太陽光反射構造、及び、その構造を用いる設備
【課題】大掛かりなシステムを要しない簡単な構造によって出射光の向きをコントロールできるようにして、設置の自由度を高めることができる太陽光反射構造及びその構造を用いる設備を提供する。
【解決手段】地上に到達した太陽光を反射する反射材4に、入射光をその入射方向と同方向に反射させる再帰反射構造を設ける。
【解決手段】地上に到達した太陽光を反射する反射材4に、入射光をその入射方向と同方向に反射させる再帰反射構造を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地球に到達した太陽光をそのまま宇宙に反射させて地球規模での温暖化や都市部のヒートアイランド現象を抑制する太陽光反射構造、及び、その構造を用いる設備に関する。特に、近隣建物への光害防止を図ることを目的とした太陽光反射構造、及び、その構造を用いる設備に関する。
【背景技術】
【0002】
地球に到達した太陽光のエネルギーは地表面や建造物等に当たってそのまま熱となって吸収される割合が高いことが知られている。この太陽光エネルギーの地上での吸収は地球規模での温暖化や都市部でのヒートアイランド現象を増長するものと考えられる。
このため、ビル等の建造物や地表面に太陽光を反射する反射板を設置したり、建造物の表皮に高反射塗料を塗布することによって、地上での太陽光エネルギーの吸収を抑制する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−189161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この従来の技術の場合、太陽光の入射角度によって反射光の出射方向が変化するため、出射光が周囲の建物等に当たらないようにする考慮が必要となり、そのため、反射板等の設置スペースが大きく制限されてしまう。
【0004】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされ、大掛かりなシステムを要しない簡単な構造によって出射光の向きをコントロールできるようにして、設置の自由度を高めることができる太陽光反射構造、及び、その構造を用いる設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、地上に到達した太陽光を反射する反射機能部を備えた地球温暖化及びヒートアイランド抑制用の太陽光反射構造において、前記反射機能部に、入射光をその入射方向に反射させる再帰反射構造を設けるようにした。
これにより、太陽から照射されて反射機能部に入射した光は、再帰反射する場合には、その入射方向と同方向に反射する。このため、太陽光が直接入射する環境下であれば、出射光が周囲の建物等に当たるき低減される。
【0006】
前記再帰反射構造は、請求項2に記載のように入射光がその入射方向と同方向に反射するように反射面を組み合わせて構成するようにしても良い。
【0007】
また、再帰反射構造は、例えば、請求項3に記載のように隣接するもの同士が相互に直交する複数の反射面から成る反射面ユニットによって構成することが可能である。
【0008】
反射機能部の形状と設置角度は、請求項4に記載のように非再帰反射光の指向確率の高い出射領域が、天頂付近に向くように設定することが望ましい。
【0009】
また、反射機能部の形状と設置角度は、請求項5に記載のように非再帰反射光の指向確率の高い出射領域が、地上での利用領域に向くように設定するようにしても良い。
【0010】
この太陽光反射構造は、請求項6に記載のように建造物に取り付けるようにしても良い。
【0011】
また、実際に設置するに当たっては、請求項7に記載のように反射機能部の前面に透明被覆層を設けるようにしても良い。
この場合、再帰反射構造を持つ反射機能部の前面は透明被覆層で覆われているため、反射機能部への直接的な汚れの付着は透明被覆層によって防止される。
【0012】
また、建造物の外部(例えば屋上や外壁など)に設置するに当たっては、請求項8に記載のように前記反射機能部の背部に断熱層を設け、この断熱層を介して建造物の外部に取り付けることが望ましい。
この場合、反射機能部と断熱層が夏場における建造物外部からの熱の影響を抑制するとともに、冬場における室内からの暖房熱の放散を抑制するようになる。
【0013】
また、請求項9に記載のように前記反射機能部に、光触媒層と排水機能部を設けるようにしても良い。
この場合、光触媒層は太陽光の紫外線を受けることによって汚れを自然に分解する。また、光触媒層で分解された汚れは、さらに光触媒層の親水性のために雨水等によって洗い流され、排水機能部を通して外部に排出される。
【0014】
上記の太陽光反射構造は、請求項10に記載のように種々の設備に適用可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、反射機能部で太陽光の入射方向と同方向に光を反射するため、大掛かりなシステムを必要としない極めて簡単な構造でありながら、出射光の向きを確実にコントロールして、反射光が周囲の建造物に当たる等の不具合を低減しつつ地球温暖化の抑制とヒートアイランド現象の抑制を図ることができる。したがって、建物等に囲まれた狭いスペースであっても問題なく設置できるため、従来のものに比較して設置の自由度が大幅に向上する。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、反射機能部の形状と設置角度の適正な設定により、非再帰反射光の指向確率の高い出射領域が、周囲の建物等に影響を及ぼさない天頂付近に向けられるため、再帰反射光に非再帰反射光の有効分を加えた多くの反射光を、周囲の建物等に光害を及ぼさずに宇宙に返すことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、反射機能部の形状と設置角度の適正な設定により、非再帰反射光の指向確率の高い出射領域が、地上での利用領域に向けられるため、非再帰反射光の多くを地上で有効利用することができる。
【0018】
また、請求項7に記載の発明によれば、反射機能部の前面に設けた透明被覆層によって反射機能部への汚れの付着を無くし、その透明被覆層に付着した汚れを雨水等で洗い流すことによって反射機能部の前面を汚れの少ない状態に維持することができるため、メンテナンス性が向上する。
【0019】
さらに、請求項8に記載の発明によれば、反射機能部による太陽光の遮断作用と、反射機能部の背部の断熱層の作用によって、冷暖房のためのエネルギー消費を抑えたまま室内環境を快適に保つことができる。そして、この請求項7に記載の発明においては、エネルギー消費を抑えることができることから、CO2の発生量を削減する効果があり地球温暖化をさらに図ることができる。
【0020】
また、請求項9に記載の発明によれば、光触媒による汚れの分解作用と親水作用により、反射機能部に付着した汚れを雨水等によって自然に洗い流し、排水機能部を通して反射機能部の外部に排出することができるため、頻繁なメンテナンスを要することなく、所期の性能を長期に亙って維持することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、共通する部分には共通符号を付し、重複する部分は一部説明を省略するものとする。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、本発明にかかる太陽光反射構造を構成する反射材4(反射面ユニット)の反射面6a,6b,6cを示す平面図(A)と、この反射面6a,6b,6cが連続する様子を示す平面図(B)を併せて記載した図であり、図2は、反射材4の断面図である。
【0023】
反射機能部を成す反射材4は、鏡やアルミニウム板等の高反射性の材料から成り、図1(A)に示すように相互に直交する三角形状の三つの反射面6a,6b,6cが組み合わされて再帰反射構造の基本要素が構成されている。ただし、この反射面6a,6b,6cは、高反射性の材料に直接形成するばかりでなく、高反射性でない部材に相互に直交する三角形状の三面の壁を形成し、その壁に高反射性の材料を蒸着、若しくは塗布することも可能である。反射材4は、上記の再帰反射構造を成す反射面6a,6b,6cが図1(B),図2に示すように規則的に並んで設けられている。
【0024】
この反射材4の反射面6a,6b,6cは、例えば、図2に示すように一つの反射面6a(6b,6c)に入射した太陽光aが、その反射面6a(6b,6c)と他の一つの反射面6b(6c,6a)に反射することによって反射光bとして太陽光aの入射方向と同方向に出射される。
【0025】
[第2の実施形態]
図3は、本発明にかかる太陽光反射構造を構成する反射材104の反射面106a,106b,106c,106dを示す平面図(A)と、この反射面106a,106b,106c,106dが連続する様子を示す平面図(B)を併せて記載した図である。
この第2の実施形態の再帰反射構造は、互いに直交する二つの方形状の反射面106a,106bと、これらの反射面106a,106bに直交する二つの三角形状の反射面106c,106dによって構成されている。
【0026】
ここでは、反射面106a,106bと直交する反射面106a,106bを三角形状に形成しているが、設置場所の周囲の環境等に応じて残余の反射面106c,106dを凸型や凹型の四角形状に形成することも可能である。勿論、この残余の反射面106c,106dの形状はここで記載したものに限定されるものでなく、円弧形状その他の形状であっても良い。
【0027】
ここまで第1,第2の実施形態として説明した反射材4,104は、例えば、図4に示すように(同図では反射板は符号4を付してある。)ビル2の屋上等に設置することができる。
【0028】
以上のように本発明にかかる太陽光反射構造を採用した反射材4,104は、太陽光を再帰反射するように反射面6a,6b,6c(106a,106b,106c,106d)を組み合わせて構成されているため、太陽光が再帰反射した場合には、周囲の建物に反射光が当たるような不具合を招くことなく、太陽光を大気圏外に向けて確実に反射させることができる。このため、周囲に多くビルが立ち並ぶ都市型の建造物の環境下においても容易に、かつ高い自由度をもって設置することができる。しかも、反射材4,104は再帰反射構造を設けた極めて簡単な構造によって反射光を正確にコントロールすることができるため、大掛かりなシステムを必要とせず、設置やメンテナンスのためのコストも低減することができる。
【0029】
ところで、本発明にかかる太陽光反射構造を採用した反射材4,104は、ビルや地面等に実際に固定設置した場合、季節や時間の変化による太陽の位置変化によって反射材4,104上で実際に反射する反射面や、入射角度、反射回数等が常に変化するため、すべての入射光を完全なかたちで再帰反射させることは不可能であるというのが実情である。しかし、本発明にかかる太陽光反射構造を用いた反射材4,104を固定設置した場合、非再帰反射の反射光であっても、有効な反射光成分を多く得ることができる。以下、このことについて詳述する。
【0030】
図5(A)に示すように、都市部などにあっても天頂付近の空は建物a等の遮蔽物が無い場合が多い。このため、非再帰反射であっても、天頂の建物aが存在しない天空領域では周囲の建物aに対する反射光の害のない有効な反射と言うことができる。
【0031】
したがって、本発明にかかる太陽光反射構造を用いた反射材4,104を固定設置した場合には、完全な再帰反射光だけでなく、有効な非再帰反射光(天頂のある角度領域に発される反射光)も含めて考えれば、充分に大きな効果を得ることができる。
非再帰反射光の地上座標での出射角度は、季節や時間によって変化する太陽の位置と、反射材4,104の形状や設置角度によって変化するが、反射材4,104の形状や設置角度の適正な設定により、非再帰反射光の指向確率の高い出射領域(角度領域)が天頂付近に向くようにすることが望ましい。このように反射材4,104の形状や設置角度を設定した場合、近隣建物への反射光の影響を減らすだけでなく、より多くの反射光を宇宙に返すことが可能となる。
【0032】
よって、この反射材4,104を採用することにより、設置のためのコスト負担を大きくすることなく、地球温暖化の抑制と都市部におけるヒートアイランド現象の抑制を図ることができる。
【0033】
なお、ここでは反射材4,104をビル2の屋上に設置する場合を例に説明したが、反射材4,104は地表面や壁面に設置することも可能である。
【0034】
また、非再帰反射光の指向確率の高い出射領域が天頂付近に向くように反射材4,104の形状や設置角度を設定することにより、再帰反射光に非再帰反射光を加えた多くの反射光を宇宙に返すことができる旨説明したが、非再帰反射光の指向確率の高い出射領域(角度領域)が、地上の特定利用領域、例えば、建物の明り採り用の窓や、プリズム等を利用した集光設備等に向くように反射材4,104の形状や設置角度を設定するようにしても良い。このようにした場合には、近隣建物への反射光の影響を減らすだけでなく、非再帰反射光の多くを建物内の照光等に有効利用することができる。
【0035】
[第3の実施形態]
図6は、反射材4(或いは、反射材104。以下では、反射材4を代表例として説明する。)を組み込んだ反射板1の斜視図(A)と、その反射板1の分解斜視図(B)を併せて記載した図である。
【0036】
この第3の実施形態は、第1の実施形態と同様の反射材4が剛性の高い板状のベース部材3の上部に結合されて方形状の反射板1が構成されている。この第3の実施形態では、反射材4をベース部材3に接合して剛性の高い板状構造としているため、設置時における安定性が高くなるうえ、作業者による運搬も容易になる。この作業者による運搬等を考慮すると、反射板1は、一辺が30〜60cm程度の板状であることが望ましい。反射板1の形状は、ここでは一例として方形状のものを採用しているが、設置場所のニーズ等に応じて台形状や円形状等の他の形状を採用することが可能である。また、この例では、反射板1に第1の実施形態と同様の反射材4を組み込んだが、第2の実施形態と同様の反射材104を組み込むことも可能である。
【0037】
[第4の実施形態]
図7は、第4の実施形態を示す断面図である。
【0038】
この実施形態の反射板201は、第3の実施形態と同様にベース部材3の上部に反射材4(反射機能部)が結合されているが、さらにこれに加えて反射材4の前面側を覆うようにガラスや透明樹脂等の透明被覆層5が設けられている。反射板201は、架台19を介して斜めに傾斜させて設置されている。
【0039】
この反射板201の場合、反射材4の上面への汚れの直接的な付着を透明被覆層5によって防止することができる。また、反射板201は、斜めに設置されているため、透明被覆層5に被着した汚れ等を雨水等によって効率良く流し落とすことができる。
【0040】
図8は、反射板201を、架台19を介してビル2の屋上に斜めに傾斜させて設置したものである。この場合、反射板201は、設置場所の周囲の環境や、年間の太陽高度を考慮し、水平面に対して南向きに15°から30°の傾斜角をもたせて設置することが望ましい。
【0041】
このように反射板201を傾斜させて設置するようにした場合には、太陽光の反射効率を高めることができるうえ、雨水によって汚れを洗い落とし易くなる。また、この実施形態のように反射板201を、架台19を介して設置する場合には、反射板201を設定角度に傾けて設置できるだけでなく、反射板201を風等によって飛ばされないように安定設置することができる。反射板201の傾斜角度は、雨水等の排水性に重点を置いた場合には、勾配が1/100以上であることが望ましく、また、太陽光の反射効率に重点を置いた場合には、15°から30°の傾斜角度に設定することが望ましい。
【0042】
なお、反射板201を支持する架台19は図示する形状や構造に限定されるものでなく、強度や周囲の設置環境等に応じて種々のものを採用することが可能である。また、反射板201は、ビルの屋上等に平置きにして敷設コストの低減を図るようにしても良い。
【0043】
[第5の実施形態]
図9は、第5の実施形態を示す反射材404の反射面406a,406b,406cの平面図である。
この第5の実施形態は、相互に直交する三角形状の反射面406a,406b,406cが組み合わされて反射材404が構成されるとともに、反射面406a,406b,406cの前面側に光触媒層10が設けられている。
反射材404上の反射面406a,406b,406cは連続して形成され、これらの反射面406a,406b,406cの最低位側の連接頂部に排水機能部である排水孔17が設けられている。
【0044】
この第5の実施形態は、反射面406a,406b,406cの前面側に光触媒層10が直接設けられているため、光触媒層10に付着した汚れを光触媒による分解作用によって分解し、さらにその汚れを光触媒の親水作用によって雨水等とともに洗い流すことができる。そして、雨水等は、反射面406a,406b,406cの最低位側の連接頂部に設けられた排水孔17(排水機能部)を通して外部に排出することができる。したがって、この第5の実施形態においては、特別なメンテナンスを要することなく反射面406a,406b,406cの前面を常にクリアな状態に維持することができる。特に、反射材404は、常に表面に太陽光が当たることを前提としたものであるため、光触媒の上記の作用を最大限に発揮させることができる。
【0045】
[第6の実施形態]
図10は、反射材504の反射面506a,506b,506cを示す平面図である。
この第6の実施形態は、第5の実施形態と同様に相互に直交する三角形状の反射面506a,506b,506cが組み合わされて反射材504が構成され、反射面506a,506b,506cの前面側に光触媒層10が設けられるとともに、反射面506a,506b,506cの間に排水用の隙間18(排水機能部)が設けられている。
【0046】
この第6の実施形態の場合も、反射面506a,506b,506cの前面に直接設けられた光触媒層10の作用によって、その光触媒層10の前面側に付着した汚れを自然に洗い流し、その汚れを雨水等とともに排水用の隙間18を通して外部に排出することができる。したがって、この第6の実施形態の場合も、特別なメンテナンスを要することなく反射面506a,506b,506cの前面を常にクリアな状態に維持することができる。
【0047】
以上説明した第5,第6の実施形態は、反射面406a,406b,406cの連接頂部に排水孔17を設けたものと、反射面506a,506b,506cの間に排水用の隙間18を設けたものであるが、これらは反射面上に排水機能を持たせることのできる構造であれば形状や構造は、図示したものに限定されるものでなく、この他の種々の態様が採用可能である。
また、反射面の基本構造も第2の実施形態と同様のものを採用することも可能である。
【0048】
[第7の実施形態]
図11は、この発明にかかる太陽光反射構造を採用した反射材4をビル等の屋上の床20(外部)に設置した状態を示す部分破断斜視図である。
この第7の実施形態は、反射材4(反射機能部)の基本構造は第1の実施形態や第2実施形態と同様であるが、反射材4の背部に空気層や断熱材等の断熱層21が設けられている点が異なっている。反射材4は、屋上の床20との間に断熱層21を介在させるかたちで、フレーム部22によって床20に固定されている。なお、この例の場合、反射材4の前面側には透明被覆層5が設けられている。
【0049】
この第7の実施形態の場合、屋上の床20に設置された反射材4は、その前面側で再帰反射による基本機能を発揮すると同時に、夏場においては、反射材4と断熱層21との協働によって屋外から室内への熱の伝達を確実に抑制する。したがって、夏場の室内の温度上昇を抑制して冷房のためのエネルギー消費や冷房機からの放熱を抑えることができる。また、冬場においては、屋外の冷気が室内に伝達されるのを反射材4と断熱層21によって確実に抑制することができるため、暖房のためのエネルギー消費を抑えることができる。
したがって、この実施形態を採用した場合には、夏場や冬場におけるエネルギー消費を抑えることができるため、CO2の発生を削減することによってさらなる地球温暖化の抑制に寄与することができる。
【0050】
また、この第7の実施形態においては、この発明にかかる太陽光反射構造をビル等の屋上の床20に適用したものであるが、ビルの外壁等に適用することも可能である。
【0051】
なお、この発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、鏡やアルミニウム板によって所謂コーナキューブリフレクタを構成する例について説明したが、地球温暖化の防止及びヒートアイランド抑制が可能であれば、プリズムによってコーナキューブリフレクタを構成することも可能である。また、上記のコーナキューブリフレクタの代わりに、底部に反射層を有するガラスビーズ等の透明球体を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであり、太陽光反射構造を構成する反射材の平面図(A)と、この反射面が連続する様子を示す平面図(B)を併せて記載した図。
【図2】同実施形態を示す反射材の断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態を示すものであり、太陽光反射構造を構成する反射材の反射面を示す平面図(A)と、この反射面が連続する様子を示す平面図(B)を併せて記載した図。
【図4】第1,第2の実施形態のビルの屋上への設置例を示す斜視図。
【図5】地上から天頂を見上げた図。
【図6】本発明の第3の実施形態を示すものであり、反射材を組み込んだ反射板の斜視図(A)と、その反射板の分解斜視図(B)を併せて記載した図。
【図7】本発明の第4の実施形態を示す断面図。
【図8】同実施形態のビルの屋上への設置例を示す斜視図。
【図9】本発明の第5の実施形態を示す反射材の反射面の平面図。
【図10】本発明の第6の実施形態を示す反射材の反射面の平面図。
【図11】本発明の第7の実施形態を示す部分破断斜視図。
【符号の説明】
【0053】
4,104,404,504…反射材(反射機能部)
5…透明被覆層
6a,6b,6c,406a,406b,406c,506a,506b,506c…反射面
10…光触媒層
17…排水孔(排水機能部)
18…隙間(排水機能部)
20…床(建造物の外部)
21…断熱層
【技術分野】
【0001】
この発明は、地球に到達した太陽光をそのまま宇宙に反射させて地球規模での温暖化や都市部のヒートアイランド現象を抑制する太陽光反射構造、及び、その構造を用いる設備に関する。特に、近隣建物への光害防止を図ることを目的とした太陽光反射構造、及び、その構造を用いる設備に関する。
【背景技術】
【0002】
地球に到達した太陽光のエネルギーは地表面や建造物等に当たってそのまま熱となって吸収される割合が高いことが知られている。この太陽光エネルギーの地上での吸収は地球規模での温暖化や都市部でのヒートアイランド現象を増長するものと考えられる。
このため、ビル等の建造物や地表面に太陽光を反射する反射板を設置したり、建造物の表皮に高反射塗料を塗布することによって、地上での太陽光エネルギーの吸収を抑制する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−189161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この従来の技術の場合、太陽光の入射角度によって反射光の出射方向が変化するため、出射光が周囲の建物等に当たらないようにする考慮が必要となり、そのため、反射板等の設置スペースが大きく制限されてしまう。
【0004】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされ、大掛かりなシステムを要しない簡単な構造によって出射光の向きをコントロールできるようにして、設置の自由度を高めることができる太陽光反射構造、及び、その構造を用いる設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、地上に到達した太陽光を反射する反射機能部を備えた地球温暖化及びヒートアイランド抑制用の太陽光反射構造において、前記反射機能部に、入射光をその入射方向に反射させる再帰反射構造を設けるようにした。
これにより、太陽から照射されて反射機能部に入射した光は、再帰反射する場合には、その入射方向と同方向に反射する。このため、太陽光が直接入射する環境下であれば、出射光が周囲の建物等に当たるき低減される。
【0006】
前記再帰反射構造は、請求項2に記載のように入射光がその入射方向と同方向に反射するように反射面を組み合わせて構成するようにしても良い。
【0007】
また、再帰反射構造は、例えば、請求項3に記載のように隣接するもの同士が相互に直交する複数の反射面から成る反射面ユニットによって構成することが可能である。
【0008】
反射機能部の形状と設置角度は、請求項4に記載のように非再帰反射光の指向確率の高い出射領域が、天頂付近に向くように設定することが望ましい。
【0009】
また、反射機能部の形状と設置角度は、請求項5に記載のように非再帰反射光の指向確率の高い出射領域が、地上での利用領域に向くように設定するようにしても良い。
【0010】
この太陽光反射構造は、請求項6に記載のように建造物に取り付けるようにしても良い。
【0011】
また、実際に設置するに当たっては、請求項7に記載のように反射機能部の前面に透明被覆層を設けるようにしても良い。
この場合、再帰反射構造を持つ反射機能部の前面は透明被覆層で覆われているため、反射機能部への直接的な汚れの付着は透明被覆層によって防止される。
【0012】
また、建造物の外部(例えば屋上や外壁など)に設置するに当たっては、請求項8に記載のように前記反射機能部の背部に断熱層を設け、この断熱層を介して建造物の外部に取り付けることが望ましい。
この場合、反射機能部と断熱層が夏場における建造物外部からの熱の影響を抑制するとともに、冬場における室内からの暖房熱の放散を抑制するようになる。
【0013】
また、請求項9に記載のように前記反射機能部に、光触媒層と排水機能部を設けるようにしても良い。
この場合、光触媒層は太陽光の紫外線を受けることによって汚れを自然に分解する。また、光触媒層で分解された汚れは、さらに光触媒層の親水性のために雨水等によって洗い流され、排水機能部を通して外部に排出される。
【0014】
上記の太陽光反射構造は、請求項10に記載のように種々の設備に適用可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、反射機能部で太陽光の入射方向と同方向に光を反射するため、大掛かりなシステムを必要としない極めて簡単な構造でありながら、出射光の向きを確実にコントロールして、反射光が周囲の建造物に当たる等の不具合を低減しつつ地球温暖化の抑制とヒートアイランド現象の抑制を図ることができる。したがって、建物等に囲まれた狭いスペースであっても問題なく設置できるため、従来のものに比較して設置の自由度が大幅に向上する。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、反射機能部の形状と設置角度の適正な設定により、非再帰反射光の指向確率の高い出射領域が、周囲の建物等に影響を及ぼさない天頂付近に向けられるため、再帰反射光に非再帰反射光の有効分を加えた多くの反射光を、周囲の建物等に光害を及ぼさずに宇宙に返すことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、反射機能部の形状と設置角度の適正な設定により、非再帰反射光の指向確率の高い出射領域が、地上での利用領域に向けられるため、非再帰反射光の多くを地上で有効利用することができる。
【0018】
また、請求項7に記載の発明によれば、反射機能部の前面に設けた透明被覆層によって反射機能部への汚れの付着を無くし、その透明被覆層に付着した汚れを雨水等で洗い流すことによって反射機能部の前面を汚れの少ない状態に維持することができるため、メンテナンス性が向上する。
【0019】
さらに、請求項8に記載の発明によれば、反射機能部による太陽光の遮断作用と、反射機能部の背部の断熱層の作用によって、冷暖房のためのエネルギー消費を抑えたまま室内環境を快適に保つことができる。そして、この請求項7に記載の発明においては、エネルギー消費を抑えることができることから、CO2の発生量を削減する効果があり地球温暖化をさらに図ることができる。
【0020】
また、請求項9に記載の発明によれば、光触媒による汚れの分解作用と親水作用により、反射機能部に付着した汚れを雨水等によって自然に洗い流し、排水機能部を通して反射機能部の外部に排出することができるため、頻繁なメンテナンスを要することなく、所期の性能を長期に亙って維持することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、共通する部分には共通符号を付し、重複する部分は一部説明を省略するものとする。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、本発明にかかる太陽光反射構造を構成する反射材4(反射面ユニット)の反射面6a,6b,6cを示す平面図(A)と、この反射面6a,6b,6cが連続する様子を示す平面図(B)を併せて記載した図であり、図2は、反射材4の断面図である。
【0023】
反射機能部を成す反射材4は、鏡やアルミニウム板等の高反射性の材料から成り、図1(A)に示すように相互に直交する三角形状の三つの反射面6a,6b,6cが組み合わされて再帰反射構造の基本要素が構成されている。ただし、この反射面6a,6b,6cは、高反射性の材料に直接形成するばかりでなく、高反射性でない部材に相互に直交する三角形状の三面の壁を形成し、その壁に高反射性の材料を蒸着、若しくは塗布することも可能である。反射材4は、上記の再帰反射構造を成す反射面6a,6b,6cが図1(B),図2に示すように規則的に並んで設けられている。
【0024】
この反射材4の反射面6a,6b,6cは、例えば、図2に示すように一つの反射面6a(6b,6c)に入射した太陽光aが、その反射面6a(6b,6c)と他の一つの反射面6b(6c,6a)に反射することによって反射光bとして太陽光aの入射方向と同方向に出射される。
【0025】
[第2の実施形態]
図3は、本発明にかかる太陽光反射構造を構成する反射材104の反射面106a,106b,106c,106dを示す平面図(A)と、この反射面106a,106b,106c,106dが連続する様子を示す平面図(B)を併せて記載した図である。
この第2の実施形態の再帰反射構造は、互いに直交する二つの方形状の反射面106a,106bと、これらの反射面106a,106bに直交する二つの三角形状の反射面106c,106dによって構成されている。
【0026】
ここでは、反射面106a,106bと直交する反射面106a,106bを三角形状に形成しているが、設置場所の周囲の環境等に応じて残余の反射面106c,106dを凸型や凹型の四角形状に形成することも可能である。勿論、この残余の反射面106c,106dの形状はここで記載したものに限定されるものでなく、円弧形状その他の形状であっても良い。
【0027】
ここまで第1,第2の実施形態として説明した反射材4,104は、例えば、図4に示すように(同図では反射板は符号4を付してある。)ビル2の屋上等に設置することができる。
【0028】
以上のように本発明にかかる太陽光反射構造を採用した反射材4,104は、太陽光を再帰反射するように反射面6a,6b,6c(106a,106b,106c,106d)を組み合わせて構成されているため、太陽光が再帰反射した場合には、周囲の建物に反射光が当たるような不具合を招くことなく、太陽光を大気圏外に向けて確実に反射させることができる。このため、周囲に多くビルが立ち並ぶ都市型の建造物の環境下においても容易に、かつ高い自由度をもって設置することができる。しかも、反射材4,104は再帰反射構造を設けた極めて簡単な構造によって反射光を正確にコントロールすることができるため、大掛かりなシステムを必要とせず、設置やメンテナンスのためのコストも低減することができる。
【0029】
ところで、本発明にかかる太陽光反射構造を採用した反射材4,104は、ビルや地面等に実際に固定設置した場合、季節や時間の変化による太陽の位置変化によって反射材4,104上で実際に反射する反射面や、入射角度、反射回数等が常に変化するため、すべての入射光を完全なかたちで再帰反射させることは不可能であるというのが実情である。しかし、本発明にかかる太陽光反射構造を用いた反射材4,104を固定設置した場合、非再帰反射の反射光であっても、有効な反射光成分を多く得ることができる。以下、このことについて詳述する。
【0030】
図5(A)に示すように、都市部などにあっても天頂付近の空は建物a等の遮蔽物が無い場合が多い。このため、非再帰反射であっても、天頂の建物aが存在しない天空領域では周囲の建物aに対する反射光の害のない有効な反射と言うことができる。
【0031】
したがって、本発明にかかる太陽光反射構造を用いた反射材4,104を固定設置した場合には、完全な再帰反射光だけでなく、有効な非再帰反射光(天頂のある角度領域に発される反射光)も含めて考えれば、充分に大きな効果を得ることができる。
非再帰反射光の地上座標での出射角度は、季節や時間によって変化する太陽の位置と、反射材4,104の形状や設置角度によって変化するが、反射材4,104の形状や設置角度の適正な設定により、非再帰反射光の指向確率の高い出射領域(角度領域)が天頂付近に向くようにすることが望ましい。このように反射材4,104の形状や設置角度を設定した場合、近隣建物への反射光の影響を減らすだけでなく、より多くの反射光を宇宙に返すことが可能となる。
【0032】
よって、この反射材4,104を採用することにより、設置のためのコスト負担を大きくすることなく、地球温暖化の抑制と都市部におけるヒートアイランド現象の抑制を図ることができる。
【0033】
なお、ここでは反射材4,104をビル2の屋上に設置する場合を例に説明したが、反射材4,104は地表面や壁面に設置することも可能である。
【0034】
また、非再帰反射光の指向確率の高い出射領域が天頂付近に向くように反射材4,104の形状や設置角度を設定することにより、再帰反射光に非再帰反射光を加えた多くの反射光を宇宙に返すことができる旨説明したが、非再帰反射光の指向確率の高い出射領域(角度領域)が、地上の特定利用領域、例えば、建物の明り採り用の窓や、プリズム等を利用した集光設備等に向くように反射材4,104の形状や設置角度を設定するようにしても良い。このようにした場合には、近隣建物への反射光の影響を減らすだけでなく、非再帰反射光の多くを建物内の照光等に有効利用することができる。
【0035】
[第3の実施形態]
図6は、反射材4(或いは、反射材104。以下では、反射材4を代表例として説明する。)を組み込んだ反射板1の斜視図(A)と、その反射板1の分解斜視図(B)を併せて記載した図である。
【0036】
この第3の実施形態は、第1の実施形態と同様の反射材4が剛性の高い板状のベース部材3の上部に結合されて方形状の反射板1が構成されている。この第3の実施形態では、反射材4をベース部材3に接合して剛性の高い板状構造としているため、設置時における安定性が高くなるうえ、作業者による運搬も容易になる。この作業者による運搬等を考慮すると、反射板1は、一辺が30〜60cm程度の板状であることが望ましい。反射板1の形状は、ここでは一例として方形状のものを採用しているが、設置場所のニーズ等に応じて台形状や円形状等の他の形状を採用することが可能である。また、この例では、反射板1に第1の実施形態と同様の反射材4を組み込んだが、第2の実施形態と同様の反射材104を組み込むことも可能である。
【0037】
[第4の実施形態]
図7は、第4の実施形態を示す断面図である。
【0038】
この実施形態の反射板201は、第3の実施形態と同様にベース部材3の上部に反射材4(反射機能部)が結合されているが、さらにこれに加えて反射材4の前面側を覆うようにガラスや透明樹脂等の透明被覆層5が設けられている。反射板201は、架台19を介して斜めに傾斜させて設置されている。
【0039】
この反射板201の場合、反射材4の上面への汚れの直接的な付着を透明被覆層5によって防止することができる。また、反射板201は、斜めに設置されているため、透明被覆層5に被着した汚れ等を雨水等によって効率良く流し落とすことができる。
【0040】
図8は、反射板201を、架台19を介してビル2の屋上に斜めに傾斜させて設置したものである。この場合、反射板201は、設置場所の周囲の環境や、年間の太陽高度を考慮し、水平面に対して南向きに15°から30°の傾斜角をもたせて設置することが望ましい。
【0041】
このように反射板201を傾斜させて設置するようにした場合には、太陽光の反射効率を高めることができるうえ、雨水によって汚れを洗い落とし易くなる。また、この実施形態のように反射板201を、架台19を介して設置する場合には、反射板201を設定角度に傾けて設置できるだけでなく、反射板201を風等によって飛ばされないように安定設置することができる。反射板201の傾斜角度は、雨水等の排水性に重点を置いた場合には、勾配が1/100以上であることが望ましく、また、太陽光の反射効率に重点を置いた場合には、15°から30°の傾斜角度に設定することが望ましい。
【0042】
なお、反射板201を支持する架台19は図示する形状や構造に限定されるものでなく、強度や周囲の設置環境等に応じて種々のものを採用することが可能である。また、反射板201は、ビルの屋上等に平置きにして敷設コストの低減を図るようにしても良い。
【0043】
[第5の実施形態]
図9は、第5の実施形態を示す反射材404の反射面406a,406b,406cの平面図である。
この第5の実施形態は、相互に直交する三角形状の反射面406a,406b,406cが組み合わされて反射材404が構成されるとともに、反射面406a,406b,406cの前面側に光触媒層10が設けられている。
反射材404上の反射面406a,406b,406cは連続して形成され、これらの反射面406a,406b,406cの最低位側の連接頂部に排水機能部である排水孔17が設けられている。
【0044】
この第5の実施形態は、反射面406a,406b,406cの前面側に光触媒層10が直接設けられているため、光触媒層10に付着した汚れを光触媒による分解作用によって分解し、さらにその汚れを光触媒の親水作用によって雨水等とともに洗い流すことができる。そして、雨水等は、反射面406a,406b,406cの最低位側の連接頂部に設けられた排水孔17(排水機能部)を通して外部に排出することができる。したがって、この第5の実施形態においては、特別なメンテナンスを要することなく反射面406a,406b,406cの前面を常にクリアな状態に維持することができる。特に、反射材404は、常に表面に太陽光が当たることを前提としたものであるため、光触媒の上記の作用を最大限に発揮させることができる。
【0045】
[第6の実施形態]
図10は、反射材504の反射面506a,506b,506cを示す平面図である。
この第6の実施形態は、第5の実施形態と同様に相互に直交する三角形状の反射面506a,506b,506cが組み合わされて反射材504が構成され、反射面506a,506b,506cの前面側に光触媒層10が設けられるとともに、反射面506a,506b,506cの間に排水用の隙間18(排水機能部)が設けられている。
【0046】
この第6の実施形態の場合も、反射面506a,506b,506cの前面に直接設けられた光触媒層10の作用によって、その光触媒層10の前面側に付着した汚れを自然に洗い流し、その汚れを雨水等とともに排水用の隙間18を通して外部に排出することができる。したがって、この第6の実施形態の場合も、特別なメンテナンスを要することなく反射面506a,506b,506cの前面を常にクリアな状態に維持することができる。
【0047】
以上説明した第5,第6の実施形態は、反射面406a,406b,406cの連接頂部に排水孔17を設けたものと、反射面506a,506b,506cの間に排水用の隙間18を設けたものであるが、これらは反射面上に排水機能を持たせることのできる構造であれば形状や構造は、図示したものに限定されるものでなく、この他の種々の態様が採用可能である。
また、反射面の基本構造も第2の実施形態と同様のものを採用することも可能である。
【0048】
[第7の実施形態]
図11は、この発明にかかる太陽光反射構造を採用した反射材4をビル等の屋上の床20(外部)に設置した状態を示す部分破断斜視図である。
この第7の実施形態は、反射材4(反射機能部)の基本構造は第1の実施形態や第2実施形態と同様であるが、反射材4の背部に空気層や断熱材等の断熱層21が設けられている点が異なっている。反射材4は、屋上の床20との間に断熱層21を介在させるかたちで、フレーム部22によって床20に固定されている。なお、この例の場合、反射材4の前面側には透明被覆層5が設けられている。
【0049】
この第7の実施形態の場合、屋上の床20に設置された反射材4は、その前面側で再帰反射による基本機能を発揮すると同時に、夏場においては、反射材4と断熱層21との協働によって屋外から室内への熱の伝達を確実に抑制する。したがって、夏場の室内の温度上昇を抑制して冷房のためのエネルギー消費や冷房機からの放熱を抑えることができる。また、冬場においては、屋外の冷気が室内に伝達されるのを反射材4と断熱層21によって確実に抑制することができるため、暖房のためのエネルギー消費を抑えることができる。
したがって、この実施形態を採用した場合には、夏場や冬場におけるエネルギー消費を抑えることができるため、CO2の発生を削減することによってさらなる地球温暖化の抑制に寄与することができる。
【0050】
また、この第7の実施形態においては、この発明にかかる太陽光反射構造をビル等の屋上の床20に適用したものであるが、ビルの外壁等に適用することも可能である。
【0051】
なお、この発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、鏡やアルミニウム板によって所謂コーナキューブリフレクタを構成する例について説明したが、地球温暖化の防止及びヒートアイランド抑制が可能であれば、プリズムによってコーナキューブリフレクタを構成することも可能である。また、上記のコーナキューブリフレクタの代わりに、底部に反射層を有するガラスビーズ等の透明球体を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであり、太陽光反射構造を構成する反射材の平面図(A)と、この反射面が連続する様子を示す平面図(B)を併せて記載した図。
【図2】同実施形態を示す反射材の断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態を示すものであり、太陽光反射構造を構成する反射材の反射面を示す平面図(A)と、この反射面が連続する様子を示す平面図(B)を併せて記載した図。
【図4】第1,第2の実施形態のビルの屋上への設置例を示す斜視図。
【図5】地上から天頂を見上げた図。
【図6】本発明の第3の実施形態を示すものであり、反射材を組み込んだ反射板の斜視図(A)と、その反射板の分解斜視図(B)を併せて記載した図。
【図7】本発明の第4の実施形態を示す断面図。
【図8】同実施形態のビルの屋上への設置例を示す斜視図。
【図9】本発明の第5の実施形態を示す反射材の反射面の平面図。
【図10】本発明の第6の実施形態を示す反射材の反射面の平面図。
【図11】本発明の第7の実施形態を示す部分破断斜視図。
【符号の説明】
【0053】
4,104,404,504…反射材(反射機能部)
5…透明被覆層
6a,6b,6c,406a,406b,406c,506a,506b,506c…反射面
10…光触媒層
17…排水孔(排水機能部)
18…隙間(排水機能部)
20…床(建造物の外部)
21…断熱層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に到達した太陽光を反射する反射機能部を備えた地球温暖化及びヒートアイランド抑制用の太陽光反射構造において、
前記反射機能部に、入射光をその入射方向に反射させる再帰反射構造を設けたことを特徴とする太陽光反射構造。
【請求項2】
前記再帰反射構造は、入射光がその入射方向と同方向に反射するように反射面を組み合わせて構成したことを特徴とする請求項1に記載の太陽光反射構造。
【請求項3】
前記再帰反射構造は、隣接するもの同士が相互に直交する複数の反射面から成る反射面ユニットによって構成されていることを特徴とする請求項2に記載の太陽光反射構造。
【請求項4】
非再帰反射光の指向確率の高い出射領域が、天頂付近に向くように前記反射機能部の形状と設置角度を設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽光反射構造。
【請求項5】
非再帰反射光の指向確率の高い出射領域が、地上での利用領域に向くように前記反射機能部の形状と設置角度を設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽光反射構造。
【請求項6】
建造物に取り付けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽光反射構造。
【請求項7】
前記反射機能部の前面に透明被覆層を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽光反射構造。
【請求項8】
前記反射機能部の背部に断熱層を設け、この断熱層を介して建造物の外部に取り付けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽光反射構造。
【請求項9】
前記反射機能部に、光触媒層と排水機能部を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽光反射構造。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の太陽光反射構造を用いたことを特徴とする設備。
【請求項1】
地上に到達した太陽光を反射する反射機能部を備えた地球温暖化及びヒートアイランド抑制用の太陽光反射構造において、
前記反射機能部に、入射光をその入射方向に反射させる再帰反射構造を設けたことを特徴とする太陽光反射構造。
【請求項2】
前記再帰反射構造は、入射光がその入射方向と同方向に反射するように反射面を組み合わせて構成したことを特徴とする請求項1に記載の太陽光反射構造。
【請求項3】
前記再帰反射構造は、隣接するもの同士が相互に直交する複数の反射面から成る反射面ユニットによって構成されていることを特徴とする請求項2に記載の太陽光反射構造。
【請求項4】
非再帰反射光の指向確率の高い出射領域が、天頂付近に向くように前記反射機能部の形状と設置角度を設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽光反射構造。
【請求項5】
非再帰反射光の指向確率の高い出射領域が、地上での利用領域に向くように前記反射機能部の形状と設置角度を設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽光反射構造。
【請求項6】
建造物に取り付けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽光反射構造。
【請求項7】
前記反射機能部の前面に透明被覆層を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽光反射構造。
【請求項8】
前記反射機能部の背部に断熱層を設け、この断熱層を介して建造物の外部に取り付けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽光反射構造。
【請求項9】
前記反射機能部に、光触媒層と排水機能部を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽光反射構造。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の太陽光反射構造を用いたことを特徴とする設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−322313(P2006−322313A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116763(P2006−116763)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】
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