説明

安全帯用チェック装置

【課題】安全帯の機能を低下させることなく、夜間作業時でも安全帯の使用状態を確認することができ、また着脱が容易で汎用性に優れている。
【解決手段】安全帯用チェック装置1は、装置本体11と、この装置本体11の所定の軸方向Yを鉛直方向として装置本体11の方向を検出する傾斜センサと、傾斜センサの検出結果によって異なる動作をする表示部13と、装置本体11をその軸方向Yがロープ23と平行になるように着脱可能に取り付ける面ファスナー14とを備え、傾斜センサと表示部13とを装置本体11に一体的に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業場所で使用される安全帯用のチェック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建設現場において高所作業を行う場合、作業者は安全帯を腰に付け、安全帯のバンドに繋がれた命綱(ロープ)の先端に設けられているフックを足場や親綱などの支持部に取り付けて作業を行っている。そして、安全帯が確実に且つ適法に使用されていることを例えば作業管理者が目視で確認することで管理されている。
ところで、鉄道工事の場合、電車の運行がない夜間に行われる場合が多いが、このような夜間作業時においては、高所作業を行っている作業員の安全帯のフックの取り付け忘れや不適法な取付け方をしている場合に、作業管理者が目視により確認することが極めて困難であった。
また、フックにセンサ等を取り付け、そのフックを支持部に取付けたときにロープに沿わせたケーブルを介して作業員の腰ベルトで警報や光を発する技術が、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1は、フックにコイルが内蔵され、命綱(ロープ)内にコイルに繋がる導線がロープに沿ってベルトまで延ばされ、ベルトには通電センサや警告手段、制御手段や電池等が組み込まれたユニットがケーブルに接続されて取付けられており、フックを磁性体付きの親綱に取り付け、そのフックを親綱に沿って移動させると、フックのコイルに起電力が発生し、導線に電流が流れ、通電センサが起電力の発生を検知し、警告不要状態と判断し、フックを親綱に取付けていない場合にはタイマーにより、所定時間経過後に警告を発する構造の安全帯が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−267237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の安全帯用チェック装置では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1の安全装置では、ベルトとフックとを繋ぐロープの内側に埋め込むようにしてケーブルが配線されているが、これにより、ロープの所定機能、すなわちロープの強度や伸縮性などが低下し、安全帯の使用基準に満たないおそれがあるという問題があった。
また、例えばケーブル等に接触不良などの故障が生じた場合には、現場での修理が困難であり、安全帯そのものを交換する必要があるため、その点で改良の余地があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、安全帯の機能を低下させることなく、夜間作業時でも安全帯の使用状態を確認することができる安全帯用チェック装置を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、着脱が容易で汎用性に優れた安全帯用チェック装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る安全帯用チェック装置では、支持部に着脱可能に連結されるフックと、作業員が装着するベルトと、このベルトとフックとを連結するロープとから構成された安全帯に設けられ、フックの装着状態をチェックする安全帯用チェック装置であって、装置本体と、鉛直方向を基準として装置本体の所定の軸方向を検出する第1センサと、第1センサの検出結果によって異なる動作をする表示装置と、装置本体をその軸方向がロープと平行になるように着脱可能に取り付ける取付具とから構成され、第1センサと表示装置とが装置本体に一体的に設けられていることを特徴としている。
また、装置本体の軸方向が鉛直方向を基準として角移動させた所定の角度範囲内にあるとき、装置本体の向きを正常状態とすることが好ましい。
【0008】
本発明では、第1センサと表示装置とを一体的に設けた装置本体をその軸方向が安全帯のロープと平行になるように取付具によって取り付けることで、鉛直方向を基準として装置本体の所定の軸方向を第1センサによって検出することができるので、装置本体をその軸方向に平行に取り付けた位置のロープの向きを検出することができる。
そのため、第1センサで検出した装置本体の軸方向、すなわちロープの向きが鉛直方向を基準として角移動させた所定の角度範囲内であるときを正常状態として設定し、その所定の角度範囲を外れたときを非正常状態として設定することで、第1センサで検出した装置本体の向きが正常状態であるときに表示装置により正常時動作をさせ、非正常状態であるときに表示装置により前記正常時動作とは異なる非正常時動作をさせることができる。例えば、表示装置が発光体やブザーである場合において、第1センサで検出した装置本体の向きが正常状態であるときには発光体が一定間隔で点滅し、非正常状態であるときには発光体が前記点滅とは異なる表示となるフラッシュ点滅をしたり、ブザーを鳴らすことができる。
【0009】
つまり、安全体のフックを支持部に正しく取り付けているときには、ロープのフックに繋がる連結部付近が鉛直方向に向き、重力方向に垂れ下がることになるため、本安全帯用チェック装置において、ロープに平行に取り付けられる装置本体が鉛直方向に向いているか否かを検出することで、フックの取り付け状態や取り付け忘れ等を確認することができる。したがって、作業管理者は、たとえ夜間作業時であっても、作業員が取り付けている安全帯に備えた表示装置によって発せられる表示を確認することで、安全帯の使用状態を正確に把握することができる。
【0010】
また、第1センサと表示装置とを備えた装置本体がロープに対して取付具によって着脱可能に設けられており、フックやロープにセンサ等を埋め込んだり、ロープにケーブルを沿わせたりした構造ではないので、作業中に安全帯用チェック装置が故障した場合であっても、装置本体のみを取付具によって簡単に交換することができる。
【0011】
また、本発明に係る安全帯用チェック装置では、表示装置は、装置本体の向きが正常状態であるか否かによって異なる動作をすることが好ましい。
【0012】
本発明では、第1センサによって装置本体の軸方向、すなわちロープの向きが前記正常状態であるときに表示装置により正常時動作をさせ、前記正常状態でないときには表示装置により非正常動作をさせることができる。
【0013】
また、本発明に係る安全帯用チェック装置では、表示装置は、装置本体の向きが所定時間の間、継続して正常状態であるか否かによって異なる動作をすることがより好ましい。
【0014】
本発明では、所定時間に満たないロープの動きに対しては、表示装置が作動せず、設定された所定時間の間、装置本体の向きが継続して所定の角度範囲内である場合に、表示装置によって所定の動作をさせることができるので、安全帯の使用状態をより正確に確認することができる。
【0015】
また、本発明に係る安全帯用チェック装置では、装置本体には、ベルトの所定位置に配置された被検出体を検出する第2センサが設けられ、第2センサで被検出体を検出した場合に、表示装置の動作が停止することが好ましい。
【0016】
本発明では、第2センサによって被検出体を検出しているときには表示装置が作動せず、第2センサで前記被検出体を検出していないときには表示装置が有効となる。そのため、例えば、一時的にフックを支持部から取り外して安全帯収納部に収納する場合には、安全帯収納部に被検出体を設け、その被検出体を第2センサで検出し得る状態とすることで、表示装置を非有効状態にすることが可能となる。そして、フックを使用するときには、第2センサを備えた装置本体を被検出体から離脱させ、第2センサが非検出状態とすることで表示装置を有効にすることができる。
【0017】
また、本発明に係る安全帯用チェック装置では、第2センサは磁気センサであり、被検出体は磁石であり、磁石が安全帯収納部に取り付けられていてもよい。
【0018】
本発明では、装置本体の磁気センサで安全帯収納部に設けた磁石の磁気を検出したときに表示装置を非有効状態にすることができる。また、装置本体を鉄製の材料とすることで、装置本体が磁石に吸着して保持させることができ、フックを安全帯収納部に収納した状態で装置本体が磁石から離脱せず、磁気センサでの磁気の検出状態を維持することができる。
【0019】
また、本発明に係る安全帯用チェック装置では、フックの方向を検出する第3センサを設け、この第3センサと第1センサとの両方の検出結果に基づいて表示装置が異なる動作をすることが好ましい。
【0020】
本発明では、フックの正しい向きとロープとの正しい向きとが一致した場合にのみ表示装置を作動させることが可能となるので、安全帯の使用状態をより正確に確認することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の安全帯用チェック装置によれば、第1センサで検出した装置本体の軸方向、すなわちロープの向きが予め設定した正常状態であるときには表示装置において正常時動作をさせ、非正常状態であるときには表示装置において前記正常時動作とは異なる動作をさせることができる。そのため、作業管理者は、夜間作業時であっても、作業員が取り付けている安全帯に備えた表示装置によって発せられる表示を確認することで、安全帯の使用状態を正確に把握することができる。
また、第1センサと表示装置とを備えた装置本体がロープに対して着脱可能に設けられているので、作業中に安全帯用チェック装置が故障した場合であっても、装置本体のみを取付具によって簡単に交換することができ、従来のようにフックやロープにセンサやケーブルが組み込まれた構成ではなく、安全帯自体を交換する必要もないことから、汎用性に優れるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態による安全帯用チェック装置を備えた安全帯の使用状態を示す図である。
【図2】図1に示す安全帯用チェック装置の構成を示す斜視図である。
【図3】装置本体の取付け状態を示す斜視図である。
【図4】ロープ側に取付けられる安全帯用チェック装置の一部構成を示す斜視図である。
【図5】同じくロープ側に取付けられる安全帯用チェック装置の一部構成を示す斜視図である。
【図6】ロープ側に取付けられる安全帯用チェック装置の側面図である。
【図7】図6に示す安全帯用チェック装置の側断面図である。
【図8】図7に示すA−A線断面図である。
【図9】フックの取り付け状態を示す図であって、(a)は正常状態を示す図、(b)は非正常状態を示す図である。
【図10】変形例による安全帯用チェック装置の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明による安全帯用チェック装置の実施の形態について、図1乃至図9に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施の形態による安全帯用チェック装置1は、例えば夜間作業で行われる鉄道工事において、高所作業時に作業員Mが安全帯2を正しく使用しているか否か、あるいは正しく使用しているか否かを確認するものであり、一般的に使用されている安全帯に取り付けて用いるものである。
【0024】
先ず、本実施の形態で採用する図1および図2に示す安全帯2の構成について説明する。
安全帯2は、例えば作業足場の単管などの支持部3に連結されるフック21と、作業員Mが装着するベルト22と、このベルト22とフック21とを連結するロープ23とから概略構成されている。ベルト22には、非使用時のフック21を収納する図示しない収納袋や、一時的にフック21を引掛けて収納するためのD型状の掛止環25(図2参照)がベルト22の任意の位置に設けられている。ここで、前記収納袋および掛止環25は、本発明の「安全帯収納部」に相当する。
【0025】
次に、安全帯用チェック装置1の構成について図2から図8に基づいて説明する。
安全帯用チェック装置1は、安全帯2のロープ23に一体に取り付けられる装置本体11と、鉛直方向を基準として装置本体11の所定の軸方向(図に示すY方向)を検出する傾斜センサ12(第1センサ)と、この傾斜センサ12の検出結果によって異なる動作をする表示部13(表示装置)と、装置本体11をその軸方向Yがロープ23と平行になるように着脱可能に取り付ける面ファスナー14(取付具)とから概略構成されている。そして、装置本体11と傾斜センサ12と表示部13とが一体的に設けられている。
また、本実施の形態の安全帯用チェック装置1においては、前記収納袋や掛止環25にフック21を収納する際に表示部13を作動させないようにするための作動規制部材15がベルト22側に設けられている。
【0026】
装置本体11は、ロープ23のフック21との連結部近傍の基端部23aに一定の方向に向けて取り付けられている。具体的に装置本体11は、内部に電池16と上述した傾斜センサ12とを収容し、軸方向Yの両側端面に表示部13(後述する発光表示部13A、ブザー発生部13B)を備え、さらに電源用の電源スイッチ17と、図2に示す作動規制部材15の磁石片152(後述する)を検出する磁気センサ18(図7参照)とを備え、例えば縦長の電池16の長さ方向(軸方向Y)に延びる略円筒状フレームとなっている。装置本体11は、鉄製の材料からなり、作動規制部材15の磁石片152によって吸着されるようになっている。
電源スイッチ17は、装置本体11の外周面に設けられており、図1に示す作業員Mの操作により安全帯用チェック装置1の電源をオンオフすることができる。
【0027】
装置本体11に収容される傾斜センサ12には、加速度センサやジャイロ等の角速度センサを採用することができる。つまり、傾斜センサ12は、装置本体11自体の方向(傾斜角度)を検出するものであり、その傾斜角度に応じて表示部13の動作が選択されるようになっている。詳しくは後述するが、傾斜センサ12によって装置本体11の軸方向Yの向きを検出し、その軸方向Yが鉛直方向を基準として角移動させた所定の角度範囲内にあるときには装置本体11の向きを正常状態とし、表示部13で予め設定した所定の動作をさせ、同じく軸方向Yが前記角度範囲を外れているときには装置本体11の向きを非正常状態とし、表示部13で前記動作とは異なる動作をさせるように構成されている。
【0028】
表示部13は、装置本体11の向きが所定時間の間、継続して前記正常状態であるか否か、すなわち傾斜センサ12の検出結果に基づいて設定された時間経過後に設定された表示をする機能を有しており、LED(発光ダイオード)の点灯、点滅による表示がされる発光表示部13Aと、ブザー音が発生されるブザー発生部13Bとの二つの手段を有している。発光表示部13Aおよびブザー発生部13Bは、それぞれ装置本体11の軸方向Yで両端面に接点基板11a、11b(図7参照)を介して着脱可能に取り付けられている。
【0029】
図7に示すように、発光表示部13Aは、透明ケース131内にLEDからなる発光体132を収容し、傾斜センサ12の検出結果に応じて発光体132が点灯、点滅するようになっている。この発光体132は、周囲360°の方向に向けて発光される。なお、透明ケース131を装置本体11から取り外すことで、その装置本体11内の電池16を交換することができるようになっている。
また、ブザー発生部13Bは、ケース133内に圧電ブザー134を収容し、上述した傾斜センサ12の検出結果に応じて圧電ブザー134が鳴るようになっている。
【0030】
磁気センサ18は、磁気を検出したときに、表示部13を停止させるためのものであって、装置本体11が後述する作動規制部材15の磁石片152に接触している場合に、磁気センサ18が磁気反応し、表示部13の接点回路を遮断する機能を有している。
【0031】
図3から図4に示すように、面ファスナー14は、帯状をなし、装置本体11の前記電源スイッチ17とは反対側に取り付けられており、ロープ23に対して巻き付け可能に設けられ、巻き付けた状態で装置本体11がその軸方向Yがロープ23に対して平行となるように取り付け可能となっている。
【0032】
また、図2に示すように、安全帯2の収納部側に設けられる作動規制部材15は、前記収納袋或いは掛止環25に取り付けられている。なお、図2では、掛止環25に取り付けられている一例を示している。
この作動規制部材15は、装置本体11の周面形状に沿って湾曲した支持板151と、支持板151の内周面151aに貼り付けられた薄板状の磁石片152(被検出体、磁石)と、支持板151の上端に固定されて掛止環25に対して着脱可能に連結するための連結紐153とからなる。この作動規制部材15は、磁石片152によって内周面151aに装置本体11を吸着させることが可能であり、この吸着時において装置本体11に備えられている磁気センサ18(図7参照)で磁石片152の磁力が検出され、上述したように表示部13が停止状態となる。つまり、安全帯2を使用しない場合にフック21を掛止環25に収納する際には、作動規制部材15の磁石片152に装置本体11を接触させておくことで、非表示状態としておくことができる。
そして、上述したように装置本体11を鉄製の材料とすることで、磁石片152に吸着して保持させることができ、フック21を掛止環25に収納した状態で装置本体11が磁石片152から離脱せず、磁気センサ18での磁気の検出状態を維持することができる。
【0033】
次に、上述のように構成される安全帯用チェック装置1の使用方法と作用について図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、夜間の作業現場で作業員が高所作業を行う場合、先ず作業開始時に電源スイッチ17を入れて安全帯用チェック装置1を使用可能状態とする。そして、収納袋或いは掛止環25からフック21を取り出すとともに、作動規制部材15から装置本体11を取り外し、所定の作業箇所における足場等の支持部3にフック21を取付ける。なお、作動規制部材15から装置本体11が取り外されると、作動規制部材15の磁石片152の磁気を磁気センサ18が検出しなくなり、これによって表示部13が有効になる。
【0034】
本安全帯用チェック装置1では、図3および図7に示すように、傾斜センサ12と表示部13(発光表示部13A、ブザー発生部13B)とを一体的に設けた装置本体11をその軸方向Yが安全帯2のロープ23と平行になるように面ファスナー14によって取り付けることで、鉛直方向を基準として装置本体11の所定の軸方向Yを傾斜センサ12によって検出することができるので、装置本体11をその軸方向Yに平行に取り付けた位置のロープ23の向きを検出することができる。
【0035】
そのため、図9(a)、(b)に示すように、傾斜センサ12で検出した装置本体11の軸方向Y、すなわちロープ23の向きが所定の角度範囲内であるときに正常状態R1(図9(a))として設定し、その所定の角度範囲を外れたときを非正常状態R2(図9(b))として設定することで、傾斜センサ12で検出した装置本体11の向きが正常状態R1であるときに表示部13により正常時動作をさせ、、非正常状態R2であるときに表示部13により前記正常時動作とは異なる非正常時動作をさせることができる。
【0036】
例えば、上記正常状態R1であるときには発光表示部13Aの発光体132(図7)により一定間隔で点滅させ、非正常状態R2であるときには発光表示部13Aの発光体132により前記点滅とは異なる表示となるフラッシュ点滅をさせたり、ブザー発生部13Bの圧電ブザー134(図7)を鳴らすことができる。
なお、傾斜センサ12で検出した装置本体11の軸方向Yの方向において、正常状態R1を例えば水平方向から下向きへの傾斜角度が30°を超える範囲に設定することができ、また非正常状態R2を例えば水平方向から上向きへの傾斜角度が30°を超える範囲に設定することができる。
【0037】
また、本安全帯用チェック装置1では、表示部13は、装置本体11の向きが所定時間の間、継続して正常状態であるか否かによって異なる動作をする構成であるので、所定時間に満たないロープ23の動きに対しては、表示部13が作動せず、設定された所定時間の間、装置本体11の向きが継続して前記角度範囲内である場合に、表示部13によって所定の動作をさせることができる。
例えば、上述した正常状態が10秒間続くときには、表示部13で設定された正常時動作、すなわち発光表示部13Aの発光体132が一定間隔で点滅し続ける。また、上述した非正常状態が30秒間続くときには、表示部13で設定された非正常時動作、すなわち発光表示部13Aの発光体132がフラッシュ点滅するとともに、ブザー発生部13Bの圧電ブザー134が連続的に鳴り続ける。
【0038】
さらに、本安全帯用チェック装置1では、装置本体11には、ベルト22の所定位置に配置された作動規制部材15の磁石片152を検出する磁気センサ18が設けられ、この磁気センサ18で磁石片152を検出した場合に、表示部13の動作が停止する構成であるので、一時的にフック21を支持部3から取り外して掛止環25等の安全帯収納部に収納する場合には、その掛止環25に磁石片152を備えた作動規制部材15を設け、その磁石片152を磁気センサ18で検出し得る状態とすることで、表示部13を非有効状態にすることが可能となる。そして、フック21を使用するときには、磁気センサ18を備えた装置本体11を磁石片152から離脱させ、磁気センサ18が非検出状態とすることで表示部13を有効にすることができる。
【0039】
このような構成により、作業管理者は、たとえ夜間作業時であっても、作業員M(図1参照)が取り付けている安全帯2に備えた表示部13によって発せられる表示を確認することで、安全帯2の使用状態を正確に把握することができる。
つまり、安全体2のフック21を支持部3に正しく取り付けているときには、ロープ23のフック21に繋がる連結部付近が鉛直方向に向き、重力方向に垂れ下がることになるため、本安全帯用チェック装置1において、ロープ23に平行に取り付けられる装置本体11が鉛直方向に向いているか否かを検出することで、フック21の取り付け状態や取り付け忘れ等を確認することができる。
【0040】
上述した本実施の形態による安全帯用チェック装置では、傾斜センサ12で検出した装置本体11の軸方向Y、すなわちロープ23の向きが予め設定した正常状態であるときには表示部13において正常時動作をさせ、非正常状態であるときには表示部13において前記正常時動作とは異なる動作をさせることができる。そのため、作業管理者は、夜間作業時であっても、作業員が取り付けている安全帯2に備えた表示部13によって発せられる表示を確認することで、安全帯2の使用状態を正確に把握することができる。
また、傾斜センサ12と表示部13とを備えた装置本体11がロープ23に対して着脱可能に設けられているので、作業中に安全帯用チェック装置1が故障した場合であっても、装置本体11のみを面ファスナー14によって簡単に交換することができ、従来のようにフックやロープにセンサやケーブルが組み込まれた構成ではなく、安全帯自体を交換する必要もないことから、汎用性に優れるといった効果を奏する。
【0041】
以上、本発明による安全帯用チェック装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態ではロープ23に傾斜センサ12と表示部13とを一体に設けた装置本体11を取り付けて、傾斜センサ12で装置本体11およびロープ23の方向を検出する構成としているが、このような構成に限定されることはない。例えば、図10に示す安全帯用チェック装置は、他の一例(変形例)である。この変形例による安全帯用チェック装置は、フック21の方向を検出するフック側傾斜センサ19(第3センサ)を支持部材19aを介してフック21に設け、このフック側傾斜センサ19とロープ23に取り付けられる装置本体11に備えた傾斜センサ12(第1センサ)とのそれぞれの軸方向Y、Zが鉛直方向に向いているか否かによって表示部13(13A、13B)が異なる動作をする構成となっている。このときのフック21におけるフック側傾斜センサ19の取り付け位置は、フック21の着脱時などに干渉の少ない位置とされる。なお、フック側傾斜センサ19は、図示しないケーブルによって装置本体11に繋がれており、フック側傾斜センサ19の検出値が装置本体11に送ることが可能となっている。このように、本変形例では、フック21の正しい向きとロープ23との正しい向きとが一致した場合にのみ表示部13を作動させることが可能となるので、安全帯の使用状態をより正確に確認することができる。
【0042】
また、表示装置として、本実施の形態では発光体132を用いた発光表示部13Aと圧電ブザー134を備えたブザー発生部13Bとを採用しているが、これらの構成に限定されることはない。つまり、表示装置により発生される警報音の大きさ、音質、色、発生間隔(時間)等の表示方法は、適宜変更することが可能である。
さらに、装置本体11の形状、装置本体11の取付具、作動規制部材15などの構成についても、とくに限定されることはなく、適宜設定することができる。例えば、作動規制部材15は省略することも可能であり、装置本体11の形状として筒状である必要はないが、ロープ23に平行に取り付ける本発明の構成により軸方向Yに長い形状のものが好ましい。そして、装置本体11内に収容される電池16は、単三、単四など何れの種類のものでもよく、とくに制限されることはない。
【符号の説明】
【0043】
1 安全帯用チェック装置
2 安全帯
3 支持部
11 装置本体
12 傾斜センサ(第1センサ)
13 表示部(表示装置)
13A 発光表示部
13B ブザー発生部
14 面ファスナー(取付具)
15 作動規制部材
152 磁石片(被検出体、磁石)
18 磁気センサ(第2センサ)
19 フック側傾斜センサ(第3センサ)
21 フック
22 ベルト
23 ロープ
23a 基端
25 掛止環(安全帯収納部)
M 作業員
Y 装置本体の軸方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部に着脱可能に連結されるフックと、作業員が装着するベルトと、このベルトと前記フックとを連結するロープとから構成された安全帯に設けられ、前記フックの装着状態をチェックする安全帯用チェック装置であって、
装置本体と、
鉛直方向を基準として前記装置本体の所定の軸方向を検出する第1センサと、
該第1センサの検出結果によって異なる動作をする表示装置と、
前記装置本体をその前記軸方向が前記ロープと平行になるように着脱可能に取り付ける取付具と、
から構成され、
前記第1センサと前記表示装置とが前記装置本体に一体的に設けられていることを特徴とする安全帯用チェック装置。
【請求項2】
前記装置本体の軸方向が鉛直方向を基準として角移動させた所定の角度範囲内にあるとき、前記装置本体の向きを正常状態とすることを特徴とする請求項1に記載の安全帯用チェック装置。
【請求項3】
前記表示装置は、前記装置本体の向きが正常状態であるか否かによって異なる動作をすることを特徴とする請求項2に記載の安全帯用チェック装置。
【請求項4】
前記表示装置は、前記装置本体の向きが所定時間の間、継続して前記正常状態であるか否かによって異なる動作をすることを特徴とする請求項2又は3に記載の安全帯用チェック装置。
【請求項5】
前記装置本体には、前記ベルトの所定位置に配置された被検出体を検出する第2センサが設けられ、
該第2センサで前記被検出体を検出した場合に、前記表示装置の動作が停止することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の安全帯用チェック装置。
【請求項6】
前記第2センサは磁気センサであり、前記被検出体は磁石であり、該磁石が安全帯収納部に取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載の安全帯用チェック装置。
【請求項7】
前記フックの方向を検出する第3センサを設け、この第3センサと前記第1センサとの両方の検出結果に基づいて前記表示装置が異なる動作をすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の安全帯用チェック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−15794(P2011−15794A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161836(P2009−161836)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】