説明

太陽電池一体型屋根材

【課題】端部での他部材との接続に困難を生じることなく、太陽電池の発電能力を長寿命化することができる太陽電池一体型屋根材を提供する。
【解決手段】屋根材10は、金属製の基材12の上面に、第1シート18、太陽電池セル16、第2シート20及び防湿層22を含む積層体14を配置して形成されている。積層体14の端部は、端部防水部24により防水されている。端部防水部24は、基材12を防湿層22と対向するように、積層体14の端部よりも外側で折り返した第1折返部と、封止材28とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト、固定用金具等の機械的固定手段を使用することなく、太陽電池を屋根材に一体的に取り付けた太陽電池一体型屋根材に関する。
【背景技術】
【0002】
石油資源の節約、炭酸ガスの排出量の低減等に資するために、太陽電池の普及が強く望まれている。太陽電池を一般に広く普及させるためには、設置費用を含めたコストの低減が課題となる。そのため、安価且つ簡易に太陽電池を設置することのできる設置方法の開発が強く望まれている。
【0003】
太陽電池は、発電された電力を使用する建物の屋根に設置するのが、スペース効率及び送電効率の観点から最も合理的である。よって、建物の屋根に安価且つ簡易に太陽電池を設置することのできる設置構造の開発が特に望まれている。
【0004】
太陽電池を既存の屋根に設置する場合には、固定用金具等を使用して、パネル化された太陽電池を屋根に固定する必要がある。そのような太陽電池パネルは、ある程度の剛性が必要とされるために、金属板やガラス板を含ませる必要があり、コスト及び重量が増大する。また、固定用金具等は、太陽電池パネルが、強風にも飛ばされないような取り付け強度を必要とする。したがって、固定用金具等も、かなりの重量を有するものとなり、屋根の重量が増大するとともに、設置費用が増大する。
【0005】
これに対して、太陽電池を基材に一体的に取り付けた太陽電池一体型屋根材を使用すると、固定用金具等を特に使用する必要がなく、屋根重量の増大を容易に抑えることができる。さらに、太陽電池を設置するための工程を、屋根を形成するための工程に組み込むことができる。このため、太陽電池の設置費用を低減することができる。
【0006】
そのような太陽電池一体型屋根材を作製するために、特許文献1では、ガルバニウム鋼板等の屋根材に、フィルム型アモルファス太陽電池セルを接合して、太陽電池一体型屋根材を形成している。ここで、フィルム型太陽電池セルは、プラスチックフィルム上に太陽電池を形成したものである。特許文献1においては、フィルム型太陽電池セルの防水については記載されていない。
【0007】
特許文献2では、ステンレス鋼板等の屋根材に、太陽電池セルを透明な耐候性樹脂で封止した状態で貼り付けている。特許文献3では、ポリイミドフィルムを基板とするアモルファスシリコン太陽電池セルを、ガルバニウム鋼板等の屋根材に設けるとともに、その太陽電池セルをエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)で封止している。さらに、太陽電池セルの受光面の最外部には、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)の表面保護材を設けている。
【0008】
特許文献4では、図5に示すように、例えばEVAからなる2枚のフィルム材51の間で太陽電池セル52を封止したフィルムモジュール53を屋根基材54に貼り付け、その上にETFE等の表面保護層55を設けるとともに、フィルムモジュール53と屋根基材54の端部をパッキン56で封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−127327号公報
【特許文献2】特開平11−4010号公報
【特許文献3】特開2006−249877号公報
【特許文献4】特開2009−76692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
屋根材として使用される通常の鋼板(ガルバニウム鋼板等)は、寿命が約10年といわれている。これに対して、太陽電池一体型屋根材においては、太陽電池セルや被覆材により鋼板が保護されることで、通常の2倍、3倍の寿命を期待することも可能である。
【0011】
ところが、太陽電池を屋根材に設ける場合には、発電部の太陽電池セルが水と接触すると、電極部の電気抵抗の増大等により、短寿命化してしまうことがある。太陽電池セルが水との接触により短寿命化してしまうと、太陽電池一体型屋根材が、屋根材としての基本的な機能を十二分に果たし得る状態で、発電機能だけが早期に失われてしまうこともあり得る。
【0012】
この点に関連して、特許文献2及び3においては、太陽電池セルをEVAやフッ素樹脂により封止することで、太陽電池セルを防水している。ところが、大部分の樹脂は水蒸気の透過を完全には阻止できないので、上記従来技術の防水構造では、いずれも、太陽電池セルの水との接触を十分に防止することができない。
【0013】
さらに、水分は、太陽電池セルを覆うフィルムの上面からだけではなく、例えばフィルム同士を貼り合わせた端部の隙間からも内部に侵入して、フィルム間に封入された太陽電池セルと接触する。よって、太陽電池一体型屋根材の発電能力を長期に保つためには、太陽電池セルの上面ばかりではなく、フィルム同士を接合した端部も十分に防水することが必要となる。
【0014】
この点に関連して、特許文献4では、屋根材の外周部とフィルムモジュールの端部とを揃えるように、フィルムモジュールを屋根材と貼り合わせるとともに、屋根材の全ての外周に亘って屋根材とフィルムモジュールの端部を上下から挟むようにパッキンを取り付けている。これにより、屋根材及びフィルムモジュールの端部からの水の侵入を防止しようとしている。
【0015】
しかしながら、特許文献4の構造では、太陽電池一体型屋根材の外周部が全てパッキンにより覆われることになり、屋根材の端部と他部材との接続(屋根材の端部同士、及び別の部材との接続を含む)が非常に不自由になる。
【0016】
屋根材の最も基本的な機能は、雨水をその裏側に通さないことである。そのため、屋根材の端部と他部材との接続は非常に重要である。ところが、屋根材の外周を特許文献4のように例えばゴム製のパッキンにより全て囲ってしまうと、一般に使用されているような既存の接続部材を使用して、屋根材の端部を他部材と接続することができなくなる。そのため、端部を接続するための特別の接続部材等を製造することが必要となる。その結果、コストが増大する。
【0017】
そこで、本発明は、端部での他部材との接続に困難を生じることなく、太陽電池の発電能力を長寿命化することができる太陽電池一体型屋根材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、2つの主面を有する金属製の基材と、
前記基材の一方の主面に配置された、電気絶縁性を有する、樹脂を含む第1シート、前記第1シートの上に配置された、シート状の太陽電池セル、前記太陽電池セルの上に配置された、電気絶縁性及び透光性を有する、樹脂を含む第2シート、並びに前記第2シートの上に配置された、透光性を有する防湿層、を含む積層体と、を具備し、
前記第1シート及び前記第2シートは、それらの中央部の間に前記太陽電池セルを挟み、かつその周囲の部分が互いに接合されて、前記太陽電池セルを保持しており、
前記防湿層、前記第1シート及び前記第2シートのそれぞれの端部の隙間、並びに、前記第1シートの端部と前記基材との隙間から、前記第1シートと前記第2シートとの間に水が侵入するのを防止する端部防水部を具備するとともに、前記端部防水部からさらに前記基材の外周部に向けて、前記基材を他部材と接続するための接続部が延設されている、太陽電池一体型屋根材に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の太陽電池一体型屋根材によれば、端部での他部材との接続に困難を生じることなく、太陽電池の発電能力を長寿命化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池一体型屋根材の上面図である。
【図2】図1のII-II線における矢視拡大断面図である。
【図3】端部防水部の拡大断面図である。
【図4】防湿層の拡大断面図である。
【図5】従来の太陽電池一体型屋根材の端部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の太陽電池一体型屋根材は、2つの主面を有する金属製の基材と、基材の一方の主面に配置された、電気絶縁性を有する、樹脂を含む第1シート、第1シートの上に配置された、シート状の太陽電池セル、太陽電池セルの上に配置された、電気絶縁性及び透光性を有する、樹脂を含む第2シート、並びに第2シートの上に配置された、透光性を有する防湿層を含む積層体と、を具備する。第1シート及び第2シートは、それらの中央部の間に太陽電池セルを挟み、かつその周囲の部分が互いに接合されて、太陽電池セルを保持している。
【0022】
そして、本発明の屋根材は、防湿層、第1シート及び第2シートのそれぞれの端部の隙間、並びに第1シートの端部と基材との隙間から、第1シートと第2シートとの間に水が侵入するのを防止する端部防水部を具備するとともに、端部防水部から基材の外周部に向けて、基材を他部材と接続するための接続部が延設されている。
【0023】
以上のように、太陽電池セルの上に配置される、電気絶縁性及び透光性を有する、樹脂を含む第2シートのさらに上に防湿層を配置するとともに、太陽電池セルと樹脂シートの積層体の端部に端部防水部を配置することで、第1シートと第2シートとの間に水が侵入するのをほぼ完全に防止することができる。これにより、太陽電池セルが水との接触により短寿命化するのを防止することができる。したがって、太陽電池一体型屋根材が、屋根材としての基本的機能を失うよりもかなり早期の段階に、発電機能を失うという問題を解決することができる。よって、太陽電池一体型屋根材を全体として長寿命化することができる。
【0024】
さらに、端部防水部から基材の外周部に向けて、基材を他部材と接続するための接続部が延設されていることで、端部防水部の存在が、屋根材の端部を他部材と接続するとき(屋根材の端部同士、及び別の部材との接続を含む)の障害となるのを防止することができる。よって、一般に使用されている既存の接続部材を使用して、通常の方法で屋根材を他部材と接続することができる。よって、端部防水部を設けたことによる特別のコスト上昇を抑えることができる。
【0025】
本発明の一形態に係る太陽電池一体型屋根材においては、端部防水部が、基材を、積層体の外周部よりも外側の第1折り目で、防湿層と対向するように折り返した第1折返部と、第1折返部と防湿層との隙間を封止する第1封止材と、を含んでいる。
【0026】
基材を、積層体の外周部よりも外側の第1折り目で、防湿層と対向するように折り返すことで第1折返部を形成すれば、積層体の端部は、金属材料からなる第1折返部により囲われる。そして、第1折返部と防湿層との隙間を、例えば樹脂からなる第1封止材により封止すれば、積層体の端部の近傍への水の侵入をほぼ完全に抑えることができる。
【0027】
第1封止材には、ブチル系のホットメルト樹脂を使用することができる。その樹脂を溶融させ、第1折返部と防湿層との隙間に注入し、これを自然冷却して固化させることで第1封止材を形成することができる。その他に、例えばエポキシパテ(epoxy putty)のような簡易な封止材を使用することもできる。そのような簡易な封止材を使用した場合でも、積層体の端部の近傍に、水分を、わずかに水蒸気として到達するに止めることができる。
【0028】
積層体の端部は、密着された薄いシートの層状構造の端部であるから、本来、非常に水の侵入しにくい部分である。よって、例えわずかの水蒸気が積層体の端部の近傍に存在したとしても、それが、さらに積層体の端部から太陽電池まで到達することはない。よって、特に他の部材(例えば、特許文献4に記載されているようなゴム製のパッキン)を使用することなく、太陽電池セルをほぼ完全に防水することができる。
【0029】
さらに、第1折返部は、積層体の外周部よりも外側の第1折り目で基材を折り返すようにして形成される。このため、第1折返部を形成するときに、防湿層が基材とともに折り曲げられて、損傷されるのを防止することができる。よって、防湿層の防湿性を長期に亘って保持することができる。
【0030】
ここで、第1折返部は、防湿層と接触するように形成してもよいし、防湿層と多少の隙間があくように形成してもよい。第1折返部と防湿層との間に多少の隙間を設けた場合には、防湿層が第1折返部との接触により損傷されるのを防止することができる。よって、防湿層の防水性が損なわれるのを避けることができ、その結果、太陽電池が短寿命化するのを確実に防止することができる。
【0031】
本発明の他の形態に係る太陽電池一体型屋根材においては、端部防水部が、さらに、積層体の外周部と第1折返部との隙間を封止する第2封止材を含む。
【0032】
第1折返部と防湿層との隙間だけではなく、積層体の外周部と第1折返部との隙間を封止することで、積層体の端部から水が侵入するのをより確実に防止することが可能となる。
【0033】
本発明のさらに他の形態に係る太陽電池一体型屋根材においては、基材が長方形であり、その長手方向に沿う一対の端部のそれぞれに接続部が設けられているとともに、第1折り目が、長手方向に沿う一対の端部と全体的に平行である。
【0034】
長方形である一般的な屋根材を相互に接続する場合には、その長手方向に沿う一対の端部同士を接続することが多い。本形態は、そのような場合に対応している。そして、この場合には、第1折り目を、長方形の基材の長手方向に沿う一対の端部と平行に形成することで、端部防水部を、基材の長手方向に沿って設けることが可能となる。その結果、基材の短手方向に沿って端部防水部を設ける場合と比較すると、より長い端部防水部を形成することができる。よって、太陽電池セルをより効果的に防水することが可能となる。
【0035】
なお、本発明は、基本的には、基材が長方形であり、その短手方向に沿う一対の端部のそれぞれに接続部が設けられるとともに、第1折り目が、短手方向に沿う一対の端部と全体的に平行である場合にも適用できる。
【0036】
本発明のさらに他の形態に係る太陽電池一体型屋根材においては、基材の短手方向に沿う一対の端部が、屋根の棟側と軒側とに向くように屋根に設置される。
【0037】
この形態は、長方形の太陽電池一体型屋根材を、いわゆる「縦葺」で屋根に設置する場合に関する。屋根材を縦葺にすると、屋根材の長手方向が、屋根の傾きに沿って水が流れる方向と平行となる。その結果、基材の長手方向に沿って設けられた端部防水部の水が侵入しやすい部分に水が滞留するのを防止することができる。よって、より効果的に太陽電池セルを防水することができる。
【0038】
なお、本発明は、基本的には、基材の長手方向に沿う一対の端部が、屋根の棟側と軒側とに向くように屋根に設置される場合、つまり長方形の屋根材を、いわゆる「横葺」で屋根に設置する場合にも適用できる。
【0039】
本発明のさらに他の形態に係る太陽電池一体型屋根材は、接続部が、基材を、第1折返部からさらに第2折り目で折り返した第2折返部の端部を所定の形状に折り曲げて形成されている。
【0040】
端部防水部の主要部分を、基材を折り返した第1折返部から構成するとともに、第1折返部から、基材をさらに折り返して第2折返部を形成することで、その第2折返部の端部に、屋根材を他部材と接続するための接続部を容易に形成することが可能となる。
【0041】
ここで、第1シートまたは第2シートは、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、アイオノマー樹脂、ポリビニルブチラール、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系樹脂、およびシリコーン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものとすることができる。
【0042】
これらの樹脂は、優れた絶縁性を有するとともに、熱溶着型の接着剤としても優れている。よって、これらの樹脂を第1シートとして使用することで、基材の上面に太陽電池をしっかりと固定することができる。
【0043】
第1シート及び第2シートは、単層構造とすることもできるし、多層構造とすることもできる。多層構造のシートは、例えば上記の樹脂群のうちから選ばれた樹脂からなるシート同士、あるいは他の樹脂からなるシートと組み合わせて多層化したものであってもよい。
【0044】
太陽電池セルは、光電変換に寄与する半導体素子とこの素子から電流を取り出す電極、および、素子を支持する基板などから構成される。素子表面には必要に応じて反射防止膜を形成することができる。また、本発明においては、単独の太陽電池セルまたは電気的に接続された複数の太陽電池セル群を、第1シートと第2シートの間に挟み込んで積層体を構成することができる。
【0045】
第1シートの基材と接触する側の面には、防水性を備えた裏面シートを結合させることができる。この裏面シートは、例えば、アルミニウム箔の両面にポリエチレンナフタレート樹脂等の樹脂層を形成するとともに、基材と接触する側の面にフッ素樹脂を被覆することで、作製することができる。以上のように、上記の裏面シートを、本発明における多層構造の第1シートの構成要素として含ませることができる。
【0046】
本発明のさらに他の形態に係る太陽電池一体型屋根材においては、防湿層は、表面層、紫外線吸収層及びバリア層を含む多層構造を有する。ここで、表面層は、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリエチレンナフタレート樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。バリア層は、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂及びポリカーボネート樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含む基部と、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含み、基部を被覆する被覆層とを有する。
【0047】
防湿層を例えばガラスから形成すれば、防湿層を透過する水分は皆無となる。本発明は、防湿層がガラスである場合を包含する。しかしながら、防湿層をガラスから形成すると、防湿層が柔軟性を欠くことになる。よって、薄鋼板からなる屋根材の変形、及び端部防水部を形成する際の基材の折り曲げ等により防湿層が破損されないようにするためには、防湿層の厚みをある程度大きくする必要性が生じる。その結果、重量が増大する。
【0048】
本形態では、防湿層を主に樹脂から形成することで、防湿層に柔軟性を与えて薄型化を図る一方で、バリア層に酸化ケイ素または酸化アルミニウムの被覆層を設けることで、高い防湿度を達成することを可能としている。例えば、JIS K 7129:2008に拠り気温40℃、相対湿度90%で測定した水蒸気透過率が0.10g/m2・24h以下であるような高い防湿度を達成するようにしている。これにより、屋根材の軽量化を図りつつ、太陽電池セルを長寿命化することが可能となる。
【0049】
本発明のさらに他の形態に係る太陽電池一体型屋根材においては、太陽電池セルが、アモルファスシリコン型または球状シリコン型の光電変換素子を有する。
【0050】
本発明は、基本的には、太陽電池セルがウエハ状の太陽電池セルである場合を包含する。しかしながら、ウエハ状の太陽電池セルは機械的強度が弱く、割れやすいので、屋根の表面に設置するためには、ガラス等で表面を補強する必要性が生じる。よって、重量が増大する。また、薄鋼板からなる屋根基材が撓んでいるような場合には、ウエハ状の太陽電池セルにはフレキシブル性がないために、そのような基材に、太陽電池を取り付けること自体が困難となる。
【0051】
これに対して、アモルファスシリコン型または球状シリコン型の光電変換素子を組み込んだ太陽電池セル(以下、アモルファスシリコン型太陽電池セルまたは球状シリコン型太陽電池セル)などは、フレキシブル性を有し、屋根基材が撓んでいるような場合にも、太陽電池セルを損傷することなく、容易に取り付けることができる。また、屋根基材に取り付けた後で、屋根基材が変形しても破損され難くい。
【0052】
よって、アモルファスシリコン型太陽電池セルまたは球状シリコン型太陽電池セルを使用することで、軽量化を図ることが容易となる。特に、球状シリコン型太陽電池セルは、比較的容易にエネルギー変換効率を高めることができる点で、アモルファスシリコン型太陽電池セルよりも好ましい。
【0053】
ここで、球状シリコン型太陽電池セルとは、多数の球状シリコン太陽電池素子(例えば、直径約1mm)を、基板に設けた孔に一個ずつ装着してなる太陽電池セルをいう(例えば、特開2010−126428号公報参照)。球状シリコン型太陽電池セルは、基板がアルミニウムなどの金属の薄板(例えば、厚さ約0.1mm)なので、曲面にも設置可能なフレキシブル性がある。
【0054】
球状シリコン型太陽電池セルでは、一般的なウエハ型シリコン太陽電池の1/5程度のシリコン使用量で、アモルファスシリコン型太陽電池セルよりも高い変換効率が期待できる。球状シリコン太陽電池素子の前駆体である球状シリコン粒子は、例えば、坩堝に入れたシリコン融液を坩堝底部のノズル孔から連続的に滴下させ、表面張力で球状になった液滴が冷却塔中を落下する間に凝固させることにより製造される。
【0055】
なお、本発明は、太陽電池セルが、アモルファスシリコン型太陽電池または球状シリコン型以外のフレキシブル性を有する太陽電池セル、例えば、化合物半導体系薄膜太陽電池セル、色素増感型太陽電池セル等である場合にも好ましく適用することができる。
【0056】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1に、本発明の一実施形態に係る太陽電池一体型屋根材の上面図を示す。図2に、図1の屋根材のII-II線における矢視拡大断面図を示す。図3に、端部防水部を拡大断面図により示す。なお、図2及び図3は、視認性を良好とするために、各部材の厚みや寸法は実際の部材の厚みや寸法を反映していない。図2及び図3は、主に、各部材のおおよその形状及び位置関係を示している。
【0057】
屋根材10は、長方形状の金属板(例えば、ガルバニウム鋼板)からなる基材12と、基材12の一方の主面に配置された積層体14と、を含んでいる。基材12の厚みは、一例として、0.4〜0.6mmである。
【0058】
積層体14は、基材12の一方の主面と接触するように配置された、樹脂製の第1シート18、第1シート18の上面に配置された所定数(図示例では、8つ)の太陽電池セル16、太陽電池セル16の上面に配置された、透光性を有する樹脂製の第2シート20、並びに第2シート20の上面に配置された、透光性を有する防湿層22とを含む。第1シート18、第2シート20及び防湿層22の外周端部は全て揃っている。
【0059】
積層体14は、基材12の長手方向とほとんど同一の長さ、及び基材12の短手方向の長さよりも小さい幅の長方形状であり、その長手方向が基材12の長手方向と平行となるように配置される。また、積層体14は、短手方向の中心が、基材12の短手方向の中心と一致している。
【0060】
太陽電池セル16もまた長方形状であり、その長手方向が積層体14の短手方向と平行、かつその短手方向が積層体14の長手方向と平行な姿勢で、積層体14の長手方向に一列に並べられている。第1シート18及び第2シート20は、それらの中央部の間に太陽電池セル16を挟み、かつその周囲の部分が互いに接合されて、太陽電池セル16を保持している。隣接する積層体14内の太陽電池セル16同士は電気的に直列に接続され、両端の太陽電池セル16には接続端子(図示せず)が設けられている。なお、太陽電池セル16は、直列のみならず、必要に応じて、適宜、並列に接続することもできるし、直列と並列とを組み合わせて接続することもできる。
【0061】
基材12の長手方向に沿う一対の端部(以下、そのような端部を長手端部という)12aの近傍には、それぞれ、長手端部12aに沿って、積層体14の長手端部を防水する端部防水部24が設けられている。なお、積層体14の短手方向に沿う一対の端部(以下、そのような端部を短手端部という)は、別の方法で防水される。例えば、屋根材10を縦葺に設置する場合には、基材12の短手端部12bの一方を屋根の棟材により覆うことで、積層体14の短手端部の一方を防水することができる(特許文献1の図2参照)。積層体14の短手端部の他方は、例えば軒材により覆うことで防水することができる。
【0062】
端部防水部24は、基材12の長手端部12aに平行な折り目(第1折り目)12cで、基材12を、防湿層22と対向するように折り返した第1折返部26を含む。第1折り目12cは、積層体14の長手端部よりも外側に位置している。さらに、端部防水部24は、第1折返部26と防湿層22との隙間、並びに第1折返部26と積層体14の端部との隙間を封止する封止材28を含む。
【0063】
なお、図3では、第1折返部26と防湿層22とが離間しているが、両者は接触していてもよい。その場合にも、微視的には第1折返部26と防湿層22との間には隙間があるので、封止材28はその隙間を封止するように配される。
【0064】
基材12は、第1折返部26から、折り目(第2折り目)12dでさらに折り返されており、その折り返された部分(第2折返部)30の端部を折り曲げることにより、一対の長手端部12aの一方に接続部32が形成され、他方に接続部34が形成されている。これにより、1つの屋根材10の接続部32と、これに隣接する屋根材10の接続部34とを、直接的に、または一般的な既存の接続部材等を使用して間接的に接続することで、複数の屋根材を、それぞれの端部で接続することが可能となる。または、接続部32及び34のいずれかにより、屋根材10の端部を別の部材と接続することも可能である。
【0065】
以上のように、端部防水部の主要部分を、基材12を折り返した第1折返部26から構成するとともに、第1折返部26から、基材12をさらに折り返して第2折返部30を形成することで、屋根材10の外周部にパッキン等(特許文献4参照)を設けることなく積層体14の端部を防水することができるとともに、屋根材の端部に接続部を形成することができる。よって、屋根材同士の接続や屋根材と別の部材との接続が容易となる。
【0066】
なお、接続部32及び34の形状は、図示例の山形状に限定されるものではなく、接続に使用する接続部材の構造に合わせて適宜設定することが可能である。例えば特開平10−159271号公報に示されているような、公知の接続構造で接続し得る形状に第2折返部30の端部を加工することにより、接続部32及び34を形成することが可能である。
【0067】
なお、同公報は、屋根材を縦葺する場合の接続構造である。しかしながら、本発明は、屋根材を縦葺する場合に限定されず、屋根材を横葺する場合にも適用可能である。屋根材を横葺する場合には、接続部32及び34は、例えば特開2006−322299号公報に示されているような、公知の接続構造で接続し得る形状に加工すればよい。
【0068】
第1シート18は、単層でもよいが、良好な絶縁性と接着性とを得るために、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなるシートを基材12と接触するように配置し、その上に、EVAからなるシートを配置するようにしてもよい。つまり、第1シート18は、多層構造とすることも可能である。第1シート18の厚みは、一例として、0.5〜0.7mmである。第1シート18の素材には、他に、アイオノマー樹脂、ポリビニルブチラール、スチレン系熱可塑性エラストマー、シリコーン系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。
【0069】
第1シート18と、基材12との接合は、熱溶着によるのが好ましい。熱溶着によれば、接着剤等により第1シート18を基材12に接合する場合と比較して、接合工程が簡素化されるとともに、第1シート18と基材12との隙間を最小限度に抑えることができる。よって、防水性をより高めることが可能となる。
【0070】
太陽電池セル16としては、アモルファスシリコン型太陽電池セルや球状(結晶)シリコン型太陽電池セルなどのように、柔軟性を有する太陽電池セルを使用するのが好ましい。ウエハ状の太陽電池セルは、厚めのガラス等により太陽電池セルを覆って補強する必要性があり、重量の増大を招くので好ましくない。この点、太陽電池セル16が柔軟性を有していれば、薄い透明のフィルム等で表面を保護するだけでよく、低重量化が容易となる。好ましい太陽電池セル16の厚みは、0.1〜1.5mmである。なお、本発明は、基本的には、ウエハ状の太陽電池セルを使用する場合や、太陽電池セルをガラスで補強する場合も含む。
【0071】
第2シート20は、太陽電池セル16の表面を保護するように太陽電池セル16の上面に設けられるものであり、EVA等の透光性の樹脂を素材として形成することができる。第2シート20の素材としては、他に、フッ素樹脂等の耐候性の高い素材を使用するのも好ましい。より具体的には、EVAの他に、アイオノマー樹脂、ポリビニルブチラール、スチレン系熱可塑性エラストマー、シリコーン系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。また、それらを組み合わせて使用するのも好ましい。つまり、第2シート20も多層構造とすることができる。第2シート20の厚みは、一例として、
0.5〜0.7mmである。
【0072】
第2シート20と、太陽電池セル16と、第1シート18とは、積層体14の各層の隙間を小さくするという観点から、熱溶着により互いに接合するのが好ましい。このとき、第1シート18及び第2シート20の面積を太陽電池セル16のそれよりも大きくし、第1シート18及び第2シート20の中央の部分に太陽電池セル16を挟み込み、その周囲の部分で第1シート18と第2シート20とを溶着する。これにより太陽電池セル16を、第1シート18と第2シート20とで密封して保持する。
【0073】
このように、第1シート18及び第2シート20の端部が、太陽電池セル16の端部よりも外側に位置するように、各部材のサイズ及び配置を設定することで、第1シート18と、上面に防湿層22を設けた第2シート20との間に水が侵入するのをよりよく防止することができる。
【0074】
図4に示すように、防湿層22は、表面層22a、紫外線吸収層22b及びバリア層22cを含む多層構造を有するものとすることができる。ここで、表面層22aは、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリエチレンナフタレート樹脂等を素材として形成することができる。
紫外線吸収層22bは、例えば、アクリル樹脂などの基材にインドール系化合物などの紫外線吸収剤を練り込んだ材料等を素材として形成することができる。
【0075】
バリア層22cは、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、及びポリカーボネート樹脂等を素材とする基部22dと、基部22dの一方の表面を覆う被覆層22eと、を含む。被覆層22eは、二酸化ケイ素(SiO2、シリカ)または酸化アルミニウム(Al23)をCVD(化学気相蒸着)法等により形成することができる。また、被覆層22eは、基部22dの、例えば紫外線吸収層22b側の表面に設けられる。好ましい防湿層22の厚みは、100〜250μmである。
【0076】
防湿層を、例えばガラスから形成すれば水分の透過を完全に防止できる。本発明は、防湿層がガラスである場合を排除しない。しかしながら、防湿層をガラスとすると、防湿層が柔軟性を欠く。よって、変形による防湿層の破損を避けるためには、防湿層の厚みを大きくする必要性が生じる。その結果、重量が増大する。
【0077】
本実施形態では、防湿層22を主に樹脂から形成することで、防湿層22に柔軟性を与える一方で、バリア層22cに酸化ケイ素または酸化アルミニウムの被覆層を設けることで、高い防湿度を達成することを可能としている。例えば、JIS K 7129:2008に拠り気温40℃、相対湿度90%で測定した水蒸気透過率が0.1g/m2・24h以下であるような高い防湿度を達成することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の太陽電池一体型屋根材によれば、長期的で安定した電力供給を確保することができるとともに、軽量で耐久性が高い、低コストの屋根設備を形成することができる。したがって、本発明は、地球資源の節減及び住環境の保全のために有用である。
【符号の説明】
【0079】
10 太陽電池一体型屋根材
12 基材
14 積層体
16 太陽電池セル
18 第1シート
20 第2シート
22 防湿層
24 端部防水部
22a 表面層
22b 紫外線吸収層
22c リア層
22d 基部
22e 被覆層
32、34 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの主面を有する金属製の基材と、
前記基材の一方の主面に配置された、電気絶縁性を有する、樹脂を含む第1シート、前記第1シートの上に配置された、シート状の太陽電池セル、前記太陽電池セルの上に配置された、電気絶縁性及び透光性を有する、樹脂を含む第2シート、並びに前記第2シートの上に配置された、透光性を有する防湿層、を含む積層体と、を具備し、
前記第1シート及び前記第2シートは、それらの中央部の間に前記太陽電池セルを挟み、かつその周囲の部分が互いに接合されて、前記太陽電池セルを保持しており、
前記防湿層、前記第1シート及び前記第2シートのそれぞれの端部の隙間、並びに前記第1シートの端部と前記基材との隙間から、前記第1シートと前記第2シートとの間に水が侵入するのを防止する端部防水部を具備するとともに、前記端部防水部から前記基材の外周部に向けて、前記基材を他部材と接続するための接続部が延設されている、太陽電池一体型屋根材。
【請求項2】
前記端部防水部が、
前記基材を、前記積層体の外周部よりも外側の第1折り目で、前記防湿層と対向するように折り返した第1折返部と、
前記第1折返部と前記防湿層との隙間を封止する第1封止材と、を含む、請求項1記載の太陽電池一体型屋根材。
【請求項3】
前記端部防水部が、
さらに、前記積層体の外周部と前記第1折返部との隙間を封止する第2封止材を含む、請求項2記載の太陽電池一体型屋根材。
【請求項4】
前記基材が長方形であり、その長手方向に沿う一対の端部のそれぞれに前記接続部が設けられているとともに、前記第1折り目が、前記長手方向に沿う一対の端部と全体的に平行である、請求項2または3記載の太陽電池一体型屋根材。
【請求項5】
前記基材の短手方向に沿う一対の端部が、屋根の棟側と軒側とに向くように設置される、請求項4記載の太陽電池一体型屋根材。
【請求項6】
前記接続部が、前記基材を、前記第1折返部からさらに第2折り目で折り返した第2折返部の端部を所定の形状に折り曲げて形成されている、請求項4または5記載の太陽電池一体型屋根材。
【請求項7】
前記第1シートまたは前記第2シートが、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、アイオノマー樹脂、ポリビニルブチラール、スチレン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、及びポリオレフィン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池一体型屋根材。
【請求項8】
前記第1シート及び前記第2シートの少なくとも一方が、多層構造を有する、請求項7記載の太陽電池一体型屋根材。
【請求項9】
前記防湿層が、表面層、紫外線吸収層及びバリア層を含む多層構造を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽電池一体型屋根材。
【請求項10】
前記表面層が、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン系樹脂、及びポリエチレンナフタレート樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記バリア層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、及びポリカーボネート樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含む基部と、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含み、前記基部を被覆する被覆層とを有する、請求項9記載の太陽電池一体型屋根材。
【請求項11】
前記防湿層は、JIS K 7129:2008に拠り気温40℃、相対湿度90%で測定した水蒸気透過率が0.10g/m2・24h以下である、請求項9または10記載の太陽電池一体型屋根材。
【請求項12】
前記太陽電池セルが、アモルファスシリコン型、球状シリコン型、化合物半導体系薄膜型、または色素増感型の光電変換素子を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の太陽電池一体型屋根材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−102587(P2012−102587A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253633(P2010−253633)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(502139910)株式会社クリーンベンチャー21 (33)
【Fターム(参考)】