説明

太陽電池用連系装置

【課題】接続する電気機器(負荷)の種類を選ぶことなく、コンセント感覚で簡便に省エネ運転を可能とする太陽電池用連系装置の技術を提供すること。
【解決手段】太陽電池からの直流出力から矩形パルス出力を得る昇圧回路部と、商用交流を整流して脈流を得るとともにこの脈流と前記昇圧回路部からの矩形パルスを重畳する連系回路部と、この連系回路部からの出力をD級増幅器による正弦波エミュレーション方式によって交流出力を得る出力回路部からなる、太陽電池用連系装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用交流電力に太陽電池からの直流電力を重畳する連系装置に関連し、商用交流で動作する機器の消費電力を太陽電池の発電電力によって低減するための制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりから、太陽電池の普及に目ざましいものがある。現在の太陽電池の使用形態は、商用電源ラインに連系するものと、連系しない独立型の2つに大別できる。
商用電源ラインに連系するタイプは、一般に家庭用太陽電池システムに採用されているものであり、太陽電池からの直流出力をインバータによって交流に変換し、その交流と商用交流とを重畳させるものである。太陽電池の発電電力が消費電力よりも大きければ売電し、太陽電池の発電電力が消費電力よりも小さければ不足分の商用電力を買電するというものである。
一方、商用電源ラインに連系しない独立型のものは、直流負荷を対象としたものであり、太陽電池からの直流電力を一旦蓄電池に充電し、蓄電池から直流負荷に電力を提供するものである。これは、道路標識用や気象観測用として、広く普及している。
【0003】
しかし、太陽電池の利用形態としては、商用電源を用いることを前提に、そこに太陽電池の発電電力を供給することで太陽電池の発電電力分だけ商用電源の消費電力を低減するという、省エネコンセントとしてのものも考えられている。このような省エネコンセント機能を持つ機器は、いまだ実現されていない。その理由は、商用交流ラインに太陽電池を接続すると、太陽電池が発電しているときに負荷が止まっていると、太陽電池からの発電電力が商用電源ラインに逆流するという事態を招きかねないことから、制御が複雑になる。そのため、機器を利用するには電力会社との協議が必要である。一方、すでに普及している住宅用太陽電池システムでも、インバータ制御を通して売電するようにシステムが構成されているので、電力会社との協議が必要となる。以上より、購入した機器を家電感覚で簡便にコンセントに接続して省エネを実現するといった運用ができなかった。
【0004】
このような現状から、商用電源ラインを全波整流して脈流を生成し、それに太陽電池からの直流出力を重畳させる「脈流連系」という技術思想がすでに公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
上記先行技術は、特開平11−89095号公報に開示されたものである。この技術は、上記のように脈流の状態で商用交流電源と太陽電池出力を重畳させることで、商用交流電源ラインから見るとシステム全体が単なる負荷として見なすことができるというものである。したがって、住宅用太陽電池システムのような電力会社との協議も不要であり、インバータを使用しないことから安価でかつ簡便な太陽電池システムを実現するというものである。
【非特許文献】
【0006】
また、明確な先行文献はないが、このような太陽電池の直流出力と商用交流電源を重畳して交流出力として取り出そうとすると、飽和トランスによる共振出力方式も考えられる。しかし、この方式は飽和トランス自体が大きくなることから、実用性に問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記先行技術における交流出力段の構成は、PWM位相同期方式であり、冷蔵庫や扇風機などの誘導性負荷を接続した場合の遅れ位相電流や、容量性負荷による進み位相電流に追従できないので、接続する電気機器(負荷)の種類が制限されるという問題がある。また、交流モーターの起動時の突入電流が流れるときに、機器が追従できないという問題点も指摘できる。このように、先行技術の構成では、機器の利用者がコンセント感覚で利用できず、簡便な省エネ機器とは言えない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、これら従来技術の問題点を解決し、接続する電気機器(負荷)の種類を選ぶことなく、コンセント感覚で簡便に省エネ運転を可能とする太陽電池用連系装置の技術を提供するものである。
以上に述べた先行技術の問題点等は、太陽電池からの直流出力から矩形パルス出力を得る昇圧回路部と、商用交流を整流して脈流を得るとともにこの脈流と前記昇圧回路部からの矩形パルスを重畳する連系回路部と、この連系回路部からの出力をD級増幅器による正弦波エミュレーション方式によって交流出力を得る出力回路部からなる、太陽電池用連系装置とすることで、解決可能である。
また、太陽電池からの直流出力から蓄電池への充電出力を得る充電回路部が、前記昇圧回路部の前段に設けられている構成とすることで、停電時のバックアップ電源として使用することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、これまで問題となっていた交流電力の出力段にD級増幅器の正弦波エミュレーション方式を採用することから、低コストで省エネコンセントとしての機能を実現することができる。D級増幅器はオーディオ用のデジタルアンプとして広く普及しているので、その信頼性や入手可能性、設計自由度などについて申し分がない。また、蓄電池を組み合わせることで、停電時のバックアンプ電源として使用することもできるので、使い勝手の高いものとなる。すなわち、現在では住宅用太陽電池システムでのみ可能となっている商用交流電力の削減を購入者が家電感覚で実現でき、しかも汎用部品の組み合わせで可能なので、安価に供給も可能であり、広く普及させることが可能である。
また、標準的なD級増幅器は100〜150W程度であるが、出力段にパワーFETによる電力ブースターを付加することにより、その付加個数による出力段の差別化が可能であり、最大出力を一般コンセントの規格である1500W(100V15A)とした場合でも、十分に商品化可能な範囲で構築可能な回路構成となる。したがって、交流モーターを含む負荷が起動するときの突入電流にも対応できるので、実用性の高い太陽電池用連系装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の全体構成を示すブロック説明図
【図2】連系回路部の構成を示すブロック説明図
【図3】出力回路部の構成を示すブロック説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面に基づいて、本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の太陽電池用連系装置のうち、請求項2に記載したように蓄電池を組み合わせた全体構成を表している。
図例は、太陽電池1からの直流出力から蓄電池3への充電出力を得る充電回路部5と、蓄電池からの直流出力から矩形パルス出力を得る昇圧回路部7と、一般コンセントからの商用交流9を整流して脈流を得るとともにこの脈流と前記昇圧回路部からの矩形パルスを重畳する連系回路部11と、この連系回路部11からの出力A、BをD級増幅器による正弦波エミュレーション方式によって交流出力13を得る出力回路部15からなる、太陽電池用連系装置14である。本図例では、太陽電池1の電圧と蓄電池3への充電電圧を整合させるためのDC−DCコンバータ部17が挿入された構成である。また、充電回路部5と蓄電池3を取り除き、太陽電池1からの出力を直接昇圧回路部7に導入すれば、請求項1記載の構成となる。
【実施例】
【0012】
以下、連系回路部と出力回路部の詳細について説明する。他の部分は、通常のDC−DCコンバータであったり、昇圧回路部はチョッパ型昇圧回路などであったり、一般的な回路構成で対応可能なので、ここでは詳細説明は割愛している。
【0013】
図2には、連系回路部11のブロック図を示している。商用交流9を全波整流器(ダイオードブリッジ)19に通すことにより脈流Cを生成するとともに、昇圧回路部7からの矩形パルス出力Dを重畳する構成となっている。全波整流の電圧は、全波整流器19のフォワード電圧降下により、ピーク電圧として135〜137V程度となる。ここで合成した波形は、無負荷状態では全波整流波とチョッパ出力の矩形波の合成波形である。これをこのまま負荷に供給すると、出力段での誘導性負荷などによる遅れ位相電流、あるいは容量性負荷などによる進み位相電流が発生した場合、商用交流9への過大な電流パルスによる大幅な力率の低下を招いてしまう。これを防止するため、力率改善とコンデンサの突入電流などの抑制効果のある直列リアクトル21を挿入して平滑化し、脈流を含んだ直流化電圧として出力回路部15への電力ソースを生成するように構成されている。
【0014】
図3には、出力回路部15のブロック図を示している。図は、連系回路部11からの出力A、Bを受け、交流ソース23を持つD級増幅器25による正弦波エミュレーション方式によって交流出力を生成し、電流ブースター回路27、正弦波成形回路29を介して、交流100Vの出力13を得る構成である。正弦波の交流ソース23は、商用交流電源がアクティブである場合には小型トランスで低電圧化した正弦波を、停電など商用交流電源がインアクティブである場合には正弦波発信機(図示せず)を外部ソースとして使用し、その正弦波発信機の自励によって50Hz、または60Hz、あるいは両者の共用として55Hzを供給するものである。
【0015】
最終の出力段には、通常のNFブレーカー31などを挿入し、異常電流時の遮断措置が通常のコンセントと同じ条件で行えるようにしておくことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0016】
以上のように、本発明の太陽電池用連系装置は、現在では住宅用太陽電池システムでのみ可能となっている商用交流電力の削減を購入者が家電感覚で実現できる。しかも汎用部品の組み合わせで可能なので、安価に供給も可能であり、広く普及させることが可能である。したがって、産業上の利用可能性は非常に高いものである。
【符号の説明】
【0017】
1 太陽電池
3 蓄電池
5 充電回路部
7 昇圧回路部
9 商用交流
11 連系回路部
13 交流出力
14 太陽電池用連系装置
15 出力回路部
17 DC−DCコンバータ部
19 全波整流器(ダイオードブリッジ)
21 直列リアクトル
23 交流ソース
25 D級増幅器
27 電流ブースター回路
29 正弦波成形回路
31 NFブレーカー
A,B 連系回路部からの出力
C 脈流
D 矩形パルス出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池からの直流出力から矩形パルス出力を得る昇圧回路部と、商用交流を整流して脈流を得るとともにこの脈流と前記昇圧回路部からの矩形パルスを重畳する連系回路部と、この連系回路部からの出力をD級増幅器による正弦波エミュレーション方式によって交流出力を得る出力回路部からなる、太陽電池用連系装置。
【請求項2】
太陽電池からの直流出力から蓄電池への充電出力を得る充電回路部が、前記昇圧回路部の前段に設けられている請求項1記載の太陽電池用連系装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−62063(P2011−62063A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233845(P2009−233845)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(597027420)エヌ・イー・ティ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】