分解性物品を構築するために用いられている。PLAはまた、生理的条件で溶解し得る縫合糸のような生分解性医療器具の製作に用いられている。
【0004】
他の熱可塑性樹脂と同様に、PLAは繊維及びフィルムに加工され得、熱成形され得、あるいは射出成形され得る。PLAは望ましい加工性及び分解性を与えるけれども、脆性、硬さ、非可撓性及び低溶融張力の難点がある。これらの望ましくない特性を克服するために、PLAは、しばしば、可塑剤のような補助剤とブレンドされてその性質が改善される。しかしながら、可塑剤のような多くの普通に用いられる補助剤は分解性でない。これは、完全分解性であるよう企てられるところのPLAをベースとした物品の製造に障害を与える。
【0005】
薬物放出性であるものを含めて植込み可能医療物品は、PLA及び同様な生分解性ポリマーから製造されている。たとえば、ポリ乳酸から作られる薬物放出性生分解性被膜は、医療器具表面を被覆するために用いられている(たとえば米国特許第6,258,121号明細書参照)。しかしながら、本明細書において論考される理由のために、これらの物品の物理的性質及び薬物放出性特性は理想より劣る。
【0006】
最近数年間において、患者内における薬物の部位特定的送達が大いに注目されている。様々な薬物が広く様々な身体の疾患及び病気の処置のために開発されているけれども、多くの場合において、かかる薬物は有害な副作用の危険なしに効果的に全身投与され得ない。部位特定的薬物送達は、薬物を局所的にすなわち処置を要するところの身体の域に送達することに焦点を合わせる。生物活性剤の局所放出の一つの利益は、薬物の毒性濃度(薬物が必要とされる部位において治療濃度を達成するために、全身的に与えられる場合に時々必要である)の回避である。
【0007】
部位特定的薬物送達は、注入及び/又は薬物を処置部位に放出する物品若しくは器具の植込みにより成し遂げられ得る。薬物の注入は、たとえば合併症(感染のような)の危険性及び患者の不快感を増す多回投与を要することにより、制約を受け得る。それ故、薬物を処置部位に送達する物品又は器具の植込みは、最近数年間において大いなる関心を得ている。
【0008】
更に、部位特定的薬物送達は、植込み物品からの1種又はそれ以上の薬物の制御放出を可能にする技術により向上されている。制御放出は、薬物が器具若しくは物品から放出される持続時間及び/又は薬物が放出される速度に係わり得る。
【0009】
いくつかの難題が、生物活性剤を患者の身体中に放出する医療器具又は物品の使用に立ちはだかる。たとえば、処置は長期間(たとえば数週、数ヶ月又はそれどころか数年)にわたる生物活性剤の放出を要することがあり得、そしてかかる長い期間にわたって生物活性剤の所望放出速度を持続することは困難であり得る。
【0010】
植込み可能な部位特定的薬物送達システムにおける進歩がなされているけれども、多くのシステムは、患者における植込み後に所望態様で薬物を放出しない。たとえば、多くのシステムにおいて、物品中に存在する薬物の大部分が初期バーストで器具から放出され、その結果として薬物の早発枯渇となる。この枯渇後に、薬物は、最適未満の量にて対象者に送達されることがあり得る。
【0011】
たとえば、ポリラクチドタイプの生分解性ポリマーをベースとしたシステムにおいて、薬物含有生分解性マトリックスの大量の侵食に因り、薬物の大部分が投与期間中のより後の時点において放出されることがあり得る。
【0012】
薬物がインプラントから早発放出されるか又はより後まで放出されないならば、処置又は放出速度の持続期間は、所望されるほど長くないことがあり得る。これは、インプラントが治療上効果が劣る原因になり得る。
【0013】
加えて、多くの薬物送達システムは、植込み期間にわたって薬物放出速度の大きい変動を示すことがあり得る。これらの場合において、薬物放出の最適速度は、植込み期間における非常に小さいウインドウ(「時間帯」)中においてのみしか見られないことがあり得る。
【0014】
医療インプラントに関しての他の関心事は、生体適合性に関する。インプラントを製造するために用いられる物質が身体中で不利な組織応答を促進するならば、インプラントの有効性は低減されることになり得る。
【0015】
これは、ポリラクチドタイプの生分解性ポリマーを含むシステムの使用に関しての問題点である。これらのタイプの生分解性物質は、身体中で不所望副作用を引き起こす生成物(生体内のそれらの存在又は濃度に因り)に分解する潜在性を有する。これらの不所望副作用は、免疫反応、身体中における分解生成物の毒性蓄積、又は身体における細胞若しくは組織に対する他の不利な作用の開始若しくは誘発を含み得る。
【0016】
被膜が分解する時、生物活性剤が器具の表面から放出される。しかしながら、これらのタイプの生分解性物質は、身体中で不所望副作用を引き起こす生成物(生体内のそれらの存在又は濃度に因り)に分解する潜在性を有する。これらの不所望副作用は、免疫反応、身体中における分解生成物の毒性蓄積、又は身体における細胞若しくは組織に対する他の不利な作用の開始若しくは誘発を含み得る。インプラントを製造するために用いられる物質が身体中で不利な組織応答を促進するならば、インプラントの有効性は低減されることになり得る。
【0017】
発明の要約
一般的に、本発明は、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体(「疎水性ポリサッカライド」)、これらの疎水性ポリサッカライドを含む物品、及びこれらの物品を利用する方法に関する。
いくつかの側面において、本発明は、生分解性被膜を含む植込み可能医療物品に関する。いくつかの側面において、被膜は、植込み可能医療物品が対象者内に置かれた後に被膜から放出され得る生物活性剤を含む。本発明はまた、疎水性ポリサッカライドで作られた生分解性被膜を有する医療物品を用いて医学的病態を処置することに関する。
【0018】
更なる諸側面において、本発明は、対象者への1種又はそれ以上の生物活性剤の送達のための生分解性インプラントに関する。本発明はまた、本発明のインプラントを用いて医学的病態を処置することに関する。更に、本発明は、生物活性剤の望ましい性質を維持する方法を用いてインプラントを作る方法(それにより、より治療上有効なインプラントを提供する)に関する。
【0019】
生分解性被膜に関して、本発明の疎水性ポリサッカライドを含む被覆用組成物は、それらが施用される医療物品の表面によく付着し、そして身体中における使用のために望ましい性質を備えた被膜を形成する。本発明の生分解性被膜は、生体内使用のために有益となるコンプライアンス、コンフォーマビリティ及び/又は耐久性のような性質の一つ又はそれ以上を示す、ということが本明細書において示される。これらの性質は、被覆医療物品が取り扱われる場合、身体中に被覆物品を置くことを含む工程中、被膜の亀裂、離層及び/又は摩耗を防ぎ得るか又は最小にし得る。
【0020】
疎水性ポリサッカライドは様々な被覆用溶媒と組み合わせて用いられ得、しかして様々な賦形剤又は生物活性剤と適当に混合され得る組成物の製造を可能にする。被覆用組成物はまた高濃度の固体分を有するように製造され得、しかしていくつかの具体的態様において、高含有率の生物活性剤を有する被膜の形成を可能にする。被覆用物質はまた、吹付け塗布及び浸漬塗布のような慣用の塗布方法を用いて、植込み可能物品の表面に容易に施用され得る。
【0021】
いくつかの側面において、本発明は、生分解性の生物活性剤放出性被膜を含む植込み可能医療物品を提供する。被膜は天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体のマトリックス及び該マトリックス内の生物活性剤を含み、しかも被膜は対象者における医療物品の配置後に生物活性剤を放出することが可能である。
【0022】
本発明の被膜は、医学的病態の予防又は処置のために対象者中に一時的に又は永続的に導入され得る任意の医療器具の表面上に作られ得る。これらの器具は、器官、組織若しくは器官の管腔(動脈、静脈、心臓の心室又は心房のような)内において又は眼の一部において静止するように皮下に、経皮的に又は外科的に導入されるいかなるものも包含する。器具は、生物安定性器具、部分分解性器具又は完全分解性器具であり得る。たとえば、分解可能な又は侵食可能な金属又はポリマー物質から製作されたステントは、本発明の疎水性ポリサッカライドで被覆され得る。
【0023】
本明細書に記載された物質及び方法に従って、疎水性ポリサッカライドから作られた被膜を有するステントを製造し、そしてガラス器内及び生体内の両方において分解及び生物活性剤放出について試験した。
【0024】
本発明の実験調査の結果により、生体内の植込み期間中ステント上の被膜から生物活性剤が放出されたことが示された。エクスサイチュー(ex situ)(「部位の外での」)分析により、植込み期間後の疎水性天然生分解性ポリサッカライドで作られた被膜の減損が示された。豚モデルにおいて、疎水性天然生分解性ポリサッカライド及び薬物を含む被膜のおおよそ50%が28日の植込み後に残存していたことが示された。これに鑑みて、本発明の被膜は、植込み可能医療物品の表面上に作られそして様々な医学的病態のいずれか一つの部位特定的処置のために用いられ得る。
【0025】
従って、本発明は、心臓血管の病気又は心臓血管の病態を処置する方法を提供する。該方法は、生分解性被膜を含む植込み可能補てつ物を対象者における脈管内部位に植え込む工程を含み、しかも該被膜は天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体のマトリックスを含む。該方法はまた、該補てつ物を該部位に、心臓血管の病気又は心臓血管の病態を処置するべき期間維持する工程を含む。いくつかの側面において、植込み可能補てつ物は、ステントである。いくつかの側面において、被膜は、維持する工程中対象者に放出される生物活性剤を含む。
【0026】
本発明はまた、生物活性剤を対象者に送達する方法を提供する。該方法は、生分解性の生物活性剤放出性被膜を含む植込み可能医療物品を対象者における標的部位に植え込む工程を含み、しかも該被膜は天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体のマトリックス及び該マトリックス内の生物活性剤を含む。該方法はまた、植え込む工程後に生物活性剤を対象者中の被膜から放出されるままにしておく工程を含む。
【0027】
本発明はまた、植込み可能医療物品上に被膜を作る方法を提供する。該方法は、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体及び生物活性剤を含む被覆用組成物を調製する工程を含む。次いで、被覆用組成物を医療物品の表面上に施用して被膜を作る工程が遂行される。その際に、組成物は、吹付け塗布又は浸漬塗布のような技法により施用され得る。
【0028】
別の側面において、被膜は、生物活性剤なしに器具の表面上に作られ得る。被膜は、体液又は組織と植込み可能医療物品の構造材との接触を一時的に防ぐ分解性バリヤーとして用いられ得る。いくつかの場合において、これは物品の生体適合性を、その表面を遮蔽することにより改善し得る。
【0029】
他の場合において、被膜は、身体中において侵食されるか又は分解する物質から作られている植込み可能医療物品の表面上に作られる。それ故、本発明の被膜は、植込み可能医療物品の構造部分の侵食又は分解を遅くしそしてその生体内寿命を長くするよう機能する。被覆物品は生体内で完全に侵食可能又は分解可能であり得、そしてそれ故植込み及び処置期間後に取出しを要しない。いくつかの側面において、本発明の被膜は、マグネシウムのような金属で作られた又はポリマーで作られた侵食可能又は分解可能ステントの表面上に作られる。
【0030】
それ故、別の側面において、本発明は、生分解性被膜を含む植込み可能医療物品を提供する。被膜は天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体のマトリックスを含み、しかも被膜は植込み可能医療物品の構造部分を植込み後に一時的に遮蔽することが可能である。いくつかの側面において、植込み可能医療物品は、侵食可能又は分解可能である。
【0031】
別の側面において、本発明は、侵食可能又は分解可能物質から作られている植込み可能医療物品の生体内寿命を延ばす方法を提供する。該方法は、侵食可能又は分解可能物質から作られている植込み可能医療物品の表面上に被膜を作る工程を含み、しかも該被膜は天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体のマトリックスを含む。該方法はまた、被膜を有する植込み可能医療物品を対象者における標的部位に植え込む工程を含む。植込み後に、被覆物品は、被膜を有さない植込み可能医療物品の生体内寿命より長い生体内寿命を有する。
【0032】
別の側面において、本発明は、対象者への1種又はそれ以上の生物活性剤の送達のための生分解性インプラントを提供する。インプラントは、疎水性天然生分解性ポリサッカライドで作られたマトリックス及び該マトリックス内の生物活性剤を含み、しかも対象者に植え込むと生物活性剤はマトリックスから放出可能である。
【0033】
本明細書に記載された物質及び方法に従って、生分解性インプラントを製造し、そして生物活性剤放出について試験した。本発明の実験調査の結果により、生物活性剤がインプラントから治療上有効な範囲にて且つ治療上有効な期間放出されたことが示された。これに鑑みて、インプラントは、様々な医学的病態のいずれか一つの部位特定的処置のために用いられ得る。
【0034】
高薬物充填容量であるとすると、治療上有効な投与量の生物活性剤を送達することが可能な格別小さいインプラントが製造されることになる。小さいインプラントの使用は、植込み手技の侵襲性を低減し得るような有益性がある。加えて、小さいサイズは、眼のような身体の限られたアクセス領域における配置を可能にする。
【0035】
ある特定の具体的態様において、インプラントは、約5mm又はそれ以下の長さを含む。別の特定の具体的態様において、インプラントは、約0.5mm又はそれ以下の直径を含む。たとえば、インプラントは円柱状又は棒様の形状を有し得、そしてインプラントの直径は約0.5mm又はそれ以下である。ある特定の具体的態様において、インプラントは、約0.35mm又はそれ以下の直径及び約4mm又はそれ以下の長さを含む。
【0036】
いくつかの側面において、インプラントは、約0.53mm3より大きい体積を有する。いくつかの側面において、体積は、約0.75mm3から約2.5mm3の範囲にある。
【0037】
別の特定の具体的態様において、インプラントは、約6mg又はそれ以下の重量を有する。別の特定の具体的態様において、インプラントは、約2.5mg若しくはそれ以下又は約1mg若しくはそれ以下の重量を有する。
【0038】
他の諸具体的態様において、インプラントは、ミクロ微粒子の形態にある。
【0039】
別の側面において、本発明は、生物活性剤を対象者に送達する方法を提供する。該方法は、疎水性天然生分解性ポリサッカライドのマトリックス及び該マトリックス内にある生物活性剤を含む生物活性剤放出性生分解性医療インプラントを対象者における標的部位に植え込む工程を含む。該方法はまた、対象者における標的場所への送達後に生物活性剤をインプラントから放出されるままにしておく工程を含む。
【0040】
いくつかの特定の側面において、生物活性剤を対象者に送達する方法は、眼の病態又は適応症の処置のために遂行される。植え込む工程において、眼インプラントは、眼中の場所に植え込まれる。眼インプラントは眼中に、眼の病態又は適応症の処置のために十分な期間維持される。
【0041】
いくつかの側面において、植え込む工程は、網膜組織と接触するようにインプラントを置くことを含む。たとえば、該方法は、インプラントを網膜下の場所に与えることを含み得る。別の側面において、植え込む工程は、インプラントを硝子体中に置くことを含む。別の側面において、植え込む工程は、インプラントを結膜下に(たとえば強膜外の場所に)置くことを含む。別の側面において、植え込む工程は、インプラントを盲嚢中に(たとえば眼球外の場所に)置くことを含む。別の側面において、植え込む工程は、インプラントを前眼房中に置くことを含む。
【0042】
多くの場合において、インプラントの小さいサイズは、強膜の縫合のような追加的手技を要することなく本方法が遂行されるのを可能にする。いくつかの側面において、眼インプラントは、25ゲージ又はそれ以下のサイズを有する針を含む挿入具を用いて、眼中に植え込まれる。
【0043】
眼インプラントは、眼の病態又は適応症を処置するべき長期間にわたって生物活性剤を放出し得る。たとえば、眼インプラントは眼中に、眼への処置を与えるべき約3ヶ月又はそれ以上の期間維持され得る。眼インプラントの寿命は、たとえば約3ヶ月から約18ヶ月の範囲のような3ヶ月超であり得る。
【0044】
眼の病態又は適応症は、網膜剥離;脈管閉塞;色素性網膜炎;増殖性硝子体網膜症;糖尿病性網膜症;ブドウ膜炎、脈絡膜炎及び網膜炎のような炎症;緑内障;変性病(AMDとも称される加齢随伴黄斑変性のような);脈管病;並びに新生物と関連したものを含めて様々な腫瘍関連病態から選択された一つ又はそれ以上であり得る。
【0045】
本発明はまた、医療インプラントを製造する方法に関する。特に、本発明の疎水性ポリサッカライド物質は、インプラントを作る過程中生物活性剤の性質を維持する方法にてインプラントが製造されるのを可能にする。特に、本発明は、インプラントを製造する無溶媒法を提供する。
【0046】
本方法は、生物活性剤を第1多形形態にて入手する工程を含む。次に、疎水性天然生分解性ポリサッカライド及び該生物活性剤を含む組成物であってしかも溶媒を含まない組成物が調製される。次いで、この組成物は加熱されて、液化組成物がもたらされる。加熱後、この液化組成物は医療インプラントの形状に成形される。
【0047】
そうではなく溶媒の使用は、生物活性剤の結晶化を引き起こしそして生物活性剤の他の多形形態を生じさせ得る。いくつかの特定の側面において、入手する工程は、生物活性剤を第1多形形態にて入手することを含む。加熱する工程及び成形する工程において、第1多形形態から第1多形形態とは異なっている多形形態への生物活性剤の変換は実質的にないか又は全くない。
【0048】
いくつかの特定の側面において、組成物は約80℃から約100℃の範囲の温度に加熱され、そして次いで押出又は成型過程に付される。
【0049】
被膜又はインプラントを成す疎水性ポリサッカライドのマトリックスは天然物質に分解され得、そして天然物質は次には被膜又はインプラントの適合性を改善する。被膜又はインプラントの分解は、たとえば天然に存在するグルコースのようなモノ又はジサッカライド(普通の血清成分である)の放出をもたらすことになり得る。これは、ポリグリコリドタイプの分子(身体中で不所望副作用を引き起こす生成物(生体内のそれらの存在又は濃度に因り)に分解し得る)から作られた被膜又はインプラントより優れた利点を与える。
【0050】
好ましくは、本発明の被膜又はインプラントは、比較的低分子量の天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体であって、該疎水性誘導体が約500,000Da又はそれ以下の分子量を有する疎水性誘導体を含む。更に一層好ましくは、約100,000Da若しくはそれ以下、50,000Da若しくはそれ以下、25,000Da若しくはそれ以下、又は2000Daから約20,000Daの範囲若しくは4000から10,000Daの範囲の分子量を有する疎水性誘導体が、被膜又はインプラントを作るために用いられる。
【0051】
いくつかの側面において、被膜又はインプラントは、α−1,4−グルコピラノースポリマーの低分子量疎水性誘導体から作られる。たとえば、被膜又はインプラントは、マルトデキストリン、ポリアルジトール、アミロース及びシクロデキストリンポリマーの疎水性誘導体から選択されたポリマーから作られ得る。いくつかの側面において、疎水性誘導体は、非環状グルコピラノースポリマーである。いくつかの側面において、疎水性誘導体は、線状グルコピラノースポリマーである。
【0052】
疎水性誘導体は、ポリサッカライド主鎖から懸垂した複数個の基であってしかも炭化水素セグメントを含む基を含む疎水性部分を含み得る。炭化水素セグメントは飽和又は不飽和であり得、そして線状、分枝状及び環状基(アルキル又は芳香族基を含み得る)を含み得る。いくつかの側面において、炭化水素セグメントは、線状、分枝状及び環状C2〜C18基から選択される。炭化水素セグメントは、一層特定的な諸側面において線状、分枝状及び環状C4〜C8基からそして更に一層特定的な諸側面において線状、分枝状又は環状C5〜C7基から選択される。いくつかの側面において、炭化水素セグメントは、芳香族C6基である。
【0053】
多くの側面において、疎水性誘導体における基の置換度は、約1若しくはそれ以上又は約2から3の範囲にある。
【0054】
多くの側面において、これらの基は、ポリサッカライド主鎖から開裂可能である。たとえば、炭化水素セグメントを含むこれらの基は、加水分解可能なエステル結合によって疎水性誘導体のポリサッカライド主鎖にカップリングされる。植込み後に、炭化水素セグメントを含むこれらの基は、ポリサッカライド主鎖から開裂され得る。その結果として、被膜又はインプラントの表面は比較的親水性になり得、そして流体の斥力の低下に因り、可溶化及び/又は酵素的分解による被膜又はインプラント材料の減損をもたらすことになり得る。
【0055】
いくつかの特定の側面において、炭化水素セグメントは、短鎖分枝状アルキル基である。非常にコンプライアンス性で耐久性の疎水性被膜は、比較的低い置換度にてポリサッカライド主鎖から懸垂した短鎖分枝状アルキル基を有する疎水性誘導体から作られ得る、ということが分かった。これは、比較的速い分解速度を有する被膜の作製のために有利である。低置換度であるとすると、短鎖分枝状アルキル基の減損は疎水性ポリサッカライドの性質の親水性への急激な変化を引き起こし、そして比較的速い速度にて被膜の諸部分の減損及び分解を促進する。例示的短鎖分枝状アルキル基は、分枝状C4〜C10基である。多くの側面において、疎水性誘導体における短鎖分枝状アルキル基の置換度は、0.5〜1.5の範囲にある。
【0056】
被膜は、所望ガラス転移温度(Tg)を有する疎水性ポリサッカライドを用いて作られ得る。いくつかの側面において、被膜は、35℃又はそれ以上、約40℃又はそれ以上(たとえば約40℃から約90℃の範囲においてのような)のTgを有する疎水性誘導体から作られる。
【0057】
いくつかの側面において、被膜又はインプラントは、生体適合性親水性ポリマーを含む。生体適合性親水性ポリマーは、被膜又はインプラントからの生物活性剤の放出速度を増加し得る。いくつかの側面において、親水性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)、親水性ポリサッカライド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、低分子量メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、等から成る群から選択される。いくつかの側面において、被膜又はインプラントは、約10wt%までの親水性生体適合性ポリマーを含む。
【0058】
結果もまた、本発明の被膜及びインプラントは生物活性剤の中度の又は最小の初期バーストを生じそして後期バーストを生じなかったことを示した。これは、植込み後の早期における被膜又はインプラントからの生物活性剤の実質量の枯渇が回避され得るので有益である。
【0059】
生物活性剤の高充填量を有する被膜及びインプラントも製造したが、しかし依然として生物活性剤を定常的な治療上有効な速度にて放出する能力があった。これは、医学的病態を処置するために、被覆物品又はインプラントが生物活性剤の長期放出のために有用であるのを可能にする。
【0060】
様々なタイプの生物活性剤が、被膜又はインプラントから送達され得る。例示的生物活性剤は、抗増殖剤、抗炎症剤、脈管形成阻害剤、神経保護剤、ベータアドレナリン作動剤、プロスタグランジン又はそれらの組合わせを包含する。
【0061】
いくつかの側面において、生物活性剤は、被膜又はインプラントの約65wt%まで(たとえば約10wt%から約65wt%の範囲のような)、約55wt%まで(たとえば約25wt%から約55wt%又は約40wt%から50wt%の範囲のような)の量にて存在する。
【0062】
いくつかの側面において、生物活性剤は、ポリサッカライド主鎖にカップリングされており且つポリサッカライド主鎖から開裂可能である。炭化水素セグメントを含む基と同様に、生物活性剤は加水分解可能なエステル結合によってポリサッカライド主鎖にカップリングされ得る。いくつかの側面において、生物活性剤は、炭化水素セグメント(疎水性ポリサッカライドの疎水性に寄与し得る)を含み得る。
【0063】
たとえば、いくつかの場合において、被膜又はインプラントは、生物活性剤を治療上有用な量にて、1ヶ月超、3ヶ月超、6ヶ月超、1年超そしてそれどころか約2年までの期間放出するように作られ得る。生物活性剤の長期放出であるとすると、生物活性剤の周期的投与の必要性は要求されない。これは、患者のコンプライアンスの必要性を除くか又は有意に低減するので有益である。
【0064】
加えて、被膜又はインプラントからの生物活性剤の放出速度を治療上有用な範囲内で変えるために、生分解性ポリサッカライドの化学的性質及び/又は組成に対する改変がなされ得る、ということが分かった。生物活性剤放出のこの「調整可能性」は、生物活性剤の特定の日用量が対象者に与えられ得るので、植込み可能医療物品にとっての利点を成す。
【0065】
本発明の被膜及びインプラントは、1日当たり数ナノグラムから1日当たり約数10マイクログラムまでの量のような治療上有効な範囲にて生物活性剤を放出し得る。いくつかの側面において、生物活性剤は、1日当たり約0.01マイクログラムから1日当たり約10マイクログラムの範囲の量にて被膜から放出される。
【0066】
いくつかの特定の側面において、生物活性剤を対象者に送達する方法は、眼の病態又は適応症の処置のために遂行される。植え込む工程において、被膜を有する眼用物品は、眼中の場所に植え込まれる。眼用物品は眼中に、眼の病態又は適応症の処置のために十分な期間眼中に維持される。
【0067】
他の諸側面において、本発明は、疎水性ポリサッカライドであって、ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖を含む且つ低分子量及び疎水性部分を与えるところの該主鎖から懸垂した複数個の基を有する疎水性ポリサッカライドを提供する。これらの疎水性ポリサッカライドは、本明細書に記載されたような被膜及びインプラントに並びに関連方法に用いられ得る。
【0068】
ある側面において、本発明は、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体であって、非環状ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖及び該ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖から懸垂した複数個の基を含み、これらの基は2個又はそれ以上の炭素原子を有する炭化水素セグメントを含み、しかも該疎水性誘導体は約100,000Da又はそれ以下の分子量を有する疎水性誘導体を提供する。
【0069】
別の側面において、本発明は、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体であって、非環状ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖及び該ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖から懸垂した複数個の基を含み、しかも該疎水性誘導体は約100,000Da又はそれ以下の分子量及び35℃又はそれ以上のガラス転移温度を有する疎水性誘導体を提供する。
【0070】
別の側面において、本発明は、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体であって、非環状ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖を含む親水性部分及び該ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖から懸垂した複数個の基を含む疎水性部分を含み、該親水性部分と該疎水性部分の間の重量比は5:1から1:1.25の範囲にあり、しかも該疎水性誘導体は約100,000Da又はそれ以下の分子量を有する疎水性誘導体を提供する。
【0071】
別の側面において、本発明は、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体であって、非環状ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖及び該ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖から懸垂した複数個の基を含み、これらの基は炭化水素セグメントを含み、しかもこれらの基の少なくとも一部は該ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖から開裂可能である生物活性剤を含み、しかも該疎水性誘導体は約100,000Da又はそれ以下の分子量を有する疎水性誘導体を提供する。
【0072】
別の側面において、本発明は、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体であって、非還元性ジサッカライドを含むポリマー主鎖及び該ポリマー主鎖から懸垂した複数個の基を含み、しかも該疎水性誘導体は約100,000Da又はそれ以下の分子量を有する疎水性誘導体を提供する。ポリマー主鎖は、ポリトレハロース、ポリスクロース及びポリアルジトールから成る群から選択され得る。
【0073】
別の側面において、本発明は、本発明の疎水性ポリサッカライドで作られた使い捨て消費物品を提供する。
【0074】
詳細な説明
本明細書に記載された本発明の諸具体的態様は、網羅的であるようには、又は次の詳細な説明に開示された精密な形態に本発明を限定するようには意図されていない。むしろ、当業者が本発明の原理及び実施を認識及び理解し得るように、諸具体的態様が選ばれそして記載されている。
【0075】
本明細書に挙げられた刊行物及び特許明細書はすべて、これにより、参照することによって組み込まれる。本明細書に開示された刊行物及び特許明細書は、もっぱらそれらの開示のために与えられている。本発明者はいずれかの刊行物及び/又は特許明細書(それらにおいて引用されたいずれかの刊行物及び/又は特許明細書も含めて)に時間的に先行する資格がないという自認として解釈されるべきものは、本明細書にない。
【0076】
本発明は、一般的に、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体、これらの疎水性ポリサッカライドを用いて作られている物品、及びこれらの疎水性ポリサッカライドから作られた物品の使用に向けられる。いくつかの特定の側面において、疎水性誘導体は、α(1→4)グルコピラノースポリマーをベースとする。好ましくは、疎水性ポリサッカライドは低分子量を有し、そしてポリマーマトリックス(物品の被膜又はボディー部材のような様々な形態にあり得る)の作製のために有用である。
【0077】
本発明の疎水性ポリサッカライドは、該疎水性ポリサッカライドがカルボヒドラーゼと接触されるところのシステム及び方法を含めて多くの用途に用いられ得る。疎水性ポリサッカライドのマトリックスは、所望分解速度を有する被膜又は物品に作られ得る。特に、マトリックスは、非常にゆっくり分解するように作られ得る。これは、物品(又は被膜)がその健全性を数ヶ月から数年の期間のような長期間維持するがしかし究極的には分解するということが所望される様々な用途において望ましい。マトリックスはまた、より速い分解速度を与えるように処方された。このようにすると、疎水性ポリサッカライドは、広範な用途において有用性がある。
【0078】
かかる用途は、様々な病態の処置のための植込み可能医療物品及び植込み可能医療物品用被膜を含めて医療用途を包含する。これらの疎水性ポリサッカライドはまた、使い捨て消費アイテムの製造に用いられ得る。これらの用途において、アイテムの構造健全性は、使用の期間維持される。しかしながら、廃棄後に、疎水性ポリサッカライドが分解する時に、アイテムはその構造健全性を失う。
【0079】
一般的に、疎水性ポリサッカライドは、分解され得る物品又は物品の一部を作るために用いられる。いくつかの側面において、物品は、使い捨て消費アイテムである。使い捨て消費アイテムは、広範には、個人により利用されそして次いで使用後に廃棄されるいかなる種類の物品をも指す。廃棄後に、物品は、適切な廃棄物環境において分解され得る。たとえば、物品は、物品がその分解を促進する条件に曝される埋立て地に廃棄され得る。たとえば、物品は、土又は水中に存在するカルボヒドラーゼに曝される。これらのカルボヒドラーゼは環境微生物から産生され得、そしてある期間にわたって物品の分解を促進し得る。
【0080】
使い捨て消費アイテムの例は、包装材、紙製品、ティッシュ、タオル、拭取り用品、食品容器、飲料容器、台所用品、皿、コップ、箱、食品ラップ、食品袋、ゴミ袋、身体ケアアイテム、女性用衛生製品、洗面所用品、シートカバー、子供・幼児用ケアアイテムを包含する。
【0081】
いくつかの側面において、疎水性ポリサッカライドは、植込み可能医療物品のボディー部材又はボディー部材の一部を作るために用いられる。これらの側面において、分解性のボディー部材又はその一部は植込み部位に機械的性質を与え得、そしてこれらの機械的性質をそれらがもはや必要とされなくなるまで維持し得る。ある期間が経過した後、ボディー部材は、機械的性質がもはや与えられない程度まで分解され、そして物品の分解成分は身体により処理される。
【0082】
いくつかの具体的態様において、医療物品のボディー部材はゆっくり分解し、そして応力を適切な速度にて周囲組織に伝達し、何故ならこれらの組織は治癒しそして医療物品のボディー部材によりかつて担われた応力を収容することができるからである。医療物品は、随意に、1つ又はそれ以上の追加的機能特徴を与えるべき被膜又は生物活性剤を含み得るが、しかし物品が処置部位において有用であるためにこれらが必要とされるというわけではない。
【0083】
疎水性ポリサッカライドから作られた生分解性ステント構造体が、植込み可能器具のボディー部材の例である。他のボディー部材は、本明細書に例示されている。
【0084】
物品はまた、疎水性ポリサッカライドから作られているミクロファーバー及び/又はナノファイバーのような繊維を含み得る。繊維は、植込み可能医療物品及び細胞培養物品を含めて様々な物品中に含められ得又は連合され得る。
【0085】
疎水性ポリサッカライドは多孔質構造体を有する物品に作られ得、あるいは多孔質構造体を有する物品上の被覆層中に存在し得る。多くの場合において、物品の多孔質構造体は、布であるか又は布様の特質を有する。多孔質構造体は、生地(織材料、編材料及び編組材料を包含する)から作られ得る。特に有用な生地材料は、織材料(当該技術において知られた任意の適当な織目を用いて作られ得る)である。
【0086】
多孔質構造体は、本明細書に記載された医療物品の多くのものを含めて、移植片、シース、カバー、パッチ、スリーブ、ラップ、ケーシング、等の多孔質構造体であり得る。これらのタイプの物品は、医療物品それ自体として機能し得るか又は医療物品の別の部品と共に用いられ得る。
【0087】
他の特定の想定された多孔質構造体は、移植片特に表面組織化外部部分を有する移植片を包含する。表面組織化移植片の例は、表面組織化内部又は平滑内部と共にベロア型表面組織化外部を有するものを包含する。織生地製品から構築された移植片は当該技術においてよく知られており、そして数多くの文書たとえば米国特許第4,047,252号明細書、米国特許第5,178,630号明細書、米国特許第5,282,848号明細書及び米国特許第5,800,514号明細書に記載されている。
【0088】
疎水性ポリサッカライドを含む生分解性被膜を有する医療物品、又は疎水性ポリサッカライドを用いて作られている医療物品は、2つ又はそれ以上の「部品」を有する物品を組み立てることにより製造され得る。これらの部品は、一緒にくっつけられて医療物品を作り得るところの医療物品の断片であり得る。医療物品の部品の全部又は一部は、疎水性ポリサッカライドを含み得る。これに関して、本発明はまた、疎水性ポリサッカライドを含むところの医療物品の部品(たとえば、完全には組み立てられていない物品)を想定する。
【0089】
疎水性ポリサッカライドは、物品の製造用の組成物において、1種又はそれ以上の他の疎水性化合物とブレンドされ得る。これらの他の疎水性化合物は、疎水性ポリサッカライドであり得る。たとえば、異なる分子量の疎水性ポリサッカライドの混合物が、組成物においてブレンドされそして物品を製造するために用いられ得る。
【0090】
いくつかの側面において、本発明は、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体を含むマトリックスと、該マトリックス内に含有され且つ患者における植込み後に該マトリックスから放出可能である生物活性剤とを有する医療インプラントに向けられる。本発明はまた、本発明の医療インプラントから対象者に生物活性剤を送達する方法に向けられる。本発明は、更に、本発明の医療インプラントを製造する方法に向けられる。
【0091】
本明細書において用いられる場合、用語「医療インプラント」は、身体中の標的場所に置かれそして該標的場所にある期間滞留するように設計されている物品を指す。本発明の医療インプラントはまた、生物活性剤放出性及び生分解性である。
【0092】
本発明の医療インプラントは、植込み後に身体中の標的部位に適当に滞留するべき任意の形状又はサイズを有し得る。たとえば、インプラントは、棒、ペレット、円盤、球体、ストリップ、コイル、等の形態にあり得る。インプラントは、ミクロ粒子のサイズ又はそれより大であり得る。本インプラントは、異なるサイズ及び形状を有するインプラントと組み合わせて用いられ得る。例として、インプラントは、様々なサイズ及び形状のミクロ微粒子のセットを含み得る。
【0093】
医療インプラントは、標的場所にインプラントを置いた時点に始まりそしてインプラントが標的場所において完全に分解された時に終わる期間である生体内寿命を有する。生物活性剤は、インプラントから全生体内寿命中又はインプラントの生体内寿命の一部中放出され得る。生物活性剤がインプラントから放出される期間は、「生物活性剤放出期間」と称される。生物活性剤放出期間がインプラントの生体内寿命より小さい場合、生物活性剤は、一般的に、インプラントからの疎水性ポリサッカライドの減損及び/又は分解よりも速い速度にてインプラントから放出される。この場合において、拡散によるようなインプラントからの生物活性剤の放出は、生物活性剤放出期間がインプラントの生体内寿命より小さい原因となり得る。
【0094】
「対象者」は、医療インプラントが置かれそして植込み後に生物活性剤が利用可能になる生物を指す。対象者は、医学的病態が本発明の医療インプラントから放出される生物活性剤を用いて処置可能である医学的病態を有する患者であり得る。対象者は、人間、別の哺乳類又は非哺乳類生物であり得る。たとえば、対象者は、犬、猫、馬、牛、羊、ウサギ、等のような家畜化哺乳類であり得る。対象者はまた、鳥、魚又は爬虫類であり得る。
【0095】
医療インプラントは、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体のマトリックスを含む。マトリックスは、ポリサッカライドの疎水性部分の疎水基の相互作用によって形成され、そして生物活性剤が該マトリックス内に保持される。生物活性剤は、インプラントが身体における標的場所に送達された後にインプラントから放出される。
【0096】
他の諸側面において、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体を含むマトリックスで作られた被膜に向けられる。被膜は、植込み可能医療物品の表面の全部又は一部において作られ得る。いくつかの側面において、生物活性剤が被膜内に含められ得、そして患者における物品の植込み後に被膜から放出可能である。関連諸側面において、本発明はまた、植込み可能医療物品上の被膜から対象者に生物活性剤を送達する方法に向けられる。本発明はまた、植込み可能医療器具の表面上の一時的バリヤーとして用いられるところの疎水性ポリサッカライドで作られた被膜に関連づけられる。本発明はまた、本発明の医療インプラントを製造する方法に向けられる。
【0097】
疎水性ポリサッカライドは、植込み可能医療物品の表面の全部又は一部における1つ又はそれ以上の被覆層中に存在し得る。本明細書において用いられる場合の「被膜」は、各被覆層が1種又はそれ以上の被覆用物質を含む1つ又はそれ以上の「被覆層」を含み得る。いくつかの場合において、被膜は、疎水性ポリサッカライドを含むただ一つの物質層で作られ得る。他の場合において、被膜は1つより多い被覆層を含み、そしてこれらの被覆層の少なくとも一つは疎水性ポリサッカライドを含む。1つより多い層が被膜中に存在する場合、これらの層は同じ又は異なる物質で構成され得る。
【0098】
生物活性剤が被膜中に含められる場合、それは疎水性ポリサッカライドと同じ被覆層中に又は異なる被覆層中にあり得る。生物活性剤は、疎水性ポリサッカライドを含む被覆層の分解時に被膜から放出され得る。その代わりに又は追加的に、疎水性ポリサッカライドを含む被覆層は、生物活性剤放出を調節し得る。この側面において、疎水性ポリサッカライドを含む被覆層の分解はいくらか起こり得、又は全く起こり得ない。
【0099】
医療物品の次のリストが、被膜を作るために疎水性ポリサッカライドが施用され得る表面を例示するために与えられる。
【0100】
これらのタイプの物品は、典型的には、医学的病態の予防又は処置のために哺乳類中に一時的に又は永続的に導入される。たとえば、これらの物品は、器官、組織又は器官の管腔(動脈、静脈、心臓の心室又は心房のような)内において静止するように皮下に、経皮的に又は外科的に導入され得る。
【0101】
例示的医療物品は、脈管用の移植片付きインプラント、移植片、外科用器具;合成補てつ物;内蔵式補てつ物、ステント移植片及び脈管内ステント組合わせを含めて脈管補てつ物;小径移植片、腹部大動脈動脈瘤移植片;創傷用包帯及び創傷管理器具;止血バリヤー;メッシュ及びヘルニア栓子;子宮出血用パッチ、心房敗血症性欠損(ASD)用パッチ、開存性卵円孔(PFO)用パッチ、心室中隔欠損(VSD)用パッチ及び他の一般的心臓用パッチを含めてパッチ;ASD、PFO及びVSD用の閉鎖具;経皮閉鎖器具、僧帽弁修復器具;左心房付属器フィルター;弁輪状形成器具、カテーテル;中心静脈アクセスカテーテル、脈管アクセスカテーテル、膿瘍ドレナージカテーテル、薬物注入カテーテル、腸管外栄養補給カテーテル、静脈内カテーテル(たとえば、抗血栓剤で処理された)、脳卒中治療用カテーテル、血圧及びステントグラフトカテーテル;吻合器具及び吻合閉鎖具;動脈瘤空置器具;グルコースセンサーを含めてバイオセンサー;心臓センサー;産児制限器具;乳房インプラント;感染制御器具;メンブラン;組織スカフォールド;組織関連材料、脳脊髄液(CSF)用シャント、緑内障ドレーンシャントを含めてシャント;歯科用器具及び歯科用インプラント;耳用ドレナージチューブ、中耳腔換気用チューブのような耳用器具;眼用器具;ドレナージチューブカフ、植込み薬物注入管カフ、カテーテルカフ、縫合カフを含めてカフ及び器具のカフ部分;脊髄用及び神経科用器具;神経再生用導管;神経科用カテーテル;ニューロパッチ;整形外科用関節インプラント、骨修復/増加用器具、軟骨修復用器具のような整形外科用器具;泌尿器科用インプラント、膀胱用器具、腎臓用器具及び血液透析用器具、結腸嚢バッグ取付け器具のような泌尿器科用器具及び尿道用器具;胆汁ドレナージ用製品を包含する。
【0102】
いくつかの側面において、生分解性被膜は、眼用物品上に作られる。眼用物品は、眼の外部又は内部部位における配置のために形作られ得る。適当な眼用器具はまた、所望される場合、生物活性剤を眼の近くの組織に与えるように利用され得る。
【0103】
眼の内部部位における配置のために形作られた植込み可能物品は、眼の任意の所望域内に滞留し得る。いくつかの側面において、眼用物品は、硝子体のような眼内部位における配置のために形作られ得る。例示的眼内器具は、米国特許第6,719,750号明細書(非線形眼内器具を記載する)(「眼内薬物送達用器具」,Varner等)及び第5,466,233号明細書(「眼内薬物送達用タック並びにそれを挿入する及び取り出す方法」,Weiner等)、米国特許出願公開第2005/0019371号明細書(「制御放出型生物活性剤送達器具」,Anderson等)及び第2004/0133155号明細書(「眼内薬物送達用器具」,Varner等)並びに関連出願明細書に記載されたものを包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0104】
いくつかの側面において、生分解性被膜は、ステント上に作られる。ステントは、自己拡張型ステント及びバルーン拡張可能型ステントのような脈管用ステントを包含する。「拡張可能」は、バルーンのような拡張部材を利用して、ステントが低減直径の形態形から拡張可能であり得ることを意味する。ステントボディーの特定の形態形は本明細書に記載された発明にとって決定的には重要でなく、そして本発明の生分解性物質及び方法は実質的にいかなるステント形態形にも適用され得る。
【0105】
材料が非充実であるようにステントを製作することが望ましくあり得る。換言すると、植込み部位における内皮細胞がステント中に及びステントを横断して成長するのを可能にし得るところの材料を貫通する細孔又は他の通路を含むことが望ましく、その結果生分解は管の内腔(溶解材料の塞栓形成に通じ得る)においてよりむしろ管壁内で起こることになる。
【0106】
いくつかの場合において、植込み可能医療物品は、プラスチックポリマーから部分的に又は全体的に製作される。これに関して、生分解性被膜は、プラスチック表面上に作られ得る。プラスチックポリマーは、付加重合又は縮重合のどちらかから生じるオリゴマー、ホモポリマー及びコポリマーを含めて合成ポリマーで作られたものを包含する。適当な付加ポリマーの例は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、グリセリルアクリレート、グリセリルメタクリレート、メタクリルアミド及びアクリルアミドから重合されたもののようなアクリル樹脂;エチレン、プロピレン、ビニルクロライド、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ビニリデンジフルオライド及びスチレンから重合されたもののようなビニル樹脂を包含するが、しかしそれらに限定されない。縮合ポリマーの例は、ポリカプロラクタム、ポリラウリルラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド及びポリヘキサメチレンドデカンジアミドのようなナイロン、並びにまたポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリジメチルシロキサン及びポリエーテルケトンを包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0107】
基材材料用の他の適当なポリマーは、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリ尿素、アクリロニトリルブタジエンコポリマー、ブタジエンゴム、塩素化及びクロロスルホン化ポリエチレン、ポリクロロプレン、エチレンプロピレン(EPM)コポリマー、エチレンプロピレンジエン(EPDM)コポリマー、ポリエチレン−エチレンプロピレンジエン(PE−EPDM)コポリマー、ポリプロピレン−エチレンプロピレンジエン(PP−EPDM)コポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)、ポリエピクロロヒドリン、イソブチレンイソプレンコポリマー、ポリイソプレン、ポリスルフィド、シリコーンポリマー、ニトリルブタジエンコポリマー/ポリビニルクロライドブレンド物(NBR/PVC)、スチレンブタジエンコポリマー及びビニルアセテートエチレンコポリマー、並びにそれらの組合わせを包含する。
【0108】
いくつかの場合において、植込み可能医療物品は、分解性ポリマーから部分的に又は全体的に製作される。物品は単純加水分解によるように水性環境において分解し得、あるいは酵素的に分解され得る。
【0109】
物品の構造体を作るために用いられ得る合成ポリマーの諸クラスの例は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリイミノカーボネート、脂肪族カーボネート、ポリホスファゼン、ポリ酸無水物及びそれらのコポリマーを包含する。本発明の器具と関連して用いられ得る生分解性物質の特定の例は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリジオキサノン、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(グリコリド−コ−ポリジオキサノン)、ポリ酸無水物、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボネート)及びポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)を包含する。例として、疎水性ポリサッカライドは、PLA又はそのコポリマーから製作された物品にバリヤー被膜を与え得る。被膜は、所望処置期間の一部又は全部中物品を遮蔽し得る。被覆物品は、依然として完全分解性であり得る。
【0110】
これらのポリマーと他の生分解性ポリマーとのブレンド物もまた用いられ得る。
【0111】
他の場合において、被膜は、金属から部分的に又は全体的に製作されている医療器具上に作られ得る。多くの器具又は物品は実質的にすべての金属物質(合金のような)から構築されるけれども、いくつかのものは非金属物質及び金属物質の両方から構築され得る(かかる器具の表面の少なくとも一部は金属である)。金属表面はまた、薄い表面層であり得る。かかる表面は、器具の表面の全部又は諸部分上に金属をスパッターコーティングすることを含めて任意の方法により作られ得る。
【0112】
医療物品に用いられ得る金属は、白金、金又はタングステン、及びまたレニウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、チタン、ニッケルのような他の金属、並びにステンレス鋼、チタン/ニッケル、ニチノール合金、コバルトクロム合金、非鉄合金及び白金/イリジウム合金のようなこれらの金属の合金を包含する。一つの例示的合金は、MP35である。他の合金又は組合わせを含めてこれらの金属は、本発明の疎水性ポリサッカライドを含有する被膜組成物を用意するための適当な基材であり得る。
【0113】
金属含有医療器具の表面は、所望される場合、そのバイオマテリアルの表面性質を変えるために前処理(たとえばParyleneTM含有被覆用組成物で)され得る。金属表面はまた、ヒドロキシ−又はクロロ−シランのようなシラン反応剤で処理され得る。
【0114】
いくつかの側面において、生分解性被膜は、金属から作られた侵食可能な植込み可能医療器具の表面上に作られる。たとえば、生分解性被膜は、対象者における配置後に腐食され得るマグネシウム合金ステント(たとえば、De Mario,C.等,(2004),J. Interv. Cardiol.,17(6):391〜395及びHeublein,B.等,(2003),Heart,89:651〜656参照)上に作られ得る。侵食可能な植込み可能医療器具はまた、所望されるならば、生物活性剤を含み得る。
【0115】
植込み可能医療物品の構造体が侵食可能又は分解可能である物質から製作される諸側面において、物品の生体内寿命が決定され得る。本発明の生分解性被膜は、これらの侵食可能又は分解可能物品の表面に、それらの生体内寿命を延ばすために施用され得る。生体内寿命は、標的場所に被覆物品を置いた時点に始まりそして被覆物品が標的場所において完全に分解された時に終わる期間である。
【0116】
随意に被覆され得る他の表面は、骨、軟骨、皮膚及び歯のような人間の組織を含むもの、あるいは木材、セルロース、圧縮カーボン及びゴムのような他の有機材料を含むものを包含する。他の想定されたバイオマテリアルは、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア及びアルミナ並びにガラス、シリカ及びサファイアを含めて(しかしそれらに限定されない)セラミックを包含する。
【0117】
いくつかの側面において、生物活性剤は、被覆物品から全生体内寿命中又は被覆物品の生体内寿命の一部中放出され得る。生物活性剤は、被膜中に、物品それ自体の構造体内に又は両方において存在し得る。
【0118】
生物活性剤が被覆物品から放出される期間は、「生物活性剤放出期間」と称される。生物活性剤放出期間が被膜の生体内寿命より小さい場合、生物活性剤は、一般的に、被膜からの疎水性ポリサッカライドの減損及び/又は分解よりも速い速度にて被膜から放出される。この場合において、拡散によるような被膜からの生物活性剤の放出は、生物活性剤放出期間が被膜の生体内寿命より小さい原因となり得る。
【0119】
被膜は、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体のマトリックスを含む。マトリックスは、ポリサッカライドの疎水性部分の疎水基の相互作用によって形成される。生物活性剤は、被膜中に含められる場合、マトリックス内に保持され得る。生物活性剤は、被覆物品が身体における標的場所に送達された後に対象者に放出される。
【0120】
本明細書において用いられる場合、天然生分解性ポリサッカライドの「疎水性誘導体」は、1個又はそれ以上のペンダント基がポリサッカライドに結合されている天然生分解性ポリサッカライドを指す。多くの場合において、疎水性誘導体は、ポリサッカライドに結合された炭化水素セグメントを含む複数個の基を含む。炭化水素セグメントを含む複数個の基が結合されている場合、それらは、集合的に、疎水性誘導体の「疎水性部分」と称される。それ故、本発明の疎水性誘導体は、疎水性部分及びポリサッカライド部分を含む。
【0121】
本発明の被膜及びインプラントは、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体の「マトリックス」から作られる。一般的に、マトリックスは、被膜又はインプラントの構造的骨組み(ポリサッカライドから懸垂した基の炭化水素セグメントの会合により確立される)を与える。それ故、被膜又はインプラントの構造健全性は、部分的には、マトリックスにおける疎水基の相互作用に基づき得る。随意に、マトリックスは、ポリサッカライドから懸垂した基又はポリサッカライドから独立した基により作られ得る共有性又は非共有性架橋のような、ポリサッカライド間の他のタイプの非疎水基の会合を含み得る。
【0122】
ポリサッカライド部分は、「天然生分解性ポリサッカライド」(酵素的に分解されることが可能である非合成ポリサッカライドを指す)を含む。天然生分解性ポリサッカライドは、植物又は動物のような天然源から得られるポリサッカライド及び/又はポリサッカライド誘導体を包含する。天然生分解性ポリサッカライドは、天然生分解性ポリサッカライドから加工された又は変性されたいかなるポリサッカライド(たとえば、マルトデキストリンは、デンプンから加工される天然生分解性ポリサッカライドである)をも包含する。例示的天然生分解性ポリサッカライドは、マルトデキストリン、アミロース、シクロデキストリン、ポリアルジトール、ヒアルロン酸、デキストラン、ヘパリン、コンドロイチンサルフェート、デルマタンサルフェート、ヘパランサルフェート、ケラタンサルフェート、デキストラン、デキストランサルフェート、ペントサンポリサルフェート及びキトサンを包含する。好ましいポリサッカライドは、デンプン製品から誘導される及び/又はデンプン製品中に見られるものたとえばマルトデキストリン、アミロース及びシクロデキストリンのような、ほとんど又は全く分枝を有さない低分子量ポリマーである。それ故、天然生分解性ポリサッカライドは、実質的に非分枝状又は完全に非分枝状のポリ(グルコピラノース)ポリマーであり得る。
【0123】
本明細書において用いられる場合、「アミロース」又は「アミロースポリマー」は、α−1,4連結部により接合されている繰返しグルコピラノース単位を有する線状ポリマーを指す。いくつかのアミロースポリマーは、α−1,6連結部(約0.5%未満のこの連結部)によっての非常に少量の分枝を有し得るが、しかし線状(非分枝状)アミロースポリマーが示すのと同じ物理的性質を依然として示し得る。一般的に、植物源に由来したアミロースポリマーは、約1×106Da又はそれ以下の分子量を有する。アミロペクチンは、比較上、α−1,4連結部により接合されて線状部分を形成する繰返しグルコピラノース単位を有する分枝状ポリマーであり、そして線状部分はα−1,6連結部によって一緒に連結されている。分枝点の連結部は、一般的に総連結部の1%より多くそして典型的には総連結部の4%〜5%である。一般的に、植物源に由来したアミロペクチンは、1×107Da又はそれ以上の分子量を有する。
【0124】
アミロースは様々な源から得られ得、あるいは様々な源中に存在する。典型的には、アミロースは、植物源のような非動物源から得られる。いくつかの側面において、アミロースの精製製品が、炭化水素セグメントを含むペンダント基を有するアミロースポリマーの製造のための出発物質として用いられる。他の諸側面において、出発物質として、アミロースは、他のポリサッカライドを含む混合物にて用いられ得る。
【0125】
たとえば、いくつかの側面において、高アミロース含有率を有するデンプン製品、精製アミロース、合成的に製造されたアミロース、又は富化アミロース製品が、アミロースの疎水性誘導体の製造に用いられ得る。デンプン源中に、アミロースは、典型的には、分枝状ポリサッカライドであるアミロペクチンと共に存在する。アミロースとより高分子量の前駆体(アミロペクチンのような)との混合物が用いられる場合、アミロースは該より高分子量の前駆体より多い量にて組成物中に存在することが好ましい。たとえば、いくつかの側面において、高アミロース含有率を有するデンプン製品、精製アミロース、合成的に製造されたアミロース、又は富化アミロース製品が、アミロースポリマーの疎水性誘導体の製造に用いられ得る。いくつかの具体的態様において、組成物は、ポリサッカライドの混合物中のアミロース含有率が重量により50%若しくはそれ以上、60%若しくはそれ以上、70%若しくはそれ以上、80%若しくはそれ以上又は85%若しくはそれ以上であるところのアミロースを含むポリサッカライドの混合物を含む。他の諸具体的態様において、組成物は、ポリサッカライドの混合物中のアミロペクチン含有率が30%若しくはそれ以下又は15%若しくはそれ以下であるところのアミロース及びアミロペクチンを含むポリサッカライドの混合物を含む。
【0126】
デンプン中に存在するアミロペクチンの量はまた、α−1,6連結部を開裂してアミロースへのアミロペクチンの脱分枝をもたらすアミロペクチナーゼでデンプンを処理することにより低減され得る。
【0127】
炭化水素セグメントを含む基でアミロースポリマーを誘導体化する過程の前、中及び/又は後に、アミロースの量を富化する又はアミロースを精製する工程が遂行され得る。
【0128】
特定の分子量のアミロースは、商業的に得られ得るか又は製造され得る。たとえば、70kDa、110kDa及び320kDaの平均分子質量を備えた合成アミロースは、Nakano Vinegar Co., Ltd.(日本国愛知)から得られ得る。特定のサイズ範囲のアミロースを用いるという決定は、組成物の物理的性質(たとえば粘度)、疎水性誘導体から作られた物品の所望分解速度及び組成物中の他の随意的成分(生物活性剤のような)の存在のような因子に依存し得る。
【0129】
精製された又は富化されたアミロース製品は、商業的に得られ得るか又はクロマトグラフィーのような標準的生化学技法を用いて製造され得る。いくつかの側面において、高アミロースのコーンスターチが、疎水性誘導体を製造するために用いられ得る。
【0130】
マルトデキストリンは、典型的には、デンプンスラリーを熱安定性α−アミラーゼでもって所望加水分解度が達せられるまで85〜90℃の温度にて加水分解しそして次いでα−アミラーゼを第2の熱処理により不活性化することにより生成される。このマルトデキストリンは、濾過により精製されそして次いで噴霧乾燥されて最終生成物にされ得る。マルトデキストリンは、典型的には、下記のとおり定められるところの加水分解度に関連づけられるそれらのデキストロース当量(DE)値により特徴づけられる。すなわち、
DE=MWデキストロース/数平均MWデンプン加水分解物×100
一般的に、マルトデキストリンは、アミロース分子よりも小さい分子量を有すると考えられる。
【0131】
デキストロース(グルコース)に完全に加水分解されたデンプン製品は100のDEを有するのに対して、デンプンは約ゼロのDEを有する。0より大きいがしかし100より小さいDEはデンプン加水分解物の平均分子量を特徴づけ、そしてマルトデキストリンは20より小さいDEを有すると考えられる。様々な分子量たとえば約500Daから5000Daの範囲の分子量のマルトデキストリンが、商業的に入手できる(たとえば、カリフォルニア州サンディエゴのCarboMerから)。
【0132】
天然生分解性ポリサッカライドの別の想定されたクラスは、天然生分解性非還元性ポリサッカライドである。非還元性ポリサッカライドは、不活性マトリックスを与え得、しかしてそれによりタンパク質及び酵素のような感受性生物活性剤の安定性を改善する。非還元性ポリサッカライドは、トレハロース(α−D−グルコピラノシルα−D−グルコピラノシド)及びスクロース(β−D−フルクトフラノシルα−D−グルコピラノシド)のような非還元性ジサッカライド(2つのモノサッカライドがそれらのアノマー中心を通じて連結されている)のポリマーを指す。例示的非還元性ポリサッカライドは、GPC(アイオワ州マスカティーン)から入手できるポリアルジトールを含む。別の側面において、ポリサッカライドは、繰返し(1→3)O−β−D−グルコピラノシル単位を含むポリマーのようなグルコピラノシルポリマーである。
【0133】
デキストランは、デキストランバイオポリマーの主鎖単位に1−3連結された側鎖を備えたα−D−1,6−グルコース連結グルカンである。デキストランは、グルコピラノースモノマー単位における2、3及び4位においてヒドロキシル基を含む。デキストランは、リューコノストク・メゼンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)B512Fによるスクロース含有培地の発酵から得られ得る。
【0134】
デキストランは、低分子量製品にて得られ得る。ペニシリウム及びベルティシリウムのような糸状菌からの酵素(デキストラナーゼ)は、デキストランを分解すると示された。同様に、多くの細菌は、デキストランを低分子量の糖に分解する細胞外デキストラナーゼを産生する。
【0135】
コンドロイチンサルフェートは、D−ガラクトサミン及びD−グルクロン酸の繰返しジサッカライド単位を含みそして典型的には15から150個の間のこれらの繰返し単位を含有する。コンドロイチナーゼACは、コンドロイチンサルフェートA及びC並びにコンドロイチンを開裂する。
【0136】
ヒアルロン酸(HA)は、交互のβ1,4−グルクロン酸及びβ1,3−N−アセチル−D−グルコサミン単位を含む天然由来の線状ポリマーである。HAは、結合組織液中の主要なグリコサミノグリカンである。HAは、ヒアルロニダーゼの存在下で断片化され得る。
【0137】
多くの側面において、ポリサッカライド部分及び疎水性部分は、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体の主部分を構成する。重量百分率に基づいて、ポリサッカライド部分は、疎水性誘導体の約25wt%又はそれ以上、約25%から約75%の範囲、約30%から約70%の範囲、約35%から約65%の範囲、約40%から約60%の範囲又は約45%から約55%の範囲にあり得る。同様に、総疎水性誘導体の重量百分率に基づいて、疎水性部分は、疎水性誘導体の約25wt%又はそれ以上、約25%から約75%の範囲、約30%から約70%の範囲、約35%から約65%の範囲、約40%から約60%の範囲又は約45%から約55%の範囲にあり得る。例示的諸側面において、疎水性誘導体は、その重量のおおよそ50%がポリサッカライド部分に属せられ得そしてその重量のおおよそ50%が疎水性部分に属せられ得る。
【0138】
疎水性誘導体は、水に不溶であるという性質を有する。不溶性についての用語は、当該技術において用いられる標準用語であり、そして10,000部又はそれ以上の溶媒当たり1部の溶質を意味する(たとえば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,第20版,(2000),Lippincott Williams & Wilkins,メリーランド州ボルチモア参照)。
【0139】
疎水性誘導体は、1種又はそれ以上の疎水性化合物を天然生分解性ポリサッカライドポリマーと会合させることにより製造され得る。天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体を製造する方法は、本明細書に記載されている。
【0140】
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体は、好ましくは、500,000Da又はそれ以下の分子量を有する。これらの比較的低分子量の誘導体の使用は、インプラントに望ましい物理的性質及び薬物放出性を付与する。いくつかの側面において、疎水性誘導体は、約250,000Da若しくはそれ以下、約100,000Da若しくはそれ以下、約50,000Da若しくはそれ以下又は約25,000Da若しくはそれ以下の分子量を有する。天然生分解性ポリサッカライドについての特に好ましいサイズ範囲は、約2,000Daから約20,000Da又は約4,000Daから約10,000Daの範囲にある。
【0141】
ポリマーの分子量は、より精確には、「重量平均分子量」つまりMwとして定められる。Mwは分子量を測定する絶対方法であり、そしてポリマー(製品)の分子量を測定するために特に有用である。ポリマー製品は、典型的には、個々に分子量におけるわずかな変動量を有するポリマーを含む。ポリマーは比較的高い分子量を有する分子であり、そしてポリマー製品内のかかるわずかな変動量はポリマー製品の総合性質に影響を与えない。重量平均分子量(Mw)は、次式により定められ得る。すなわち、
【数1】

ここで、NはMの質量を備えた試料中のポリマーのモル数を表し、そしてΣiは製品中のすべてのNii(分子種)の和である。Mwは、光散乱又は超遠心分離のような普通の技法を用いて測定され得る。ポリマー製品の分子量を定めるために用いられるMw及び他の用語の論考は、たとえば、Alicock,H.R.及びLampe,F.W.,(1990),Contemporary Polymer Chemistry,第271頁に見られ得る。
【0142】
疎水性部分の付加は、一般的に、ポリサッカライドの分子量において、その非誘導体化の出発分子量からの増加を引き起こすであろう。分子量の増加量は、誘導体化されるポリサッカライドのタイプ、誘導レベル及びたとえば疎水性部分を与えるためにポリサッカライドに結合される基のタイプを含めて、1つ又はそれ以上の因子に依存し得る。
【0143】
いくつかの側面において、疎水性部分の付加は、ポリサッカライドの分子量において、約20%若しくはそれ以上、約50%若しくはそれ以上、約75%若しくはそれ以上、約100%若しくはそれ以上又は125%の増加(ポリサッカライドの非誘導体化形態に関しての増加)を引き起こす。
【0144】
例として、約3000Daの出発重量を有するマルトデキストリンは、エステル連結部によってポリサッカライドにカップリングされているペンダントヘキサノエート基を与えて約2.5の置換度(DS)を与えるように誘導体化される。
【0145】
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体を作る際にそして例として、炭化水素セグメントを有する化合物が、ポリサッカライドの1つ又はそれ以上の部分に共有的にカップリングされ得る。たとえば、該化合物は、ポリサッカライドの長手に沿ってモノマー単位にカップリングされ得る。これにより、ポリサッカライド誘導体は1個又はそれ以上のペンダント基が付与される。各化学基は、炭化水素セグメントを含む。炭化水素セグメントはペンダント化学基の全部を構成し得、あるいは炭化水素セグメントはペンダント化学基の一部を構成し得る。たとえば、疎水性ポリサッカライドの一部は次の構造を有し得、しかして該構造においてMはポリサッカライドのモノマー単位であり、そしてペンダント化学基([L]−[H])においてHは炭化水素セグメントでありそしてLは炭化水素セグメントをポリサッカライドのモノマー単位に連結する化学基である。
[M]−[L]−[H]
【0146】
ペンダント基はまた、次の構造
[M]−[L]−[H]−[N]
により表されるような、炭化水素セグメントでない追加的部分[N]を含み得る。
【0147】
本明細書における「炭化水素セグメント」は、式(CHnm(ここで、mは2又はそれ以上であり、そしてnは独立して2又は1である)を有するところの共有結合炭素原子の基を指す。炭化水素セグメントは飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基を含み得、そしてそれらの例はアルキル、アルケニル、アルキニル、環状アルキル、環状アルケニル、芳香族炭化水素及びアラルキル基を包含する。
【0148】
本明細書に記載された疎水性ポリサッカライドのモノマー単位は、典型的には、1個又はそれ以上の反応性基を備えた環構造を有するモノマー単位を含む。これらの反応性基は、アミロース及びマルトデキストリンのグルコピラノースをベースとしたモノマー単位において存在するもののようなヒドロキシル基により例示される。これらのヒドロキシル基は、炭化水素セグメント及びヒドロキシル基に対して反応性である基(ヒドロキシル反応性基)を含む化合物と反応され得る。
【0149】
ヒドロキシル反応性基の例は、アセタール、カルボキシル、無水物、酸ハロゲン化物、等を包含する。これらの基は、炭化水素セグメントとポリサッカライド主鎖の間の加水分解的に開裂可能な共有結合を作るために用いられ得る。たとえば、本方法は、炭化水素セグメントを有するペンダント基であってしかも開裂可能なエステル結合でポリサッカライド主鎖に連結されたペンダント基を与え得る。これらの側面において、天然生分解性ポリサッカライドの合成された疎水性誘導体は、酵素的に開裂可能である化学連結部(ポリマー主鎖)及び非酵素的に加水分解的に開裂可能である化学連結部(ペンダント基とポリマー主鎖の間の連結部)の両方を含むであろう。
【0150】
ペンダント基をポリサッカライドに結合させるために用いられ得る他の開裂可能な化学連結部は、ペルオキシエステル基、ジスルフィド基及びヒドラゾン基を包含する。
【0151】
いくつかの場合において、ヒドロキシル反応性基は、イソシアネート及びエポキシのようなものを包含する。これらの基は、ペンダント基とポリサッカライド主鎖の間の開裂不能な共有結合を作るために用いられ得る。これらの側面において、天然生分解性ポリサッカライドの合成された疎水性誘導体は、酵素的に開裂可能である化学連結部(ポリマー主鎖)を含む。
【0152】
カルボキシル基、アセチル基又はサルフェート基のような他の反応性基は、コンドロイチン又はヒアルロン酸のような他の天然生分解性ポリサッカライドのモノマー単位の環構造において存在する。これらの基もまた、ポリサッカライド主鎖に結合されるべき炭化水素セグメントを有する化合物との反応のために標的にされ得る。
【0153】
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体の合成の際に、様々な因子が考慮され得る。これらの因子は、天然生分解性ポリサッカライドの物理的及び化学的性質(該ポリサッカライドのサイズ、該ポリサッカライドにおける反応性基の数及び存在、並びに溶解性を含めて)、並びに炭化水素セグメントを含む化合物の物理的及び化学的性質(該化合物のサイズ及び溶解性、並びに該ポリサッカライドとの該化合物の反応性を含めて)を包含する。
【0154】
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体を製造する際に、任意の適当な合成手順が遂行され得る。合成は、ポリサッカライド主鎖から懸垂した炭化水素セグメントを備えた所望数の基を与えるように行われ得る。ペンダント基の数及び/又は密度は、たとえば、ポリサッカライドにおける利用可能な反応性基(たとえばヒドロキシル基)に対する炭化水素セグメントを含む化合物の相対濃度を制御することにより、制御され得る。
【0155】
ポリサッカライドから懸垂した炭化水素セグメントを有する基のタイプ及び量は、疎水性ポリサッカライドが水に不溶になれば十分である。これを達成するために、一般的手法として、炭化水素セグメントを有する基がポリサッカライド主鎖から重量により0.25(ペンダント基):1(ポリサッカライドモノマー)の範囲の量にて懸垂している疎水性ポリサッカライドを入手するか又は製造する。
【0156】
これらの誘導レベルを例示すると、非常に低い分子量(10,000Da未満)のグルコピラノースポリマーが炭化水素セグメントを有する化合物と反応されて、低分子量疎水性グルコピラノースポリマーがもたらされる。一つの実施態様において、10gの量の天然生分解性ポリサッカライドマルトデキストリン(MW3000〜5000Da,約3mmol)がテトラヒドロフランのような適当な溶媒中に溶解される。次に、このマルトデキストリン溶液に、18g(0.11mol)の量の酪酸無水物を有する溶液が添加される。反応が進行されて、マルトデキストリンポリマーのピラノース環においてペンダントブチレート基が効果的に形成される。この誘導レベルは、約1のマルトデキストリンにおけるヒドロキシル基についてのブチレート基の置換度(DS)をもたらすことになる。
【0157】
平均してモノマー単位当たり3個のヒドロキシル基を含むマルトデキストリン及び他のポリサッカライドについて、グリコピラノースモノマー単位当たり3個のヒドロキシル基の一つがブチレート基で置換されるようになる。この置換レベルを有するマルトデキストリンポリマーは、本明細書においてマルトデキストリン−ブチレートDS1と称される。本明細書において記載される場合、DSは、炭化水素セグメントを含む基で置換されているところのモノマー単位当たりの反応性基(ヒドロキシル基及び他の反応性基を含めて)の平均数を指す。
【0158】
DSの増加は、ポリサッカライドに炭化水素セグメントを与える化合物の量を増分的に増加することにより達成され得る。別の例として、10gのマルトデキストリン(MW3000〜5000Da,約3mmol)を0.32molの酪酸無水物と反応させることにより、2.5のDSを有するブチリル化マルトデキストリンが製造される。
【0159】
いくつかの実施態様において、本発明は、線状、分枝状又は環状C4〜C10ペンダント基を含むところの約2〜3の範囲のDSを含む疎水性グルコピラノースポリマーを含むインプラントであって、該ポリマーが約2000から約20000Daの範囲のMWを有するインプラントを提供する。
【0160】
いくつかの実施態様において、本発明は、線状、分枝状又は環状C5〜C7ペンダント基を含むところの約2〜3の範囲のDSを含む疎水性グルコピラノースポリマーを含むインプラントであって、該ポリマーが約2000から約20000Daの範囲のMWを有するインプラントを提供する。
【0161】
置換度は、ポリサッカライドの疎水性に影響を及ぼし得る。次には、ポリサッカライド主鎖に結合された炭化水素セグメントを有する基の実質量(高いDSにより例示されるような)を有する疎水性誘導体から作られたマトリックスは、一般的により疎水性であり、そしてより分解抵抗性であり得る。たとえば、マルトデキストリン−ブチレートDS1から作られたマトリックスは、マルトデキストリン−ブチレートDS2から作られたマトリックスよりも速い分解速度を有する。
【0162】
加水分解的に開裂可能な基を有するポリサッカライドについて、水溶液による浸透は、加水分解及びポリサッカライド主鎖からの該基の減損を促進し得る。これは被膜又はインプラントの性質を変え得、そして天然生分解性ポリサッカライドの分解を促進する酵素へのより近い接近をもたらすことになり得る及び/又はインプラントの表面からのポリサッカライドの減損をもたらすことになり得る(それらが可溶化されるようになるので)。
【0163】
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体の製造のために、様々な合成スキームが用いられ得る。いくつかの製造態様において、ペンダントポリサッカライドヒドロキシル基が、炭化水素セグメント及びヒドロキシル基に対して反応性である基を含む化合物と反応される。この反応は、炭化水素セグメントを含むペンダント基をポリサッカライドに付与し得る。
【0164】
任意の適当な化学基がポリサッカライド主鎖にカップリングされ得、しかしてポリサッカライドが水に不溶になる疎水性をポリサッカライドに付与し得る。好ましくは、ペンダント基は、C、H,O、N及びSから選択された1個又はそれ以上の原子を含む。
【0165】
いくつかの側面において、ペンダント基は、線状、分枝状又は環状C2〜C18基である炭化水素セグメントを含む。一層好ましくは、炭化水素セグメントは、C2〜C10又はC4〜C8の線状、分枝状又は環状基を含む。炭化水素セグメントは、飽和又は不飽和であり得そしてそれぞれアルキル基又は芳香族基を含み得る。炭化水素セグメントは、加水分解可能な結合又は加水分解不能な結合によってポリサッカライド鎖に連結され得る。
【0166】
いくつかの側面において、ポリサッカライド主鎖と反応されるところの炭化水素セグメントを有する化合物は、天然化合物に由来する。炭化水素セグメントを備えた天然化合物は、脂肪酸、脂肪、油、ロウ、リン脂質、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエン、テルペン、ステロイド及び脂溶性ビタミンを包含する。
【0167】
炭化水素セグメントを備えた例示的天然化合物は、脂肪酸及びそれらの誘導体(脂肪酸無水物及び脂肪酸ハロゲン化物のような)を包含する。例示的脂肪酸及び無水物は、それぞれ、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸及び無水物を包含する。ポリサッカライドのヒドロキシル基は、脂肪酸又は無水物と反応されてエステル基によって該化合物の炭化水素セグメントをポリサッカライドに結合させ得る。
【0168】
ポリサッカライドのヒドロキシル基はまた、ラクトンの開環を引き起こしてペンダント開鎖ヒドロキシエステルをもたらし得る。ポリサッカライドと反応され得る例示的ラクトンは、カプロラクトン及びグリコリドを包含する。
【0169】
一般的に、大きい炭化水素セグメントを有する化合物が疎水性誘導体の合成のために用いられる場合、その合成のために該化合物のより少量が必要とされ得る。たとえば、一般的原則として、Cxのアルキル鎖長を備えた炭化水素セグメントを有する化合物が1のDSを備えた疎水性誘導体を製造するために用いられるならば、C(x×2)のアルキル鎖長を備えた炭化水素セグメントを有する化合物は、0.5のDSを備えた疎水性誘導体をもたらすべき量にて反応される。
【0170】
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体はまた、2個又はそれ以上の異なる炭化水素セグメントをそれぞれ備えたペンダント基の組合わせを有するように合成され得る。たとえば、疎水性誘導体は、異なるアルキル鎖長を備えた炭化水素セグメントを有する複数種の化合物を用いて合成され得る。一つの実施態様において、ポリサッカライドは、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸の群から選択された2種又はそれ以上の脂肪酸(又はそれらの誘導体)の混合物と反応されて疎水性誘導体を生じる。
【0171】
他の場合において、疎水性誘導体は、炭化水素セグメントをポリサッカライド主鎖に連結する加水分解不能な結合を有するように合成される。例示的加水分解不能な結合は、ウレタン結合を包含する。
【0172】
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体はまた、複数個の炭化水素セグメントが加水分解可能な結合及び加水分解不能な結合の両方によってポリサッカライド主鎖に個々に連結されるように合成され得る。別の例として、疎水性誘導体は、酪酸無水物及びブチルイソシアネートの混合物をマルトデキストリンと反応させることにより製造される。これは、加水分解可能なエステル連結部及び加水分解不能なウレタン連結部でマルトデキストリン主鎖に個々に共有結合されているペンダント酪酸基を備えたマルトデキストリンの疎水性誘導体を生じる。このタイプの疎水性誘導体を有する被膜又はインプラントの分解は、エステル連結部の加水分解からのブチレート基の減損により起こり得る。しかしながら、ブチレート基の一部(ウレタン基によって結合されているもの)はポリサッカライド主鎖から除去されず、そしてそれ故天然生分解性ポリサッカライドはポリサッカライド主鎖の酵素的分解前において所望疎水性度を維持し得る。
【0173】
いくつかの側面において、ポリサッカライド主鎖から懸垂している基は、生物活性剤の性質を有する。これに関して、インプラントは、ポリサッカライドにカップリングされた生物活性剤を含む。いくつかの側面において、炭化水素セグメントを有する生物活性剤は、天然生分解性ポリマーから加水分解されそしてマトリックスから放出されて治療効果を奏し得る。炭化水素セグメントを有する治療上有用な化合物の一つの例は酪酸であり、しかして酪酸は腫瘍細胞の分化及びアポプトシスを誘発すると示されており、そして癌及び他の血液病の処置のために有用であると考えられる。
【0174】
炭化水素セグメントを含む他の例示的化合物は、バルプロ酸及びレチノイン酸を包含する。これらの化合物はポリサッカライド主鎖にカップリングされてペンダント基を与え得、そして次いで対象者における物品の植込み後にポリサッカライド主鎖から開裂され得る。レチノイン酸は抗増殖効果を有すると知られており、そして増殖性硝子体網膜症(PVR)の処置のために有用であると考えられる。治療効果を奏するペンダント基はまた、天然化合物(酪酸、バルプロ酸及びレチノイン酸のような)であり得る。
【0175】
ポリサッカライド主鎖にカップリングされ得る他の例示的化合物は、コルチコステロイドである。例示的コルチコステロイドは、トリアムシノロンである。トリアムシノロンを天然生分解性ポリマーにカップリングする一つの方法は、Cayanis,E.等,グルココルチコイド受容体に結合する自己抗イディオタイプ抗体の発生,The Journal of Biol. Chem.,261(11):5094〜5103(1986)に記載された方法の改変を用いることによる。トリアムシノロンヘキサン酸は、トリアムシノロンとケトヘキサン酸との反応により製造される。生じたトリアムシノロンヘキサン酸の酸塩化物が作られそして次いでマルトデキストリン又はポリアルジトールのような天然生分解性ポリマーと反応され得、しかして天然生分解性ポリマーにエステル結合によってカップリングされたペンダントトリアムシノロン基をもたらすことになる。
【0176】
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体はまた、2個又はそれ以上の異なるペンダント基を有ししかもこれらのペンダント基の少なくとも一つが生物活性剤を含むように合成され得る。疎水性ポリサッカライドは、生物活性剤(ポリサッカライドから放出される場合、対象者に治療効果を奏する)を含むペンダント基のある量を備えるように合成され得る。かかる疎水性誘導体の例は、マルトデキストリン−カプロエート−トリアムシノロンである。この疎水性誘導体は、2.5のDSを備えた誘導体をもたらすようにトリアムシノロンヘキサン酸及び過剰のカプロン酸無水物(n−ヘキサン酸無水物)を含む混合物をマルトデキストリンと反応させることにより製造され得る。
【0177】
いくつかの側面において、ポリサッカライドから懸垂している基は、フェニル基のような芳香族基である炭化水素セグメントを含む。一つの例として、o−アセチルサリチル酸がマルトデキストリンのようなポリサッカライドと反応されて、フェニル基である炭化水素セグメント及びアセテート基である非炭化水素セグメントを有するペンダント化学基をもたらし、しかもこのペンダント基はエステル結合によってポリサッカライドに連結されている。
【0178】
用語「生物活性剤」は、対象者に生体内投与された場合に生物学的効果を引き起こすところの合成又は天然であり得る無機又は有機分子を指す。本発明は、マトリックス内のしかし疎水性ポリサッカライドにカップリングされていない生物活性剤、疎水性ポリサッカライドにカップリングされた生物活性剤及びそれらの組合わせを有するインプラントを想定する。
【0179】
生物活性剤の部分リストが、下記に与えられる。本発明の諸具体的態様によれば、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体で作られたインプラント中に含められるべき1種又はそれ以上の生物活性剤が選ばれ得る。生物活性剤の水溶性の情報に加えて、生物活性剤の広範囲にわたるリストがThe Merck Index,第13版,Merck & Co.,(2001)に見られ得る。
【0180】
本発明により製造されたインプラントは、次のクラス(それらを包含するが、しかしそれらに限定されない)の一つ又はそれ以上のクラス内に入る生物活性剤を放出させるために用いられ得る。すなわち、ACE阻害剤、アクチン阻害剤、鎮痛剤、麻酔剤、抗高血圧剤、抗ポリメラーゼ、抗分泌剤、抗エイズ物質、抗生物質、抗癌物質、抗コリン作動剤、抗凝血剤、抗痙攣剤、抗うつ剤、抗嘔吐剤、抗真菌剤、抗緑内障溶質、抗ヒスタミン剤、抗高血圧剤、抗炎症剤(NSAIDのような)、抗代謝剤、抗有糸分裂剤、抗酸化剤、抗寄生虫及び/又は抗パーキンソン物質、抗増殖剤(抗脈管形成剤を含めて)、抗原生動物溶質、抗精神病物質、解熱剤、防腐剤、抗痙攣剤、抗ウイルス剤、カルシウムチャンネル遮断剤、細胞応答調節剤、キレート化剤、化学療法剤、ドーパミンアゴニスト、細胞外マトリックス成分、フィブリン溶解剤、フリーラジカルスカベンジャー、成長ホルモンアンタゴニスト、催眠剤、免疫抑制剤、イムノトキシン、表面糖タンパク質受容体の阻害剤、微小管阻害剤、縮瞳剤、筋収縮剤、筋弛緩剤、ニューロトキシン、神経伝達物質、ポリヌクレオチド及びそれらの誘導体、オピオイド、光力学療法剤、プロスタグランジン、再造形阻害剤、スタチン、ステロイド、血栓崩壊剤、トランキライザー、血管拡張剤及び血管痙攣抑制剤。
【0181】
抗生物質は当該技術に認められており、そして微生物の成長を阻害する又は殺す物質である。抗生物質の例は、ペニシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、バンコマイシン、バシトラシン、カナマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、セファロスポリン、ゲルダナマイシン及びそれらの類似体を包含する。セファロスポリンは、セファロチン、セファピリン、セファゾリン、セファレキシン、セフラジン、セファドロキシル、セファマンドール、セフォキシチン、セファクロール、セフロキシム、セフォニシド、セフォラニド、セフォタキシム、モキサラクタム、セフチゾキシム、セフトリアキソン及びセフォペラゾンを包含する。
【0182】
防腐剤は、微生物の成長又は作用を防ぐ又は抑制する(一般的に非特定的な仕方で、たとえばそれらの活動を阻害する又はそれらを破壊することにより)物質として認められている。防腐剤は、スルファジアジン銀、クロルヘキシジン、グルタルアルデヒド、過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム、フェノール、フェノール系化合物、ヨードフォア化合物、第4級アンモニウム化合物及び塩素化合物を包含する。
【0183】
抗ウイルス剤は、ウイルスの複製を破壊する又は抑制することが可能な物質である。抗ウイルス剤の例は、α−メチル−P−アダマンタンメチルアミン、ヒドロキシ−エトキシメチルグアニン、アダマンタンアミン、5−ヨード−2′−デオキシウリジン、トリフルオロチミジン、インターフェロン及びアデニンアラビノシドを包含する。
【0184】
酵素阻害剤は、酵素反応を阻害する物質である。酵素阻害剤の例は、エドロホニウムクロライド、N−メチルフィゾスチグミン、ネオスチグミンブロマイド、フィゾスチグミンサルフェート、タクリンHCl、タクリン、1−ヒドロキシマレエート、ヨードツベルシジン、p−ブロモテトラミソール、10−(α−ジエチルアミノプロピオニル)−フェノチアジン塩酸塩、カルミダゾリウムクロライド、ヘミコリニウム−3、3,5−ジニトロカテコール、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤I、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤II、3−フェニルプロパルギルアミン、N−モノメチル−L−アルギニンアセテート、カルビドパ、3−ヒドロキシベンジルヒドラジンHCl、ヒドララジンHCl、クロルギリンHCl、デプレニルHCl,L(−)、デプレニルHCl,D(+)、ヒドロキシルアミンHCl、イプロニアジドホスフェート、6−MeO−テトラヒドロ−9H−ピリド−インドール、ニアラミド、パルギリンHCl、キナクリンHCl、セミカルバジドHCl、トラニルシプロミンHCl、N,N−ジエチルアミノエチル−2,2−ジフェニルバレレート塩酸塩、3−イソブチル−1−メチルキサンチン、パパベリンHCl、インドメタシン、2−シクロオクチル−2−ヒドロキシエチルアミン塩酸塩、2,3−ジクロロ−α−メチルベンジルアミン(DCMB)、8,9−ジクロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−2−ベンゾアゼピン塩酸塩、p−アミノグルテチミド、p−アミノグルテチミドタルトレート,R(+)、p−アミノグルテチミドタルトレート,S(−)、3−インドチロシン、アルファ−メチルチロシン,L(−)、アルファ−メチルチロシン,D L(−)、セタゾルアミド、ジクロルフェナミド、6−ヒドロキシ−2−ベンゾチアゾールスルホンアミド及びアロプリノールを包含する。
【0185】
解熱剤は、熱を緩和する又は低減することが可能な物質である。抗炎症剤は、炎症を中和する又は抑制することが可能な物質である。かかる剤の例は、アスピリン(サリチル酸)、インドメタシン、ナトリウムインドメタシン三水和物、サリチルアミド、ナプロキセン、コルヒチン、フェノプロフェン、スリンダク、ジフルニサル、ジクロフェナク、インドプロフェン及びナトリウムサリチルアミドを包含する。局所麻酔剤は、局在領域において麻酔効果を有する物質である。かかる麻酔剤の例は、プロカイン、リドカイン、テトラカイン及びジブカインを包含する。
【0186】
スタチンの例は、ロバスタチン、プラバスタチン、シムバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチン及びスーパースタチンを包含する。
【0187】
ステロイドの例は、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニソン、プレドニソロン、メチルプレドニソロン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾン及びアルドステロンのようなグルココルチコイド;テストステルソン、ジヒドロテストステロン、エストラジオール、ジエチルスチルベストロール、プロゲステロン及びプロゲスチンのような性ステロイドを包含する。
【0188】
生物活性剤は、免疫抑制剤たとえばラパマイシン、ABT−578、シクロスポリン、エベロリムス、ミコフェノール酸、シロリムス、タクロリムス、等であり得る。
【0189】
本発明のインプラントは、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体及び1種又はそれ以上の生物活性剤を含む組成物を調製することにより製造され得る。組成物において、生物活性剤は、疎水性誘導体と混合されて(しかし疎水性誘導体にカップリングされていない)、疎水性誘導体にカップリングされて又は両方にて存在し得る。
【0190】
インプラントを製造する一つの方法を例示すると、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体への生物活性剤の添加により、組成物が調製される。生物活性剤及び疎水性誘導体が容器中に入れられ、そして一緒に加熱されて疎水性誘導体が溶融される。次いで、この組成物が混合されて、生物活性剤が溶融疎水性誘導体中にブレンドされる。この組成物は、次いで、所望形態に造形され得る。
【0191】
高薬物充填量が所望される場合において、天然生分解性ポリサッカライド及び生物活性剤は、合わせて、被膜又はインプラントの総重量の重量により約90%若しくはそれ以上、重量により95%若しくはそれ以上、重量により97.5%若しくはそれ以上又は重量により99%若しくはそれ以上を構成し得る。
【0192】
たとえば、いくつかの側面において、生物活性剤は被膜又はインプラントの約10wt%から約65wt%の範囲の量にて存在し、そして天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体は被膜又はインプラントの約90wt%から約35wt%の範囲にて存在する。一層特定的な諸側面において、生物活性剤は被膜又はインプラントの約25wt%から約55wt%の範囲の量にて存在し、そして疎水性誘導体は被膜又はインプラントの約75wt%から約45wt%の範囲にて存在する。更に一層特定的な諸側面において、生物活性剤は被膜又はインプラントの約40wt%から約50wt%の範囲の量にて存在し、そして疎水性誘導体は被膜又はインプラントの約60wt%から約50wt%の範囲にて存在する。
【0193】
医療インプラントを作る際に、天然生分解性ポリサッカライドのより高い濃度の使用は、より構造上剛性で耐久性の被膜又はインプラントをもたらし得る。これは、標的場所への被膜又はインプラントの送達中及び/又は送達後にインプラントが苛酷な条件を受ける場合に有用であり得、そして被膜又はインプラントの破砕の危険性を低減し得る。
【0194】
加えて、天然生分解性ポリサッカライドのより高い濃度の使用は、より遅い生物活性剤放出速度を備えた被膜又はインプラントをもたらし得る。
【0195】
本発明の被膜は、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体を含む被覆用組成物を最初に調製することにより作られ得る。いくつかの側面において、1種又はそれ以上の生物活性剤が、被覆用組成物中に含められ得る。被覆用組成物において、生物活性剤は、疎水性誘導体と混合されて(しかし疎水性誘導体にカップリングされていない)、疎水性誘導体にカップリングされて又は両方にて存在し得る。生物活性剤は組成物中に、治療上有用な性質を備えた被膜又は物品の形成を可能にする濃度にて存在し得る。生物活性剤の量及びタイプは、組成物中に存在する疎水性誘導体のタイプに基づいて選ばれ得る。
【0196】
いくつかの場合において、吹付け塗布法についてのもののような被覆用組成物は、疎水性ポリサッカライドを組成物中約5mg/mLから約500mg/mLの範囲の濃度にて有するように調製され得る。一つの実施態様において、疎水性ポリサッカライドは組成物中に約50mg/mLにて存在し、そしてこの組成物は表面を被覆するために用いられる。
【0197】
たとえば、いくつかの側面において、生物活性剤は被膜又は被覆用組成物中に約10wt%から約65wt%の固体分の範囲の量にて存在し、そして天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体は被膜又は被覆用組成物中に約70wt%から約35wt%の固体分の範囲にて存在し、そして生分解性親水性ポリマーは被膜又は被覆用組成物中に約1wt%から約20wt%の固体分の範囲の量にて存在する。
【0198】
より特定的な諸側面において、生物活性剤は被膜又は被覆用組成物中に約25wt%から約55wt%の固体分の範囲の量にて存在し、疎水性誘導体は被膜又は被覆用組成物中に約60wt%から約40wt%の固体分の範囲にて存在し、そして生分解性親水性ポリマーは被膜又は被覆用組成物中に約5wt%から約15wt%の固体分の範囲の量にて存在する。
【0199】
更に一層特定的な諸側面において、生物活性剤は被膜又は被覆用組成物中に約40wt%から約50wt%の固体分の範囲の量にて存在し、疎水性誘導体は被膜又は被覆用組成物中に約50wt%から約40wt%の固体分の範囲にて存在し、そして生分解性親水性ポリマーは被膜又は被覆用組成物中に約7.5wt%から約12.5wt%の固体分の範囲の量にて存在する。
【0200】
被膜を作製する一つの方法を例示すると、適当な溶媒中で生物活性剤を疎水性ポリサッカライドと一緒にすることにより、組成物が調製される。用いられ得る溶媒の例は、トルエン及びキシレンのような芳香族化合物、並びにテトラヒドロフランのようなエーテルを包含する。他の適当な溶媒は、メチレンクロライド及びクロロホルムのようなハロゲン化アルカン、並びにジメチルホルムアミド(DMF)のようなアミドを包含する。これらの又は他の溶媒の一つ又はそれ以上の組合わせもまた用いられ得る。用いられる溶媒系のタイプは、疎水性ポリサッカライド、生物活性剤及び組成物中に存在する他の随意的成分に従って選ばれ得る。
【0201】
有機溶媒中の疎水性ポリサッカライドを含む本発明の組成物は、様々な植込み可能医療物品の表面を被覆するために用いられ得る。被覆用組成物(生物活性剤を備えた又は備えない)は医療器具に、該器具の全表面又は該器具の表面の一部を覆うための標準的技法を用いて施用され得る。1つより多い被覆層が表面に施用される場合、それは典型的には順次に施用される。たとえば、疎水性ポリサッカライド被覆層は、たとえば物品上に被覆用物質を浸漬して、吹き付けて、刷毛塗りして又は綿棒塗りして層を形成させそして次いでこの被覆層を乾燥することにより作られ得る。多数の被覆層(少なくとも一つの層は天然生分解性ポリマーを含む)を有する被膜をもたらすために、この過程は繰り返され得る。本発明の組成物は、吹付け塗布法で用いるために特に適している。
【0202】
本発明の組成物を用いて植込み可能医療物品を被覆するために用いられ得る例示的吹付け塗布法及び装置は、米国特許出願公開第2004−0062875号明細書(2002年9月27日に出願された)に記載されている。
【0203】
疎水性ポリサッカライドを含む組成物は医療物品のボディー部材の表面上に直接的に吹付け塗布され得、あるいはボディー部材上に前もって作られた1つ又はそれ以上の被覆物質層を含む表面上に吹付け塗布され得る。該組成物は、生物活性剤を含む被覆物質層上に吹付け塗布され得る。
【0204】
他の被覆層は、メタクリレート、アクリレート、アルキルアクリレート、アクリルアミド、ビニルピロリジノン、ビニルアセトアミド又はビニルホルムアミドポリマーのようなポリマーを含み得る。これらのポリマーはまた、光反応性基のような潜在反応性基を含み得る。
【0205】
いくつかの場合において、疎水性誘導体を含む被覆層は、基層上に作られる。基層は1つ又はそれ以上の機能を供し得、たとえばそれは疎水性誘導体を含む被覆層の形成のために改善表面を与え得る。
【0206】
生分解性被膜の諸成分は医療器具に、該器具の全表面又は該器具の表面の一部を覆うための標準的技法を用いて施用され得る。指摘されたように、諸成分は医療器具に、独立に又は一緒にたとえば組成物にて施用され得る。器具上に作られた被膜は、単層被膜又は多層被膜であり得る。
【0207】
別の側面は、生物活性剤の放出を被膜の別の部分から制御するべき疎水性ポリサッカライドの能力に関する。これらの側面において、被膜は1つより多い被覆物質層を含み、そして生物活性剤は第1被覆層中に存在しそして第2被覆物質層は疎水性ポリサッカライドを含む。第2被覆層は、被膜からの生物活性剤の放出を制御する能力がある。
【0208】
たとえば、ポリマー物質及び生物活性剤を含む第1被覆層は、器具表面と疎水性ポリサッカライドを含む第2被覆層の間に作られ得る。生物活性剤は第1被覆層から拡散するが、しかし第2被覆層は器具の表面からのその放出をより効果的な治療プロフィールにて制御する。
【0209】
複数の被覆材のこの配置は、被膜からの親水性生物活性剤の放出を制御するために有利に用いられた。一つの実施態様において、合成ポリマー及び親水性生物活性剤を含む第1被覆層が作製される。たとえば、合成ポリマーは、非生分解性ポリマーであり得る。例示的合成ポリマーは、ポリ(ブチルメタクリレート)のようなポリ(アルキル(メト)アクリレート)を包含する。第2のポリマーが第1被覆層中に含められ得る。親水性生物活性剤が、第1被覆層中に含められる。疎水性ポリサッカライドを含む第2被覆層が作られる。第2被覆層は、第1被覆層との直接接触状態にあり得る。植え込むと、第2被覆層は、親水性生物活性剤の放出を遅くする(親水性生物活性剤はそうでなければ典型的には非常に速く放出される)。
【0210】
いくつかの好ましい実施態様において、インプラントは、実質量の溶媒を含まない方法を用いて作られる。たとえば、インプラントは無溶媒法を用いて製造され得、しかして無溶媒法は、生物活性剤を特定の多形形態に又はその過程の全体にわたって非多形形態に維持することが所望される場合に有益である。
【0211】
生物活性剤の諸多形体は、異なる内部結晶格子を備えた諸固体結晶相を有する、ということが知られている。いくつかの生物活性剤について、多形性に因る相違は生物学的利用能及び効果的臨床使用に影響を及ぼし得、一方他の場合においては、多形性における相違は生物活性にほとんど影響を及ぼさない。これを留意すると、特に身体中における使用のために或る多形形態の生物活性剤の生物活性が分かっている又は重要なことに首肯されている場合、インプラントを作る過程中、生物活性剤をその当初の多形形態に維持することが一般的に望ましい。
【0212】
定められた構造を有する医療インプラントは、成型法、押出法、造形法、切削法、注型法、等、又はこれらの方法の組合わせを含めて任意の適当な方法により作られ得る。医療インプラントを作る際に、天然生分解性ポリサッカライドの濃度は、より構造上剛性のインプラントをもたらすためにより高くあり得る。
【0213】
一つの実施態様において、本発明のインプラントは、押出機を用いて作られる。天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体及び生物活性剤を含むインプラントを作るために用いられる諸物質は、最初に、乾燥形態で押出機中に供給される。押出機はこれらの物質を加熱し、しかして疎水性誘導体の溶融を引き起こし、そしてこれらの物質は次いで押出機中で混合されて生物活性剤を混ぜ込み得る。疎水性誘導体の溶融を引き起こすために、押出機は約80℃若しくはそれ以上又は約100℃若しくはそれ以上の温度に加熱され得る。インプラントを作るためにより高いTgを有する疎水性誘導体が用いられる場合、より高い温度(140℃より高いような)が用いられ得る。(生物活性剤がポリサッカライドにカップリングされているのみである場合においては、ブレンドする工程は随意であり得る。)諸成分は、押し出される前に、10分未満のようなある期間混合され得る。溶融及び混合後、この混合物は、ダイから押し出されて所望形状にされ得る。最終形態のインプラントをもたらすために、切削のような更なる造形が、押し出された物質が冷却された後に遂行され得る。いくつかの場合において、インプラントは、約100μmから約1000μmそして一層特定的な諸側面において約250μmから約650μmの範囲の直径を有する。
【0214】
インプラントを作る方法は、連続法又は回分法として遂行され得る。たとえば、該方法は、混合物を作りそして器具に造形する連続押出、混合物を作りそして器具に造形する回分押出、又は混合物を作る連続押出そして次いで器具を作る成型を含み得る。
【0215】
本発明の方法は、より複雑な形状を有するインプラントを作るために用いられ得る。これらのより複雑な形状は、コイル状又は螺旋状インプラントにおいてのように、線状路からの多数の偏向を含み得る。他の想定形状は、半円又は「半輪」の形状である。いくつかの場合において、より複雑な形状は、押出法又は成型法により作られ得る。たとえば、押出は、円柱状押出物をそれが冷却される時に巻くことによりコイルを形成するように用いられ得る。成型もまた、コイルを形成するように用いられ得る。螺旋状又はコイル状の形状についての特許請求が加えられる。
【0216】
いくつかの側面において、被膜又はインプラントは、生体適合性親水性ポリマーを含む。生体適合性親水性ポリサッカライドは、生体適合性親水性ポリマーを含まない同等のマトリックスと比較して、マトリックスからの生物活性剤の放出速度を増加し得る。生体適合性親水性ポリマーは、生分解性又は非生分解性であり得る。例示的生体適合性親水性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)、親水性ポリサッカライド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、低分子量メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、等を包含する。
【0217】
生分解性親水性ポリマーは、疎水性マトリックス中に親水性ドメインを生じさせると考えられる。親水性ドメインは、被膜又はインプラントが対象者内に置かれた後に、流体をマトリックス中に押し入れると考えられる。一つの提案メカニズムにおいて、生物活性剤の放出は、生物活性剤をマトリックスから押し出すところのマトリックスについての浸透圧の増加により促進されると考えられる。別の提案メカニズムにおいて、生物活性剤の放出は、加水分解的に開裂可能なエステル基によって連結されている炭化水素セグメントを含むペンダント基の加水分解により促進されると考えられる。これはマトリックスの疎水性を減少し、そして生物活性剤の放出速度を増加する。
【0218】
たとえば、いくつかの側面において、生物活性剤は被膜又はインプラントの約10wt%から約65wt%の範囲の量にて存在し、そして天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体は被膜又はインプラントの約70wt%から約35wt%の範囲にて存在し、そして生分解性親水性ポリマーはインプラント中に約1wt%から約20wt%の範囲の量にて存在する。
【0219】
一層特定的な諸側面において、生物活性剤は被膜又はインプラントの約25wt%から約55wt%の範囲の量にて存在し、疎水性誘導体は被膜又はインプラントの約60wt%から約40wt%の範囲にて存在し、そして生分解性親水性ポリマーは被膜又はインプラント中に約5wt%から約15wt%の範囲の量にて存在する。
【0220】
更に一層特定的な諸側面において、生物活性剤は被膜又はインプラントの約40wt%から約50wt%の範囲の量にて存在し、疎水性誘導体は被膜又はインプラントの約50wt%から約40wt%の範囲にて存在し、そして生分解性親水性ポリマーは被膜又はインプラント中に約7.5wt%から約12.5wt%の範囲の量にて存在する。
【0221】
随意に、インプラントは、溶媒を用いて製造され得る。たとえば、溶媒ベースの手順は、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体を溶融する温度において生物活性剤がそうでなければ不安定である場合に用いられ得る。インプラントを製造するための組成物に用いられ得る溶媒の例は、トルエン及びキシレンのような芳香族化合物、並びにテトラヒドロフランのようなエーテルを包含する。他の適当な溶媒は、メチレンクロライド及びクロロホルムのようなハロゲン化アルカン、並びにジメチルホルムアミド(DMF)のようなアミドを包含する。これらの又は他の溶媒の一つ又はそれ以上の組合わせもまた用いられ得る。用いられる溶媒系のタイプは、疎水性誘導体、及び組成物中に存在する他の随意的成分に従って選ばれ得る。
【0222】
疎水性誘導体は、随意に、被膜又はインプラントの製造用の組成物において1種又はそれ以上の他の疎水性化合物とブレンドされ得る。これらの他の疎水性化合物は、生分解性ポリマーであり得る。たとえば、被膜又はインプラントは、天然生分解性ポリサッカライドの2種又はそれ以上の異なる疎水性誘導体のブレンド物を用いて製造され得る。これらの疎水性誘導体は、次の側面の一つ又はそれ以上に関して異なり得る。すなわち、分子量、並びにポリサッカライド主鎖から懸垂した基のタイプ及び量。
【0223】
疎水性誘導体はまた、異なるタイプの生分解性ポリマーとブレンドされ得る。それらの例は、ポリ(乳酸)(ポリ(ラクチド))、ポリ(グリコール酸)(ポリ(グリコリド))、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ジオキサノン)のようなポリエステル;ポリ(カプロラクトン)及びポリ(バレロラクトン)のようなポリラクトン;、ポリ(グリコリド−コ−ポリジオキサノン)、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボネート)及びポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)のようなコポリマー;ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(タルトロン酸)、ポリ(β−マロン酸)、ポリ(プロピレンフマレート);分解性ポリエステルアミド;分解性ポリ酸無水物及びポリアルケン酸無水物(ポリ(セバシン酸)、ポリ(1,6−ビス(カルボキシフェノキシ)ヘキサン)、ポリ(1,3−ビス(カルボキシフェノキシ)プロパン)のような);分解性ポリカーボネート及び脂肪族カーボネート;分解性ポリイミノカーボネート;分解性ポリアリーレート;分解性ポリオルトエステル;分解性ポリウレタン;分解性ポリホスファゼン;分解性ポリヒドロキシアルカノエート;分解性ポリアミド;分解性ポリペプチド;並びにそれらのコポリマーを包含する。
【0224】
他の随意的成分が、被膜又はインプラント中に含められ得る。これらの成分は、被膜又はインプラント中のポリサッカライド又は生物活性剤の量より少ない量にて含められ得る。これらの随意的成分は、インプラントの性質を変え得る又は改善し得る。
【0225】
インプラントの検出を容易にし得る成分は、着色剤、放射線不透過剤及びラジオアイソトープを包含する。これらの成分の一つ又はそれ以上の存在は、植込み後に被膜又はインプラントの場所の検出を容易にし得る。
【0226】
随意的成分の別のクラスは、賦形剤である。賦形剤は、被膜若しくはインプラントと連合される生物活性剤の安定性を改善し得る及び/又は被膜若しくはインプラントの物理的性質を変えるための可塑剤として働き得る。例示的賦形剤は、グリセロール、ジエチレングリコール、ソルビトール、ソルビトールエステル、マルチトール、スクロース、フルクトース、転化糖、コーンシロップ及びそれらの混合物を包含する。賦形剤の量及びタイプは、公知の標準及び技法に基づき得る。生物活性剤の安定性を含めて被膜又はインプラントの性質を維持するために、抗酸化剤がインプラントに添加され得る。
【0227】
随意的成分はまた、被膜又はインプラントの弾性、可撓性、湿潤性又は接着性(又はそれらの組合わせ)を変えるために用いられ得る。
【0228】
随意に、インプラントは、その表面の全部又は一部上に作られた被膜を含み得る。被膜が存在する場合、それはまた、好ましくは、物品の植込み後に溶解又は分解され得る化合物で作られる。たとえば、被膜は、インプラントの大部分を成すために用いられる疎水性誘導体と同じ又は異なり得る生分解性ポリマーを含み得る。被膜はインプラントに、インプラントからの生物活性剤の初期放出を遅らせる又は妨げるように施用され得る。滑性被膜もまたインプラント上に、その送達と関連し得る摩擦力を低減することにより標的部位へのその送達を容易にするように作られ得る。
【0229】
疎水性誘導体から作られたところの本発明の被膜を有するインプラント又は物品は、物品の1つ若しくはそれ以上の部品又はインプラント全体を滅菌するように処理され得る。滅菌は、インプラントを用いる前に及び/又はいくつかの場合において医療物品の植込み中に行われ得る。たとえば、眼インプラントは、眼中への挿入前に滅菌され得る。いくつかの側面において、眼インプラントは、水性滅菌溶液と接触され得る。
【0230】
本発明のいくつかの側面によれば、生物活性剤は、次の諸工程を含む方法を用いて、対象者に利用可能にされる。一つの工程は、対象者における標的部位に、疎水性天然生分解性ポリサッカライドのマトリックス及び該マトリックス内の生物活性剤を含む生分解性被膜を含む被膜を有する医療物品を植え込むことである。別の工程は、植え込む工程後に生物活性剤を対象者中の被膜から放出されるままにしておくことである。
【0231】
植え込む工程は被覆医療物品を身体中の任意の所望場所に置くように遂行され得るけれども、例示的方法は、生分解性被膜を有するステントを脈管系に置くことを含む。
【0232】
本明細書に記載されたとおりの生分解性被膜を備えたステントは、冠状動脈の脈管形成の分野において格別の用途がある。本明細書において用いられる場合、用語「ステント」と「補てつ物」は、本発明の方法、装置及び構造体が器官内のような脈管、管路又は身体通路の部分的に閉塞された区域を拡張させるために拡張可能な管腔内脈管移植片と関連して利用され得るのみならず、多くの他のタイプの身体通路用の拡張可能補てつ物として多くの他の目的のためにも利用され得る限りにおいて、本発明の記述においてある程度交換可能に用いられる。たとえば、拡張可能補てつ物もまた、(1)経管腔再疎通により開放されたしかし内部支持体の不存在で崩壊しそうである閉塞動脈内における支持移植片の配置、(2)手術不能な癌により閉塞された縦隔静脈及び他の静脈にカテーテルを通した後の同様な使用、(3)門脈圧亢進症を患っている患者における門静脈と肝静脈の間のカテーテルで作られた肝臓内連絡路の補強、(4)食道、腸、尿管、尿道、等の狭窄についての支持移植片の配置、(5)脈管又は器官内の動脈瘤又は障害物のような欠陥を管腔内で迂回すること並びに(6)再開放された及び以前に閉塞された胆管の支持移植片の補強のような目的のために用いられ得る。従って、用語「補てつ物」の使用は様々なタイプの身体通路内の前記の使用を包含し、そして用語「管腔内移植片」の使用は身体通路の管腔を拡張させるための使用を包含する。更に、用語「身体通路」は、先に記載されたもののような身体内のいかなる管腔又は管路をも、並びに脈管系内のいかなる静脈、動脈又は血管をも包含する。
【0233】
被覆ステントは、当該技術において知られた慣用方法を用いて及び経皮経管腔カテーテル器具を用いての展開及び植込みに適応され得る。被覆ステントは、膨張可能バルーン又は圧力の適用で拡張するポリマープラグのような様々なその場拡張手段のいずれかにより展開されるように設計され得る。たとえば、ステントの管状ボディーは膨張可能バルーンカテーテルの一部を囲むように置かれ得る。バルーンカテーテルを内部に備えたステントは、第1の収縮直径に形作られる。ステント及び膨張可能バルーンは、ワイヤー式脈管形成カテーテルシステムにおける前もって置かれたガイドワイヤーに従って身体の管腔中に経皮的に導入され、そしてバルーン部分及び連合ステントが身体通路内の植込み部位に置かれるまで適当な手段(蛍光透視法のような)により追跡される。その後、バルーンは膨らまされ、そしてステントは収縮直径から第2の拡張直径にバルーン部分により拡張される。ステントが所望最終拡張直径に拡張された後、バルーンはしぼませられ、そしてカテーテルは引き抜かれてステントが適所に残される。配置中、ステント及び脈管の両方を保護するために、ステントは、随意に、取外し可能シース又は他の手段によりカバーされ得る。
【0234】
自己拡張型ステントについて、次の手順が、適用可能であり得る。ステントを狭窄した病変の部位(植込み部位)に送達するために、ステントが植込み部位に通じる血管を容易に通過し得るようにステントの外径が低減される。ステントは、血管の低減直径部分内に配置される。かくして、ステントはたとえばステントを伸長することにより縮小され、しかして直径の対応する低減を可能にし、そして送達過程中かかる低減直径又は収縮形状に維持される。植込み部位に達すると、ステントの直径を低減する傾向にある力が解放され、それによりステントは血管の狭窄部分を支持及び/又は拡張し得る。
【0235】
いくつかの側面において、ステントは、低減直径ステントを送達シース内に置くことにより植込み部位に送達され得、しかして送達シースは次にはガイドカテーテルを通じて脈管系を通って植込み部位へと送られる。その際に、ステントを担持するシースは、ガイドカテーテルの遠位端からガイドワイヤーによって標的脈管中にそして植込み部位(狭窄した病変の部位)に前進される。
【0236】
第2のシースが収縮ステントに近接して与えられ得、そして外側のシースからのステントの取出しを容易にするために用いられ得る。たとえば、シースが脈管の植込み部位に配置されると、内側の近接シースは適所に保持される一方、外側のシースは後退される又はステントに関して近位へ引っ張られる。外側のシースの取去りは、ステントをその縮小形状にとどめる力を取り除き、そしてかくしてステントが脈管の狭窄した部分内で自己拡張して脈管壁を支持する及び拡張するのを可能にする。内側のシースは、ステントが外側のシースと共に近位へ移動するのを防ぐ。内側及び外側のシース並びにガイドワイヤー及びガイドカテーテルは、次いで脈管系から取り去られ得る。その代わりに、内側及び外側のシースが取り去られそしてバルーンカテーテルがガイドワイヤーによってガイドカテーテルを通じて拡張ステント中に送られ得る。次いで、バルーンは、ステントを脈管の壁とのしっかりした係合を推し進める及び/又はステント単独により果たされる動脈の拡張を増大するように、ステント内で膨らまされ得る。
【0237】
いくつかの側面において、ステントは、バルーンカテーテルで植込み部位に送達され得る。かかるバルーンカテーテルはよく知られており、そして本明細書に一層詳細には記述されない。
【0238】
本発明の諸側面を例示すると、眼インプラントのような眼用物品を作るために、疎水性誘導体が利用される。眼インプラントは、眼の所望部分における配置のために形作られ得る。たとえば、本発明のインプラントは、眼中の内部標的場所における配置のために及びその場所における生物活性剤の放出のために特に適している。いくつかの側面において、眼インプラントは、生物活性剤を眼の後区に(水晶体の後ろに)送達するように利用される。
【0239】
いくつかの側面において、眼インプラントは、眼内の網膜下域における配置のために形作られ得る。いくつかの側面において、眼インプラントは、眼用器具と連合して用いられる。眼用器具は、米国特許出願公開第2005/0143363号明細書(「ステロイドを含めて治療剤の網膜下投与の方法、薬力学的作用を脈絡膜及び網膜に限局化する方法、並びに網膜の病気の処置及び/又は予防方法」,de Juan等)、米国特許出願第11/175,850号明細書(「眼の病態の処置のための方法及び器具」,de Juan等)及び関連出願に記載されている。
【0240】
眼インプラントは、典型的には、眼の機能の妨害並びに眼への不快感及び損傷を最小にするように設計される。いくつかの具体的態様において、インプラントは、形状において棒様又はフィラメント様である。いくつかの具体的態様において、インプラントは、面取りされている、テーパー状にされている又は尖らされている遠位端を有し得る。その代わりに、インプラントは、尖っていない又は丸みのある遠位端を有し得る。
【0241】
インプラントは、いくつかの具体的態様において約1000μm超でない、他のいくつかの具体的態様において約900μm超でない、他のいくつかの具体的態様において約800μm超でない、他のいくつかの具体的態様において約700μm超でない、他のいくつかの具体的態様において約600μm超でない、他のいくつかの具体的態様において約500μm超でない、他のいくつかの具体的態様において約400μm超でない、他のいくつかの具体的態様において約300μm超でない、他のいくつかの具体的態様において約200μm超でない、他のいくつかの具体的態様において約100μm超でない、他のいくつかの具体的態様において約50μm超でない総直径を有する。いくつかの具体的態様において、インプラントの総直径は、約200μmから約500μmの範囲にある。
【0242】
本発明のインプラントは、いくつかの具体的態様において約5mm超でない、他のいくつかの具体的態様において約4.5mm超でない、他のいくつかの具体的態様において約4mm超でない、他のいくつかの具体的態様において約3.5mm超でない、他のいくつかの具体的態様において約3.0mm超でない、他のいくつかの具体的態様において約2.9mm超でない、他のいくつかの具体的態様において約2.8mm超でない、他のいくつかの具体的態様において約2.7mm超でない、他のいくつかの具体的態様において約2.6mm超でない、他のいくつかの具体的態様において約2.5mm超でない、他のいくつかの具体的態様において約2.4mm超でない、他のいくつかの具体的態様において約2.3mm超でない、他のいくつかの具体的態様において約2.2mm超でない、他のいくつかの具体的態様において約2.1mm超でない、他のいくつかの具体的態様において約2mm超でない長さを有する。いくつかの具体的態様において、インプラントの長さは、約2.25mmから約2.75mmの範囲にある。
【0243】
本発明のいくつかの側面において、天然生分解性ポリマーは、眼インプラントのボディー部材を作るために用いられ、しかも該ボディー部材は約6mg又はそれ以下の乾燥重量を有する。いくつかの側面において、ボディー部材は約2.5mg又はそれ以下の乾燥重量を有する。いくつかの側面において、ボディー部材は約2.3mg又はそれ以下の乾燥重量を有する。いくつかの側面において、ボディー部材は約2.0mg又はそれ以下の乾燥重量を有する。いくつかの側面において、ボディー部材は約1.8mg又はそれ以下の乾燥重量を有する。いくつかの側面において、ボディー部材は約1.5mg又はそれ以下の乾燥重量を有する。
【0244】
本発明によれば、生物活性剤は、次の諸工程を含む方法を用いて、対象者に利用可能にされる。一つの工程は、対象者における標的部位に、疎水性天然生分解性ポリサッカライドのマトリックス及び該マトリックス内の生物活性剤を含む生分解性医療インプラントを植え込むことである。別の工程は、植え込む工程後に生物活性剤を対象者中のインプラントから放出されるままにしておくことである。
【0245】
植え込む工程はインプラントを身体中の任意の所望場所に置くように遂行され得るけれども、その方法は、眼インプラントを眼の場所に置くことにより例示される。
【0246】
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体で作られた眼インプラントは、任意の適当な方法を用いて、眼の一部中に植え込まれ得る。典型的には、インプラントを眼内の標的部位に与えるために、インプラントは、挿入器具を用いて送達される。用語「植込み部位」は、本発明による処置コース中インプラントが置かれているところの患者の身体内の部位を指す。
【0247】
眼インプラントは、眼組織内の植込み部位に置かれ得る。適当な眼インプラントは、ある機能を果たし得る及び/又は生物活性剤を眼の任意の所望域に与え得る。たとえば、植込み部位は、生物活性剤を主として眼の前域に(水晶体の前に)又は眼の後区に(水晶体の後ろに)与えるように選ばれ得る。適当な眼インプラントはまた、所望される場合、生物活性剤を眼の近くの組織に与えるように利用され得る。いくつかの側面において、眼用物品は、硝子体又は網膜下空間のような眼内部位における配置のために形作られ得る。
【0248】
硝子体腔は眼の最大の房であり、そして硝子体液及び硝子体を含有する。一般的に言えば、硝子体は、内部において水晶体、後水晶体小帯及び毛様体によりそして後部において網膜杯により束縛されている。硝子体は透明な粘弾性ゲルであり、そして該ゲルは98%が水であり且つ水の粘度の約2〜4倍の粘度を有する。硝子体の主構成成分は、ヒアルロン酸(HA)分子及びII型コラーゲン繊維(HA分子を捕捉する)である。粘度は、典型的には、硝子体内のHAの濃度に依存する。硝子体は、伝統的には、2つの部分から成るとみなされている。すなわち、より密に配列されたコラーゲンフィブリルにより特徴づけられる皮質帯及びより液状の中央硝子体。
【0249】
それ故、いくつかの側面において、本発明は、眼インプラントを身体内の部位に置く方法であって、該部位が粘弾性ゲルのようなゲル様物質を含む方法を提供する。
【0250】
本発明の多くの側面において、眼インプラントは、硝子体中に置かれる。いくつかの側面において、眼インプラントは、強膜組織を通じて送達され得る(経強膜注入)。典型的には、約0.5インチから約0.62インチの長さを有する25から30ゲージ針(又はより小さいゲージ)を利用する挿入器具を用いることにより、硝子体内送達が成し遂げられるであろう。
【0251】
この方法論はまた、外来患者の診療所の環境で植え込まれ得る技法をもたらす。この具体的態様によれば、挿入器具つまり挿入装置であって、該器具が眼中に挿入される場合に該器具を受け入れるべき強膜に作られた孔が強膜における孔を封じる又は閉じるべき縫合糸を必要としないようなほど十分に小さいように、該器具の一部が形作られ且つ配置されている挿入器具が用意される。換言すると、孔は、創傷つまり孔が自動封鎖性であるのに十分に小さく、それにより硝子体液が眼から漏出するのを防ぐ。
【0252】
加えて、挿入する工程は、更に、挿入器具つまり挿入装置の挿入可能部分を、その操作可能端部が硝子体内にあるようになるように、経結膜的に挿入することを含む。これに関して、経結膜は、器具の操作可能端部が結膜及び強膜の両方を通じて硝子体中に挿入されることを意味するよう理解されるものとする。一層特には、強膜における孔を封じる又は閉じるべき縫合糸又は同様なものを必要としないようなほど十分に小さいところの強膜及び結膜における孔を作る挿入可能部分を挿入する。眼の後区についての慣用の外科的技法において、強膜を露出するために結膜はきまりきって切開されるのに対して、この具体的態様の方法論によれば、結膜は切開される又は元の状態に戻される必要がない。
【0253】
従って、器具が眼から取り去られる時、外科医は、房水の漏出を防ぐために強膜における孔を縫合糸で封じる又は閉じる必要はなく、何故なら強膜におけるかかる孔つまり創傷は自動封鎖性であるからである。加えて、経結膜手法の場合、外科医は、切開結膜を再付着する必要はない。これらの特徴は、更に、外科的手技を単純にし得、並びに外科的手技下で必要とされる縫合を減らし得る(除かないとしても)。
【0254】
本発明の方法は結膜の切開を要しない、ということが理解されるであろう。しかしながら、かかる追加的工程が特定の処置において所望されるならば、かかる結膜切開は遂行され得る。
【0255】
挿入手技は硝子体切除なしに遂行され得、そして自動封鎖性強膜切開をもたらすことになり得、しかして縫合糸の必要を除きそして感染の危険性を最小にする。いくつかの側面において、小さい強膜切開は漏出がなく、それにより植込み部位からの硝子体の漏出の危険性を低減する。有利には、本発明の方法は、診療室ベースの手技として遂行され得る。
【0256】
いくつかの側面において、眼インプラントは、眼内の網膜下域に置かれる。インプラントを送達するために、挿入器具は、眼内の網膜下空間に達するように経結膜的にそして経網膜的に前進され得る。器具の先端が網膜下空間に達すると、当業者に知られた多数の装置及び/又は技法のいずれかを用いて、限られたつまり限局化された網膜剥離(たとえばブレブ剥離)が作られ得、それにより網膜下空間を画定するつまり作る。次いで、インプラントは、網膜剥離により作られた網膜下空間中に置かれ得る。限られたつまり局所のドーム状網膜下剥離は、剥離それ自体が一般的に患者の視力に認知できる又は目立ち得る長期影響を及ぼさないような仕方で作られる。
【0257】
いくつかの場合において、眼インプラントを所望植込み部位に置く(たとえば引っ張ることにより)ために、把持部材(鉗子のような)が用いられ得る。次いで、眼インプラントは、処置コース中植込み部位に滞留し得る。
【0258】
標的部位において、本発明のインプラントは、医学的病態を処置するよう企てられている生物活性剤を放出する。眼インプラントについて、処置される医学的病態は、一般的に、3つのタイプの適応症すなわち(1)脈管形成、(2)炎症及び(3)変性の一つ又はそれ以上と関連している。病態及び病態の重症度に依存して、病態の処置のために適した1種又はそれ以上の生物活性剤がインプラントに含められ、そして処置のために標的場所において放出される。生物活性剤は、本明細書において挙げられたものを含めて、病態の処置のためにインプラントから放出されることが可能ないずれのものでもあり得る。
【0259】
インプラントは、網膜組織における脈管形成により特徴づけられる糖尿病性網膜症の処置のために用いられ得る。
【0260】
糖尿病性網膜症は、4つの段階がある。これらの4つの段階のいずれか中の糖尿病性網膜症にかかっていると診断された対象者にインプラントが送達され得るけれども、より後の段階における病態を処置することが普通である。
【0261】
第1段階は、網膜の血管における小血管瘤の出現により特徴づけられる軽度の非増殖性網膜症である。第2段階は、網膜の血管の閉塞により特徴づけられる中度の非増殖性網膜症である。第3段階は、網膜のいくつかの域に血液供給を与えずそしてこの血液供給を与えないことに応答して網膜における新しい血管の形成(血管形成)をもたらすことになるところの網膜の血管のより大きい閉塞により特徴づけられる重度の非増殖性網膜症である。第4段階は、異常な形態を有する新しい血管の活発な形成により特徴づけられる増殖性網膜症である。これらの異常に形成された血管は網膜及び硝子体の表面に沿って成長しそして血液を漏出しがちであり、しかしてこれは重度の視力低下をもたらすことになり得る。
【0262】
糖尿病性網膜症の処置は、1種又はそれ以上の抗脈管形成因子がインプラントから放出されそして網膜下組織に影響を与えるようにインプラントを標的場所に送達することにより成し遂げられ得る。いくつかの側面において、生物活性剤は、アネコルタブ(anecortave)アセテートのような脈管形成の阻害剤又はレセプターチロシンキナーゼアンタゴニストである。
【0263】
糖尿病性網膜症をレセプターチロシンキナーゼアンタゴニストで処置するための化合物及び方法は、米国特許第5,919,813号明細書に記載されている。いくつかの側面において、本発明のインプラントは、式I
【化1】

〔ここで、V、W及びXはヒドロ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ、エステル、エーテル、カルボン酸基、カルボン酸基の製薬上受容され得る塩及び--SR(ここで、Rは水素又はアルキル基である)から成る群から選択され、そしてYは酸素、硫黄、C(OH)及びC=Oから成る群から選択され、そしてZはヒドロ及びC(O)OR1(ここで、R1はアルキルである)から成る群から選択される〕
の化合物を含む。いくつかの側面において、アルコキシは、C1〜C6アルコキシである。いくつかの側面において、ハロは、フッ素、塩素又は臭素である。いくつかの側面において、エステルは、C1〜C6エステルである。いくつかの側面において、エーテルは、C1〜C6エーテルである。カルボン酸基の製薬上受容され得る塩は、ナトリウム及びカリウム塩を包含する。いくつかの側面において、アルキル基は、C1〜C6アルキルである。いくつかの側面において、タンパク質チロシンキナーゼ経路阻害剤は、ゲニステインである。
【0264】
式Iの化合物を用いる場合の例示的投薬範囲は、約1mg/kg/日から約100mg/kg/日又は一層特定的には約15mg/kg/日から約50mg/kg/日である。
【0265】
組合わせ薬物送達戦略もまた、糖尿病性網膜症の処置のために行われ得る。たとえば、網膜組織は、1種又はそれ以上の神経栄養因子で処置され得る。例示的神経栄養因子は、毛様体神経栄養因子(CNTF)及びグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)を包含する。加えて、コエンザイムQ10、クレアチン及びミノサイクリンのような神経保護剤が、インプラントから送達され得る。例としてミノサイクリンは神経保護剤(抗炎症効果を備えた抗生物質としてのその役割に加えて)であると考えられ、何故ならそれはまたプログラム細胞死(アポプトシス)に通じるカスケード事象を防ぎ得るからである。
【0266】
糖尿病性網膜症の処置はインプラントでの投与のみにより遂行され得、あるいはレーザー外科手術及び/又は硝子体切除のような他の手技と共に遂行され得る。
【0267】
インプラントは、ブドウ膜の炎症により特徴づけられるブドウ膜炎の処置のために用いられ得る。ブドウ膜は強膜と網膜の間の眼の層であり、そして虹彩、毛様体及び脈絡膜を含む。ブドウ膜は、血液供給量のほとんどを網膜に与える。
【0268】
ブドウ膜炎の様式は、前部ブドウ膜炎(典型的には、虹彩に限定される炎症(虹彩炎)を含む)を包含する。ブドウ膜炎の別の様式は、毛様体輪(虹彩と脈絡膜の間)の炎症を含む。ブドウ膜炎の別の様式は、後部ブドウ膜炎(主として脈絡膜を冒す(脈絡膜炎))である。本発明のインプラントは、これらの特定の病態のいずれかの処置のために、眼における標的部位に送達され得る。
【0269】
本発明は、網膜下空間中に1つ又はそれ以上の抗炎症因子を点滴する又は用意することによりブドウ膜炎を処置することを想定する。
【0270】
本発明の一層特定的な側面において、抗炎症ステロイド及びコルチコステロイドを含めてステロイドが、網膜下空間中に用意される又は点滴される。例示的抗炎症ステロイド及びコルチコステロイドは、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、デキサメタゾン21−ホスフェート、フルオシノロン、メドリゾン、メチルプレドニソロン、プレドニソロン21−ホスフェート、プレドニソロンアセテート、フルオロメタロン、ベタメタゾン、及びトリアムシノロン又はトリアムシノロンアセトニドを包含する。
【0271】
例示的具体的態様において、ステロイドの投薬は、約3から約12ヶ月の範囲の期間にわたって約10μgと約500mgの間にある。この投薬範囲は、黄班変性の3つの次の段階すなわち初期発症黄班変性、萎縮性黄班変性(AMD)及び血管新生黄班変性(NMD)の各々に適用可能である。
【0272】
インプラントはまた、網膜変性により特徴づけられる色素性網膜炎の処置のために用いられ得る。たとえば、本発明は、網膜下空間中に1つ又はそれ以上の神経栄養因子を点滴する又は用意することにより色素性網膜炎を処置することを想定する。
【0273】
インプラントはまた、加齢随伴黄斑変性(AMD)の処置のために用いられ得る。AMDは、脈管形成及び網膜変性の両方により特徴づけられる。AMDの特定の様式は、加齢随伴黄班変性、滲出性加齢随伴変性及び近視性変性を包含するが、しかしそれらに限定されない。本発明のインプラントは、これらの様式のAMDの処置のために、眼における標的部位に送達され得る。いくつかの場合において、インプラントは、AMDの処置のために、網膜下空間に送達される。例として、インプラントは、AMDの処置用の次の薬物すなわち抗VEGF(脈管内皮成長因子)化合物、神経栄養因子及び/又は抗脈管形成因子の一つ又はそれ以上を送達するために用いられ得る。いくつかの特定的な側面において、インプラントは、網膜下組織の処置用のコルチコステロイドを放出するために用いられる。
【0274】
インプラントはまた、増加眼圧及び網膜神経節細胞の減損により特徴づけられる緑内障の処置のために用いられ得る。本発明のインプラントは、細胞をエクサイトトキシン損傷から保護する1種又はそれ以上の神経保護剤の放出について想定されたところの緑内障の処置のために、眼における標的部位に送達され得る。かかる剤は、N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、サイトカイン及び神経栄養因子を包含する。
【0275】
眼の病態はまた、13−シスレチノイン酸、レチノイン酸誘導体、5−フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、ラパマイシンの類似体、タクロリムス、ABT−578、エベロリムス、パクリタキセル、タキサン又はビノレルビンのような抗増殖剤を放出するためにインプラントを眼における標的場所に送達することにより処置され得る。
【0276】
眼の病態はまた、イソプロテレノール、エピネフリン、ノルエピネフリン(アゴニスト)及びプロプラノロール(アンタゴニスト)のようなベータアドレナリン作動剤を放出するためにインプラントを眼における標的場所に送達することにより処置され得る。
【0277】
眼の病態はまた、PGE2又はPGF2のようなプロスタグランジンを放出するためにインプラントを眼における標的場所に送達することにより処置され得る。
【0278】
本発明のインプラントはまた、対象者の予防処置のために用いられ得る。換言すると、疾患又は病気があると診断されなかった場合でさえ、インプラントは対象者に与えられ得る。たとえば、AMDが一方の眼において起こっている場合の50%超において、それは続いて未罹患眼において1年以内におこるであろう。かかる場合において、未罹患眼中にステロイドのような治療媒体の予防的投与は、未罹患眼におけるAMDの危険性を最小にするか又は防ぐのに有用であると判明し得る。
【0279】
生物活性剤は、対象者における医学的病態を処置するのに十分な期間及び量にて放出され得る。挙げられたように、本発明の一つの明らかな利点は、生物活性剤がインプラントから定常速度にて放出され得る(定常速度は、インプラントの生物活性剤放出期間にわたって、1日当たり放出される生物活性剤の量において実質的変動がないことを意味する)ということである。そうであるとすると、本発明のインプラントは、零次放出速度に近い薬物送達を可能にする。生物活性剤はまた、医学的病態の処置のために治療上有効な量にて放出され得る。
【0280】
いくつかの側面において、生物活性剤は、100ng/日から10μg/日の範囲の平均速度にて放出される。一層特定的な諸側面において、生物活性剤は、250ng/日から7.5μg/日の範囲の平均速度にて放出される。更に一層特定的な諸側面において、生物活性剤は、500ng/日から5μg/日の範囲の平均速度にて放出される。更に一層特定的な諸側面において、生物活性剤は、750ng/日から2.5μg/日の範囲の平均速度にて放出される。更に一層特定的な諸側面において、生物活性剤は、おおよそ1μg/日の平均速度にて放出される。
【0281】
別の明らかな利点は、格別長い生物活性剤放出期間を有し、しかも治療上有効な量の生物活性剤がこの期間中のより後の時点において放出されることができるように、インプラントが製造され得る、ということである。生物活性剤放出に関して、インプラントは、半減期を有し得る(半減期は、インプラント中に存在する生物活性剤の全量の半分が生物活性剤放出期間中に放出される期間である)。
【0282】
たとえば、一つの側面において、インプラント中に存在する生物活性剤の量の50%は、100日の期間後にインプラントから放出される。これに関して、生物活性剤が約3ヶ月若しくはそれ以上の期間、約6ヶ月若しくはそれ以上の期間、約9ヶ月若しくはそれ以上の期間、約12ヶ月若しくはそれ以上の期間、約3ヶ月から約6ヶ月の範囲の期間、約3ヶ月から約9ヶ月の範囲の期間、約3ヶ月から約12ヶ月の範囲の期間又は約3ヶ月から約18ヶ月の範囲の期間放出されるべきである医学的病態の処置のために、インプラントは用いられ得る。
【0283】
いくつかの場合において、生体内機能寿命を微調節するために、生体適合性親水性ポリマーが、被膜又はインプラントに含められ得る。いくつかの側面において、生物活性剤の50%は、10〜70日の範囲の時点において被膜又はインプラントから放出される。一層特定的な諸側面において、生物活性剤の50%は、15〜40日の範囲の時点において被膜又はインプラントから放出される。更に一層特定的な諸側面において、生物活性剤の50%は、20〜35日の範囲の時点において被膜又はインプラントから放出される。更に一層特定的な諸側面において、生物活性剤の50%は、25〜30日の範囲の時点において被膜又はインプラントから放出される。
【0284】
いくつかの側面において、インプラントの性質に依存して、カルボヒドラーゼが、被膜又はインプラントの分解を促進し得る。たとえば、炭化水素セグメントを含み且つポリサッカライド主鎖から懸垂している基はポリサッカライドから加水分解的開裂により放出され得、そして被膜又はインプラントの一部は、酵素的にポリサッカライドを消化しそして被膜又はインプラントを分解し得るカルボヒドラーゼに接近可能になり得る。
【0285】
これらの側面において、エステル結合の加水分解(非酵素的に起こり得る)及びポリサッカライド部分のモノマー(又はダイマー)単位間の連結部の酵素的加水分解は、被膜又はインプラントの分解に寄与し得る。たとえば、非酵素的加水分解は、ポリサッカライド主鎖からの炭化水素セグメントを含む基の開裂及び減損に通じ得る。この減損は、物品の一部がより親水性になりそしてカルボヒドラーゼによる攻撃を受けやすくなることに通じ得、しかしてポリサッカライドの生分解及び/又は表面からのポリサッカライドの減損による物品の更なる分解をもたらすことになる。
【0286】
カルボヒドラーゼによる分解は、生物活性剤の放出前、中又は/及び後に起こり得る。天然生分解性ポリサッカライド被膜を特異的に分解し得るカルボヒドラーゼの例は、唾液及び膵臓α−アミラーゼのようなα−アミラーゼ;マルターゼ、ラクターゼ及びスクラーゼのようなジサッカライダーゼ;トリサッカライダーゼ;並びにグルコアミラーゼ(アミログルコシダーゼ)を包含する。
【0287】
アミラーゼについての血清中濃度は約50〜100U毎リットルの範囲にあると推定され、そして硝子体中濃度もまたこの範囲内に入る(Varela,R.A.及びBossart,G.D.,(2005),J. Am. Vet. Med. Assoc.,226:88〜92)。
【0288】
いくつかの側面において、カルボヒドラーゼは、カルボヒドラーゼがインプラントの分解を促進し得るように、被膜又はインプラントを囲む体液又は組織中のその濃度を増加するように対象者に投与され得る。カルボヒドラーゼを導入するための例示的経路は、局所注入、静脈内(IV)経路、等を包含する。その代わりに、分解は、被膜又はインプラントの近くのカルボヒドラーゼの濃度を間接的に増加することにより、たとえば食事法により又はカルボヒドラーゼの全身レベルを増加する化合物を経口摂取する若しくは投与することにより促進され得る。
【0289】
他の場合において、カルボヒドラーゼは、被膜又はインプラントの一部において与えられ得る。たとえば、カルボヒドラーゼは被膜又はインプラントの一部から、自身の分解を促進するために放出され得る。
【0290】
被膜又はインプラントはまた、被膜又はインプラントの表面からのポリサッカライドの遊離により侵食され得る。たとえば、ペンダント基が加水分解的開裂によりポリサッカライドから放出された後、ポリサッカライドは被膜又はインプラントの残部に関してその疎水基の会合を解き得、そして被膜又はインプラントを囲む流体又は組織中に部分的に又は全体的に放出され得る。カルボヒドラーゼによる遊離ポリサッカライドの分解は、ポリサッカライドの遊離中又は遊離後に起こり得る。
【0291】
本発明の生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体の分解は、グルコースのような天然に存在するモノ又はジサッカライドの放出をもたらすことになり得る。これは、特にこれらの疎水性誘導体が被膜若しくはインプラント又はそれらの一部を作るために用いられる場合に有利である。普通の血清成分であるこれらの天然に存在するモノ又はジサッカライドは、個体に対して免疫抗原性又は毒性の危険性をほとんど又は全く呈さない。
【0292】
随意に、炭化水素セグメントを含む基とポリサッカライドとの間の結合(たとえばエステル結合)の分解を促進するために、リパーゼが被膜又はインプラントと連合して用いられ得る。
【0293】
本発明は、更に、次の非制限的例に関して記載される。本発明の範囲から逸脱することなく多くの変更が、記載された諸具体的態様においてなされ得る、ということが当業者に明らかであるであろう。かくして、本発明の範囲は、本願に記載された諸具体的態様に制限されるのではなくて、請求項の言葉により記載された諸具体的態様及びこれらの具体的態様の等価物によってのみ制限されるべきである。別段指摘されていなければ、百分率はすべて重量による。
【0294】
実施例1
撹拌しながら、11gの乾燥マルトデキストリン(GPC,アイオワ州マスカティーンのGrain Processing Corporation)を100mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。溶解が完了した時、室温にて撹拌しながら、20g(0.244モル,19.32mL,Sigma-Aldrich)の1−メチルイミダゾールそして次いで50g(0.32gモル,52mL,ウィスコンシン州ミルウォーキーのSigma-Aldrich)の酪酸無水物を添加した。この反応溶液を1時間撹拌し、そして次いで脱イオン水でクエンチした。クエンチされた反応混合物から沈殿したタフィー様物質を1,000MWCO透析管中に入れ、そして連続流の脱イオン水に対して3日間透析した。この時間後、固体生成物を凍結乾燥した。23.169gの白色の粉末状固体が得られた。理論置換度(DS)は、2.5であった。
【0295】
実施例2
撹拌しながら、10gの乾燥MDを100mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。溶解が完了した時、室温にて撹拌しながら、23.7g(0.29モル,22.9mL)の1−メチルイミダゾールそして次いで29.34g(0.29gモル,27.16mL)の酢酸無水物(ウィスコンシン州ミルウォーキーのSigma-Aldrich)を添加した。この反応溶液を1時間撹拌し、そして次いでウェアリング(Waring)ブレンダー中の750mLの脱イオン水にゆっくり添加した。沈殿固体を濾過によって採集し、1Lの脱イオン水中に再懸濁し、そして1時間撹拌した。固体を濾過によって採集し、そして真空中で乾燥した。15.92gの黄色の粉末状固体が得られた。理論DSは、2.5であった。
【0296】
実施例3
撹拌しながら、10gの乾燥MDを100mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。溶解が完了した時、室温にて撹拌しながら、9.49g(0.11モル,9.17mL)の1−メチルイミダゾールそして次いで18.19g(0.11モル,18.81mL)の酪酸無水物を添加した。この反応溶液を1時間撹拌し、そして次いでウェアリング(Waring)ブレンダー中の750mLの脱イオン水にゆっくり添加した。沈殿固体を濾過によって採集し、1Lの脱イオン水中に再懸濁し、そして1時間撹拌した。固体を濾過によって採集し、そして真空中で乾燥した。16.11gの白色の粉末状固体が得られた。理論DSは、1であった。
【0297】
実施例4
撹拌しながら、10gの乾燥MDを100mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。溶解が完了した時、室温にて撹拌しながら、14.24g(0.17モル,13.76mL)の1−メチルイミダゾールそして次いで27.32g(0.17モル,28.25mL)の酪酸無水物を添加した。この反応溶液を1時間撹拌し、そして次いでウェアリング(Waring)ブレンダー中の750mLの脱イオン水にゆっくり添加した。沈殿固体を濾過によって採集し、1Lの脱イオン水中に再懸濁し、そして1時間撹拌した。固体を濾過によって採集し、そして真空中で乾燥した。18.95gの白色の粉末状固体が得られた。理論DSは、1.5であった。
【0298】
実施例5
撹拌しながら、10gの乾燥MDを100mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。溶解が完了した時、室温にて撹拌しながら、18.97g(0.23モル,18.33mL)の1−メチルイミダゾールそして次いで36.39g(0.23モル,37.63mL)の酪酸無水物を添加した。この反応溶液を1時間撹拌し、そして次いでウェアリング(Waring)ブレンダー中の750mLの脱イオン水にゆっくり添加した。沈殿固体を濾過によって採集し、1Lの脱イオン水中に再懸濁し、そして1時間撹拌した。固体を濾過によって採集し、そして真空中で乾燥した。19.78gの白色の粉末状固体が得られた。理論DSは、2であった。
【0299】
実施例6
撹拌しながら、10gの乾燥ポリアルジトール(GPC,アイオワ州マスカティーンのGrain Processing Corporation)を100mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。溶解が完了した時、室温にて撹拌しながら、28.46g(0.35モル,27.5mL)の1−メチルイミダゾールそして次いで54.58g(0.35モル,56.44mL)の酪酸無水物を添加した。この反応溶液を1時間撹拌し、そして次いで脱イオン水でクエンチした。この反応混合物を1,000MWCO透析管中に入れ、そして連続流の脱イオン水に対して3日間透析した。この時間後、この溶液を凍結乾燥した。11.55gの白色の粉末状固体が得られた。理論DSは、2であった。
【0300】
実施例7
撹拌しながら、1gの乾燥β−シクロデキストリン(ウィスコンシン州ミルウォーキーのSigma-Aldrich)を10mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。溶解が完了した時、室温にて撹拌しながら、5.02g(0.061モル,4.85mL)の1−メチルイミダゾールそして次いで9.62g(0.061モル,9.95mL)の酪酸無水物を添加した。この反応溶液を1時間撹拌し、そして次いで脱イオン水でクエンチした。この反応混合物を1,000MWCO透析管中に入れ、そして連続流の脱イオン水に対して3日間透析した。この時間後、この溶液を凍結乾燥した。234mgの白色の粉末状固体が得られた。理論DSは、2であった。
【0301】
実施例8
撹拌しながら、10gの乾燥MDを100mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。溶解が完了した時、室温にて撹拌しながら、23.7g(0.29モル,22.9mL)の1−メチルイミダゾールそして次いで37.38g(0.29モル,36.8mL)のプロピオン酸無水物を添加した。この反応溶液を1時間撹拌し、そして次いでウェアリング(Waring)ブレンダー中の750mLの脱イオン水にゆっくり添加した。沈殿固体を濾過によって採集し、1Lの脱イオン水中に再懸濁し、そして1時間撹拌した。固体を濾過によって採集し、そして真空中で乾燥した。18.49gの白色の粉末状固体が得られた。理論DSは、2.5であった。
【0302】
実施例9
撹拌しながら、10gの乾燥MDを100mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。溶解が完了した時、室温にて撹拌しながら、9.48g(0.12モル,9.16mL)の1−メチルイミダゾールそして次いで14.95g(0.12モル,14.73mL)のプロピオン酸無水物を添加した。この反応溶液を1時間撹拌し、そして次いでウェアリング(Waring)ブレンダー中の750mLの脱イオン水にゆっくり添加した。沈殿固体を濾過によって採集し、1Lの脱イオン水中に再懸濁し、そして1時間撹拌した。固体を濾過によって採集し、そして真空中で乾燥した。14.32gの白色の粉末状固体が得られた。理論DSは、1であった。
【0303】
実施例10
撹拌しながら、4gの乾燥MDを40mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。溶解が完了した時、室温にて撹拌しながら、9.48g(0.12モル,9.16mL)の1−メチルイミダゾールそして次いで24.63g(0.12モル,26.6mL)のカプロン酸無水物を添加した。この反応溶液を1時間撹拌し、そして次いでウェアリング(Waring)ブレンダー中の750mLの脱イオン水にゆっくり添加した。沈殿固体を濾過によって採集し、1Lの脱イオン水中に再懸濁し、そして1時間撹拌した。得られた固体はタフィー様であり、そして濾過によって採集しそして真空中で乾燥した。7.18gの白色の固体が得られた。理論DSは、2.5であった。
【0304】
実施例11
撹拌しながら、4gの乾燥MDを40mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。溶解が完了した時、室温にて撹拌しながら、3.79g(0.046モル,3.7mL)の1−メチルイミダゾールそして次いで9.85g(0.046モル,10.64mL)のカプロン酸無水物を添加した。この反応溶液を1時間撹拌し、そして次いでウェアリング(Waring)ブレンダー中の750mLの脱イオン水にゆっくり添加した。沈殿固体を濾過によって採集し、1Lの脱イオン水中に再懸濁し、そして1時間撹拌した。固体を濾過によって採集し、そして真空中で乾燥した。9.02gの白色の粉末状固体が得られた。理論DSは、1であった。
【0305】
実施例12
撹拌しながら、2.0gの乾燥MDを10mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。0.751g(2.3ミリモル)のデカン酸無水物を3mLのクロロホルム中に溶解した。これらの溶解が完了した時、DMSO/MD溶液に0.188g(2.3ミリモル,0.183mL)の1−メチルイミダゾールを添加し、そして次いでクロロホルム/無水物溶液及び7.0mLのDMSOを添加した。この反応物を室温にて1時間撹拌した。この反応混合物を1,000MWCO透析管中に入れ、そして連続流の脱イオン水に対して3日間透析した。内容物の入ったこの透析管を1リットルのアセトン/メタノール−50/50(容量)中に3回、各溶媒交換について1時間超置いた。次いで、内容物の入ったこの透析管を4リットルのアセトン/メタノール−50/50(容量)中に3回、各溶媒交換について1日間置いた。この透析管からの固体を真空中で乾燥した。1.69gの白色の固体が得られた。理論DSは、0.1であった。
【0306】
実施例13
撹拌しながら、5.0gの乾燥MDを10mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。3.15g(5.75ミリモル)のステアリン酸無水物を3mLのクロロホルム中に溶解した。これらの溶解が完了した時、DMSO/MD溶液に0.472g(5.75ミリモル,0.458mL)の1−メチルイミダゾールを添加し、そして次いでクロロホルム/無水物溶液及び7.0mLのDMSOを添加した。この反応物を室温にて1時間撹拌した。この反応混合物を1,000MWCO透析管中に入れ、そして連続流の脱イオン水に対して3日間透析した。内容物の入ったこの透析管を1リットルのアセトン/メタノール−50/50(容量)中に3回、各溶媒交換について1時間超置いた。次いで、内容物の入ったこの透析管を4リットルのアセトン/メタノール−50/50(容量)中に3回、各溶媒交換について1日間置いた。この透析管からの固体を真空中で乾燥した。6.58gの白色の粉末状固体が得られた。理論DSは、0.1であった。
【0307】
実施例14
撹拌しながら、4gの乾燥MDを40mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。溶解が完了した時、室温にて撹拌しながら、9.48g(0.12モル,9.16mL)の1−メチルイミダゾールそして次いで24.63g(0.12モル,26.6mL)のカプロン酸無水物を添加した。この反応溶液を1時間撹拌し、そして次いでウェアリング(Waring)ブレンダー中の750mLの脱イオン水にゆっくり添加した。沈殿固体を濾過によって採集し、1Lの脱イオン水中に再懸濁し、そして1時間撹拌した。得られた固体はタフィー様であり、そして濾過によって採集しそして真空中で乾燥した。7.18gの白色の固体が得られた。理論DSは、2.5であった。
【0308】
実施例15
撹拌しながら、4gの乾燥MDを40mLのジメチルスルホキシド中に溶解した。溶解が完了した時、室温にて撹拌しながら、9.48g(0.12モル,9.16mL)の1−メチルイミダゾールそして次いで24.63g(0.12モル,26.6mL)のヘプタン酸無水物を添加した。この反応溶液を1時間撹拌し、そして次いでウェアリング(Waring)ブレンダー中の750mLの脱イオン水にゆっくり添加した。沈殿固体を濾過によって採集し、1Lの脱イオン水中に再懸濁し、そして1時間撹拌した。得られた固体はタフィー様であり、そして濾過によって採集しそして真空中で乾燥した。7.18gの白色の固体が得られた。理論DSは、2.5であった。
【0309】
実施例16
真空オーブンで乾燥されたポリアルジトールPD60(4.10g)、N−ヒドロキシスクシンイミド(0.38g)、4−ジ(メチルアミノ)ピリジン(0.39g)及び2−プロピルペンタン酸(9.01g,バルプロ酸)を120mL琥珀色バイアル中に量り取った。このバイアル中に無水ジメチルスルホキシド(DMSO)(50mL)を注ぎ、窒素でパージし、そして回転振とう機上に置いて溶解した。N,N′−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(9.47g)を30mL琥珀色バイアル中に量り取り、そして10mLの無水DMSOで溶解した。このDIC溶液を上記の120mL琥珀色バイアル中に注ぎ、そして窒素ガスでパージした。この120mLバイアル中にテフロン(登録商標)撹拌子を挿入した後にキャップをし、そして撹拌プレート上に置いて室温にて夜通し撹拌した。夜通しの撹拌後、目に見える生成物は見られず、そしてこの反応物を55℃のオーブン中に置いて夜通し撹拌した。この反応物は夜通し加熱した後に2つの層を形成し、そして撹拌しながら2Lの脱イオン水中に沈殿させた。水流アスピレーターを用いてこの帯黄/白色の固体を真空濾過し、そして脱イオン水(100mL)で3回すすいだ。固体沈殿物を採集し、そして真空オーブン中で40℃にて夜通し乾燥した。この乾燥固体は有機溶性(テトラヒドロフラン、メチレンクロライド)であった。THF中の50mg/mL溶液を調製し、そしてきれいなペバックス(Pebax)棒上に浸漬塗布することにより試験して、一様なオフホワイト色の被膜がもたらされた。
【0310】
実施例17
真空オーブンで乾燥されたポリアルジトールPD60(4.10g)、N−ヒドロキシスクシンイミド(0.38g)、4−ジ(メチルアミノ)ピリジン(0.39g)及びo−アセチルサリチル酸(ASA)(11.26g)を120mL琥珀色バイアル中に量り取った。このバイアル中に無水ジメチルスルホキシド(50mL)を注ぎ、窒素でパージし、そして回転振とう機上に置いて溶解した。N,N′−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(9.47g)を30mL琥珀色バイアル中に量り取り、そして10mLの無水DMSOで溶解した。このDIC溶液を上記の120mL琥珀色バイアル中に注ぎ、そして窒素ガスでパージした。この120mLバイアル中にテフロン(登録商標)撹拌子を挿入した後にキャップをし、そして撹拌プレート上に置いて室温にて夜通し撹拌した。夜通しの撹拌後、目に見える生成物は見られず、そしてこの反応物を55℃のオーブン中に置いて夜通し撹拌した。この反応物は夜通し加熱した後に粘稠な橙色の物質を形成し、そして撹拌しながら2Lの脱イオン水中に沈殿させた。水流アスピレーターを用いてこの橙色の固体を真空濾過し、そしてアセトン(25mL)で1回そして次いで脱イオン水(100mL)で3回すすいだ。固体沈殿物を採集し、そして真空オーブン中で40℃にて夜通し乾燥した。この乾燥固体は有機溶性(テトラヒドロフラン、メチレンクロライド)であった。
【0311】
実施例18
ステンレス鋼ステントからのリドカインの放出
15mLのTHF中に200mgの337kDの近似重量平均分子量を備えたポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)、200mgの33%(w/w)のビニルアセテート含有率を備えたポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)(PEVA)及び200mgのリドカインを含有する溶液を調製した。
【0312】
ステンレス鋼ステントを、被覆のために次のとおり準備した。脱イオン水中のENPREP−160SE(カタログ番号2108−100,コネティカット州ウェストヘーブンのEnthone-OMI, Inc.)の6%(容量による)溶液中に1時間浸漬することにより、ステントをきれいにした。浸漬後、次いでこれらの部品を脱イオン水で数回すすいだ。すすいだ後、これらのステントを脱イオン水とイソプロピルアルコールとの50%(容量による)溶液中にて作製された0.5%(容量による)のメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(カタログ番号M6514,ミズーリ州セントルイスのSigma Aldrich)中に、室温にて1時間浸漬した。これらのステンレス鋼ワイヤーを液切りし、そして風乾した。次いで、これらのステントを100℃のオーブン中に1時間置いた。
【0313】
オーブンで乾燥した後、これらのステントをパリレン被覆用反応器(PDS 2010 LABCOTERTM2,インディアナ州インディアナポリスのSpecialty Coating Systems)中に置き、そしてLABCOTERTMシステムについての操作説明書に従うことにより2gのパリレン(Parylene)C(インディアナ州インディアナポリスのSpecialty Coating Systems)で被覆した。生じたパリレン(Parylene)C被膜は、おおよそ1〜2μmの厚さであった。
【0314】
1.0mm(0.04インチ)直径のオリフィスを備えたノズルが取り付けられているアイヴェク(IVEK)吹付け装置(アイヴェク(IVEK)ディスペンサー2000,バーモント州ノーススプリングフィールドのIVEK Corp.)を用いてそして421.84g/cm2(6psi)に加圧して、被覆用溶液をパリレン(Parylene)Cで処理されたステント上に吹き付けた。被覆の適用中、ノズルからステント表面までの距離は5から5.5cmであった。被覆の適用は、40μLの被覆用溶液をステント上に前後に7秒間吹き付けることから成っていた。ステント上におけるリドカインの量が約200マイクログラムであると推定されるまで、被覆の吹付け過程を繰り返した。ステント上の被膜組成物を、室温(おおよそ20℃から22℃)にておおよそ8〜10時間、溶媒の蒸発により乾燥した。乾燥後、被覆ステントを再計量した。この重量から被膜の質量を算出し、しかしてこれにより次には被覆されたポリマー及びリドカインの質量が決定されるのが可能にされた。
【0315】
THF中の3種の溶液を調製した。各溶液を50mg/mLにて調製した。これらの3種の溶液は、マルトデキストリン−プロピオネート(MD−Prop)(実施例8から)、マルトデキストリン−アセテート(MD−Ace)(実施例2から)及びマルトデキストリン−カプロエート(MD−Cap)(実施例10から)で構成されていた。これらの溶液の各々をPBMA/PEVA/リドカインで被覆されたステント上に、上記に記載されたようにして塗布した。MDポリマーの量が約500マイクログラムであると推定されるまで、吹付け過程を繰り返した。
【0316】
本明細書において利用された溶出検定は、次のとおりであった。リン酸塩緩衝食塩水(PBS,10mMリン酸塩、150mM−NaCl、pH7.4、水溶液)をTeflonTM内張りキャップを備えた琥珀色バイアル中に、3mLから10mLの量ピペットで量り取った。このPBS中に、被覆用組成物で処理されたワイヤー又はコイルを浸した。このバイアル中に撹拌子を入れ、そしてキャップをバイアル上にしっかりと締めた。撹拌プレートの使用でもってPBSを撹拌し、且つ水浴の使用でもってPBSの温度を37℃に維持した。期待される又は所望される溶出速度に基づいて、試料採取時間を選んだ。試料採取時点において、ステントをバイアルから取り出し、そして新たなPBSを含有する新たなバイアル中に入れた。被覆用組成物で処理されたステントを以前に含有していたPBS溶液中の薬物の濃度を決定するために、UV/VIS分光光度計を用いた。時間に対する溶出された薬物の累積量をプロットして溶出プロフィールを得た。溶出プロフィールは、図6においてグラフで図示されている。
【0317】
実施例19
分解性マグネシウム合金クーポン上におけるバリヤー被膜
マグネシウム合金の薄板(96%マグネシウム、3%アルミニウム、1%亜鉛,英国ハンティントンのGoodfellow Cambridge Lmtd.)から1cm×0.75cmのストリップを切り取った。1000mgのMD−Cap DS2.5(実施例10から)を室温にてTHF中に溶解した。このポリマー溶液中に各ストリップの下半分を漬け、このストリップを取り去り、このストリップを乾燥し、該ポリマー溶液中にこのストリップの上半分を漬け、このストリップを取り去りそしてこのストリップを乾燥することにより、マグネシウム合金ストリップの半数をMD−Cap DS2.5で被覆した。この手順を4回繰り返した。引き続いて、被覆されたストリップ及び被覆されていないストリップの両方を計量した。被覆されたストリップ及び被覆されていないストリップを個々にバイアル中に入れ、そして2mLのpH7.4のリン酸塩緩衝食塩水(PBS)を各バイアルに添加した。これらのバイアルをシールし、そして37℃の環境室中に置いた。様々な時点において、バイアルを該室から取り出し、そしてストリップを目視的に観察した。残存している各ストリップの量の近似的評価を行い、しかしてこれらの評価は表1に示されている。
【0318】
【表1】

【0319】
日数9において、被覆ストリップをバイアルから取り出し、そして計量した。それらは、それらの当初の質量の平均して63.0%を保持していた。
【0320】
実施例20
疎水性MD−トリアムシノロンインプラントの製造
様々な疎水性マルトデキストリン(MD)ポリマーとトリアムシノロンアセトニド(TA)とを様々な比率にて一緒にすることにより、トリアムシノロンアセトニド放出性医療インプラントを製造した。いくつかの場合において、親水性ポリマーを疎水性MD及びTAに添加した。表2に示されたとおりの量の疎水性MD、TA及び親水性ポリマーを用いて、インプラントを製造した。
【0321】
押出機(DACATMミクロ配合機,カリフォルニア州サンタバーバラのDACA Instruments)中で、諸成分を加熱しそして混合した。個々の製造についての総回分規模は、4グラムであった。たとえば、インプラント試料Aの製品について、2gのMD−Hex(DS2.5)約3kDaを2gのトリアムシノロンアセトニド(Pharmacia & Upjohn Company)と混合した。諸成分を乾燥(粉末又はペレット)形態で加熱押出機の供給セクションに供給した。MD−But 2.0を含有する製品について、押出機をおおよそ150℃の温度に加熱した。MD−But 2.0を含有する製品について、押出機をおおよそ150℃の温度に加熱した。MD−Hex 2.5、MD−Hep 2.5を含有する製品について又は製品が親水性ポリマーを含む場合、押出機をおおよそ110℃の温度に加熱した。押出機は諸成分を加熱し、混合しそして再循環させて、一様な混合物を生じさせた。ポリマー成分を溶融しそして一緒にブレンドし、そしてこのポリマー溶融物中にTAを一様にブレンドした。加工温度はPVP含有混合物中のPVPを溶融しなかった。諸成分を平均して約6分間混合した後に押し出した。溶媒は添加されず、従ってTAの当初の多形形態は押出過程中維持された。溶融しそして混合した後、この混合物をダイから押し出し、そして約250μmから約650μmの範囲の直径を備えた円柱形状に伸長した。約100μmから1000μmの範囲のような他の直径のものも製造され得る。冷却しそして固化すると、生じた円柱体を所望長さ典型的には3〜6mmに切断して、インプラントが作られた。
【0322】
【表2】

【0323】
実施例21
インプラントからのトリアムシノロンアセトニドの放出
37℃における軌道振とうプラットフォーム上の掻き混ぜ状態の4mLのリン酸塩緩衝食塩水(pH7.4)中にインプラントを置くことにより、TAの放出を調べた。1hr、3hr、6hr、3日、7日、14日、21日、28日、35日、42日、49日、56日、63日、76日、90日、104日、119日、134日、148日の近似時点において、PBSを除去しそして新たなPBSと取り替えた(図1A及びB、2A及びB並びに3)。図4A及びBに示されたデータについては、21日後の測定を2週間ごとに行った。次いで、除去されたPBS中の活性剤の濃度をUV−VIS分光法により定量した。TA放出の結果は、図1〜4に示されている。
【0324】
実施例22
豚モデルにおけるラパマイシン溶出性ステント
ステントの製造
ステンレス鋼ステントを、被覆のために次のとおり準備した。脱イオン水中のENPREP−160SE(カタログ番号2108−100,コネティカット州ウェストヘーブンのEnthone-OMI, Inc.)の6%(容量による)溶液中に1時間浸漬することにより、ステントをきれいにした。浸漬後、次いでこれらの部品を脱イオン水で数回すすいだ。ラパマイシンを備えた及びラパマイシンを備えない実施例10からのMD−カプロエート(Hex 2.5,MDロット2795−159)で、ステントを被覆した。ポリマーは、使用前室温に貯蔵された。
【0325】
ポリマーの新たに調製した原液とラパマイシンの新たに調製した原液とを混合することにより、THF中の被覆用溶液を調製した。ポリマーのみの被覆用溶液は、50mg/mLのポリマーを含有していた。ポリマー/薬物の被覆用溶液は50mg/mLの総固体充填量を含有し、そしてそのうちの50wt%はラパマイシンであった(すなわち、25mg/mLのポリマー+25mg/mLのラパマイシン)。被覆のために用いる前に、すべての被覆用溶液を10μmフィルターに通した。
【0326】
クラス10,000のクリーンルームにおいて、超音速吹付けシステム(ゲン(Gen)III)でもって被覆を遂行した。被覆部品を室温にてN2の流れ下で夜通し乾燥した。各溶液は良好に霧化し、そしてステント上に受容され得る被膜を生成した。
【0327】
被覆ステント(50%ラパマイシン)をバルーンカテーテル上にクリンプした。ステントを周囲の温度及び湿度にてクリンプした。クリンピング中、スリーブは存在しなかった。ステント被膜は、デルリンクリンピングヘッドと直接的に接触していた。クリンピング過程中、支柱対支柱の接触を防ぐように努力した。クリンピング後、ステント/カテーテル組立体を包装し、ラベルを貼り付け、そしてEtOによって滅菌した。滅菌後、この組立体を室温にて真空下に夜通し置いて残留EtOを除去した。
【0328】
クリンピングされたステントをPBS中に37℃にて5分間浸した。次いで、バルーンを9atmの圧力まで膨らませ、5秒間保持し、そして圧力を解放した。カテーテル及び拡張ステントをPBSから取り出し、そして脱イオン水ですすいだ。バルーンから容易には離れなかったステントをピンセットでもって取り去った。ステントを窒素の流れ下で室温にて乾燥した。被膜の機械的性質を査定するために、乾燥ステントを光学顕微鏡法で調べ、またSEMで画像化した。バルーン上に被膜材料が残存しているかどうかを決定するために、バルーンを光学顕微鏡法で調べた。一般的に、ラパマイシンを備えた及びラパマイシンを備えない被膜は、良好な機械的性質を示した。
【0329】
ガラス器内での薬物放出及び被膜の調査
37℃において、2種の異なる溶液(PBS、及び生理的濃度のアミラーゼが補充されたPBS)中で溶出測定を行った。各ステントを三角ガラスバイアル中に置き、そしてこれに4mLの適切な溶液を添加した。これらのバイアルを溶出中振とう型恒温器中に置いた。決定された間隔において、溶出液をバイアルから完全に取り出し、そしてラムマイシン含有率について試料採取した。次いで、4mLの新たな溶液をバイアル中に入れた。ロボットシステムにより、試料の採集及び溶液の取替えが援助された。薬物含有率についての試料を96ウェル型UVプレート中に入れ、そしてラパマイシンを279nmにおけるUV吸光度により検出した。各ポリマー被膜を三重反復にて試験した。被膜分解速度を決定するために、ステント重量を同時に量った。
【0330】
ラパマイシンは、40日にわたって一次放出速度でステントから溶出した。被膜のおおよそ50%が、40日後にステント上に残存していた。薬物を含有するステント被膜及び酵素溶液中に置かれた被覆ステントは、薬物を備えないもの及び緩衝液のみ中に置かれたものよりも速い速度にて被膜重量を減らした。
【0331】
豚系
この調査の目的は、豚の冠状及び末梢動脈モデルを用いて、ラパマイシンを備えた及びラパマイシンを備えないMD−カプロエート分解性ポリマーの生物学的影響を査定することであった。血管造影的、組織形態計測的及び組織病理学的変数を、前もって決定された時間間隔において評価した。
【0332】
過度の新生内膜成長が、経皮経管的冠状動脈形成(PTCA)手技の後発性失敗の主原因と同定されている。潜在的抗新生物剤であるラパマイシンは、微小管の組立を促進して及びチューブリン解体過程を阻止して細胞増殖を防ぐ。冠状動脈用ステント(薬物溶出性ステント)から送達されたラパマイシンは、動物モデル及び人間の両方において行われた調査において新生内膜成長を阻止すると示されている。ステント上に被覆された耐久性の薬物溶出性ポリマーの長期効果について、関心が示されている。
【0333】
雄及び雌の両方の家畜のヨークシャー交雑種豚をこの調査において用いた。動物はすべて、順化され、断食され、身体検査を受け、そしてステントの植込みに先だって手技前の投薬を受けた。
【0334】
実験計画
動物は、Schwartz等,(2002),Circulation,218:669〜696に記載された豚のステント外傷モデルを受けた。予備的血管造影図に従って、動脈の直径及び長さの血管造影的査定に基づいて、3つの主要な冠状動脈(右冠状動脈(RCA)、左前下行(LAD)又は左回旋(LCX))の各々にステントを植え込んだ(脈管当たり1つのステント)。植込み時において、目視評価及びオンラインQCAに基づいて、脈管切開を2.6mmから3.4mmの基準サイズに限定した。
【0335】
ステントの直径及び長さを収容するべき脈管の能力に基づいて、動脈区域を選択した。包装材に含められている場合のバルーンコンプライアンス曲線に従って、1.05〜1.20:1の範囲でもって1.10:1の目標のステント/脈管比率を達成するように、植込み圧を変動させた。
【0336】
植込みに先だって、動物を特定のコホート(1ヶ月又は3ヶ月)に指名した。前もって決定された時点において、ステントを取り出した。
【0337】
動物の準備が完了した後、経皮手法を用いて大腿動脈にアクセスした。7F誘導針の動脈用シースを動脈中に置いてそして前進させた。ベースラインのACTを記録した後、初期ボーラスのヘパリン(100IU/kg IV)を与えた。≧250秒のACTを維持するために、追加投与量のヘパリンを投与した。与えられた投与量は、ACTレベルに基づいた。ACTをおおよそ15〜30分ごとに試験した。
【0338】
インプラント用手順
蛍光透視法による誘導下で、6F又は適切なガイドカテーテルをシースを通じて挿入しそして適切な場所に前進させた。ガイドカテーテルの配置後、展開部位の適正な場所を同定するために、諸脈管の血管造影画像を造影剤でもって得た。植込みのための適切な脈管サイズを決定するために、定量的血管造影法を遂行した。
【0339】
冠状動脈の3つの主要な枝(RCA、LAD及びLCX)の各々にステントを植え込んだ。実験グループ及び対照をこれらの異なる脈管に均一に分配するように努力した。
【0340】
動脈の解剖学的構造の視覚化後、2.6mmから3.4mmの中区域直径の範囲の標的区域を選び、そしてこの選ばれた動脈中に0.014″ガイドワイヤーを挿入した。次いで、ステントの配置のための基準直径を正確に与えるために、QCAを遂行した。
【0341】
バルーンポートに真空を適用することにより、各ステント送達システムを準備した。真空を解除することにより、造影/流し込み溶液(50:50)を導入した。ステントを備えたバルーンカテーテルをガイドカテーテルを通じて且つガイドワイヤーによって展開部位まで前進させることにより、ステントを適切な動脈中に導入した。バルーンを定常速度にて、1.05〜1.20:1の範囲でもって1.10:1のバルーン:動脈の比率の目標を達成するのに十分な圧力まで膨らませ、そしておおよそ20秒間保持した。完全膨張中バルーンでの閉塞を示すために、造影溶液の注入を遂行した。目標のバルーン:動脈の比率がおおよそ20秒間達成された後、バルーンをしぼませるために、真空を膨張装置に適用した。バルーンの完全にしぼんだ状態を蛍光透視法でもって確認した。次いで、送達システムをゆっくり取り出した。
【0342】
外殖片用手順
指定終点において、動物を計量し、鎮静させ、そして麻酔した。動脈用シースを大腿脈管中に導入し、そしてヘパリンを先に記載されたようにして投与した。ガイドカテーテルを置き、そして蛍光透視法による誘導下で冠状動脈中に前進させた。適切な冠状動脈口中へのガイドカテーテルの配置後、ステントを備えた部位を評価するために、脈管の血管造影画像を撮った。最終の血管造影手順の終わりに、動物を安楽死させた。
【0343】
肉眼査定後、熟練技術者が、全心臓の切除を遂行した。ステントが表面の特性決定のために外殖される場合、灌流固定に先だって、植込み冠状動脈床の切開並びに引き続いてステント及び新生内膜の取出しを遂行した。新生内膜を計量し、次いで凍結し、そして−70℃に保持した。心臓を流体が透明になるまで食塩水又は乳酸化リンゲル液で灌流し、そして組織において色変化が起こるまで10%緩衝化ホルマリンで加圧灌流固定した。完全な組織病理学的分析のために、全心臓及び追加的組織を研究病理学者に送った。一群のステントを表面分析のために回収した。
【0344】
28日の外殖片の組織病理学的分析
薬物を備えない被覆ステント
ステントを動脈壁に当たるように十分に拡張させ、そして管腔は血栓形成、動脈瘤又は異常付着の徴候がなく、開存性である。新生内膜成長は、主として、平滑筋細胞及び管腔近くの組織化層を備えたプロテオグリカン/コラーゲンマトリックスから成る。ステントの大多数において、動脈壁への傷害は、大きいマクロファージ湿潤と共に内側壁中に貫入する5つの支柱を示すところのCV17805(896,LCx)からの中央セクション及び大きい肉芽腫を示すところのCV17802(動物番号887)からのLCxステント以外は最小である。平滑筋細胞の組織化層が管腔に向かってより多く見られ、一方平滑筋細胞のより多くの組織崩壊クラスターが支柱近くに見られる。ステント支柱の周りのフィブリン蓄積は、一般的に存在しない。ステント支柱の周りの巨細胞は、最小である。管腔表面の再内皮化は、非常にまばらな付着性炎症細胞があるがほぼ完全である。ステント支柱の周りの炎症は、CV17802(887,LCx)からのすべてのセクションを含むところの肉芽腫を有するステント(好酸球、マクロファージ及び巨細胞から成るすべてのセクションにおいて重度の肉芽腫性反応を示した)以外は存在しないか又は最小であった。ステント支柱の周りの出血は、一般的に軽度である。ステントを備えない近位及び遠位区域は、一般的に、内側壁における蓄積プロテオグリカンマトリックス(モヴァット(Movat)において帯青緑色染色)及び軽度の新生内膜成長により証明されたところのバルーンの過度伸張による傷害を示した。
【0345】
薬物を備えた被覆ステント
ステントを動脈壁に当たるように十分に拡張させ、そして管腔は血栓形成、動脈瘤又は異常付着の徴候がなく、開存性である。新生内膜成長は軽度で、主として、平滑筋細胞及び管腔近くの組織化層を備えたプロテオグリカン/コラーゲンマトリックスから成る。動脈壁への傷害は、最小である。平滑筋細胞の組織化層が管腔に向かってより多く見られ、一方平滑筋細胞のより多くの組織崩壊クラスターが支柱近くに見られる。ステント支柱の周りのフィブリン蓄積は、一般的に、軽度から中度である(少数の支柱においては大きかった)。ステント支柱近くに、ところどころの巨細胞がある。管腔表面の再内皮化は、非常にまばらな付着性炎症細胞があるがほぼ完全である。ステント支柱の周りの炎症は、一般的に最小であった。ステント支柱の周りの出血は存在するが、一般的に軽度である。ステントを備えない近位及び遠位区域は、一般的に、内側壁における蓄積プロテオグリカンマトリックス(モヴァット(Movat)において帯青緑色染色)及び軽度の新生内膜成長により証明されたところのバルーンの過度伸張による傷害を示した。
【0346】
被覆されていないステント
ステントを動脈壁に当たるように十分に拡張させ、そして管腔は血栓形成、動脈瘤又は異常付着の徴候がなく、開存性である。支柱は、一般的に、管腔に向かっての平滑筋細胞の組織化層から成る軽度から中度の新生内膜成長により覆われ、一方プロテオグリカンマトリックスと一緒に平滑筋細胞のより多くの組織崩壊クラスターが支柱近くに見られる。巨細胞湿潤は最小であると共に、ステント支柱の周りのフィブリン蓄積はほとんどなく、そして総合炎症は最小である。管腔表面の再内皮化は、まばらな付着性炎症細胞があるがほぼ完全である。ステントを備えない近位及び遠位区域は、一般的に、内側壁における蓄積プロテオグリカンマトリックス(帯青緑色染色)及び軽度の新生内膜成長により証明されたところのバルーンの過度伸張による傷害を示した。
【0347】
外殖ステントの表面分析
SEMを用いて、外殖ステントを調査した。被覆外殖ステントは、ステント表面のおおよそ30〜50%を覆う付着性ポリマーを示した。ラパマイシンを備えた被覆ステントは、一般的に、ラパマイシンを備えない被覆ステントよりも多いポリマー分解を示した。
【図面の簡単な説明】
【0348】
【図1A】図1Aは、ガラス器内で120日及び150日の溶出期間中に測定された場合の疎水性マルトデキストリンをベースとしたペレット及び生体適合性親水性ポリマー(PEG又はPVP)添加剤を備えた疎水性マルトデキストリンをベースとしたペレットから放出されたトリアムシノロンアセトニドの累積量(μg)を図示するグラフである。
【図1B】図1Bは、図1Aのグラフの一部であり、ガラス器内で150日の溶出期間中に測定された場合の比較的遅い放出性の疎水性マルトデキストリンをベースとしたペレット及びPVP添加剤を備えた疎水性マルトデキストリンをベースとしたペレットから放出されたトリアムシノロンアセトニドの累積量(μg)をより詳細に示す。
【図2A】図2Aは、ガラス器内で120日及び150日の溶出期間中に測定された場合の(図1Aの)疎水性マルトデキストリンをベースとしたペレット及び生体適合性親水性ポリマー(PEG又はPVP)添加剤を備えた疎水性マルトデキストリンをベースとしたペレットから放出されたトリアムシノロンアセトニドの累積量(ペレット当たりのトリアムシノロンの全量に対する%に基づく)を図示するグラフである。
【図2B】図2Bは、図2Aのグラフの一部であり、ガラス器内で150日の溶出期間中に測定された場合の比較的遅い溶出性の疎水性マルトデキストリンをベースとしたペレット及びPVP添加剤を備えた疎水性マルトデキストリンをベースとしたペレットから放出されたトリアムシノロンアセトニドの累積量(ペレット当たりのトリアムシノロンの全量に対する%に基づく)をより詳細に示す。
【図3】図3は、ガラス器内で120日及び150日の溶出期間中に測定された場合の(図2Aの)疎水性マルトデキストリンをベースとしたペレット及び生体適合性親水性ポリマー(PEG又はPVP)添加剤を備えた疎水性マルトデキストリンをベースとしたペレットからのトリアムシノロンアセトニドの放出速度(μg/日)を図示するグラフである。
【図4A】図4Aは、ガラス器内で210日及び240日の溶出期間中に測定された場合の疎水性マルトデキストリンをベースとしたペレットからのトリアムシノロンアセトニドの累積放出量(μg)を図示するグラフである。
【図4B】図4Bは、ガラス器内で210日及び240日の溶出期間中に測定された場合の疎水性マルトデキストリンをベースとしたペレットからのトリアムシノロンアセトニドの累積放出量(ペレット当たりのトリアムシノロンの全量に対する%に基づく)を図示するグラフである。
【図5】図5は、様々な疎水性マルトデキストリンをベースとしたペレットのX線回折(XRD)スペクトルのグラフであり、ペレット中のトリアムシノロンアセトニドの非多形形態及び多形形態に対応するピークを示す。
【図6】図6は、リドカイン及び疎水性ポリサッカライドで被覆されたステントの溶出プロフィールを図示するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性の生物活性剤放出性被膜を含む植込み可能医療物品であって、該被膜は天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体のマトリックス及び該マトリックス内の生物活性剤を含み、しかも該被膜は対象者における該医療物品の配置後に生物活性剤を放出することが可能である物品。
【請求項2】
生分解性の生物活性剤放出性医療インプラントであって、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体のマトリックス及び該マトリックス内の生物活性剤を含み、しかも該生物活性剤は対象者における該インプラントの配置後に該インプラントから放出されることが可能であるインプラント。
【請求項3】
生物活性剤を対象者に送達する方法であって、次の工程すなわち
生分解性の生物活性剤放出性被膜を含む植込み可能医療物品を対象者における標的部位に植え込み、しかも該被膜は天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体のマトリックス及び該マトリックス内の生物活性剤を含み、そして
植え込む工程後に該生物活性剤を該対象者中の該被膜から放出されるままにしておく
工程を含む方法。
【請求項4】
生物活性剤を対象者に送達する方法であって、次の工程すなわち
生分解性医療インプラントを対象者における標的部位に植え込み、しかも該インプラントは天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体のマトリックス及び該マトリックス内の生物活性剤を含み、そして
植え込む工程後に該生物活性剤を該インプラントから該対象者に放出されるままにしておく
工程を含む方法。
【請求項5】
医療物品上において生分解性の生物活性剤放出性被膜を作製する方法であって、次の工程すなわち
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体及び生物活性剤を含む被覆用組成物を調製し、そして
該被覆用組成物を医療物品の表面上に施用して被膜を作る
工程を含み、しかも該生物活性剤は対象者における該医療物品の植込み後に該被膜から放出されることが可能である方法。
【請求項6】
生分解性の生物活性剤放出性医療インプラントを製造する方法であって、次の工程すなわち
生物活性剤を入手し、
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体及び該生物活性剤を含む組成物であってしかも溶媒を含まない組成物を調製し、
該組成物を加熱して液化組成物をもたらし、そして
該液化組成物を医療インプラントの形状に成形する
工程を含む方法。
【請求項7】
生分解性植込み可能医療器具であって、天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体のマトリックスを含み、しかも該器具は対象者における該器具の配置後に医学的病態を処置するために有用である構造を有する器具。
【請求項8】
疎水性誘導体が、100,000Da又はそれ以下の平均分子量を有する、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項9】
疎水性誘導体が、ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖を含む、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項10】
疎水性誘導体が、35℃又はそれ以上のTgを有する、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項11】
疎水性誘導体が、40℃から60℃の範囲のTgを有する、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項12】
疎水性誘導体が、40℃から90℃の範囲のTgを有する、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項13】
疎水性誘導体が、35wt%から90wt%の範囲の量にて被膜、インプラント又は器具中に存在する、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項14】
疎水性誘導体が、35wt%から60wt%の範囲の量にて被膜、インプラント又は器具中に存在する、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項15】
生物活性剤が、10wt%から65wt%の範囲の量にて被膜、インプラント又は器具中に存在する、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項16】
生物活性剤が、目の病態を処置するために有用な化合物を含む、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項17】
生物活性剤が、ただ一つの多形形態にて存在する、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項18】
被膜、インプラント又は器具が、更に、生体適合性親水性ポリマーを含む、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項19】
被膜、インプラント又は器具が、更に、ポリ(エチレングリコール)、親水性ポリサッカライド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、低分子量メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)から成る群から成る群から選択された生体適合性親水性ポリマーを含む、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項20】
被膜、インプラント又は器具が、更に、1wt%から20wt%の範囲の量にて被膜、インプラント又は器具中に存在する生体適合性親水性ポリマーを含む、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項21】
被膜が、植込み可能な眼用器具の表面上に作られる、請求項1に記載の物品又は請求項3若しくは5に記載の方法。
【請求項22】
被膜が、植込み可能な脈管内用器具の表面上に作られる、請求項1に記載の物品又は請求項3若しくは5に記載の方法。
【請求項23】
生物活性剤が、加水分解可能なエステル結合によって疎水性誘導体のポリサッカライド主鎖にカップリングされる、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項24】
生物活性剤が、10ng/日から10μg/日の範囲の平均速度にて放出される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項25】
生物活性剤が、500ng/日から5μg/日の範囲の平均速度にて放出される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項26】
生物活性剤の50%が、100日の期間後に放出される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項27】
物品又はインプラントが生分解性親水性ポリマーを含み、そして生物活性剤の50%が10〜70日の範囲の時点において物品又はインプラントから放出される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項28】
植え込む工程が、物品又はインプラントを目の一部に送達することを含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項29】
生物活性剤を第1多形形態にて入手し、そして方法の諸工程において、第1多形形態から第1多形形態とは異なっている多形形態への生物活性剤の変換は実質的にないか又は全くない、請求項6に記載の方法。
【請求項30】
インプラント、物品又は器具が、ステントの形態にある、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具又は請求項3、4、5若しくは6に記載の方法。
【請求項31】
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体であって、
非環状ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖、及び
該ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖から懸垂した複数個の基であり、しかも2個又はそれ以上の炭素原子を含む炭化水素セグメントを含む基、
を含み、しかも該疎水性誘導体は100,000Da又はそれ以下の分子量を有する疎水性誘導体。
【請求項32】
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体であって、
非環状ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖、及び
該ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖から懸垂した複数個の基
を含み、しかも該疎水性誘導体は100,000Da又はそれ以下の分子量及び35℃又はそれ以上のTgを有する疎水性誘導体。
【請求項33】
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体であって、
非環状ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖を含む親水性部分、及び
該ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖から懸垂した複数個の基を含む疎水性部分
を含み、該親水性部分と該疎水性部分の間の重量比は5:1から1:1.25の範囲にあり、しかも該疎水性誘導体は100,000Da又はそれ以下の分子量を有する疎水性誘導体。
【請求項34】
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体であって、
非環状ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖、及び
該ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖から懸垂した複数個の基、これらの基は炭化水素セグメントを含み、しかもこれらの基の少なくとも一部は該ポリ−α(1→4)グルコピラノース主鎖から開裂可能である生物活性剤を含み
を含み、しかも該疎水性誘導体は100,000Da又はそれ以下の分子量を有する疎水性誘導体。
【請求項35】
天然生分解性ポリサッカライドの疎水性誘導体であって、
非還元性ジサッカライドを含むポリマー主鎖、及び
該ポリマー主鎖から懸垂した複数個の基
を含み、しかも該疎水性誘導体は100,000Da又はそれ以下の分子量を有する疎水性誘導体。
【請求項36】
疎水性誘導体が、50,000Da又はそれ以下の分子量を有する、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項37】
疎水性誘導体が、25,000Da又はそれ以下の分子量を有する、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項38】
疎水性誘導体が、2000Daから20,000Daの範囲の分子量を有する、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項39】
疎水性誘導体が、4000Daから10,000Daの範囲の分子量を有する、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項40】
疎水性誘導体が複数個のペンダント基を含み、そしてこれらのペンダント基は線状、分枝状又は環状C4〜C18基から成る群から選択された炭化水素セグメントを含む、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項41】
疎水性誘導体が複数個のペンダント基を含み、そしてこれらのペンダント基は線状、分枝状又は環状C4〜C10基から成る群から選択された炭化水素セグメントを含む、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項42】
2〜3の範囲の置換度を与えるところのポリマー主鎖から懸垂した複数個の基を含む、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項43】
疎水性誘導体が複数個のペンダント基を含み、そしてこれらのペンダント基は線状、分枝状又は環状C5〜C7基から成る群から選択された炭化水素セグメントを含む、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項44】
疎水性誘導体が複数個のペンダント基を含み、そしてこれらのペンダント基は分枝状C4〜C8アルキル基から成る群から選択された炭化水素セグメントを含む、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項45】
ポリマー主鎖から懸垂した複数個の基が、0.5〜1.5の範囲の置換度を与える、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項46】
疎水性誘導体が複数個のペンダント基を含み、そしてこれらのペンダント基は環状C6基の群からの炭化水素セグメントを含む、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項47】
加水分解可能な共有結合によってポリマー主鎖から懸垂した複数個の基を含む、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項48】
加水分解可能なエステル結合によってポリマー主鎖から懸垂した複数個の基を含む、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項49】
疎水性誘導体が親水性部分及び疎水性部分を含み、そして該親水性部分と該疎水性部分の間の重量比は2:1から1:1.25の範囲にある、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項50】
疎水性誘導体が親水性部分及び疎水性部分を含み、そして該親水性部分と該疎水性部分の間の重量比は1:0.75から1:1.25の範囲にある、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項51】
疎水性誘導体が親水性部分及び疎水性部分を含み、そして該親水性部分と該疎水性部分の間の重量比は1:1から1:1.25の範囲にある、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項7に記載の器具、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項31、32、33、34若しくは35に記載の疎水性誘導体。
【請求項52】
生物活性剤が抗炎症剤である、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項34に記載の誘導体。
【請求項53】
生物活性剤が抗増殖剤である、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項34に記載の誘導体。
【請求項54】
生物活性剤がステロイドである、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項34に記載の誘導体。
【請求項55】
生物活性剤がカルボキシレート基を含む、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項34に記載の誘導体。
【請求項56】
ポリマー主鎖が、ポリトレハロース、ポリスクロース及びポリアルジトールから成る群から選択される、請求項1に記載の物品、請求項2に記載のインプラント、請求項3、4、5若しくは6に記載の方法又は請求項35に記載の誘導体。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−529967(P2009−529967A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500465(P2009−500465)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/006469
【国際公開番号】WO2007/109069
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】