官能性ポリマー相転移材料を含む物品およびその製造方法
基材に結合した官能性ポリマー相転移材料を含む物品。態様によっては、前記官能性ポリマー相転移材料は、前記基材に、共有結合またはイオン結合のいずれかで結合している。前記官能性ポリマー相転移材料は、反応性基を含んでいてもよい。前記基材は、セルロース、羊毛、毛皮、革、ポリエステル、およびナイロンの少なくとも1種を含んでいる。また、前記物品を製造する方法が開示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本願は、2008年7月16日出願の米国特許出願第12/174,607号および第12/174,609号ならびに2008年8月5日出願の米国特許出願第12/185,908号への優先権を主張している。全ての適切な目的において、その詳細の全てを参照することによって本明細書の内容とする。
【0002】
発明の分野
全般的には、本発明は、官能基が反応性の相転移材料を含む物品、およびそれらの材料の製造方法に関する。特に、本発明は、他の材料と共有結合もしくはイオン相互作用を形成する、官能基が反応性のポリマー相転移材料を含む物品に関するが、それらに限定するものではない。
【背景技術】
【0003】
温度調整特性を与えるための、相転移材料(PCM)の一般化された利用を通した、繊維製品の改質が知られている。また、マイクロカプセル化されたPCM(mPCM)の利用、その製造方法およびその用途も、広く開示されてきている。例えば、下記の文献は、それらの用途において、全てがマイクロカプセルを用いている。
1.米国特許第5366801号明細書:可逆的で高められた熱的性質を備えた布帛
2.国際公開第0212607号明細書:熱制御不織布
3.米国特許第6517648号明細書:不織繊維布の調製方法
4.特開05-156570号明細書:蓄熱性を有する繊維構造物及びその製造方法
5.米国特許出願公開第20040029472号明細書:潜熱効果を備えた複合繊維と方法
6.米国特許出願公開第20040026659号明細書:相転移材料マイクロカプセルを作製するための組成物および該マイクロカプセルの作製方法
7.米国特許出願公開第20040044128号明細書:水性ポリウレタンのマイクロカプセル配合と方法
8.米国特許出願公開第2004011989号明細書:潜熱効果を備えた布帛コーティング組成物およびその製造方法
9.米国特許出願公開第20020009473号明細書:マイクロカプセル、その製造方法、その使用、およびそれを含むコーティング液
10.特開平11-350240号明細書:表面にマイクロカプセルが付着した繊維の製造方法
11.特開2003-268679号明細書:蓄熱性を有する糸及びそれを用いた織物
【0004】
しかしながら、マイクロカプセルは高価であり、破裂する可能性があり、接着のための付加的な樹脂性のバインダーを必要とし、そして繊維に貧弱な可撓性および性質をもたらす可能性がある。
【0005】
多くの他の明細書が、先ずPCMまたはmPCMを含む繊維を製造することによる繊維製品の温度調整の開発の概要を記載している。例えば、下記のものは、全てが、合成的に作られた繊維から生み出された組成物、製造方法、プロセス、および繊維を開示している。これは特定の環境においては受容できるであろうが、以下に記載されたこれらの出願は、全ての天然セルロース繊維およびタンパク質繊維、例えば綿、亜麻、革、毛、絹および毛皮を除外している。また、これらは、合成繊維または布帛の後処理を容認していない。
12.米国特許出願公開第20030035951号明細書:高められた可逆性の熱的特性を有する多成分繊維およびその製造方法
13.米国特許第756958号明細書:可逆性で高められた熱的特性を備えた繊維およびそれから作られる布帛
14.特開平5-331754号明細書:吸発熱性複合繊維不織布
15.特開平6-041818号明細書:吸発熱性複合繊維
16.特開平5-239716号明細書:保温性複合繊維
17.特開平8-311716号明細書:吸発熱性複合繊維
18.特開平5-005215号明細書:吸熱、発熱性複合繊維
19.特開2003-027337号明細書:蓄熱保温性複合繊維
20.特願07-053917号明細書:蓄熱保温性繊維
21.特開2003-293223号明細書:吸熱性複合繊維
22.特願平02-289916号明細書:蓄熱繊維
23.特願平03-326189号明細書:蓄熱繊維
24.特願平04-219349号明細書:蓄熱組成物
25.特願平06-234840号明細書:蓄熱体
26.特願2001-126109号明細書:蓄熱性繊維、その製造方法および蓄熱性布部材
27.特願平03-352078号明細書:蓄熱材
28.特願平04-048005号明細書:蓄熱性布製品
29.国際公開第01/25511号:熱エネルギー貯蔵材料
30.特開平02-317329号明細書:蓄熱繊維、その製造方法および蓄熱布材
31.国際公開第2004/007631号:蓄熱材料、そのための組成物およびそれらの用途
32.特開2003-268358号明細書:体の周囲に用いる蓄熱材料
33.特開2004-011032号明細書:温度コントロール繊維、および温度コントロール布部材
34.特開2004-003087号明細書:蓄熱性複合繊維及び蓄熱性布部材
35.特開平06-200417号明細書:蓄熱材入り複合繊維及びその製造法
36.中国特許第1317602号明細書:自動温度調整繊維およびその製造方法
37.米国特許第5885475号明細書:ポリマー繊維の構造を通して組み込まれた相転移材料
【0006】
更に、米国特許第4851291号明細書、第4871615号明細書、第4908238号明細書、および第5897952号明細書には、中空および非中空繊維へのポリエチレングリコール(PEG)、多価アルコール結晶、または水和塩PCMの添加が開示されている。これらの繊維は、天然または合成、セルロース系、タンパク質系、または合成炭化水素系であることができる。非中空繊維は、PCMのように作用するために、表面上に堆積または反応したPEG材料を有している。これらは、非常に親水性であり、過剰の水分吸収の問題、および洗浄耐久性の問題を引き起こすという問題をはらんでいる。これらの用途においては、アクリル系、メタクリル系ポリマーまたは他の疎水性ポリマーPCMの使用の開示は知られていない。
【0007】
米国特許第6004662号明細書では、C16〜C18アルキル側鎖を備えたアクリレートおよびメタクリレートポリマーのPCMとしての使用に言及されているが、繊維製品の表面へのカプセル化されていない、もしくは官能化された、もしくは反応されたものとしての言及はない。
【0008】
米国特許第4259198号明細書および第4181643号明細書には、結晶子形成ブロックとして、長鎖時カルボン酸もしくはジオールのセグメントを含んでいる、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、およびそれらの混合物の群から選ばれた結晶性架橋合成樹脂の、PCMとしての使用が開示されているが、しかしながらそれらは、繊維もしくは繊維製品と併せてではない。
【0009】
特定の化合物が基材上に反応して、何らかの熱的変化を与える(通常は水分を基に)ための、特定の繊維および繊維製品の処理もしくは仕上げが開示されている。これらの系は、熱的相転移を受けて向上した潜熱効果を与える、長い側鎖アルキル、または長鎖グリコールアクリレートもしくはメタクリレートを基にしたものではない。例としては次のものがある。
38.特開2003-020568号明細書:繊維素材用吸熱加工剤
39.特開2002-348780号明細書:吸湿発熱性セルロース系繊維
40.特開2001-172866号明細書:保温性に優れた吸湿発熱性セルロース系繊維製品
41.特開11-247069号明細書:保温性発熱布帛
【0010】
種々の明細書に、長鎖アルキル部分を含むアクリルもしくはメタクリル共重合体の繊維製品仕上げへの使用が記載されているが、しかしながら油脂忌避性、耐汚染性、パーマネントプレス特性および速乾性などの特性のためだけである。これらは、高純度ポリマーのPCMとしての使用、温度調整および向上した快適さを与える潜熱貯蔵処理または繊維製品仕上げ、を開示も言及もしていない。より具体的には、これらは有利なポリマー設計、例えば分子量、分子量分布または特定の共重合構成を開示していない。例としては以下のものが挙げられる。
42.米国特許第6679924号明細書:染料定着剤
43.米国特許第6617268号明細書:セルラーゼ酵素による酵素攻撃からの綿の保護方法
44.米国特許第6617267号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
45.米国特許第6607994号明細書:ナノ粒子を基にした繊維製品のパーマネント処理
46.米国特許第6607564号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
47.米国特許第6599327号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
48.米国特許第6544594号明細書:繊維製品の撥水および耐汚染仕上げ
49.米国特許第6517933号明細書:ハイブリッドポリマー材料
50.米国特許第6497733号明細書:染料定着剤
51.米国特許第6497732号明細書:繊維反応性ポリマー染料
52.米国特許第6485530号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
53.米国特許第6472476号明細書:繊維製品の撥油および撥水仕上げ
54.米国特許第6387492号明細書:中空ポリマー繊維
55.米国特許第6380336号明細書:共重合体ならびにそれを含む撥油および撥水組成物
56.米国特許第6379753号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
57.米国特許出願公開第20040058006号明細書:高親和性ナノ粒子
58.米国特許出願公開第20040055093号明細書:タンパク質シースを有する複合材繊維基材
59.米国特許出願公開第20040048541号明細書:炭水化物シースを有する複合材繊維基材
60.米国特許出願公開第US20030145397号明細書:繊維定着剤
61.米国特許出願公開第20030104134号明細書:繊維製品の撥水および耐汚染仕上げ
62.米国特許出願公開第20030101522号明細書:繊維製品の撥水および耐汚染仕上げ
63.米国特許出願公開第20030101518号明細書:繊維基材の親水性仕上げ
64.米国特許出願公開第20030079302号明細書:繊維反応性ポリマー染料
65.米国特許出願公開第20030051295号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
66.米国特許出願公開第20030013369号明細書:繊維製品のナノ粒子を基にしたパーマネント処理
67.米国特許出願公開第20030008078号明細書:繊維製品の撥油および撥水仕上げ
68.米国特許出願公開第20020190408号明細書:モルフォロジートラッピングおよびそれとの使用に好適な材料
69.米国特許出願公開第20020189024号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
70.米国特許出願公開第20020160675号明細書:繊維製品の耐久性仕上げ
71.米国特許出願公開第20020155771号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
72.米国特許出願公開第20020152560号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
73.米国特許出願公開第20020122890号明細書:繊維製品の撥水および耐汚染仕上げ
74.米国特許出願公開第20020120988号明細書:繊維製品の耐磨耗および耐しわ仕上げ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
現行の組成物および方法は機能的ではあるが、それらはポリマー材料を相転移材料に用いることに伴う特有の性質および機能的な特徴を利用してはいない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要約
例示的な態様を以下に要約した。これらの態様および他の態様は、詳細な説明の欄により詳細に説明されている。しかしながら、この発明の要約および詳細な説明中に記載した形態に、本発明を限定しようという意図は全くないことが理解されなければならない。当業者は、特許請求の範囲に記載された本発明の精神および範囲内に入る、多くの変更、均等物および代替の構成があり得ることを理解することができる。
【0013】
1つの態様によれば、物品は基材およびこの基材に結合した官能性ポリマー相転移材料を含んでいる。
【0014】
他の態様によれば、物品の製造のための前駆体は、官能性ポリマー相転移材料および少なくとも1種の他の成分を含んでいる。
【0015】
他の態様によれば、物品の製造方法は、官能性ポリマー相転移材料を準備すること、基材を準備すること、およびこの官能性ポリマー材料をこの基材と結合させることを含んでいる。
【0016】
多くの更なる態様および実施態様が、当業者によって理解されるようにここに記載される。
【0017】
本発明の種々の目的および利点およびより完全な理解は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を参照することによって明確であり、そしてより容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1および図2は、長鎖アルキル基もしくは長鎖エーテル基をそれぞれ主成分とする結晶性側鎖を備えた(メタ)アクリレートを主成分とする官能性相転移材料(FP−PCM)の代表的な例を示しており、ここで、Rは反応性官能基である。
【図1A】図1Aおよび図2Aは、長鎖アルキル基もしくは長鎖エーテル基をそれぞれ主成分とする結晶性側鎖を備えたビニルエステル主鎖を主成分とするFP−PCMの代表的な例を示している。ここで、Rは反応性官能基である。
【図1B】図1Bおよび図2Bは、長鎖アルキル基もしくは長鎖エーテル基をそれぞれ主成分とする結晶性側鎖を備えたビニルエーテル主鎖を主成分とするFP−PCMの代表的な例を示しており、ここで、Rは反応性官能基である。
【図1C】図1Cは、長鎖アルキル基を主成分とする結晶性側鎖を備えたポリオレフィン主鎖を主成分とするFP−PCMの代表的例を示しており、Rは反応性官能基である。
【図2】図1および図2は、長鎖アルキル基もしくは長鎖エーテル基をそれぞれ主成分とする結晶性側鎖を備えた(メタ)アクリレートを主成分とする官能性相転移材料(FP−PCM)の代表的な例を示している。
【図2A】図1Aおよび図2Aは、長鎖アルキル基もしくは長鎖エーテル基をそれぞれ主成分とする結晶性側鎖を備えたビニルエステル主鎖を主成分とするFP−PCMの代表的な例を示している。ここで、Rは反応性官能基である。
【図2B】図1Bおよび図2Bは、長鎖アルキル基もしくは長鎖エーテル基をそれぞれ主成分とする結晶性側鎖を備えたビニルエーテル主鎖を主成分とするFP−PCMの代表的な例を示しており、ここで、Rは反応性官能基である。
【図3】図3は、結晶性主鎖ポリマー、例えばポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリスルフィド、ポリスルホンなどを主成分とするFP−PCMの代表的例を示しており、ここで、Rは、このポリマー鎖の1つの末端上の反応性官能基である。
【図4】図4は、FP−PCMを組み込むことができる人造繊維、またはFP−PCMで処理することができる織物、編み物、不織または他の基材を作ることができる人造繊維の一般的分類を示した図である。
【図5A】図5A〜5Fは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの種々の態様である。
【図5B】図5A〜5Fは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの種々の態様である。
【図5C】図5A〜5Fは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの種々の態様である。
【図5D】図5A〜5Fは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの種々の態様である。
【図5E】図5A〜5Fは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの種々の態様である。
【図5F】図5A〜5Fは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの種々の態様である。
【図6A】図6A〜6Dは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの更なる態様である。
【図6B】図6A〜6Dは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの更なる態様である。
【図6C】図6A〜6Dは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの更なる態様である。
【図6D】図6A〜6Dは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの更なる態様である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<定義>
以下の定義が、本発明の種々の態様に関連して記載された種々の要素に適用される。これらの定義は、同様に本明細書中で更に詳述する可能性がある。
【0020】
ここで用いられる用語「単分散」は、一連の特性に関して実質的に均一であることを表わしている。従って、例えば、単分散である一連のマイクロカプセルとは、径の最頻値、例えば径の分布の平均、の周りに径の狭い分布を有するようなマイクロカプセルであるということができる。更なる例としては、同様の分子量を備えた一連のポリマー分子がある。
【0021】
ここで用いられる用語「潜熱」は、材料が、2つの状態間の転移を経る時に、その材料によって吸収もしくは放出される熱の量を表わしている。従って、例えば、潜熱は、材料が、液体状態と結晶性固体状態、液体状態と気体状態、結晶性固体状態と気体状態、2つの結晶性固体状態または結晶状態とアモルファス状態の間の転移を経る時に、その材料によって吸収または放出される熱の量と表わすことができる。
【0022】
ここで用いられる用語「転移温度」は、材料が2つの状態の間の転移を経る概略の温度であると表わされる。従って、例えば、転移温度は、材料が、液体状態と結晶性固体状態、液体状態と気体状態、結晶性固体状態と気体状態、2つの結晶性固体状態または結晶状態とアモルファス状態の間の転移を経る温度と表わすことができる。また、アモルファス材料が、ガラス状態とゴム状状態の間の転移を経る温度は、その材料の「ガラス転移温度」と表わすことができる。
【0023】
ここで用いられる用語「相転移材料」は、熱移動を、温度安定化範囲に、または温度安定化範囲内に調整するように熱を吸収または放出する能力を有する材料を表わしている。温度安定化範囲としては、特定の転移温度または転移温度範囲を上げることができる。例によっては、相転移材料は、相転移材料が熱を吸収または放出する場合には、典型的には、相転移材料が2つの状態間で転移を経る場合には、一定時間の間、熱移動を抑制することができる。この作用は、通常は過渡的なものであり、そして相転移材料の潜熱が、加熱もしくは冷却過程の間に吸収または放出されるまで発現する。熱は、相転移材料から供給または取り除くことができ、そして相転移材料は、通常は、熱を発するか、もしくは吸収する供給源によって効果的に再充填することができる。実施態様によっては、相転移材料は、2種または3種以上の混合物であることができる。2種もしくは3種以上の異なる材料を選択して、そして混合物を形成することによって、温度安定化範囲は、いずれかの所望の用途に応じて調整することができる。結果として得られる混合物は、ここに記載した物品中に組み込まれた場合には、2つもしくは3つ以上の異なる転移温度を示すか、または単一の変更された転移温度を示すことができる。
【0024】
ここで用いられる用語「ポリマー」は、一連の高分子を含む材料を表わしている。ポリマー中に含まれる高分子は、同じであるか、またはいずれかの形で互いに異なっていることができる。高分子は、種々の骨格構造のいずれかを有することができ、そして1種もしくは2種以上の種類のモノマー単位を含むことができる。特に、高分子は、直鎖もしくは非直鎖の骨格構造を有することができる。非直鎖の骨格構造の例としては、分岐骨格構造、例えば星型分岐、櫛型分岐、または樹枝状分岐、および網状骨格構造であるものが挙げられる。単独重合体に含まれる高分子は、通常1種類のモノマー単位を含んでおり、一方で共重合体に含まれる高分子は、通常2種もしくは3種以上の種類のモノマー単位を含んでいる。共重合体の例としては、統計的共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体、ラジアル共重合体、およびグラフト共重合体が挙げられる。例によっては、重合体の反応性および官能価は、一連の官能基、例えば酸無水物基、アミノ基およびそれらの塩、N−置換アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシ基およびそれらの塩、シクロへキシルエポキシ基、エポキシ基、グリシジル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、尿素基、アルデヒド基、エステル基、エーテル基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、ジスルフィド基、シリルもしくはシラン基、グリオキサールを基にした基、アジリジンを基にした基、活性メチレン化合物もしくは他のb−ジカルボニル化合物(例えば、2,4−ペンタジオン、マロン酸、アセチルアセトン、エチルアセトンアセテート、マロナミド、アセトアセタミドおよびそのメチル類似体、エチルアセトアセテート、およびイソプロピルアセトアセテート)を基にした基、ハロ基、ハライド、または他の極性もしくはH結合基、およびそれらの組合せ、の付加によって変えることができる。このような官能基は、重合体に沿った種々の位置に、例えば重合体に沿ってランダムにもしくは規則的に分布して、重合体の末端に、結晶性側鎖上の側鎖、末端もしくはいずれかの位置に、重合体の独立してぶら下がった側鎖基として、または重合体の主鎖に直接に結合して、付加することができる。また、重合体は、その機械的強度もしくは周囲条件や加工条件下での耐崩壊性を向上させるために、架橋した、絡み合った、または水素結合したものであることができる。理解することができるように、重合体の分子量は、その重合体を生成するために用いられた処理条件に依存する可能性があるので、重合体は、異なる分子量を有する種々の形態で与えることができる。従って、重合体は、特定の分子量または分子量範囲を有すると表わすことができる。ここで重合体を参照するのに用いられる用語「分子量」は、数平均分子量、質量平均分子量、または重合体のメルトインデックスを表わすことができる。
【0025】
重合体の(架橋剤およびバインダーとして用いられるポリマーを含めた)例としては、ポリヒドロキシアルコナート、ポリアミド、ポリアミン、ポリイミド、ポリアルリル(例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、およびメタクリル酸とアクリル酸のエステル)、ポリカーボネート(例えば、ポリビスフェノールAカーボネートおよびポリプロピレンカーボネート)、ポリジエン(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびポリノルボルネン)、ポリエポキシド、ポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリプロピレンスクシナート、テレフタル酸系ポリエステル、およびフタル酸系ポリエステル)、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシド、ポリブチレングリコール、ポリプロピレンオキシド、ポリオキシメチレンまたはパラホルムアルデヒド、ポリテトラメチレンエーテルまたはポリテトラヒドロフラン、およびポリエピクロロヒドリン)、ポリフルオロカーボン、ホルムアルデヒドポリマー(例えば、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−ホルムアルデヒド、およびフェノールホルムアルデヒド)、天然ポリマー(例えば、多糖類、例えばセルロース、キタン(chitan)、キトサン、およびデンプン、リグニン、タンパク質および蝋)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリブテン、およびポリオクテン)、ポリフェニレン、ケイ素含有ポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサンおよびポリカルボメチルシラン)、ポリウレタン、ポリビニル(例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールのエステルとエーテル、ポリビニルアセテート、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、およびポリビニルメチルケトン)、ポリアセタール、ポリアリレート、アルキッド系ポリマー(例えば、グリセリド油系ポリマー)、共重合体(例えば、ポリエチレン−コ−ビニルアセテートおよびポリエチレン−コ−アクリル酸)、およびそれらの混合物が挙げられる。用語、重合体は、本願の出願後に利用可能となり、そして上記の一般的な重合体特性を示す、いずれかの物質をも含むと理解されることが意図されている。
【0026】
ここで用いられる用語「化学結合」およびその文法的変異は、2つもしくは3つ以上の原子の、それらの原子が安定した構造を形成することができるような、引力相互作用を基にした結合を表わしている。化学結合の例としては、共有結合およびイオン結合が挙げられる。化学結合の他の例としては、水素結合ならびにカルボキシ基およびアミン基の間の引力相互作用が挙げられる。
【0027】
ここで用いられる用語「分子基」およびその明らかな変形は、分子の一部を形成する一連の原子を表わしている。例によっては、基は、互いに化学結合して、分子の一部を形成する、2つもしくは3つ以上の原子を含むことができる。基は、一方では中性であることができ、他方では、例えば、一価に、もしくは多価(例えば、二価)に、荷電していることができ、分子の更なる一連の基に化学結合することが可能となる。例えば、一価の基は、取り外されて、分子の他の基と化学結合することが可能になる一連のヒドリド基を備えた分子を想定することができる。基は、中性、正に荷電、もしくは負に荷電していることができる。例えば、正に荷電した基は、1つもしくは2つ以上のプロトン(すなわち、H+)が付加された中性基として想定することができ、そして負に荷電した基は、1つもしくは2つ以上のプロトンが取り除かれた中性基として想定することができる。特徴的な反応性または他の一連の特性を示す基は、官能基、反応性基または反応性官能基と表わすことができる。反応性官能基の例としては、例えば酸無水物基、アミノ基、N−置換アミノ基およびそれらの塩、アミド基、カルボニル基、カルボキシ基およびそれらの塩、シクロヘキシルエポキシ基、エポキシ基、グリシジル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、尿素基、アルデヒド基、エステル基、エーテル基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、ジスルフィド基、シリルもしくはシラン基、グリオキサールを基にした基、アジリジンを基にした基、活性メチレン化合物もしくは他のb−ジカルボニル化合物(例えば、2,4−ペンタンジオン、マロン酸、アセチルアセトン、エチルアセトンアセテート、マロンアミド、アセトアセタミドおよびそのメチル類似体、エチルアセトアセテート、およびイソプロピルアセトアセテート)を基にした基、ハロ基、ヒドリド基、または他の極性もしくはH結合基およびそれらの組合せ、が挙げられる。
【0028】
ここで用いられる用語「共有結合」は、原子間、または原子と他の共有結合との間に、対の電子を共有することを特徴とする化学結合の形態を意味している。原子が電子を共有している場合の原子間に形成される引力−反発安定性は、共有結合として知られている。共有結合は、多くの種類の相互作用を含んでおり、σ−結合、π−結合、金属−金属結合、アゴスチック相互作用、および三中心二電子結合が挙げられる。
【0029】
反応性基は、種々の化学的性質のものであることができる。例としては、種々の基材、例えば、綿、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびこれらの材料から作られる繊維製品、ならびに他の基材の反応性基と、反応し、そしてイオン結合もしくは共有結合を形成することができる反応性基である。例えば、天然、再生または合成ポリマー/繊維/材料から作られた材料は、イオン結合を形成することができる。このような基材の更なる例としては、種々の種類の天然製品が挙げられ、動物性製品、例えばアルパカ、アンゴラ、ラクダ毛、カシミア、ガット、チンゴラ、ラマ、モヘア、絹、腱(sinew)、クモの糸、羊毛、およびタンパク質系材料、種々の種類の植物系製品、例えば、竹、コイア、綿、亜麻、麻、ジュート、ケナフ、マニラ、パイナップル、ラフィア、ラミー、サイザル、およびセルロース系材料;種々の種類の鉱物系製品、例えば石綿、バサルト、雲母、または他の天然無機繊維が挙げられる。一般に、人造繊維は、3つの分類に分類分けされ、天然ポリマーから作られるもの、合成ポリマーから作られるもの、そして無機材料から作られるものである。図4は、国際化繊協会(BISFA)コードを備えた人造繊維の一般的な分類を示している。一般的な説明は次の通りである。
【0030】
<天然ポリマーからの繊維>
最も一般的な天然ポリマー繊維は、ビスコースであり、これは大抵は栽培された樹木から得られるポリマーセルロースから作られる。他のセルロース系繊維としては、キュプラ、アセテートおよびトリアセテート、リヨセルおよびモダルがある。これらの繊維の生産方法は、本明細書内に与えられる。より一般的ではない天然ポリマー繊維は、ゴム、アルギン酸、および再生タンパク質から作られる。
【0031】
<合成ポリマーからの繊維>
多くの合成繊維、すなわち石油化学製品系の有機繊維がある。最も一般的なものとしては、ポリエステル、ポリアミド(しばしばナイロンと称される)、アクリルおよびモダクリル、ポリプロピレン、エラステーン(または米国内ではスパンデックス)として知られている弾性繊維であるセグメント化ポリウレタン、および特殊繊維、例えば高性能アラミドがある。
【0032】
<無機材料からの繊維>
無機の人造繊維は、ガラス、金属、炭素またはセラミックなどの材料から作られた繊維である。これらの繊維は、非常にしばしばプラスチックを補強して複合材を形成するのに用いられる。
【0033】
好適な反応性官能基の例としては、例えば、酸無水物、アミノ基、N−置換アミノ基およびそれらの塩、アミド基、カルボニル基、カルボキシ基およびそれらの塩、シクロエポキシ基、エポキシ基、グリシジル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、尿素基、アルデヒド基、エステル基、エーテル基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、ジスルフィド基、シリルもしくはシラン基、グリオキサールを基にした基、アジリジンを基にした基、活性メチレン化合物もしくは他のb−ジカルボニル化合物(例えば2,4−ペンタンジオン、マロン酸、アセチルアセトン、エチルアセトンアセテート、マロンアミド、アセトアセタミドおよびそのメチル類似体、エチルアセトアセテート、およびイソプロピルアセトアセテート)を基にした基、ハロ基、ヒドリド基または他の極性もしくはH−結合基およびそれらの組合せ、などの官能基が挙げられる。
【0034】
本発明の1つもしくは2つ以上の態様によって用いることができる反応性基および官能基の種々の例の更なる詳細を、本願と同一出願人の、そして同時係属中の特許出願第12/174,607号および第12/174,609号中に見出すことができ、それらの詳細を参照することによって本明細書の一部とする。特定の組成物および方法を本明細書の後の部分で提供することによって、本願出願人は、特許請求の範囲をこれらの特定の組成物のいずれにも限定することを意図してはいないことが、明確に理解されなければならない。反対に、ここに記載された官能基、ポリマー相転移材料、および物品のいずれかの組合せは、本発明の新たな態様を得るのに用いることができることが予想される。特許請求の範囲は、本明細書中に記載された特定の組成物のいずれか、または本明細書の一部とされたいずれかの開示に限定されることを意図していない。
【0035】
ここに参照した幾つかの文献は、ポリマーPCM(P−PCM)を取り扱っており、ある意味では固体−液体PCMと固体−固体PCMの中間的な場合を呈している。P−PCMは、相転移の前と後の両方で固体である。違いは、両者の構造度にある。低温では、構造度は、高温での構造度よりも大きく、そのため相転移温度においては、P−PCMはより構造化された形態からより構造化されていない形態に転換する。典型的には、より構造的な形態では、ポリマーのいずれかの部分が、よりよく整列しており、そしてより緻密に密集している。よりよく整列した部分は、結晶子に類似している。従って、P−PCMの加熱による相転移はまた、より結晶化した形態から、より結晶化していない形態への転移としても表すことができる。別の言い方で云うと、高温(転移温度より上)では、P−PCMは本質的にアモルファスである。低温(転移温度未満)では、P−PCMは結晶化度を有している。同様に、熱吸収および熱放出における転移は、それぞれ脱結晶化および再結晶化と表すことができる。また、関連するエンタルピーは、脱結晶化のエンタルピーと表すことができる。
【0036】
典型的には、P−PCMは、よりよく整列することでき、そしてより緻密に密集することができる部分を有している。このような部分は、結晶性部分と称することができる。態様によっては、本発明の種々の態様に従って、ここに記載された官能性ポリマーPCMは、少なくとも1つのこのような結晶性部分を含んでいる。本発明の態様によれば、ポリマーは主鎖および側鎖を含んでいる。好ましくは、側鎖は結晶性部分を形成する。
【0037】
ここで用いられる用語「反応性基」は、他の化学基と反応して共有結合またはイオン結合を形成することができる化学基(または部分(moiety))を意味しており、それらの例は上記に示した。好ましくは、このような反応は、比較的に低温、例えば200℃未満、より好ましくは100℃未満で、そして繊細な基材、例えば繊維製品を取り扱うのに好適な条件で、行なうことができる。ここで用いられる用語「官能基を有する」およびこの用語の明らかな変形は、例えば共有もしくはイオン結合で、結合している官能基を有することを意味している。
【0038】
反応性基は、FP−PCM分子のいずれかの部分に、例えば側鎖上、主鎖に沿って、または主鎖もしくは側鎖の末端の少なくとも1つに、配置する(有する、または共有結合もしくはイオン結合で結合される)ことができる。本発明の種々の態様によれば、FP−PCMは、複数の反応性基を含むことができ、そしてこれらの基は、実質的に規則的な間隔で、立体特異的に、または分子に沿ってランダムに、例えば主鎖に沿って、分布している。また、これらのいずれの組合せも可能である。
【0039】
本発明のFP−PCMの分子量は、好ましくは少なくとも500ダルトン、より好ましくは少なくとも2000ダルトンである。好ましくは、結晶性部分の質量は、FP−PCMの総質量の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、そして最も好ましくは少なくとも70%を形成する。
【0040】
本発明のFP−PCMは、単一の相転移温度または複数の相転移温度を有している。1つの態様によれば、FP−PCMは、−10℃〜100℃の範囲、好ましくは10℃〜60℃の範囲に少なくとも1つの相転移温度を、そして少なくとも25J/gの相転移エンタルピーを有している。
【0041】
それぞれの温度における相転移は、その特有のエンタルピーを有していて、態様によっては、物品は単一の相転移エンタルピーを有しており、そして他の態様によれば、複数のそのようなエタンタルピーを有している。ここで用いられる用語「総相転移エンタルピー」は、単一の相転移温度を備えた物品の場合では相転移のエンタルピーを、そして複数の相転移温度の場合には、組み合わせたエンタルピーを表している。本発明の態様によれば、これらの物品は少なくとも2.0ジュール/グラム(J/g)もしくは10J/m2の総相転移エンタルピーを有している。
【0042】
それぞれのFP−PCM分子は、少なくとも1つの反応性基を有している一方で、大きなFP−PCM分子は、複数の反応性基を有することができる。本発明の態様によれば、FP−PCMは、分子量の10000ダルトン当たりに、少なくとも1つの反応性基、そして好ましくは2つの反応性基を有している。
【0043】
上記のように、本発明のFP−PCMの反応性基は、種々の物品、化合物および他の分子(ここでは、一般的に基材(base materials)もしくは基材(substrates)と表される)と共有結合またはイオン結合を形成することができなければならない。他の態様によれば、基材は、綿、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびこれらの材料から作られる繊維製品からなる群から選ばれる。共有結合を形成することができる反応性基の例としては、酸無水物、アミノ基、N−置換アミノ基、カルボニル基、カルボキシ基、シクロへキシルエポキシ基、エポキシ基、グリシジル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、尿素基、アルデヒド基、エステル基、エーテル基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、ジスルフィド基、シリルもしくはシラン基、グリオキサールを基にした基、アジリジンを基にした基、活性メチレン化合物もしくは他のb−ジカルボニル化合物(例えば、2,4−ペンタジオン、マロン酸、アセチルアセトン、エチルアセトンアセテート、マロンアミド、アセトアセタミドおよびそのメチル類似体、エチルアセトアセテート、およびイソプロピルアセトアセテート)を基にした基、ハロ基、ヒドリド基、またはそれらの混合物、がある。共有結合を形成することができるFP−PCMは、本願と同一譲受人の米国特許出願第12/174,607号中に開始されており、その教示をここに参照することによってその全てを本明細書の内容とする。イオン結合を形成することができる反応性基の例としては、酸基、塩基基、正荷電の錯体および負荷電の錯体がある。イオン結合を形成することができるFP−PCMは、例えば本願と同一譲受人の米国特許第12/174,609号に開示されており、その教示はここにその全てを参照することによって本明細書の内容とする。
【0044】
本発明の他の態様によれば、基材を形成する物品は、更に少なくとも1種の他の成分を含むことができる。好適な成分は、他のFP−PCM、他のPCM、PCMを含むマイクロカプセル、他の添加剤を備えたマイクロカプセル、バインダー、架橋剤、ブレンド用ポリマー、相溶化剤、湿潤剤および添加剤からなる群から選ばれる。また、FP−PCMは、前記少なくとも1種の他の成分と結合していてもよい。
【0045】
他の態様によれば、官能性ポリマー相転移材料は、基材に化学的に結合する。結合は、共有結合、イオン結合、直接結合または結合化合物を通した結合の1つであることができる。他の態様によれば、結合は、例えばFP−PCMの反応性基と基材の反応性基との間の反応の結果として得られる結合であり、好ましくは結合はそのような反応の結果である。基材は、繊維製品、例えば天然繊維、毛皮、合成繊維、再生繊維、織布、編物、不織布、発泡体、紙、革、プラスチックもしくはポリマー層、例えばプラスチックフィルム、プラスチックシート、積層体また上記の組合せからなる群から選ぶことができる。
【0046】
ここに記載されている繊維製品は、人もしくは動物の体に接触するいずれかの衣類または物品に用いることができる。これらには、帽子、ヘルメット、メガネ、ゴーグル、マスク、スカーフ、シャツ、基層(baselayers)、ベスト、ジャケット、下着、肌着類、ブラジャー、手袋、裏地、ミトン、パンツ、オーバーオール、前掛け、ソックス、靴下、靴、ブーツ、中敷、サンダル、寝具類、寝袋、毛布、マットレス、シーツ、枕、繊維製品断熱材、バックパック、スポーツ用パッド/パッド(pads/padding)などが挙げられる。繊維製品物品は、FP−PCMを含むことができ、またはコーティング、積層もしくは成形されていてもよい。例えば、繊維はFP−PCMを、繊維中に含んで、繊維上にコーティングされて、またはFP−PCMで処理されて、その中で繊維とFP−PCMが相互作用するように、製造することができる。また、このことは、繊維製品製造プロセスのいずれかの工程に適用することができる。
【0047】
ここに記載された物品は、以下の製品もしくは物品の分類の1つまたは2つ以上と関連して用いることができる。
【0048】
輸送、貯蔵もしくは包装用容器/装置、例えば、封筒、ジャケット、ラベル、厚紙、包装材料、線材、固定用具(tiedowns)、絶縁材、緩衝材、パッド、発泡材、防水布、袋、箱、管、容器、シート、フィルム、パウチ、スーツケース、箱(cases)、梱包、ビン、広口ビン、蓋、カバー、カン、壷、コップ、ブリキ缶、ペール缶、バケツ、籠、引き出し、ドラム缶、樽、桶、箱(bins)、ホッパー、トートバッグ(totes)、トラック/船舶用容器またはトレーラー、カート、棚(shelves)、棚(racks)などの形態の、紙、ガラス、金属、プラスチック、セラミック、有機もしくは無機材料。これらの物品は、特に、食品の出荷、食品配送、医薬の出荷、医薬の配送、身体輸送などの事業において用いることができる。
【0049】
医療、健康、治療(therapeutic)、治療(curative)および創傷管理、例えば包帯、外被、布巾(wipes)、ステント、カプセル、薬剤、送達装置、管、袋、パウチ、スリーブ(sleeves)、発泡体、パッド、縫合糸、線材など。
【0050】
エネルギー管理およびオフピークのエネルギー需要の低減が望まれる、建築物、建造物、および内装物品。これらの物品としては、例えば、室内装飾用品、家具、ベッド、室内装備品、窓、窓のコーティング、窓周りの装飾とカバー、ウォールボード、断熱材、発泡材、パイプ、管、線材、積層品、レンガ、石、サイジング、壁もしくは天井パネル、床材、キャビネット、建物外面、ビルディングラップ、壁紙、塗料、柿板(shingles)、屋根ふき材、骨組みなどを挙げることができる。代替の建造技術の使用およびそのような物品もまた挙げられ、麦束建築、泥もしくは日干しレンガ建築、レンガもしくは石材建築、金属容器建造などである。
【0051】
電子および電気物品、例えば導体、ヒートシンク、半導体、トランジスタ、集積回路、線材、スイッチ、キャパシタ、抵抗、ダイオード、基板、被覆、モーター、エンジンなど。
【0052】
上記の物品を組み込んだ、自動車、重機、トラック輸送、食品/飲料配送、化粧品、行政事務、農業、狩猟/漁業、製造業などの産業で用いるための物品。
【0053】
化粧品、例えばクリーム、ローション、シャンプー、コンディショナー、ボディーソープ、セッケン、ヘアジェル、ムース、リップスティック、防臭剤、モイスチャーライザー、マニキュア液、グロス、化粧品(makeup)、アイライナー/アイシャドウ、ファンデーション、ハケ、マスカラなど。
【0054】
FP−PCMが一方の相にある場合に障壁を形成し、そして他方の相にある場合に移動を可能とする、放出制御物品。この障壁は、FP−PCM結晶性ドメインマトリックスもしくは物質間の物理的層の内部などへの物質の捕捉による可能性がある。障壁特性を変化させるこの相転換は、エネルギー、例えば、光、UV、IR、熱、熱的、プラズマ、音、マイクロ波、電波、圧力、X線、ガンマまたはいずれかの形態の輻射もしくはエネルギーなどによって誘発される可能性がある。この障壁は、物質、色もしくはエネルギーなどの、移動または放出を抑止することができる。更なる例としては、液体材料に対する障壁、または光もしくは色のブロッキング/ブロッキングの除去、種々の温度における剛性もしくは可撓性の変化などがある。更なる例としては、触媒、化学反応制御剤(反応の増加もしくは減少)、接着力、酵素、染料、色素、光および/もしくは温度に対する安定剤、ナノ粒子もしくは微粒子、温度もしくはにせ物マーカーなどの封じ込め/放出がある。
【0055】
更に、FP−PCMは、以下の本願と同一譲受人の特許中に概説されているように、物品中に組み込むことができる。コーティングについては、例えば、米国特許第5,366,801号明細書、可逆的な高い熱的特性を備えた布帛(Fabric with Reversible Enhanced Thermal Properties);米国特許第6,207,738号明細書、エネルギー吸収相転移材料を含む布帛コーティング組成物(Fabric Coating Composition Containing Energy Absorbing Phase Change Material);米国特許第6,503,976号明細書、エネルギー吸収相転移材料を含む布帛コーティング組成物およびその製造方法(Fabric Coating Composition Containing Energy Absorbing Phase Change Material and Method of Manufacturing Same);米国特許第6,660,667号明細書、エネルギー吸収相転移材料を含む布帛コーティングおよびその製造方法(Fabric Coating Containing Energy Absorbing Phase Change Material and Method of Manufacturing Same);米国特許第7,135,424号明細書、高い可逆性の熱的性質を有し、そして向上した可撓性、柔軟性、空気透過率、または水蒸気移動特性を示すコーティングされた物品(Coated Articles Having Enhanced Reversible Thermal Properties and Exhibiting Improved Flexibility, Softness, Air Permeability, or Water Vapor Transport Properties);米国特許出願第11/342,279号明細書、反応性官能基を備えたマイクロカプセルで作られたコーティングされた物品(Coated Articles Formed of Microcapsules with Reactive Functional Groups)中に。
【0056】
繊維については、例えば、米国特許第4,756,958号明細書、可逆性の高い蓄熱特性を備えた繊維およびそれから作られた布帛(Fiber with Reversible Enhanced Thermal Storage Properties and Fabrics Made Therefrom);米国特許第6,855,422号明細書、可逆的な熱的特性を有する多成分繊維(Multi-Component Fibers Having Reversible Thermal Properties);米国特許第7,241,497号明細書、可逆性の熱的性質を有する多成分繊維(Multi-Component Fibers Having Reversible Thermal Properties);米国特許第7,160,612号明細書、可逆性の熱的性質を有する多成分繊維(Multi-Component Fibers Having Reversible Thermal Properties);米国特許第7,244,497号明細書、高い可逆性の熱的性質を有するセルロース繊維およびその製造方法(Cellulosic Fibers Having Enhanced Reversible Thermal Properties and Methods of Forming Thereof)中に。
【0057】
繊維、積層体、押出成形シート/フィルムまたは成形製品については、例えば、米国特許第6,793,85号明細書、高い可逆性の熱的特性を有する溶融紡糸可能な濃縮ペレット(Melt Spinable Concentrate Pellets Having Enhanced Reversible Thermal Properties);米国特許出願第11/078,656号明細書、高い可逆性の熱的特性を有するポリマー複合材およびその製造方法(Polymeric composites having enhanced reversible thermal properties and methods of forming thereof);国際特許出願第PCT/US07/71373号明細書、マイクロカプセルを含む安定な懸濁液およびその製造方法(Stable Suspensions Containing Microcapsules and Methods for Preparation Thereof)中に。
【0058】
これらの態様および物品は、温度調整、温度緩衝、温度制御もしくは融解の潜熱が用いられるか、またはいずれかの相転移現象が用いられるいずれかの用途中で用いることができる。これらの用途は、親水性、疎水性、吸湿、放湿、有機物質吸収もしくは放出、無機物質吸収もしくは放出、架橋、殺菌、抗真菌、抗菌、生分解、分解、防臭、悪臭防止、臭気放出、耐グリースおよび耐汚れ、酸化および経時変化に対する安定性、難燃、シワ防止、高い剛性もしくは可撓性、UVもしくはIR遮蔽、耐衝撃もしくは衝撃抑制、色付加、色変化、色制御、触媒もしくは反応制御、音、光、光学的、静電気もしくはエネルギー管理、表面張力、表面平滑性、または表面特性制御、にせ物防止(anti-fraud)もしくはブランドマーク管理、制御された放出/封じ込め、あるいは制御された障壁特性などと関連して用いることができ、または関連して用いなくてもよい。
【0059】
他の態様によれば、ここに記載した物品の製造のための、FP−PCMを準備すること、基材を準備すること、およびFP−PCMと基材とを組み合わせることを含む方法が提供される。1つの態様によれば、この基材は、少なくとも1種の反応性基を有しており、そしてこの組み合わせることは、FP−PCMの反応性基を基材の官能基と化学的に反応させることを含んでいる。
【0060】
他の態様によれば、物品の製造のための前駆体が提供され、この前駆体は、官能性ポリマー相転移材料と少なくとも1種の他の成分を含んでいる。
【0061】
他の態様によれば、この物品の製造のための方法は、前駆体を準備すること、基材を準備すること、そして前駆体のFP−PCMと基材とを結合させること、を含んでいる。この基材は、少なくとも1つの反応性基を有していることができる。前駆体のFP−PCMと基材とを結合させることには、FP−PCMの官能基を、基材の官能基と化学的に反応させることを含んでいる。
【0062】
基材を形成する材料の選択は、種々の事項、例えばFP−PCMへのその親和性、伝熱を低下もしくは排除するその能力、その通気性、そのドレープ適性、その可撓性、その柔軟性、その吸水性、そのフィルム形成能力、周囲条件もしくは加工条件下でのその耐分解性、およびその機械的強度、に依存する可能性がある。特に、実施態様によっては、基材を形成する材料は、一連の官能基、例えば酸無水物、アルデヒド基、アミノ基、N−置換アミノ基、カルボニル基、カルボキシ基、エポキシ基、エステル基、エーテル基、グリシジル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、チオール基、ジスルフィド基、シリル基、グリオキサールを基にした基、アジリジンを基にした基、活性メチレン化合物もしくは他のb−ジカルボニル化合物(例えば、2,4−ペンタジオン、マロン酸、アセチルアセトン、エチルアセトンアセテート、マロナミド、アセトアセタミドおよびそのメチル類似体、エチルアセトアセテート、およびイソプロピルアセトアセテート)を基にした基、またはそれらの組合せを含むように選択することができる。これらの官能基の少なくとも一部は、基材の表面上に露出されていることができ、そして態様もしくは添加剤中に含まれる一連の相補的な官能基と化学的に結合することを可能にして、それによって加工中または使用の間の物品の耐久性を高める。従って、例えば、基材はセルロースで形成することができ、そして一連のヒドロキシ基を含むことができ、これらのヒドロキシル基はFP−PCM中に含まれる一連のカルボキシ基に化学的に結合することができる。他の例としては、基材はタンパク質材料であることができ、そして絹もしくは羊毛で形成されていることができ、そして一連のアミノ基を含むことができ、これらのアミノ基は、FP−PCM中に含まれるこれらのカルボキシ基と化学的に結合することができる。理解することができるように、一対の官能基間の化学結合は、他の官能基、例えばアミド基、エスエル基、エーテル基、尿素基、またはウレタン基、の形成をもたらすことができる。従って、例えば、ヒドロキシ基とカルボキシ基の間の化学結合は、エステル基の形成をもたらすことができ、一方で、アミノ基とカルボキシ基の間の化学結合は、アミド基の形成をもたらすことができる。
【0063】
態様によっては、基材を形成する材料は、最初には一連の官能基がなく、しかしながら後に改質されてこれらの官能基を含むようになることができる。特に、基材は、一方は一連の官能基がなく、そして他方はこれらの官能基を含んでいる、異なる材料の組合せによって形成されてもよい。これらの異なる材料は、均一に混合されていてもよく、または別々の部分もしくは別々の副層で一体化されていてもよい。例えば、基材はポリエステル繊維を、特定の量(例えば、25質量%以上)の一連の官能基を含む綿もしくは羊毛繊維と組み合わせることによって形成することができる。このポリエステル繊維は、外側の副層中に組み込むことができ、一方で、綿もしくは羊毛繊維は、他の層に隣接する内側の副層中に組み込むことができる。他の例としては、基材を形成する材料は、一連の官能基を含むように、化学的に改質されていてもよい。化学的な改質は、いずれかの好適な技術を用いて、例えば、酸化剤、コロナ処理またはプラズマ処理を用いて行なうことができる。また、化学的改質は、Kanazawaの、標題が「活性化されたポリマー材料の親水性ポリマー処理およびその使用(Hydrophilic Polymer Treatment of an Activated Polymeric Material and Use Thereof)」である米国特許第6,830,782号明細書中に記載されたように行なうこともでき、その開示の全てをここに参照することによって本明細書に一部とする。例によっては、基材を形成する材料は、一連の官能基を含むモノマーと反応することができるラジカルを形成するように処理されてもよい。このようなモノマーの例としては、無水物基を備えたもの(例えば、マレイン酸無水物)、カルボキシ基を備えたもの(例えば、アクリル酸)、ヒドロキシ基を備えたもの(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート)、およびエポキシもしくはグリシジル基を備えたもの(例えば、グリシジルメタクリレート)が挙げられる。他の例では、基材を形成する材料は、一連の官能性材料で処理されて、一連の官能基を付加することができ、更に所望の水分管理特性を与えることができる。これらの官能性材料としては、親水性ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリグリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、親水性ポリエステル、およびそれらの共重合体が挙げられる。例えば、これらの官能性材料は、繊維製造過程の間、繊維染色過程の間、または繊維仕上げ過程の間、に付加することができる。あるいは、もしくは同時に、これらの官能性材料は、吸尽染色、パッド染色または液流染色を通して繊維に組み込むことができる。
【0064】
FP−PCMは、基材に隣接して、基材上に、もしくは基材内部に形成される、コーティング、積層体、含浸(infusion)、処理、またはコーティング、積層体、含浸(infusion)、処理における成分として、いずれかの好適なコーティング、積層、含浸(infusion)などの技術を用いて、与えることができる。使用の間に、FP−PCMは、内部の区画または個人の皮膚に隣接するように配置することができ、従って内部コーティングとしての役割をすることができる。また、FP−PCMは、外部の環境に露出されて、従って外側のコーティングとしての役割をするように配置することができると考えられる。FP−PCMは、基材の少なくとも一部を覆っている。基材または用いられる特定のコーティング技術の特徴によって、FP−PCMは、基材の最上表面の下に浸透することができ、そして基材の少なくとも一部に浸透することができる。2つの層が記載されているが、この物品は、他の態様では、より多くの、またはより少ない層を含むことができると考えられる。特に、第3の層が、基材の底面の少なくとも一部を覆うように含まれていてよいことが考えられる。このような第3の層は、FP−PCMと同様の形式で与えることができ、または異なる機能性、例えば撥水性、耐汚染性、剛性、耐衝撃性など、を与えるように他の形式で与えることができる。
【0065】
1つの態様では、FP−PCMはバインダーと混合され、バインダーはまた、バインダー中に分散された一連のマイクロカプセルを含んでいてもよい。このバインダーは、マトリックスとしての役割をするいずれかの好適な材料であることができ、このマトリックス中にFP−PCMおよびおそらくはまたマイクロカプセルが分散しており、そうして加工条件に対して、または使用の間の磨耗(abrasion)もしくは磨耗(wear)に対して、FP−PCMにある程度の保護を与える。例えば、バインダーは、特定のコーティング、積層、または接着技術において用いられるポリマーもしくはいずれかの他の好適な媒体であることができる。態様によっては、バインダーは、好ましくは約−110℃〜約100℃、より好ましくは約−110℃〜約40℃の範囲のガラス転移温度を有するポリマーである。水溶性もしくは水分散性のポリマーが特に好ましい可能性がある一方で、水不溶性もしくは、僅かに水溶性であるポリマーもまた、特定の態様でのバインダーとして用いることができる。
【0066】
バインダーの選択は、種々の事項、例えばFP−PCMおよび/またはマイクロカプセルまたは基材へのその親和性、熱移動を低減もしくは排除するその能力、その通気性、そのドレープ性、その可撓性、その柔軟性、その吸水性、そのコーティング形成能力、周囲もしくは加工条件下での分解へのその耐久性、およびその機械的強度による可能性がある。特に、態様によっては、バインダーは、一連の官能基、例えば、酸無水物基、アミノ基およびそれらの塩、N−置換アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシ基およびそれらの塩、シクロへキシルエポキシ基、エポキシ基、グリシジル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、尿素基、アルデヒド基、エステル基、エーテル基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、ジスルフィド基、シリルもしくはシラン基、グリオキサールを基にした基、アジリジンを基にした基、活性メチレン化合物もしくは他のb−ジカルボニル化合物(例えば、2,4−ペンタジオン、マロン酸、アセチルアセトン、エチルアセトンアセテート、マロナミド、アセトアセタミドおよびそのメチル類似体、エチルアセトアセテート、およびイソプロピルアセトアセテート)を基にした基、ハロ基、ハライド、または他の極性もしくはH結合基、およびそれらの組合せ、を含むように選択することができる。
【0067】
これらの官能基は、FP−PCM、マイクロカプセルまたは基材のいずれか、もしくはいずれにも含まれている一連の相補的官能基と化学的に結合してもよく、それによって物品の、加工の間もしくは使用の間の耐久性を高める。従って、例えば、バインダーは一連のエポキシ基を含んだポリマーであることができ、このエポキシ基はFP−PCMおよび/またはマイクロカプセル中に含まれる一連のカルボキシ基に化学的に結合することができる。他の例としては、バインダーは、一連のイソシアネート基もしくは一連のアミノ基を含むポリマーであることができ、これらの基は、FP−PCM、マイクロカプセルまたは基材中に含まれるこれらのカルボキシ基と化学的に結合することができる。
【0068】
例によっては、コーティング組成物を形成する場合に、一連の触媒を加えることができる。そのような触媒は、相補的官能基の間の、例えばバインダー中に含まれる官能基とマイクロカプセル中に含まれる官能基の間の、化学的結合を促進することができる。触媒として用いることができる材料の例としては、ホウ素塩、次亜リン酸塩(例えば、次亜リン酸アンモニウムおよび次亜リン酸ナトリウム)、リン酸塩、スズ塩(例えば、Sn+2またはSn+4の塩、例えば、ジブチルスズジラウレートおよびジブチルスズジアセテート)、および亜鉛塩(例えば、Zn+2の塩)が挙げられる。このコーティング組成物に加えるスズ塩または亜鉛塩の望ましい量は、乾燥質量で、約0.001〜約1.0質量%、例えば乾燥質量で約0.01〜約0.1質量%の範囲であることができる。このコーティング組成物に加えるホウ素塩またはリン酸塩の望ましい量は、乾燥質量で約0.1〜約5質量%、例えば乾燥質量で約1〜約3質量%の範囲であることができる。触媒として用いることができる材料の他の例としては、アルキル化金属、金属塩、ハロゲン化金属、および金属酸化物が挙げられ、好適な金属としては、Sn、Zn、Ti、Zr、Mn、Mg、B、Al、Cu、Ni、Sb、Bi、Pt、Ca、およびBaが挙げられる。有機酸および塩基、例えば硫黄(例えば、硫黄の)、窒素(例えば、窒素の)、リン(例えば、リンの)、またはハロゲン化物(例えば、F、Cl、BrおよびI)を基にするものもまたは触媒として用いることができる。触媒として用いることができる材料の更なる例としては、酸、例えばクエン酸、イタコン酸、乳酸、フマル酸およびギ酸が挙げられる。
【0069】
基材、官能性相転移材料、バインダーおよび/またはマイクロカプセルの間の結合は、種々の態様によって、共有結合、イオン結合またはそれらの種々の組合せである。結合は、直接または間接、例えば結合化合物を経由したものでもよい。態様によっては、結合化合物は、官能性ポリマー相転移材料およびマイクロカプセルからなる群から選ばれる。他の態様によれば、官能性ポリマー相転移材料は、第2のPCMの少なくとも一部に対するバインダーを形成する。
【0070】
他の態様によれば、FP−PCMの反応性基は、特定の基材との反応により好適である他の反応性基に転換されてもよい。
【0071】
他の態様によれば、FP−PCMの反応性基は、種々の化学的性質のものであることができる。例えば、種々の基材、例えば、綿、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびそのような材料から作られた繊維製品と、反応する、または共有結合もしくはイオン結合を形成することができる反応性基。
【0072】
本発明の他の態様によれば、反応性基は、以下の、1)グリシジルまたはエポキシ、例えばグリシジルメタクリレートもしくはグリシジルビニルエーテル由来のもの、2)無水物、例えばマレイン酸無水物もしくはイタコン酸無水物由来のもの、3)イソシアネート、例えばイソシアネートメタクリレート、Cytec Ind.のTMI(登録商標)もしくはブロックトイソシアネート、例えば2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチルメタクリレート、4)アミノまたはアミン−ホルムアルデヒド、例えばN−メチロールアクリルアミド由来のもの、および5)シラン、例えばメタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン由来のもの、のいずれかであることができる。このような反応性基は、セルロース系の繊維製品、例えば綿のOH官能基と、タンパク質系繊維製品、例えば羊毛、毛皮もしくは革のアミン官能基と、ポリエステル系繊維製品のヒドロキシルもしくはカルボキシル基と、ならびにナイロン官能性樹脂のアミド官能基と反応することができる。
【0073】
本発明の更なる他の態様によれば、反応性基は、他の二重結合と結合して架橋点などを与えることができる二重結合である。
【0074】
FP−PCMの反応性基は、正電荷であると考えることができ、そして基材上の負電荷とイオン結合で結合することができる。他の態様では、反応性基は負電荷であると考えることができ、基材上の正電荷とイオン結合で結合することができる。他の態様では、基材ならびにFP−PCMおよび/またはマイクロカプセルの両方の反応性基は、負に荷電しており、そして結合は、多価のカチオンを経由していて、これが架橋剤として作用する。更に他の態様では、基材ならびにFP−PCMおよび/またはマイクロカプセルの両方の反応性基は、正に荷電しており、そして結合は、多価のアニオンを経由していて、これが架橋剤として作用する。架橋性の多価カチオン、アニオンまたはその両方は、有機もしくは無機であることができる。
【0075】
本発明の種々の態様によって構成された物品は、単一の相転移温度有していることができ、または、例えばFP-PCMが複数の種類の結晶性部分を有している場合や、もしくはその物品が異なる種類のFP−PCMを含んでいる場合には、複数の相転移温度を有していることができる。本発明の態様によって構成された物品は、−10℃〜100℃の範囲、好ましくは10℃〜60℃の範囲に少なくとも1つの相転移温度、および少なくとも2.0ジュール/グラム(J/g)、または10J/m2の相転移エネルギーを有している。他の態様によれば、官能性ポリマー相転移材料は、親水性の結晶性部分、疎水性の結晶性部分またはそれらの両方を含んでいる。例としては、ポリステアリルメタクリレートとポリエチレングリコールメタクリレートなどのセグメントで作られたABブロック共重合体は、2つの異なる相転移温度および親水性/疎水性を有するであろう。疎水性のステアリル結晶性側鎖由来の一方の相転移温度および親水性のグリコール結晶性側鎖由来の他方の相転移温度である。
【0076】
それぞれの温度における相転移は、それら自体のエンタルピーを有しており、そのためその物品は、態様によっては、単一の相転移エンタルピーを、そして他の態様によれば、複数の相転移エンタルピーを有している。本発明の態様によれば、物品は、少なくとも2.0ジュール/グラム(J/g)または10J/m2の総相転移エンタルピーを有している。
【0077】
他の態様によれば、本発明は、第2の態様による物品の製造のための前駆体を提供し、この前駆体は官能性ポリマー相転移材料および少なくとも1種の他の成分を含んでいる。この1種の他の成分は、有機溶媒、水性溶媒、他のFP−PCM、他のPCM、PCMを含むマイクロカプセル、他の添加剤を備えたマイクロカプセル、バインダー、架橋剤、ブレンド用ポリマー、相溶化剤、湿潤剤、触媒および添加剤、ならびにそれらの組合せからなる群から選ばれる。前駆体の例としては、基材のコーティング、染色、浸漬、噴霧、刷毛塗、パディング、捺染などに用いられる製剤、製造ラインへの添加、例えば紡糸ラインの繊維紡糸原液中への注入のためのFP−PCMの前分散体、着色および色彩製剤、添加剤マスターバッチもしくは分散体、中和もしくはpH調整溶液、溶融防止繊維、成形部品、フィルム、シートもしくは積層製品の押出および製造のためのプラスチックペレットまたはマスターバッチの製剤がある。これらは、上記で引用し、また包含した、アウトラストの特許および出願中に記載されている。
【0078】
他の態様によれば、前駆体を準備すること、基材を準備すること、そして前駆体のFP−PCMを基材と結合させることを含む物品の製造のための方法が提供される。この基材は、好ましくは少なくとも1つの反応性基を含み、そして前駆体のFP−PCMを基材と結合させることは、FP−PCMの官能基を基材の官能基と化学的に反応させることを含んでいる。
【0079】
バインダーおよび架橋剤の更なる例としては、ポリマー、オリゴマーまたは複数の反応性官能基を備えた分子があり、それらは同じ種類の他のもの、他のFP−PCM、他のPCM、PCMを含むマイクロカプセル、他の添加剤を備えたマイクロカプセル、バインダー、架橋剤、ブレンド用ポリマー、相溶化剤、湿潤剤、添加剤などと、相互作用または結合することができる。この結合または相互作用は、共有結合またはイオン結合のいずれかであることができる。
【0080】
また、態様によっては、一連の反応性成分または改質剤を、組成物を作る時に加えてもよい。このような改質剤は、FP−PCMおよび/またはバインダーの架橋を可能として、向上した特性、例えば耐久性および他の特性を与えることができる。改質剤として用いることができる材料の例としては、ポリマー、例えばメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリ無水物、ウレタン、エポキシド、酸類、ポリ尿素、ポリアミンまたは複数の反応性官能基を備えたいずれかの化合物を挙げることができる。コーティング組成物に加えることができる改質剤の望ましい量は、乾燥質量で約1〜約20質量%、例えば乾燥質量で約1〜約5質量%の範囲であることができる。また、一連の添加剤を、組成物を作る時に加えることができる。例によっては、これらの添加剤は、マイクロカプセルの内部に含まれていてもよい。添加剤の例としては、吸水性、水吸い上げ能力、撥水性、耐汚染性(stain resistance)、耐汚染性(dirt resistance)、および防臭性を向上させるものが挙げられる。添加剤の更なる例としては、抗菌剤、防炎剤、界面活性剤、分散剤および増粘剤が挙げられる。添加剤および改質剤の更なる例を、以下に説明する。
【0081】
水分管理、親水性および極性材料−例えば、酸、グリコール、塩、ヒドロキシ基含有物質(例えば、天然広ロキシ基含有物質)、エーテル、エステル、アミン、アミド、イミン、ウレタン、スルホン、スルフィド、天然サッカリド、セルロース、糖およびタンパク質を含む、または基にしたもの。
【0082】
耐グリース、耐汚染(dirt)および耐汚染(stain)性−例えば、非官能性、非極性、および疎水性材料、例えばフッ化化合物、ケイ素含有化合物、炭水化物、ポリオレフィン、および脂肪酸。
【0083】
殺菌(Anti-microbial)、抗真菌(Anti-fungal)、抗菌(Anti-bacterial)性−例えば、金属(例えば、銀、亜鉛および銅)系の錯化金属化合物で活性酵素中心に抑制をもたらすもの、銅および銅含有材料(例えば、Cu+2およびCu+の塩)、例えばCupron Ind.から供給されるもの、銀および銀含有材料およびモノマー(例えば、Ag、Ag+、およびAg+2の塩)、例えばThomson Research Assoc. Inc.からULTRA-FRESHとして、およびClariant Corp.によってSANITIZED Silver and Zincとして供給されるもの、酸化剤、例えば、細胞膜を攻撃するアルデヒド、ハロゲンおよびペルオキシ化合物を含む、もしくは基にするもの(例えば、Vanson HaloSource Inc.からHALOSHIELDとして供給される)、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル(例えば、TRICLOSANとして供給される)(これは微生物の細胞膜に浸透および崩壊させる電気化学的な様式の作用を用いることによって、微生物の成長を阻害する)、第四級アンモニウム化合物、ビグアニド、アミン、およびグルコプロタミン(例えば、Aegis Environmentsによって、または、Clariant Corp.によってSANITIZED QUAT T99-19として供給される第四級アンモニウムシラン、およびAvecia Inc.によってPURISTAとして供給されるビグアニド)、ウンデシレン酸またはウンデシノールを基にしたキトサンひまし油誘導体(例えば、ウンデシレノキシポリエチレングリコールアクリレートもしくはメタクリレート)。
【0084】
態様によっては、これらの層は、乾燥質量で約1〜約100質量%、最も好ましくは約10質量%〜約75質量%の範囲の、FP−PCM単独での、またはマイクロカプセルと組み合わせての充填量を有することができる。これらのFP−PCM、バインダー、添加剤およびマイクロカプセルは、例えば、室温で液体もしくは固体であり、異なる形状または大きさを有していることによって、異なる材料で形成された殻を含んでいるか、または異なる官能基を含んでいることによって、あるいは異なる相転移材料を含んでいることによって、あるいはそれらの組み合わせで、互いに異なっているか、または同じであることができる。
【0085】
他の態様によれば、物品は基材およびデンプンもしくは改質デンプンを含んでいる。デンプンはポリマーであり、主にグルコースであり、結晶性部分を有していて、そしてヒドロキシル基を有している。例えば、デンプンは、本発明の態様によって構成された物品に用いられるFP−PCMとして好適である。大抵の場合において、デンプンは直鎖および分岐鎖の両方からなっている。異なるデンプンは、例えば、標準的な示差走査熱量(DSC)分析で見出されるような、種々の程度の結晶部分を含んでいる。結晶性部分は、分岐したデンプン上の整列した側鎖からなっている。温度と上昇は、場合によっては増加した水分と組み合わさって、脱結晶化をもたらす(これは、しばしばゼラチン化と称される)。低い温度(および水分)では、再結晶が起こる。デンプンは親水性であり、そして例えば、またFP−PCMの温度調整容量の拡大およびFP−PCMの回復の両方を提供する。デンプンおよびその誘導体ならびに他のいずれかの親水性FP−PCMを用いることの他の特徴は、その水分含量を調整することによる、その転移温度を調整する能力である。典型的には、水分量が高くなればなるほど、転移温度は低下する。
【0086】
本発明の種々の態様によれば、種々の天然デンプンを用いることができ、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンおよび小麦デンプンが挙げられるが、これらには限定されない。他の態様によれば、改質デンプン、例えば、本発明の物品用に特に改質されたデンプンまたは商業的に入手可能な改質デンプンを用いることができる。更なる態様によれば、このような改質デンプンは、その分子量を低下させる酸加水分解の結果(例えば、酸低粘調化(acid thinning))および/またはアミラーゼもしくはアミロペクチンの1つの中での濃縮化のためのその断片の分離の結果である。他の態様によれば、FP−PCMとして用いることができるデンプンは、新しい反応性基を付加することにより化学的に改質される。種々の他の態様によれば、化学的に改質されたデンプンは、食品工業、製紙工業およびその他のために調製された、商業的に入手可能な、化学的に改質されたデンプン、例えば、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酢酸デンプン、リン酸デンプン、デンプン、カチオン性デンプン、アニオン性デンプンおよびそれらの組合せから選択される。改質デンプンおよびそれらの製造方法が、Corn Chemistry and Technology、WatsonおよびRamstad編、American Association of Cereal Chemists Inc.発行、の第16章中に記載されており、その教示をここに参照することによって本明細書の内容とする。
【0087】
1つの態様によれば、デンプンもしくは改質デンプンは、共有結合を介して基材と結合する。他の態様によれば、デンプンはイオン結合を介して結合する。種々の他の態様によれば、共有結合したデンプンは、天然デンプン、低粘度化(thinned)デンプン、アミラーゼ−濃縮デンプン、アミロペクチン濃縮デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酢酸デンプン、リン酸デンプン、カチオン性デンプン、アニオン性デンプン、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる。他の態様によれば、イオン結合したデンプンが、酢酸デンプン、リン酸デンプン、デンプン、カチオン性デンプン、アニオン性デンプン、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0088】
本発明の1つの態様によって構成された物品は、基材ならびに、ゼラチン、ゼラチン溶液、および改質ゼラチンの少なくとも1種を含んでいる。ゼラチンは、主にグリシン−X−Y−トリプレットの繰り返しシーケンスを含んでおり、XとYはしばしばプロリンおよびヒドロキシプロリンアミノ酸である。これらのシーケンスは、ゼラチンの三重螺旋構造および熱的に、そして可逆的にゲルを形成するそれらの能力の原因である。
【0089】
これらの相転移構造の形成は、分子量、分子構造、分岐度、コラーゲンからのゼラチン抽出プロセス、コラーゲンの天然供給源、温度、pH、イオン濃度、架橋、反応性基、反応性基改質、イミノ酸の存在、純度、溶液濃度などに大きく依存する。
【0090】
ゼラチンは、Eldridge, J.E.、Ferry, J.D.、"Studies of the Cross- Linking Process in Gelatin Gels. III. Dependence of Melting Point on Concentration and Molecular Weight":、Journal of Physical Chemistry、1954年、第58巻、p.992〜995中に概説されているように、潜熱特性を与えることができる。
【0091】
ゼラチンは、多くの化合物、上記の詳細な説明中に概説されている架橋剤および改質剤などとの反応および架橋によって、容易に改質することができる。架橋剤、例えばアルデヒド、とりわけホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドを用いることができる。イソシアネートおよび無水物を、ゼラチンの性質の改質および基材に結合するための反応性官能基の付与の両方のために用いることができる。
【0092】
ゼラチンは、親水性であり、そして例えばまた、FP−PCMの温度調整容量を拡大し、またFP−PCMの回復の両方を提供する。ゼラチンとその誘導体、ならびにいずれかの他の親水性FP−PCMを用いる他の重要な特徴は、水分含量およびポリマー構造、すなわち分子量を調整することによってその転移温度を調整する能力である。
【0093】
1つの態様によれば、物品においては、ゼラチンまたは改質ゼラチンは、共有結合もしくはイオン結合で基材と結合している。種々の態様によれば、ゼラチンは基材内部に含まれる溶液の形態で存在することができる。
【0094】
図1および2は、本発明の種々の態様によって構成された物品によって用いられるFP−PCMの概略図である。両者は、主鎖および側鎖で構成されている。図1中のFP−PCMは、長鎖アルキルポリアクリレートもしくはポリメタクリレートを表し、図1A〜1Cでは、1Aは長鎖アルキルビニルエステルであり、1Bは長鎖ビニルエーテルであり、そして1Cは長鎖アルキルオレフィンである。
【0095】
図2Aおよび2Bは、長鎖グリコールポリアクリレートもしくはポリメタクリレートを表し、ここで2Aは長鎖グリコールビニルエステル、そして2Bは長鎖グリコールビニルエーテルである。
【0096】
図1および2中で、Rは、上記の1種もしくは2種以上の反応性基を表している。これらの図中で、官能基は主鎖に沿って描かれているが、これは1つの選択肢に過ぎない。上記のように、官能基は主鎖の末端に、側鎖上に、およびそれらのいずれかの組合せでもまた配置することができる。それぞれのPF−PCMは、単一のまたは複数の反応性基を有することができる。また、FP−PCMは、同一の化学的性質の複数の反応性基、または異なる化学的性質の反応性基の組合せを有することができる。
【0097】
図5A〜5Fを参照すると、図5Aは、塩基性もしくは高pHアミノ官能性基材とイオン的に相互作用している酸性もしくは低pHカルボキシル官能性FP−PCMを描いている。図5Bは、酸性もしくは低pHカルボキシル官能性基材とイオン的に相互作用している塩基性もしくは高pHアミノ官能性FP−PCMを描いている。図5Cは、中和され、そしてアニオン、例えばアミンで結合もしくは「架橋された」、塩基性もしくは高pHアミノ官能性FP−PCMおよび塩基性もしくは高pHアミノ官能性基材を描いている。図5Dは、中和され、そしてカチオン、例えば金属塩でイオン的に結合または「架橋された」、酸性もしくは低pHカルボキシル官能性FP−PCMおよび酸性もしくは低pHカルボキシル官能性基材を描いている。図5Eは、中和され、そして負に荷電された有機化合物、例えばジカルボキ官能性ポリマーまたはジカルボキシ官能性FP−PCMでイオン的に結合もしくは「架橋された」、塩基性もしくは高pHアミノ官能性FP−PCMおよび塩基性もしくは高pHアミノ官能性基材を描いている。図5Fは、中和され、そして正に荷電した有機化合物、例えばジアミン官能性ポリマーまたはジアミン官能性FP−PCMでイオン的に結合もしくは「架橋された」、酸性もしくは低pHカルボキシル官能性FP−PCMおよび酸性もしくは低pHカルボキシル官能性基材を描いている。
【0098】
図6A〜6Dを参照すると、図6AはFP−PCMエポキシとセルロース基材上のヒドロキシルとの反応に由来する共有エーテル結合を描いている。図6Bは、FP−PCMイソシアネートとタンパク質基材、例えば羊毛もしくは絹のアミンとの反応に由来する共有尿素結合を描いている。図6Cは、側鎖末端上のFP−PCMイソシアネートとセルロース基材のヒドロキシルとの反応に由来する共有ウレタン結合を描いている。図6Dは、アミン基、FP−PCM、多官能性イソシアネート架橋剤/バインダーとセルロース基材のヒドロキシル基との反応に由来する共有尿素およびウレタン結合を描いている。
【実施例】
【0099】
<例>
以下の例は、上記の具体的な特徴を通して作ることができる種々の組合せおよび態様の代表的例を提供するものであり、特許請求の範囲について限定的であることを意図したものではない。更に、以下に与えられた例は、全ての開示および説明によってより適切に捉えられる主題の完全性を、限定しないことが意図されている。本明細書の記載は、前述の要素のいずれかの組合せのための主題の開示としての役割をすることが意図されている。
【0100】
例1:ポリグリシジルメタクリレートの調製
攪拌機、コンデンサー、窒素パージおよび温度コントローラーを備えたフラスコ中で反応させた。
原料 質量
1)n-フェニルプロピオネート(Dow Chemical, Midland MI) 37.6
2)グリシジルメタクリレート (Dow Chemical, Midland MI) 85.5
3)ジ-t-アミルペルオキシド(Sigma- Aldrich Corp. Milwaukee WI) 5.4
4)ジ-t-アミルペルオキシド(Sigma-Aldrich Corp. Milwaukee WI) 0.2
【0101】
1番を、このフラスコへ加えて、窒素下で152℃に加熱した。2番および3番を混合して、5.5時間に亘ってゆっくりと反応フラスコに加えた。これを更に0.5時間反応させ、次いで4番を加えて、1.0時間反応させ、次いで冷却して、ポリグリシジルメタクリレートの69.4%溶液を得た。この溶液を、強制空気乾燥器中で、120℃で4時間乾燥させて、100%の乾燥したポリグリシジルメタクリレートを得た。
【0102】
例2:ポリマーPCMの調製
攪拌機、コンデンサー、窒素パージおよび温度コントローラーを備えたフラスコ中で反応させた。
原料 質量 官能基当量
1)95%パルミチン酸 36.15 0.141
2)上記例1の乾燥ポリGMA 20.06 0.141
【0103】
1番をこのフラスコへ加えて、窒素下で130℃に加熱した。2番を、0.5時間に亘ってゆっくりと反応フラスコに加えた。これを更に3.0時間反応させて、次いで冷却して、38.5℃の融点および63.1J/gの潜熱を有するポリマーPCMを得た。
【0104】
例3:ポリマーPCMの調製
攪拌機、コンデンサー、窒素パージおよび温度コントローラーを備えたフラスコ中で反応させた。
原料 質量 官能基当量
1)95%ミリスチン酸 34.67 0.152
2)上記例1の乾燥ポリGMA 21.60 0.152
【0105】
1番をこのフラスコへ加えて、窒素下で130℃に加熱した。2番を、0.5時間に亘ってゆっくりと反応フラスコに加えた。これを更に3.0時間反応させて、次いで冷却して、16.1℃の融点および29.8J/gの潜熱を有するポリマーPCMを得た。
【0106】
例4:ポリステアリルメタクリレートポリマーPCMの調製
攪拌機、コンデンサー、窒素パージおよび温度コントローラーを備えたフラスコ中で反応させた。
原料 質量
1)n-ペンチルプロピオネート(Dow Chemical, Midland MI) 36.1
2)SR324 ステアリルメタクリレート(Sartomer Co., Exton PA) 94.0
3)グリシジルメタクリレート(Dow Chemical, Midland MI) 6.0
4)ジ-t-アミルペルオキシド(Sigma-Aldrich Corp. Milwaukee WI) 2.7
5)ジ-t-アミルペルオキシド(Sigma-Aldrich Corp. Milwaukee WI) 0.5
【0107】
1番を、このフラスコへ加えて、窒素下で152℃に加熱した。2番、3番および4番を混合して、3.5時間に亘ってゆっくりと反応フラスコに加えた。これを更に1.0時間反応させ、次いで5番を加えて、1.5時間反応させ、次いで冷却して、31.1℃の融点および83.8J/gの潜熱を備えた、ポリステアリルメタクリレート−コ−グリシジルメタクリレートの69.7%溶液を得た。
【0108】
例5:向上した潜熱容量を備えた、洗浄耐久性の温度調整繊維製品の調製
【0109】
糊抜きをした、漂白していない、染色していない綿布帛を、ポリマーPCMの溶液中に、更なる架橋剤もしくは定着剤あり、およびなしで、浸漬することによって処理した。この浸漬した布帛を、次いで過剰の溶液を取り除くために当て物をし(padded)、190℃で4分間乾燥した。この布帛を温かい水道水で洗浄していずれかの未反応のポリマーを除去して、次いで一晩空気乾燥して、潜熱容量を測定した。この布帛を、次いでAATCC143に従って、5回洗浄した。
【0110】
【表1】
【0111】
例6
種々のポリマーPCMを、上記の例4と同様に作ったが、ペルオキシド開始剤の量を変化させることによって、または重合溶液の固形分を変化させることによって、分子量を変えた。
【0112】
【表2】
【0113】
例7
上記のポリマーPCM、4−123を乾燥して100%固形分として、次いで研究室および生産パイロットプラント中の両方で、種々のポリマー繊維溶液へ加えた。これらの溶液を、次いで繊維にするか、またはフィルムに成形するかのいずれかにして、凝固させ、そして乾燥してポリマーPCMで改質した製品を得た。溶液Aは、10%の最終的溶液を得るように、1:1のNaSCNi:H2O中に溶解させた、Acordisイタコン酸官能化(func.)CFPポリアクリロニトリルポリマーからなる。溶液Bは、26.6/3.9/69.5の質量比のセルロースジアセテート/H2O/アセトン中で、26.6%固形分の溶液を得るように、水/アセトン混合物中に溶解したNovaceta(登録商標)ジアセテートからなる。溶液Cは、Ortec Inc.で生成されたポリマーPCMを用いたNovacetaパイロット試験を基にした。
【0114】
【表3】
【0115】
当業者は、本発明、その利用およびここに記載した態様によって得られる実質的に同様の結果を達成せしめるその構成には、多くの変更および置き換えを行なうことができることを容易に理解することができる。従って、本発明を、説明した例示的な形態に限定しようという意図はない。多くの変更、修正および代替構成が、特許請求の範囲中に表されて開示された発明の範囲および精神の範囲内に入る。
【技術分野】
【0001】
優先権
本願は、2008年7月16日出願の米国特許出願第12/174,607号および第12/174,609号ならびに2008年8月5日出願の米国特許出願第12/185,908号への優先権を主張している。全ての適切な目的において、その詳細の全てを参照することによって本明細書の内容とする。
【0002】
発明の分野
全般的には、本発明は、官能基が反応性の相転移材料を含む物品、およびそれらの材料の製造方法に関する。特に、本発明は、他の材料と共有結合もしくはイオン相互作用を形成する、官能基が反応性のポリマー相転移材料を含む物品に関するが、それらに限定するものではない。
【背景技術】
【0003】
温度調整特性を与えるための、相転移材料(PCM)の一般化された利用を通した、繊維製品の改質が知られている。また、マイクロカプセル化されたPCM(mPCM)の利用、その製造方法およびその用途も、広く開示されてきている。例えば、下記の文献は、それらの用途において、全てがマイクロカプセルを用いている。
1.米国特許第5366801号明細書:可逆的で高められた熱的性質を備えた布帛
2.国際公開第0212607号明細書:熱制御不織布
3.米国特許第6517648号明細書:不織繊維布の調製方法
4.特開05-156570号明細書:蓄熱性を有する繊維構造物及びその製造方法
5.米国特許出願公開第20040029472号明細書:潜熱効果を備えた複合繊維と方法
6.米国特許出願公開第20040026659号明細書:相転移材料マイクロカプセルを作製するための組成物および該マイクロカプセルの作製方法
7.米国特許出願公開第20040044128号明細書:水性ポリウレタンのマイクロカプセル配合と方法
8.米国特許出願公開第2004011989号明細書:潜熱効果を備えた布帛コーティング組成物およびその製造方法
9.米国特許出願公開第20020009473号明細書:マイクロカプセル、その製造方法、その使用、およびそれを含むコーティング液
10.特開平11-350240号明細書:表面にマイクロカプセルが付着した繊維の製造方法
11.特開2003-268679号明細書:蓄熱性を有する糸及びそれを用いた織物
【0004】
しかしながら、マイクロカプセルは高価であり、破裂する可能性があり、接着のための付加的な樹脂性のバインダーを必要とし、そして繊維に貧弱な可撓性および性質をもたらす可能性がある。
【0005】
多くの他の明細書が、先ずPCMまたはmPCMを含む繊維を製造することによる繊維製品の温度調整の開発の概要を記載している。例えば、下記のものは、全てが、合成的に作られた繊維から生み出された組成物、製造方法、プロセス、および繊維を開示している。これは特定の環境においては受容できるであろうが、以下に記載されたこれらの出願は、全ての天然セルロース繊維およびタンパク質繊維、例えば綿、亜麻、革、毛、絹および毛皮を除外している。また、これらは、合成繊維または布帛の後処理を容認していない。
12.米国特許出願公開第20030035951号明細書:高められた可逆性の熱的特性を有する多成分繊維およびその製造方法
13.米国特許第756958号明細書:可逆性で高められた熱的特性を備えた繊維およびそれから作られる布帛
14.特開平5-331754号明細書:吸発熱性複合繊維不織布
15.特開平6-041818号明細書:吸発熱性複合繊維
16.特開平5-239716号明細書:保温性複合繊維
17.特開平8-311716号明細書:吸発熱性複合繊維
18.特開平5-005215号明細書:吸熱、発熱性複合繊維
19.特開2003-027337号明細書:蓄熱保温性複合繊維
20.特願07-053917号明細書:蓄熱保温性繊維
21.特開2003-293223号明細書:吸熱性複合繊維
22.特願平02-289916号明細書:蓄熱繊維
23.特願平03-326189号明細書:蓄熱繊維
24.特願平04-219349号明細書:蓄熱組成物
25.特願平06-234840号明細書:蓄熱体
26.特願2001-126109号明細書:蓄熱性繊維、その製造方法および蓄熱性布部材
27.特願平03-352078号明細書:蓄熱材
28.特願平04-048005号明細書:蓄熱性布製品
29.国際公開第01/25511号:熱エネルギー貯蔵材料
30.特開平02-317329号明細書:蓄熱繊維、その製造方法および蓄熱布材
31.国際公開第2004/007631号:蓄熱材料、そのための組成物およびそれらの用途
32.特開2003-268358号明細書:体の周囲に用いる蓄熱材料
33.特開2004-011032号明細書:温度コントロール繊維、および温度コントロール布部材
34.特開2004-003087号明細書:蓄熱性複合繊維及び蓄熱性布部材
35.特開平06-200417号明細書:蓄熱材入り複合繊維及びその製造法
36.中国特許第1317602号明細書:自動温度調整繊維およびその製造方法
37.米国特許第5885475号明細書:ポリマー繊維の構造を通して組み込まれた相転移材料
【0006】
更に、米国特許第4851291号明細書、第4871615号明細書、第4908238号明細書、および第5897952号明細書には、中空および非中空繊維へのポリエチレングリコール(PEG)、多価アルコール結晶、または水和塩PCMの添加が開示されている。これらの繊維は、天然または合成、セルロース系、タンパク質系、または合成炭化水素系であることができる。非中空繊維は、PCMのように作用するために、表面上に堆積または反応したPEG材料を有している。これらは、非常に親水性であり、過剰の水分吸収の問題、および洗浄耐久性の問題を引き起こすという問題をはらんでいる。これらの用途においては、アクリル系、メタクリル系ポリマーまたは他の疎水性ポリマーPCMの使用の開示は知られていない。
【0007】
米国特許第6004662号明細書では、C16〜C18アルキル側鎖を備えたアクリレートおよびメタクリレートポリマーのPCMとしての使用に言及されているが、繊維製品の表面へのカプセル化されていない、もしくは官能化された、もしくは反応されたものとしての言及はない。
【0008】
米国特許第4259198号明細書および第4181643号明細書には、結晶子形成ブロックとして、長鎖時カルボン酸もしくはジオールのセグメントを含んでいる、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、およびそれらの混合物の群から選ばれた結晶性架橋合成樹脂の、PCMとしての使用が開示されているが、しかしながらそれらは、繊維もしくは繊維製品と併せてではない。
【0009】
特定の化合物が基材上に反応して、何らかの熱的変化を与える(通常は水分を基に)ための、特定の繊維および繊維製品の処理もしくは仕上げが開示されている。これらの系は、熱的相転移を受けて向上した潜熱効果を与える、長い側鎖アルキル、または長鎖グリコールアクリレートもしくはメタクリレートを基にしたものではない。例としては次のものがある。
38.特開2003-020568号明細書:繊維素材用吸熱加工剤
39.特開2002-348780号明細書:吸湿発熱性セルロース系繊維
40.特開2001-172866号明細書:保温性に優れた吸湿発熱性セルロース系繊維製品
41.特開11-247069号明細書:保温性発熱布帛
【0010】
種々の明細書に、長鎖アルキル部分を含むアクリルもしくはメタクリル共重合体の繊維製品仕上げへの使用が記載されているが、しかしながら油脂忌避性、耐汚染性、パーマネントプレス特性および速乾性などの特性のためだけである。これらは、高純度ポリマーのPCMとしての使用、温度調整および向上した快適さを与える潜熱貯蔵処理または繊維製品仕上げ、を開示も言及もしていない。より具体的には、これらは有利なポリマー設計、例えば分子量、分子量分布または特定の共重合構成を開示していない。例としては以下のものが挙げられる。
42.米国特許第6679924号明細書:染料定着剤
43.米国特許第6617268号明細書:セルラーゼ酵素による酵素攻撃からの綿の保護方法
44.米国特許第6617267号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
45.米国特許第6607994号明細書:ナノ粒子を基にした繊維製品のパーマネント処理
46.米国特許第6607564号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
47.米国特許第6599327号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
48.米国特許第6544594号明細書:繊維製品の撥水および耐汚染仕上げ
49.米国特許第6517933号明細書:ハイブリッドポリマー材料
50.米国特許第6497733号明細書:染料定着剤
51.米国特許第6497732号明細書:繊維反応性ポリマー染料
52.米国特許第6485530号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
53.米国特許第6472476号明細書:繊維製品の撥油および撥水仕上げ
54.米国特許第6387492号明細書:中空ポリマー繊維
55.米国特許第6380336号明細書:共重合体ならびにそれを含む撥油および撥水組成物
56.米国特許第6379753号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
57.米国特許出願公開第20040058006号明細書:高親和性ナノ粒子
58.米国特許出願公開第20040055093号明細書:タンパク質シースを有する複合材繊維基材
59.米国特許出願公開第20040048541号明細書:炭水化物シースを有する複合材繊維基材
60.米国特許出願公開第US20030145397号明細書:繊維定着剤
61.米国特許出願公開第20030104134号明細書:繊維製品の撥水および耐汚染仕上げ
62.米国特許出願公開第20030101522号明細書:繊維製品の撥水および耐汚染仕上げ
63.米国特許出願公開第20030101518号明細書:繊維基材の親水性仕上げ
64.米国特許出願公開第20030079302号明細書:繊維反応性ポリマー染料
65.米国特許出願公開第20030051295号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
66.米国特許出願公開第20030013369号明細書:繊維製品のナノ粒子を基にしたパーマネント処理
67.米国特許出願公開第20030008078号明細書:繊維製品の撥油および撥水仕上げ
68.米国特許出願公開第20020190408号明細書:モルフォロジートラッピングおよびそれとの使用に好適な材料
69.米国特許出願公開第20020189024号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
70.米国特許出願公開第20020160675号明細書:繊維製品の耐久性仕上げ
71.米国特許出願公開第20020155771号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
72.米国特許出願公開第20020152560号明細書:改質された繊維製品および他の材料ならびにそれらの調製方法
73.米国特許出願公開第20020122890号明細書:繊維製品の撥水および耐汚染仕上げ
74.米国特許出願公開第20020120988号明細書:繊維製品の耐磨耗および耐しわ仕上げ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
現行の組成物および方法は機能的ではあるが、それらはポリマー材料を相転移材料に用いることに伴う特有の性質および機能的な特徴を利用してはいない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要約
例示的な態様を以下に要約した。これらの態様および他の態様は、詳細な説明の欄により詳細に説明されている。しかしながら、この発明の要約および詳細な説明中に記載した形態に、本発明を限定しようという意図は全くないことが理解されなければならない。当業者は、特許請求の範囲に記載された本発明の精神および範囲内に入る、多くの変更、均等物および代替の構成があり得ることを理解することができる。
【0013】
1つの態様によれば、物品は基材およびこの基材に結合した官能性ポリマー相転移材料を含んでいる。
【0014】
他の態様によれば、物品の製造のための前駆体は、官能性ポリマー相転移材料および少なくとも1種の他の成分を含んでいる。
【0015】
他の態様によれば、物品の製造方法は、官能性ポリマー相転移材料を準備すること、基材を準備すること、およびこの官能性ポリマー材料をこの基材と結合させることを含んでいる。
【0016】
多くの更なる態様および実施態様が、当業者によって理解されるようにここに記載される。
【0017】
本発明の種々の目的および利点およびより完全な理解は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を参照することによって明確であり、そしてより容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1および図2は、長鎖アルキル基もしくは長鎖エーテル基をそれぞれ主成分とする結晶性側鎖を備えた(メタ)アクリレートを主成分とする官能性相転移材料(FP−PCM)の代表的な例を示しており、ここで、Rは反応性官能基である。
【図1A】図1Aおよび図2Aは、長鎖アルキル基もしくは長鎖エーテル基をそれぞれ主成分とする結晶性側鎖を備えたビニルエステル主鎖を主成分とするFP−PCMの代表的な例を示している。ここで、Rは反応性官能基である。
【図1B】図1Bおよび図2Bは、長鎖アルキル基もしくは長鎖エーテル基をそれぞれ主成分とする結晶性側鎖を備えたビニルエーテル主鎖を主成分とするFP−PCMの代表的な例を示しており、ここで、Rは反応性官能基である。
【図1C】図1Cは、長鎖アルキル基を主成分とする結晶性側鎖を備えたポリオレフィン主鎖を主成分とするFP−PCMの代表的例を示しており、Rは反応性官能基である。
【図2】図1および図2は、長鎖アルキル基もしくは長鎖エーテル基をそれぞれ主成分とする結晶性側鎖を備えた(メタ)アクリレートを主成分とする官能性相転移材料(FP−PCM)の代表的な例を示している。
【図2A】図1Aおよび図2Aは、長鎖アルキル基もしくは長鎖エーテル基をそれぞれ主成分とする結晶性側鎖を備えたビニルエステル主鎖を主成分とするFP−PCMの代表的な例を示している。ここで、Rは反応性官能基である。
【図2B】図1Bおよび図2Bは、長鎖アルキル基もしくは長鎖エーテル基をそれぞれ主成分とする結晶性側鎖を備えたビニルエーテル主鎖を主成分とするFP−PCMの代表的な例を示しており、ここで、Rは反応性官能基である。
【図3】図3は、結晶性主鎖ポリマー、例えばポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリスルフィド、ポリスルホンなどを主成分とするFP−PCMの代表的例を示しており、ここで、Rは、このポリマー鎖の1つの末端上の反応性官能基である。
【図4】図4は、FP−PCMを組み込むことができる人造繊維、またはFP−PCMで処理することができる織物、編み物、不織または他の基材を作ることができる人造繊維の一般的分類を示した図である。
【図5A】図5A〜5Fは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの種々の態様である。
【図5B】図5A〜5Fは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの種々の態様である。
【図5C】図5A〜5Fは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの種々の態様である。
【図5D】図5A〜5Fは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの種々の態様である。
【図5E】図5A〜5Fは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの種々の態様である。
【図5F】図5A〜5Fは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの種々の態様である。
【図6A】図6A〜6Dは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの更なる態様である。
【図6B】図6A〜6Dは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの更なる態様である。
【図6C】図6A〜6Dは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの更なる態様である。
【図6D】図6A〜6Dは、基材と相互作用している官能性ポリマーPCMの更なる態様である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<定義>
以下の定義が、本発明の種々の態様に関連して記載された種々の要素に適用される。これらの定義は、同様に本明細書中で更に詳述する可能性がある。
【0020】
ここで用いられる用語「単分散」は、一連の特性に関して実質的に均一であることを表わしている。従って、例えば、単分散である一連のマイクロカプセルとは、径の最頻値、例えば径の分布の平均、の周りに径の狭い分布を有するようなマイクロカプセルであるということができる。更なる例としては、同様の分子量を備えた一連のポリマー分子がある。
【0021】
ここで用いられる用語「潜熱」は、材料が、2つの状態間の転移を経る時に、その材料によって吸収もしくは放出される熱の量を表わしている。従って、例えば、潜熱は、材料が、液体状態と結晶性固体状態、液体状態と気体状態、結晶性固体状態と気体状態、2つの結晶性固体状態または結晶状態とアモルファス状態の間の転移を経る時に、その材料によって吸収または放出される熱の量と表わすことができる。
【0022】
ここで用いられる用語「転移温度」は、材料が2つの状態の間の転移を経る概略の温度であると表わされる。従って、例えば、転移温度は、材料が、液体状態と結晶性固体状態、液体状態と気体状態、結晶性固体状態と気体状態、2つの結晶性固体状態または結晶状態とアモルファス状態の間の転移を経る温度と表わすことができる。また、アモルファス材料が、ガラス状態とゴム状状態の間の転移を経る温度は、その材料の「ガラス転移温度」と表わすことができる。
【0023】
ここで用いられる用語「相転移材料」は、熱移動を、温度安定化範囲に、または温度安定化範囲内に調整するように熱を吸収または放出する能力を有する材料を表わしている。温度安定化範囲としては、特定の転移温度または転移温度範囲を上げることができる。例によっては、相転移材料は、相転移材料が熱を吸収または放出する場合には、典型的には、相転移材料が2つの状態間で転移を経る場合には、一定時間の間、熱移動を抑制することができる。この作用は、通常は過渡的なものであり、そして相転移材料の潜熱が、加熱もしくは冷却過程の間に吸収または放出されるまで発現する。熱は、相転移材料から供給または取り除くことができ、そして相転移材料は、通常は、熱を発するか、もしくは吸収する供給源によって効果的に再充填することができる。実施態様によっては、相転移材料は、2種または3種以上の混合物であることができる。2種もしくは3種以上の異なる材料を選択して、そして混合物を形成することによって、温度安定化範囲は、いずれかの所望の用途に応じて調整することができる。結果として得られる混合物は、ここに記載した物品中に組み込まれた場合には、2つもしくは3つ以上の異なる転移温度を示すか、または単一の変更された転移温度を示すことができる。
【0024】
ここで用いられる用語「ポリマー」は、一連の高分子を含む材料を表わしている。ポリマー中に含まれる高分子は、同じであるか、またはいずれかの形で互いに異なっていることができる。高分子は、種々の骨格構造のいずれかを有することができ、そして1種もしくは2種以上の種類のモノマー単位を含むことができる。特に、高分子は、直鎖もしくは非直鎖の骨格構造を有することができる。非直鎖の骨格構造の例としては、分岐骨格構造、例えば星型分岐、櫛型分岐、または樹枝状分岐、および網状骨格構造であるものが挙げられる。単独重合体に含まれる高分子は、通常1種類のモノマー単位を含んでおり、一方で共重合体に含まれる高分子は、通常2種もしくは3種以上の種類のモノマー単位を含んでいる。共重合体の例としては、統計的共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体、ラジアル共重合体、およびグラフト共重合体が挙げられる。例によっては、重合体の反応性および官能価は、一連の官能基、例えば酸無水物基、アミノ基およびそれらの塩、N−置換アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシ基およびそれらの塩、シクロへキシルエポキシ基、エポキシ基、グリシジル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、尿素基、アルデヒド基、エステル基、エーテル基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、ジスルフィド基、シリルもしくはシラン基、グリオキサールを基にした基、アジリジンを基にした基、活性メチレン化合物もしくは他のb−ジカルボニル化合物(例えば、2,4−ペンタジオン、マロン酸、アセチルアセトン、エチルアセトンアセテート、マロナミド、アセトアセタミドおよびそのメチル類似体、エチルアセトアセテート、およびイソプロピルアセトアセテート)を基にした基、ハロ基、ハライド、または他の極性もしくはH結合基、およびそれらの組合せ、の付加によって変えることができる。このような官能基は、重合体に沿った種々の位置に、例えば重合体に沿ってランダムにもしくは規則的に分布して、重合体の末端に、結晶性側鎖上の側鎖、末端もしくはいずれかの位置に、重合体の独立してぶら下がった側鎖基として、または重合体の主鎖に直接に結合して、付加することができる。また、重合体は、その機械的強度もしくは周囲条件や加工条件下での耐崩壊性を向上させるために、架橋した、絡み合った、または水素結合したものであることができる。理解することができるように、重合体の分子量は、その重合体を生成するために用いられた処理条件に依存する可能性があるので、重合体は、異なる分子量を有する種々の形態で与えることができる。従って、重合体は、特定の分子量または分子量範囲を有すると表わすことができる。ここで重合体を参照するのに用いられる用語「分子量」は、数平均分子量、質量平均分子量、または重合体のメルトインデックスを表わすことができる。
【0025】
重合体の(架橋剤およびバインダーとして用いられるポリマーを含めた)例としては、ポリヒドロキシアルコナート、ポリアミド、ポリアミン、ポリイミド、ポリアルリル(例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、およびメタクリル酸とアクリル酸のエステル)、ポリカーボネート(例えば、ポリビスフェノールAカーボネートおよびポリプロピレンカーボネート)、ポリジエン(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびポリノルボルネン)、ポリエポキシド、ポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリプロピレンスクシナート、テレフタル酸系ポリエステル、およびフタル酸系ポリエステル)、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシド、ポリブチレングリコール、ポリプロピレンオキシド、ポリオキシメチレンまたはパラホルムアルデヒド、ポリテトラメチレンエーテルまたはポリテトラヒドロフラン、およびポリエピクロロヒドリン)、ポリフルオロカーボン、ホルムアルデヒドポリマー(例えば、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−ホルムアルデヒド、およびフェノールホルムアルデヒド)、天然ポリマー(例えば、多糖類、例えばセルロース、キタン(chitan)、キトサン、およびデンプン、リグニン、タンパク質および蝋)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリブテン、およびポリオクテン)、ポリフェニレン、ケイ素含有ポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサンおよびポリカルボメチルシラン)、ポリウレタン、ポリビニル(例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールのエステルとエーテル、ポリビニルアセテート、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、およびポリビニルメチルケトン)、ポリアセタール、ポリアリレート、アルキッド系ポリマー(例えば、グリセリド油系ポリマー)、共重合体(例えば、ポリエチレン−コ−ビニルアセテートおよびポリエチレン−コ−アクリル酸)、およびそれらの混合物が挙げられる。用語、重合体は、本願の出願後に利用可能となり、そして上記の一般的な重合体特性を示す、いずれかの物質をも含むと理解されることが意図されている。
【0026】
ここで用いられる用語「化学結合」およびその文法的変異は、2つもしくは3つ以上の原子の、それらの原子が安定した構造を形成することができるような、引力相互作用を基にした結合を表わしている。化学結合の例としては、共有結合およびイオン結合が挙げられる。化学結合の他の例としては、水素結合ならびにカルボキシ基およびアミン基の間の引力相互作用が挙げられる。
【0027】
ここで用いられる用語「分子基」およびその明らかな変形は、分子の一部を形成する一連の原子を表わしている。例によっては、基は、互いに化学結合して、分子の一部を形成する、2つもしくは3つ以上の原子を含むことができる。基は、一方では中性であることができ、他方では、例えば、一価に、もしくは多価(例えば、二価)に、荷電していることができ、分子の更なる一連の基に化学結合することが可能となる。例えば、一価の基は、取り外されて、分子の他の基と化学結合することが可能になる一連のヒドリド基を備えた分子を想定することができる。基は、中性、正に荷電、もしくは負に荷電していることができる。例えば、正に荷電した基は、1つもしくは2つ以上のプロトン(すなわち、H+)が付加された中性基として想定することができ、そして負に荷電した基は、1つもしくは2つ以上のプロトンが取り除かれた中性基として想定することができる。特徴的な反応性または他の一連の特性を示す基は、官能基、反応性基または反応性官能基と表わすことができる。反応性官能基の例としては、例えば酸無水物基、アミノ基、N−置換アミノ基およびそれらの塩、アミド基、カルボニル基、カルボキシ基およびそれらの塩、シクロヘキシルエポキシ基、エポキシ基、グリシジル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、尿素基、アルデヒド基、エステル基、エーテル基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、ジスルフィド基、シリルもしくはシラン基、グリオキサールを基にした基、アジリジンを基にした基、活性メチレン化合物もしくは他のb−ジカルボニル化合物(例えば、2,4−ペンタンジオン、マロン酸、アセチルアセトン、エチルアセトンアセテート、マロンアミド、アセトアセタミドおよびそのメチル類似体、エチルアセトアセテート、およびイソプロピルアセトアセテート)を基にした基、ハロ基、ヒドリド基、または他の極性もしくはH結合基およびそれらの組合せ、が挙げられる。
【0028】
ここで用いられる用語「共有結合」は、原子間、または原子と他の共有結合との間に、対の電子を共有することを特徴とする化学結合の形態を意味している。原子が電子を共有している場合の原子間に形成される引力−反発安定性は、共有結合として知られている。共有結合は、多くの種類の相互作用を含んでおり、σ−結合、π−結合、金属−金属結合、アゴスチック相互作用、および三中心二電子結合が挙げられる。
【0029】
反応性基は、種々の化学的性質のものであることができる。例としては、種々の基材、例えば、綿、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびこれらの材料から作られる繊維製品、ならびに他の基材の反応性基と、反応し、そしてイオン結合もしくは共有結合を形成することができる反応性基である。例えば、天然、再生または合成ポリマー/繊維/材料から作られた材料は、イオン結合を形成することができる。このような基材の更なる例としては、種々の種類の天然製品が挙げられ、動物性製品、例えばアルパカ、アンゴラ、ラクダ毛、カシミア、ガット、チンゴラ、ラマ、モヘア、絹、腱(sinew)、クモの糸、羊毛、およびタンパク質系材料、種々の種類の植物系製品、例えば、竹、コイア、綿、亜麻、麻、ジュート、ケナフ、マニラ、パイナップル、ラフィア、ラミー、サイザル、およびセルロース系材料;種々の種類の鉱物系製品、例えば石綿、バサルト、雲母、または他の天然無機繊維が挙げられる。一般に、人造繊維は、3つの分類に分類分けされ、天然ポリマーから作られるもの、合成ポリマーから作られるもの、そして無機材料から作られるものである。図4は、国際化繊協会(BISFA)コードを備えた人造繊維の一般的な分類を示している。一般的な説明は次の通りである。
【0030】
<天然ポリマーからの繊維>
最も一般的な天然ポリマー繊維は、ビスコースであり、これは大抵は栽培された樹木から得られるポリマーセルロースから作られる。他のセルロース系繊維としては、キュプラ、アセテートおよびトリアセテート、リヨセルおよびモダルがある。これらの繊維の生産方法は、本明細書内に与えられる。より一般的ではない天然ポリマー繊維は、ゴム、アルギン酸、および再生タンパク質から作られる。
【0031】
<合成ポリマーからの繊維>
多くの合成繊維、すなわち石油化学製品系の有機繊維がある。最も一般的なものとしては、ポリエステル、ポリアミド(しばしばナイロンと称される)、アクリルおよびモダクリル、ポリプロピレン、エラステーン(または米国内ではスパンデックス)として知られている弾性繊維であるセグメント化ポリウレタン、および特殊繊維、例えば高性能アラミドがある。
【0032】
<無機材料からの繊維>
無機の人造繊維は、ガラス、金属、炭素またはセラミックなどの材料から作られた繊維である。これらの繊維は、非常にしばしばプラスチックを補強して複合材を形成するのに用いられる。
【0033】
好適な反応性官能基の例としては、例えば、酸無水物、アミノ基、N−置換アミノ基およびそれらの塩、アミド基、カルボニル基、カルボキシ基およびそれらの塩、シクロエポキシ基、エポキシ基、グリシジル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、尿素基、アルデヒド基、エステル基、エーテル基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、ジスルフィド基、シリルもしくはシラン基、グリオキサールを基にした基、アジリジンを基にした基、活性メチレン化合物もしくは他のb−ジカルボニル化合物(例えば2,4−ペンタンジオン、マロン酸、アセチルアセトン、エチルアセトンアセテート、マロンアミド、アセトアセタミドおよびそのメチル類似体、エチルアセトアセテート、およびイソプロピルアセトアセテート)を基にした基、ハロ基、ヒドリド基または他の極性もしくはH−結合基およびそれらの組合せ、などの官能基が挙げられる。
【0034】
本発明の1つもしくは2つ以上の態様によって用いることができる反応性基および官能基の種々の例の更なる詳細を、本願と同一出願人の、そして同時係属中の特許出願第12/174,607号および第12/174,609号中に見出すことができ、それらの詳細を参照することによって本明細書の一部とする。特定の組成物および方法を本明細書の後の部分で提供することによって、本願出願人は、特許請求の範囲をこれらの特定の組成物のいずれにも限定することを意図してはいないことが、明確に理解されなければならない。反対に、ここに記載された官能基、ポリマー相転移材料、および物品のいずれかの組合せは、本発明の新たな態様を得るのに用いることができることが予想される。特許請求の範囲は、本明細書中に記載された特定の組成物のいずれか、または本明細書の一部とされたいずれかの開示に限定されることを意図していない。
【0035】
ここに参照した幾つかの文献は、ポリマーPCM(P−PCM)を取り扱っており、ある意味では固体−液体PCMと固体−固体PCMの中間的な場合を呈している。P−PCMは、相転移の前と後の両方で固体である。違いは、両者の構造度にある。低温では、構造度は、高温での構造度よりも大きく、そのため相転移温度においては、P−PCMはより構造化された形態からより構造化されていない形態に転換する。典型的には、より構造的な形態では、ポリマーのいずれかの部分が、よりよく整列しており、そしてより緻密に密集している。よりよく整列した部分は、結晶子に類似している。従って、P−PCMの加熱による相転移はまた、より結晶化した形態から、より結晶化していない形態への転移としても表すことができる。別の言い方で云うと、高温(転移温度より上)では、P−PCMは本質的にアモルファスである。低温(転移温度未満)では、P−PCMは結晶化度を有している。同様に、熱吸収および熱放出における転移は、それぞれ脱結晶化および再結晶化と表すことができる。また、関連するエンタルピーは、脱結晶化のエンタルピーと表すことができる。
【0036】
典型的には、P−PCMは、よりよく整列することでき、そしてより緻密に密集することができる部分を有している。このような部分は、結晶性部分と称することができる。態様によっては、本発明の種々の態様に従って、ここに記載された官能性ポリマーPCMは、少なくとも1つのこのような結晶性部分を含んでいる。本発明の態様によれば、ポリマーは主鎖および側鎖を含んでいる。好ましくは、側鎖は結晶性部分を形成する。
【0037】
ここで用いられる用語「反応性基」は、他の化学基と反応して共有結合またはイオン結合を形成することができる化学基(または部分(moiety))を意味しており、それらの例は上記に示した。好ましくは、このような反応は、比較的に低温、例えば200℃未満、より好ましくは100℃未満で、そして繊細な基材、例えば繊維製品を取り扱うのに好適な条件で、行なうことができる。ここで用いられる用語「官能基を有する」およびこの用語の明らかな変形は、例えば共有もしくはイオン結合で、結合している官能基を有することを意味している。
【0038】
反応性基は、FP−PCM分子のいずれかの部分に、例えば側鎖上、主鎖に沿って、または主鎖もしくは側鎖の末端の少なくとも1つに、配置する(有する、または共有結合もしくはイオン結合で結合される)ことができる。本発明の種々の態様によれば、FP−PCMは、複数の反応性基を含むことができ、そしてこれらの基は、実質的に規則的な間隔で、立体特異的に、または分子に沿ってランダムに、例えば主鎖に沿って、分布している。また、これらのいずれの組合せも可能である。
【0039】
本発明のFP−PCMの分子量は、好ましくは少なくとも500ダルトン、より好ましくは少なくとも2000ダルトンである。好ましくは、結晶性部分の質量は、FP−PCMの総質量の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、そして最も好ましくは少なくとも70%を形成する。
【0040】
本発明のFP−PCMは、単一の相転移温度または複数の相転移温度を有している。1つの態様によれば、FP−PCMは、−10℃〜100℃の範囲、好ましくは10℃〜60℃の範囲に少なくとも1つの相転移温度を、そして少なくとも25J/gの相転移エンタルピーを有している。
【0041】
それぞれの温度における相転移は、その特有のエンタルピーを有していて、態様によっては、物品は単一の相転移エンタルピーを有しており、そして他の態様によれば、複数のそのようなエタンタルピーを有している。ここで用いられる用語「総相転移エンタルピー」は、単一の相転移温度を備えた物品の場合では相転移のエンタルピーを、そして複数の相転移温度の場合には、組み合わせたエンタルピーを表している。本発明の態様によれば、これらの物品は少なくとも2.0ジュール/グラム(J/g)もしくは10J/m2の総相転移エンタルピーを有している。
【0042】
それぞれのFP−PCM分子は、少なくとも1つの反応性基を有している一方で、大きなFP−PCM分子は、複数の反応性基を有することができる。本発明の態様によれば、FP−PCMは、分子量の10000ダルトン当たりに、少なくとも1つの反応性基、そして好ましくは2つの反応性基を有している。
【0043】
上記のように、本発明のFP−PCMの反応性基は、種々の物品、化合物および他の分子(ここでは、一般的に基材(base materials)もしくは基材(substrates)と表される)と共有結合またはイオン結合を形成することができなければならない。他の態様によれば、基材は、綿、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびこれらの材料から作られる繊維製品からなる群から選ばれる。共有結合を形成することができる反応性基の例としては、酸無水物、アミノ基、N−置換アミノ基、カルボニル基、カルボキシ基、シクロへキシルエポキシ基、エポキシ基、グリシジル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、尿素基、アルデヒド基、エステル基、エーテル基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、ジスルフィド基、シリルもしくはシラン基、グリオキサールを基にした基、アジリジンを基にした基、活性メチレン化合物もしくは他のb−ジカルボニル化合物(例えば、2,4−ペンタジオン、マロン酸、アセチルアセトン、エチルアセトンアセテート、マロンアミド、アセトアセタミドおよびそのメチル類似体、エチルアセトアセテート、およびイソプロピルアセトアセテート)を基にした基、ハロ基、ヒドリド基、またはそれらの混合物、がある。共有結合を形成することができるFP−PCMは、本願と同一譲受人の米国特許出願第12/174,607号中に開始されており、その教示をここに参照することによってその全てを本明細書の内容とする。イオン結合を形成することができる反応性基の例としては、酸基、塩基基、正荷電の錯体および負荷電の錯体がある。イオン結合を形成することができるFP−PCMは、例えば本願と同一譲受人の米国特許第12/174,609号に開示されており、その教示はここにその全てを参照することによって本明細書の内容とする。
【0044】
本発明の他の態様によれば、基材を形成する物品は、更に少なくとも1種の他の成分を含むことができる。好適な成分は、他のFP−PCM、他のPCM、PCMを含むマイクロカプセル、他の添加剤を備えたマイクロカプセル、バインダー、架橋剤、ブレンド用ポリマー、相溶化剤、湿潤剤および添加剤からなる群から選ばれる。また、FP−PCMは、前記少なくとも1種の他の成分と結合していてもよい。
【0045】
他の態様によれば、官能性ポリマー相転移材料は、基材に化学的に結合する。結合は、共有結合、イオン結合、直接結合または結合化合物を通した結合の1つであることができる。他の態様によれば、結合は、例えばFP−PCMの反応性基と基材の反応性基との間の反応の結果として得られる結合であり、好ましくは結合はそのような反応の結果である。基材は、繊維製品、例えば天然繊維、毛皮、合成繊維、再生繊維、織布、編物、不織布、発泡体、紙、革、プラスチックもしくはポリマー層、例えばプラスチックフィルム、プラスチックシート、積層体また上記の組合せからなる群から選ぶことができる。
【0046】
ここに記載されている繊維製品は、人もしくは動物の体に接触するいずれかの衣類または物品に用いることができる。これらには、帽子、ヘルメット、メガネ、ゴーグル、マスク、スカーフ、シャツ、基層(baselayers)、ベスト、ジャケット、下着、肌着類、ブラジャー、手袋、裏地、ミトン、パンツ、オーバーオール、前掛け、ソックス、靴下、靴、ブーツ、中敷、サンダル、寝具類、寝袋、毛布、マットレス、シーツ、枕、繊維製品断熱材、バックパック、スポーツ用パッド/パッド(pads/padding)などが挙げられる。繊維製品物品は、FP−PCMを含むことができ、またはコーティング、積層もしくは成形されていてもよい。例えば、繊維はFP−PCMを、繊維中に含んで、繊維上にコーティングされて、またはFP−PCMで処理されて、その中で繊維とFP−PCMが相互作用するように、製造することができる。また、このことは、繊維製品製造プロセスのいずれかの工程に適用することができる。
【0047】
ここに記載された物品は、以下の製品もしくは物品の分類の1つまたは2つ以上と関連して用いることができる。
【0048】
輸送、貯蔵もしくは包装用容器/装置、例えば、封筒、ジャケット、ラベル、厚紙、包装材料、線材、固定用具(tiedowns)、絶縁材、緩衝材、パッド、発泡材、防水布、袋、箱、管、容器、シート、フィルム、パウチ、スーツケース、箱(cases)、梱包、ビン、広口ビン、蓋、カバー、カン、壷、コップ、ブリキ缶、ペール缶、バケツ、籠、引き出し、ドラム缶、樽、桶、箱(bins)、ホッパー、トートバッグ(totes)、トラック/船舶用容器またはトレーラー、カート、棚(shelves)、棚(racks)などの形態の、紙、ガラス、金属、プラスチック、セラミック、有機もしくは無機材料。これらの物品は、特に、食品の出荷、食品配送、医薬の出荷、医薬の配送、身体輸送などの事業において用いることができる。
【0049】
医療、健康、治療(therapeutic)、治療(curative)および創傷管理、例えば包帯、外被、布巾(wipes)、ステント、カプセル、薬剤、送達装置、管、袋、パウチ、スリーブ(sleeves)、発泡体、パッド、縫合糸、線材など。
【0050】
エネルギー管理およびオフピークのエネルギー需要の低減が望まれる、建築物、建造物、および内装物品。これらの物品としては、例えば、室内装飾用品、家具、ベッド、室内装備品、窓、窓のコーティング、窓周りの装飾とカバー、ウォールボード、断熱材、発泡材、パイプ、管、線材、積層品、レンガ、石、サイジング、壁もしくは天井パネル、床材、キャビネット、建物外面、ビルディングラップ、壁紙、塗料、柿板(shingles)、屋根ふき材、骨組みなどを挙げることができる。代替の建造技術の使用およびそのような物品もまた挙げられ、麦束建築、泥もしくは日干しレンガ建築、レンガもしくは石材建築、金属容器建造などである。
【0051】
電子および電気物品、例えば導体、ヒートシンク、半導体、トランジスタ、集積回路、線材、スイッチ、キャパシタ、抵抗、ダイオード、基板、被覆、モーター、エンジンなど。
【0052】
上記の物品を組み込んだ、自動車、重機、トラック輸送、食品/飲料配送、化粧品、行政事務、農業、狩猟/漁業、製造業などの産業で用いるための物品。
【0053】
化粧品、例えばクリーム、ローション、シャンプー、コンディショナー、ボディーソープ、セッケン、ヘアジェル、ムース、リップスティック、防臭剤、モイスチャーライザー、マニキュア液、グロス、化粧品(makeup)、アイライナー/アイシャドウ、ファンデーション、ハケ、マスカラなど。
【0054】
FP−PCMが一方の相にある場合に障壁を形成し、そして他方の相にある場合に移動を可能とする、放出制御物品。この障壁は、FP−PCM結晶性ドメインマトリックスもしくは物質間の物理的層の内部などへの物質の捕捉による可能性がある。障壁特性を変化させるこの相転換は、エネルギー、例えば、光、UV、IR、熱、熱的、プラズマ、音、マイクロ波、電波、圧力、X線、ガンマまたはいずれかの形態の輻射もしくはエネルギーなどによって誘発される可能性がある。この障壁は、物質、色もしくはエネルギーなどの、移動または放出を抑止することができる。更なる例としては、液体材料に対する障壁、または光もしくは色のブロッキング/ブロッキングの除去、種々の温度における剛性もしくは可撓性の変化などがある。更なる例としては、触媒、化学反応制御剤(反応の増加もしくは減少)、接着力、酵素、染料、色素、光および/もしくは温度に対する安定剤、ナノ粒子もしくは微粒子、温度もしくはにせ物マーカーなどの封じ込め/放出がある。
【0055】
更に、FP−PCMは、以下の本願と同一譲受人の特許中に概説されているように、物品中に組み込むことができる。コーティングについては、例えば、米国特許第5,366,801号明細書、可逆的な高い熱的特性を備えた布帛(Fabric with Reversible Enhanced Thermal Properties);米国特許第6,207,738号明細書、エネルギー吸収相転移材料を含む布帛コーティング組成物(Fabric Coating Composition Containing Energy Absorbing Phase Change Material);米国特許第6,503,976号明細書、エネルギー吸収相転移材料を含む布帛コーティング組成物およびその製造方法(Fabric Coating Composition Containing Energy Absorbing Phase Change Material and Method of Manufacturing Same);米国特許第6,660,667号明細書、エネルギー吸収相転移材料を含む布帛コーティングおよびその製造方法(Fabric Coating Containing Energy Absorbing Phase Change Material and Method of Manufacturing Same);米国特許第7,135,424号明細書、高い可逆性の熱的性質を有し、そして向上した可撓性、柔軟性、空気透過率、または水蒸気移動特性を示すコーティングされた物品(Coated Articles Having Enhanced Reversible Thermal Properties and Exhibiting Improved Flexibility, Softness, Air Permeability, or Water Vapor Transport Properties);米国特許出願第11/342,279号明細書、反応性官能基を備えたマイクロカプセルで作られたコーティングされた物品(Coated Articles Formed of Microcapsules with Reactive Functional Groups)中に。
【0056】
繊維については、例えば、米国特許第4,756,958号明細書、可逆性の高い蓄熱特性を備えた繊維およびそれから作られた布帛(Fiber with Reversible Enhanced Thermal Storage Properties and Fabrics Made Therefrom);米国特許第6,855,422号明細書、可逆的な熱的特性を有する多成分繊維(Multi-Component Fibers Having Reversible Thermal Properties);米国特許第7,241,497号明細書、可逆性の熱的性質を有する多成分繊維(Multi-Component Fibers Having Reversible Thermal Properties);米国特許第7,160,612号明細書、可逆性の熱的性質を有する多成分繊維(Multi-Component Fibers Having Reversible Thermal Properties);米国特許第7,244,497号明細書、高い可逆性の熱的性質を有するセルロース繊維およびその製造方法(Cellulosic Fibers Having Enhanced Reversible Thermal Properties and Methods of Forming Thereof)中に。
【0057】
繊維、積層体、押出成形シート/フィルムまたは成形製品については、例えば、米国特許第6,793,85号明細書、高い可逆性の熱的特性を有する溶融紡糸可能な濃縮ペレット(Melt Spinable Concentrate Pellets Having Enhanced Reversible Thermal Properties);米国特許出願第11/078,656号明細書、高い可逆性の熱的特性を有するポリマー複合材およびその製造方法(Polymeric composites having enhanced reversible thermal properties and methods of forming thereof);国際特許出願第PCT/US07/71373号明細書、マイクロカプセルを含む安定な懸濁液およびその製造方法(Stable Suspensions Containing Microcapsules and Methods for Preparation Thereof)中に。
【0058】
これらの態様および物品は、温度調整、温度緩衝、温度制御もしくは融解の潜熱が用いられるか、またはいずれかの相転移現象が用いられるいずれかの用途中で用いることができる。これらの用途は、親水性、疎水性、吸湿、放湿、有機物質吸収もしくは放出、無機物質吸収もしくは放出、架橋、殺菌、抗真菌、抗菌、生分解、分解、防臭、悪臭防止、臭気放出、耐グリースおよび耐汚れ、酸化および経時変化に対する安定性、難燃、シワ防止、高い剛性もしくは可撓性、UVもしくはIR遮蔽、耐衝撃もしくは衝撃抑制、色付加、色変化、色制御、触媒もしくは反応制御、音、光、光学的、静電気もしくはエネルギー管理、表面張力、表面平滑性、または表面特性制御、にせ物防止(anti-fraud)もしくはブランドマーク管理、制御された放出/封じ込め、あるいは制御された障壁特性などと関連して用いることができ、または関連して用いなくてもよい。
【0059】
他の態様によれば、ここに記載した物品の製造のための、FP−PCMを準備すること、基材を準備すること、およびFP−PCMと基材とを組み合わせることを含む方法が提供される。1つの態様によれば、この基材は、少なくとも1種の反応性基を有しており、そしてこの組み合わせることは、FP−PCMの反応性基を基材の官能基と化学的に反応させることを含んでいる。
【0060】
他の態様によれば、物品の製造のための前駆体が提供され、この前駆体は、官能性ポリマー相転移材料と少なくとも1種の他の成分を含んでいる。
【0061】
他の態様によれば、この物品の製造のための方法は、前駆体を準備すること、基材を準備すること、そして前駆体のFP−PCMと基材とを結合させること、を含んでいる。この基材は、少なくとも1つの反応性基を有していることができる。前駆体のFP−PCMと基材とを結合させることには、FP−PCMの官能基を、基材の官能基と化学的に反応させることを含んでいる。
【0062】
基材を形成する材料の選択は、種々の事項、例えばFP−PCMへのその親和性、伝熱を低下もしくは排除するその能力、その通気性、そのドレープ適性、その可撓性、その柔軟性、その吸水性、そのフィルム形成能力、周囲条件もしくは加工条件下でのその耐分解性、およびその機械的強度、に依存する可能性がある。特に、実施態様によっては、基材を形成する材料は、一連の官能基、例えば酸無水物、アルデヒド基、アミノ基、N−置換アミノ基、カルボニル基、カルボキシ基、エポキシ基、エステル基、エーテル基、グリシジル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、チオール基、ジスルフィド基、シリル基、グリオキサールを基にした基、アジリジンを基にした基、活性メチレン化合物もしくは他のb−ジカルボニル化合物(例えば、2,4−ペンタジオン、マロン酸、アセチルアセトン、エチルアセトンアセテート、マロナミド、アセトアセタミドおよびそのメチル類似体、エチルアセトアセテート、およびイソプロピルアセトアセテート)を基にした基、またはそれらの組合せを含むように選択することができる。これらの官能基の少なくとも一部は、基材の表面上に露出されていることができ、そして態様もしくは添加剤中に含まれる一連の相補的な官能基と化学的に結合することを可能にして、それによって加工中または使用の間の物品の耐久性を高める。従って、例えば、基材はセルロースで形成することができ、そして一連のヒドロキシ基を含むことができ、これらのヒドロキシル基はFP−PCM中に含まれる一連のカルボキシ基に化学的に結合することができる。他の例としては、基材はタンパク質材料であることができ、そして絹もしくは羊毛で形成されていることができ、そして一連のアミノ基を含むことができ、これらのアミノ基は、FP−PCM中に含まれるこれらのカルボキシ基と化学的に結合することができる。理解することができるように、一対の官能基間の化学結合は、他の官能基、例えばアミド基、エスエル基、エーテル基、尿素基、またはウレタン基、の形成をもたらすことができる。従って、例えば、ヒドロキシ基とカルボキシ基の間の化学結合は、エステル基の形成をもたらすことができ、一方で、アミノ基とカルボキシ基の間の化学結合は、アミド基の形成をもたらすことができる。
【0063】
態様によっては、基材を形成する材料は、最初には一連の官能基がなく、しかしながら後に改質されてこれらの官能基を含むようになることができる。特に、基材は、一方は一連の官能基がなく、そして他方はこれらの官能基を含んでいる、異なる材料の組合せによって形成されてもよい。これらの異なる材料は、均一に混合されていてもよく、または別々の部分もしくは別々の副層で一体化されていてもよい。例えば、基材はポリエステル繊維を、特定の量(例えば、25質量%以上)の一連の官能基を含む綿もしくは羊毛繊維と組み合わせることによって形成することができる。このポリエステル繊維は、外側の副層中に組み込むことができ、一方で、綿もしくは羊毛繊維は、他の層に隣接する内側の副層中に組み込むことができる。他の例としては、基材を形成する材料は、一連の官能基を含むように、化学的に改質されていてもよい。化学的な改質は、いずれかの好適な技術を用いて、例えば、酸化剤、コロナ処理またはプラズマ処理を用いて行なうことができる。また、化学的改質は、Kanazawaの、標題が「活性化されたポリマー材料の親水性ポリマー処理およびその使用(Hydrophilic Polymer Treatment of an Activated Polymeric Material and Use Thereof)」である米国特許第6,830,782号明細書中に記載されたように行なうこともでき、その開示の全てをここに参照することによって本明細書に一部とする。例によっては、基材を形成する材料は、一連の官能基を含むモノマーと反応することができるラジカルを形成するように処理されてもよい。このようなモノマーの例としては、無水物基を備えたもの(例えば、マレイン酸無水物)、カルボキシ基を備えたもの(例えば、アクリル酸)、ヒドロキシ基を備えたもの(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート)、およびエポキシもしくはグリシジル基を備えたもの(例えば、グリシジルメタクリレート)が挙げられる。他の例では、基材を形成する材料は、一連の官能性材料で処理されて、一連の官能基を付加することができ、更に所望の水分管理特性を与えることができる。これらの官能性材料としては、親水性ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリグリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、親水性ポリエステル、およびそれらの共重合体が挙げられる。例えば、これらの官能性材料は、繊維製造過程の間、繊維染色過程の間、または繊維仕上げ過程の間、に付加することができる。あるいは、もしくは同時に、これらの官能性材料は、吸尽染色、パッド染色または液流染色を通して繊維に組み込むことができる。
【0064】
FP−PCMは、基材に隣接して、基材上に、もしくは基材内部に形成される、コーティング、積層体、含浸(infusion)、処理、またはコーティング、積層体、含浸(infusion)、処理における成分として、いずれかの好適なコーティング、積層、含浸(infusion)などの技術を用いて、与えることができる。使用の間に、FP−PCMは、内部の区画または個人の皮膚に隣接するように配置することができ、従って内部コーティングとしての役割をすることができる。また、FP−PCMは、外部の環境に露出されて、従って外側のコーティングとしての役割をするように配置することができると考えられる。FP−PCMは、基材の少なくとも一部を覆っている。基材または用いられる特定のコーティング技術の特徴によって、FP−PCMは、基材の最上表面の下に浸透することができ、そして基材の少なくとも一部に浸透することができる。2つの層が記載されているが、この物品は、他の態様では、より多くの、またはより少ない層を含むことができると考えられる。特に、第3の層が、基材の底面の少なくとも一部を覆うように含まれていてよいことが考えられる。このような第3の層は、FP−PCMと同様の形式で与えることができ、または異なる機能性、例えば撥水性、耐汚染性、剛性、耐衝撃性など、を与えるように他の形式で与えることができる。
【0065】
1つの態様では、FP−PCMはバインダーと混合され、バインダーはまた、バインダー中に分散された一連のマイクロカプセルを含んでいてもよい。このバインダーは、マトリックスとしての役割をするいずれかの好適な材料であることができ、このマトリックス中にFP−PCMおよびおそらくはまたマイクロカプセルが分散しており、そうして加工条件に対して、または使用の間の磨耗(abrasion)もしくは磨耗(wear)に対して、FP−PCMにある程度の保護を与える。例えば、バインダーは、特定のコーティング、積層、または接着技術において用いられるポリマーもしくはいずれかの他の好適な媒体であることができる。態様によっては、バインダーは、好ましくは約−110℃〜約100℃、より好ましくは約−110℃〜約40℃の範囲のガラス転移温度を有するポリマーである。水溶性もしくは水分散性のポリマーが特に好ましい可能性がある一方で、水不溶性もしくは、僅かに水溶性であるポリマーもまた、特定の態様でのバインダーとして用いることができる。
【0066】
バインダーの選択は、種々の事項、例えばFP−PCMおよび/またはマイクロカプセルまたは基材へのその親和性、熱移動を低減もしくは排除するその能力、その通気性、そのドレープ性、その可撓性、その柔軟性、その吸水性、そのコーティング形成能力、周囲もしくは加工条件下での分解へのその耐久性、およびその機械的強度による可能性がある。特に、態様によっては、バインダーは、一連の官能基、例えば、酸無水物基、アミノ基およびそれらの塩、N−置換アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシ基およびそれらの塩、シクロへキシルエポキシ基、エポキシ基、グリシジル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、尿素基、アルデヒド基、エステル基、エーテル基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、ジスルフィド基、シリルもしくはシラン基、グリオキサールを基にした基、アジリジンを基にした基、活性メチレン化合物もしくは他のb−ジカルボニル化合物(例えば、2,4−ペンタジオン、マロン酸、アセチルアセトン、エチルアセトンアセテート、マロナミド、アセトアセタミドおよびそのメチル類似体、エチルアセトアセテート、およびイソプロピルアセトアセテート)を基にした基、ハロ基、ハライド、または他の極性もしくはH結合基、およびそれらの組合せ、を含むように選択することができる。
【0067】
これらの官能基は、FP−PCM、マイクロカプセルまたは基材のいずれか、もしくはいずれにも含まれている一連の相補的官能基と化学的に結合してもよく、それによって物品の、加工の間もしくは使用の間の耐久性を高める。従って、例えば、バインダーは一連のエポキシ基を含んだポリマーであることができ、このエポキシ基はFP−PCMおよび/またはマイクロカプセル中に含まれる一連のカルボキシ基に化学的に結合することができる。他の例としては、バインダーは、一連のイソシアネート基もしくは一連のアミノ基を含むポリマーであることができ、これらの基は、FP−PCM、マイクロカプセルまたは基材中に含まれるこれらのカルボキシ基と化学的に結合することができる。
【0068】
例によっては、コーティング組成物を形成する場合に、一連の触媒を加えることができる。そのような触媒は、相補的官能基の間の、例えばバインダー中に含まれる官能基とマイクロカプセル中に含まれる官能基の間の、化学的結合を促進することができる。触媒として用いることができる材料の例としては、ホウ素塩、次亜リン酸塩(例えば、次亜リン酸アンモニウムおよび次亜リン酸ナトリウム)、リン酸塩、スズ塩(例えば、Sn+2またはSn+4の塩、例えば、ジブチルスズジラウレートおよびジブチルスズジアセテート)、および亜鉛塩(例えば、Zn+2の塩)が挙げられる。このコーティング組成物に加えるスズ塩または亜鉛塩の望ましい量は、乾燥質量で、約0.001〜約1.0質量%、例えば乾燥質量で約0.01〜約0.1質量%の範囲であることができる。このコーティング組成物に加えるホウ素塩またはリン酸塩の望ましい量は、乾燥質量で約0.1〜約5質量%、例えば乾燥質量で約1〜約3質量%の範囲であることができる。触媒として用いることができる材料の他の例としては、アルキル化金属、金属塩、ハロゲン化金属、および金属酸化物が挙げられ、好適な金属としては、Sn、Zn、Ti、Zr、Mn、Mg、B、Al、Cu、Ni、Sb、Bi、Pt、Ca、およびBaが挙げられる。有機酸および塩基、例えば硫黄(例えば、硫黄の)、窒素(例えば、窒素の)、リン(例えば、リンの)、またはハロゲン化物(例えば、F、Cl、BrおよびI)を基にするものもまたは触媒として用いることができる。触媒として用いることができる材料の更なる例としては、酸、例えばクエン酸、イタコン酸、乳酸、フマル酸およびギ酸が挙げられる。
【0069】
基材、官能性相転移材料、バインダーおよび/またはマイクロカプセルの間の結合は、種々の態様によって、共有結合、イオン結合またはそれらの種々の組合せである。結合は、直接または間接、例えば結合化合物を経由したものでもよい。態様によっては、結合化合物は、官能性ポリマー相転移材料およびマイクロカプセルからなる群から選ばれる。他の態様によれば、官能性ポリマー相転移材料は、第2のPCMの少なくとも一部に対するバインダーを形成する。
【0070】
他の態様によれば、FP−PCMの反応性基は、特定の基材との反応により好適である他の反応性基に転換されてもよい。
【0071】
他の態様によれば、FP−PCMの反応性基は、種々の化学的性質のものであることができる。例えば、種々の基材、例えば、綿、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびそのような材料から作られた繊維製品と、反応する、または共有結合もしくはイオン結合を形成することができる反応性基。
【0072】
本発明の他の態様によれば、反応性基は、以下の、1)グリシジルまたはエポキシ、例えばグリシジルメタクリレートもしくはグリシジルビニルエーテル由来のもの、2)無水物、例えばマレイン酸無水物もしくはイタコン酸無水物由来のもの、3)イソシアネート、例えばイソシアネートメタクリレート、Cytec Ind.のTMI(登録商標)もしくはブロックトイソシアネート、例えば2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチルメタクリレート、4)アミノまたはアミン−ホルムアルデヒド、例えばN−メチロールアクリルアミド由来のもの、および5)シラン、例えばメタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン由来のもの、のいずれかであることができる。このような反応性基は、セルロース系の繊維製品、例えば綿のOH官能基と、タンパク質系繊維製品、例えば羊毛、毛皮もしくは革のアミン官能基と、ポリエステル系繊維製品のヒドロキシルもしくはカルボキシル基と、ならびにナイロン官能性樹脂のアミド官能基と反応することができる。
【0073】
本発明の更なる他の態様によれば、反応性基は、他の二重結合と結合して架橋点などを与えることができる二重結合である。
【0074】
FP−PCMの反応性基は、正電荷であると考えることができ、そして基材上の負電荷とイオン結合で結合することができる。他の態様では、反応性基は負電荷であると考えることができ、基材上の正電荷とイオン結合で結合することができる。他の態様では、基材ならびにFP−PCMおよび/またはマイクロカプセルの両方の反応性基は、負に荷電しており、そして結合は、多価のカチオンを経由していて、これが架橋剤として作用する。更に他の態様では、基材ならびにFP−PCMおよび/またはマイクロカプセルの両方の反応性基は、正に荷電しており、そして結合は、多価のアニオンを経由していて、これが架橋剤として作用する。架橋性の多価カチオン、アニオンまたはその両方は、有機もしくは無機であることができる。
【0075】
本発明の種々の態様によって構成された物品は、単一の相転移温度有していることができ、または、例えばFP-PCMが複数の種類の結晶性部分を有している場合や、もしくはその物品が異なる種類のFP−PCMを含んでいる場合には、複数の相転移温度を有していることができる。本発明の態様によって構成された物品は、−10℃〜100℃の範囲、好ましくは10℃〜60℃の範囲に少なくとも1つの相転移温度、および少なくとも2.0ジュール/グラム(J/g)、または10J/m2の相転移エネルギーを有している。他の態様によれば、官能性ポリマー相転移材料は、親水性の結晶性部分、疎水性の結晶性部分またはそれらの両方を含んでいる。例としては、ポリステアリルメタクリレートとポリエチレングリコールメタクリレートなどのセグメントで作られたABブロック共重合体は、2つの異なる相転移温度および親水性/疎水性を有するであろう。疎水性のステアリル結晶性側鎖由来の一方の相転移温度および親水性のグリコール結晶性側鎖由来の他方の相転移温度である。
【0076】
それぞれの温度における相転移は、それら自体のエンタルピーを有しており、そのためその物品は、態様によっては、単一の相転移エンタルピーを、そして他の態様によれば、複数の相転移エンタルピーを有している。本発明の態様によれば、物品は、少なくとも2.0ジュール/グラム(J/g)または10J/m2の総相転移エンタルピーを有している。
【0077】
他の態様によれば、本発明は、第2の態様による物品の製造のための前駆体を提供し、この前駆体は官能性ポリマー相転移材料および少なくとも1種の他の成分を含んでいる。この1種の他の成分は、有機溶媒、水性溶媒、他のFP−PCM、他のPCM、PCMを含むマイクロカプセル、他の添加剤を備えたマイクロカプセル、バインダー、架橋剤、ブレンド用ポリマー、相溶化剤、湿潤剤、触媒および添加剤、ならびにそれらの組合せからなる群から選ばれる。前駆体の例としては、基材のコーティング、染色、浸漬、噴霧、刷毛塗、パディング、捺染などに用いられる製剤、製造ラインへの添加、例えば紡糸ラインの繊維紡糸原液中への注入のためのFP−PCMの前分散体、着色および色彩製剤、添加剤マスターバッチもしくは分散体、中和もしくはpH調整溶液、溶融防止繊維、成形部品、フィルム、シートもしくは積層製品の押出および製造のためのプラスチックペレットまたはマスターバッチの製剤がある。これらは、上記で引用し、また包含した、アウトラストの特許および出願中に記載されている。
【0078】
他の態様によれば、前駆体を準備すること、基材を準備すること、そして前駆体のFP−PCMを基材と結合させることを含む物品の製造のための方法が提供される。この基材は、好ましくは少なくとも1つの反応性基を含み、そして前駆体のFP−PCMを基材と結合させることは、FP−PCMの官能基を基材の官能基と化学的に反応させることを含んでいる。
【0079】
バインダーおよび架橋剤の更なる例としては、ポリマー、オリゴマーまたは複数の反応性官能基を備えた分子があり、それらは同じ種類の他のもの、他のFP−PCM、他のPCM、PCMを含むマイクロカプセル、他の添加剤を備えたマイクロカプセル、バインダー、架橋剤、ブレンド用ポリマー、相溶化剤、湿潤剤、添加剤などと、相互作用または結合することができる。この結合または相互作用は、共有結合またはイオン結合のいずれかであることができる。
【0080】
また、態様によっては、一連の反応性成分または改質剤を、組成物を作る時に加えてもよい。このような改質剤は、FP−PCMおよび/またはバインダーの架橋を可能として、向上した特性、例えば耐久性および他の特性を与えることができる。改質剤として用いることができる材料の例としては、ポリマー、例えばメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリ無水物、ウレタン、エポキシド、酸類、ポリ尿素、ポリアミンまたは複数の反応性官能基を備えたいずれかの化合物を挙げることができる。コーティング組成物に加えることができる改質剤の望ましい量は、乾燥質量で約1〜約20質量%、例えば乾燥質量で約1〜約5質量%の範囲であることができる。また、一連の添加剤を、組成物を作る時に加えることができる。例によっては、これらの添加剤は、マイクロカプセルの内部に含まれていてもよい。添加剤の例としては、吸水性、水吸い上げ能力、撥水性、耐汚染性(stain resistance)、耐汚染性(dirt resistance)、および防臭性を向上させるものが挙げられる。添加剤の更なる例としては、抗菌剤、防炎剤、界面活性剤、分散剤および増粘剤が挙げられる。添加剤および改質剤の更なる例を、以下に説明する。
【0081】
水分管理、親水性および極性材料−例えば、酸、グリコール、塩、ヒドロキシ基含有物質(例えば、天然広ロキシ基含有物質)、エーテル、エステル、アミン、アミド、イミン、ウレタン、スルホン、スルフィド、天然サッカリド、セルロース、糖およびタンパク質を含む、または基にしたもの。
【0082】
耐グリース、耐汚染(dirt)および耐汚染(stain)性−例えば、非官能性、非極性、および疎水性材料、例えばフッ化化合物、ケイ素含有化合物、炭水化物、ポリオレフィン、および脂肪酸。
【0083】
殺菌(Anti-microbial)、抗真菌(Anti-fungal)、抗菌(Anti-bacterial)性−例えば、金属(例えば、銀、亜鉛および銅)系の錯化金属化合物で活性酵素中心に抑制をもたらすもの、銅および銅含有材料(例えば、Cu+2およびCu+の塩)、例えばCupron Ind.から供給されるもの、銀および銀含有材料およびモノマー(例えば、Ag、Ag+、およびAg+2の塩)、例えばThomson Research Assoc. Inc.からULTRA-FRESHとして、およびClariant Corp.によってSANITIZED Silver and Zincとして供給されるもの、酸化剤、例えば、細胞膜を攻撃するアルデヒド、ハロゲンおよびペルオキシ化合物を含む、もしくは基にするもの(例えば、Vanson HaloSource Inc.からHALOSHIELDとして供給される)、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル(例えば、TRICLOSANとして供給される)(これは微生物の細胞膜に浸透および崩壊させる電気化学的な様式の作用を用いることによって、微生物の成長を阻害する)、第四級アンモニウム化合物、ビグアニド、アミン、およびグルコプロタミン(例えば、Aegis Environmentsによって、または、Clariant Corp.によってSANITIZED QUAT T99-19として供給される第四級アンモニウムシラン、およびAvecia Inc.によってPURISTAとして供給されるビグアニド)、ウンデシレン酸またはウンデシノールを基にしたキトサンひまし油誘導体(例えば、ウンデシレノキシポリエチレングリコールアクリレートもしくはメタクリレート)。
【0084】
態様によっては、これらの層は、乾燥質量で約1〜約100質量%、最も好ましくは約10質量%〜約75質量%の範囲の、FP−PCM単独での、またはマイクロカプセルと組み合わせての充填量を有することができる。これらのFP−PCM、バインダー、添加剤およびマイクロカプセルは、例えば、室温で液体もしくは固体であり、異なる形状または大きさを有していることによって、異なる材料で形成された殻を含んでいるか、または異なる官能基を含んでいることによって、あるいは異なる相転移材料を含んでいることによって、あるいはそれらの組み合わせで、互いに異なっているか、または同じであることができる。
【0085】
他の態様によれば、物品は基材およびデンプンもしくは改質デンプンを含んでいる。デンプンはポリマーであり、主にグルコースであり、結晶性部分を有していて、そしてヒドロキシル基を有している。例えば、デンプンは、本発明の態様によって構成された物品に用いられるFP−PCMとして好適である。大抵の場合において、デンプンは直鎖および分岐鎖の両方からなっている。異なるデンプンは、例えば、標準的な示差走査熱量(DSC)分析で見出されるような、種々の程度の結晶部分を含んでいる。結晶性部分は、分岐したデンプン上の整列した側鎖からなっている。温度と上昇は、場合によっては増加した水分と組み合わさって、脱結晶化をもたらす(これは、しばしばゼラチン化と称される)。低い温度(および水分)では、再結晶が起こる。デンプンは親水性であり、そして例えば、またFP−PCMの温度調整容量の拡大およびFP−PCMの回復の両方を提供する。デンプンおよびその誘導体ならびに他のいずれかの親水性FP−PCMを用いることの他の特徴は、その水分含量を調整することによる、その転移温度を調整する能力である。典型的には、水分量が高くなればなるほど、転移温度は低下する。
【0086】
本発明の種々の態様によれば、種々の天然デンプンを用いることができ、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンおよび小麦デンプンが挙げられるが、これらには限定されない。他の態様によれば、改質デンプン、例えば、本発明の物品用に特に改質されたデンプンまたは商業的に入手可能な改質デンプンを用いることができる。更なる態様によれば、このような改質デンプンは、その分子量を低下させる酸加水分解の結果(例えば、酸低粘調化(acid thinning))および/またはアミラーゼもしくはアミロペクチンの1つの中での濃縮化のためのその断片の分離の結果である。他の態様によれば、FP−PCMとして用いることができるデンプンは、新しい反応性基を付加することにより化学的に改質される。種々の他の態様によれば、化学的に改質されたデンプンは、食品工業、製紙工業およびその他のために調製された、商業的に入手可能な、化学的に改質されたデンプン、例えば、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酢酸デンプン、リン酸デンプン、デンプン、カチオン性デンプン、アニオン性デンプンおよびそれらの組合せから選択される。改質デンプンおよびそれらの製造方法が、Corn Chemistry and Technology、WatsonおよびRamstad編、American Association of Cereal Chemists Inc.発行、の第16章中に記載されており、その教示をここに参照することによって本明細書の内容とする。
【0087】
1つの態様によれば、デンプンもしくは改質デンプンは、共有結合を介して基材と結合する。他の態様によれば、デンプンはイオン結合を介して結合する。種々の他の態様によれば、共有結合したデンプンは、天然デンプン、低粘度化(thinned)デンプン、アミラーゼ−濃縮デンプン、アミロペクチン濃縮デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酢酸デンプン、リン酸デンプン、カチオン性デンプン、アニオン性デンプン、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる。他の態様によれば、イオン結合したデンプンが、酢酸デンプン、リン酸デンプン、デンプン、カチオン性デンプン、アニオン性デンプン、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0088】
本発明の1つの態様によって構成された物品は、基材ならびに、ゼラチン、ゼラチン溶液、および改質ゼラチンの少なくとも1種を含んでいる。ゼラチンは、主にグリシン−X−Y−トリプレットの繰り返しシーケンスを含んでおり、XとYはしばしばプロリンおよびヒドロキシプロリンアミノ酸である。これらのシーケンスは、ゼラチンの三重螺旋構造および熱的に、そして可逆的にゲルを形成するそれらの能力の原因である。
【0089】
これらの相転移構造の形成は、分子量、分子構造、分岐度、コラーゲンからのゼラチン抽出プロセス、コラーゲンの天然供給源、温度、pH、イオン濃度、架橋、反応性基、反応性基改質、イミノ酸の存在、純度、溶液濃度などに大きく依存する。
【0090】
ゼラチンは、Eldridge, J.E.、Ferry, J.D.、"Studies of the Cross- Linking Process in Gelatin Gels. III. Dependence of Melting Point on Concentration and Molecular Weight":、Journal of Physical Chemistry、1954年、第58巻、p.992〜995中に概説されているように、潜熱特性を与えることができる。
【0091】
ゼラチンは、多くの化合物、上記の詳細な説明中に概説されている架橋剤および改質剤などとの反応および架橋によって、容易に改質することができる。架橋剤、例えばアルデヒド、とりわけホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドを用いることができる。イソシアネートおよび無水物を、ゼラチンの性質の改質および基材に結合するための反応性官能基の付与の両方のために用いることができる。
【0092】
ゼラチンは、親水性であり、そして例えばまた、FP−PCMの温度調整容量を拡大し、またFP−PCMの回復の両方を提供する。ゼラチンとその誘導体、ならびにいずれかの他の親水性FP−PCMを用いる他の重要な特徴は、水分含量およびポリマー構造、すなわち分子量を調整することによってその転移温度を調整する能力である。
【0093】
1つの態様によれば、物品においては、ゼラチンまたは改質ゼラチンは、共有結合もしくはイオン結合で基材と結合している。種々の態様によれば、ゼラチンは基材内部に含まれる溶液の形態で存在することができる。
【0094】
図1および2は、本発明の種々の態様によって構成された物品によって用いられるFP−PCMの概略図である。両者は、主鎖および側鎖で構成されている。図1中のFP−PCMは、長鎖アルキルポリアクリレートもしくはポリメタクリレートを表し、図1A〜1Cでは、1Aは長鎖アルキルビニルエステルであり、1Bは長鎖ビニルエーテルであり、そして1Cは長鎖アルキルオレフィンである。
【0095】
図2Aおよび2Bは、長鎖グリコールポリアクリレートもしくはポリメタクリレートを表し、ここで2Aは長鎖グリコールビニルエステル、そして2Bは長鎖グリコールビニルエーテルである。
【0096】
図1および2中で、Rは、上記の1種もしくは2種以上の反応性基を表している。これらの図中で、官能基は主鎖に沿って描かれているが、これは1つの選択肢に過ぎない。上記のように、官能基は主鎖の末端に、側鎖上に、およびそれらのいずれかの組合せでもまた配置することができる。それぞれのPF−PCMは、単一のまたは複数の反応性基を有することができる。また、FP−PCMは、同一の化学的性質の複数の反応性基、または異なる化学的性質の反応性基の組合せを有することができる。
【0097】
図5A〜5Fを参照すると、図5Aは、塩基性もしくは高pHアミノ官能性基材とイオン的に相互作用している酸性もしくは低pHカルボキシル官能性FP−PCMを描いている。図5Bは、酸性もしくは低pHカルボキシル官能性基材とイオン的に相互作用している塩基性もしくは高pHアミノ官能性FP−PCMを描いている。図5Cは、中和され、そしてアニオン、例えばアミンで結合もしくは「架橋された」、塩基性もしくは高pHアミノ官能性FP−PCMおよび塩基性もしくは高pHアミノ官能性基材を描いている。図5Dは、中和され、そしてカチオン、例えば金属塩でイオン的に結合または「架橋された」、酸性もしくは低pHカルボキシル官能性FP−PCMおよび酸性もしくは低pHカルボキシル官能性基材を描いている。図5Eは、中和され、そして負に荷電された有機化合物、例えばジカルボキ官能性ポリマーまたはジカルボキシ官能性FP−PCMでイオン的に結合もしくは「架橋された」、塩基性もしくは高pHアミノ官能性FP−PCMおよび塩基性もしくは高pHアミノ官能性基材を描いている。図5Fは、中和され、そして正に荷電した有機化合物、例えばジアミン官能性ポリマーまたはジアミン官能性FP−PCMでイオン的に結合もしくは「架橋された」、酸性もしくは低pHカルボキシル官能性FP−PCMおよび酸性もしくは低pHカルボキシル官能性基材を描いている。
【0098】
図6A〜6Dを参照すると、図6AはFP−PCMエポキシとセルロース基材上のヒドロキシルとの反応に由来する共有エーテル結合を描いている。図6Bは、FP−PCMイソシアネートとタンパク質基材、例えば羊毛もしくは絹のアミンとの反応に由来する共有尿素結合を描いている。図6Cは、側鎖末端上のFP−PCMイソシアネートとセルロース基材のヒドロキシルとの反応に由来する共有ウレタン結合を描いている。図6Dは、アミン基、FP−PCM、多官能性イソシアネート架橋剤/バインダーとセルロース基材のヒドロキシル基との反応に由来する共有尿素およびウレタン結合を描いている。
【実施例】
【0099】
<例>
以下の例は、上記の具体的な特徴を通して作ることができる種々の組合せおよび態様の代表的例を提供するものであり、特許請求の範囲について限定的であることを意図したものではない。更に、以下に与えられた例は、全ての開示および説明によってより適切に捉えられる主題の完全性を、限定しないことが意図されている。本明細書の記載は、前述の要素のいずれかの組合せのための主題の開示としての役割をすることが意図されている。
【0100】
例1:ポリグリシジルメタクリレートの調製
攪拌機、コンデンサー、窒素パージおよび温度コントローラーを備えたフラスコ中で反応させた。
原料 質量
1)n-フェニルプロピオネート(Dow Chemical, Midland MI) 37.6
2)グリシジルメタクリレート (Dow Chemical, Midland MI) 85.5
3)ジ-t-アミルペルオキシド(Sigma- Aldrich Corp. Milwaukee WI) 5.4
4)ジ-t-アミルペルオキシド(Sigma-Aldrich Corp. Milwaukee WI) 0.2
【0101】
1番を、このフラスコへ加えて、窒素下で152℃に加熱した。2番および3番を混合して、5.5時間に亘ってゆっくりと反応フラスコに加えた。これを更に0.5時間反応させ、次いで4番を加えて、1.0時間反応させ、次いで冷却して、ポリグリシジルメタクリレートの69.4%溶液を得た。この溶液を、強制空気乾燥器中で、120℃で4時間乾燥させて、100%の乾燥したポリグリシジルメタクリレートを得た。
【0102】
例2:ポリマーPCMの調製
攪拌機、コンデンサー、窒素パージおよび温度コントローラーを備えたフラスコ中で反応させた。
原料 質量 官能基当量
1)95%パルミチン酸 36.15 0.141
2)上記例1の乾燥ポリGMA 20.06 0.141
【0103】
1番をこのフラスコへ加えて、窒素下で130℃に加熱した。2番を、0.5時間に亘ってゆっくりと反応フラスコに加えた。これを更に3.0時間反応させて、次いで冷却して、38.5℃の融点および63.1J/gの潜熱を有するポリマーPCMを得た。
【0104】
例3:ポリマーPCMの調製
攪拌機、コンデンサー、窒素パージおよび温度コントローラーを備えたフラスコ中で反応させた。
原料 質量 官能基当量
1)95%ミリスチン酸 34.67 0.152
2)上記例1の乾燥ポリGMA 21.60 0.152
【0105】
1番をこのフラスコへ加えて、窒素下で130℃に加熱した。2番を、0.5時間に亘ってゆっくりと反応フラスコに加えた。これを更に3.0時間反応させて、次いで冷却して、16.1℃の融点および29.8J/gの潜熱を有するポリマーPCMを得た。
【0106】
例4:ポリステアリルメタクリレートポリマーPCMの調製
攪拌機、コンデンサー、窒素パージおよび温度コントローラーを備えたフラスコ中で反応させた。
原料 質量
1)n-ペンチルプロピオネート(Dow Chemical, Midland MI) 36.1
2)SR324 ステアリルメタクリレート(Sartomer Co., Exton PA) 94.0
3)グリシジルメタクリレート(Dow Chemical, Midland MI) 6.0
4)ジ-t-アミルペルオキシド(Sigma-Aldrich Corp. Milwaukee WI) 2.7
5)ジ-t-アミルペルオキシド(Sigma-Aldrich Corp. Milwaukee WI) 0.5
【0107】
1番を、このフラスコへ加えて、窒素下で152℃に加熱した。2番、3番および4番を混合して、3.5時間に亘ってゆっくりと反応フラスコに加えた。これを更に1.0時間反応させ、次いで5番を加えて、1.5時間反応させ、次いで冷却して、31.1℃の融点および83.8J/gの潜熱を備えた、ポリステアリルメタクリレート−コ−グリシジルメタクリレートの69.7%溶液を得た。
【0108】
例5:向上した潜熱容量を備えた、洗浄耐久性の温度調整繊維製品の調製
【0109】
糊抜きをした、漂白していない、染色していない綿布帛を、ポリマーPCMの溶液中に、更なる架橋剤もしくは定着剤あり、およびなしで、浸漬することによって処理した。この浸漬した布帛を、次いで過剰の溶液を取り除くために当て物をし(padded)、190℃で4分間乾燥した。この布帛を温かい水道水で洗浄していずれかの未反応のポリマーを除去して、次いで一晩空気乾燥して、潜熱容量を測定した。この布帛を、次いでAATCC143に従って、5回洗浄した。
【0110】
【表1】
【0111】
例6
種々のポリマーPCMを、上記の例4と同様に作ったが、ペルオキシド開始剤の量を変化させることによって、または重合溶液の固形分を変化させることによって、分子量を変えた。
【0112】
【表2】
【0113】
例7
上記のポリマーPCM、4−123を乾燥して100%固形分として、次いで研究室および生産パイロットプラント中の両方で、種々のポリマー繊維溶液へ加えた。これらの溶液を、次いで繊維にするか、またはフィルムに成形するかのいずれかにして、凝固させ、そして乾燥してポリマーPCMで改質した製品を得た。溶液Aは、10%の最終的溶液を得るように、1:1のNaSCNi:H2O中に溶解させた、Acordisイタコン酸官能化(func.)CFPポリアクリロニトリルポリマーからなる。溶液Bは、26.6/3.9/69.5の質量比のセルロースジアセテート/H2O/アセトン中で、26.6%固形分の溶液を得るように、水/アセトン混合物中に溶解したNovaceta(登録商標)ジアセテートからなる。溶液Cは、Ortec Inc.で生成されたポリマーPCMを用いたNovacetaパイロット試験を基にした。
【0114】
【表3】
【0115】
当業者は、本発明、その利用およびここに記載した態様によって得られる実質的に同様の結果を達成せしめるその構成には、多くの変更および置き換えを行なうことができることを容易に理解することができる。従って、本発明を、説明した例示的な形態に限定しようという意図はない。多くの変更、修正および代替構成が、特許請求の範囲中に表されて開示された発明の範囲および精神の範囲内に入る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、および前記基材に結合された官能性ポリマー相転移材料を含んでなる物品。
【請求項2】
前記官能性ポリマー相転移材料が、前記基材に化学結合されている、請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記化学結合が、共有結合またはイオン結合の少なくとも1つである、請求項2記載の物品。
【請求項4】
前記結合が直接的な結合を通してなされる、請求項2記載の物品。
【請求項5】
前記結合が、結合化合物によってなされる、請求項2記載の物品。
【請求項6】
更なる官能性ポリマー相転移材料、更なる相転移材料、マイクロカプセル化された相転移材料、バインダー、製剤、添加剤、架橋剤、ブレンド用ポリマー、相溶化剤、湿潤剤、およびそれらの組合せからなる群から選ばれた少なくとも1つの成分を、更に含む、請求項1記載の物品。
【請求項7】
前記基材が、繊維製品、天然繊維、毛皮、合成繊維、再生繊維、織布、編物、不織布、発泡体、紙、革、プラスチック、ポリマー層、プラスチックフィルム、プラスチックシート、積層体またはそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項1記載の物品。
【請求項8】
前記官能性ポリマー相転移材料が、酸無水物基、アルケニル基、アルキニル基、アルキル基、アルデヒド基、アミド基、アミノ基およびそれらの塩、N−置換アミノ基、アジリジン基、アリール基、カルボニル基、カルボキシ基およびそれらの塩、エポキシ基、エステル基、エーテル基、グリシジル基、ハロ基、ヒドリド基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、チオール基、ジスルフィド基、シリルもしくはシラン基、尿素基、およびウレタン基、からなる群から選ばれる反応性基を含み、前記基材が、セルロース、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびナイロンの少なくとも1つを含む、請求項1記載の物品。
【請求項9】
前記官能性ポリマー相転移材料が、無水物基を含み、かつ前記基材が、セルロース、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびナイロンの少なくとも1つを含む、請求項2記載の物品。
【請求項10】
前記官能性ポリマー相転移材料が、イソシアネート基を含み、かつ前記基材が、セルロース、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびナイロンの少なくとも1つを含む、請求項2記載の物品。
【請求項11】
前記官能性ポリマー相転移材料が、アミン基およびアミド基からなる群から選ばれる反応性基を含み、かつ前記基材が、セルロース、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびナイロンの少なくとも1つを含む、請求項2記載の物品。
【請求項12】
前記官能性ポリマー相転移材料が、シラン基を含み、かつ前記基材が、セルロース、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびナイロンの少なくとも1つを含む、請求項2記載の物品。
【請求項13】
前記官能性ポリマー相転移材料が、二重結合を含む、請求項2記載の物品。
【請求項14】
−10℃〜100℃の範囲に少なくとも1つの相転移温度有することを特徴とする、請求項1記載の物品。
【請求項15】
少なくとも2.0J/gの相転移エンタルピーを有することを特徴とする、請求項1記載の物品。
【請求項16】
前記官能性ポリマー相転移材料が、親水性の結晶性部分を含む、請求項1記載の物品。
【請求項17】
前記官能性ポリマー相転移材料が、疎水性の結晶性部分を含む、請求項1記載の物品。
【請求項18】
前記基材が、デンプンおよび改質デンプンの少なくとも1つを含む、請求項1記載の物品。
【請求項19】
前記改質デンプンが、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酢酸デンプン、リン酸デンプン、デンプン、カチオン性デンプン、アニオン性デンプンおよびそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項18記載の物品。
【請求項20】
官能性ポリマー相転移材料を準備すること、基材を準備すること、および前記官能性ポリマー相転移材料と前記基材を結合させること、を含んでなる物品の製造方法。
【請求項21】
前記基材が、少なくとも1つの反応性基を有しており、かつ前記官能性ポリマー相転移材料を前記基材と結合することが、前記官能性ポリマー相転移材料の官能基と前記基材の官能基とを化学的に反応させることを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
物品の製造のための前駆体であって、前記前駆体が、官能性ポリマー相転移材料および少なくとも1種の他の成分を含む前駆体。
【請求項23】
前記少なくとも1種の他の成分が、有機溶媒、水性溶媒、他の官能性ポリマー相転移材料、他の相転移材料、相転移材料を含むマイクロカプセル、バインダー、架橋剤、ブレンド用ポリマー、相溶化剤、湿潤剤、添加剤、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項22記載の前駆体。
【請求項24】
官能性ポリマー相転移材料を含む前駆体を準備すること、基材を準備すること、および前記前駆体の前記官能性ポリマー相転移材料と前記基材とを結合させることを含んでなる、物品の製造方法。
【請求項25】
前記基材が、少なくとも1つの反応性基を有しており、かつ前記前駆体の前記官能性ポリマー相転移材料と前記基材とを結合させることが、前記官能性ポリマー相転移材料の反応性基と前記基材の反応性基とを化学結合させることを含んでいる、請求項24記載の方法。
【請求項1】
基材、および前記基材に結合された官能性ポリマー相転移材料を含んでなる物品。
【請求項2】
前記官能性ポリマー相転移材料が、前記基材に化学結合されている、請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記化学結合が、共有結合またはイオン結合の少なくとも1つである、請求項2記載の物品。
【請求項4】
前記結合が直接的な結合を通してなされる、請求項2記載の物品。
【請求項5】
前記結合が、結合化合物によってなされる、請求項2記載の物品。
【請求項6】
更なる官能性ポリマー相転移材料、更なる相転移材料、マイクロカプセル化された相転移材料、バインダー、製剤、添加剤、架橋剤、ブレンド用ポリマー、相溶化剤、湿潤剤、およびそれらの組合せからなる群から選ばれた少なくとも1つの成分を、更に含む、請求項1記載の物品。
【請求項7】
前記基材が、繊維製品、天然繊維、毛皮、合成繊維、再生繊維、織布、編物、不織布、発泡体、紙、革、プラスチック、ポリマー層、プラスチックフィルム、プラスチックシート、積層体またはそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項1記載の物品。
【請求項8】
前記官能性ポリマー相転移材料が、酸無水物基、アルケニル基、アルキニル基、アルキル基、アルデヒド基、アミド基、アミノ基およびそれらの塩、N−置換アミノ基、アジリジン基、アリール基、カルボニル基、カルボキシ基およびそれらの塩、エポキシ基、エステル基、エーテル基、グリシジル基、ハロ基、ヒドリド基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、チオール基、ジスルフィド基、シリルもしくはシラン基、尿素基、およびウレタン基、からなる群から選ばれる反応性基を含み、前記基材が、セルロース、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびナイロンの少なくとも1つを含む、請求項1記載の物品。
【請求項9】
前記官能性ポリマー相転移材料が、無水物基を含み、かつ前記基材が、セルロース、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびナイロンの少なくとも1つを含む、請求項2記載の物品。
【請求項10】
前記官能性ポリマー相転移材料が、イソシアネート基を含み、かつ前記基材が、セルロース、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびナイロンの少なくとも1つを含む、請求項2記載の物品。
【請求項11】
前記官能性ポリマー相転移材料が、アミン基およびアミド基からなる群から選ばれる反応性基を含み、かつ前記基材が、セルロース、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびナイロンの少なくとも1つを含む、請求項2記載の物品。
【請求項12】
前記官能性ポリマー相転移材料が、シラン基を含み、かつ前記基材が、セルロース、羊毛、毛皮、革、ポリエステルおよびナイロンの少なくとも1つを含む、請求項2記載の物品。
【請求項13】
前記官能性ポリマー相転移材料が、二重結合を含む、請求項2記載の物品。
【請求項14】
−10℃〜100℃の範囲に少なくとも1つの相転移温度有することを特徴とする、請求項1記載の物品。
【請求項15】
少なくとも2.0J/gの相転移エンタルピーを有することを特徴とする、請求項1記載の物品。
【請求項16】
前記官能性ポリマー相転移材料が、親水性の結晶性部分を含む、請求項1記載の物品。
【請求項17】
前記官能性ポリマー相転移材料が、疎水性の結晶性部分を含む、請求項1記載の物品。
【請求項18】
前記基材が、デンプンおよび改質デンプンの少なくとも1つを含む、請求項1記載の物品。
【請求項19】
前記改質デンプンが、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酢酸デンプン、リン酸デンプン、デンプン、カチオン性デンプン、アニオン性デンプンおよびそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項18記載の物品。
【請求項20】
官能性ポリマー相転移材料を準備すること、基材を準備すること、および前記官能性ポリマー相転移材料と前記基材を結合させること、を含んでなる物品の製造方法。
【請求項21】
前記基材が、少なくとも1つの反応性基を有しており、かつ前記官能性ポリマー相転移材料を前記基材と結合することが、前記官能性ポリマー相転移材料の官能基と前記基材の官能基とを化学的に反応させることを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
物品の製造のための前駆体であって、前記前駆体が、官能性ポリマー相転移材料および少なくとも1種の他の成分を含む前駆体。
【請求項23】
前記少なくとも1種の他の成分が、有機溶媒、水性溶媒、他の官能性ポリマー相転移材料、他の相転移材料、相転移材料を含むマイクロカプセル、バインダー、架橋剤、ブレンド用ポリマー、相溶化剤、湿潤剤、添加剤、およびそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項22記載の前駆体。
【請求項24】
官能性ポリマー相転移材料を含む前駆体を準備すること、基材を準備すること、および前記前駆体の前記官能性ポリマー相転移材料と前記基材とを結合させることを含んでなる、物品の製造方法。
【請求項25】
前記基材が、少なくとも1つの反応性基を有しており、かつ前記前駆体の前記官能性ポリマー相転移材料と前記基材とを結合させることが、前記官能性ポリマー相転移材料の反応性基と前記基材の反応性基とを化学結合させることを含んでいる、請求項24記載の方法。
【図1】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【公表番号】特表2011−528293(P2011−528293A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518770(P2011−518770)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/048551
【国際公開番号】WO2010/008908
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(503107196)アウトラスト テクノロジーズ,インコーポレイティド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/048551
【国際公開番号】WO2010/008908
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(503107196)アウトラスト テクノロジーズ,インコーポレイティド (10)
【Fターム(参考)】
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