説明

太陽電池

前面の受光面および反対側の裏面、少なくとも該裏面に存在するパッシベーション層、ウエハと反対の導電性を有する該パッシベーション層上のドープ層、誘起反転層、該ドープ層上の誘電体層、ならびに少なくとも該裏面上に少なくとも該誘電体層を貫いて延在する一つ以上の局在するエミッタコンタクトおよび一つ以上の局在するベースコンタクト、を含む半導体ウエハを含む光起電性電池;および、前面の受光面および反対側の裏面、少なくとも該裏面に存在する中性パッシベーション層、該中性パッシベーション層上の誘電体層、ならびに少なくとも該裏面上に少なくとも該誘電体層を貫いて延在する一つ以上の局在するエミッタコンタクトおよび一つ以上の局在するベースコンタクト、を含む半導体ウエハを含む中性表面光起電性電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2007年3月16日に出願された、米国特許仮出願第60/895217号の利益を請求する。
本発明は、本明細書中において時には太陽電池とも記載する、新規な光起電性電池に関するものである。より詳細には、本発明は、光エネルギー、特に太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する効率に優れ、裏面に電気コンタクトを有する新規な光起電性電池に関する。また、本発明はかかる電池を作製するための方法でもある。
【背景技術】
【0002】
光起電性電池に関する最も重要な観点の一つが、太陽光を電流へと変換する効率である。当技術分野において、高効率で、かつ製造の容易な光起電性電池、つまり太陽電池が必要とされている。本発明は、かかる太陽電池とその製造方法を提供する。
【0003】
光起電性電池は様々な半導体材料から製作することが出来るが、手ごろな価格で容易に入手できることや、光起電性電池の製作において用いるための電気的性質、物理的性質、および化学的性質の妥当なバランスのために、ケイ素(Silicon)が一般的に用いられる。半導体材料としてケイ素を選択して用いた光起電性電池の製造のための典型的な手順では、そのケイ素を、正または負の導電性のドーパントのどちらかでドープし、単結晶シリコンのインゴットを形成するか、または当技術分野において多結晶シリコンとして知られるもののブロックまたは「ブリック」を鋳造し、これらのインゴットまたはブロックを、当技術分野で知られた様々なスライス法や切断法により薄型基板(ウエハとも記載される)にカットする。これらのウエハを用いて、光起電性電池を製造する。しかし、光起電性電池を製造するために適した半導体ウエハを得るために用いられる方法は、これだけではない。
【0004】
慣例により、また本明細書中で用いるものとして、正の導電性を通常は「p」または「p型」と称し、負の導電性を「n」または「n型」と称する。従って、「p」と「n」とは反対の導電性である。
【0005】
ウエハを光起電性電池に形成した場合に入射光に面することが予定されているウエハ表面を、本明細書中においては正面または前面と呼び、正面と反対側のウエハ表面を、本明細書においては背面または裏面と呼ぶ。
【0006】
例えばp型シリコンウエハを用いた光起電性電池を製造するための通常の一般的な方法では、そのウエハを適切なn−ドーパントにさらして、ウエハの前面すなわち受光面上にエミッタ層とp−n接合とを形成する。通常は、化学蒸着法や物理蒸着法などの当技術分野において普通に使用される手法を用いて、まずp型ウエハの前面にn−ドーパントを堆積させ、かかる堆積の後に、例えばリンなどのn−ドーパントをシリコンウエハの前面にドライブイン(driven into)してウエハ表面にn−ドーパントを更に拡散させることによって、n型層またはエミッタ層を形成する。この「ドライブイン(driven−in)」工程は、通常はウエハを高温にさらすことにより実行する。これにより、n型層とp型シリコンウエハ基板との間の境界領域にp−n接合が形成される。リンやその他のドーピングを行ってエミッタ層を形成する前に、ウエハ表面をテクスチャ加工することが出来る。
【0007】
p−n接合を光エネルギーにさらすことによって発生する電位を利用するために、光起電性電池は、通常はウエハの正面に導電性の前面電気コンタクトを備え、ウエハの背面に導電性の裏面電気コンタクトを備える。かかるコンタクトは、通常は一種類以上の高い電気伝導性の金属から形成されるため、一般的に不透明である。前面コンタクトは光起電性電池の太陽やその他の光エネルギー源に面する側に存在するため、電池に作用する入射光によって発生する電荷が捕捉可能である限り電池前面において最小の面積を占めることが一般的に望ましい。例えこの前面コンタクトによって覆われ、または遮られてしまう電池の前面における面積を最小化するように前面コンタクトを被覆したとしても、それでもなお、電気エネルギーの発生に用いることが出来たはずの光起電性電池の表面積の量が前面コンタクトにより減少する。
【0008】
従って、高効率で、大規模な生産方法を用いて製造可能であり、そして好ましくは、効率を上げるために、ウエハの前側または前面に電気コンタクトを持たず、それによって光を電流に変換するために利用可能な電池の前面の面積が最大化されるような、光起電性電池が当技術分野において必要とされている。本発明は、かかる光起電性電池を提供する。本発明の光起電性電池を用いて、この光起電性電池を太陽にさらすことによって、効率的に電気エネルギーを発生することが出来る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの側面において、本発明は、前面の受光面および反対側の裏面、少なくともその裏面に存在するパッシベーション層、パッシベーション層上のウエハと反対の導電性を有するドープ層、誘起反転層、ドープ層上の誘電体層、ならびに少なくとも裏面上に少なくともその誘電体層を貫いて延在する一つ以上の局在するエミッタコンタクトおよび一つ以上の局在するベースコンタクトを含む半導体ウエハを含む、光起電性電池である。好ましくは、この局在する一つまたは複数のエミッタコンタクトおよび局在する一つまたは複数のベースコンタクトは、全て光起電性電池の裏面に存在する。この局在するエミッタコンタクトおよび局在するベースコンタクトは、好ましくはレーザー焼成(laser fired)によるコンタクトである。
【0010】
別の側面において本発明は、前面の受光面および反対側の裏面、少なくともその裏面に存在する中性の(neutral)パッシベーション層、パッシベーション層上の誘電体層、ならびに少なくとも裏面上に少なくともその誘電体層を貫いて延在する一つ以上の局在するエミッタコンタクトおよび一つ以上の局在するベースコンタクトを含む半導体ウエハを含む中性表面光起電性電池である。好ましくは、この局在するエミッタコンタクトおよび局在する一つまたは複数のベースコンタクトは、全て光起電性電池の裏面に存在する。この局在するエミッタコンタクトおよび局在するベースコンタクトは、好ましくはレーザー焼成されたコンタクトである。中性表面は、電池が意図的には誘起反転層を有さず、好ましくは、反転層を有さないことを意味している。
【0011】
本発明はまた、かかる光起電性電池を製造するための方法でもある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、シリコンウエハ内部の誘起反転層がウエハの表面近傍で伝導帯と価電子帯を「ベンド」させ、フェルミレベルが伝導帯に近づいている様子を示すエネルギーバンド図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態による、誘起反転層を有する光起電性電池の一部分の断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態による、中性表面を有する光起電性電池の一部分の断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態による、交互嵌合指状突起パターン(interdigitated finger)を有する裏面コンタクトを示す、光起電性電池の裏面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を記述するが、かかる実施形態は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
光起電性電池を製造するための本発明の方法において有用な半導体ウエハは、好ましくはケイ素を含み、通常は薄型で平坦な形をしている。ケイ素は、必要に応じて、一種類以上の追加の材料、例えばゲルマニウムなどの一種類以上の半導体材料を含むものでもよい。p型ウエハに関しては、p型ドーパントとしてホウ素が広く用いられているが、アルミニウム、ガリウム、またはインジウムなどの他のp型ドーパントも利用し得る。ホウ素は好ましいp型ドーパントである。このようなドーパントの組み合わせもまた適している。そのため、p型ウエハのためのドーパントとしては、例えばホウ素、アルミニウム、ガリウム、またはインジウムのうち一種類以上を含むことができ、好ましくはホウ素を含む。n型シリコンウエハを用いる場合には、n型ドーパントは例えばリン、砒素、アンチモン、またはビスマスのうち一種類以上であっても良い。通常は、単結晶シリコンのインゴットなどのシリコンインゴットをスライスするか、または切断してチョクラルスキー(Cz)シリコンウエハと呼ばれるような単結晶ウエハを形成することによって、適切なウエハを得る。米国特許出願公開第2007/0169684号公報および第2007/0169685号公報において述べられているシリコンのインゴット、例えばこれらの特許出願公開において単結晶シリコン、鋳造単結晶シリコン、擬単結晶シリコン(near−monocrystalline silicon)、および幾何学的多結晶シリコン(geometric multi−crystalline silicon)として記載されているシリコンのインゴットをスライスするかまたは切断することによって適切なウエハを得ることが出来る。鋳造多結晶シリコンのブロックをスライスするかまたは切断することによっても、適切なウエハを作製することが出来る。Edge−defined Film−fed Growth technology(EFG法)や、同様の手法によるプロセスを用いて、溶融シリコンからシリコンウエハを直接引き出すことも出来る。ウエハはどのような形状であっても良いけれども、通常は円形か、四角形か、擬似四角形である。「擬似四角形」は、通常は角が丸い四角形のウエハを意味する。本発明の光起電性電池に用いられるウエハは好ましくは薄型である。例えば、本発明に有用なウエハは約10〜約300ミクロンの厚さである。例えば、ウエハは約10〜約200ミクロン以下の厚さであっても良い。ウエハは、約10〜約30ミクロン以下の厚さであっても良い。円形の場合には、そのウエハは約100〜約180ミリメートルの直径を有していても良く、例えば102〜178ミリメートルであっても良い。四角形または擬似四角形の場合には、そのウエハは約100〜約150ミリメートルの幅を有していても良く、約127〜約178ミリメートルの直径を有する丸まった角を持っていても良い。本発明の方法において有用なウエハ、および結果として本発明の方法によって作製される光起電性電池は、例えば約100〜約250平方センチメートルの表面積を有していても良い。本発明の方法において有用なドープされたウエハは、約0.1〜約20Ω・cmの抵抗を有していても良く、通常は約0.5〜約5.0Ω・cmの抵抗を有していても良い。
【0014】
本発明の光起電性電池において用いられるウエハは、好ましくはウエハの厚さ(t)より大きな拡散長(L)を有する。例えば、L対tの比は好ましくは1より大きい。例えば、L対tの比は約1.1よりも大きくても良く、約2より大きくても良い。この比は約3までか、またはそれより大きくても良い。拡散長とは、(p型材料内部の電子などの)少数キャリアが多数キャリア(p型材料内部の正孔)と再結合するまでに拡散可能な平均距離である。Lは少数キャリアの寿命τと関係式L=(Dτ)1/2の関係(式中でDは拡散係数)を持つ。拡散長は、光ビーム誘起電流法や、表面光電圧法などの多くの手法によって測定することが出来る。拡散長を測定する方法についての記載は、例えば、本明細書中で援用する、A.FahrenbruchとR.Bubeによる、Academic Press、1983、pp.90−102の「Fundamentals of Solar Cells」を参照すること。
【0015】
本明細書中で用いる「ウエハ」という用語は、記載された各種の方法によって、特定的には単結晶シリコンまたは多結晶シリコンのインゴットまたはブロックを切断または切り取ることによって得られたウエハを含むけれども、この「ウエハ」という用語は、本発明の方法によって光起電性電池を製造する為に有用な適宜の半導体基板や半導体層を含むことが出来ると理解される。インゴットからウエハを切断または切り取ることによってもたらされるいかなる損傷も、高温で水酸化ナトリウム(NaOH)中、例えば約80℃で40重量%NaOH水溶液中でウエハをエッチングすることによって取り除くことが出来る。例えば標準的なRCA洗浄を用い、次いで例えば5重量%HF水溶液といった希フッ化水素酸(HF)にディップすることによって、ウエハを洗浄することが出来る。
【0016】
ウエハの前面は、好ましくはテクスチャ加工されている。テクスチャ加工は、一般的に、光の吸収を増加させることによって、結果として得られる光起電性電池の効率を増加させる。例えば、化学エッチング、プラズマエッチング、レーザー、または機械的なスクラビングを用いてウエハを適切にテクスチャ加工することが出来る。単結晶ウエハを用いる場合には、ウエハを水酸化ナトリウムなどの塩基の水溶液中で、高温で、例えば約70〜約90℃で約10〜約120分間処理することによって、ウエハをエッチングして異方的にテクスチャ加工された表面(anisotropically textured surface)を形成することができる。この水溶液はイソプロパノールなどのアルコールを含有していても良い。多結晶ウエハは、傾斜ダイシングブレードまたは輪郭テクスチャ加工ホイールを用いた機械的なダイシングによってテクスチャ加工することが出来る。好ましい方法においては、フッ化水素酸、硝酸(HNO)および水の溶液を用いて、多結晶ウエハをテクスチャ加工する。かかるテクスチャ加工方法は、Hauser、Melnyk、Fath、Narayanan、RobertsおよびBrutonによって、日本の大阪で5月11日から18日まで行われた「3rd WorldConference on Photoboltaic Energy Convension”」会議における彼らの論文「A Simplified Process for Isotropic Texturing of MC−Si(Hauserら)」に記載されており、この記載の全てを本明細書中に援用する。通常、テクスチャ加工されたウエハを続いて例えばフッ化水素酸中に浸漬し、次いで中間段階として塩酸中に浸漬し、最後に脱イオン水中ですすぎ、そして乾燥することによって洗浄する。ウエハの厚さおよび用いる光捕捉構造に応じてウエハの裏面をテクスチャ加工してもよく、しなくてもよい。
【0017】
ウエハをテクスチャ加工する前に、ウエハをリンおよび/またはアルミニウムのゲッタリングにかけることが出来る。ゲッタリングは、例えば、ウエハの片側または両側にリンを拡散させることにより高濃度にドープされたn型層(n層)を形成することによって実行できる。これは、例えば、POClなどのガスに、ウエハを900〜1000℃で30分間さらすことによって実行できる。かかるゲッタリングにより、ウエハの拡散長が増加する。高濃度にドープされたn型層を一層以上形成した後に、これらを、例えばHFおよびHNOあるいはこれらの混合物などの酸、またはNaOHなどの強塩基を用いたエッチングによって取り除くことが出来る。本発明の一つの実施形態は、ウエハの前面に高濃度にドープされたn型層を形成して不純物をゲッタリングし、次いで上述のように前面のテクスチャ加工エッチング中にそれらを取り除くことを伴う。
【0018】
I.誘起反転層裏面コンタクト光起電性電池
一つの側面において、本発明は誘起反転層を含む裏面コンタクト光起電性電池である。この電池は、パッシベーションされた、より好ましくは良くパッシベーションされたシリコンウエハ表面を含み、また好ましくは本明細書中で誘起反転層と記載している誘起エミッタを含む。このエミッタは、誘電体層を好ましくは貫いて焼成された局在するコンタクトと接合している。「局在する」は、コンタクトが光起電性電池の裏面全体を占めておらず、好ましくは全ての局在するコンタクトの総面積が光起電性電池の裏面の総面積のほんの数パーセント、例えば約5パーセント以下、または光起電性電池の裏面の総面積の3パーセントあるいは2パーセント以下であることを意味している。
【0019】
シリコンウエハは、p型またはn型のいずれであっても良く、好ましくは洗浄し、その前面をテクスチャ加工しても良い。次いで、少なくともウエハの裏面、またはウエハの前面および裏面、またはウエハの全ての面を、30ナノメートル(nm)以下の厚さ、例えば約4〜約30nmの厚さのアモルファスシリコン(a−Si:H)の層などの一層以上のパッシベーション層で好ましくは薄く被覆する。このパッシベーション層は約10nmの厚さであっても良い。このパッシベーション層は、様々な量で炭素、窒素、および酸素を含むa−SiN:Hなどのドープされていないa−Si:Hアロイ(alloy)層、いわゆる真性層であっても良い。パッシベーション層を形成するために、一層以上このような層が存在しても良く、単一の層または全ての層の総厚みは約4〜約30nmである。x、y、およびzの値は、それぞれ約0〜約0.66未満の間で変更することが出来る。しかし、窒素および酸素の場合には、a−Si:HではなくNを加えた場合に窒化ケイ素の組成により近く、Oを加えた場合に二酸化ケイ素により近くなるように、その組成は化学量論的組成に近くても良い。a−Si:Hの層は、C、N、またはOを添加する場合でもしない場合でも、プラズマ化学気相成長法(PECVD)によって堆積させ、通常は5〜20原子%の水素を含有する。適切な窒素源として、アンモニアを用いることが出来る。低分子量の炭化水素が炭素源として適しており、最も好ましくはメタンである。酸素ガスは酸素源として適しているが、COやNOなどの他の酸素を含有するガスもまた酸素源として用いることが出来る。かかるa−Si:H層は、例えばシラン雰囲気でのPECVDといった適宜の方法によって被覆することが出来る。最も好ましくは、水素中に約10%のシランを含有した雰囲気でのPECVDによって被覆し、最も好ましくは例えば約100℃〜約250℃といった低温で被覆する。
【0020】
操作の理論に縛られることを意図するものではないが、このパッシベーション層は、シリコンウエハの表面近傍の欠陥をパッシベートするために追加される。かかる一層以上のパッシベーション層を被覆した後では、そのシリコンウエハの表面再結合速度は被覆されたシリコンウエハ表面で100cm/s以下とすべきであり、例えば40cm/s以下であり、好ましくは10cm/sである。このシリコンウエハの表面上での表面再結合速度(S)は、光伝導減衰法(有効寿命はマイクロ波光伝導減衰法を用いてSemilab製のWT−2000ウエハテスターで測定することが出来る)などの手法を用いてウエハの有効寿命(τeff)を測定し、同様にしてウエハの作製に用いたシリコンのバルク寿命(τ)を決定し、次いで式1/τeff=1/τ+2S/W(ここでWはSを決定するためのサンプル厚)を用いることにより決定する。バルク寿命は、τeff=τとなるような非常に良くパッシベートされた表面を有する似たようなシリコンウエハの有効寿命を測定することにより決定することが出来る。シリコン表面を、寿命を測定する前に、例えばウエハを10%フッ化水素(HF)水溶液に室温で数分間浸漬することによって、非常に良くパッシベートすることが出来る。アルミニウムの裏面フィールドコンタクトを有するシリコン表面に関して、Sは通常1000cm/sより大きい。
【0021】
一層以上のパッシベーション層を追加した後、好ましくは、ウエハと反対の導電性を有するか、またはウエハと反対の導電性にドーピングしたドープ層の薄層を少なくともウエハの裏面に一層以上被覆する。一層以上のドープ層を、ウエハの裏面および前面の両方に被覆してもよく、またウエハの全ての面に被覆することも出来る。かかるドープ層は、好ましくは高濃度でドープされたa−Si:Hであり、例えば約10〜約30nmの厚さであり、ウエハと反対の導電性を有する。ウエハがp型の場合には、a−Si:H層などのドープ層は、例えば、リン、砒素、アンチモン、またはビスマスのうち一種類以上でドープすることが出来る。ウエハがn型の場合には、ドープ層は、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、またはインジウムのうち一種類以上でドープすることが出来る。ドープ層は、p型ウエハ内部に反転層を生成するためにリンをドープしたa−SiC:Hなどのアロイであっても良く、n型ウエハ内部に反転層を生成するためにホウ素をドープしたa−SiC:Hなどのアロイであっても良い。例えばリンなどのドーパントの濃度は、約0.1〜約1.0原子%(at.%)であっても良い。ドープ層はa−SiN:Hのドープアロイであっても良く、式中xは約0〜約0.2の範囲であっても良く、yおよびzは約0〜約0.05の範囲であっても良い。ドープ層は、例えばPECVDなどの任意の適した方法で被覆することが出来る。操作の理論に縛られることを意図するものではないが、ドープ層によって覆われたパッシベーション層は、シリコンウエハ内部に反転層または誘起エミッタを誘発する。パッシベーション層およびドープ層を、ウエハの前面、裏面、および端部などのウエハの全ての面に堆積させることが出来る。好ましくは、反転層はウエハの全ての層に隣接している。更に、操作の理論に縛られることを意図するものではないが、ウエハの全ての面上に生成されたかかる反転層は、本発明の実施形態に従って作製された光起電性電池を有する光起電性モジュールの動作において発生する可能性のあるどんな分極や帯電効果も最小化するであろう。十分な電荷が表面近傍に誘起され、バルク内部の少数キャリアが表面近傍において多数キャリアになると、シリコン内部に反転層が作り出される。p型シリコンの場合には、正孔が多数キャリアであり、そのフェルミレベルは価電子帯に近く、シリコン表面近傍に正の固定電荷を含有する層を配置するか、または、例えばシリコンウエハの表面近傍にリンをドープしたシリコン層といったn層を配置することにより、反転層を誘起させることが出来る。図1は、ドープされていないa−Si:Hの真性層をp型結晶シリコン上に堆積させ、次いでリンをドープした(n)層をその真性a−Si:H層上に堆積させた場合のエネルギーバンド図を示す。この場合には、リンをドープしたa−Si:H層がp型結晶シリコンの表面近傍の負電荷(過剰の電子)を含有する反転層を誘起するだろう。そのため、図1に示すように、平衡状態において表面近傍でフェルミレベル(E)が伝導帯に近づくように伝導帯および価電子帯(それぞれEおよびE)がベンドするだろう。別の例においては、PECVDによって堆積させた窒化ケイ素内部における通常約2×1012cm−2の電荷密度を有する正の固定電荷が、p型ウエハの表面近傍で負に帯電した層、つまり反転層を誘起し、これにより表面近傍の伝導帯がフェルミレベルに近づくだろう。しかし、強反転層を誘起することが望ましく、そのため好ましい実施形態において、高濃度でドープされたa−Si:H層や炭素などを含有するa−Si:Hアロイなどの高濃度でドープされた層を使用するだろう。例えば、p型ウエハの場合には、ドープ層はa−Si:H層またはa−SiC:H層(yは0より大きい)であっても良く、その厚さは30nmであっても良く、1.0原子%のリンなどのn型ドーパントといった、約0.5〜約2.0原子%のn型ドーパントを含有していても良い。そしてn型ウエハの場合には、ドープ層はa−Si:H層またはa−SiC:H(yは0より大きい)であっても良く、その厚さは30nmであっても良く、1.0原子%のホウ素などのp型ドーパントなどの、約0.5〜約2.0原子%のp型ドーパントを含有していても良い。「強」反転層とは、好ましくは、誘起された電荷量がウエハ表面を縮退させるか、または表面の導電性を高め、金属に近い電気伝導度になるような反転層を意味している。
【0022】
別の実施態様においては、パッシベーション層とドープ層を、一層以上の低濃度でドープされた層によって置き換えることが出来る。例えば、a−Si:Hの低濃度でドープされた層である。p型ウエハの場合には、この層はa−Si:Hであっても良く、約10〜約50nmの厚さであっても良く、約0.01〜約0.3原子%の、リン、砒素、アンチモン、またはビスマスのうち一種類以上といったn型ドーパントを含有していても良い。例えば、30nmの厚さで、約0.1原子%のリンを含有するa−Si:Hの層である。n型ウエハの場合には、この層はa−Si:Hであっても良く、約10〜約50nmの厚さであっても良く、約0.01〜約0.3原子%の、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、またはインジウムのうち一種類以上といったp型ドーパントを含有していても良い。例えば、30nmの厚さで、約0.1原子%のホウ素を含有するa−Si:Hの層である。この場合には、低濃度でドープされたa−Si:H層はシリコンとヘテロ接合を形成し、以前と同じく、ドープ層はシリコンウエハ内部に反転層を誘起する。
【0023】
例えば、窒化ケイ素層などの誘電材料の一層以上の層を、次いでウエハの前面、より好ましくはウエハの前面および裏面、および最も好ましくはウエハの全ての面に堆積させる。PECVDで堆積させた場合には、窒化ケイ素はa−SiN:H(式中xは好ましくは約0.4〜約0.57)であっても良い。誘電体層の厚さは約90nm以下であっても良く、例えば、約70〜約90nmの厚さであっても良い。誘電体層は、例えばPECVDによって堆積させたa−SiN:Hなどの他の材料であっても良く、様々な量で炭素、窒素、および酸素を含む。x、y、およびzの値は、それぞれ約0〜約0.66未満の間で変更することが出来る。a−SiNにおける炭素、窒素、および酸素の相対量を、誘電体層における光の吸収を最小化し、光のシリコンウエハとの結びつきを最適化するように選択することが出来る。好ましい場合においては、前面の誘電体層とその厚さを、誘電体層における光の吸収を最小化し、光のシリコンウエハとの結びつきを最適化するように選択し、裏面の誘電体層の種類とその厚さを、あまり吸収されなかった放射線の反射を促進して、シリコンウエハ内に戻すように選択することが出来る。どちらの場合においても、前面の誘電体層の組成に傾斜をつけて、光の捕捉を最適化することが出来る。傾斜は、例えばウエハの前面の誘電体における炭素および/または窒素の濃度などの誘電体の組成を、誘電体層の最も前面に近い部分から誘電体層の最もドープ層に近い部分へと減少させるように変化させることを意味する。そのため、前面の傾斜層の誘電率は、前面の反射を減少させるようにサンプルの外側の面からドープ層へと減少していくだろう。裏面においては、異なる誘電率を有する複数の誘電材料の交互層を堆積させて、あまり吸収されなかった放射線のシリコンウエハ内への反射を最適化することが出来る。例えば、SiN:Hの層(式中、xは約0.4〜約0.57)をドープ層上に堆積させ、次いでa−SiO:Hの層(式中、zは約0.5〜約0.66)で上から被覆しても良く、各層の厚さは反射を最小化するように選択することが出来る。大抵の場合には、電池の前面の誘電体および誘電体層の厚さを選択して、各層における光の吸収を最小化し、光起電性モジュール内にカプセル化された場合に電池からの反射を最小化するだろう。
【0024】
本発明の実施形態に従った光起電性電池は、好ましくは、ウエハの裏面にのみ局在する電気コンタクトを有する。これらの局在するコンタクトは少なくとも誘電体層を貫いて延在しており、好ましくはドープ層およびパッシベーション層(または、もしパッシベーション層とドープ層との組み合わせの代わりに用いる場合には、低濃度にドープされた厚い層)を貫いてシリコンウエハ内部に延在している。本発明の一つの実施形態においては、局在するnコンタクト、またはAs、Bi、P、あるいはSbなどのうち一種類以上のn型ドーパントを含有するペーストあるいはインクを形成可能な金属や非金属などの材料と、局在するPコンタクト、またはAl、B、Ga、あるいはInなどのうち一種類以上のp型ドーパントを含有するペーストあるいはインクを形成可能な金属または非金属などの材料とを、ウエハ上に予め選択したパターンで塗布して局在するコンタクトを形成する。本発明の利点の一つは、以下により詳しく記載するように、パッシベーション層、ドープ層(または、もしパッシベーション層とドープ層との組み合わせの代わりに用いる場合には、低濃度にドープされた厚い層)、および誘電体層を被覆した後に、ウエハの裏面を処理することによって、これらの局在するベースコンタクトおよびエミッタコンタクトをウエハ上に容易に形成可能であることである。このパターンを、好ましくは、材料を局所的に塗布することによって、すなわち、ウエハの表面全体を覆う態様ではなく、必要なところのみに材料を塗布する態様で塗布することによって形成する。このパターンを、以下により詳しく記載するように、究極的には、局在するコンタクト同士を容易に電気的に接続して、二つの離れた光起電性電池の電気コンタクトを形成し、その一つがその光起電性電池のための正の電気コンタクトであり、もう一方が負の電気コンタクトとなるように選択することが好ましい。材料は、一続きの区切られたドットあるいは短いラインとして、または連続するラインなどのいくつかの他のパターンとして、ウエハの裏面上の誘電体層の上に塗布することが出来る。一続きの区切られたドットが好ましい。このような予め選択したパターンのうち好ましいものの一つは、交互嵌合指状突起パターンであり、好ましくは裏面の誘電体層上にのみ設けられる。その交互嵌合指状突起パターンの第一の部分は局在するpコンタクトのためのp型材料を含む材料であり、交互嵌合指状突起パターンの他の第二の部分は局在するnコンタクトのためのn型材料を含む材料である。交互嵌合指状突起パターンとは、好ましくは平行な材料の列または「指」の第一の組が同様の「指」の第二の組の間に塗布されることを意味している。材料を一続きの分離した「ドット」あるいは短いラインとして、またはいくつかの他のパターンとして塗布して、各々の指を形成することが出来る。一続きの区切られたドットとすることが好ましい。かかる交互嵌合指状突起パターンは、手の指を、もう片方の手の指の間に互いに離して交互に配置することによって想像することが出来る。一方の手とその指が一つのコンタクトを形成し、もう片方の手が他のコンタクトを形成するだろう。光発生電流を集めるために、ドットまたはラインの交互嵌合指状突起パターンによって、導電性の指状突起を持つ交互嵌合パターンを上から塗布することが考えられる。
【0025】
レーザー、他の放射源、または熱源あるいは他の適切な方法を用いて、誘電体層を貫いて、ドープ層を貫いて、およびパッシベーション層を貫いて、p型およびn型材料を焼成して、局在するpコンタクトおよびnコンタクトをシリコンウエハに形成することが出来る。例えばNd−YAGレーザーを用いてレーザー焼成を実行することが出来る。例えば、レーザーは約10〜約200ナノ秒のパルス持続時間を有するQスイッチNd−YAGレーザーであっても良い。p型およびn型材料を区切られたドットまたは区切られた短いラインとして堆積させ、次いで上記の焼成を行った場合には、形成された局在するエミッタコンタクトおよびベースコンタクトは、ウエハ上で互いに離れているだろう。
【0026】
別の実施形態において、パッシベーション層、ドープ層、および誘電体層が熱処理に耐え得る場合、例えばパッシベーション層およびドープ層がa−SiC:Hアロイ(式中yは約0〜約0.2の範囲であって良い)を含む場合には、局在するpおよびnコンタクトを、急速熱処理などの熱処理によって形成する。例えば、組成は75原子%のSi、15原子%のC、そして10原子%のHであっても良い。この場合には、コンタクトを形成するために用いるp型およびn型材料をシリコンウエハの剥き出しになった領域にシリコンウエハと接触させて配置するために、ウエハの表面の層を、例えばエッチングによって誘電体層、ドープ層、およびパッシベーション層(または、もしパッシベーション層とドープ層との組み合わせの代わりに用いる場合には、低濃度にドープされた厚い層)を貫いて、上述したように予め選択したパターンで剥き出しにすることが出来る。この剥き出しの領域は、例えば互いに離れた丸い孔の形状や、短いライン、またはその他の適切な形状で、レーザーアブレーションを用いて形成することもできる。別の態様において、もし誘電体層、ドープ層、およびパッシベーション層(または、もしパッシベーション層とドープ層との組み合わせの代わりに用いる場合には、低濃度にドープされた厚い層)を貫いて、その誘電体層、ドープ層、およびパッシベーション層の下にあるシリコン層上まで、またはその内部まで熱焼成が可能な場合には、ドーパントを含有する材料を、上述のように予め選択したパターンで誘電体層上に局所的に被覆することが出来る。急速熱処理は、少なくとも望ましい局在するpコンタクトまたはnコンタクトが形成される領域において、約5秒〜約2分間という短い時間、例えば約700℃〜約1000℃の温度でシリコンを加熱することによって実行できる。
【0027】
局在するコンタクトを形成するために用いるドーパントを含有する材料は、pコンタクトに関してはAl、Ga、またはInなどの金属であっても良く、nコンタクトに関してはSb、As、またはBiであっても良い。これらの材料は、気相成長法などの一種類以上の方法で堆積させることが出来る。また、これらの材料は、たとえばnコンタクトに関してはSn−Sb、Sn−Biなどのアロイであっても良く、pコンタクトに関しては、Sn−In、Al−Siなどのアロイであっても良い。局在するコンタクトを形成するために用いるドーパントを含有する材料は、nコンタクトを形成可能なSbNあるいはAsPのうち一種類以上の化合物、またはpコンタクトを形成可能なBSiあるいはAlBのうち一種類以上の化合物、もしくは例えばpコンタクトを形成可能なB、Al、Ga、あるいはInのうち一種類以上を含有する有機金属化合物、またはn+コンタクトを形成可能なP、As、Sb、Biのうち一種類以上を含有する有機金属化合物を含む、インクもしくはペーストであっても良い。かかる局在するコンタクトの数、間隔、そして形状を、好ましくは最適な光起電性電池の性能を達成するために選択する。
【0028】
光起電性電池の動作中に反転層に集まる少数キャリアは、ベースコンタクト、つまりp型ウエハにおいては局在するpコンタクト、n型ウエハにおいては局在するnコンタクトに漏れ出す可能性がある。かかる漏出は光起電性電池の光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率を減少させるだろう。これらのベースコンタクトはウエハに対してオーミックコンタクトであり、多数キャリアを集めることが可能である。例えばベースコンタクトを反転層から電気的に絶縁させることによって、この漏出または分流を防ぎ、または最小化することが出来る。この電気的絶縁を、例えば、ベースコンタクトの少なくとも一部、および好ましくは全てと反転層との間に絶縁層を追加することによって実行できる。絶縁層は、好ましくはSiO、真性a−Si:H、またはSiN:H(式中x、y、およびzの値は、それぞれ約0〜約0.66未満の間で変更することが出来る)などの誘電体層である。ベースコンタクトが、例えば、誘電体層、ドープ層、およびパッシベーション層を貫く、コンタクトを形成するために用いる材料のドットまたは短いラインをレーザー、または熱により焼成することによって作製されたコンタクトのような「ポイント」コンタクトの場合には、電気的絶縁は、そのベースコンタクトの周りに上述の誘電材料のうち一種類以上であるような電気的絶縁材料のリングまたは環を形成することによって実行できる。かかる絶縁リングまたは絶縁環は、ベースコンタクトが形成される場所において、誘電体層の上から、選択した誘電材料の層または領域を例えばインクまたはペーストの形態で堆積させることによって実行できる。次いで、誘電材料を、例えばレーザーを用いて少なくとも誘電体層およびドープ層を貫いて焼成し、または溶融することが出来る。誘電材料を、例えば窒化ケイ素の誘電体層、ドープ層、およびパッシベーション層を貫いて、ウエハに到達するまで、およびさらにはシリコンウエハの内部に幾分入り込むまで焼成し、または溶融することが出来る。ベースコンタクトを形成するために用いる材料を、次いで同じ場所の上に堆積させて、次いで、上述のように、レーザーを用いて誘電材料を通して焼成して、それによってベースコンタクトを形成するために用いる材料をとりまく誘電材料のリングまたは環を有するベースコンタクトを形成することができ、結果として絶縁リングまたは絶縁環の近傍においてシリコンウエハ内部に著しく反転層が誘起されることは無くなる。かかる絶縁リングを急速熱処理工程によって形成することもできる。ここで絶縁リングを形成するために用いる誘電材料は、例えばガラスフリットのペーストやインクであり、絶縁リングの近傍においてシリコン内部に著しく反転層が形成されないように、これらを少なくとも誘電体層およびドープ層を貫いて溶融する。ベースコンタクトの少なくとも一部、好ましくは全てが、ベースコンタクトを反転層から電気的に絶縁する絶縁層を有する。
【0029】
電気伝導材料、または熱やその他の処理後に電気伝導性となる材料を含む上述の交互嵌合指状突起パターンなどの予め選択したパターンを、局在するエミッタコンタクト上および局在するベースコンタクト上に堆積させて、それぞれのコンタクトの組を別々に電気的に接続することによって、動作中の光起電性電池から電流を集めることが出来る。
【0030】
例えば、予め選択した電気伝導性のパターンは、銀、アルミニウム、またはその他の適切な金属を含む。銀、アルミニウム、またはその他の適切な金属を、一種類以上の堆積法によってウエハに塗布することが出来る。例えば、アルミニウム含有ペーストの塗布や銀含有インクのインクジェット印刷によってパターンを塗布できる。ペーストを焼成やその他の熱処理に供すると、ペーストは、安定で電気伝導性のコンタクトになるだろう。
【0031】
一つの実施形態において、例えばp型ウエハを用いると、局在するベースコンタクトおよびエミッタコンタクト、絶縁リング、ならびに局在するコンタクトと電気的に接続する交互嵌合指状突起パターンなどの電気伝導性のパターンを、マルチヘッドインクジェットプリンタを用いて形成することができる。かかる実施形態においては、一つのヘッドがアンチモンなどのn型コンタクト材料を含有するインクで例えばドットまたはその他の適切な形状を印刷し、別のヘッドがアルミニウムなどのp型コンタクト材料を含有するドットの分散配列を印刷し、また別のヘッドがその(p型ウエハのための)p型ドットの周辺に絶縁リングを形成するために用いる材料でリングを印刷し、そしてさらに別のヘッドが電気伝導材料のパターン、例えば銀含有ペーストまたはインクの交互嵌合指状突起パターンを、p型ドット(またはその他の適切な形状)および付随する絶縁リング上における指状突起パターンなどの第一のパターンと、n型ドット(またはその他の適切な形状)および付随する絶縁リング上における、第一のパターンから電気的に分離した指状突起パターンなどの第二のパターンとを印刷する。次いで、レーザーを用いてnコンタクトを焼成し、同時にpコンタクトおよび絶縁リングを形成するための材料も焼成して、局在するエミッタコンタクトと絶縁リングを有する局在するベースコンタクトとをそれぞれ形成する。別の実施形態においては、再びp型ウエハを例として用いると、マルチヘッドインクジェットプリンタの一つのプリンタヘッドにより、まず誘電体層上に絶縁リング材料を印刷し、別のヘッドがその絶縁リングの上からAl含有インクなどのp型材料の指状突起パターンなどの第一のパターンを印刷し、また別のヘッドがSb含有インクなどのn型材料の指状突起パターンなどの第二のパターンを、第一のパターンから離して印刷し、次いで更に別のヘッドが、p型材料およびn型材料の両方のパターンの上からAg含有インクなどの電気伝導材料を交互嵌合指状突起パターンで印刷する。次いで、レーザーを用いて、n型材料を含有する選択されたパターンの領域において局在するnコンタクトを形成し、別のレーザービームを用いて、絶縁リング材料の中央部に局在するpコンタクトを形成するとともに、上述のように、絶縁リング材料を少なくとも誘電体層およびドープ層の内部にまで溶融する。別の態様において、好ましくは、局在するコンタクトと電気的に接続する電気伝導性のパターンを形成するために用いる材料を誘電体層を貫いて焼成しないように急速熱処理を選択すべき状況である場合には、これも上述のように、急速熱処理を用いて局在するコンタクトを形成することができる。
【0032】
レーザー焼成によるコンタクトの場合には、熱アニール工程を用いて光起電性電池の性能を最適化することが出来る。かかるアニールを、例えば、約300℃〜約450℃の温度で約5〜約60分間、例えば350℃で30分間、電池を加熱することによって実行できる。電池を、例えば約700℃〜約1000℃で、約5秒〜約2分間、たとえば約700℃で約1分間急速熱処理によってアニールすることが出来る。いずれの場合にも、選択したパッシベーション層および誘電体層はかかるアニール工程に耐えることが出来なければならない。
【0033】
II.中性表面裏面コンタクト光起電性電池
別の側面において、本発明は、中性表面裏面コンタクト光起電性電池として本明細書中で記載する光起電性電池である。すなわち、局在するコンタクトの近傍における分流や電流の漏出を誘起する可能性のある、ウエハの表面近傍における意図的な誘起電荷またはバンドベンディングが存在しない。
【0034】
中性表面裏面コンタクト光起電性電池を形成するためには、固定電荷を有さないか、固定電荷の数が少ないa−Si:H層などのパッシベーション層をウエハに被覆する。一層または複数のパッシベーション層を、ウエハの裏面、ウエハの裏面および前面、またはウエハの全ての面に被覆することが出来る。ウエハは、p型であってもn型であっても良い。かかる一層または複数の中性パッシベーション層は、上述のような誘起反転層電池のためのパッシベーション層であっても良い。しかし、本発明のこの側面においては、a−Si:H層などのパッシベーション層または複数のパッシベーション層の組み合わせは、誘起反転層電池のための一層または複数のパッシベーション層よりも厚くても良い。例えば、かかる中性パッシベーション層またはかかる複数の層の組み合わせは、約100nmまでであっても良く、例えば約4〜100nmの厚さであっても良い。ウエハの裏面上の中性パッシベーション層は、局在するコンタクトが形成されているその領域の外部のシリコンウエハから、ウエハ裏面上の電気伝導材料のパターンを絶縁するのに十分な程度に厚くなければならない。また、中性パッシベーション層は、ウエハの表面に反転層や蓄積層が形成されることを低減し、または排除するのに十分なほど厚くなければならない。操作の理論に縛られることを意図するものではないが、a−Si:Hパッシベーション層は、十分に厚く作製してもそのa−Si:H上に堆積させた任意の誘電体層内部における電荷を相殺するのに十分な反対分極のための電荷を提供することが可能であると考えられている。かかる誘電体層の堆積を、下記により詳しく記載する。例えば、PECVDによって堆積させたSiN:Hは、通常約2×1012cm−2の正電荷密度を有し、一方でSiOは通常約1011cm−2の正電荷密度を有する。そのため、薄いa−Si:Hパッシベーション層、例えば約5〜約50nmの厚さの層をSiO誘電体層に隣接させて用いて、p型シリコンウエハ内部に著しく反転層が形成されることを防ぐことができるが、一方で、SiN:H誘電体層とともに用いてp型シリコンウエハ内部に著しく反転層が形成されることを防ぐためには、より厚いパッシベーションa−Si:H層、例えば約30〜約100nmの厚さの層が必要とされるだろう。a−Si:H層の厚さは、基板温度、残留不純物、およびその他の変化と言った堆積条件によって決定されるa−Si:Hの導電性に依存するだろう。中性表面裏面コンタクト光起電性電池の別の実施形態においては、真性a−Si:Hの層をパッシベーション層および誘電体層の両方として用いることができ、この場合にはa−Si:Hの厚さは約40〜約100nmであっても良い。
【0035】
薄いドープ層もまた、著しい反転層または蓄積層が無くすために、中性表面裏面コンタクト光起電性電池における一層または複数のパッシベーション層の上から用いることができ、好ましくは、シリコンウエハにおける中性の表面条件を保証するためにドープa−Si:Hの層を用いる。ドーパントは、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどのうち一種類以上のp型ドーパント、またはリン、砒素、アンチモン、およびインジウムなどのうち一種類以上のn型ドーパントであっても良い。ドーパントの量を、例えば表面光電圧測定を用いてバンドベンディングがゼロの条件を決定することによって、実験的に決定することができる。光電圧の値はバンドベンディングの量に依存し、光電圧の極性はバンドベンディングの方向に依存するだろう。バンドベンディングがゼロに近い場合には、光電圧もゼロに近いだろう。例えば、SiN:H層などの正の固定電荷を含有する層がp型ウエハの表面近傍に位置する場合には、反転層が発生し、p型ウエハにおいては電子、n型ウエハにおいては正孔である少数キャリアが表面近傍で支配的になり、伝導帯および価電子帯がベンドしてフェルミレベルが伝導帯に近づく可能性がある。例えば約4〜約20nm厚の、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、またはインジウムなどのうち一種類以上のp型ドーパントにより低濃度でドープされた一層以上の薄い層を用いて、誘電体層内部に存在する可能性のある正の固定電荷を相殺し、または無効にすることが出来る。この層はa−Si:Hであっても良い。例えば、約2×1012cm−2の正の固定電荷密度を有するSiN:Hの誘電体層の為に、ホウ素でドープしたa−Si:Hの薄い層を用いてシリコンウエハの内部に反転層または蓄積層が発生しないことを保証することができる。この薄いドープ層は、例えば、ドープ層の厚さと誘電体層内部の正の固定電荷の量に依存して、ホウ素などのp型ドーパントを約0.001原子%〜約0.1原子%で含有していても良い。かかる一層または複数のドープ層を用いる場合に、好ましくは厚さ、ドーパントの種類、およびドーパント濃度の点で最適化することが好ましく、シリコンウエハの表面近傍における伝導帯および価電子帯のベンディングがゼロ、または本質的にゼロになることを保証する。逆に、誘電体層が負の固定電荷を含有する場合には、例えば、リン、砒素、アンチモン、またはビスマスなどのうち一種類以上のn型ドーパントにより約0.001原子%〜約0.1原子%のドーピングレベルの低濃度でn−ドープした約4〜約20nmの厚さの一層または複数の薄い層を、好ましくは一層または複数のパッシベーション層上に被覆する。好ましくは、n−ドープした層の厚さはドーピングレベルおよび誘電体層における負の固定電荷に依存するため、シリコンウエハ表面に実質的に電荷が誘起されないことを保証するために層の厚さを選択する。
【0036】
中性表面裏面コンタクト光起電性電池においては、一層以上の誘電材料の層をパッシベーション層、および存在する場合には薄いドープ層の上からウエハに被覆する。一層以上の誘電体層を、ウエハの裏面、ウエハの裏面および前面、またはウエハの全ての面に被覆することができる。かかる一層または複数の誘電体層は、上述のような誘起反転層電池のための誘電体層であっても良いが、例えば、誘電体内部に固定電荷が存在しない、または本質的に存在しないような条件のもとで誘電体を堆積させることによって最適化でき、結果として、シリコン内部に著しい伝導帯あるいは価電子帯のベンディング、または誘起電荷が発生しない。著しいバンドベンディングのない中性表面は、普通は良く洗浄されたシリコンウエハ上に真性a−Si:Hを堆積させることで達成できる。上述のように、SiN:Hは通常約2×1012cm−2の正電荷密度を有し、一方でSiOは通常約1011cm−2の正電荷密度を有する。また、上述のように、適切なドープ層を用いることにより、誘電体層内部のあらゆる電荷を無効にし、または相殺することができる。
【0037】
この中性表面裏面コンタクト光起電性電池のための局在するコンタクトは、誘起反転層電池のための上述の態様で被覆することができる。誘起反転層電池のために上述したように、かかる局在するコンタクトは、中性表面裏面コンタクト光起電性電池に関して、好ましくはウエハの裏面上に上述の層を堆積させた後にウエハ上に形成する。そのため、中性表面裏面コンタクト光起電性電池のためのベースコンタクトおよびエミッタコンタクトは、誘電体層、および好ましくはパッシベーション層(および、もし用いた場合には薄いドープ層)を貫いて延在する。
【0038】
誘起反転層電池の為に上述した絶縁リングは、この中性表面裏面コンタクト光起電性電池にとっては任意要素である。しかし、絶縁リングを用いる場合には、誘起反転層電池の為に上述したように形成することができる。
【0039】
中性表面裏面コンタクト光起電性電池上の局在するエミッタコンタクトおよび局在するベースコンタクトと電気的に接続している電気伝導材料から形成される電気コンタクトを、誘起反転層電池のために上述したように、光起電性電池の裏面に塗布することができる。そのパターンは、例えば交互嵌合指状突起パターンや、その他の適切なパターンの形状であっても良い。もしレーザー焼成によって局在するコンタクトを形成する場合には、光起電性電池の性能を最適化するために、誘起反転層電池のために上述した熱アニール工程を必要としても良い。
【0040】
本発明の光起電性電池のある実施形態を、図2および図3に関して記載する。しかし、これらは本発明の単なる実施形態でないことが理解される。
図2は、本発明の実施形態に従った、誘起反転層裏面コンタクト光起電性電池1の一部分の断面図である。図2は、太陽電池を製造するために適したタイプのp型シリコンウエハ5を示している。かかるウエハは、当業者に知られている。しかし、かかるウエハはn型であっても良いことが理解される。
【0041】
図2は、ウエハ5上に堆積させたアモルファスシリコン(a−Si:H)から作製した真性パッシベーション層10を示している。この層は、例えばプラズマ化学気相成長法(PECVD)などの任意の適切な手段によってウエハ5上に堆積させることができる。図2に示すように、この層を約4〜約30nmの厚さで、ウエハ5の全ての表面に被覆することができる。
【0042】
真性パッシベーション層を堆積させた後、ウエハと反対のドーピングを有するドープ層15を被覆する。図2におけるシリコンウエハ5はp型なので、図2に示すドープ層はn型である。この実施例において、ドープ層15は、例えばリンでドープしたa−Si:Hなどのドープa−Si:Hであっても良い。ドープ層15は約10〜約30nmの厚さであっても良く、例えばリンなどのドーパント濃度は約0.1〜約1.0原子%であっても良い。ドープ層15はまたa−Si:Hと炭素、窒素、および/または酸素とのアロイであっても良い。ドープ層15は、例えばPECVDなどの任意の都合の良い方法によって堆積させることができる。図2に示すように、かかるドープ層をウエハの全ての面に堆積させても良い。
【0043】
ドープ層15を堆積させた後に、誘電材料の層20を堆積させる。かかる層は、例えばSiN:H(式中xは約0.4〜約0.57原子%であっても良い)の層であっても良く、約70〜約90nmの厚さであっても良い。かかる層を、PECVDによって堆積させても良い。
【0044】
図2は、シリコンウエハの周縁の内側に沿った破線として反転層25を示している。上述のように、反転層は高濃度の誘起電荷を含有し、例えばp型ウエハの場合には、反転層内部の誘起電荷は電子からなる。表面近傍の過剰な電子を、伝導帯および価電子帯の局所的なベンディングによって表すことができ、結果としてフェルミレベルが伝導帯に近づき、誘導接合を形成する。
【0045】
n型ウエハの場合には、反転層を、例えばa−Si:Hの薄いパッシベーション層、次いでホウ素などのp型ドーパントでドープしたa−Si:Hの層を堆積させることによって生成することができる。このドープ層は約10〜約30nmの厚さであっても良く、例えばホウ素などのドーパント濃度は約0.1〜約1.0原子%であっても良い。ドープ層はまたSi:Hと炭素、窒素、および/または酸素とのアロイであっても良い。このドープ層は、例えばPECVDなどの任意の都合の良い方法によって堆積させることができる。
【0046】
次の工程においては、局在するエミッタコンタクト35および局在するベースコンタクト40をウエハの裏面、すなわち、完成した光起電性電池の受光側である前面となる側と反対側に形成する。矢印30は誘起反転層裏面コンタクト光起電性電池1の受光側に衝突する光を描いている。
【0047】
局在するコンタクトを、例えば、まず一種類以上の堆積法あるいはプレーティング法によって金属を堆積させるか、または局在するpコンタクトを形成するためのアルミニウムなどのドーパントを含有する導電性材料を堆積させることによって形成することができる。導電性材料は、ペースト、またはより好ましくはインクであっても良い。金属または導電性材料を、好ましくは、区切られたドット、区切られた短いライン、または連続するラインなどのその他の適切な形状として塗布する。堆積させた金属または導電性材料を、続いて、金属またはドーパントを含有する導電性材料が誘電体層、ドープ層、パッシベーション層を貫いて、局在する領域においてシリコンウエハ内部に到達するように処理する。これは、例えば、金属またはドーパントを含有する導電性材料をレーザーまたはイオンビームあるいは電子ビームなどの適切な熱源で焼成することによって実行できる。レーザーを用いる場合には、例えば約10〜約200ナノ秒のパルス持続時間を有するQスイッチNd−YAGレーザーであっても良い。この方法において、金属またはドーパントを含有する導電性材料を例えばレーザービームなどで局所的に加熱し、加熱され、好ましくは溶融した金属またはドーパントを有する導電性材料を、その下の層を貫通して、シリコンウエハと接続したベースコンタクト40およびエミッタコンタクト35を形成する。p型ウエハに関して、ベースコンタクトを形成するために用いる金属または導電性材料は上述のものであっても良く、好ましくはアルミニウムまたはアルミニウムを含有する材料である。ウエハがp型の場合には、アンチモンあるいはビスマスなどの金属、またはリン、アンチモン、またはビスマスなどのドーパントを含有する錫などの金属を用いてエミッタコンタクトを形成することが出来る。図2において、ベースコンタクト40はアルミニウムから作製することができ、エミッタコンタクト35はアンチモンから作製することが出来る。
【0048】
局在するエミッタコンタクト35の場合には、コンタクトを、誘電体層を貫いてドープ層まで金属を焼成することによって作製することが出来るが、真性a−Si:Hの場合には、少数キャリアがシリコンウエハからドープ層内部に移動することが出来るように、例えば約4〜10nmの厚さの薄い層が好ましい。
【0049】
かかる態様で作製されたコンタクトを、ポイントコンタクトと称する。しかし、ポイントコンタクトはポイントまたはドットの形状である必要はなく、楕円などの任意の形であっても良く、ライン形状などの線形でも良い。
【0050】
一つの好ましい方法においては、金属を含有する材料を、インクの形態で、ウエハの表面上に望ましいパターンで堆積させることによって、局在するベースコンタクトおよびエミッタコンタクトを作製する。このパターンは区切られたライン、ドット、またはいくつかのその他の適切な形状あるいはパターンであっても良い。インクは、焼成を行ってコンタクトを形成する前に、例えば加熱することによって乾燥させても良い。
【0051】
一つのかかる方法においては、インクを、区切られたドットのパターンの形態で、ウエハの裏面上に堆積させる。一組の区切られたドットはエミッタコンタクトを形成するための材料を含み、もう一組はベースコンタクトを形成するための材料を含む。そのドットを、次いでレーザービームで処理して、ドットの下にある層を貫いてシリコンウエハの内部まで金属を焼成してコンタクトを形成する。
【0052】
ベースコンタクト40の外側部分が反転層25から電気的に隔離、または絶縁していることが好ましい。かかる隔離は、ベースコンタクト40の外側部分の周りに絶縁リング45を含めることによって達成できる。かかる絶縁リング45を図2に示す。かかる絶縁リングを、例えばレーザー、機械的手段、または層のマスキングおよびエッチングによって、パッシベーション層、ドープ層、および誘電体層に孔を空け、次いで二酸化ケイ素などの適切な誘電材料で孔を充填することによって形成することができる。金属、またはベースコンタクト40を形成するために用いるドーパントを含有する導電性材料を、誘電材料を内部に含有する孔の上から堆積させることができ、次いで金属又はドーパントを含有する導電性材料を、例えば、レーザーまたはその他の適切な方法を用いて誘電体層を貫いて焼成すると、誘電材料はコンタクトの周りにリングまたは環45を形成し、それによってコンタクトは反転層25から絶縁されるだろう。別の態様では、まず絶縁リングを形成するための誘電体材料を堆積させ、次いでベースコンタクトを形成するために用いる材料を堆積させることによって、絶縁リングを形成することが出来る。次いで、例えばレーザーなどを用いた焼成工程において、ベースコンタクト材料を、誘電材料を貫き、そしてパッシベーション層、ドープ層、および誘電体層をも貫いて焼成して、例えば図2に示すような、コンタクトをとりまく絶縁誘電材料のリングまたは環45を有するベースコンタクトをシリコンウエハ上に形成する。
【0053】
本発明の光起電性電池を作製する好ましい方法においては、コンタクトを形成するために用いる金属を含有する材料を、ウエハ上にインクの形態で堆積させる。ここで、この堆積は、プリンタを用いて実行し、好ましくはインクジェットプリンタまたはエアロゾルジェットプリンタ、より好ましくはインクを印刷する特定のパターンをプログラムでき、制御することの出来るコンピュータによって制御されるインクジェットプリンタを用いて実行する。
【0054】
光起電性電池を光にさらすことによって発生する電流を集めることが出来るように、局在するベースコンタクトの集合は互いに電気的に接続しており、局在するエミッタコンタクトの集合も互いに電気的に接続している。これは、例えば、銀などの電気伝導性金属の層を、ベースコンタクト上で電気的に接続する第一のパターン、およびエミッタコンタクト上で電気的に接続する第二のパターンで塗布し、ここで第一のパターンと第二のパターンとが電気的に接続していないようにすることでなされる。かかるパターンを、適切なマスクを用いた金属の気相成長あるいは電気化学堆積、または適切なマスクを用いたスクリーン印刷などの一種類以上の堆積法によって塗布できる。好ましくは、このパターンは、インクとして、好ましくは上述のインクジェットプリンタまたはエアロゾルジェットプリンタを用いて堆積させる。図2は、エミッタコンタクト35上のかかるパターン60の断面およびベースコンタクト40上のかかるパターン50の断面を示している。一つの好ましいパターンは、図4に示すような交互嵌合指状突起パターンであり、光起電性電池1の裏面は、ベースコンタクト40と接触する一組の指状突起パターン50、およびエミッタコンタクト35と接触するもう一組の交互嵌合指状突起パターン60、ならびに指状突起パターン50と60とを電気的に切り離すスペース70を有する。別の実施形態においては、ベースコンタクトおよびエミッタコンタクトを形成するためのドーパントを含有するインクを、予め選択した区切られたドットのパターンなどの望ましいパターンで堆積させる。上述のように、ベースコンタクトが形成される領域において、絶縁リングの形成に備えるためにまず誘電材料を堆積させることができる。その後、銀を含有するインクなどの電気伝導性材料の層を、例えば、交互嵌合指状突起パターンなどの適切なパターンを印刷するインクジェットプリンタにより、エミッタコンタクトおよびベースコンタクトのためのパターンが印刷される領域であって、一組の指状突起パターンはベースコンタクトのためのドットを覆いこれと接続しており、もう一組の指状突起パターンはエミッタコンタクトのためのドットを覆いこれと接続するような領域上に塗布することが出来る。次いで、コンタクトを、上述のように、ウエハ上のベースコンタクトおよびエミッタコンタクトを形成するためにドットが印刷された指状突起パターンの領域をレーザーで焼成することによって形成する。
【0055】
最終工程として、ウエハを、例えば約350℃の温度で15〜60分間加熱することによって、または例えば約700℃で1分間急速熱処理することによってアニールすることが出来る。
【0056】
図3は、本発明の実施形態に従った中性表面裏面コンタクト光起電性電池1の断面を示している。図3は、p型シリコンウエハ5を示す。かかるウエハは、n型であっても良い。図2と同様、図3において、矢印30は、中性表面裏面コンタクト光起電性電池1の受光側である前面に衝突する光を描いている。
【0057】
図3はまた、a−Si:Hから作製された真性パッシベーション層15を示している。このパッシベーション層は、誘起反転層裏面コンタクト光起電性電池の為に図2に関して上述したように堆積させることが出来る。この層は約4〜約100nmの厚さであっても良く、また、図3において示すように、ウエハの裏面のみに被覆しても良く、同様にウエハの前面に被覆しても良い。
【0058】
図3において示すように、誘電材料の層20をウエハ上に堆積させる。かかる層は、例えば、SiN:Hの層であっても良く、例えば約70〜約90nmの厚さの層であっても良い。xの値は約0.4〜約0.57の範囲であっても良い。かかる層は、誘起反転層裏面コンタクト光起電性電池の為に図2に関して上述したように被覆できる。かかる層は、層の前面では反射防止コーティングとして、および層の裏面では誘電体層として機能することが出来る。図3において示す、ウエハ5の前面上の層20および裏面上の層20は、別々に、または同時に堆積させることが出来る。誘電体層を別々に堆積させる場合には、次いで前面にSiN:H(ここでxの値は約0.4〜約0.57であって良い)を堆積させて反射防止層として機能させ、裏面にはa−SiO:H(ここでzの値は約0.5〜約0.66であって良い)を堆積させて、あまり吸収されなかった赤外線が反射して再び電池の内部に戻るように最適化することが好ましい。
【0059】
次の工程において、エミッタコンタクト35およびベースコンタクト40をウエハの裏面に形成する。これらのコンタクトは、誘起反転層裏面コンタクト光起電性電池の為に述べたように形成することができる。
【0060】
光起電性電池を光にさらすことによって発生する電流を集めることが出来るように、局在するエミッタコンタクトの集合は互いに電気的に接続しており、局在するベースコンタクトの集合も互いに電気的に接続している。これは、例えば、図3および図4において示すように、パターン50およびパターン60を用いた導電性材料の交互嵌合パターンを塗布するための上述の方法によってなされる。
【0061】
最終工程として、ウエハを、例えば約350℃の温度で15〜60分間加熱することによって、または例えば約700℃で1分間急速熱処理することによってアニールすることが出来る。
【0062】
発明の特定の実施形態のみを説明してきたが、上記の記載から当業者には別の実施形態および様々な変形例が明らかであろう。これらの態様および他の態様は、均等物であると考えられ、本発明の精神および範囲に含まれる。
【0063】
2007年3月16日に出願された米国特許仮出願第60/895217号を全体として本明細書中に参照により援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面の受光面および反対側の裏面、少なくとも該裏面に存在するパッシベーション層、ウエハと反対の導電性を有する該パッシベーション層上のドープ層、誘起反転層、該ドープ層上の誘電体層、ならびに少なくとも該裏面上に少なくとも該誘電体層を貫いて延在する一つ以上の局在するエミッタコンタクトおよび一つ以上の局在するベースコンタクト、を含む半導体ウエハを含む光起電性電池。
【請求項2】
一つ以上の局在するエミッタコンタクトおよび一つ以上の局在するベースコンタクトが全て光起電性電池の裏側に存在する、請求項1に記載の光起電性電池。
【請求項3】
一つ以上の局在するエミッタコンタクトおよび一つ以上の局在するベースコンタクトがレーザー焼成されたコンタクトである、請求項1に記載の光起電性電池。
【請求項4】
ベースコンタクトの少なくとも一部が、ベースコンタクトを反転層から電気的に絶縁させる隔離層を含む、請求項1に記載の光起電性電池。
【請求項5】
半導体ウエハがp型シリコンを含む、請求項1に記載の光起電性電池。
【請求項6】
半導体ウエハがn型シリコンを含む、請求項1に記載の光起電性電池。
【請求項7】
局在するベースコンタクトの少なくとも一部が誘電体層、ドープ層、およびパッシベーション層を貫いて延在している、請求項1に記載の光起電性電池。
【請求項8】
前面の受光面および反対側の裏面、少なくとも該裏面に存在するパッシベーション層、ウエハと反対の導電性を有する該パッシベーション層上のドープ層、該ドープ層上の誘電体層、ならびに少なくとも該裏面上に少なくとも該誘電体層を貫いて延在する一つ以上の局在するエミッタコンタクトおよび一つ以上の局在するベースコンタクト、を含む半導体ウエハを含む光起電性電池。
【請求項9】
前面の受光面および反対側の裏面、少なくとも該裏面に存在する中性パッシベーション層、該中性パッシベーション層上の誘電体層、ならびに少なくとも該裏面上に少なくとも該誘電体層を貫いて延在する一つ以上の局在するエミッタコンタクトおよび一つ以上の局在するベースコンタクト、を含む半導体ウエハを含む中性表面光起電性電池。
【請求項10】
局在するエミッタコンタクトおよび局在するベースコンタクトが全て光起電性電池の裏面に存在する、請求項9に記載の光起電性電池。
【請求項11】
一つ以上の局在するエミッタコンタクトおよび一つ以上の局在するベースコンタクトがレーザー焼成されたコンタクトである、請求項9に記載の光起電性電池。
【請求項12】
中性パッシベーション層がa−Si:Hであり約100nm以下の厚さである、請求項9に記載の光起電性電池。
【請求項13】
a−Si:Hが少なくとも約40nmの厚さである、請求項12に記載の光起電性電池。
【請求項14】
ケイ素、前面、および裏面を含む半導体ウエハを含む光起電性電池を製造するための方法であって、
a)該ウエハの該表面および該裏面上にパッシベーション層を堆積させる工程;
b)該ウエハの少なくとも該裏面上であって、かつ該パッシベーション層の上方に、ウエハと反対の導電性を有するドープ層を堆積させる工程;
c)少なくとも該ドープ層の上方に、誘電体層を堆積させる工程;および
d)該ウエハの少なくとも該裏面上に、少なくとも該誘電体層を貫いて延在する局在するベースコンタクトおよび局在するエミッタコンタクトを形成する工程;
を含む、方法。
【請求項15】
ベースコンタクトが、該ベースコンタクトの少なくとも一部の周りに隔離材料の層を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
光起電性電池が、誘起反転層と、ベースコンタクトを該誘起反転層から電気的に隔離する隔離材料と、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
局在するベースコンタクトおよび局在するエミッタコンタクトが、光起電性電池の裏面上に交互嵌合指状突起パターンで形成される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
電気伝導性材料の第一のパターンを裏面のベースコンタクトと電気的に接続した部分に堆積させ、電気伝導性材料の第二のパターンを裏面のエミッタコンタクトと電気的に接続した部分に堆積させる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
ベースコンタクトおよびエミッタコンタクトがレーザー焼成されたコンタクトである、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
ケイ素、前面、および裏面を含む半導体ウエハを含む光起電性電池を製造するための方法であって、
a)該ウエハの少なくとも該裏面上にパッシベーション層を堆積させる工程;
b)該ウエハの少なくとも該裏面上であって、かつ該パッシベーション層の上方に、誘電体層を堆積させる工程;および
c)該ウエハの少なくとも該裏面上に、少なくとも該誘電体層を貫いて延在する局在するベースコンタクトおよび局在するエミッタコンタクトを形成する工程;
を含む、方法。
【請求項21】
誘電体層がウエハの表面上および裏面上に存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
パッシベーション層がa−Si:Hを含み、約4〜約100nmの厚さである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
パッシベーション層および誘電体層が少なくとも約40nmの厚さの一つの層として組み合わされている、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
パッシベーション層および誘電体層がa−Si:Hを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
薄いドープ層をパッシベーション層の上から堆積させ、該ドープ層が該パッシベーション層と誘電体層との間に存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
薄いドープ層が、ドープされたa−Si:Hを含み、約4〜約20nmの厚さである、請求項25に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−521824(P2010−521824A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554667(P2009−554667)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/057068
【国際公開番号】WO2008/115814
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】