説明

太陽電池システム及びその製造方法

【課題】太陽電池システムとしての薄膜化および出力回路などの太陽電池ユニットを搭載する部分のスペースの効率化を図ることによって様々な機器に搭載することが可能な太陽電池システムを提供すること。
【解決手段】電源回路システムSは、太陽電池ユニット100を支持するとともに当該太陽電池ユニット100によって生成された電源電圧Vの出力制御を行う出力回路を有するフレキシブルプリント基板(FPC)200を有しており、このFPC200のベース210の上面であって太陽電池ユニット100が積層される第1基板面に積層される上部配線パターン220が太陽電池ユニット100の一方の電極層として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池ユニットが搭載された太陽電池システムの技術に関し、特に、フレキシブルプリント基板に太陽電池ユニットを配設する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光のような自然エネルギーの有効利用による電力供給の重要性への認識がますます高まりつつある。例えば、シリコン結晶やアモルファスシリコン薄膜、非シリコン系の化合物半導体の多層薄膜を用いる、いわゆる固体のpn接合型の太陽電池ユニットについて、そのエネルギー変換効率の向上とコスト削減のための研究開発が活発に行われている。特に、製造工程の容易化、低コスト化およびエネルギーの高効率化により、有機薄膜太陽電池または色素増感型太陽電池などの印刷技術を使用して作成可能な太陽電池が提案されている。
【0003】
また、最近では、太陽電池のみならず、当該太陽電池ユニットにて生成された電圧の取り出す方法などを工夫することによって太陽電池システムとして高効率化および低コスト化を図るものも知られている。例えば、太陽電池(以下、「太陽電池ユニット」という。)と、当該太陽電池ユニットが設けられたスイッチングレギュレータと、を同一基板に一体的に搭載し、太陽電池ユニットにて生成した電圧を電子機器に供給するための太陽電池システムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−65687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された太陽電池システムにあっては、太陽電池ユニットの裏面電極にスイッチングレギュレータなどの電子回路が接続されているのみで、太陽電池ユニットの薄膜化及びシステム全体のスペース効率化については限界がある。特に、特許文献1には、太陽電池ユニットの裏面電極によって電子回路の配線パターンを形成する旨の記載はなく、かつ、また、裏面電極と配線パターンを共通化することによって太陽電池ユニットの構造を簡素化することについても記載がない。したがって、この太陽電池ユニットにあっては、当該観点に基づいて太陽電池ユニットの薄膜化及びシステム自体のスペースの効率化を向上させることはできない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、太陽電池システムとしての薄膜化および出力回路などの太陽電池ユニットを搭載する部分のスペースの効率化を図ることによって様々な機器に搭載することが可能な太陽電池システム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するため、本発明の太陽電池システムは、第1電極層と、前記第1電極層上に積層され、受光された光から電圧を生成させるための光電変換が行われる光電変換層と、前記光電変換層上に積層され、当該光電変換層に光を受光させるための構造を有する第2電極層と、から構成される太陽電池ユニットと、前記光電変換によって生成された電圧を出力するための出力回路と前記太陽電池ユニットを接続するための配線パターンが形成されているフレキシブルプリント基板と、を備え、前記配線パターンが、前記第1電極層として、前記フレキシブルプリント基板を構成する基材上に形成されている構成を有している。
【0008】
この構成により、本発明の太陽電池システムは、出力回路と接続するためのフレキシブルプリント基板の配線パターンを太陽電池ユニットの電極と共通化させることができるので、可撓性を確保してかつ太陽電池ユニットを薄膜化することができる。
【0009】
したがって、本発明の太陽電池システムは、薄膜化および出力回路などの太陽電池ユニットを搭載する部分のスペースの効率化を図ることができるので、小型の電子機器またはデザインの制約により電源回路のスペースが限られた機器など、様々な機器に太陽電池に基づく電源システムを搭載することができる。
【0010】
(2)また、本発明の太陽電池システムは、前記配線パターンには、電子回路部品によって構成される出力回路が形成されている回路パターンが含まれる構成を有している。
【0011】
この構成により、本発明の太陽電池システムは、コンデンサ素子、コイル素子、抵抗素子、スイッチ素子、集積回路チップなどの電子回路部品によって、太陽電池ユニットが形成された基板上に当該太陽電池ユニットにて生成された電圧を出力するための出力回路をも形成することができるので、例えば、レギュレータ回路や昇圧回路などの太陽電池ユニットによって生成された電圧を制御または調整する回路を形成させることができるとともに、当該太陽電池システムによって安定した電圧を他の回路に供給することができる。
【0012】
したがって、本発明の太陽電池システムは、太陽電池ユニットに基づいて生成された電圧を出力する際に必要な回路も含めて太陽電池ユニットを搭載した太陽電池システムとしての薄膜化および当該回路全体のスペースの効率化を図ることができるので、小型の電子機器またはデザインの制約により電源回路のスペースが限られた機器など、様々な機器に太陽電池に基づく電源回路を搭載することができる。
【0013】
(3)また、本発明の太陽電池システムは、前記回路パターンが、前記電子回路部品の特徴的な機能を発揮させるための少なくとも一部として用いられる構成を有している。
【0014】
この構成により、本発明の太陽電池システムは、例えば、コンデンサ素子の電極、コイルの巻き線またはダイオード若しくはトランジスタを構成する膜など、キャパシタンスとしての機能、インダクタンスとしての機能または電圧、電流の増幅機能やその遮断機能を発揮させるための素子の少なくとも一部を、太陽電池ユニットが形成された基板上の回路パターンによって構成させることができるので、出力回路においてもスペースの効率化を図ることができる。
【0015】
(4)また、本発明の太陽電池システムは、前記基材の前記太陽電池ユニットが配設される側である第1基板面に、前記回路パターンとして第1回路パターンが形成されているとともに、当該第1基板面と反対側の第2基板面に、前記回路パターンとして第2回路パターンが形成されおり、前記第1回路パターンと前記第2回路パターンによって前記電子回路部品が構成される構成を有している。
【0016】
この構成により、本発明の太陽電池システムは、例えば、フレキシブルプリント基板に形成された回路パターンの積層構造によってコンデンサ素子またコイル素子などの電子回路部品を形成することができるので、このような電子回路部品を形成するための配線を不要にして回路全体のスペース効率を向上させることができるとともに、一方の基板面にのみに電子回路部品をチップなどによって実装する際に比べて厚みのある回路素子を用いることなく、回路全体の薄型化を図ることができる。
【0017】
また、通常、太陽電池ユニットに多くの光を取り込む観点から所定の面積を確保する必要があるので、本発明の太陽電池システムは、それに併せて電子回路部品を形成するための回路パターンの面積をも確保することができるので、例えば、コンデンサ素子における静電容量またはコイルにおけるインダクタンス値など大きな値を有するものも形成可能になるので、回路特性をも向上させることができる。
(5)また、本発明の太陽電池システムは、前記回路パターンには、前記出力回路を構成する電子回路部品が実装されている構成を有している。
【0018】
この構成により、本発明の太陽電池システムは、太陽電池ユニットが形成された基板上に、例えば、コンデンサ素子、コイル素子、スイッチ素子またはダイオード素子などの電子回路部品を実装することができるので、種々の回路を出力回路として形成することができる。
【0019】
(6)また、本発明の太陽電池システムは、前記基材の前記太陽電池ユニットが配設される側である第1基板面に前記回路パターンが形成されている構成を有している。
【0020】
この構成により、本発明の太陽電池システムは、太陽電池ユニットが形成された面と同一の面に回路パターを形成することができので、当該太陽電池システムの配設場所を考慮してコンデンサ素子、コイル素子またはスイッチ素子などの電子回路部品によって出力回路を形成することができる。
【0021】
(7)また、本発明の太陽電池システムは、前記回路パターン上に前記太陽電池ユニットと同一の積層構造を備え、当該回路パターンと当該回路パターン上に形成された前記光電変換層及び前記第2電極層とによって前記電子回路部品としての半導体素子が形成されている構成を有している。
【0022】
この構成により、本発明の太陽電池システムは、太陽電池ユニットと電子回路部品がフレキシブルプリント基板の同一面に同一の積層構造を有して形成しているので、回路全体としてスペースの効率化を図ることができるとともに、当該太陽電池システムの製造工程を簡易にすることができる。
【0023】
(8)また、本発明の太陽電池システムは、前記基材の前記太陽電池ユニットが配設される側である第1基板面と反対側の第2基板面に前記回路パターンが形成されている構成を有している。
【0024】
この構成により、本発明の太陽電池システムは、フレキシブルプリント基板の太陽電池ユニットが配設される第1基板面と反対側の第2基板面にもコンデンサ素子やコイル素子などの電子回路部品からなる出力回路を形成することができるので、当該太陽電池システムの配設位置を考慮して出力回路を形成することができる。
【0025】
(9)また、本発明の太陽電池システムは、前記フレキシブルプリント基板が、前記生成された電圧によって駆動する電子回路と接続するための電極端子を更に備える構成を有している。
【0026】
この構成により、本発明の太陽電池システムは、一般的にフレキシブルプリント基板を他の基板などに接続する際に用いられる電極端子を用いることによって容易にかつ確実に他の回路との接続を行うことができる。
【0027】
(10)また、本発明の太陽電池システムは、前記太陽電池ユニットが、前記光電変換層と絶縁しつつ、前記第2電極層と前記出力回路を接続するためのスルーホールを有するとともに、前記配線パターンが、前記スルーホールと接合されるランドを有する構成をしている。
【0028】
この構成により、本発明の太陽電池システムは、スルーホールおよびランドを介して太陽電池ユニットと配線パターンを接続することができるので、太陽電池ユニットに積層されて構成される出力回路との接続を容易にし、回路全体としてのスペースを有効活用することができる。
【0029】
(11)また、本発明の太陽電池システムは、前記ランドが、前記配線パターン上に前記太陽電池ユニットを配設する位置を位置決めする際に用いられるアライメントマークとして機能するための形状を有している構成をしている。
【0030】
この構成により、本発明の太陽電池システムは、配線パターン上に設けられるアライメントマークの無駄となるスペースをも有効活用することができるので、太陽電池ユニットの光を受光する面積を削ることなく、最大限の面積を当該受光面に利用することができる。
【0031】
(12)また、本発明の太陽電池システムは、前記スルーホールおよびランドが、前記太陽電池ユニットが前記フレキシブルプリント基板に装着された際の当該太陽電池ユニットの中央近傍に形成されている構成を有している。
【0032】
この構成により、本発明の太陽電池システムは、ITOなど第2電極層の材質に伴う抵抗率が高い場合であっても、第2電極層の平面上の各位置からの抵抗値を等価的に下げることができるので、太陽電池ユニットから効率よく生成された電圧を出力させることができる。
【0033】
(13)また、本発明の太陽電池システムは、前記配線パターンには前記太陽電池ユニットを配設する位置を位置決めするアライメントマークが形成されている構成を有している。
【0034】
この構成により、本発明の太陽電池システムは、製造過程において容易にかつ的確にフレキシブルプリント基板上に太陽電池ユニットを積層することができる。
【0035】
(14)上記課題を解決するため、本発明の太陽電池システムの製造方法は、太陽電池ユニットと当該太陽電池ユニットによって生成された電圧の出力制御を行う出力回路が形成されるフレキシブルプリント基板とを備える太陽電池システムを製造する製造方法であって、前記太陽電池ユニットと前記出力回路を接続するための配線パターンであって当該出力回路が形成される配線パターンを有する前記フレキシブルプリント基板を準備する準備工程と、前記配線パターン上に、受光された光から電圧を生成させるための光電変換が行われる光電変換層を形成する光電変換層形成工程と、前記光電変換層上に積層され、当該光電変換層に光を受光させるための構造を有する表面電極層を形成する表面電極層形成工程と、を含み、前記配線パターンが、前記太陽電池ユニットの裏面電極層として用いられる構成を有している。
【0036】
この構成により、本発明の製造方法は、太陽電池ユニットに基づいて生成された電圧を出力する際に必要な回路も含めて薄膜化および当該回路全体のスペースの効率化を図ることが可能な太陽電池システムにおいて、そのフレキシブルプリント基板に配線パターンが形成された後に当該フレキシブルプリント基板上に太陽電池ユニットを形成するので、フレキシブルプリント基板上に配線パターンを貼り合わせる際に加えられる圧力を受けることなく、太陽電池ユニットを形成することができる。したがって、本発明の製造方法は、太陽電池ユニットを破損することなく、太陽電池システムを的確にかつ確実に製造することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、薄膜化および出力回路などの太陽電池ユニットを搭載する部分のスペースの効率化を図ることができるので、小型の電子機器またはデザインの制約により電源回路のスペースが限られた機器など、様々な機器に太陽電池に基づく電源システムを搭載することができる。
【0038】
また、本発明は、このような太陽電池システムにおいて、太陽電池ユニットを破損することなく、当該太陽電池システムを的確にかつ確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る電源回路システムの第1実施形態における構造を示す構造図である。
【図2】第1実施形態における太陽電池ユニットの構造を説明するための図である。
【図3】第1実施形態の電源回路システムにおける製造方法を説明するための図である。
【図4】第1実施形態における電源回路システムの構造を示す構造図のその他の例(I)である。
【図5】第1実施形態における電源回路システムの構造を示す構造図のその他の例(II)である。
【図6】第1実施形態における電源回路システムの構造を示す構造図のその他の例(III)である。
【図7】第1実施形態における電源回路システムの構造を示す構造図のその他の例(IV)である。
【図8】第1実施形態の電源回路システムにおける製造方法のその他の例を説明するための図である。
【図9】本発明に係る電源回路システムの第2実施形態における構造を示す構造図である。
【図10】第2実施形態における電源回路システムの等価回路である。
【図11】本発明に係る電源回路システムの第3実施形態における構造を示す構造図である。
【図12】第3実施形態における電源回路システムの等価回路である。
【図13】第3実施形態における電源回路システムの等価回路の変形例である。
【図14】本発明に係る電源回路システムの第4実施形態における構造を示す構造図である。
【図15】第4実施形態における電源回路システムの構造図の変形例である。
【図16】本発明に係る電源回路システムの第5実施形態における構造を示す構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本願の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、フレキシブルプリント基板上に搭載された太陽電池ユニットを有する電源回路システム(以下、単に、「電源回路システム」という。)を本願発明の太陽電池システムに適用した場合の実施形態である。
【0041】
[第1実施形態]
はじめに、図1〜図6の各図を用いて本発明に係る電源回路システムSの第1実施形態について説明する。
【0042】
まず、図1を用いて本実施形態の電源回路システムSの構造について説明する。なお、図1は、本実施形態における電源回路システムSの構造を示す構造図である。
【0043】
本実施形態の電源回路システムSは、図1に示すように、受光した光に基づいて電圧(以下、「電源電圧」ともいう。)Vを生成する太陽電池ユニット100と、当該太陽電池ユニット100を支持するとともに当該太陽電池ユニット100によって生成された電源電圧Vの出力制御またはその調整を行う出力回路10を有するフレキシブルプリント基板(以下、単に「FPC」という。)200と、から構成される。
【0044】
太陽電池ユニット100は、例えば、ショットキー型若しくはヘテロ接合型(バイレイヤー型およびバルクへテロ型を含む。)の有機薄膜太陽電池、または、色素増感型太陽電池の構造を有している。具体的には、この太陽電池ユニット100は、一方の面(受光面)に受光した光に基づいて電源電圧Vを生成させる光電変換を実行する光電変換層110と、当該光電変換層110に光を受光させるための透明な材料から形成される電極層(以下、「透明電極層」という。)120と、から形成される積層体であり、FPC200の一方の面(以下、「第1基板面」という)に形成されている。そして、この太陽電池ユニット100は、後述するFPC200の上部配線パターン220を裏面電極として用いるようになっており、生成された電圧をFPC200上に形成された出力回路10に出力するようになっている。
【0045】
また、この太陽電池ユニット100には、透明電極層120と光電変換層110とを絶縁しつつ、出力回路10(すなわち、後述の上部および下部配線パターン220、230)と電気的に接続するためのスルーホールHが形成されている。特に、本実施形態のスルーホールHは、後述する上部配線パターン220上に設けられたランドMに接合される。また、このスルーホールHは、太陽電池ユニット100の平面上において中央付近に形成されるようになっており、ITOなどの透明電極層120の材質に伴う抵抗率が高い場合であっても、透明電極層120の平面における各位置からの抵抗値を等価的に下げることができるので、太陽電池ユニット100から効率よく生成された電圧を出力させることができるようになっている。
【0046】
なお、本実施形態において、例えば、太陽電池ユニット100がショットキー型またはヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池の構造を有している場合には、光電変換効率の向上および透明電極層120と光電変換層110との界面における平滑性や密着性の改善のために設けられた正孔取出し層113を有している。また、本実施形態の太陽電池ユニット100の積層構造の詳細について、後述する。
【0047】
FPC200は、両面に金属製の配線パターンが形成される両面2層金属フレキシブルプリント基板であり、図1に示すように、ポリイミドやPETから形成されるベース210と、当該ベース210の上面であって太陽電池ユニット100が積層される第1基板面に積層される配線パターン(以下、「上部配線パターン」という。)220と、ベース210の下面であって第1基板面と反対の面(以下、「第2基板面」という。)に積層される配線パターン(以下、「下部配線パターン」)230と、から形成される。
【0048】
上部配線パターン220は、上面に太陽電池ユニット100が積層されており、当該太陽電池ユニット100の裏面電極として機能する。また、この上部配線パターン220には、太陽電池ユニット100の裏面電極として機能する部分の他に、太陽電池ユニット100に形成されたスルーホールHと接合されるランドMと下部配線パターン230との接続を行う接続パターンが形成されている。具体的には、このランドMは、太陽電池ユニット100をFPC200上に積層する際にその位置決めに用いられるアライメントマークとしての機能を有している。そして、このランドMは、透明電極層120を、出力回路10を形成する下部配線パターン230に接続するために、上部配線パターン220の他の配線パターンと絶縁されて独立しており、ベース210に設けられた貫通孔を介して下部配線パターン230と接続されている。
【0049】
なお、このランドMは、アライメントマークとしてスルーホールHとともに円形である必要がなく、十字などの太陽電池ユニット100とFPC200の上下左右の位置決めができる形状を有していればよい。また、本実施形態の上部配線パターン220は、このランドMの他に、他のアライメントマークを有していてもよいし、他のアライメントマークが形成されている場合には、アライメントマークとして機能しないランドMを有していてもよい。
【0050】
また、上部配線パターン220には、出力回路10と、太陽電池ユニット100に基づいて生成されて出力回路10にて制御または調整された電圧(以下、「出力電圧」という。)Vによって駆動する他の回路(以下、「外部電子回路」という。)との接続を行うためのソケットに嵌め込むタイプの電極端子、すなわち、コネクタ(コネクタの詳細については後述の他の実施形態にて説明する。)が設けられている。
【0051】
上部配線パターン220を形成する材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、上述するように太陽電池の種別によって、適切な材料が選択されるようになっており、例えば、ニッケルやアルミニウムによって形成されている。また、上部配線パターン220の膜厚は、例えば、9μmであることが好ましい。
【0052】
下部配線パターン230は、スルーホールHおよびランドMを介して透明電極層120と接続される。また、この下部配線パターン230には、例えば、このスルーホールHの配設位置に伴って形成される配線パターン上に、抵抗素子、スイッチ素子、コンデンサ素子またはコイル素子などの電子回路素子Eやレギュレータなどの電源回路システム用の集積回路チップ(以下、単に「集積回路チップ」という。)Iの電子回路部品が実装される。そして、この下部配線パターン230は、これらの電子回路素子Eおよび集積回路チップIとともに、太陽電池ユニット100にて生成された電源電圧Vを調整するための出力回路10を構成するようになっている。また、電子回路素子E及び集積回路チップIは、下部配線パターン230に実装された後に、樹脂などの保護層によって被覆されており、可撓性を有するFPC200の全体が湾曲された場合であっても、破損しないように実装されている。
【0053】
下部電極パターンを形成する材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、銅(Cu)によって形成されている。また、下部電極パターンの膜厚は、例えば、9μmであることが好ましい。
【0054】
なお、本実施形態のFPC200は、下部配線パターン230上に配線の酸化を防ぐための保護膜(図示しない)を有している。ただし、電子回路部品が実装されている部分には保護膜は形成されていない。また、本実施形態のベース210は、本発明の基材を構成するとともに、上部配線パターン220は、本発明の配線パターンを構成し、本実施形態の下部配線パターン230は、本発明の配線パターン及び回路パターンを構成する。
【0055】
次に、図2を用いて本実施形態における太陽電池ユニット100の構造について説明する。なお、図2は、本実施形態における太陽電池ユニット100の構造を説明するための図である。また、図2には、光電流の流れる方向および正負の極性を示す。
【0056】
例えば、本実施形態の太陽電池ユニット100は、図2に示すように、P型およびN型有機半導体層111、112をそれぞれ有し、それらの界面において形成されるPN接合を利用して電荷分離を生じさせるバイレイヤー型、N型およびP型の半導体材料を均一に分散された混合層115を有し、この混合層115内で形成されるPN接合を利用して電荷分離を生じさせるバルクへテロ型、若しくは、各電極と光電変換層110(P型半導体層)との界面において形成されるショットキー障壁を利用して電荷分離を生じさせるショットキー型の有機薄膜太陽電池の構造、または、有機系の色素に基づいて電荷分離を行う色素増感型太陽電池の構造を有している。
【0057】
なお、バイレイヤー型、バルクへテロ型またはショットキー型の有機薄膜太陽電池の構造を有する太陽電池ユニット100を、それぞれ、「バイレイヤー型有機薄膜太陽電池ユニット」、「バルクへテロ型有機薄膜太陽電池ユニット」または「ショットキー型有機薄膜太陽電池ユニット」といい、色素増感型太陽電池の構造を有する太陽電池ユニットを、「色素増感型太陽電池ユニット」という。以下、各種別毎に太陽電池ユニット100の構造について説明する。
【0058】
(1)バイレイヤー型有機薄膜太陽電池ユニット
バイレイヤー型有機薄膜太陽電池ユニット100は、図2(a)に示すように、裏面電極としての上部配線パターン220上に、N型有機半導体層111およびP型有機半導体層112からなる光電変換層110と、正孔取出し層113と、透明電極層120と、が順次積層されている。
【0059】
(光電変換層(P型有機半導体層+N型有機半導体層))
光電変換層110は、有機薄膜太陽電池ユニット100における電荷分離に寄与し、受光により生じた電子および正孔を各々反対方向の電極に向って輸送させる機能を有している。そして、この光電変換層110は、上部配線パターン220上に積層された電子受容体として機能するN型有機半導体層111(電子輸送層)と、N型有機半導体層111上に積層された電子供与体として機能するP型有機半導体層112(正孔輸送層)とを各々別個に備え、それらの界面において形成されるPN接合を利用して電荷分離を生じさせ、光電流を得るようになっている。
【0060】
N型有機半導体層111を形成する材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されない。具体的には、本実施形態のN型有機半導体層111を形成する材料は、CN−ポリ(フェニレン−ビニレン)、MEH−CN−PPV、−CN基または−CF3基含有ポリマー、それらの−CF3置換ポリマー、ポリ(フルオレン)誘導体、C60などのフラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、ペリレン誘導体、多環キノン、キナクリドン等が用いられるようになっている。
【0061】
P型有機半導体層112を形成する材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されない。具体的には、本実施形態のP型有機半導体層112を形成する材料としては、ポリフェニレンおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、ポリアルキルチオフェンおよびその誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、有機金属ポリマーが用いられるようになっている。
【0062】
N型有機半導体層111およびP型有機半導体層112の膜厚は、限定されないが、例えば、各々の膜厚が0.1nm〜1500nmの範囲内、特に、1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。この膜厚が上記範囲より厚い場合には、N型有機半導体層111およびP型有機半導体層112における体積抵抗が高くなる可能性があるとともに、膜厚が上記範囲より薄い場合には、上部配線パターン220と透明電極層120との間で短絡が生じる可能性があるからである。
【0063】
N型有機半導体層111およびP型有機半導体層112を形成する方法としては、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されない。具体的には、N型有機半導体層111およびP型有機半導体層112を形成する方法としては、印刷、スクリーン印刷、インクジェット方式によって光電変換層110を上部配線パターン220に直接パターニングする方法、スピンコートなどで塗布後に感光性レジスト膜を設け、露光および現像することによって、光電変換層110を上部配線パターン220に形成する方法が用いられるようになっている。
【0064】
(正孔取出し層)
正孔取出し層113は、P型有機半導体層112上に積層され、上述したように、光電変換効率の向上および透明電極層120と光電変換層110のとの界面における平滑性や密着性の改善のために設けられている。
【0065】
具体的には、この正孔取出し層113は、導電性高分子材料と両親媒性材料とを含有している。この正孔取出し層113における導電性高分子材料としては、一般的に正孔取出し層113に使用されるものを用いるようになっており、具体的には、ドープされたポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、トリフェニルジアミン等の導電性有機化合物、あるいは、テトラチオフルバレン、テトラメチルフェニレンジアミン等の電子供与性化合物と、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン等の電子受容性化合物とからなる電荷移動錯体を形成する有機材料等が用いられるようになっている。また、この正孔取出し層113の両親媒性材料としては、一般的な界面活性剤を用いられるようになっており、例えば、非イオン性界面活性剤またはフッ素系界面活性剤を用いられるようになっている。
【0066】
正孔取出し層113の膜厚は、導電性高分子材料や両親媒性材料等の種類によって異なり、上述した特性等を考慮して適宜調整される。具体的には、正孔取出し層113の膜厚は、0.01nm〜3000nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1nm〜1500nmの範囲内、最も好ましくは1nm〜600nmの範囲内である。この膜厚が厚すぎると、正孔伝達経路長に比例して抵抗値が上がるため、正孔を十分に第1電極層に取り出せない可能性があるとともに、膜厚が薄すぎると、正孔取出し層113と光電変換層110との密着性が低下し、また光電変換層110の厚みが比較的薄いために透明電極の突起により上部配線パターン220と透明電極層120とが直接接触して短絡する可能性があるからである。
【0067】
正孔取出し層113の表面粗さRaは、導電性高分子材料や両親媒性材料等の種類によって異なるものであり、上述した特性等を考慮して適宜調整される。具体的には正孔取出し層113の表面粗さRaが50nm以下であることが好ましく、より好ましくは30nm以下、最も好ましくは10nm以下である。表面粗さが大きすぎると、正孔取出し層113と透明電極層120や光電変換層110との密着性が低下したり、また光電変換層110の厚みが比較的薄いために正孔取出し層113表面の突起により透明電極層120と上部配線パターン220とが直接接触して短絡したりする可能性があるからである。
【0068】
正孔取出し層113の表面抵抗値は、300Ω/□以下であることが好ましく、より好ましくは150Ω/□以下、最も好ましくは50Ω/□以下である。表面抵抗値が大きすぎると、光電変換層110で発生した正孔を十分に透明電極層120に移動させることができない、または、正孔取出し層113の平滑性や密着性に起因する障壁の影響が大きくなりすぎるために有機薄膜太陽電池としての機能が損なわれる可能性があるからである。
【0069】
正孔取出し層113を形成する方法としては、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されない。具体的には、正孔取出し層113を形成する方法としては、印刷、スクリーン印刷、インクジェット方式によって正孔取出し層113を上部配線パターン220に直接パターニングする方法、または、スピンコートなどで塗布後に感光性レジスト膜を設け、露光および現像することによって、正孔取出し層113を上部配線パターン220に形成させる方法を用いるようになっている。
【0070】
(透明電極層)
透明電極層120は、正孔取出し層113上に積層され、光電変換層110が受光可能となるようにITO(Indium Tin Oxide)や酸化チタンなどの透明な導電性の材料によって形成される。
【0071】
また、この透明電極層120のシート抵抗値は、20Ω/□以下、中でも10Ω/□以下、特に5Ω/□以下であることが好ましい。シート抵抗値が上記範囲より大きい場合、発生した電荷を十分に出力回路10へ伝達できない可能性があるからである。また、このような透明電極の膜厚は、0.1〜500nmの範囲内、その中でも、1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄い場合は、透明電極層120のシート抵抗が大きくなりすぎ、発生した電荷を十分に外部電子回路へ伝達できない可能性があるとともに、膜厚が上記範囲より厚い場合には、全光線透過率が低下し、光電変換効率を低下させる可能性があるからである。
【0072】
この透明電極層120の形成方法としては、一般的な方法を用いるようになっている。具体的には、この透明電極層120の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法や、CVD法等の乾式塗工法、およびITO微粒子を含有する塗工液等を塗布する湿式塗工法を用いるようになっている。また、透明電極層120をパターン状に形成する場合のパターニング方法としては、透明電極層120を所望のパターンに精度良く形成することができる方法であれば特に限定されないが、具体的には、フォトリソグラフィー法等を用いるようになっている。
【0073】
(2)バルクへテロ型有機薄膜太陽電池ユニット
バルクヘテロ型有機薄膜太陽電池ユニット100は、図2(b)に示すように、裏面電極としての上部配線パターン220上に、N型およびP型の半導体材料を均一に分散された混合層115からなる光電変換層110と、正孔取出し層113と、透明電極層120と、が順次積層されている。なお、光電変換層110を除き、正孔取出し層113および透明電極層120の構造は、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池ユニット100と同一の構造であるため、その説明を省略する。
【0074】
(光電変換層(混合層))
光電変換層110は、有機薄膜太陽電池ユニット100における電荷分離に寄与し、受光により生じた電子および正孔を各々反対方向の電極に向って輸送させる機能を有している。そして、この光電変換層110は、上部配線パターン220上に積層された電子受容体および電子供与体の両方の機能を有する混合層115(電子正孔輸送層)を形成し、混合層115内で形成されるpn接合を利用して電荷分離を生じさせ、光電流を得るようになっている。
【0075】
混合層115を形成する材料は、一般的に、バルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池の構造において用いられているものであれば特に限定されない。具体的には、混合層115を形成する材料は、電子供与性の材料および電子受容体の材料の両方の材料を均一に分散させたものであり、電子供与性の材料および電子受容性の両方の材料の混合比は、用いる材料により最適な混合比に適宜調整する。
【0076】
電子受容性の材料としては、そのような機能を有するものであれば特に限定されない。具体的には、CN−ポリ(フェニレン−ビニレン)、MEH−CN−PPV、−CN基または−CF3基含有ポリマー、それらの−CF3置換ポリマー、ポリ(フルオレン)誘導体、C60誘導体、カーボンナノチューブ、ペリレン誘導体、多環キノン、キナクリドン等が用いられるようになっている。また、電子供与性の材料としては、そのような機能を有するものであれば特に限定されない。具体的には、ポリフェニレンおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、ポリアルキルチオフェンおよびその誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、有機金属ポリマー等が用いられるようになっている。
【0077】
この混合層115の膜厚は、一般的にバルクヘテロ接合型において採用されている膜厚であれば特に限定されないが、具体的には、0.2nm〜3000nmの範囲内、その中でも、1nm〜600nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より厚い場合には、電子正孔輸送層における体積抵抗が高くなる可能性があるとともに、一方、膜厚が上記範囲より薄い場合には、透明電極層120および上部配線パターン220に短絡が生じる可能性があるからである。
【0078】
混合層115を形成する方法としては、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されない。具体的には、混合層115を形成する方法としては、印刷、スクリーン印刷、インクジェット方式によって光電変換層110を上部配線パターン220に直接パターニングする方法、スピンコートなどで塗布後に感光性レジスト膜を設け、露光および現像することによって、光電変換層110を上部配線パターン220に形成する方法が用いられるようになっている。
【0079】
(2)ショットキー型有機太陽電池ユニット
ショットキー型有機薄膜太陽電池ユニット100は、図2(c)に示すように、裏面電極としての上部配線パターン220上に、P型(またはN型)の半導体材料を均一に分散されたP型有機半導体層112(またはN型有機半導体層)からなる光電変換層110と、正孔取出し層113と、透明電極層120と、が順次積層されている。なお、光電変換層110を除き、正孔取出し層113および透明電極層120の構造は、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池ユニット100と同一の構造であるため、その説明を省略する。
【0080】
(光電変換層(P型有機半導体層またはN型有機半導体層))
光電変換層110は、有機薄膜太陽電池ユニット100における電荷分離に寄与し、受光により生じた正孔または電子を所定の電極に向って輸送させる機能を有している。そして、この光電変換層110は、上部配線パターン220上に積層された電子受容性または電子供与性の機能を有する層、すなわち、正孔輸送層としてのP型有機半導体層または電子輸送層としてのN型有機半導体層とすることにより、そのような光電変換層110と電極との界面において形成されるショットキー障壁を利用して光電流を得るようになっている。
【0081】
ショットキー型有機薄膜太陽電池ユニット100における光電変換層110は、電子受容性または電子供与性の材料を用いて形成するようになっている。例えば、透明電極および上部配線パターン220のうち仕事関数が小さい方の電極(仕事関数が大きい方の電極)との界面にショットキー障壁が形成されるため、その界面において光電流を生じさせることができるようになっている。
【0082】
光電変換層110を形成する材料としては、電子受容性または電子受容性の性質を有する材料であれば特に限定されない。具体的には、ペンタセンなどの有機単結晶、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレンおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、ポリアルキルチオフェンおよびその誘導体等の導電性高分子およびその誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、メロシアニン誘導体、クロロフィル等の合成色素、有機金属ポリマー等が用いられるようになっている。
【0083】
光電変換層110の膜厚としては、0.1nm〜1500nmの範囲内、その中でも、1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より厚い場合には、光電変換層110の体積抵抗が高くなる可能性があり、一方、膜厚が上記範囲より薄い場合には、透明電極層120および上部配線パターン220に短絡が生じる可能性があるからである。
【0084】
光電変換層110を形成する方法としては、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されない。具体的には、光電変換層110を形成する方法としては、印刷、スクリーン印刷、インクジェット方式によって光電変換層110を上部配線パターン220に直接パターニングする方法、スピンコートなどで塗布後に感光性レジスト膜を設け、露光および現像することによって、光電変換層110を上部配線パターン220に形成する方法が用いられるようになっている。
【0085】
(4)色素増感型太陽電池ユニット
色素増感型太陽電池ユニット100は、図2(d)に示すように、裏面電極としての上部配線パターン220上に、色素増感剤が含まれる酸化物半導体層117からなる光電変換層110と、透明電極層120と、が順次積層されている。なお、透明電極層120は、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池ユニット100その他の上記の太陽電池ユニット100と同一であるため、その説明を省略する。
【0086】
(光電変換層(酸化物半導体層))
光電変換層110は、金属酸化物半導体粒子と、光を吸収し起電力を生じさせることが可能であって金属酸化物半導体粒子の表面に吸着した色素増感剤と、を含有して形成される。この光電変換層110においては、金属酸化物半導体微粒子の表面に吸着した色素増感剤が、光を受光することによって励起され、励起された電子が上部配線パターン220へ伝導し、スルーホールHを通じて透明電極層120へ伝導されるとともに、酸化還元対を介して色素増感剤の基底準位に電子が戻ることよって光電流を得るようになっている。
【0087】
この金属酸化物半導体微粒子としては、半導体特性を備える金属酸化物からなるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、TiO、ZnO、SnO、ITO、ZrO、MgO、Al、CeO、Bi、Mn、Y、WO、Ta、Nb、La等が用いられるようになっている。
【0088】
この金属酸化物半導体微粒子の粒径としては、酸化物半導体層117の表面積を所望の範囲内にできる程度であれば特に限定されるものではないが、通常、1nm〜10μmの範囲内が好ましく、特に10nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。
【0089】
色素増感剤としては、光を吸収し起電力を生じさせることが可能なものであれば特に限定はされない。このような色素増感剤としては、有機色素または金属錯体色素を用いるようになっている。
【0090】
光電変換層110の厚みは、適宜決定できるものであり特に限定されるものではいが、通常、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、特に5μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。光電変換層110の厚みが上記範囲よりも厚いと、酸化物半導体層117自体の凝集破壊が起りやすく、膜抵抗となりやすくなってしまう場合があるからである。また、上記範囲よりも薄いと厚みが均一な酸化物半導体層117を形成するのが困難になるとともに、例えば、酸化物半導体電極用積層体を用いて色素増感型太陽電池を作製した場合に、色素増感剤を含んだ酸化物半導体層117が太陽光などを十分に吸収できないために、性能不良になる可能性があるからである。
【0091】
光電変換層110を形成する方法としては、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されない。具体的には、光電変換層110を形成する方法としては、上部配線パターン220上に光電変換層110を成形するための塗工液をダイコートやスクリーン印刷(ロータリー式)によって塗布して焼成する方法が用いられるようになっている。
【0092】
次に、図3を用いて本実施形態の電源回路システムSの製造方法について説明する。なお、図3は、本実施形態の製造方法を説明するための図である。
【0093】
本実施形態の製造方法においては、既に所定の上部配線パターン220および下部配線パターン230を有するFPC200に対して太陽電池ユニット100を形成する方法であって、太陽電池ユニット100を形成した後にFPC200に電子回路素子Eおよび集積回路チップIを形成する方法である。また、本製造方法においては、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池ユニット100を形成する場合の製造方法を用いて説明する。
【0094】
まず、図3(a)に示すように、アライメントマークを構成するランドMを有する上部配線パターン220および出力回路10用の配線パターンが形成された下部配線パターン230が既に貼り合わされたFPC200に対して、図3(b)に示すように、スルーホールHとなる部分に孔(以下、「スルーホール用孔」という。)OとランドM(アライメントマーク)を合わせるとともに、当該スルーホール用孔Oを形成させつつ、上部配線パターン220上に光電変換層110が形成される。例えば、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池ユニット100の場合には、印刷、スクリーン印刷、インクジェット方式によって光電変換層110を上部配線パターン220に直接パターニングする方法、スピンコートなどで塗布後に感光性レジスト膜を設け、露光および現像することによって、光電変換層110が上部配線パターン220に形成される。なお、バルクへテロ型有機薄膜太陽電池ユニット、ショットキー型有機薄膜太陽電池ユニットまたは色素増感型太陽電池ユニットの場合でもバイレイヤー型太陽電池ユニットと同様に光電変換層110が形成される。
【0095】
次いで、図3(c)に示すように、ランドM(アライメントマーク)に合わせつつ、スルーホール用孔Oを維持し、光電変換層110上に正孔取出し層113が形成される。例えば、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池ユニット100の場合には、光電変換層110と同様に、印刷、スクリーン印刷、インクジェット方式によって光電変換層110を上部配線パターン220に直接パターニングする方法、スピンコートなどで塗布後に感光性レジスト膜を設け、露光および現像することによって、光電変換層110が上部配線パターン220に形成される。
【0096】
次いで、図3(d)に示すように、正孔取出し層113上にスルーホールHを形成しつつ透明電極が形成される。例えば、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池ユニット100の場合には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法や、CVD法等の乾式塗工法、およびITO微粒子を含有する塗工液等が塗布されて形成される。
【0097】
最後に、図3(e)に示すように、電子回路素子Eおよび集積回路チップIを実装してFPC200上に太陽電池ユニット100が形成された電源回路システムSが生成される。
【0098】
以上、本実施形態の電源回路システムSは、FPC200の上部配線パターン220を太陽電池ユニット100の電極と共通化させることができるので、可撓性を確保してかつ太陽電池ユニット100を薄膜化することができるとともに、出力回路10を当該太陽電池ユニット100が形成される基板上に直接形成することができる。したがって、この電源回路システムSは、太陽電池ユニット100に基づいて生成された電圧を出力する際に必要な回路も含めて電源回路システムSの薄膜化および当該回路全体のスペースの効率化を図ることができるので、汎用性が高く、様々な機器の電源回路システムSとして搭載することができる。
【0099】
また、本実施形態の電源回路システムSは、太陽電池ユニット100が形成されたFPC200に、例えば、コンデンサ素子、コイル素子、スイッチ素子またはダイオード素子などの電子回路素子Eおよびレギュレータなどの集積回路チップIを実装することができるので、例えば、レギュレータ回路や昇圧回路などの太陽電池ユニット100によって生成された電圧を制御または調整する回路など種々の回路を出力回路10として形成することができる。したがって、この電源回路システムSは、太陽電池ユニット100において生成された電源電圧Vに基づいて駆動する外部電子回路に併せて当該電源電圧Vを適切に制御または調整することができる。
【0100】
また、本実施形態の電源回路システムSは、アライメントマークおよびスルーホールHによって製造過程において容易にかつ的確に太陽電池ユニット100をフレキシブルプリント基板上に積層することができるとともに、透明電極層120と出力回路10が形成される下部配線パターン230を容易にかつ的確に接続することができる。
【0101】
また、本実施形態の電源回路システムSは、スルーホールHおよびランドMを介して太陽電池ユニット100と下部配線パターン230を接続することができるので、太陽電池ユニット100に積層されて構成される出力回路10との接続を容易にし、回路全体としてのスペースを有効活用することができる。特に、この電源回路システムSは、配線パターン上に設けられるアライメントマークの無駄となるスペースをも有効活用することができるので、太陽電池ユニット100の光を受光する面積を削ることなく、最大限の面積を当該受光面に利用することができる。
【0102】
また、本実施形態の電源回路システムSは、ITOなど透明電極層120の材質に伴う抵抗率が高い場合であっても、透明電極層120の平面上の各位置からの抵抗値を等価的に下げることができるので、太陽電池ユニット100から効率よく生成された電圧を出力させることができる。
【0103】
次に、図4〜図7の各図を用いて本実施形態の電源回路システムSにおける変形例について説明する。なお、図4〜図7は、本実施形態における電源回路システムSの構造を示す構造図のその他の例(I)〜(IV)である。
【0104】
本実施形態の電源回路システムSの第1変形例は、上述の実施形態において下部配線パターン230に電子回路素子Eおよび集積回路チップIが実装されている点に代えて、第1基板面(太陽電池ユニット100が積層された面)に形成された上部配線パターン220に、電子回路素子Eおよび集積回路チップIを実装する点に特徴があり、その他の構成は、上述の実施形態と同一である。
【0105】
この第1変形例においては、図4に示すように、上部配線パターン220には、電極部分に並設されるとともに、その上面に電子回路素子および集積回路チップIが実装される配線パターン部分222を有し、抵抗素子、スイッチ素子、コンデンサ素子またはコイル素子などの電子回路素子Eやそれらの電子回路素子Eが複数組み合わせて形成される集積回路チップIが当該配線パターン部分に実装される。そして、この配線パターン部分は、電子回路素子Eおよび集積回路チップIとともに、太陽電池ユニット100にて生成された電源電圧Vを制御または調整するための出力回路10を構成するようになっている。
【0106】
この構成により、第1変形例の電源回路システムSは、上部配線パターン220にコンデンサ素子、コイル素子、スイッチ素子またはダイオード素子などの電子回路素子Eまたは集積回路チップIを適宜実装することができるので、当該電源回路システムSの配設位置を考慮して出力回路10を形成することができる。
【0107】
本実施形態の電源回路システムSの第2変形例は、上述の実施形態において太陽電池ユニット100における透明電極層120に代えて、導電性材料がメッシュ状に形成されたフィルムを電極層に用いる点に特徴があり、その他の構成は、上述の実施形態と同一である。
【0108】
この第2変形例の電極に用いられるメッシュ状の電極層(以下、「メッシュ電極層」という。)130は、図5に示すように、所定の透明なフィルムに銀などの導電性粒子が微細なメッシュ状にパターン印刷されて形成されており、折り曲げや任意のパターン形成を行うことができるようになっている。
【0109】
この構成により、第2変形例の電源回路システムSは、例えば、ITOを用いた透明電極層120に比べ、コストを低減することができるとともに、有機材料との相性が良く、かつ、高い可撓性を有しているので、汎用性が高く、様々な機器の電源回路システムSとして搭載することができる。
【0110】
本実施形態の電源回路システムSの第3変形例は、上述の実施形態において下部配線パターン230に電子回路素子Eおよび集積回路チップIが実装されている点に代えて、薄膜トランジスタT10が実装されている点に特徴があり、その他の構成は、上述の実施形態と同一である。
【0111】
この第3変形例においては、図6に示すように、下部パターンには、配線部分の他にベース210に張り合わされた薄膜トランジスタT10を有する出力回路10が形成されており、上部配線パターン220および下部配線パターン230によって太陽電池ユニット100と接続されるとともに、図示しない外部に接続された外部電子回路と接続されるようになっている。この構成により、第3変形例の電源回路システムSは、出力回路10に薄膜トランジスタT10をも用いることができる。
【0112】
本実施形態の電源回路システムSの第4変形例は、上述の実施形態において下部配線パターン230に電子回路素子Eおよび集積回路チップIが実装されている点に代えて、上部配線パターン220に太陽電池ユニット100と同一の積層構造を有する薄膜ダイオードD10が形成されている点に特徴があり、その他の構成は、上述の実施形態と同一である。
【0113】
この第4変形例においては、図7に示すように、太陽電池ユニット100の形成工程と同一の工程によって、上部配線パターン220上に、光電変換層110および透明電極層120からなる薄膜ダイオードD10が形成される。また、この薄膜ダイオードD10は、太陽電池ユニット100とは積層構造上においては、すなわち、上部配線パターン220、光電変換層110および透明電極層120においては、太陽電池ユニット100を形成する上部配線パターン220、光電変換層110および透明電極層120とそれぞれ絶縁されているとともに、薄膜ダイオードD10が形成された一部に下部配線パターン230に接続するための複数のコンタクトホール(スルーホール)20A、20Bが形成されている。そして、この薄膜ダイオードD10は、図7に示されるような方向の電流特性を有している。また、上部配線パターン220の一部は、ダイオードD10の一の電極として機能するようになっており、ダイオードD10の特徴的な機能を発揮させるための一部として用いられる。
【0114】
なお、薄膜ダイオードD10を的確に動作させるために、薄膜ダイオードD10の透明電極層120の上に、アルミニウム、銀ペーストまたは感光性レジストなど光遮蔽層を設けてもよい。また、太陽電池ユニット100は、スルーホールHの他に下部電極パターンに接続するためのコンタクトホール20Cを有している
【0115】
この構成により、第4変形例の電源回路システムSにおいて、出力回路10に薄膜ダイオードD10を備えた場合に当該電源回路システムSを簡易に製造することができるとともに、上部配線パターン220が、ダイオードD10の一部の電極を構成し、電流を遮断するダイオードD10の特徴的な機能を発揮させるための部分として用いられるので、出力回路10においてもスペースの効率化を図ることができる。
【0116】
次に、図8を用いて本実施形態の電源回路システムSの製造方法における変形例について説明する。なお、図8は、本実施形態における電源回路システムSの製造方法のその他の例を説明するための図である。
【0117】
本実施形態の変形例の製造方法においては、既に所定の上部配線パターン220および下部配線パターン230と当該下部配線パターン230上に電子回路素子Eおよび集積回路チップIとを有するFPC200に対して太陽電池ユニット100を形成する方法である。また、本製造方法においては、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池ユニット100を形成する場合の製造方法を用いて説明する。
【0118】
まず、図8(a)に示すように、アライメントマークを構成するランドMを有する上部配線パターン220と出力回路10用の配線パターンが形成され、回路素子および集積回路チップIが既に実装されたた下部配線パターン230とが形成されたFPC200に対して、図8(b)に示すように、電子回路および集積回路チップIが治具Jに当接しないように当該治具JをFPC200に嵌める。
【0119】
次いで、図8(c)に示すように、スルーホールHとなるスルーホール用孔OとランドM(アライメントマーク)を合わせ、当該スルーホール用孔Oを形成しつつ上部配線パターン220上に光電変換層110が形成される。例えば、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池ユニット100の場合には、印刷、スクリーン印刷、インクジェット方式によって光電変換層110を上部配線パターン220に直接パターニングする方法、スピンコートなどで塗布後に感光性レジスト膜を設け、露光および現像することによって、光電変換層110が上部配線パターン220に形成される。なお、バルクへテロ型有機薄膜太陽電池ユニット、ショットキー型有機薄膜太陽電池ユニットまたは色素増感型太陽電池ユニットの場合でもバイレイヤー型太陽電池ユニットと同様に光電変換層110が形成される。
【0120】
次いで、図8(d)に示すように、ランドM(アライメントマーク)に合わせつつ、スルーホール用孔Oを維持し、光電変換層110上に正孔取出し層113が形成される。例えば、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池ユニット100の場合には、光電変換層と同様に、印刷、スクリーン印刷、インクジェット方式によって光電変換層110を上部配線パターン220に直接パターニングする方法、スピンコートなどで塗布後に感光性レジスト膜を設け、露光および現像することによって、光電変換層110が上部配線パターン220に形成される。
【0121】
次いで、図8(e)に示すように、正孔取出し層113上に透明電極が形成されて太陽電池ユニット100を備える電源回路システムSが生成される。なお、例えば、バイレイヤー型有機薄膜太陽電池ユニット100の場合には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法や、CVD法等の乾式塗工法、およびITO微粒子を含有する塗工液等が塗布されて形成される。
【0122】
最後に、図8(f)に示すように、治具JをFPC200から取り外し、FPC200上に太陽電池ユニット100が形成された電源回路システムSが生成される。
【0123】
[第2実施形態]
次に、図9および図10の各図を用いて本発明に係る電源回路システムSの第2実施形態について説明する。
【0124】
本実施形態の電源回路システムSは、第1実施形態の出力回路10に、回路パターンによって形成されたコンデンサ素子C10、C20と集積回路チップIとしてレギュレータRとを用いた点(後述の図9および図10を参照)に特徴があり、その他の構成は、第1実施形態と同様であり、同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0125】
まず、図9および図10を用いて本実施形態の電源回路システムSの構造およびその等価回路について説明する。なお、図9は、本実施形態における電源回路システムSの構造を示す構造図であり、図10は、本実施形態における電源回路システムSの等価回路である。
【0126】
本実施形態の電源回路システムSは、図9に示すように、電源電圧Vを生成する太陽電池ユニット100と、上部配線パターン220と、レギュレータR、第1コンデンサC10および第2コンデンサC20が形成されている下部配線パターン230とからなるFPC200と、から構成される。特に、本実施形態の上部配線パターン220、下部配線パターン230、レギュレータR、第1コンデンサC10および第2コンデンサC10は、太陽電池ユニット100において生成された電源電圧Vを安定化させるためのレギュレータ回路を構成する。
【0127】
下部配線パターン230には、その一部のパターンによって形成される第1コンデンサC10および第2コンデンサC20と、レギュレータRを備える集積回路チップIと、が形成される。特に、第1コンデンサC10と第2コンデンサC20は、該当する下部配線パターン230の一部と、ベース210を介して対向して形成される上部配線パターン220の一部と、によって形成される。すなわち、第1コンデンサC10と第2コンデンサC20は、所定の位置に形成された下部配線パターン230からなる平面状の電極と、当該下部配線パターン230の位置に対応する位置に形成された上部配線パターン220からなる平面状の電極と、によって形成される。
【0128】
このように、本実施形態では、上部配線パターン220及び下部配線パターン230が、コンデンサ素子の電極を構成し、キャパシタンスの特徴的な機能を発揮させるための一部として用いられている。なお、上部配線パターン220には、下部配線パターン230のパターン効率のために、グランド接地に関する接続パターンが形成されている。
【0129】
本実施形態の電源回路システムSは、図10に示すような等価回路を形成するようになっており、レギュレータ回路を構成する。具体的には、この電源回路システムSにおいて、第1コンデンサC10が太陽電池ユニット100に並列に接続されるとともに、レギュレータRの一端に接続されている。特に、第1コンデンサC10は、レギュレータRに入力される、太陽電池ユニット100において生成された電源電圧Vを平滑化するようになっている。また、第2コンデンサC20は、レギュレータの他端及び出力端子30の間とグランドに接続され、レギュレータRから出力された電圧を平滑化して出力電圧Vとして出力端子30、すなわち、図示しない外部電子回路に出力するようになっている。
【0130】
以上のように、本実施形態の電源回路システムSは、第1実施形態の効果に加えて、FPC200に形成されたパターンの積層構造によってコンデンサ素子を形成することができるので、下部配線パターン230のみに実装されるリード型またはチップ型のコンデンサ素子などの厚さを有する素子を用いることなく、薄型化が可能となるとともに、出力回路10においてもスペースの効率化を図ることができる。
【0131】
また、この電源回路システムSは、コンデンサ素子をFPC200に実装するための配線を不要にして回路全体のスペース効率を向上させることができるとともに、太陽電池ユニット100に併せて電子回路素子Eが形成される回路パターンの面積をも確保することができるので、大きな静電容量を有するコンデンサ素子を実装することできるとともに、回路特性をも向上させることができる。
【0132】
なお、本実施形態の電源回路システムSにおいて、第1コンデンサC10および第2コンデンサC20に代えて平面コイルであるコイル素子をそれぞれ上部配線パターン220および下部配線パターン230の同一の位置に配設させて相互インダクタンスを発生させることができる。
【0133】
[第3実施形態]
次に、図11〜図13の各図を用いて本発明に係る電源回路システムSの第3実施形態について説明する。
【0134】
本実施形態の電源回路システムSは、第2実施形態において出力回路10がレギュレータ回路を構成する点に代えて昇圧回路を構成する点(後述する図11および図12を参照)に特徴があり、その他の構成は、第1実施形態と同様であり、同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。特に、本実施形態においては、下部配線パターン230部に、平面コイルL、トランジスタT20を制御するレギュレータRと、ダイオードD20およびトランジスタT20と、が実装される点に特徴がある。
【0135】
まず、図11および図12を用いて本実施形態の電源回路システムSの構造およびその等価回路について説明する。なお、図11は、本実施形態における電源回路システムSの構造を示す構造図であり、図12は、本実施形態における電源回路システムSの等価回路である。
【0136】
本実施形態の電源回路システムSは、図11に示すように、電源電圧Vを生成する太陽電池ユニット100と、平面コイルLおよび第2コンデンサC20が形成されるとともにレギュレータR、ダイオードD20およびトランジスタT20が実装されている下部配線パターン230とそれらを接続する上部配線パターン220とからなるFPC200と、から構成される。
【0137】
下部配線パターン230には、形成された回路パターンに沿って、第2コンデンサC20と平面コイルLが形成されているとともに、ダイオードD20およびトランジスタT20が実装されている。また、この下部配線パターン230には、太陽電池ユニット100によって生成された電源電圧Vを安定化するとともにトランジスタT20のスイッチングを制御するレギュレータRが集積回路チップIとして実装されている。
【0138】
このように、本実施形態では、第2実施形態と同様に、上部配線パターン220及び下部配線パターン230が、コンデンサ素子の電極を構成し、キャパシタンスの特徴的な機能を発揮させるための一部として用いられている。さらに、下部配線パターン230が、平面コイルLを構成し、インダクタンスの特徴的な機能を発揮させる部分として機能している。
【0139】
なお、本実施形態の第2コンデンサC20は、上述の実施形態と同様に、該当する下部配線パターン230の一部と、ベース210を介して対向して形成される上部配線パターン220の一部と、によって形成される。また、本実施形態の上部配線パターン220には、第2実施形態と同様に、太陽電池ユニット100の裏面電極としての機能する部分の他にグランド接地に関する接続パターンが形成されている。
【0140】
本実施形態の電源回路システムSは、図12に示すような昇圧回路としての等価回路を形成するようになっている。レギュレータRは、電圧が入力されるLBI(Low Battery Input)端子と、電圧を出力するVOUT端子と、トランジスタT20の駆動を制御するEXT(Exit)端子と、安定化される電圧を制御するために接地されるVFB(Feedback Voltage)端子と、接地されるグランド端子とを有している。
【0141】
平面コイルLは、電源電圧V(太陽電池ユニット100)とダイオードD20およびトランジスタT20のドレインとの間に接続され、所定のタイミングにて電源電圧Vに基づく電圧を蓄積し、当該蓄積した電圧を第2コンデンサC20に蓄積された電圧とともに出力端子30から外部に接続された外部電子回路に出力するようになっている。
【0142】
ダイオードD20は、平面コイルLと出力端子30およびレギュレータRのVOUT端子との間に接続され、平面コイルLから出力端子30に電流を流すが、レギュレータRのVOUT端子または出力端子30から平面コイルLへの電流の流れを禁止する。
【0143】
第2コンデンサC20は、所定のタイミングにて電源電圧Vに基づいて所定の電圧を蓄積するとともに、その蓄積した電圧を平面コイルLに蓄積された電圧とともに出力端子30から図示しない外部電子回路に出力するための機能を有している。
【0144】
トランジスタT20は、スイッチングトランジスタとして動作して、レギュレータRのEXT端子の出力に基づいて平面コイルLに蓄積された電圧を出力端子30から外部電子回路に出力するようになっている。具体的には、このトランジスタT20は、第2コンデンサC20に電圧が蓄積されている際におよび外部に電圧を出力する際に、レギュレータRの制御に基づいてスイッチング駆動せずにドレイン−ソース間を絶縁するとともに、平面コイルLに電圧を蓄積する際にレギュレータRの制御に基づいて駆動してドレイン−ソース間を通電するようになっている。
【0145】
以上のように、本実施形態の電源回路システムSは、第2実施形態と同様の効果に加えて、出力回路10として昇圧回路を形成することができるので、太陽電池ユニット100において外部電子回路の駆動に必要な電圧より小さな電圧しか発生できない場合であっても、当該外部電子回路の駆動用として用いることができる。
【0146】
なお、図13に示すように、本実施形態の電源回路システムSの下部配線パターン230において、第2コンデンサC20と出力端子30の間にスイッチSWが形成されてもよい。この場合に、この電源回路システムSは、図11に示すように、出力端子30側の一端と第2コンデンサC20の一端との間にスイッチSWを直列に形成し、昇圧回路として的確に動作するようにしてもよい。
【0147】
すなわち、スイッチSWは、平面コイルLに電圧が蓄積される際におよび第2コンデンサC20に電圧が蓄積される際にオフとなるとともに、平面コイルLおよび第2コンデンサC20に蓄積された電圧を外部電子回路に出力する際にオンとなり、太陽電池ユニット100において生成された電源電圧Vよりも高い電圧を的確に出力することができるようになっている。なお、図13は、本実施形態における電源回路システムSの等価回路の変形例である。
【0148】
[第4実施形態]
次に、図14および図15の各図を用いて本発明に係る電源回路システムSの第4実施形態について説明する。
【0149】
本実施形態の電源回路システムSは、第3実施形態において、複数の太陽電池ユニット100を備え、かつ、それらを並列に接続する点(後述する図14を参照)に特徴があり、その他の点は、第3実施形態(第1および第2実施形態も含む。)と同様であり、同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0150】
まず、図14を用いて本実施形態の電源回路システムSの構造について説明する。なお、図14は、本実施形態における電源回路システムSの構造を示す構造図である。
【0151】
本実施形態の電源回路システムSは、図14に示すように、複数(8枚)の電源電圧Vを生成する太陽電池ユニット100と、第3実施形態と同様に昇圧回路を形成するとともに各太陽電池ユニット100を並列接続するための上部配線パターン220および下部配線パターン230からなるFPC200と、から構成される。
【0152】
本実施形態の各太陽電池ユニット100は、上部配線パターン220上に、並設されるとともに、各太陽電池ユニット100に形成されたスルーホールHを介して他の太陽電池ユニット100と並列接続されている。また、一の太陽電池ユニット100が、下部配線パターン230にて平面コイルLと接続されている。
【0153】
以上のように、本実施形態の電源回路システムSは、第1実施形態と同様の効果に加えて、太陽電池ユニット100から発生される電流を複数倍にすることができるとともに、安定的に発生した電源電圧Vを出力することができる。
【0154】
また、本実施携帯の電源回路システムSは、汚れや陰により太陽電池ユニット100の一部に光が当たらない場合であっても安定した一定の電圧を出力することができる。
【0155】
なお、本実施形態の電源回路システムSは、8枚の太陽電池ユニット100を有しているが、これ以下またはこれ以上の枚数の太陽電池ユニット100を有していてもよい。
【0156】
また、本実施形態の電源回路システムSにおいては、FPC200の下部配線パターン230に出力回路10と外部電子回路との接続を行うためのソケットに嵌め込むタイプの電極端子を設けてもよい。
【0157】
例えば、本実施形態のFPC200は、図15に示すように、ベース210に当該ベース210の一部から延伸されたコネクタ部分250を有し、当該コネクタ部分250に所定のピッチにて形成され、下部配線パターン230と一体的に形成される複数の電極端子251と、その裏面、すなわち、ベース210の上部配線パターン220側の面に形成される補強板252と、電極端子の先端以外の部分を保護する保護膜253と、から構成される。また、このコネクタ部分250は、外部電子回路300のFPCソケット310に接続され、調整された電源電圧Vを当該外部電子回路300に出力するようになっている。なお、図15は、本実施形態における電源回路システムSの構造図の変形例である。
【0158】
[第5実施形態]
次に、図16を用いて本発明に係る電源回路システムSの第5実施形態について説明する。
【0159】
本実施形態の電源回路システムSは、第4実施形態において複数の太陽電池ユニット100が並列に接続されている点に代えて、当該複数の太陽電池ユニット100が直列に接続されている点(後述する図16を参照)に特徴があり、その他の点は、第4実施形態(第1、第2および第3実施形態も含む。)と同様であり、同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0160】
図16を用いて本実施形態の電源回路システムSの構造について説明する。なお、図16は、本実施形態における電源回路システムSの構造を示す構造図である。
【0161】
本実施形態の電源回路システムSは、図16に示すように、複数(8枚)の電源電圧Vを生成する太陽電池ユニット100と、第3実施形態と同様に昇圧回路を形成するとともに各太陽電池ユニット100を直列接続するための上部配線パターン220および下部配線パターン230からなるFPC200と、から構成される。
【0162】
本実施形態の各太陽電池ユニット100は、上部配線パターン220上に、並設されるとともに、各太陽電池ユニット100に形成されたスルーホールHを介して隣接する太陽電池ユニット100と直列接続されている。また、一の太陽電池ユニット100が、下部配線パターン230にて出力回路10と接続されている。なお、本実施形態の出力回路10は、第4実施形態とは異なり、所定の電子回路素子Eなどが適宜実装されている。
【0163】
以上のように、本実施形態の電源回路システムSは、第1実施形態と同様の効果に加えて、太陽電池ユニット100から発生される電圧を複数倍にすることができる。
【0164】
なお、本実施形態の電源回路システムSは、8枚の太陽電池ユニット100を有しているが、これ以下またはこれ以上の枚数の太陽電池ユニット100を有していてもよい。
【符号の説明】
【0165】
C10 … 第1コンデンサ
C20 … 第2コンデンサ
D10、D20 … ダイオード
T10、T20 … トランジスタ
E … 電子回路素子
H … スルーホール
I … 集積回路チップ
J … 治具
L … 平面コイル
M … ランド
O … スルーホール用孔
R … レギュレータ
S … 電源回路システム
10 … 出力回路
20 … コンタクトホール
30 … 出力端子
100 … 太陽電池ユニット
110 … 光電変換層
111 … N型有機半導体層
112 … P型有機半導体層
113 … 正孔取出し層
115 … 混合層
117 … 酸化物半導体層
120 … 透明電極層
130 … メッシュ電極層
200 … FPC
210 … ベース
220 … 上部配線パターン
230 … 下部配線パターン
250 … コネクタ部分
251 … 電極端子
252 … 補強板
253 … 保護膜
300 … 外部電子回路
310 … ソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層と、前記第1電極層上に積層され、受光された光から電圧を生成させるための光電変換が行われる光電変換層と、前記光電変換層上に積層され、当該光電変換層に光を受光させるための構造を有する第2電極層と、から構成される太陽電池ユニットと、
前記光電変換によって生成された電圧を出力するための出力回路と前記太陽電池ユニットを接続するための配線パターンが形成されるフレキシブルプリント基板と、
を備え、
前記配線パターンが、前記第1電極層として、前記フレキシブルプリント基板を構成する基材上に形成されていることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池システムにおいて、
前記配線パターンには、電子回路部品によって構成される出力回路が形成されている回路パターンが含まれることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の太陽電池システムにおいて、
前記回路パターンが、前記電子回路部品の特徴的な機能を発揮させるための少なくとも一部として用いられることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項4】
請求項3に記載の太陽電池システムにおいて、
前記基材の前記太陽電池ユニットが配設される側である第1基板面に、前記回路パターンとして第1回路パターンが形成されているとともに、当該第1基板面と反対側の第2基板面に、前記回路パターンとして第2回路パターンが形成されおり、
前記第1回路パターンと前記第2回路パターンによって前記電子回路部品が構成されることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか一項に記載の太陽電池システムにおいて、
前記回路パターンには、前記出力回路を構成する電子回路部品が実装されていることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項6】
請求項2または3に記載の太陽電池システムにおいて、
前記基材の前記太陽電池ユニットが配設される側である第1基板面に前記回路パターンが形成されていることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項7】
請求項6に記載の太陽電池システムにおいて、
前記回路パターン上に前記太陽電池ユニットと同一の積層構造を備え、当該回路パターンと当該回路パターン上に形成された前記光電変換層及び前記第2電極層とによって前記電子回路部品が形成されていることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項8】
請求項2または3に記載の太陽電池システムにおいて、
前記基材の前記太陽電池ユニットが配設される側である第1基板面と反対側の第2基板面に、前記回路パターンが形成されていることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の太陽電池システムにおいて、
前記フレキシブルプリント基板が、前記生成された電圧によって駆動する電子回路と接続するための電極端子を更に備えることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の太陽電池システムにおいて、
前記太陽電池ユニットが、前記光電変換層と絶縁しつつ、前記第2電極層と前記出力回路を接続するためのスルーホールを有するとともに、
前記配線パターンが、前記スルーホールと接合されるランドを有することを特徴とする太陽電池システム。
【請求項11】
請求項10に記載の太陽電池システムにおいて、
前記ランドが、前記配線パターン上に前記太陽電池ユニットを配設する位置を位置決めする際に用いられるアライメントマークとして機能するための形状を有していることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項12】
請求項10に記載の太陽電池システムにおいて、
前記スルーホールおよびランドが、前記太陽電池ユニットが前記フレキシブルプリント基板に装着された際の当該太陽電池ユニットの中央近傍に形成されていることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項13】
請求項1乃至9に記載の太陽電池システムにおいて、
前記配線パターンには前記太陽電池ユニットを配設する位置を位置決めするアライメントマークが形成されていることを特徴とする太陽電池システム。
【請求項14】
太陽電池ユニットと当該太陽電池ユニットによって生成された電圧の出力制御を行う出力回路が形成されるフレキシブルプリント基板とを備える太陽電池システムを製造する製造方法であって、
前記太陽電池ユニットと前記出力回路を接続するための配線パターンであって当該出力回路が形成される配線パターンを有する前記フレキシブルプリント基板を準備する準備工程と、
前記配線パターン上に、受光された光から電圧を生成させるための光電変換が行われる光電変換層を形成する光電変換層形成工程と、
前記光電変換層上に積層され、当該光電変換層に光を受光させるための構造を有する表面電極層を形成する表面電極層形成工程と、
を含み、
前記配線パターンが、前記太陽電池ユニットの裏面電極層として用いられることを特徴とする太陽電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−77361(P2011−77361A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228291(P2009−228291)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】