説明

安全プラグ装置

【課題】 遠隔操作によって、回路の接続/解除を確実に行うことができる安全プラグ装置を提供する。
【解決手段】 回路の端子を有するソケットと、前記端子の接続と解除とを前記ソケットに対して回路接続位置と回路解除位置とを移動することにより行うプラグと、前記プラグの移動を遠隔操作する遠隔操作手段とを備えた安全プラグ装置であって、前記ソケットは、軸を中心とする回動により回路接続位置と回路解除位置との間を移動するように構成され、前記遠隔操作手段は、前記プラグを軸周り方向に回動させるトルクケーブルを備えた安全プラグ装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作で回路の接続/解除を確実に行うことができる安全プラグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド車や電気自動車が普及し始めている。前記ハイブリッド車、電気自動車には、走行用モータに電力を供給する高電圧バッテリーが搭載されている。前記高電圧バッテリーは、バッテリーセルと称する小型のバッテリーを直列及び(又は)並列に接続したバッテリー回路によって直流高電圧を発生する電源を構成している。
【0003】
この種の高電圧バッテリーを搭載した車両では、点検/整備作業を行うとき作業者の感電/電撃を防ぐため、また、車両故障や事故等の緊急時の救助作業を安全に行うため、例えば、特開2007−66855号公報に示すような、バッテリー回路を死線状態とする安全プラグ装置を備えている。
【0004】
特開2007−66855号公報の安全プラグ装置は、電源回路の中途に介挿される一対の接触子を有するソケットと、各接触子にそれぞれ対応した各端子を有し、前記ソケットへの装着時に各端子に電気的に接触する一方、前記ソケットからの離脱時に各端子が各接触子から電気的に乖離するプラグとを備えている。そして、前記プラグを前記ソケットに抜き差しするための外部連結用のリングが備えられている。
【0005】
そして、前記プラグを前記ソケットから乖離するとき、前記各端子と前記各接触子との間で発生する火花(放電アーク)が外部に漏れないようにするための封止体を備えており、前記安全プラグ装置の周囲に可燃性ガスが充満している状態でも、前記バッテリー回路を安全に死線状態とすることが可能である。
【0006】
一方、ハイブリッド自動車や電気自動車に利用される高電圧バッテリーでは、事故等による緊急事態が発生したときに、バッテリー回路を安全且つ速やかに死線状態にできることが求められる。そこで、特開2007−66855号公報では、ロッドやプルケーブルを用いて前記安全プラグ装置を遠隔操作するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−66855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ロッドを用いて遠隔操作を行う安全プラグ装置の場合、その操作を直線的にするか、リンク等の複雑な構成を用いる必要があり、ロッド或いはリンク等が動作のためのスペースが必要で、装置自体が大きくなり、設置スペースを確保しなくてはならない。
【0009】
また、インナーケーブルにプルケーブルを備えたコントロールケーブルを用いて遠隔操作する安全プラグの場合、前記コントロールケーブルの配索の自由度が高く設置空間の制限が少ない。しかしながら、前記プルケーブルに伸びや座屈が発生すると、前記安全プラグ装置の遠隔操作が十分にできなくなることがある。そのため、前記安全プラグ装置が確実に作動したかどうか(回路の接続/解除ができたかどうか)確認するための確認手段が必要となる場合がある。
【0010】
そこで本発明は、遠隔操作によって、回路の接続/解除を確実に行うことができる安全プラグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、回路の端子を有するソケットと、前記端子の接続と解除とを前記ソケットに対して回路接続位置と回路解除位置とを移動することにより行うプラグと、前記プラグの移動を遠隔操作する遠隔操作手段とを備えた安全プラグ装置であって、前記プラグは、軸を中心とする回動により回路接続位置と回路解除位置との間を移動するように構成され、前記遠隔操作手段は、前記プラグを軸周り方向に回動させるトルクケーブルを備えている。
【発明の効果】
【0012】
(1)本発明の安全プラグ装置を上記構成の安全プラグ装置とすることで、トルクケーブルを用いていることから、座屈などのケーブルの可撓性に起因したソケットの脱着の阻害を生じることがなく、確実に電源の接続/解除を行うことができる。
【0013】
(2)本発明の安全プラグ装置を、前記プラグが前記トルクケーブルの端部に接続するケーブル接続部を有し、前記遠隔操作手段の先端と前記トルクケーブル接続部との間に、前記プラグと前記遠隔操作手段とが近接する方向に相対移動することを可能とする間隔が形成されている構成とすることで、前記遠隔操作手段の軸周り方向の回転を、前記トルクケーブルの撚りの目開き方向とした場合の目開きによる前記トルクケーブルの伸びを吸収することができる。
【0014】
(3)本発明の安全プラグ装置を、前記プラグが前記端子と接続する接続子を有し、前記プラグが前記ソケットに螺子嵌合されることにより、前記端子と前記接続子との間に接続されるように構成することで、回路の接続/解除、特に回路切断を確実に行うことができる。また、端子付近を密封構造とすることもできるので、前記端子と前記接続子との脱離による放電アークが外部に漏れるのを抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる安全プラグ装置を備えたバッテリーユニットの概略図である。
【図2】図1に示すバッテリーユニットの安全プラグ装置が取り付けられている部分を拡大した平面図である。
【図3】本発明にかかる安全プラグ装置におけるプラグが回路接続位置の場合の縦断面を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下参照する図面において、便宜上、部材符号を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。図1は本発明にかかる安全プラグ装置を備えたバッテリーユニットの概略図であり、図2は図1に示すバッテリーユニットの安全プラグ装置が取り付けられている部分を拡大した平面図であり、図3は本発明にかかる安全プラグ装置を切断した切断面を示す斜視図である。
【0017】
本発明にかかる安全プラグ装置Aは、端子Pa、Pbを有するソケット1と、プラグ2と、遠隔操作部3(遠隔操作手段)とを備えており、遠隔操作部3はプラグ2をその軸周りに回転させるトルクケーブル31を備えている。そして、遠隔操作部3がプラグ2をその軸を中心として回転させ、前記プラグ2が前記ソケット1に対して、一対の端子Pa、Pbが接続された回路接続位置と、一対の端子Pa、Pbの接続が解除された回路解除位置との間を移動する。これにより、安全プラグ装置Aは、端子Pa、Pbを接続/解除する。
【0018】
バッテリーユニットBtは、ハイブリッド自動車、電気自動車等の駆動に用いられる駆動モータ(不図示)に電力を供給するための蓄電池である。バッテリーユニットBtは、高電圧(例えば、200V以上)の直流電源である。以下に、バッテリーユニットBtについて図1を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、バッテリーユニットBtは、直方体形状のケースCsの内部に複数個のバッテリーモジュールMbが収納された構成を有している。また、ケースCsの上面に正極(プラス極)ターミナルTcと、負極(マイナス極)ターミナルTaとを備えている。正極ターミナルTcと負極ターミナルは短絡を防止するため、離れた位置に配置されていることが多い。また、ケースCsは内部に水や塵埃等の異物が混入するのを抑制することができる構造となっている。バッテリーモジュールMbは単体でも蓄電池(いわゆる、バッテリー)として構成されるものであり、各バッテリーモジュールMbは正極端子Paと負極端子Pbとを備えている。
【0020】
バッテリーユニットBtは複数台のバッテリーモジュールMbを直列に接続し、バッテリー回路を構成している。バッテリーユニットBtは、例えば、単体で7.2VのバッテリーモジュールMbを40個直列に接続し、288Vの直流電圧を発生する電源を構成している。なお、図1に示すバッテリーユニットBtでは、直方体形状のケースCsに直方体形状のバッテリーモジュールMbを並べて配置しているが、これに限定されるものではない。
【0021】
バッテリーユニットBtについて、詳しく説明する。図2では、説明を容易とするために、隣り合わせに配置された2個のバッテリーモジュールを、第1バッテリーモジュールMb1、第2バッテリーモジュールMb2としている。さらに、第1バッテリーモジュールMb1の負極端子をPb1、第2バッテリーモジュールMb2の正極端子をPa2として表記している。図2に示すバッテリーユニットBtでは、第1バッテリーモジュールMb1の負極端子Pb1と第2バッテリーモジュールMb2の正極端子Pa2の接続/接続解除を安全プラグ装置Aで行っている。
【0022】
図2に示すように、バッテリーユニットBtでは、ケースCsの内部で、第1バッテリーモジュールMb1の負極端子Pb1と、第2バッテリーモジュールMb2の正極端子Pa2とが近接しており、第1バッテリーモジュールMb1の負極端子Pb1と第2バッテリーモジュールMb2の正極端子Pa2に安全プラグ装置Aが取り付けられている。安全プラグ装置Aが操作されることで、第1バッテリーモジュールMb1の負極端子Pb1と第2バッテリーモジュールMb2の正極端子Pa2とが接続されバッテリー回路が活線状態となる、或いは、接続が解除されバッテリー回路が死線状態となる。
【0023】
本発明にかかる安全プラグ装置Aの詳細について説明する。図3に示すように、安全プラグ装置Aにおいて、プラグ2は、ソケット1の上部よりソケット1の内部に軸周りに回転可能に挿入されている。また、遠隔操作部3は、端部がプラグ2の軸に沿って自由に摺動できるようにプラグ2に支持されている。
【0024】
図3に示すように、ソケット1は絶縁性を有する樹脂の一体成型体である。なお、これに限定されるものではなく、絶縁性を有する部材を広く採用することができる。ソケット1は、円筒部10と、底部11とを備えている。底部11は円筒部10の軸方向の下端を閉じるように円筒部10と一体に形成されている。円筒部10の内周面には、雌ねじ101が形成されている。底部11は円板形状に形成されており、中心を挟んで対向する位置に一対の貫通孔111、112が形成されている。図3に示しているように、貫通孔111を負極端子Pbが、貫通孔112を正極端子Paがそれぞれ貫通している。
【0025】
図3に示すようにプラグ2は、円板部20と、係合部21と、支持部22と、支柱部23と、接続子24とを備えている。係合部21は円板部20に突設された円筒状の部材である。係合部21には、ソケット1の円筒部10に形成されている雌ねじ101と螺合する、雄ねじ211が形成されている。係合部21の雄ねじ211が円筒部10の雌ねじ101とが螺合することで、ソケット1の円筒部10及び底部11と、円板部20及び係合部21とで密閉空間が形成される。また、係合部21が回転することで、雄ねじ211が雌ねじ101に沿って摺動する。プラグ2からソケット1を見た状態で係合部21を時計回りに回転することで、ソケット1とプラグ2は接近し、逆方向に回転することでプラグ2がソケット1から離間する。なお、以下の説明において、プラグ2を回転させてソケット1に接近させることを、ねじ込む或いはねじ込みと表現する場合がある。
【0026】
支持部22は円板部20の係合部21が突設された面と反対側の面から突設されている。支持部22は、円筒形状を有しているとともに、内周面に軸方向に伸びる凹溝221が形成されている。図3に示しているように、凹溝221は周方向に一定の間隔をあけて複数個(例えば、6個)形成されている。支持部22の内部には、遠隔操作部3の端部に備えられた後述するケーブルエンド32が、支持部22の中心軸に沿って摺動自在に配置される。
【0027】
支柱部23は係合部21の中央に形成された円柱状の部材である。支柱部23はプラグ2がソケット1の内部に装着されたとき、支柱部23の先端がソケット1の底部11に接触し、プラグ2の移動を規制する。これにより、ねじ山に大きな力がかかるのを抑制している。また、支柱部23は、正極端子Paと負極端子Pbとの間に配置されるので、ソケット1とプラグ2との内部に異物が進入した場合でも、異物によって正極端子Paと負極端子Pbが接続状態になるのを抑制する効果も奏している。
【0028】
円板部20、係合部21、支持部22及び支柱部23は、絶縁性を有する樹脂の一体成型体である。なお、これに限定されるものではなく、絶縁性を有する部材を広く採用することができる。
【0029】
接続子24は、導電性を有する円板状の部材である。接続子24は円板部20と近接した位置で、円板部20と平行に配置されており、中心部分を支柱部23に支持されている。接続子24は、プラグ2をソケット1の内部にねじ込んだとき正極端子Pa及び負極端子Pbと同時に接触する。接続子24が導電性を有していることから、接続子24が同時に接触した、正極端子Paと負極端子Pbとが電気的に接続される。
【0030】
また、支持部22には、中心軸と交わり、中心軸と直交するスプリングピン222が配置されている。スプリングピン222は、ケーブルエンド32がプラグ2の支持部22から抜けるのを抑制している。
【0031】
遠隔操作部3は、トルクケーブル31と、ケーブルエンド32とを備えている。トルクケーブル31及び(又は)ケーブルエンド32は、特に材料が限定されるものではなく金属製を用いることができるが、絶縁性材料で形成されていることが好ましい。図3において、トルクケーブル31は実際に回転トルクが伝達されるインナーケーブルのみが示されているが、円筒状に形成され、内部にインナーケーブルを配置することで、インナーケーブルを保護するアウターケーブル(不図示)も備えた構成となっている。なお、以下の説明において、特段の説明が付されない場合、トルクケーブル31と表すときはトルクを伝達するためのインナーケーブルを示すものとする。
【0032】
トルクケーブル31は、一方の端部に入力された回転トルクを、他方の端部に伝達するケーブルである。トルクケーブル31は金属細線を撚って形成した撚り線であり、離れた場所に回転トルクを伝達する構成であることから、トルクケーブルとして、ねじれが少ないものが用いられることが好ましい。
【0033】
トルクケーブル31の一端にはケーブルエンド32がインナーケーブル31に対して回転しないように固定されている。また、トルクケーブル31の他端には、操作者(自動車の場合、点検整備作業者、救助作業者などの有資格作業者等)によって回転操作される操作部(不図示)がケーブルエンド32と同様にインナーケーブル31に対して回転しないように固定されている。なお、操作部と安全プラグ装置Aとの距離はトルクケーブル31の長さによって決定されるものである。
【0034】
ケーブルエンド32は、ケーブル固定部321と、トルク伝達部322とを備えている。ケーブル固定部321は円筒状に形成され、トルクケーブル31が挿入固定される。なお、ケーブル固定部321はトルクケーブル31の一端が挿入されたのち、外部から圧力がかけられて保持する、いわゆる、かしめて固定されていてもよく、溶接、接着等のように他の部材が介入することで固定されるものであってもよい。さらに、これらの固定方法に限定されるものではなく、トルクケーブル31とケーブルエンド32とが相対的に回転しない固定方法を広く採用することができる。
【0035】
トルク伝達部322は円柱状に形成され、ケーブル固定部321に連接されている。なお、ケーブル固定部321とトルク伝達部322とは、中心軸が一致するように形成されている。トルク伝達部322には、外周面に径方向外側に突出し、軸に沿って形成された凸条(スプライン)323が形成されている。
【0036】
スプライン323は周方向に一定の間隔で複数個(例えば、6個)備えられている。トルク伝達部322はプラグ2の支持部22に支持される部材であり、スプライン323が凹溝221に係合する。これにより、トルク伝達部322、すなわち、ケーブルエンド32はプラグ2の軸方向に摺動自在であるとともに、軸回り方向には、スプライン323と凹溝221との係合によって力(回転トルク)が伝達される。
【0037】
また、図3に示しているように、ケーブルエンド32には、支持部22に配置されたスプリングピン222が貫通するとともに、遊嵌する軸方向に長く形成された長孔324が形成されている。この長孔324をスプリングピン222が貫通していることで、ケーブルエンド32の支持部22の軸方向の摺動の邪魔をせず、ケーブルエンド32が支持部22から抜けるのを抑制している。さらに、ケーブルエンド32を支持部22の内部に配置したとき、支持部22と支持部22の底面、すなわち、円板部20の上面とで構成され、トルクケーブルとの接続がなされる部位であるトルクケーブル接続部と、ケーブルエンド32の端面との間には間隔として隙間Opが形成されている。
【0038】
安全プラグ装置の動作について図面を参照して説明する。図3に示す安全プラグ装置Aは、ソケット1の円筒部10にプラグ2の係合部21が嵌入されており、支柱部23の先端が底部11と接触している。このとき、正極端子Paと負極端子Pbの両方に、接続子24が接触しており、正極端子Paと負極端子Pbとが接続された状態、すなわち、バッテリーモジュールMb(Mb1、Mb2)が直列に接続されている状態である。この状態では、ソケット1の雌ねじ101とプラグ2の雄ねじ211とが螺子嵌合しているので、たとえば、プラグ2にその軸に沿ってソケット1から離間する方向に力が作用しても、プラグ2の係合部21がソケット1の円筒部10から外部に突出しない。これにより、正極端子Paと負極端子Pbの接続が不意に解除されるのを抑制できるようになっている。
【0039】
この状態で、プラグ2を反時計回りに回転操作することで、正極端子Paと負極端子Pbとの接続を解除することができる。安全プラグ装置Aによる、正極端子Paと負極端子Pbとの接続の解除について詳しく説明する。
【0040】
操作部(不図示)が操作者(自動車の場合、点検整備作業者、救助作業者などの有資格作業者等)によって反時計回りに回転されると、操作部に入力された回転トルクがトルクケーブル31を介してケーブルエンド32に伝達される。ケーブルエンド32に伝達された回転トルクはスプライン323と凹溝221との係合により、ケーブルエンド32からプラグ2に伝達される。これにより、プラグ2が反時計回りに回転する。
【0041】
上述したように、ソケット1の雌ねじ101とプラグ2の雄ねじ211とが螺合しているので、プラグ2が反時計回りに回転することで、係合部21がトルクケーブル31の方向へと前記螺合が解除される方向へ移動して、ソケット1の円筒部10より外部方向へ移動する。プラグ2が移動することで、端子と接続子とが接触して回路が接続される位置である回路接続位置から回路の接続が解除される位置である回路解除位置へとプラグが移動して、正極端子Pa及び負極端子Pbと接続子24とが離間し、正極端子Paと負極端子Pbとの接続が解除される。これにより、隣り合うバッテリーモジュールMb(図2において、Mb1とMb2)の接続が解除され、バッテリー回路には、電流が流れない状態(不通電状態、換言すると死線状態)になる。
【0042】
本発明の安全プラグ装置は、トルクケーブル31を回転させてこれ以上回らないところまで回転させることで正極端子Paと負極端子Pbとを接続することもできる。また、本発明の安全プラグ装置は、例えば、プラグ2のソケット側端部に突起を設け、該突起が円筒部10のトルクケーブル側端部に設けられた係止部と係合するようにするなど、プラグ2がソケット1から完全に脱離することを防止するための機構を設けて、ソケット1とプラグ2との螺合を解除する方向へトルクケーブル31を前記係合により回転が停止するまで回転させて、正極端子Paと負極端子Pbとの接続解除をしても良い。これにより、プラグ2を確認(主に視認)しなくても、正極端子Paと負極端子Pbとの接続/接続解除を確実に行うことが可能である。
【0043】
また、ケーブルエンド32の先端である端面とプラグ2の円板部20との間に隙間Opが形成されているので、トルクケーブル31が撚りが緩む方向にも回転し、トルクケーブル31の撚りが緩むことでトルクケーブル31に伸びが生じても、隙間Opにより伸びを吸収することができる。このことから、トルクケーブル31に軸方向の力が作用しにくく、トルクケーブル31に無理な応力が作用したり、座屈が発生したりするのを抑制することができ、操作不良の発生を抑止することができる。
【0044】
さらに、安全プラグ装置Aは、遠隔部に配置された操作部によって操作されるので、操作者(運転者、点検整備作業者、救出作業者等)はバッテリーユニットBtに接近することなく、バッテリーユニットBtのバッテリー回路の接続/接続解除を行うことができる。そして、遠隔操作部3のトルクケーブル31及び(又は)ケーブルエンド32が絶縁性を有する材料で形成されているので、プラグ2に漏電が発生していたとしても、点検整備或いは救助作業を行う作業者が感電したり、電撃を受けたりするのを抑制することができる。
【0045】
また、安全プラグ装置Aは、正極端子Pa及び負極端子Pbと接続子24とが分離され、正極端子Pa又は負極端子Pbと接続子24とが接続されるために、正極端子Pa及び(又は)負極端子Pbと接続子24との間で放電アークが発生する場合がある。安全プラグ装置Aでは、正極端子Pa、負極端子Pb及び接続子24とがソケット1の円筒部10及び底部11と、プラグ2の係合部21と円板部20とで囲まれた空間に配置されているので、放電アークが安全プラグ装置Aの外部に漏れるのを抑止することができる。
【0046】
そして、円筒部10の雌ねじ101と係合部21の雄ねじ211との螺合で内部空間が密閉されているので、外部が可燃性ガスで充満されている状態でも安全プラグ装置Aに可燃性ガスが流入するのを抑止することができる。このことから、故障や事故等でガソリン等の燃料が揮発した可燃性ガスが充満している場合でも安全に且つ速やかにバッテリーユニットBtのバッテリー回路を死線化でき、揮発した燃料等の可燃性ガスに、駆動モータに電力を供給する回路で発生する放電アークが引火するのを抑止することができる。
【0047】
安全プラグ装置Aに用いられているトルクケーブル31は撚り線であることから、長期間の使用(トルクの伝達回数の増加)で撚りがゆるくなり、伸びてしまうことがある。安全プラグ装置Aでは、ケーブルエンド32の端面と円板部20との間に隙間Opがあり、ケーブルエンド32と円板部20とが近接する方向に相対移動することができるのでケーブルの伸びを吸収することができるために、トルクケーブル31に伸びが発生したときには、ケーブルエンド32の端面と円板部20とが接近することで、トルクケーブル31が弛んだり、座屈を起こしたりするのを抑止できる。これにより、安全プラグ装置Aはトルクケーブル31が伸びることによる動作不良が発生しにくく、長期間、正極端子と負極端子との接続/接続解除を確実に行うことができる。
【0048】
また、上述の実施形態ではねじの螺合によってソケットとプラグの距離を調整するようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、ソケット又はプラグの一方にカム溝を、他方にカム溝の内部に配置されるボスとを備えておき、ソケットとプラグの相対的な回転でソケットとプラグとの距離を調整するものであってもよい。この構成によると、ソケットとプラグとの回転に対する調整距離をねじに比べて大きくすることができる。これにより、迅速な端子の接続/接続解除を行うことができる。
また、上記のプラグを、雄ねじを外側に有する筒状外側部材と、接続子を有する内側部材とで構成することができる。この場合、前記筒状外側部材に軸方向に延びる係合溝を設け、前記内側部材に、前記係合溝と軸方向にスライド可能に係合する係合凸部を設けることにより、前記内側部材に接続したトルクケーブルが回転することで前記内側部材が回転し、前記係合溝がスプライン溝として機能するために、前記外側部材が回転して、前記外側部材がソケットの雌ねじと螺合することができる。これにより、螺合の際にはゆっくりと確実に端子と接続子との接続をすることができ、緊急の場合にはケーブルを引き抜くことにより、端子と接続子との接続解除を直ちにすることができる。
【0049】
上述の安全プラグ装置は、第1バッテリーモジュールMb1の負極端子Pb1と第2バッテリーモジュールMb2の正極端子Pa2との接続/接続解除を行うものとしているが、これに限定されるものではない。例えば、安全プラグ装置を、バッテリーユニットBtに含まれる複数のバッテリーモジュールMbを半数ずつに分割する位置に備えてもよく、接続されたバッテリーモジュールMbの電圧が一定の電圧以下となるように、複数の安全プラグ装置で接続/接続解除を行う構成としてもよい。バッテリーユニットが複数の安全プラグ装置を備える構成の場合、各安全プラグ装置のそれぞれに操作部を設けていてもよいし、1個の操作部で全ての安全プラグ装置を操作できるようにしてもよい。このような構成として、操作部の回転動作(回転力)を複数個の歯車で伝達できるようにしておき、トルクケーブルを予め決められた歯車に固定するようにしてもよい。
【0050】
また、プラグの係合部がソケットの円筒部に挿入係合されており、支柱部を挟んで反対側に伸びる接続子を備え、プラグのソケットに対する位置(中心軸回りの回転角度)によって、正極端子と負極端子とが接続された回路接続位置と接続解除された回路解除位置とになるように構成してもよい。
【0051】
上述の実施形態では、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動モータに電力を供給するバッテリーユニットのバッテリー回路の接続/接続解除を行う安全プラグ装置を示している。これに限定されるものではなく、キャパシタ、燃料電池等の電力を供給するものに用いられてもよい。また、自動車以外にも、電源回路の接続/接続解除を遠隔部より確実に行う必要があるものに広く採用することが可能である。
【0052】
上記実施形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を減縮する様に解すべきではない。本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の安全プラグ装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車のモータ駆動用バッテリー等の駆動モータに電力を供給する電源装置のバッテリー回路(電力供給回路)、工場で稼動する自動機械、工作ロボット、建築機器等の大型機械装置に電力を供給する電源装置の電力供給回路の接続状態と接続解除状態とを切り替える切替え装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
A 安全プラグ装置
Bt バッテリーユニット
Mb バッテリーモジュール
Pa 正極端子
Pb 負極端子
1 ソケット
10 円筒部
101 雌ねじ
11 底部
111 貫通孔
112 貫通孔
2 プラグ
20 円板部
21 係合部
211 雄ねじ
22 支持部
221 凹溝
222 スプリングピン
23 支柱部
24 接続子
3 遠隔操作部
31 トルクケーブル
32 ケーブルエンド
321 ケーブル固定部
322 トルク伝達部
323 スプライン(凸条)
324 長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路の端子を有するソケットと、前記端子の接続と解除とを前記ソケットに対して回路接続位置と回路解除位置とを移動することにより行うプラグと、前記プラグの移動を遠隔操作する遠隔操作手段とを備えた安全プラグ装置であって、
前記プラグは、軸を中心とする回動により回路接続位置と回路解除位置との間を移動するように構成され、
前記遠隔操作手段は、前記プラグを軸周り方向に回動させるトルクケーブルを備えた安全プラグ装置。
【請求項2】
前記プラグは前記トルクケーブルの端部に接続するケーブル接続部を有し、
前記遠隔操作手段の先端と前記トルクケーブル接続部との間には、前記プラグと前記遠隔操作手段とが近接する方向に相対移動することを可能とする間隔が形成された
請求項1に記載の安全プラグ装置。
【請求項3】
前記プラグが前記端子と接続する接続子を有し、前記プラグが前記ソケットに螺子嵌合されることにより、前記端子と前記接続子との接続がされるように構成された請求項1または請求項2に記載の安全プラグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−234674(P2012−234674A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101637(P2011−101637)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】