説明

太陽電池で機能化された表面を有するセラミックタイル

本明細書には、0.5質量%以下の吸水率を有するセラミック基材本体(2);該セラミック基材本体(2)の第1表面(2a)に直接適用された太陽電池(3);該セラミック基材本体(2)の第2表面(2b)に適用された電気部品及び/または電子部品を含むデバイス(4);及び該セラミック基材本体(2)を通じて電気部品及び/または電子部品を含む該デバイスに、該太陽電池(3)を電気的に接続するように設計された電気コネクタ(5)、から形成されたタイル(1)が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その表面が太陽電池で機能化されたセラミックタイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエネルギー源を発見することに関連する課題の高まりにともない、例えば、太陽エネルギーのような代替エネルギー源の開発に関する研究への注目が高まっている。この関連で、光起電効果を活用してそれによって太陽放射のエネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスが、これまでかなりの期間、作られてきた。
【0003】
上記の種類のデバイスはまた、それらの技術的特徴によって、官民の建築分野の電気エネルギーの製造に興味深い用途をもたらすと思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、それらの露出面に太陽電池を備えるセラミックタイルを提供することである。このようにして、建物の外面を被覆するためのタイルを用いることが可能となり、同時に、太陽エネルギーの変換することによって得られた電気エネルギーを建物自体に供給することができる、または電力供給網内に該エネルギーを導入することができる、有効なデバイスを有することが可能となるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の対象は、少なくとも1つの太陽電池を含むタイルによって構成され、該タイルは、0.5質量%以下の吸水率を有するセラミック基材本体;該セラミック基材本体の第1表面に直接適用された太陽電池;該セラミック基材本体の第2表面に適用された電気部品及び/または電子部品を含むデバイス;及び該セラミック基材本体を通じて電気部品及び/または電子部品を含む該デバイスに、該太陽電池を電気的に接続するように設計された電気コネクタ、を含むことを特徴とする。
【0006】
好ましい実施態様によれば、該太陽電池は、該セラミック基材本体の該第1表面上に直接配置された導電性材料の層、複数の活性層、及び好ましくは格子状構造を有する導電性材料の層を含み;該複数の活性層が少なくとも連続してn型の層、光活性の中間層、及びp型の層を含む。
【0007】
さらに好ましい実施態様によれば、該太陽電池は、該活性層と好ましくは格子状構造を有する該導電性材料の層との間に配置された透明導電層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明によるタイルの詳細についての横から見た断面図である。次の例は、添付した図面の図を用いて、本発明の理解を助けるために具体的に説明され且つ非限定的な例の目的で提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図中の1として全体が描かれたものは、本発明の対象を構成するタイルである。
【0010】
タイル1は、例えば、ISO10545−3規格にしたがって測定される、0.5質量%以下の吸水率を規定するような空孔を有するセラミック基材本体2を含む。
【0011】
タイル1は、セラミック基材本体2の第1表面2aに適用された太陽電池3;表面2aの反対側の第2表面2bに適用された電気部品及び/または電子部品を含むデバイス4;並びにセラミック基材本体2に形成された穴2c内に収容され、太陽電池3を電気的にデバイス4に接続する電気コネクタ5を含む。
【0012】
太陽電池3は連続して、表面2aに直接、接して配置された導電性材料の層6、活性層の複合体7、透明導電性材料の層8;導電材料の好ましくは格子形状の層9;及び透明保護層10を含む。
【0013】
特に、活性層の複合体7は、n型の層11、中間の光活性層12、及びp型の層13を含む。
【0014】
次の例で、本発明の対象を構成するタイルの製造方法の2つの例が提供される。
【実施例】
【0015】
例1
セラミック基材本体2の製造物は、3〜6質量%の湿分を含む必要がある、セラミックタイルに概して用いられるアトマイズセラミック粉の乾式プレスによって得られる。プレスは35MPa〜60MPaの圧力で行われる。プレス操作は、電気部品及び/または電子部品を含むデバイス4を収容するための凹部を表面2b上に形成するダイを用いることができる。
【0016】
プレス操作によって得られた未処理の基材本体を乾燥して、次いで、1つ以上の穴2cを形成する(図には1つだけ示される)。
【0017】
このように加工した基材本体を1100℃〜1250℃の最高温度にて焼成する工程に送る。このようにして、ISO10545−3規格にしたがって測定される、0.5質量%以下の空孔率を有するセラミック基材本体が得られる。
【0018】
次に、例えばセリグラフ法によって、導電性金属層6が、セラミック基材本体2の表面2a上に適用される。導電層6は、例えばAgまたはAg−Alの混合物のような金属の層からなることができる。該金属層を圧密化して必要な導電率特性を得るために、用いられる材料によって決まる適切な熱処理を半製品に施す。例えばAg系及びAg−Al系のセリグラフペーストの場合、該方法は、半製品を5分間、700℃の温度にさらす急加熱/急冷却の組み合わせ、あるいは5〜20℃/minの加熱速度にて室温から700℃の熱処理を行う。堆積した導電層6の焼成後の最終厚みは5〜20μmの範囲になるだろう。
【0019】
CVD(化学気相成長)法、好ましくはプラズマ強化CVD(PECVD)法によって導電層6上に、約210℃の基板の最高温度にて堆積された約30nmの厚みのn型にドープされたアモルファスシリコンの層11;約250℃の基板の最高温度にて堆積された約580nmの厚みを有する真性アモルファスシリコンの光活性層12;及び約250℃の基板の最高温度にて堆積された約15nmの厚みを有するp型にドープされたアモルファスシリコンの層13が、連続して堆積される。
【0020】
アモルファスシリコンの第2層13の上面に、酸化インジウムスズ(ITO)若しくはフッ素ドープした酸化スズ(FTO)または他の透明金属酸化物の透明導電層8が堆積される。該堆積を約250℃の基板の温度にてスパッタ法によって得て約75nmの最大厚みを有する層8を得ることができる。
【0021】
透明導電層8の上面に、好ましくは格子形状の、例えば銀のような、導電性材料の層9が堆積される。層9をセリグラフ法、ドクターブレード法によって、インクジェット印刷工法、スパッタ法によって、または熱蒸発によって堆積することができる。さらに、用いられる材料によって決まる適切な熱処理によって、層9を圧密化することができる。
【0022】
この時点で、剛性または弾性型の導電性コネクタ5が、先に作られた貫通穴2c内に挿入される。導電コネクタ5を、強固な接着を確保する特別な材料によって、セラミック材料に固定することができる。
【0023】
剛性型のコネクタは、第1端部にて、表面2a上にあり、導電性材料6の層に半田付けされたヘッドを含み、そして表面2bに面する第2端部にて、電気及び/または電子デバイス4にスズで半田付けされたピン、あるいは便利なメンテナンスを可能とする電気及び/または電子デバイス4それ自体にナットで固定するように設計されたネジ込み軸、を含むことができる。コネクタ5の特定の構造は、簡潔化のために記載のみ行い、図には例示しない。
【0024】
太陽電池3の被覆物として、太陽放射に関する高い透過性、耐湿性及び環境因子への耐性、紫外線に対する安定性、並びに電気絶縁性を保証するように設計された、保護透明層10が用いられる。保護層10を、低融点のガラス状エナメル、または例えばポリカーボネート若しくはフッ素化ポリマー(例えばポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、またはポリメチルメタクリレート及びポリビニルフルオライドの組み合わせ)のような適切な組成のポリマー層によって構成してもよい。
【0025】
最後に、表面2b上で、電気部品及び/または電子部品を含むデバイス4が、セラミック基材本体2に形成した凹部内に設置されているコネクタ5に固定される。電気部品及び/または電子部品を含むデバイス4は公知であり、本明細書に詳細には記載しない。
【0026】
電気部品及び/または電子部品を含むデバイス4は、電気的受動備品の特性を備えて互いに直列または並列にタイルを接続する用途を有して、適切な電力の静電変換器によって、適切に扱うことができる値に利用可能な電圧及び電流を上げて、生成したエネルギーを電力供給網内に導入することができる。別の面では、電気部品及び/または電子部品を含むデバイス4は、MOSFET技術を用いて、MPPT(最大電力点追尾)機能、すなわち日射条件の関数として利用可能な最大電力を供給するための電気条件を規定する機能を提供することができ、そして電力供給網内へのその後の導入、並びに/またはバッテリーへの貯蔵のための直接使用及び/若しくは使用、に好適な特性を有する中間バスに電気条件を伝達することができる。
【0027】
例2
この第2例において作られたセラミックタイルは、活性層の複合体7の組成及びそれらの製造に関して、例1によって作られたタイルと異なる。
【0028】
特に、1100℃〜1250℃の最高温度にて焼成する工程から得られ、導電層6を含む基材本体は、その後に、450℃の温度に加熱される。アルコール水溶液を用いて、チタンの前駆体(Kavan, L., Gratzel, M., "Highly efficient semiconducting TiO2 photoelectrodes prepared by aerosol pyrolysis", Electrochim. Acta, 1995, 40, 5, 643−652に記載されるような、例えばチタニウム(IV)イソプロポキシドまたはチタニウム(IV)イソプロポキシアセチルアセトネートの溶液)をスパッタ加工することによって、TiO2成形体の70〜150nm、好ましくは100nmの厚みの層11がその上に堆積される。このように得られた半製品を、約1時間、500℃にさらに加熱する。
【0029】
TiO2及びCuInS2の粉体の混合物からなる活性層12は、TiO2成形体の層11の頂部に堆積される。活性層12は、粉体の混合物の単一層(例えばTiO2粉体が50質量%及びCuInS2粉体が50質量%で構成される)、あるいは例えばTiO2及びCuInS2のそれぞれが70−30/50−50/30−70の質量比を有する3層のような複数の層によって構成され得る。活性層を、好ましくはシルクスクリーン印刷工法によって堆積するが、また、例えばドクターブレード法、インクジェット印刷工法、シリコーンローラーを用いた印刷工法、またはスパッタ法のような方法も用いることができる。活性層12を、用いられる材料の特性によって決まる適切な熱処理によって圧密化することができる。
【0030】
層(または複数層)の総厚みは好ましくは1〜5μmである。
【0031】
上述の方法を用いて、活性層12の頂部に、0.08〜0.12μm、好ましくは0.1μmの厚みを有する純粋なCuInS2の層13が堆積される。
【0032】
この時点で、例1に記載したように、タイルの調製は透明導電層8の堆積を始める。
【0033】
当業者に明らかになるように、活性層の複合体7の特定の組成が上述のものと異なり得る。特に、p型の層13は、一般的な実験式(IB)(IIIA)(VIA)2(式中、IBは元素Cu、Ag、Auを表し;IIIAは元素Al、Ga、In、Tiを表し;VIAは元素S、Se、Teを表す)を有する任意の化合物を用いて形成され得る。
【0034】
本発明は、例えば、熱的観点から構造物を断熱し、同時に太陽エネルギーを電気エネルギーに変換するような、省エネルギーに顕著に貢献できるセラミック基材を有するタイルを利用可能にする。
【0035】
さらに、製造工程が、生産の経済性を全体として最適化するために、セラミック分野に用いられる技術を用いて、製造工程の統合を可能とするような方法で構成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの太陽電池を含むタイル(1)であって、0.5質量%以下の吸水率を有するセラミック基材本体(2);該セラミック基材本体(2)の第1表面(2a)上に直接適用された太陽電池(3);該セラミック基材本体(2)の第2表面(2b)に適用された電気部品及び/または電子部品を含むデバイス(4);及び該セラミック基材本体を通じて電気部品及び/または電子部品を含む該デバイス(4)に、該太陽電池(3)を電気的に接続するように設計された電気コネクタ(5)、を含むことを特徴とする、タイル(1)。
【請求項2】
該太陽電池(3)が、該セラミック支持体(2)の該第1表面(2a)上に直接配置された導電性材料の層(6)、複数の活性層(7)、及び好ましくは格子状構造を有する導電性材料の層(9)を含み;
該複数の活性層(7)が連続してn型の層(11)、光活性層(12)、及びp型の層(13)を含むことを特徴とする、
請求項1に記載のタイル。
【請求項3】
該太陽電池(3)が、該活性層(7)と該導電性材料の層(9)との間に透明導電層(8)を含むことを特徴とする、請求項2に記載のタイル。
【請求項4】
該太陽電池(3)が、ガラス状エナメル、ポリカーボネート、フッ素化ポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、及びポリメチルメタクリレートとポリビニルフルオライドとの組み合わせによって構成される群に含まれる材料の1つから形成される保護層(10)によって、被覆され、絶縁され、及び封止されていることを特徴とする、請求項3に記載のタイル。
【請求項5】
該導電性材料の層(6)がAgまたはAg−Alによって構成され、該n型の層(11)がn型にドープされたアモルファスシリコンによって構成され、該光活性層(12)が真性シリコンによって構成され、該p型の層(13)がp型にドープされたアモルファスシリコンによって構成され、該透明導電層(8)がITOまたはFTOによって構成され、及び導電性材料の層(9)がAgによって構成されていることを特徴とする、請求項3または4に記載のタイル。
【請求項6】
該導電性材料の層(6)が、ITO、ZnO、Ag、Ag−Al、及びMoによって構成される群に含まれる材料によって構成され、該n型の層(11)がTiO2成形体によって構成され、該光活性層(12)がTiO2と一般的な実験式(IIIB)(IVA)(VIA)2の化合物との混合物によって構成され、該p型の層(13)が一般的な実験式(IIIB)(IVA)(VIA)2の化合物によって構成され、該透明導電層(8)がITOによって構成され、並びに該導電性材料の層(9)がAgによって構成されていることを特徴とし;
IBがCu、Ag、Auによって構成される群に含まれる元素の1つであり;
IIIAがAl、Ga、In、Tiによって構成される群に含まれる元素の1つであり;
VIAがS、Se、Teによって構成される群に含まれる元素の1つである、
請求項3または4に記載のタイル。
【請求項7】
該一般的な実験式(IIIB)(IVA)(VIA)2の化合物がCuInS2であることを特徴とする、請求項6に記載のタイル。
【請求項8】
3質量%〜6質量%の湿分を有するアトマイズセラミック粉が、35MPa〜60MPaの圧力のプレス操作、乾燥操作、及び1100℃〜1250℃の最高温度の焼成操作を連続して受けることによって、セラミック基材本体(2)を得ることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のタイルの製造方法。
【請求項9】
該セラミック基材本体(2)の表面(2a)上への太陽電池(3)の形成工程を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法であって、
該太陽電池(3)の該形成工程が、前もって形成した材料をそれぞれの機能層(6、8、9、11、12、13)を製造するために堆積する、複数の堆積操作を含む、
方法。
【請求項10】
該堆積操作のそれぞれが、シルクスクリーン印刷、シリコーンローラーを用いた印刷、ドクターブレード技法、インクジェット印刷、またはスパッタリングを含む技法によって得られることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
アモルファスシリコンの該活性層(11、12、13)の該堆積操作が、CVD(化学気相成長)法を用いて得られることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
アモルファスシリコンの該活性層(11、12、13)の該堆積操作が、プラズマ強化CVDまたはラジオ周波数CVD法を用いて得られることを特徴とする、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−524223(P2010−524223A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501671(P2010−501671)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国際出願番号】PCT/IT2007/000241
【国際公開番号】WO2008/120251
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(509272311)コンソルツィオ ユニベルシタリオ ペル ラ ジェスティオーネ デル チェントロ ディ リチェルカ エ スペリメンタツィオーネ ペル リンドゥストリア チェラミカ−チェントロ チェラミコ (1)
【Fターム(参考)】