説明

媒体搬送装置及び画像記録装置

【課題】斜行角度検出とジャム検知の両方を簡単な構成で行う。
【解決手段】矩形状の用紙Pを搬送する搬送経路に配置された2つのセンサ33、34は、搬送方向及び主走査方向のどちらに関しても位置が異なる。センサ33は、用紙Pの一辺縁が第1点にあることを検知する。センサ34は、用紙Pの一辺縁が第2点にあることを検知する。センサ33が用紙Pの一辺縁を検知した時刻とセンサ34が用紙Pの一辺縁を検知した時刻との時間差に基づいて、用紙Pの斜行量を算出すると共に、センサ33が用紙Pの一辺縁を検知した時刻から所定時間内にセンサ34が用紙Pの一辺縁を検知できたか否かに基づいて、用紙Pのジャム発生を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置及びこれを含む画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタなどの画像記録装置には、記録媒体である用紙を搬送する媒体搬送装置が含まれている。係る媒体搬送装置においては、例えば給紙ローラによる記録媒体の搬送開始時に記録媒体の斜行が生じることがある。しかも、斜行角度は記録媒体が搬送される度に異なる大きさとなるのが通常であり、一定ではない。そのため、搬送される各記録媒体の斜行角度を検出することが必要となる場合がある。
【0003】
特許文献1には、シリアル型のインクジェットプリンタにおいて、用紙の斜行を測定する技術が開示されている。特許文献1のプリンタでは、CCDセンサなどのイメージセンサを含む撮像部及びプリントヘッドが搭載されたキャリッジを主走査方向に移動させ、副走査方向に搬送中の用紙の搬送距離を主走査方向に関して異なる2個所で測定することに基づいて、用紙の斜行測定が行われる。また、特許文献2には、いわゆる1パスでの印刷が可能なライン型のインクジェットプリンタにおいて、用紙の斜行量を算出する技術が開示されている。特許文献2のプリンタでは、搬送用の無端ベルト上であって用紙の搬送方向に沿ってヘッドユニットよりも上流側に2つのエッジセンサーが配置されている。各エッジセンサーは、複数の受光素子を有するもので、用紙の幅方向端部の位置を検出可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−155723号公報
【特許文献2】特開2010−131964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
媒体搬送装置では、搬送される媒体の斜行だけでなく、媒体のジャムが発生することがある。そのため、媒体搬送装置は、斜行角度検出に加えて、搬送経路における媒体のジャム検知も可能であることが好ましい。ジャム検知を行うには、搬送方向に沿った所定間隔を媒体がどれだけの時間で搬送されたかを測定することが必要であるため、搬送方向に離隔した少なくとも2つのセンサが必要となる。例えば特許文献1のプリンタの場合は、撮像部による測定個所が主走査方向に離れた2個所であるため、ジャム検知を可能とするには、1つのイメージセンサを含む撮像部とこれを主走査方向に移動させるキャリッジに加えて、さらに別のセンサを設ける必要がある。また、特許文献2のプリンタの場合、搬送方向に離隔した2つのエッジセンサーを有しているので、さらなるセンサを設けなくてもジャム検知が可能であると推定されるが、2つのエッジセンサーそれぞれが複数の受光素子を有しているという非常に複雑な構成となっている。
【0006】
本発明の目的は、斜行角度検出とジャム検知の両方を簡単な構成で行うことができる媒体搬送装置及びこれを備えた画像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の媒体搬送装置は、矩形状の媒体を搬送するための搬送経路を規定する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送される媒体の一辺縁が、媒体の搬送方向及びこれと直交する直交方向の2方向を基準軸とする前記搬送経路に沿った座標系上の第1点にあることを検知する第1センサと、前記搬送機構によって搬送される媒体の前記一辺縁が、前記搬送方向に関して前記第1点よりも下流であって前記直交方向に関して前記第1点とは異なる、前記座標系上の第2点にあることを検出する第2センサと、前記第1センサが媒体の前記一辺縁を検知した時刻と前記第2センサが媒体の前記一辺縁を検知した時刻との時間差に基づいて、媒体の斜行量を算出する斜行量算出手段と、前記第1センサが媒体の前記一辺縁を検知した時刻から所定時間内に前記第2センサが媒体の前記一辺縁を検知できたか否かに基づいて、媒体のジャム発生を検知するジャム検知手段とを備えている。
【0008】
本発明の画像記録装置は、上記媒体搬送装置と、前記搬送方向に関して前記レジローラよりも下流に配置された、媒体に画像を記録する記録ヘッドとを備えている。この媒体搬送装置は、前記搬送方向に関して前記第2点よりも下流に配置され、前記斜行量算出手段が算出した媒体の斜行量が小さくなるように当該媒体の斜行を矯正する斜行矯正手段をさらに備えている。そして、前記斜行矯正手段が、前記第2点を通過した媒体の先端が突き当てられる、回転可能状態と回転禁止状態とを選択的に取ることができるレジローラと、前記斜行量算出手段が算出した媒体の斜行量が大きいほど回転禁止時間が長くなるように前記レジローラを制御するレジ制御手段とを含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の媒体搬送装置によると、2つのセンサで斜行角度検出とジャム検知とを行うことができる。第1センサ及び第2センサとも、一点を検出できればいいだけなので、例えば受光素子は1つだけでよく簡易な構成とすることができる。また、本発明の画像記録装置によると、斜行が矯正された媒体に画像を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る媒体搬送装置を含む画像記録装置の一実施形態としてのインクジェットプリンタの全体構成を示す概略側面図である。
【図2】図1に描かれたプリンタにおいて、サイズが異なる複数種類の用紙の位置と2つのセンサとの位置関係を示した模式図である。
【図3】図1に描かれたプリンタのブロック図である。
【図4】図1に描かれたプリンタにおけるレジローラ付近の側面図である。
【図5】参考例において、用紙が斜行せずに搬送された場合、及び、用紙が斜行して搬送された場合に、2つのセンサと用紙との位置関係を示した模式図である。
【図6】図1に描かれたプリンタにおいて、用紙が斜行せずに搬送された場合、及び、用紙が斜行して搬送された場合に、2つのセンサと用紙との位置関係を示した模式図である。
【図7】図1に描かれたプリンタにおける給紙開始から印字完了までのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。先ず、図1を参照し、本発明に係る媒体搬送装置を含む画像記録装置の一実施形態としてのインクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
【0012】
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、筐体101aから排出された矩形状の用紙Pが順次積層される凹部である排紙部31が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、給紙部1cから排紙部31に向かう用紙搬送経路が形成されており、図1に示す黒太矢印に沿って用紙Pが搬送される。空間Aでは、用紙Pへの画像形成と、用紙Pの排紙部31への搬送が行われる。空間Bでは、用紙Pの給紙部1cから搬送経路への給紙が行われる。空間Cのインクカートリッジ4からは、空間Aのインクジェットヘッド(記録ヘッド)1に対してインクが供給される。
【0013】
空間Aには、ブラックインクを吐出するインクジェットヘッド1(以下、ヘッド1と称する)、搬送機構8、用紙センサ33、34、35、ヘッド昇降機構(図示せず)、ワイパユニット(図示せず)、及び、制御装置100等が配置されている。
【0014】
ヘッド1は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有する。ヘッド1は、ヘッドホルダ13を介して筐体101aに支持されている。ヘッドホルダ13は、ヘッド1の下面(吐出面1a)とプラテン6との間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド1を保持している。ヘッド1の吐出面1aには、インクを吐出する複数の吐出口が開口している。
【0015】
ヘッド1は、圧力室を含み吐出口を出口とする個別インク流路が複数形成された下流側流路部材であって、圧電素子を含む複数のアクチュエータユニット102(図3参照)が固定されたヘッド本体、ヘッド本体にインクを供給する上流側流路部材であるリザーバユニット、アクチュエータユニット102に駆動信号を供給するドライバICが固定されたフレキシブルプリント配線基板(FPC)、及び、制御基板などから組み立てられた組立体である。ヘッド1に形成された複数の吐出口は、主走査方向に関して等間隔に位置するように吐出面1a内において二次元配列されている。カートリッジ4内のインクは、リザーバユニットを経てヘッド本体に供給される。
【0016】
制御基板で調整された信号は、FPC上のドライバICで駆動信号に変換され、さらにヘッド本体に含まれるアクチュエータユニット102に出力される。アクチュエータユニット102が駆動されると、圧力室内のインクに吐出エネルギーが付与されて、吐出口からインクが吐出されることになる。
【0017】
搬送機構8は、用紙Pを搬送するための搬送経路を規定するものであって、給紙部1cから排紙部31まで用紙Pをガイドする2つのガイド部9a,9bと、プラテン6を有する支持機構5とを含んでいる。本実施形態において、搬送機構8によって搬送される用紙Pの搬送方向は、搬送経路内における用紙の位置によって変化し、例えば吐出面1a下においては水平右向きである。主走査方向は、用紙Pの幅方向及びヘッド1の長手方向と平行な方向である。副走査方向は、用紙Pの長手方向に沿っており且つ主走査方向に直交する方向である。
【0018】
ガイド部9aはプラテン6よりも上流側に配置されている。ガイド部9bはプラテン6よりも下流側に配置されている。搬送方向上流側のガイド部9aは、3つのガイド18aと3つの送りローラ対22〜24とを有している。ガイド部9aは、給紙ユニット1cとプラテン6とを繋いでおり、画像形成用の用紙Pをプラテン6に向けて搬送する。後で詳述するように、3つの送りローラ対22〜24の一つである送りローラ対23の一方(本実施形態では上方)は、レジローラ(制位ローラ)23a(図4参照)であり、その回転可能状態と回転禁止状態とが電磁クラッチ140(図3参照)のオンオフによって切り換えられる。
【0019】
搬送方向下流側のガイド部9bは、3つのガイド18bと4つの送りローラ対25〜28とを有している。ガイド部9bは、プラテン6と排紙部31とを繋いでおり、画像形成後の用紙Pを排紙部31に向けて搬送する。本実施形態において、各送りローラ対22〜28の一方が駆動ローラであり、他方は従動ローラとなっている。
【0020】
支持機構5は、プラテン6を有している。プラテン6は、平板形状を有しており、搬送方向に沿って配置されている。
【0021】
空間Bには、給紙部1cが配置されている。給紙部1cは、給紙トレイ20及び給紙ローラ21を有する。このうち、給紙トレイ20が、筐体101aに対して着脱可能である。給紙トレイ20は、上方に開口する箱であり、複数の用紙Pを収納可能である。給紙ローラ21は、昇降モータ142(図3参照)を含む図示しない昇降機構によってその回転軸が上下に変位可能となっている。そして、図示しない駆動機構によって回転駆動されている給紙ローラ21が昇降機構によって上位置から下位置へと変位して給紙トレイ20内で最も上方にある用紙Pと当接したときに、当該用紙Pが搬送機構8へと送り出される。
【0022】
給紙トレイ20には、主走査方向への長さが異なる複数サイズの用紙を収容可能なように、いわゆるセンターレジを行うスライド式のガイド(図示せず)が取り付けられている。このガイドは用紙の搬送方向に平行な一対の用紙規制壁201(図2参照)を有しており、ユーザがその一方を主走査方向に変位させると、他方は自動的に逆方向に同じ距離だけ変位する。一対の用紙規制壁201を隔てる空間の主走査方向に関する中心位置は、これら用紙規制壁201の位置に拘わらず、ヘッド1の主走査方向に関する中心位置と一致している。つまり、ユーザがこの用紙規制壁201をスライドさせることによって、給紙トレイ20には、用紙の主走査方向に関する中心がいずれのサイズの用紙についても同じ位置となるように用紙を収容することができる。なお、変形例として、ガイドがスライド式ではなく、主走査方向に関する間隔が互いに異なり且つ一対の用紙規制壁の中心がヘッド1の主走査方向に関する中心位置と一致するように用紙規制壁が固定された複数の給紙トレイが設けられていてもよい。
【0023】
空間Cには、ブラックインクを貯留するカートリッジ4が筐体101aに対して着脱可能に配置されている。カートリッジ4は、ヘッド1にチューブ及びポンプ(共に図示せず)を介して接続されている。なお、ポンプは、ヘッド1にインクを強制的に送るとき(すなわち、パージ動作や液体の初期導入が行われるとき)に制御装置100によって駆動される。これ以外は、ヘッド1へのインク供給を妨げない停止状態にある。
【0024】
筐体101a内には、矩形状の用紙を検出するために制御部100に接続された3つのセンサ33、34、35が設けられている。各センサ33〜35は、発光部と受光部とを有する透過型又は反射型の光学センサであり、受光部が発光部からの光を受光できたか否かに基づいて用紙の一辺端(本実施形態では用紙の先端又は後端となる辺)が所定位置を通過したことを検出可能である。センサ33は、送りローラ対22と送りローラ対23との間であって、送りローラ対22のやや下流に配置されている。センサ34は、送りローラ対22と送りローラ対23との間であって、送りローラ対23のやや上流に配置されている。センサ35は、送りローラ対23と送りローラ対24との間であって、どちらの送りローラ対からも等距離となる位置に配置されている。
【0025】
図2に、一対の用紙規制壁201とサイズの異なる3種類の用紙Pとセンサ33、34とを示す。上述したように、給紙トレイ20にセンターレジを行うスライド式のガイドが取り付けられていることによって、用紙Pは、その主走査方向の長さに関係なくその中心がヘッド1の主走査方向に関する中心位置と一致するように搬送経路を搬送される。さらに、このガイドは、一対の用紙規制壁201の間隔が所定長さ以下にならないように構成されている。そのため、プリンタ101においては、主走査方向の長さがこの所定長さである用紙P1が搬送可能な最小サイズとなっている。また、一対の用紙規制壁の間隔を調整することで、プリンタ101においては、用紙P1よりも主走査方向の長さが長い用紙P2、さらには用紙P2よりも主走査方向の長さが長い用紙P3を搬送可能である。なお、一対の用紙規制壁201の間隔は用紙P3の主走査方向長さよりも大きくすることはできない。すなわち、用紙P3がプリンタ101において搬送可能な最大サイズとなっている。プリンタ101は、用紙規制壁201の間隔を調整することで用紙P1からP3までの任意のサイズの用紙を搬送可能である。
【0026】
図2に示すように、センサ33は、搬送方向及び主走査方向を基準軸とする搬送経路に沿った搬送座標系上の第1点(本実施形態では第1点がセンサ33と実質的に同じ位置にあるとする)に用紙Pの先端辺があることを検出する。この第1点は、プリンタ101において搬送可能な最小サイズの用紙P1の左側辺よりもやや内側に位置している。より詳細には、第1点は、想定される最大斜行量が用紙P1に生じたときに用紙P1の主走査方向の一端部となる位置である。また、センサ34は、搬送座標系上の第2点(本実施形態では第2点がセンサ34と実質的に同じ位置にあるとする)に用紙Pの先端辺があることを検出する。この第2点は、プリンタ101において搬送可能な最小サイズの用紙P1の右側辺よりもやや内側に位置している。より詳細には、第2点は、想定される最大斜行量が用紙P1に生じたときに用紙P1の主走査方向の他端部となる位置である。つまり、第2点は、第1点よりも下流であるだけでなく、主走査方向に関する位置が第1点とは相違している。第1点と第2点とは、主走査方向に関する用紙Pの中心位置に対して互いに対称の位置となっている。このように、第1点と第2点が最小サイズの用紙P1の通過範囲内にあるため、センサ33、34は用紙P1及びそれよりも大きなサイズの用紙Pを検知することも可能である。したがって、本実施形態では、後述するように、多くの種類の用紙Pの斜行量を高精度に検出することができるようになっている。
【0027】
センサ35は、ヘッド1からのインク吐出開始タイミングを決定するために用いられる。具体的には、斜行量用紙Pの先端辺がセンサ35に達したタイミングから、センサ35とヘッド1(詳細には最も上流にある吐出口)との距離を送りローラ対23、24の回転速度によって規定される用紙の搬送速度で除算して得られる時間が経過したタイミングがヘッド1からのインク吐出開始タイミングとなる。
【0028】
次に、図3を参照しつつ、制御部100について説明する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御プログラムは、ROMに記憶されている。そして、この制御プログラムがCPUで実行されることにより、図3に示す制御部100を構成する各機能部が構築されている。制御部100は、有線又は無線のインターフェイス装置を介して、外部装置(例えばプリンタ1に接続されたPC(Personal Computer))とのデータ送受信を行う。
【0029】
図3に示すように、制御部100は、プリンタ1全体を制御するものであり、搬送制御部120、印刷データ記憶部130、ヘッド制御部131、斜行量算出部132、及び、ジャム検知部133を有している。制御部100には、ヘッド1のアクチュエータユニット102と、レジローラ23aに連結された電磁クラッチ140と、昇降モータ142と、用紙送りモータ143と、3つのセンサ33〜35とが接続されている。
【0030】
搬送制御部120は、給紙ローラ制御部121と、送りローラ制御部122と、レジローラ制御部123とを有しており、印刷データ記憶部130に記憶された印刷データに含まれる搬送データに基づいて、各制御部121〜123が対応する駆動部(昇降モータ142、用紙送りモータ143、電磁クラッチ140)の駆動を制御する。
【0031】
給紙ローラ制御部121は、昇降モータ142を制御して、給紙ローラ21を所定のタイミングで昇降させる。これによって、給紙ローラ21による用紙Pの給紙タイミングを制御することができる。送りローラ制御部122は、給紙トレイ20から送り出された用紙Pを排紙部31まで搬送するように、送りローラ対22〜28にそれぞれ含まれる駆動ローラの駆動を制御する。レジローラ制御部123は、送りローラ対23の上方ローラであるレジローラ23aに連結された電磁クラッチ140を制御する。
【0032】
図4に示すように、2つのローラ23a、23bからなる送りローラ対23の上方のローラがレジローラ23aとなっている。用紙送りモータ143から駆動力が伝達される駆動ローラであるレジローラ23aには、電磁クラッチ140が連結されている。電磁クラッチ140のオンオフに連動して、レジローラ23aは回転可能状態と回転禁止状態とを選択的に取ることができる。レジローラ23aが回転可能状態であれば、レジローラ23aは用紙送りモータ143によって駆動されるので、レジローラ23aに当接した用紙Pは送りローラ対23に挟まれて下流へと搬送される。一方、レジローラ23aが回転禁止状態であれば、レジローラ23aは用紙送りモータ143によって駆動されず回転が禁止されるので、レジローラ23aに当接した用紙Pは、後方から送りローラ対22に押し込まれることによって、図4に破線で描かれているように次第に撓んでいく。
【0033】
もし斜行していた用紙Pがレジローラ23aに当接した場合(その場合用紙Pの先端辺の一部が最初にレジローラ23aに当接する)、用紙Pの先端辺の全域がレジローラ23aに当接してから(つまり斜行が矯正されてから)用紙Pが撓み始める。用紙Pの先端辺がレジローラ23aに当接したタイミングから用紙Pが撓み始めるタイミングまでの時間は、斜行量が大きくなるに連れて大きくなる。
【0034】
そこで、本実施形態では、レジローラ制御部123は、斜行量算出部132が算出した用紙Pの斜行量が大きいほど回転禁止時間が長くなるように電磁クラッチ140を制御する。これによって、回転禁止状態としておく時間を、想定される最大斜行量に対応した過度に長い一定時間としておく必要をなくしている。その結果、給紙開始から印刷終了までに要する平均時間を減少させることができて、単位時間当たりの印刷可能枚数を増加させることができる。レジローラ制御部123は、用紙Pの斜行量と回転禁止時間とを対応させたテーブル又は等式を記憶しており、これらテーブル又は等式を利用して電磁クラッチ140を制御する。レジローラ23aが回転可能状態となると、斜行が矯正された用紙Pの下流への搬送が再開される。
【0035】
このように、本実施形態では、レジローラ23a、レジローラ制御部123及び電磁クラッチ140を用いた簡易な構成で用紙Pの斜行を矯正することができる。さらに、斜行が矯正された用紙Pに画像を記録することができる。なお、本実施形態では、レジローラ制御部123及び電磁クラッチ140がレジ制御手段に相当する。
【0036】
印刷データ記憶部130は、パーソナルコンピュータ(PC)などの外部装置から供給された、用紙P上に記録されるべき画像に係る印刷データ(アクチュエータユニット102の駆動データ)を記憶する。ヘッド制御部131は、印刷データ記憶部130に記憶された印刷データに基づいて、用紙P上に所望の画像が記録されるように、搬送制御部120による用紙Pの搬送と連動してヘッド1のアクチュエータユニット102を制御する。
【0037】
斜行量算出部132は、センサ33が用紙Pの先端辺を検出したタイミングとセンサ34が用紙Pの先端辺を検出したタイミングとを用いて用紙Pの斜行量を算出する。この点について、図5及び図6を参照して説明する。
【0038】
まず、参考例として、搬送方向に関する位置が異なる2つのセンサ33、34’(図2参照)の主走査方向に関する位置が同じである場合について、図5(a)、図5(b)を参照して説明する。
【0039】
図5(a)の上図は、時刻taにおいて、斜行していない、つまり平行搬送されている用紙Pの先端辺が第1点にあることがセンサ33によって検知されたときの様子を示している。図5(a)の下図は、時刻tbにおいて、平行搬送されている用紙Pの先端辺がセンサ34’による検知点である第3点にあることがセンサ34’によって検知されたときの様子を示している。用紙Pの搬送速度は送りローラの回転速度から既知であり、ここではそれをVと表す。また、搬送方向に沿った第1点から第3点までの距離も既知であり、ここではそれをSと表す。したがって、tb−ta=S/Vが成り立っている。
【0040】
図5(b)の上図は、時刻taにおいて、角度θだけ時計回りに斜行した用紙Pの先端辺が第1点にあることがセンサ33によって検知されたときの様子を示している。図5(b)の下図は、時刻tbにおいて、角度θだけ斜行した用紙Pの先端辺がセンサ34’による検知点である第3点にあることがセンサ34’によって検知されたときの様子を示している。このときも、tb−ta=S/Vが成り立っている。
【0041】
図5(a)と図5(b)との比較から分かるように、搬送方向に関する位置が異なる2つのセンサ33、34’の主走査方向に関する位置が同じである場合、用紙Pが斜行していてもその斜行量を検知することができない。
【0042】
次に、2つのセンサ33、34の搬送方向及び主走査方向のいずれに関する位置も異なる本実施形態における斜行量の検知について、図6(a)、図6(b)を参照して説明する。
【0043】
図6(a)の上図は、時刻taにおいて、斜行していない、つまり平行搬送されている用紙Pの先端辺が第1点にあることがセンサ33によって検知されたときの様子を示している。図6(a)の下図は、時刻tbにおいて、平行搬送されている用紙Pの先端辺が第2点にあることがセンサ34によって検知されたときの様子を示している。このときも、用紙Pの搬送速度V、第1点から第2点までの距離Sとして、tb−ta=S/Vが成り立っている。
【0044】
図6(b)の上図は、時刻taにおいて、角度θだけ時計回りに斜行した用紙Pの先端辺が第1点にあることがセンサ33によって検知されたときの様子を示している。図6(b)の下図は、角度θだけ時計回りに斜行した用紙Pの先端辺が第2点にあることがセンサ34によって検知されたときの様子を示している。このときのセンサ34による用紙Pの先端辺の検知時刻tcは時刻tbとは一致せず、第1点と第2点の主走査方向への離隔距離をLとしたとき、以下の式(1)ように表される。
tc={(S±Ltanθ)/V}+ta (1)
ここで、±の符号は斜行が時計回りのとき((tc−ta)<S/Vのとき)にマイナス(−)となり、斜行が反時計回りのとき((tc−ta)>S/Vのとき)にプラス(+)となる。したがって、センサ33、34が用紙Pの先端辺を検知した時刻ta、tcから、斜行量(斜行角度)θを求めることができる。具体的には、式(1)を変形して、
θ=tan-1{±[(tc−ta)V−S]/L} (2)
と表すことができる。
【0045】
本実施形態では、斜行量算出部132が、式(2)に基づいて、2つのセンサ33、34の検知時間差及び搬送速度Vが大きいほど大きな斜行量を算出するので、用紙Pの斜行量を精度よく算出することができる。
【0046】
ジャム検知部133は、給紙開始タイミングから第1所定時間T1内にセンサ33によって用紙Pの先端辺が検出されなかったとき、及び、センサ33によって用紙Pの先端辺が検出されたタイミングから第2所定時間T2内にセンサ34によって用紙Pの先端辺が検出されなかったときに、当該用紙Pにジャムが発生したと判定する。なお、ここでいう第1所定時間T1は、給紙トレイ20に収容された用紙Pの先端から第1点までの距離を用紙Pの搬送速度Vで除算して得られる時間に誤差分を加算した時間である。第2所定時間T2は、第1点からから第2点までの距離Sを用紙Pの搬送速度Vで除算して得られる時間に誤差分を加算した時間である。ジャム検知部133がジャム発生を検知したとき、制御部100は、図示しないブザーを駆動して音でユーザに通知してもよいし、図示しない表示装置にその旨を表示させるようにしてもよい。
【0047】
次に、図7を参照して、プリンタ101における給紙開始から印字完了までの動作を説明する。以下の説明では、送りローラ対22〜28は常に駆動されているものとする。
【0048】
まず、昇降モータ142を駆動して時刻t1から時刻t2まで給紙ローラ21を下降させる。これによって、給紙トレイ20内で最も上方にある用紙Pが搬送機構8へと送り出される。なお、多くの場合、用紙Pの斜行は給紙ローラ21との接触時に生じ、給紙ローラ21よりも下流で斜行が生じることはほとんどない。
【0049】
そして、時刻t3において、用紙Pの先端辺が第1点に達したことをセンサ33が検知する。ジャム検知部133は、時刻t1から第1所定時間T1経過してもセンサ33が用紙Pを検知できないときに、ジャム発生を検知する。その後、時刻t4において、用紙Pの先端辺が第2点に達したことをセンサ34が検知する。ジャム検知部133は、時刻t3から第2所定時間T2経過してもセンサ34が用紙Pを検知できないときに、ジャム発生を検知する。
【0050】
時刻t4に用紙Pの先端辺が第2点に達したことをセンサ34が検知すると、斜行量算出部132が式(2)を用いて用紙Pの斜行量を算出する。引き続き、レジローラ制御部123が、用紙Pの斜行量と回転禁止時間とを対応させたテーブル又は等式を用いて、レジローラ23aの回転禁止時間を算出する。
【0051】
このとき、もし用紙Pが斜行していなければ、用紙Pの先端辺がレジローラ23aに達した時刻t5(又はそれよりも前)に電磁クラッチ140をオン(回転可能状態)とする。これによって、用紙Pはレジローラ23aで一時停止することなく搬送されていく。一方、もし用紙Pが斜行していれば、用紙Pの先端辺がレジローラ23aに達した時刻t5に電磁クラッチ140をオンとすることはせず、時刻t6になってから電磁クラッチ140をオン(回転可能状態)とする。時刻t6は斜行量が大きいほど遅いタイミングとなる。つまり、回転禁止状態としておく時間である斜行矯正時間(t6−t5)は斜行量に応じて可変となっている。
【0052】
なお、例えば図5で説明した参考例のように2つのセンサ33、34’を用いて斜行量を算出できない場合には、斜行矯正時間を、想定される最大斜行量に対応した非常に長い一定時間に固定しておく必要があり(電磁クラッチ140をオンとする時刻t6’)、単位時間当たりの印刷可能枚数が少なくなる。これに対して、本実施形態では、斜行量に応じて斜行矯正時間を可変(最大値が上記固定した一定時間と同じ)とすることができるので、給紙開始から印刷終了までに要する平均時間を減少させることができて、単位時間当たりの印刷可能枚数を増加させることができる。
【0053】
続いて、時刻t7において用紙Pの先端辺がセンサ35に検知される。電磁クラッチ140をオンとした時刻t6から時刻t7までの時間は、レジローラ23aとセンサ35との間の距離を搬送速度Vで除算して得られる時間である。本実施形態では、電磁クラッチ140をオンとする平均時刻を図5で説明した参考例の場合よりも早くすることができるために、用紙Pの先端辺がセンサ35に検知される平均時刻t7も図5で説明した参考例の場合(t7’)よりも早くなる。
【0054】
さらに、時刻t8においてヘッド1のアクチュエータユニット102の駆動が開始される。用紙Pの先端辺がセンサ35に検知された時刻t7から時刻t8までの時間は、上述したように、センサ35とヘッド1(詳細には最も上流にある吐出口)との距離を搬送速度Vで除算して得られる時間である。本実施形態では、電磁クラッチ140をオンとする平均時刻を図5で説明した参考例の場合よりも早くすることができるために、アクチュエータユニット102の駆動が開始される平均時刻t8も図5で説明した参考例の場合(t8’)よりも早くなる。すなわち、斜行矯正時間を可変としていることによって、給紙開始から印刷終了までに要する平均時間を減少させることができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によると、2つのセンサ33、34で斜行角度検出とジャム検知とを行うことができる。しかも、センサ33及びセンサ34とも、用紙Pの一辺縁の一点を検出できればいいだけなので、例えば受光素子は1つだけでよく簡易な構成とすることができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、センターレジを行うスライド式のガイドによって用紙がそのサイズに拘わらず中心が所定位置となるようにガイドされ且つ第1点及び第2点が主走査方向に関して前記所定位置に対して互いに対称の位置にあるので、多くの種類の用紙Pの斜行量を高精度に検出可能である。
【0057】
また、本実施形態では、第1点と第2点が最小サイズの用紙P1の通過範囲内にあるため、センサ33、34は用紙P1に加えてそれよりも大きなサイズの用紙Pを検知することも可能である。したがって、本実施形態によると、多くの種類の用紙Pの斜行量を高精度に検出可能である。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更を上述の実施形態に施すことが可能である。例えば、上述の各実施形態では送りローラ対22,26〜28、レジローラ対23等による搬送機構8を例示したが、搬送ベルト及びベルトローラ等による搬送機構を採用してもよい。
【0059】
上述の実施形態では昇降モータ142とセンサ33とを用いたジャム検知を行っているが、ジャム検知は2つのセンサ33、34を用いたものだけでもよい。また、斜行矯正手段としてはレジローラ23a以外の公知のものを用いることも可能である。
【0060】
2つのセンサ33、34が用紙Pを検知する第1点及び第2点は、主走査方向に関するヘッド1の中心位置に対して対称でない位置にあってもよい。また、第1点及び第2点の位置は、少なくとも最大サイズ媒体を検知できるのであれば、最小サイズ媒体を検知できないように位置に配置されていてもよい。
【0061】
上述した実施形態ではセンサが用紙Pの先端辺を検知していたが、用紙の後端辺を検知するようにしてもよい。
【0062】
なお、センサ33とセンサ34の搬送方向に関する間隔は、用紙の搬送方向の最大長さより大きく設定されていることが望ましい。これは、前述のようにセンサ33とセンサ34が、センサ33とセンサ34間に発生するジャムを検知する技術的役割を有しており、この構成を利用して用紙Pの斜行を検知できるので、新たなセンサを設けなくても用紙Pの斜行を検知することが可能となるからである。
【0063】
本発明は、モノクロプリンタのみならず、カラープリンタにも適用可能である。さらに本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。ヘッドは、インク以外の任意の液体を吐出してよい。また、記録装置に含まれるヘッドの数は1以上であればよい。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な任意の媒体であってよい。本発明は、画像記録装置に限らず、媒体搬送をする装置であればどのような装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
101 インクジェットプリンタ(画像記録装置)
1 ヘッド(記録ヘッド)
6 プラテン
8 搬送機構
21 給紙ローラ
23 レジローラ対
23a レジローラ
33 センサ(第1センサ)
34 センサ(第2センサ)
35 センサ
100 制御部
102 アクチュエータユニット
120 搬送制御部
121 給紙ローラ制御部
122 送りローラ制御部
123 レジローラ制御部
125 プラテン制御部
130 印刷データ記憶部
131 ヘッド制御部
132 斜行量算出部
133 ジャム検知部
140 電磁クラッチ
141 プラテンモータ
142 昇降モータ
143 用紙送りモータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の媒体を搬送するための搬送経路を規定する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送される媒体の一辺縁が、媒体の搬送方向及びこれと直交する直交方向の2方向を基準軸とする前記搬送経路に沿った座標系上の第1点にあることを検知する第1センサと、
前記搬送機構によって搬送される媒体の前記一辺縁が、前記搬送方向に関して前記第1点よりも下流であって前記直交方向に関して前記第1点とは異なる、前記座標系上の第2点にあることを検出する第2センサと、
前記第1センサが媒体の前記一辺縁を検知した時刻と前記第2センサが媒体の前記一辺縁を検知した時刻との時間差に基づいて、媒体の斜行量を算出する斜行量算出手段と、
前記第1センサが媒体の前記一辺縁を検知した時刻から所定時間内に前記第2センサが媒体の前記一辺縁を検知できたか否かに基づいて、媒体のジャム発生を検知するジャム検知手段とを備えていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記斜行量算出手段は、前記時間差及び前記搬送経路における媒体の搬送速度が大きいほど媒体の斜行量として大きな値を算出することを特徴とする請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記搬送方向に関して前記第2点よりも下流に配置され、前記斜行量算出手段が算出した媒体の斜行量が小さくなるように当該媒体の斜行を矯正する斜行矯正手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記斜行矯正手段が、
前記第2点を通過した媒体の先端が突き当てられる、回転可能状態と回転禁止状態とを選択的に取ることができるレジローラと、
前記斜行量算出手段が算出した媒体の斜行量が大きいほど回転禁止時間が長くなるように前記レジローラを制御するレジ制御手段とを含んでいることを特徴とする請求項3に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記搬送機構は、前記直交方向に関するサイズの異なる複数種類の媒体を、各媒体の前記直交方向に関する中心が所定位置となるようにガイドするガイド装置を含んでおり、
前記第1点及び前記第2点が、前記直交方向に関して前記所定位置を中心とした対称の位置にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記直交方向に関する前記第1点と前記第2点との間の間隔は、前記直交方向に関するサイズの異なる複数種類の媒体のうち最もサイズの小さい媒体の前記直交方向に関するサイズよりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
請求項4に記載の媒体搬送装置と、
前記搬送方向に関して前記レジローラよりも下流に配置された、媒体に画像を記録する記録ヘッドとを備えていることを特徴とする画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75739(P2013−75739A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216225(P2011−216225)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】