説明

安定なダイズタンパク質飲料組成物

第一実施形態では、本発明は、ダイズタンパク質材料とアルカリ土類金属リン酸塩の水和ゲルとの水性スラリーを含む、水性媒体中に分散させたアルカリ土類金属強化ダイズタンパク質組成物の中性飲料に関する。ここでは、ダイズタンパク質材料は、ベータコングリシニン含有率が約40%から約85%であり、かつグリシニン含有率が約5%から約40%であり、アルカリ土類金属強化ダイズタンパク質組成物のアルカリ土類金属含有率は、乾燥ベースで約1.5から約12重量%であり、アルカリ土類金属強化ダイズタンパク質組成物は、水性媒体中で安定な懸濁液を形成する。第二実施形態では、豆乳飲料が調製される。豆乳飲料は、ベータコングリシニン含有率が約40%から約85%であり、かつグリシニン含有率が約5%から約40%であるダイズを水と組み合わせ、ダイズを水中で粉砕し、液体を豆乳として分離することによって調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑らかで、風味がよく、味がよく、かつ酸性の環境または中性の環境中での十分な貯蔵安定性を有する、ダイズタンパク質ベースの飲料組成物に関する。安定性は、デンプン、ペクチン、および親水コロイドなどの安定剤を添加することによって増強される。該ダイズタンパク質は、カルシウムまたはマグネシウム塩を用いて強化される。用いられるダイズタンパク質は、イノシトール−6−リン酸、イノシトール−5−リン酸、イノシトール−4−リン酸、およびイノシトール−3−リン酸のフィチン酸含有率が低い。さらに、該ダイズタンパク質は、ベータコングリシニン含有率が約40%から約85%、グリシニン含有率が約5%から約40%である。
【背景技術】
【0002】
ダイズなどの植物タンパク源から得られるタンパク質分離物は、作物としてのこれらの材料の経済的重要性に実質的に寄与している。ダイズタンパク質分離物は特に、様々な食品および飲料中の有用な栄養補助成分であることが判明している。タンパク質分離物は一般に、植物タンパク材料などのタンパク質源から得られるタンパク質材料の抽出、その後の濃縮および精製から生じる生成物として特徴づけることができる。通常、タンパク質分離物のタンパク質含有率は、乾燥ベースで約90重量%と98重量%の間となる。
【0003】
飲料などの食品の形成におけるダイズタンパク質分離物の有用性は、改変または酵素的に加水分解された分離物の産生、あるいは、飲料の調製に使用される特定のタイプの水性媒体における分離物の分散性または懸濁性を促進するための界面活性剤などの材料の添加によって、ほとんどの場合達成されている。
【0004】
このタイプのタンパク質生成物の例は、米国特許第4,378,378号明細書(ここでは、懸濁液特性が改善された疑似乳製品が生成される)に記載されている。この明細書では、植物タンパク材料と乳ホエーのスラリーが形成され、タンパク質分解酵素を用いるスラリーの反応がそれに続く。タンパク質分離物は一般に、水性媒体に分散可能であるが、乳児用調製粉乳などの栄養的に完全な飲料または飲物が生成される場合には、ある種の必要とされる可能性があるビタミンおよびミネラルと共にこれらの分離物を用いることは、より困難であった。例えば、栄養飲料においてカルシウム補充のために用いられる大部分の形のカルシウムは、水性媒体に比較的不溶性であるので、カルシウムを用いる液体製品の強化は、特有の問題を示す。これらの材料は、水性懸濁液では容易に沈殿または沈降するので、使用者は、食品中のミネラルを適切に摂取することを確実にするために、飲物を振らなければならないことが比較的多い。
【0005】
ミネラル富化されたタンパク質組成物の分散性は、米国特許第4,214,996号明細書に記載されており、ここでは、飲料などの水性媒体におけるミネラルの分散性を向上させる目的で、ミネラルが、有機酸および糖と共にキレート化される。生成物を乾燥させ、良い結果を伴って戻すことが可能であることが示されている。
【0006】
リン酸カルシウムなどの特定のミネラル強化物質の分散性に対する代替の手法は、米国特許第2,605,229号明細書に記載されている。これは、水と混合した場合に、水に分散したままとなり、乳中のリン酸カルシウムの分散液に似た乳状の懸濁液を生ずる、リン酸カルシウムゲルの生成を記載している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の実施形態では、本発明は、ダイズタンパク質材料とアルカリ土類金属リン酸塩の水和ゲルとの水性スラリーを含む、水性媒体中に分散させたアルカリ土類金属強化ダイズタンパク質組成物の中性飲料に関する。ここでは、ダイズタンパク質材料は、ベータコングリシニン含有率が約40%から約85%であり、かつグリシニン含有率が約5%から約40%であり、アルカリ土類金属強化ダイズタンパク質組成物のアルカリ土類金属含有率は、乾燥ベースで約1.5〜12重量%であり、アルカリ土類金属強化ダイズタンパク質組成物は、水性媒体中で安定な懸濁液を形成する。
【0008】
第二の実施形態では、本発明は、ダイズタンパク質材料の水性スラリーを含む、水性媒体中に分散するダイズタンパク質組成物に関する。ここでは、ダイズタンパク質材料は、ベータコングリシニン含有率が約40%から約85%であり、かつグリシニン含有率が約5%から約40%であり、ダイズタンパク質組成物は、水性媒体において安定な懸濁液を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書および特許請求の範囲に使用されるいくつかの用語を理解するために、以下の定義を提供する。
【0010】
高ベータコングリシニンダイズ:本明細書では、高ベータコングリシニンダイズは、ベータコングリシニンとしてのタンパク質が約40%を超えるダイズ種子を指す。
【0011】
ダイズタンパク質分離物(SPI):本明細書では、ダイズタンパク質分離物は、乾燥ベースで少なくとも90%のタンパク質を含有する(N×6.25)、ダイズから作製される噴霧乾燥パウダーである。
【0012】
高ベータコングリシニンダイズ種子は、以下で述べる通りの高ベータコングリシニンダイズタンパク質抽出物に加工される。
【0013】
ダイズタンパク質材料
ダイズタンパク質は、4つのグロブリン分画:分子量が約8,000から約21,500である2S;分子量が約150,000から約200,000である7S(ベータコングリシニン);分子量が約350,000である11S(グリシニン);および分子量が約600,000である15Sからなる。本発明では、出発材料のダイズは、DuPont(Wilmington,DE)から入手でき、Version 1(IA Bean No.408)と識別される、7Sの含有率が65.5であり、11Sの含有率が9.7である遺伝子組み替え食品である。
【0014】
両方の実施形態のために本発明で利用されるダイズタンパク質材料は、ベータコングリシニン含有率が、ダイズタンパク質総重量の約40%から約85%であり、グリシニン含有率が、ダイズタンパク質総重量の約5%から約40%である。約40%以上のベータコングリシニンを含有する高ベータコングリシニンダイズを使用することによって、加工中にグリシニンを除去するという非効率性を伴わずに、ベータコングリシニン含有率が約40%から約85%であるダイズタンパク質材料の調製が可能になる。本発明の高ベータコングリシニンダイズタンパク質材料は、市販のダイズタンパク質分離物の26〜29%に対して、約40%から約85%のベータコングリシニンを含有する。通常、飲料のための典型的な出発材料であるダイズタンパク質分離物は、約40〜45%のグリシニンを含有する。本発明の高ベータコングリシニンダイズタンパク質材料は、約40%未満のグリシニンを含有する。
【0015】
第一実施形態
第一実施形態では、そのまま飲める(ready to drink)中性(RTD−N)飲料が調製される。通常、RTD−N飲料は、ミネラルが富化または強化されている。ミネラル強化は、水和された高ベータコングリシニンダイズタンパク質分離物スラリーに、ミネラル強化材料の水和ゲルを添加することによって行われる。
【0016】
「高ベータコングリシニンダイズタンパク質分離物」は、この用語が本明細書で使用される場合、タンパク質含有量が約90%以上、好ましくはダイズタンパク質含有量約95%以上であり、ベータコングリシニン分画が、総ダイズタンパク質の約40%から約85%、好ましくは約45%から約70%であり、グリシニン含有率が約5%から約40%、好ましくは約15%から約35%であるダイズタンパク質材料を指す。高ベータコングリシニンダイズタンパク質分離物は通常、脱脂した高ベータコングリシニンダイズ材料などの出発材料から生成される。ここでは、油が抽出されて、大豆ミールまたはフレークが残る。より詳細には、高ベータコングリシニンダイズが最初に圧砕または粉砕され、続いて従来の搾油機を通過する可能性がある。しかし、ヘキサンまたは共沸混合物などの脂肪族炭化水素を用いる溶媒抽出によって、ダイズ中に含有される油を除去することが好ましく、これは、油の除去のために用いられる従来の技術に相当する。その後、脱脂した高ベータコングリシニンダイズタンパク質フレークを、水の入った浴に入れ、タンパク質を抽出するために、pHが少なくとも約6.5、好ましくは約7.0と10との間である混合物を提供する。通常、pHを6.7よりも上に上昇させることが所望される場合、pHを上昇させるために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化カルシウムなどの様々なアルカリ性の試薬、あるいは他の一般に容認された食品グレードのアルカリ性の試薬を用いることができる。アルカリ抽出がタンパク質の可溶化を容易にするので、約7よりも上のpHが一般に好ましい。通常、高ベータコングリシニンダイズタンパク質の水性抽出物のpHは、少なくとも約6.5、好ましくは約7.0から10である。ダイズタンパク質材料に対する水性抽出溶媒の重量比は、通常約20から1、好ましくは約10から1である。別の実施形態では、ダイズタンパク質は、水を用いて、すなわちpH調整を伴わずに、粉砕された脱脂フレークから抽出される。
【0017】
本発明で使用される高ベータコングリシニンダイズタンパク質分離物を得る際には、ダイズタンパク質の可溶化を容易にするために、pH調整の有無にかかわらず、水性抽出ステップ中に高温が用いられることがまた所望されるが、所望により、周囲温度でも充分である。用いることができる抽出温度は、周囲温度から約120°Fまでの範囲、好ましい温度は90°Fであり得る。抽出時間は、さらに非限定的であり、好都合には約5から120分の時間が用いられ、好ましい時間は約30分である。植物タンパク材料の抽出後、タンパク質の水性抽出物を、貯蔵タンクまたは適切な容器中に保管できるのに対して、第1の水性抽出ステップから得られた不溶性の固体に対しては、第2の抽出が実施される。これは、第1段階から得られる残余固体から余すことなくタンパク質を抽出することによって、抽出過程の効率および収率を向上させる。
【0018】
その後、pH調整をしない、あるいは、pHが少なくとも6.5、好ましくは約7.0から10である、両方の抽出ステップから得られる合わせられた水性のタンパク質抽出物を、ダイズ抽出物のpHを、高ベータコングリシニンダイズタンパク質の等電点、あるいは等電点の近くに調整することによって沈殿させ、不溶性のカード沈殿物を形成させた。このpHは通常、約4.0と5.0の間である。沈殿ステップは、酢酸、硫酸、リン酸、塩酸などの、一般的な食品グレードの酸性試薬を添加することによって、あるいは他の任意の適切な酸性試薬を用いて、好都合に実施することができる。高ベータコングリシニンダイズタンパク質は、酸性化された抽出物から沈殿し、その後、抽出物から分離される。分離された高ベータコングリシニンダイズタンパク質分離物を水で洗浄し、タンパク質材料から、残留する可溶性の炭水化物および灰分を除去することができる。その後、分離されたタンパク質を、従来の乾燥手段を使用して乾燥させて、高ベータコングリシニンダイズタンパク質分離物を形成させる。
【0019】
ダイズタンパク質カードは、以下で述べる通りのミネラル強化の目的で、その後、水性のスラリーとされる。タンパク質分離物は、上で述べた通りの単離手順から直接的に得ることができるが、その場合、沈殿するタンパク質は、依然として水性の懸濁液の形である。出発材料として、乾燥させたタンパク質分離物(水性媒体に分散させて水性の懸濁液とされる)を用いることも、本発明においては同様に可能である。
【0020】
しかし、この実施形態の本質的な態様は、タンパク質材料のミネラル強化のための特定の手段である。例えば、タンパク質材料のミネラル強化が、ミネラル強化材料の水和ゲルの添加によって行われる場合、乾燥させたミネラル補助剤の添加と比較して、懸濁特性が向上した生成物がもたらされることが判明している。強化されたタンパク質組成物を乾燥させた後も、向上された懸濁液特性は保持される。
【0021】
該水和ゲルは、アルカリ土類金属塩である。ミネラル強化のために使用され、栄養的な目的にとって不可欠であると考えられる典型的なアルカリ土類材料としては、カルシウムおよびマグネシウムが挙げられる。カルシウムは、それが、乳児用調製粉乳または栄養飲料などの水性媒体中で、他のミネラルよりも大きな強化レベルで使用されるので、液体食品のためのタンパク質補助剤の強化にとって特有の問題であることが判明している。ほとんどの場合、これは、従来の技術では、乾燥させたタンパク質補助剤における乾燥させたリン酸カルシウム塩の分散によって達成されているが、水性媒体に分散させる場合、依然としてしばしば、液体食品の貯蔵中にミネラル成分が沈降することとなる。
【0022】
第一実施形態は、特に、懸濁特性が向上したカルシウム強化された高ベータコングリシニンダイズタンパク質組成物の生成を対象とするが、これは、マグネシウムなどの食品のミネラル強化のために通常使用されるアルカリ土類金属塩などの他の二価の塩にも同様に適合できる。様々なアルカリ土類金属塩の水和ゲルを形成する厳密な手段は、本発明の実施にとっては重要でなく、こうしたゲルは、様々な化学的反応によって調製することができる。特にカルシウムについては、以下の反応に従う塩化カルシウムとリン酸三ナトリウムとの反応を使用して、リン酸三カルシウムの水和ゲルを形成することができる。
3CaCl2+2Na3PO4→Ca3(PO42+6NaCl
【0023】
あるいは、等しい程度の成功を伴う、以下の反応に従う水酸化カルシウムとリン酸との間の反応を使用して、リン酸三カルシウムの水和ゲルを形成することができる。
3Ca(OH)2+2H3PO4→Ca3(PO42+6H2
【0024】
上の反応は、強化される植物タンパク材料の懸濁特性を向上させることが特に判明している、カルシウムなどのアルカリ土類金属の水和ゲルの生成のための典型的な反応に相当する。
【0025】
カルシウム塩の水和ゲルの生成については、この反応では塩は生成されないので、水酸化カルシウムをリン酸と反応させる、上で述べた反応を用いることが好ましい。通常、リン酸との反応のために、水酸化カルシウムの希薄溶液が用いられるが、カルシウムの厳密な濃度は、限定的ではなく、溶液中のカルシウムレベルは、約0.1から3.0重量%、好ましくは約1.0重量%であることが好ましい。この溶液に、反応混合物のpHが約7より上に維持されるのに十分な、均一かつ緩徐な速度で、濃縮されたリン酸(85重量%)を滴下する。タンパク質組成物のカルシウム強化のために、好ましい材料であるリン酸三カルシウムを生成するためには、反応媒体のpHを約7より上、好ましくは約9.5から11.5に維持することが望ましい。その後、反応混合物のpHが約7未満に下げられた場合、主として、一および二塩基性の形のリン酸カルシウムが形成され、これも、タンパク質材料の強化においては同等の成功を伴って使用することができ、本発明によってカバーされるものとするが、リン酸三カルシウムが使用されることが好ましく、この材料は、カルシウム強化の目的では、最も安定な形のリン酸カルシウムである。
【0026】
反応を進行させ、リン酸三カルシウムの半透明の水和ゲルの形成を開始させる。この水和ゲルは、遠心分離後に、固形物含量が約10重量%未満、好ましくは約7から10重量パーセントであるゲルを提供する。これは、ダイズタンパク質組成物のミネラル強化を提供するために使用される場合に、懸濁特性が向上したダイズタンパク質組成物を提供することが判明している、リン酸三カルシウムの水和半透明ゲルである。この水和ゲルは、高ベータコングリシニンダイズタンパク質スラリーに添加させる前に乾燥させないことが重要である。所望の懸濁特性を有するミネラル強化されたダイズタンパク質組成物にならないことが判明しているからである。
【0027】
その後、水和ミネラルゲルを、ミネラル強化されたタンパク質組成物を提供するのに有効な量で、高ベータコングリシニンダイズタンパク質分離物スラリーに加える。加えられるべき厳密な量は、所望される強化の程度に依存するべきであり、通常、乾燥ベースで、約1.5%から約12%のアルカリ土類金属である。例えば、大人の場合には、ミネラル強化されたタンパク質組成物におけるタンパク質固形量に対する約1.5%カルシウムというレベルは、1日の所要量を満たすのに十分であるが、乳児の場合、あるいは、それに匹敵するカルシウムレベルを提供することによって疑似乳とすることが所望される人の場合には、このレベルは通常、約2.7%〜3.5%以上である。したがって、加えられるゲルの厳密な量は、所望される強化の程度に完全に依存するものであり、加えられる具体的な量によって、本発明が制限されるものではない。
【0028】
後述の通りの加熱ステップを用いることが好ましいが、加熱ステップは、この実施形態にとって必須ではなく、所望により欠落させることもできる。加熱ステップが、高ベータコングリシニンダイズタンパク質分離物スラリーへの水和ゲルの添加の前に用いられるか後に用いられるかどうかは重要ではない。その後、高ベータコングリシニンダイズタンパク質分離物を強化する目的で加えられた水和ゲルを含有する高ベータコングリシニンダイズタンパク質分離物スラリーを、数秒から数分、好ましくは約7から100秒の間、約220°Fから400°Fの温度に、好ましくは260°Fから310°Fの温度に加熱する。好ましくは、加熱は、ジェットクッカー(jet cooker)または同様の装置で実施され、そこでは、ミネラル強化されたタンパク質組成物スラリーが、高温かつ高圧の条件下で動的に加熱されるような方式で、蒸気の噴射がスラリーの部分を横切る。ミネラル強化されたタンパク質組成物スラリーを、高温かつ圧力の動的条件下で加熱した後、タンパク質とミネラルを伴うスラリーを通常、より低い圧力の容器に排出させ、これによって、スラリー中に含有される一部の水の揮発が引き起こされ、その結果としてスラリーが約150°F以下の温度に冷却される。
【0029】
冷却されたミネラル強化されたタンパク質組成物スラリーは、任意のタイプの乾燥手順によって、その後脱水することができるが、ミネラル強化塩とタンパク質の最も均一な混合物を提供するために、また、水性の媒体への優れた分散特性を有する生成物を提供するために、ミネラル強化されたタンパク質組成物スラリーを噴霧乾燥させることが好ましい。乾燥された生成物は、液体食品中での優れた懸濁特性を有し、栄養飲料などの液体食品中でミネラル強化されたタンパク質組成物を使用する際に通常伴う分離の問題を解決する。
【0030】
アルカリ土類金属塩の水和ゲルは、タンパク質材料のミネラル富化のための手段を提供する目的で調製され、栄養飲料などの液体食品の製造に使用される場合には、懸濁特性が向上したミネラル強化されたタンパク質組成物が形成される。ミネラル強化のために使用され、栄養的な目的にとって不可欠であると考えられる典型的なアルカリ土類材料としては、カルシウムおよびマグネシウムが挙げられる。カルシウムは、乳児用調製粉乳または栄養飲料などの水性媒体中で、他のミネラルよりも大きな強化レベルで使用されるので、液体食品のためのタンパク質補助剤の強化にとって特有の問題であることが判明している。ほとんどの場合、これは、従来の技術では、乾燥させたタンパク質補助剤における乾燥させたリン酸カルシウム塩の分散によって達成されているが、水性媒体に分散させる場合、依然としてしばしば、液体食品の貯蔵中にミネラル成分が沈降することとなる。
【0031】
本発明は特に、懸濁特性が向上したカルシウム強化されたタンパク質組成物の生成を対象とするが、これは、マグネシウムなどの食品のミネラル強化のために通常使用されるアルカリ土類金属塩などの他の二価の塩にも同様に適合できる。マグネシウムまたはカルシウムのアルカリ土類金属塩の水和ゲルを形成する厳密な手段は、本発明の実施にとって重要である。水和ゲルは、超音波処理またはホモジナイゼーション中に、あるいはそれに続いて、水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムのいずれかとリン酸を反応させることによって形成される。
【0032】
水酸化カルシウムまたは水酸化マグネシウムの水性スラリーは、水酸化カルシウムまたは水酸化マグネシウムを、それぞれ水に加えることによって調製される。あるいは、アルカリ土類金属水酸化物は、水と酸化カルシウムまたは酸化マグネシウムを反応させることによってin situ調製することができる。アルカリ土類金属水酸化物は、水への溶解度が限られている。しかし、リン酸と反応させて水和ゲルを形成するために、アルカリ土類金属水酸化物が溶液である必要はない。アルカリ土類金属水酸化物の水性のスラリーで十分である。アルカリ土類金属水酸化物から調製される、あるいはin situ調製されるアルカリ土類金属水酸化物スラリーは、2から最高10%まで、好ましくは最高8%まで、最も好ましくは7重量%までのアルカリ土類金属水酸化物を含有する。
【0033】
10〜85%の化学量論量のリン酸を、超音波処理またはホモジナイゼーションを行いながら、あるいはその後に、迅速に、バッチサイズに応じて30秒から5分でアルカリ土類金属水酸化物スラリーに加える。反応のpHを塩基側に保つ必要はない。超音波処理およびホモジナイゼーションは、すべてのアルカリ土類金属水酸化物がリン酸と反応するように、アルカリ土類金属水酸化物の粒径を減少させ、力学的エネルギーを提供する役割を果たす。超音波処理およびホモジナイゼーションはまた、形成されたアルカリ土類金属リン酸塩の水和ゲルの粒径を減少させる役割も果たす。
【0034】
アルカリ土類金属水酸化物とリン酸の反応は、アルカリ土類金属リン酸塩、特にトリ−アルカリ土類金属リン酸塩を生成するが、好ましいものは、リン酸三カルシウムである。
【0035】
ホモジナイゼーションは、従来のホモジナイザーを使用して実施することができる。好ましくは、ホモジナイゼーションは、APV Gaulinホモジナイザーを使用して、500〜2000重量ポンド毎平方インチで実施される。超音波処理は、Sonics Corporationによって商品名Sonolatorで販売されているModel A超音波混合装置を使用して実施することができる。超音波処理については、圧力は、1000〜1500重量ポンド毎平方インチである。水和ゲルは、特にリン酸三カルシウムとしては、水性媒体に不溶性である。アルカリ土類金属水酸化物とリン酸との反応の後、固体として存在する水和ゲルの量は一般に、約3.0%から約14.0%まで、好ましくは最大約11%、最も好ましくは最大約10重量%である。
【0036】
水和ゲルを用いるダイズタンパク質材料のミネラル富化または強化は、ダイズタンパク質材料に水和ゲルを加えることによって達成される。ダイズタンパク質材料に対する水和ゲルの乾燥ベースでの比は、所望されるアルカリ土類金属含有率に依存する。
【0037】
以下の実施例は、具体的であるが非限定的な、本発明の第一実施形態に相当する。
【実施例】
【0038】
実施例1
ダイズタンパク質分離物は、脱脂したダイズフレーク毎時150ポンドを抽出タンクに供給し、これに毎時1500ポンドの水を加え、これを90°Fに加熱して調製される。十分な水酸化カルシウムを加え、混合物のpHを9.7に調節する。ダイズフレークを、30分間抽出させ、その後、遠心分離によって、抽出されたフレークから水溶液を分離する。第1の水性抽出物を取っておくのに対して、抽出されたフレークの残留物は、90°Fの温度の毎時900ポンドの水に再懸濁させる。混合物のpHは、この時点で9.0である。
【0039】
遠心分離によって、フレークからの第2の水性抽出物を得て、第1の水性抽出物と合わせる。合わせられた抽出物に、37%塩酸を加え、pHを4.5に調節し、タンパク質を沈殿させる。その後、沈殿したタンパク質を遠心分離し、24〜28重量%の固体レベルに達するまで、過剰な液体を除去する。その後、この沈殿したタンパク質を水で希釈し、7.5重量%の固体レベルを有するスラリーを形成する。水酸化ナトリウムを添加することによって、スラリーのpHを6.6に調節する。
【0040】
水9536グラムに水酸化カルシウム230グラムを攪拌しながら加えることによって、2.3%の水酸化カルシウムと水の混合物を調製する。水酸化カルシウムを、1時間水中に分散させる。ある量の85%リン酸(238グラム)を、30分間にわたって加える。酸添加終了後、内容物を、さらに30分間撹拌させる。このスラリーを、Gaulinホモジナイザー(15MR型)に移し、1500重量ポンド毎平方インチでホモジナイズする。得られるリン酸三カルシウムの水和ゲルの固形物含量は3.21%である。
【0041】
水和ゲルを、タンパク質固体の重量に対して乾燥ベースで2.6%のカルシウムレベルを提供するのに十分な量で加え、強化されたスラリーを、1時間平衡化させる。その後、カルシウム強化されたスラリーを、85重量ポンド毎平方インチの圧力で、ジェットクッカーに通過させる。ジェットクッカー中のスラリーは、蒸気によって310°Fの温度に加熱される。8〜10秒後、加熱されたスラリーの進行部分は、大気圧未満で受槽に分泌される。その後、ミネラル強化されたスラリーを、5重量%未満の水分レベルまで噴霧乾燥する。
【0042】
以下の実施例は、水酸化カルシウムとリン酸の反応からのトリ・アルカリ土類金属リン酸塩の水和ゲルの調製を対象とする。
【0043】
実施例2
4%水酸化カルシウム(400グラム)を9186グラムの水に加えて414グラムの85%リン酸と反応させること以外は、実施例1の水和ゲルの手順を繰り返す。ホモジナイゼーション後、リン酸三カルシウムの水和ゲルは、固形物含量が5.58%である。
【0044】
実施例3
5%水酸化カルシウム(500グラム)を8982グラムの水に加えて518グラムの85%リン酸と反応させること以外は、実施例1の水和ゲルの手順を繰り返す。ホモジナイゼーション後、リン酸三カルシウムの水和ゲルは、固形物含量が6.64%である。
【0045】
実施例4
水酸化カルシウムとリン酸のスラリーが、ホモジナイゼーションではなく超音波処理にかけられること以外は、実施例1の水和ゲルの手順を繰り返す。リン酸三カルシウムの水和ゲルは、固形物含量が3.21%である。
【0046】
その後、実施例2〜4のいずれかから得られた水和ミネラルゲルを、ミネラル強化されたタンパク質組成物を提供するのに有効な量で、タンパク質スラリーに加える。加えられるべき厳密な量は、所望される強化の程度に依存するべきである。例えば、大人の場合には、ミネラル強化されたタンパク質組成物におけるタンパク質固形量に対する約1.5%カルシウムというレベルは、1日の所要量を満たすのに十分であるが、乳児の場合、あるいは、それに匹敵するカルシウムレベルを提供することによって疑似乳とすることが所望される人の場合には、このレベルは通常、約2.7%〜3.5%以上である。したがって、加えられるゲルの厳密な量は、所望される強化の程度に完全に依存するものであり、加えられる具体的な量によって、本発明が制限されるものではない。
【0047】
本発明中に使用される高ベータコングリシニンダイズタンパク質材料は、ダイズタンパク質材料の特性を向上させるために改変されることが好ましい。この改変は、ダイズタンパク質材料の有用性または特性を向上させるための当技術分野で知られている改変であり、タンパク質材料の変性や加水分解が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0048】
高ベータコングリシニンダイズタンパク質材料は、粘性を下げるために変性および加水分解することができる。タンパク質材料の化学的変性および加水分解は、当分野でよく知られており、これは通常、制御されたpHおよび温度条件下で、タンパク質材料を所望の程度に変性および加水分解させるのに十分な時間、水性の溶液中で1種または複数のアルカリ性の試薬を用いてタンパク質材料を処理することからなる。高ベータコングリシニンダイズタンパク質材料を化学的に変性および加水分解させるために利用される典型的な条件は、以下の通りである:最高約10まで、好ましくは最高9.7までのpH;約50℃から約80℃の温度;約15分から約3時間の時間。ただし、タンパク質材料の変性および加水分解は、より高いpHおよび温度条件で、より速やかに起こる。
【0049】
高ベータコングリシニンダイズタンパク質材料の加水分解はまた、タンパク質を加水分解することが可能な酵素を用いて、ダイズタンパク質材料を処理することによって実施することもできる。タンパク質材料を加水分解する技術においては、これらに限定されないが、菌類プロテアーゼ、植物プロテアーゼ、ペプターゼおよびキモトリプシンを含めて、多くの酵素が知られている。酵素加水分解は、タンパク質材料の水性分散体に、十分な量の酵素(通常タンパク質材料の重量に対して約0.1%から約10%の酵素)を加え、通常約5℃から約75℃の温度、かつ約3から約9のpHで、酵素とタンパク質の分散液を処理することによって実施される(ここでは、酵素は、ダイズタンパク質材料を加水分解するのに十分な時間の間、活性である)。十分な加水分解が行われた後、酵素を加熱によって失活させ、溶液のpHをタンパク質材料の等電点近くに調節することによって、ダイズタンパク質材料を溶液から沈殿させる。
【0050】
特に好ましい改変されたダイズタンパク質材料は、欧州特許第0 480 104 B1号明細書(参照により本明細書に組み込む)に記載される通りのタンパク質のコアを酵素作用に露出させる条件下で酵素的に加水分解され、脱アミド化されたダイズタンパク質分離物である。簡単に言うと、欧州特許第0 480 104 B1号明細書に開示された改変されたタンパク質分離物材料は、以下によって形成される:1)ダイズタンパク質分離物の水性のスラリーを形成すること;2)このスラリーのpHを9.0から11.0のpHに調節すること;3)このスラリーに、(スラリー中の乾燥タンパク質の重量に対して)0.01%と5%の間のタンパク質分解酵素を加えること;4)このアルカリ性のスラリーを、分子重量分布(Mn)が800と4000の間であり、脱アミドレベルが5%から48%である改変されたタンパク質材料を生成するのに有効な時間(通常10分から4時間)、10℃から75℃の温度で処理すること;および、スラリーを75℃超に加熱することによって、タンパク質分解酵素を失活させること。欧州特許第0 480 104 B1号明細書に開示された改変されたタンパク質材料は、Protein Technologies International,Inc(St.Louis,Missouri)から市販品として入手できる。
【0051】
高ベータコングリシニンダイズタンパク質材料のフィチン酸含有量を減少させることも好ましい。フィチン酸またはフィテートは、多くの穀物および種子中に見られる、イノシトール(1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキソールリン酸)のヘキサ−リンエステルである。これは、リンおよびイノシトールの一次貯蔵形として働き、総リン含有量のうちの50%も占めている。植物中のフィチン酸は、カルシウム、マグネシウム、およびカリウム塩の形で現れ、これらは一般に、フィチンと呼ばれる。種子のリン含有量の大部分は、こうした化合物中に貯蔵されている。例えば、ダイズ中の全リンの約70%は、フィチンが占める。用語フィテートまたはフィチン酸には、本明細書で使用される場合、フィチン酸の塩、および他のダイズ成分とのフィチン酸の分子複合体が含まれる。
【0052】
すべてのマメ科植物は、フィチン酸を含有する。しかし、ダイズは、他のいずれのマメ科植物よりも大きなレベルのフィチン酸を含む。フィチン酸は、タンパク質および多価の金属カチオンとの複合体を形成する傾向がある。フィチン酸複合体は、ダイズタンパク質の栄養価を低下させる。フィチン酸は、多価の金属カチオンと相互作用するので、カルシウム、鉄、および亜鉛などの様々な金属の、動物およびヒトによる吸収を妨害する。これによって、特に菜食者、高齢者、および乳児にとっては、欠乏症が引き起こされる可能性がある。
【0053】
フィチン酸はまた、ペプシンおよびトリプシンを含めた、消化管内の様々な酵素を阻害し、ダイズタンパク質の消化率を低下させる。その上、フィチン酸中に存在するリン酸は、ヒトでは利用可能ではない。さらに、多くの幼児用食品中の、比較的大量のこうした利用不可能なリンの存在は、不適切な骨石灰化をもたらす。
【0054】
市販のダイズタンパク質の典型的な分離プロセスでは、脱脂したダイズフレークまたは大豆粉が、水および塩基と共にスラリー化され、タンパク質を可溶化するために、8.0と10.0の間のpH値で抽出される。このスラリーを、溶液から不溶性部分を分離するために遠心分離させる。タンパク質の等電点の近くのpH(4.5)で沈殿させることによって、主要な分画を溶液から回収し、遠心分離によってそれを分離し、水で沈殿物を洗浄し、pH 7でそれを再懸濁し、それを噴霧乾燥させて粉末にする。こうしたプロセスでは、フィチン酸は、タンパク質を伴うこととなり、得られたダイズ中のタンパク質生成物を濃縮する傾向がある。市販のダイズタンパク質分離物のフィチン酸含有量は約1.2〜3%であるのに対して、ダイズは1〜2%のフィチン酸を含有する。
【0055】
飲料組成物については、ダイズタンパク質材料のフィチン酸レベルが低下されることが重要である。フィチン酸を除去するためには、フィテート分解酵素を用いることが必要である。フィテート分解酵素は、フィチン酸と反応し、イノシトールおよびオルトエステル、ならびに中間生成物としていくつかの形のイノシトールリン酸を生じる。フィテート分解酵素は、フィターゼおよび酸性ホスファターゼのうちの少なくとも1種を含む。特に好ましい酵素は、Alko Ltd.(Helsinki,Finland)によって商標Finase(登録商標)Sで販売されるもの;天野製薬(株)(名古屋、日本)のAmano 3000;およびBASF Corp.(Wyandotte,MI.)のNatuphos(登録商標)フィターゼである。
【0056】
フィターゼおよび酸性ホスファターゼは、アスペルギルス種(Aspergillus spp.)、リゾープス種(Rhizopus spp.)、および酵母などの様々な微生物によって産生され(Appl.Microbiol.16:1348〜1357(1968年);Enzyme Microb. Technol.5:377〜382(1983年))、フィターゼはまた、発芽中の様々な植物種子(例えば小麦)によって産生される。当技術分野で知られた方法によれば、酵素調製は、上述した微生物から達成される可能性がある。Caransa他、オランダ特許出願第87.02735号明細書では、アスペルギルス種(Aspergillus spp.)由来のフィターゼは、同じ酵素量で、小麦由来のフィターゼよりも効率的に、穀物中のフィチン酸を分解することが発見された。
【0057】
本発明のために特に好ましいものは、Finase酵素(以前は、Alko Ltd.(Rajamaki,Finland)によって製造されるEconase EP 43酵素と称されていた)である。これは、1988年9月12日に出願の米国特許出願第242,243号明細書に記載されている。
【0058】
通常、フィターゼ分解酵素は、フィチン酸を減少させるために、酸沈殿の前にダイズタンパク質抽出物に加えられる。これは、ミネラル強化の前または後に実施される可能性がある。必要とされるフィテート分解酵素の量は、原料のフィチン酸含有量および反応条件に依存する。正しい量は、当業者によって容易に推定される。通常、フィテート分解酵素の濃度は、約500から約2200、好ましくは約600から約2100、最も好ましくは約720から約1400単位のフィターゼ(フィターゼ単位)/ダイズタンパク質1グラムであり、これは、通常PU/gとして表される。1フィターゼ単位(PU)は、標準条件下で(すなわち、pH 5.5、37℃、5.0mMフィチン酸ナトリウムの基質濃度、および30分の反応時間で)、1分につき1μmolのリン酸を遊離させる酵素の量と定義される。
【0059】
第二実施形態
第二実施形態では、豆乳飲料が調製される。この豆乳飲料は、ベータコングリシニン含有量が約40%から約85%であり、グリシニン含有量が約5%から約40%であるダイズを水と組み合わせることによって調製される。豆乳の調製では、高ベータコングリシニンダイズが水に浸され、例えば、グラインダー、ミキサー、マスコロイダー(mass−colloider)などを使用することによって粉砕される。水中で高ベータコングリシニンダイズを粉砕することによって、豆汁(go)が生じる。豆汁を分離すると、豆乳とおからが与えられる。おからは、豆乳や豆腐などの大豆製品の産生における副産物である。その後、豆汁は加熱されて、豆乳の水溶性分画と、おからの水不溶性分画に分離される。
【0060】
豆汁は、約10秒から約20分間、約45から65℃に加熱される。加熱温度は、約50から約65℃まで、さらに好ましくは約55から約65℃までの範囲であることが好ましい。加熱時間は、約20秒から約10分まで、好ましくは約3から約7分までの範囲であることが好ましい。
【0061】
豆汁は、限定されない任意の方式によって加熱することができる。すなわち、これを鍋などに入れ、続いて、電気加熱装置などで間接的に加熱することができる。あるいは、これを、例えば生蒸気に吹きつけることによって直接的に加熱することもできる。いずれかの方法によって、優れた品質をもつ加工されたダイズタンパク質食品が得られるようになる。
【0062】
次に、このように加熱された豆汁を、おからと豆乳に分離する。冷却せずに豆汁を分離することが好ましいが、分離の前に冷却してもよい。加熱する時、豆汁は、所望の温度に到達後直ちに分離することができる。あるいは、一定の時間、所望の温度で維持し、その後分離することもできる。豆汁は、例えば、遠心または油圧分離装置を使用することによって、従来方法によって分離することができる。
【0063】
フィチン酸含有量を減少させるために、フィテート分解酵素が、分離の前に豆汁に、あるいは、おからの除去の後に豆乳に加えられる。フィテート分解酵素は、上で示した通りである。
【0064】
本発明の製造プロセスでは、濃縮のための方法は、特に限定されない。例えば、蒸発器または遠心分離機を用いて、減圧濃縮を実施することができる。大気圧下で濃縮を実施することは、可能ではあるが、豆乳が加熱によって変性されることが懸念されるので、好ましくはない。濃縮された豆乳が希釈によって戻され、濃縮の前後の特性の変化が試験される場合、約3.5倍までの濃縮では、変化は起こらない。したがって、本発明の製造プロセスによれば、かなり大きな程度に濃縮された豆乳が、その特性を維持できることは明らかである。
【0065】
水で希釈することによって、製造された濃縮豆乳を、濃縮前と同じ程度のタンパク質変性を有するものに戻すことができる。したがって、これを、一般的な豆乳と同様の多くの方法で使用できる。
【0066】
粉状の豆乳を得るために、液体の豆乳を、噴霧乾燥にかける。入口温度および出口温度を、それぞれ、約90から約130℃以下、約20から約65℃以下に調節することが好ましい。入口温度および出口温度を、それぞれ、約100から約120℃以下、約50から約60℃以下に調節することがさらに好ましい。入口温度および出口温度を、それぞれ、約120℃および約60℃に調節することがさらに好ましい。出口温度は、入口から出口までの距離に応じて変化する。入口温度が決定されれば、入口から出口までの距離と出口温度との関係を、当業者によってよく知られた方法によって確認することができる。噴霧乾燥は、当業者によって一般に用いられる噴霧乾燥機を用いて、従来の方式で実施される。
【0067】
噴霧乾燥によって得られる粉末状豆乳は、液体豆乳と比較して、安定性が高く、重量が軽く、体積が小さい。したがって、粉末状豆乳は、貯蔵のために非常に適している。この粉末状豆乳は、水に溶解させることによって、容易に豆乳に戻すことができる。このように、この粉末状豆乳をさらに加工することによって、様々な食品を製造することができる。粉末状豆乳を液体豆乳に戻さずに、他の食品成分と直接混合し、それに続いて加工することも可能である。
【0068】
豆乳または濃縮された豆乳は、凍結された場合、ダイズタンパク質の変性が抑制されながら、安定な状態で長い間貯蔵することができることが判明している。本発明はまた、凍結された豆乳を使用することによって製造される、凍結豆乳および加工されたダイズタンパク質食品を提供する。
【0069】
本発明の凍結豆乳を製造するために凍結することは、限定されない任意の方法によって実施することができる。例えば、豆乳は、冷却装置内でゆっくりと凍結することができる。あるいは、豆乳は、気体(例えば、二酸化炭素ガスまたは窒素ガス)をこれに吹きつけることによって、急速に凍結することができる。いずれの方法も、任意の有意な違い無しに、豆乳の特性を維持することを可能にすることが確認されている。
【0070】
貯蔵される場合、本発明の凍結豆乳は、凍結状態を保つような温度に維持される。貯蔵温度は、好ましくは約−15℃以下、より好ましくは約−20℃以下、さらに好ましくは約−25℃以下、さらに好ましくは、約−30℃以下である。冷凍庫内に凍結された豆乳を貯蔵するのが最も一般的であるが、本発明はそれに限定されない。高い貯蔵温度では、タンパク質が変性し、それによって豆乳の利用価値が低下する可能性がある。こうした豆乳を使用することによって、豆腐などの、より弾力がなく、加工が不十分なダイズタンパク質食品が製造される。したがって、タンパク質の変性が望ましくないレベルまで進行する前に、凍結豆乳を使用することが必要である。貯蔵温度と貯蔵寿命の関係は、当業者によって、場合によっては知られている可能性がある。
【0071】
本発明をより詳細に、限定目的ではなく、さらに説明するために、以下の実施例を提供する。以下の実施例は、未加工のダイズからの(基準)、また、ベータコングリシニン含有量が約40%から約85%でありグリシニン含有量が約5%から約40%であるダイズからの(本発明)豆乳の調製を対象とする。
【0072】
実施例5(基準)
約0.4kgの乾燥させた未加工のダイズを、約15℃の1.0kgの水に浸す。その後、これに1.12kgの水を加えながら、浸されたダイズをグラインダーで挽き、豆汁を形成させる。豆汁約2kgを、ほうろう鍋に入れ、豆汁が燃えるのを防止するために十分に撹拌しながら、8分かけて約60℃に加熱し、温度が約60℃に到達したら、豆汁を、ジャッキ(jack)を備えた単純な圧搾機を用いて直ちに圧搾する。おからを分離すると、1.47kgの豆乳が得られる。
【0073】
実施例6
実施例5の手順を繰り返す。ただし、未加工のダイズは、7S含有率が65.5であり、11S含有率が9.7である、DuPontのVersion 1(IA Bean No.408)と識別される高ベータコングリシニンダイズで置き換えられる。
【0074】
比較のための豆乳の実施例5を、本発明の豆乳の実施例6と、比較漿液(乳清:serum)試験で比較する。漿液レベルは、4℃で冷蔵されたサンプルに対して決定される。比較は、250ミリリットルの細口の角瓶(Nalge Nunc International)を各豆乳で満たすことによって行われる。その後、各サンプルの漿液の割合を測定し、各豆乳における安定化の効果を決定する。漿液は、懸濁されるタンパク質をほとんどまたは全く含有しない、溶液の透明層である。漿液の割合は、サンプル中の漿液層の高さを測定し、全サンプルの高さを測定することによって決定される。ここでは、漿液(%)=(漿液層の高さ)/(サンプル全体の高さ)×100である。
【0075】
表I

【0076】
表Iのデータから、本発明の漿液(%)は、基準の漿液(%)よりもかなり向上されていることが認められる。
【0077】
本発明をその好ましい実施形態に関して説明してきたが、その様々な改変は、当業者であれば、本明細書を読めば即座に明白であろうことを理解されたい。したがって、本明細書に開示される本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれる通りのこうした改変も包含するものであることを理解するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイズタンパク質材料とアルカリ土類金属リン酸塩の水和ゲルとの水性スラリーを含む、水性媒体中に分散させたアルカリ土類金属強化ダイズタンパク質組成物であって、ダイズタンパク質材料は、ベータコングリシニン含有率が約40%から約85%であり、かつグリシニン含有率が約5%から約40%であり、アルカリ土類金属強化ダイズタンパク質組成物のアルカリ土類金属含有率は、乾燥ベースで約1.5から約12重量%であり、アルカリ土類金属強化ダイズタンパク質組成物は、水性媒体中で安定な懸濁液を形成する、組成物。
【請求項2】
アルカリ土類金属塩のアルカリ土類金属が、マグネシウムまたはカルシウムである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アルカリ土類金属塩が、リン酸三カルシウムである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
水和ゲルが、pH7超におけるアルカリ土類金属水酸化物と鉱酸との反応によって形成される請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ダイズタンパク質材料が、タンパク質材料の重量に対して約0.1%から約10%のプロテアーゼ酵素で加水分解される請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ダイズタンパク質材料が、フィテート分解酵素で処理される請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
フィテート分解酵素が、フィターゼおよび酸性ホスファターゼのうちの少なくとも1種を含む請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ベータコングリシニン含有率が約40%から約85%であり、かつグリシニン含有率が約5%から約40%であるダイズと、水とを組み合わせるプロセスによって調製されるダイズ飲料組成物。
【請求項9】
ダイズが水中で粉砕されて豆汁が生成される請求項8に記載の飲料。
【請求項10】
豆汁が、約45℃から約65℃以下で、約10秒から約20分間以下加熱される請求項9に記載の飲料。
【請求項11】
加熱された豆汁が、おからと豆乳に分離される請求項10に記載の飲料。
【請求項12】
豆乳が噴霧乾燥される請求項10に記載の飲料。
【請求項13】
豆乳がフィテート分解酵素で処理される請求項10に記載の飲料。
【請求項14】
フィテート分解酵素が、フィターゼおよび酸性ホスファターゼのうちの少なくとも1種を含む請求項13に記載の飲料。

【公表番号】特表2008−546372(P2008−546372A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503116(P2008−503116)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/010343
【国際公開番号】WO2006/102382
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(504140299)ソレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】