説明

安定した濃縮可能なケミカルメカニカル研磨組成物及びそれに関連する方法

【課題】配線金属を含有する半導体ウェーハのケミカルメカニカルポリッシングに有用なケミカルメカニカル研磨組成物。
【解決手段】水、アゾールインヒビター、アルカリ金属有機界面活性剤、ハイドロトロープ、リン含有剤、水溶性セルロース、場合によっては、非糖類水溶性ポリマー、又は、式I(式中、Rは水素等、xは1又は2)の水溶性酸化合物、又は、錯化剤、又は、酸化剤、又は、有機溶媒、又は、砥粒を含むケミカルメカニカル研磨組成物が提供される。研磨パッド上にケミカルメカニカル研磨組成物を注入することを含み、ケミカルメカニカル研磨組成物が、リン酸等の添加により2〜6に調節されたpHを示す方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にケミカルメカニカルポリッシングの分野に関する。特に、本発明は、安定化された濃縮可能なケミカルメカニカル研磨組成物、当該ケミカルメカニカル研磨組成物を製造する方法及び半導体材料のケミカルメカニカルポリッシングの方法、より具体的には、半導体ウェーハ上の配線金属のケミカルメカニカルポリッシングの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体ウェーハは、絶縁層を有し、回路配線のためのパターンを形成するために設けられた多数のトレンチをその絶縁層内に含むシリコンのウェーハである。パターン配設は通常、ダマシン構造又は二重ダマシン構造を有する。バリヤ層がパターン付き絶縁層を覆い、金属層がそのバリヤ層を覆う。金属層は、パターン付きトレンチを金属で埋めて回路配線を形成するのに少なくとも十分な厚さを有する。
【0003】
多くの場合、ケミカルメカニカルポリッシング加工は多数の研磨工程を含む。たとえば、第一工程が過剰な配線金属、たとえば銅を高い初期速度で除去する。第一工程除去ののち、第二工程研磨が、金属配線の外側のバリヤ層の上に残る金属を除去することができる。その後の研磨が、バリヤ層を、その下に位置する半導体ウェーハの絶縁層から除去して、絶縁層及び金属配線の上に平坦な研磨面を提供する。
【0004】
半導体基材上のトレンチ又はトラフ中の金属が、金属回路を形成する金属ラインを提供する。解決されるべき課題の一つは、研磨作業が、各トレンチ又はトラフから金属を除去して、そのような金属のリセス状のディッシングを生じさせる傾向にあることである。ディッシングは、金属回路の臨界寸法の変化を生じさせるため、望ましくない。ディッシングを減らすためには、低めの研磨圧で研磨を実施する。しかし、単に研磨圧を下げるだけでは、長期化された期間にわたり研磨を継続しなければならないであろう。しかも、その長期化された期間全体にわたってディッシングが形成され続けるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特有の顧客ニーズのために高められた調整可能性を提供し、改善された物流管理性(たとえば、より低い運賃、減少した処理量)を提供するために、多くの場合、ケミカルメカニカル研磨調合物を濃縮形態で提供することが望ましい。過剰な配線金属の除去における使用のために設計された従来のケミカルメカニカル研磨調合物は一般にアゾール系インヒビターを配合する。そのようなアゾール系インヒビターは、高めの濃度で配合された場合、凝集し、溶液から析出する傾向を示す。
【0006】
Comeauらは、研磨調合物への配合の前にBTAをろ過する方法を開示している。具体的には、Comeauらは、アルキル硫酸ナトリウムのようなイオン性界面活性剤に溶解した1H−ベンゾトリアゾール(BTA)及びおそらくはポリアクリル酸(PAA)溶液を含むことができる、研磨スラリーを形成するための溶液を開示している。溶液は、ろ過し、研磨スラリーに使用することができる。BTAを可溶化するこの手法は、スラリーへの異物成分の添加又は危険の増大なしに、研磨スラリー中の高いBTA濃度を生じさせる。加えて、溶液は、非常に安定であり(たとえば、凍結解凍することができる)、従来の手法に比べて量が少ないため、より輸送しやすい。さらには、スクラッチを生じさせるおそれのある粒子の除去のおかげで研磨スラリー性能が大きく改善する。
【0007】
Comeauらに開示されている溶液は、ケミカルメカニカル研磨調合物の製造において使用することができる成分である。しかし、半導体ウェーハ金属配線を研磨するために使用される従来のケミカルメカニカル研磨調合物は、調合物に所望の研磨性を提供するための多様なさらなる成分を含有する。これらさらなる成分もまた、濃縮されると、最終調合物の安定性に影響することがある。
【0008】
たとえば、Wangは、米国特許第7,086,935号において、メチルセルロース、アクリル酸/メタクリル酸コポリマー、ベンゾトリアゾール(BTA)及び混和性溶媒を含有する、パターン付きウェーハのための無砥粒銅調合物の使用を記載している。この配合は、銅ディッシングを抑えながら銅を除去し、掃去することができるが、高速研磨中、緑色のCu−BTA化合物を研磨パッド及びウェーハに沈着させる。これらの沈着物は、ガム状の沈着物に伴う研磨除去速度の低下を避けるための研磨パッドの研磨後清浄を要求し、欠陥形成を避けるためにウェーハの研磨後清浄を要求する。これらの清浄工程は、強力で高額な清浄溶液を必要とし、遅延したウェーハスループット(wafer throughput)から生じる関連の「所有コスト」を有する。
【0009】
緑色の沈着物の問題を軽減する改良された組成物がThomasによって米国特許出願公開公報第2009/0215266号に開示されている。Thomasらは、銅配線金属を含有するパターン付き半導体ウェーハを研磨パッドによって研磨する方法を開示している。方法は、a)ベンゾトリアゾール(BTA)インヒビター及び銅錯化化合物及び水を含む水性研磨溶液を提供すること、b)水性研磨溶液及び研磨パッドを用いて、銅をCu+1イオンに溶解するやり方でパターン付きウェーハを研磨すること(水性溶液が錯化化合物を含有しないならば、Cu+1イオン及びBTAインヒビターは、Cu−BTA沈着物に関して濃度[BTA]*[Cu+1]>Kspを有する)、及びc)銅イオンの少なくとも一部を酸化させて、研磨溶液がCu−BTA沈着物を析出させることを防ぐことを含む。
【0010】
Thomasらに例示されているもののような多くの従来のケミカルメカニカル研磨調合物はアンモニウムを含有し、研磨調合物の製造及び使用中に環境及び安全性の問題を伴う。
【0011】
したがって、必要とされているものは、アゾールインヒビターを含有し、安定的に濃縮可能であり、好ましくはアンモニウムフリー(すなわち、0.001重量%未満)であるケミカルメカニカル研磨組成物及び金属配線を含むパターン付き半導体ウェーハのケミカルメカニカルポリッシングの方法である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、配線金属を含有する半導体ウェーハのケミカルメカニカルポリッシングに有用なケミカルメカニカル研磨組成物であって、初期成分として、水、アゾールインヒビター、アルカリ金属有機界面活性剤、ハイドロトロープ、リン含有剤、水溶性セルロース、場合によっては、非糖類水溶性ポリマー、場合によっては、式I
【0013】
【化1】


(式中、Rは、水素及びC1-5アルキル基から選択され、xは1又は2である)
の水溶性酸化合物、場合によっては、錯化剤、場合によっては、酸化剤、場合によっては、有機溶媒、及び場合によっては、砥粒を含む(本質的にそれらからなる)ケミカルメカニカル研磨組成物を提供する。
【0014】
本発明は、本発明のケミカルメカニカル研磨組成物を製造する方法であって、水を提供すること、アゾールインヒビターを提供すること、アルカリ金属有機界面活性剤を提供すること、ハイドロトロープを提供すること、リン含有剤を提供すること、水溶性セルロースを提供すること、場合によっては任意の非糖類水溶性ポリマーを提供すること、場合によっては式I
【0015】
【化2】


(式中、Rは、水素及びC1-5アルキル基から選択され、xは1又は2である)
の任意の水溶性酸化合物を提供すること、場合によっては任意の錯化剤を提供すること、場合によっては任意の酸化剤を提供すること、場合によっては任意の有機溶媒を提供すること、場合によっては任意の砥粒を提供すること、水、アルカリ金属有機界面活性剤、ハイドロトロープ、水溶性セルロース、場合によって提供される任意の非糖類水溶性ポリマー、場合によって提供される式Iの任意の水溶性酸化合物、場合によって提供される任意の錯化剤、場合によって提供される任意の酸化剤、場合によって提供される任意の有機溶媒、及び場合によって提供される任意の砥粒を合わせて混合物を形成すること、及びアゾールインヒビター及びリン含有剤を混合物に加えてケミカルメカニカル研磨組成物を形成することを含む方法を提供する。
【0016】
本発明は、基材のケミカルメカニカルポリッシングの方法であって、銅配線を有する半導体ウェーハである基材を提供すること、本発明のケミカルメカニカル研磨組成物を提供すること、場合によっては酸化剤をケミカルメカニカル研磨組成物に加えること、ケミカルメカニカル研磨パッドを提供すること、ケミカルメカニカル研磨パッドと基材との間の界面に0.69〜34.5kPaのダウンフォースで動的接触を生じさせること、及びケミカルメカニカル研磨パッドと基材との間の界面又はその近くのケミカルメカニカル研磨パッド上にケミカルメカニカル研磨組成物を注入することを含み、ケミカルメカニカル研磨組成物が、リン酸、水酸化マグネシウム及び水酸化リチウムの少なくとも一つの添加によって2〜6に調節されたpHを示す方法を提供する。
【0017】
本発明は、基材のケミカルメカニカルポリッシングの方法であって、銅配線を有する半導体ウェーハである基材を提供すること、本発明のケミカルメカニカル研磨組成物を濃縮物として提供すること、ケミカルメカニカル研磨組成物を水で希釈すること、場合によっては酸化剤をケミカルメカニカル研磨組成物に加えること、ケミカルメカニカル研磨パッドを提供すること、ケミカルメカニカル研磨パッドと基材との間の界面に0.69〜34.5kPaのダウンフォースで動的接触を生じさせること、及びケミカルメカニカル研磨パッドと基材との間の界面又はその近くのケミカルメカニカル研磨パッド上にケミカルメカニカル研磨組成物を注入することを含み、ケミカルメカニカル研磨組成物が、リン酸、水酸化マグネシウム及び水酸化リチウムの少なくとも一つの添加によって2〜6に調節されたpHを示す方法を提供する。
【0018】
本発明は、基材のケミカルメカニカルポリッシングの方法であって、銅配線を有する半導体ウェーハである基材を提供すること、本発明のケミカルメカニカル研磨組成物を8倍濃縮物として提供すること、ケミカルメカニカル研磨組成物を、希釈後の初期成分の配合量が、ベンゾトリアゾール0.2〜0.4重量%、オクタンスルホン酸ナトリウム0.05〜1重量%、トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム及びそれらの混合物から選択されるハイドロトロープ0.45〜1重量%、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム及びそれらの混合物から選択されるリン含有剤0.5〜2重量%、カルボキシメチルセルロース0.1〜1重量%、メタクリル酸とアクリル酸とのコポリマー0.05〜1重量%、イミノ二酢酸0.4〜2重量%、及びリンゴ酸0.1〜0.5重量%になるように水で希釈すること、酸化剤をケミカルメカニカル研磨組成物に加えること、ケミカルメカニカル研磨パッドを提供すること、ケミカルメカニカル研磨パッドと基材との間の界面に0.69〜34.5kPaのダウンフォースで動的接触を生じさせること、及びケミカルメカニカル研磨パッドと基材との間の界面又はその近くのケミカルメカニカル研磨パッド上にケミカルメカニカル研磨組成物を注入することを含み、ケミカルメカニカル研磨組成物が、リン酸、水酸化マグネシウム及び水酸化リチウムの少なくとも一つの添加によって2〜6に調節されたpHを示し、ケミカルメカニカル研磨パッドが、ポリマー中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及び塗膜サブパッドを含む場合、ケミカルメカニカル研磨組成物が、200mm研磨機上、毎分61回転のプラテン速度、毎分57回転のキャリヤ速度、200ml/minのケミカルメカニカル研磨組成物流量及び13.8kPaの公称ダウンフォースで少なくとも4,000Å/minの銅除去速度を示す方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、その使用時点濃度の4倍以上、好ましくは8倍以上まで濃縮されたときでも安定である。この特徴がケミカルメカニカル研磨組成物に有意な価値を与える。これは、関連するプロセス流の減少(すなわち水量の減少)を考慮すると、より小さな製造フットプリント(footprint)を可能にする。また、より低廉な輸送及び貯蔵コストを可能にする。最後に、エンドユーザがケミカルメカニカルポリッシングを自ら特有の作業に適合するように使用の時点でカスタマイズするための向上した融通性を提供する。
【0020】
本明細書及び特許請求の範囲において本発明のケミカルメカニカル研磨組成物を参照して使用される「濃縮可能」とは、ケミカルメカニカル研磨組成物を、使用の時点でケミカルメカニカル研磨組成物に配合されるよりも少ない水で製造、貯蔵及び運搬することができることをいう。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲においてケミカルメカニカル研磨組成物を参照して使用される「使用(の)時点」とは、基材を研磨するためにケミカルメカニカル研磨組成物が使用される時点をいう。
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲においてケミカルメカニカル研磨組成物を参照して使用される「アンモニウムフリー」とは、ケミカルメカニカル研磨組成物がアンモニウムを0.001重量%未満(より好ましくは0.0001重量%未満)含有することをいう。
【0023】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は濃縮可能であり、濃縮形態において安定なままである。たとえば、本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、使用時点濃度の4倍以上(好ましくは8倍以上)の濃縮物として提供することができる(たとえば実施例の表3を参照)。明瞭を期すために、本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、本明細書中、その使用時点組成物に関して詳細に説明される。それでも、当業者は、本発明のケミカルメカニカル研磨組成物の配合が濃縮物(すなわち、濃縮形態にあるケミカルメカニカル研磨組成物)の場合にどのように変化するのかを理解するであろう。
【0024】
本発明のケミカルメカニカルポリッシング法に使用されるケミカルメカニカル研磨組成物の具体的な配合の選択が、濃縮可能性及び安定性とともに目標の金属配線除去速度を提供するための要である。
【0025】
ケミカルメカニカルポリッシングのための本発明のケミカルメカニカルポリッシング法における使用に適した基材は、半導体基材、好ましくは、金属配線、たとえば銅又は銅合金を有する半導体基材、より好ましくは、金属配線、たとえば銅又は銅合金を、下に位置する絶縁層とともに有する半導体基材である。
【0026】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、好ましくは、偶発的な不純物を制限するため、残余として脱イオン水又は蒸留水に依存する。
【0027】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、静的エッチ又は他の除去機構による非鉄金属除去、たとえば銅配線除去の速度を制御するために、インヒビターを含有する。インヒビターの濃度を調節することが、金属を静的エッチから保護することによって配線金属除去速度を調節する。ケミカルメカニカル研磨組成物は、インヒビターを好ましくは0.01〜15重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.2〜0.4重量%含有する。もっとも好ましくは、ケミカルメカニカル研磨組成物はインヒビターを0.2〜1.0重量%含有する。場合によっては、インヒビターはインヒビターの混合物を含む。好ましくは、インヒビターは、銅及び銀配線を有するウェーハを研磨するのに特に有効であるアゾールインヒビターから選択される。より好ましくは、インヒビターは、ベンゾトリアゾール(BTA)、メルカプトベンゾトリアゾール(MBT)、トリトリアゾール(TTA)、イミダゾール及びそれらの組み合わせから選択される。アゾールインヒビターの組み合わせが銅除去速度を増減することができる。もっとも好ましくは、インヒビターは、銅及び銀に関して特に有効なインヒビターであるBTAである。
【0028】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は界面活性剤を含む。ケミカルメカニカル研磨組成物は、界面活性剤を好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜1重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%、もっとも好ましくは0.2〜0.8重量%含む。好ましくは、界面活性剤はアルカリ金属有機スルホネートである。より好ましくは、界面活性剤は、アルカリ金属がナトリウム、カリウム、リチウム及びマグネシウムから選択され、有機部分が炭素原子2〜16個を有する脂肪族基であるアルカリ金属有機スルホネートである。さらに好ましくは、界面活性剤は、オクタンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸カリウム、オクタンスルホン酸リチウム、ドデカンスルホン酸ナトリウム、ドデカンスルホン酸カリウム及びドデカンスルホン酸リチウムから選択される。もっとも好ましくは、界面活性剤はオクタンスルホン酸ナトリウムである。
【0029】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、好ましくはハイドロトロープを含む。ケミカルメカニカル研磨組成物は、ハイドロトロープを好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%、もっとも好ましくは0.45〜1重量%含む。好ましくは、ハイドロトロープは、ベンゼンスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート(たとえばトルエンスルホネート、クメンスルホネート)及びジアルキルベンゼンスルホネート(たとえばキシレンスルホネート、シメンスルホネート)及びそれらの塩から選択される。より好ましくは、ハイドロトロープは、ベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、クメンスルホネート、キシレンスルホネート、シメンスルホネートならびにそれらのナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム及びアンモニウム塩から選択される。さらに好ましくは、本発明のアンモニウムフリーケミカルメカニカル研磨組成物において、ハイドロトロープは、ベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、クメンスルホネート、キシレンスルホネート、シメンスルホネートならびにそれらのナトリウム、リチウム、カルシウム及びカリウム塩から選択される。なおさらに好ましくは、ハイドロトロープはトルエンスルホン酸ナトリウム及びキシレンスルホン酸ナトリウムから選択される。もっとも好ましくは、ハイドロトロープはキシレンスルホン酸ナトリウムである。
【0030】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物はリン含有化合物を含む。ケミカルメカニカル研磨組成物は、リン含有化合物を好ましくは0.01〜15重量%、より好ましくは0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%、もっとも好ましくは0.5〜2重量%含む。本明細書に関して、「リン含有化合物」とは、リン原子を含有する化合物である。好ましくは、リン含有化合物は、ホスフェート、ピロホスフェート、ポリホスフェート、ホスホネートならびにそれらの酸、塩、混合酸塩、エステル、部分エステル、混合エステル及びそれらの混合物から選択される。より好ましくは、リン含有化合物は、リン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、ポリリン酸亜鉛、ホスホン酸亜鉛、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、ホスホン酸アンモニウム、ホスホン酸二アンモニウム、ピロリン酸二アンモニウム、ポリリン酸二アンモニウム、ホスホン酸二アンモニウム、リン酸グアニジン、ピロリン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、ホスホン酸グアニジン、リン酸鉄、ピロリン酸鉄、ポリリン酸鉄、ホスホン酸鉄、リン酸セリウム、ピロリン酸セリウム、ポリリン酸セリウム、ホスホン酸セリウム、リン酸エチレンジアミン、リン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、ホスホン酸ピペラジン、リン酸メラミン、リン酸ジメラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ホスホン酸メラミン、リン酸メラム、ピロリン酸メラム、ポリリン酸メラム、ホスホン酸メラム、リン酸メレム、ピロリン酸メレム、ポリリン酸メレム、ホスホン酸メレム、リン酸ジシアノジアミド、リン酸尿素、リン酸カリウム、それらの酸、塩、混合酸塩、エステル、部分エステル、混合エステル及びそれらの混合物から選択される。さらに好ましくは、リン含有化合物は、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド及びホスホリナンならびにホスホネート、ホスファイト及びホスフィネート、それらの酸、塩、混合酸塩、エステル、部分エステル及び混合エステルから選択される。なおさらに好ましくは、リン含有化合物は、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム及びそれらの組み合わせから選択される。なおさらに好ましくは、リン含有化合物は、リン酸二水素アンモニウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムから選択される。もっとも好ましくは、ケミカルメカニカル研磨組成物はアンモニウムフリーであり、リン含有化合物は、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム及びそれらの混合物から選択される。
【0031】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は水溶性セルロースを含有する。ケミカルメカニカル研磨組成物は、水溶性セルロースを好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%含有する。好ましくは、水溶性セルロースは、カルボン酸官能基で修飾された水溶性改質セルロースである。例示的な改質セルロースは、アニオン性ガム、たとえばアガーガム、アラビアガム、ガッチガム、カラヤガム、グアーガム、ペクチン、ローカストビーンガム、トラガカントガム、タマリンドガム、カラゲナンガム及びキサンタンガムの少なくとも一つ、化工デンプン、アルギン酸、マンヌロン酸、グルロン酸ならびにそれらの誘導体及びコポリマーを含む。もっとも好ましくは、水溶性改質セルロースはカルボキシメチルセルロース(CMC)である。好ましくは、CMCは、1,000〜1,000,000の重量平均分子量Mで0.1〜3.0の置換度を有する。より好ましくは、CMCは、40,000〜250,000の重量平均分子量で0.7〜1.2の置換度を有する。本明細書に関して、CMCにおける置換度とは、置換されるセルロース分子中の各無水グルコース単位上のヒドロキシル基の数である。置換度は、CMC中のカルボン酸基の「密度」の尺度と考えることができる。
【0032】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、場合によっては非糖類水溶性ポリマーを含有する。ケミカルメカニカル研磨組成物は、非糖類水溶性ポリマーを0〜5重量%、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.05〜3重量%、もっとも好ましくは0.05〜1重量%含有する。
【0033】
非糖類水溶性ポリマーは、好ましくは、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー及びアクリル酸モノマー又はメタクリル酸モノマーを使用して合成されたコポリマーを含む。本明細書に関して、非糖類水溶性ポリマーはまた、様々な分子量のポリマー及び低分子量オリゴマーを含む。コポリマーは、アクリル酸とメタクリル酸との組み合わせから形成されるコポリマー、特に、1:30〜30:1の範囲、好ましくは1:9〜9:1の範囲、もっとも好ましくは約2:3の範囲のアクリル酸:メタクリル酸モル比から形成されるコポリマーを含む。コポリマーは、好ましくは1K〜1000Kの範囲、好ましくは10K〜500Kの範囲の重量平均分子量を有する。
【0034】
あるいはまた、非糖類水溶性ポリマーは、アクリル酸又はメタクリル酸から形成されるコポリマーのような両親媒性ポリマーである。本明細書において参照する両親媒性ポリマーとは、疎水性セグメント及び親水性セグメントで構成されるブロックコポリマーである。セグメントは、炭素数2〜250のポリマー鎖であることができる。本明細書に関して、炭素数は、親水性セグメント中の炭素原子の数を表す。炭素数は、好ましくは5〜100であり、もっとも好ましくは5〜50である。親水性セグメントはイオン性である。親水性セグメントのモノマー単位の数は、好ましくは1〜100である。
【0035】
両親媒性ポリマーの好ましい数平均分子量は50〜5,000である。本明細書は、両親媒性ポリマーを、数平均分子量に関して、具体的には、屈折率検出器と直列のTSK-GEL pn/08025 GMPWx及びTSK-GEL pn/08020 G2500PWxカラム及びリン酸ナトリウムバッファ溶離剤を使用する水性ゲル透過クロマトグラフィーによって参照する。より好ましくは、数平均分子量は50〜4,000であり、もっとも好ましくは、数平均分子量は100〜3,000である。イオンセグメントは、カチオン、アニオン及び両性イオン(高分子両性電解質及びポリベタイン)を含む。好ましくは、親水性セグメントはアニオン性であり、たとえばポリアクリル酸又はポリメタクリル酸である。親水性セグメントは、好ましくは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はアクリル酸とメタクリル酸とのコポリマーを含有する。これらのセグメントのコポリマーへの組み合わせが、金属配線の過度なディッシングなしに掃去を促進する、それぞれのホモポリマーとは異なる性質を有する分子を生成する。ポリマーの疎水端は炭化水素鎖又はアルキルメルカプタンを含むことができる。もっとも好ましくは、疎水性セグメントと親水性セグメントとがブロックコポリマーの形態で組み合わさる。
【0036】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、場合によっては、式I
【0037】
【化3】


(式中、Rは、水素及びC1-5アルキル基から選択され、xは1又は2である)
の水溶性酸化合物を含有する。好ましくは、ケミカルメカニカル研磨組成物は、式Iの水溶性酸化合物を0〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.4〜2重量%含有する。好ましくは、式Iの水溶性酸化合物は、イミノ二酢酸(IDA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びこれらの組み合わせから選択される。もっとも好ましくは、式Iの水溶性酸化合物はIDAである。
【0038】
式Iの水溶性酸化合物は、一価(+1)銅イオン及び二価(+2)銅イオンを錯化することができる。研磨中、水溶性酸化合物は、Cu−BTA沈着物の形成を減らすのに十分な数の銅イオンとで錯化し、以下の式(2)におけるCu+2イオンの形成の速度を調整すると思われる。
【0039】
【化4】

【0040】
本明細書に関して、Cu−BTA沈着物は、非液体、たとえば固体、ゲル及びポリマーを含み、Cu2+イオン、スピネル沈着物、スピネル様沈着物及び不純物を含むことができる。研磨実験から、研磨条件下、銅イオン(+1)濃度とBTA濃度との積がKspを超えると、不溶性Cu−BTA沈着物が形成する。Cu−BTAの沈着は、酸性研磨溶液中、平衡式(1)
【0041】
【化5】


にしたがって起こると思われる。
【0042】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、場合によっては、非鉄金属のための錯化剤を含有する。錯化剤は、銅のような金属膜の除去速度を促進することができる。ケミカルメカニカル研磨組成物は、錯化剤を好ましくは0〜15重量%、より好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%、もっとも好ましくは0.1〜0.5重量%含有する。例示的な錯化剤は、たとえば、酢酸、クエン酸、アセト酢酸エチル、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、シュウ酸、サリチル酸、ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸、チオグリコール酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、エチレンジアミン、トリメチルジアミン、マロン酸、グルテル酸、3−ヒドロキシ酪酸、プロピオン酸、フタル酸、イソフタル酸、3−ヒドロキシサリチル酸、3,5−ジヒドロキシサリチル酸、没食子酸、グルコン酸、ピロカテコール、ピロガロール、タンニン酸ならびにそれらの塩及び混合物を含む。好ましくは、錯化剤は、酢酸、クエン酸、アセト酢酸エチル、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、シュウ酸及びそれらの組み合わせから選択される。もっとも好ましくは、錯化剤はリンゴ酸である。
【0043】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、場合によっては酸化剤を含有する。いくつかの実施態様において、ケミカルメカニカル研磨組成物は、酸化剤を0〜25重量%、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは5〜10重量%含有する。いくつかの実施態様において、酸化剤は、過酸化水素(H22)、一過硫酸塩、ヨウ素酸塩、過フタル酸マグネシウム、過酢酸及び他の過酸、過硫酸塩、臭素酸塩、過ヨウ素酸塩、硝酸塩、鉄塩、セリウム塩、Mn(III)、Mn(IV)及びMn(VI)塩、銀塩、銅塩、クロム塩、コバルト塩、ハロゲン、次亜塩素酸塩ならびにそれらの混合物から選択される。いくつかの実施態様において、酸化剤は過酸化水素である。ケミカルメカニカル研磨組成物が過酸化水素のような不安定な酸化剤を含有する場合、使用の時点で酸化剤をケミカルメカニカル研磨組成物に配合することが好ましい。
【0044】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、場合によっては水混和性アルコール又はケトンを含有する。水混和性アルコール又はケトンは、改質セルロース化合物の存在において、ディッシングを抑えながらも許容可能な金属除去速度及び銅金属の掃去を促進するのに役立つ。一般に、水混和性アルコール又はケトンは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、グリセロール、アセトン及びメチルエチルケトンの少なくとも一つを含む。組成物は、水混和性アルコール又はケトンを好ましくは0〜10重量%、より好ましくは0.005〜10重量%、さらに好ましくは0.01〜7.5重量%、もっとも好ましくは0.02〜5重量%含有する。
【0045】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、場合によっては、金属層除去を促進するための砥粒を0〜3重量%含有する。この範囲内で、砥粒を1重量%以下の量で存在させることが望ましい。もっとも好ましくは、研磨組成物は無砥粒である。
【0046】
過度な金属ディッシング、絶縁材エロージョンを防ぎ、平坦化を改善するため、砥粒は500ナノメートル(nm)以下の平均粒径を有する。本明細書に関して、粒径とは、砥粒の平均粒径をいう。より好ましくは、平均粒径100nm以下のコロイダル砥粒を使用することが望ましい。さらに、平均粒径70nm以下のコロイダルシリカを用いると、絶縁材エロージョン及び金属ディッシングが減少する。加えて、好ましいコロイダル砥粒は、コロイダル砥粒の安定性を改善するための添加物、たとえば分散剤、界面活性剤、緩衝剤及び殺生剤を含むことができる。一つのこのようなコロイダル砥粒は、フランスPuteauxのClariant S. A.から市販されているコロイダルシリカである。また、煙霧質(fumed)砥粒、沈降砥粒、凝集砥粒などを含む他の砥粒を利用することもできる。
【0047】
ケミカルメカニカル研磨組成物は、場合によっては、金属配線層の「機械的」除去のための砥粒を含む。例示的な砥粒は、無機酸化物、無機水酸化物、無機水酸化酸化物、金属ホウ化物、金属炭化物、金属窒化物、ポリマー粒子又は前記の少なくとも一つを含む混合物を含む。適当な無機酸化物は、たとえば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、ジルコニア(ZrO2)、セリア(CeO2)、酸化マンガン(MnO2)、酸化チタン(TiO2)又は前記酸化物の少なくとも一つを含む組み合わせを含む。適当な無機水酸化酸化物は、たとえば、水酸化酸化アルミニウム(「ベーマイト」)を含む。望むならば、これらの無機酸化物の改変形態、たとえば有機ポリマー被覆無機酸化物粒子及び無機被覆粒子を使用することもできる。適当な金属炭化物、ホウ化物及び窒化物は、たとえば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素(SiCN)、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ジルコニウム、ホウ化アルミニウム、炭化タンタル、炭化チタン又は前記金属炭化物、ホウ化物及び窒化物の少なくとも一つを含む組み合わせを含む。望むならば、ダイアモンドを砥粒として使用してもよい。また、代替の砥粒は、ポリマー粒子、被覆ポリマー粒子及び界面活性剤安定化粒子を含む。使用される場合、好ましい砥粒はシリカである。
【0048】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、広いpH範囲で効力を提供する。本発明のケミカルメカニカル研磨組成物の有効pH範囲は2〜5である。本発明のいくつかの実施態様において、ケミカルメカニカル研磨組成物は、使用の時点で2〜5、好ましくは2〜4、より好ましくは2.5〜4のpHを示す。本発明のケミカルメカニカル研磨組成物のpHを調節するための使用に適した酸は、たとえば、硝酸、硫酸、塩酸及びリン酸、好ましくはリン酸を含む。本発明のケミカルメカニカル研磨組成物のpHを調節するための使用に適した塩基は、たとえば水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、水酸化リチウム及び水酸化カリウムを含む。好ましくは、本発明のケミカルメカニカル研磨組成物はアンモニウムフリーであり、pHを調節するのに適した塩基は水酸化マグネシウム及び水酸化リチウムから選択される。
【0049】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、好ましくは、濃縮形態(すなわち、使用時点濃度の4倍以上、より好ましくは使用時点濃度の8倍以上)において貯蔵安定性を示す。本明細書及び特許請求の範囲において使用される「貯蔵安定性」とは、55℃で少なくとも5日間の貯蔵ののち、濃縮物が視覚的に明澄なままであり、濃縮物から析出した固体が認められないことをいう。
【0050】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物を製造する方法においては、ケミカルメカニカル研磨組成物の様々な成分を、好ましくは、アゾールインヒビター及びリン含有剤が加えられる水の量を最大限にする添加順序で合わせる。もっとも好ましくは、アゾールインヒビター及びリン含有剤は、本発明のケミカルメカニカル研磨組成物の調製において最後に加えられる成分である。
【0051】
好ましくは、基材のケミカルメカニカルポリッシングのための本発明の方法は、基材を提供すること、本発明のケミカルメカニカル研磨組成物を提供すること、場合によっては酸化剤をケミカルメカニカル研磨組成物に加えること、ケミカルメカニカル研磨パッドを提供すること、ケミカルメカニカル研磨パッドと基材との間の界面に0.69〜34.5kPaのダウンフォースで動的接触を生じさせること、及びケミカルメカニカル研磨パッドと基材との間の界面又はその近くのケミカルメカニカル研磨パッド上にケミカルメカニカル研磨組成物を注入することを含み、ケミカルメカニカル研磨組成物は、リン酸、水酸化マグネシウム及び水酸化リチウムの少なくとも一つの添加によって2〜6に調節されたpHを示す。基材は半導体基材である。好ましくは、基材は、銅、銀、アルミニウム、タングステン、白金、パラジウム、金、イリジウム及びそれらの合金(より好ましくは銅又は銅合金)のような金属配線を有する半導体基材である。さらに好ましくは、基材は、金属配線を、下に位置する絶縁層とともに有する半導体基材である。もっとも好ましくは、基材は、銅配線を、下に位置する絶縁層とともに有する半導体基材である。本明細書に関して、絶縁材とは、low-k及び超low-k絶縁材料を含む、誘電率kの半導体材料をいう。本発明のケミカルメカニカル研磨組成物及び方法は、多数のウェーハ成分、たとえば多孔性及び非孔性のlow-k絶縁材、有機及び無機low-k絶縁材、有機ケイ酸塩ガラス(OSG)、フルオロケイ酸塩ガラス(FSG)、炭素ドープ酸化物(CDO)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)及びTEOSから誘導されるシリカ、のエロージョンを防ぐのに優れている。本発明のケミカルメカニカル研磨組成物はまた、ECMP(エレクトロケミカルメカニカルポリッシング)にも使用することができる。
【0052】
好ましくは、本発明の方法において、本発明のケミカルメカニカル研磨組成物は、濃縮物として(より好ましくは、使用時点濃度の4倍以上として、もっとも好ましくは使用時点濃度の8倍以上として)提供され、方法はさらに、ケミカルメカニカル研磨組成物を水で希釈すること、場合によっては酸化剤をケミカルメカニカル研磨組成物に加えること、ケミカルメカニカル研磨パッドを提供すること、ケミカルメカニカル研磨パッドと基材との間の界面に0.69〜34.5kPaのダウンフォースで動的接触を生じさせること、及びケミカルメカニカル研磨パッドと基材との間の界面又はその近くのケミカルメカニカル研磨パッド上にケミカルメカニカル研磨組成物を注入することを含み、ケミカルメカニカル研磨組成物は、リン酸、水酸化マグネシウム及び水酸化リチウムの少なくとも一つの添加によって2〜6に調節されたpHを示す。
【0053】
好ましくは、本発明の方法において、基材のケミカルメカニカルポリッシングは、銅配線を有する半導体ウェーハである基材を提供すること、本発明のケミカルメカニカル研磨組成物を8倍濃縮物として提供すること、ケミカルメカニカル研磨組成物を、希釈後の初期成分の配合量が、ベンゾトリアゾール0.2〜0.4重量%、オクタンスルホン酸ナトリウム0.05〜1重量%、トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム及びそれらの混合物から選択されるハイドロトロープ0.45〜1重量%、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム及びそれらの混合物から選択されるリン含有剤0.5〜2重量%、カルボキシメチルセルロース0.1〜1重量%、メタクリル酸とアクリル酸とのコポリマー0.05〜1重量%、イミノ二酢酸0.4〜2重量%、及びリンゴ酸0.1〜0.5重量%になるように水で希釈すること、酸化剤をケミカルメカニカル研磨組成物に加えること、ケミカルメカニカル研磨パッドを提供すること、ケミカルメカニカル研磨パッドと基材との間の界面に0.69〜34.5kPaのダウンフォースで動的接触を生じさせること、及びケミカルメカニカル研磨パッドと基材との間の界面又はその近くのケミカルメカニカル研磨パッド上にケミカルメカニカル研磨組成物を注入することを含み、ケミカルメカニカル研磨組成物は、リン酸、水酸化マグネシウム及び水酸化リチウムの少なくとも一つの添加によって2〜6に調節されたpHを示し、ケミカルメカニカル研磨パッドが、ポリマー中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及び塗膜サブパッドを含む場合、ケミカルメカニカル研磨組成物は、200mm研磨機上、毎分61回転のプラテン速度、毎分57回転のキャリヤ速度、200ml/minのケミカルメカニカル研磨組成物流量及び13.8kPaの公称ダウンフォースで少なくとも4,000Å/minの銅除去速度を示す。
【0054】
本発明のケミカルメカニカル研磨組成物及び方法は、銅配線を有する、好ましくは銅配線を、下に位置する絶縁層とともに有する半導体ウェーハのケミカルメカニカルポリッシングに特に有用である。それにもかかわらず、本発明のケミカルメカニカル研磨組成物はまた、他の導電性金属配線、たとえばアルミニウム、タングステン、白金、パラジウム、金又はイリジウム、バリヤ又はライナー膜、たとえばタンタル、窒化タンタル、チタン又は窒化チタン及び下に位置する絶縁層を含有する半導体ウェーハを研磨するのにも適していると思われる。本明細書に関して、絶縁材とは、low-k及び超low-k絶縁材料を含む、誘電率kの半導体材料をいう。本発明のケミカルメカニカル研磨組成物及び方法は、多数のウェーハ成分、たとえば多孔性及び非孔性のlow-k絶縁材、有機及び無機low-k絶縁材、有機ケイ酸塩ガラス(OSG)、フルオロケイ酸塩ガラス(FSG)、炭素ドープ酸化物(CDO)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)及びTEOSから誘導されるシリカのエロージョンを防ぐのに優れている。本発明のケミカルメカニカル研磨組成物はまた、ECMP(エレクトロケミカルメカニカルポリッシング)にも使用することができる。
【0055】
以下の実施例において本発明のいくつかの実施態様を詳細に説明する。
【0056】
[比較例A〜C及び実施例1〜17]
ケミカルメカニカル研磨組成物調製
表1に示す量の成分を合わせることにより、比較研磨例PA〜PB及び研磨実施例P1〜P17ならびに比較安定性例SC及び安定性実施例S1〜S17において使用したケミカルメカニカル研磨組成物を調製した(比較研磨例PA〜PB及び研磨実施例P1〜P17に関しては、さらにH22を9重量%の濃度まで加えた)。
【0057】
【表1】





【0058】
[比較研磨例PA〜PB及び研磨実施例P1〜P17]
銅ブランケットウェーハに対し、各場合、表2に記す配合を使用して研磨実験を実施した(研磨の前に濃縮調合物を1×使用時点濃度まで希釈した)。ISRM検出システムを備えたApplied Materials社のReflexion200mm研磨機を、Rohm and Haas Electronic Materials CMP社から市販されているK7溝パターンを有するVisionPad(商標)5000ポリウレタン研磨パッドとともに、2.0psi(13.8kPa)のダウンフォース、200ml/minの研磨溶液流量、61rpmのプラテン速度、及び57rpmのキャリヤ速度で研磨パッドの中心から3.5インチ(8.89cm)の研磨溶液滴下点の条件で使用した。Diagrid(登録商標)AD3BG-150855ダイアモンドパッドコンディショナ(Kinik社から市販)を使用して研磨パッドをコンディショニングした。研磨の前に、コンディショナを用いて、9.0psi(62.1kPa)のダウンフォースで20分間、次いで7.0psi(48.3kPa)のダウンフォースで20分間、研磨パッドをならした。ウェーハとウェーハとの合間にも、7.0psi(48.3kPa)のダウンフォースを使用して研磨パッドをさらにコンディショニングした。Jordan ValleyのJVX-5200T計測ツールを使用して銅除去速度を測定した。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
[比較安定性例SC及び安定性実施例S1〜S17]
表3に記す研磨組成物の安定性を、記載の試料を記載の温度で5日間貯蔵し、エージングさせた材料の明澄さを観察することによって評価した。不安定な調合物は、記載の条件下に貯蔵されると、曇りを生じるか、析出物を形成することが認められる。
【0061】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線金属を含有する半導体ウェーハのケミカルメカニカルポリッシングに有用なケミカルメカニカル研磨組成物であって、初期成分として、
水、
アゾールインヒビター、
アルカリ金属有機界面活性剤、
ハイドロトロープ、
リン含有剤、
水溶性セルロース、
場合によっては、非糖類水溶性ポリマー、
場合によっては、式I
【化6】


(式中、Rは、水素及びC1-5アルキル基から選択され、xは1又は2である)
の水溶性酸化合物、
場合によっては、錯化剤、
場合によっては、酸化剤、
場合によっては、有機溶媒、及び
場合によっては、砥粒
を含むケミカルメカニカル研磨組成物。
【請求項2】
アンモニウムを0.001重量%未満含有する、請求項1記載のケミカルメカニカル研磨組成物。
【請求項3】
初期成分として、
水、
アゾールインヒビター0.1〜5重量%、
アルカリ金属有機界面活性剤0.05〜1重量%、
ハイドロトロープ0.05〜5重量%、
リン含有剤0.1〜5重量%、
水溶性セルロース0.1〜5重量%、
非糖類水溶性ポリマー0.05〜5重量%、
式I
【化7】


(式中、Rは、水素及びC1-5アルキル基から選択され、xは1又は2である)
の水溶性酸化合物0.05〜5重量%、
錯化剤0.01〜5重量%、
酸化剤0〜25重量%、及び
有機溶媒0〜10重量%
を含む、請求項1記載のケミカルメカニカル研磨組成物。
【請求項4】
アンモニウムを0.001重量%未満含有する、請求項3記載のケミカルメカニカル研磨組成物。
【請求項5】
初期成分として、
水、
ベンゾトリアゾール0.1〜5重量%、
オクタンスルホン酸ナトリウム0.05〜1重量%、
トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム及びそれらの混合物から選択されるハイドロトロープ0.1〜1重量%、
リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム及びそれらの混合物から選択されるリン含有剤0.1〜5重量%、
カルボキシメチルセルロース0.1〜5重量%、
メタクリル酸とアクリル酸とのコポリマー0.05〜3重量%、
イミノ二酢酸0.05〜5重量%、
リンゴ酸0.1〜5重量%、及び
酸化剤0〜25重量%
を含む、請求項1記載のケミカルメカニカル研磨組成物。
【請求項6】
アンモニウムを0.001重量%未満含有する、請求項5記載のケミカルメカニカル研磨組成物。
【請求項7】
請求項1記載のケミカルメカニカル研磨組成物を製造する方法であって、
水を提供すること、
アゾールインヒビターを提供すること、
アルカリ金属有機界面活性剤を提供すること、
ハイドロトロープを提供すること、
リン含有剤を提供すること、
水溶性セルロースを提供すること、
場合によっては任意の非糖類水溶性ポリマーを提供すること、
場合によっては式I
【化8】


(式中、Rは、水素及びC1-5アルキル基から選択され、xは1又は2である)
の任意の水溶性酸化合物を提供すること、
場合によっては任意の錯化剤を提供すること、
場合によっては任意の酸化剤を提供すること、
場合によっては任意の有機溶媒を提供すること、
場合によっては任意の砥粒を提供すること、
前記水、前記アルカリ金属有機界面活性剤、前記ハイドロトロープ、前記水溶性セルロース、場合によって提供される任意の非糖類水溶性ポリマー、場合によって提供される式Iの任意の水溶性酸化合物、場合によって提供される任意の錯化剤、場合によって提供される任意の酸化剤、場合によって提供される任意の有機溶媒、及び場合によって提供される任意の砥粒を合わせて混合物を形成すること、及び
前記アゾールインヒビター及び前記リン含有剤を前記混合物に加えてケミカルメカニカル研磨組成物を形成すること
を含む方法。
【請求項8】
基材のケミカルメカニカルポリッシングの方法であって、
銅配線を有する半導体ウェーハである基材を提供すること、
請求項1記載のケミカルメカニカル研磨組成物を提供すること、
場合によっては酸化剤を前記ケミカルメカニカル研磨組成物に加えること、
ケミカルメカニカル研磨パッドを提供すること、
前記ケミカルメカニカル研磨パッドと前記基材との間の界面に0.69〜34.5kPaのダウンフォースで動的接触を生じさせること、及び
前記ケミカルメカニカル研磨パッドと前記基材との間の前記界面又はその近くの前記ケミカルメカニカル研磨パッド上に前記ケミカルメカニカル研磨組成物を注入すること
を含み、前記ケミカルメカニカル研磨組成物が、リン酸、水酸化マグネシウム及び水酸化リチウムの少なくとも一つの添加によって2〜6に調節されたpHを示す方法。
【請求項9】
提供される前記ケミカルメカニカル研磨組成物が濃縮形態であり、前記方法が、前記ケミカルメカニカル研磨組成物を水で希釈することをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ケミカルメカニカル研磨組成物が8倍濃縮物として提供され、前記方法が、
前記ケミカルメカニカル研磨組成物を、希釈後の初期成分の配合量が、
ベンゾトリアゾール0.2〜0.4重量%、
オクタンスルホン酸ナトリウム0.05〜1重量%、
トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム及びそれらの混合物から選択されるハイドロトロープ0.45〜1重量%、
リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム及びそれらの混合物から選択されるリン含有剤0.5〜2重量%、
カルボキシメチルセルロース0.1〜1重量%、
メタクリル酸とアクリル酸とのコポリマー0.05〜1重量%、
イミノ二酢酸0.4〜2重量%、及び
リンゴ酸0.1〜0.5重量%
になるように水で希釈すること、及び
酸化剤を前記ケミカルメカニカル研磨組成物に加えること
をさらに含む、請求項8記載の方法。

【公開番号】特開2012−199532(P2012−199532A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−46433(P2012−46433)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【出願人】(504089426)ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド (125)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】