説明

定着装置、画像形成装置

【課題】エア剥離方式のための空気を加熱するのに専用の空気加熱手段を必要としない簡潔な構造の定着装置を提供すること。
【解決手段】ニップ部から排出される記録媒体に対して空気を吹きつける吹き付けダクトを、加熱源、加熱源により加熱される加熱部、及び加熱部に接することによりニップ部を形成する加圧部と、を有する定着ユニットと連通する接続ダクトを介して接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
定着ベルト等の加熱部から用紙を剥離する剥離手段を備えた定着装置、及び前記定着装置を備えた画像形成装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの諸機能を備えた複合機等の画像形成装置においては、記録媒体に転写されたトナー像を定着する定着装置を備えている。
【0003】
このような定着装置においては、加熱源にて所定の温度まで昇温させた定着ローラや定着ベルト等の加熱部と、加熱部に対向して配置された加圧部とにより形成されるニップ部にトナー像を担持した記録媒体である用紙等を挟持し、圧接、加熱して、用紙に担持されたトナー(像)を溶融し、用紙に固着し、定着する。
【0004】
加熱部を加熱、昇温させる加熱源は、従来、ハロゲンランプやヒータ等の発熱部材が用いられていたが、複写機等の画像形成装置の高速化と省電力化の要求に対応して、電磁誘導により加熱部を昇温させる技術が提案されている。
【0005】
例えば鉄、コバルト、ニッケルあるいはこれらの合金等の中空円筒状の磁性金属部材からなる発熱ローラに交番磁束を付与して電磁誘導による渦電流を発生させ、渦電流により発熱ローラを発熱、昇温せしめ、発熱ローラに掛け渡された定着ベルトを昇温させる定着装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、用紙を圧接する定着ベルトに交番磁束を付与して電磁誘導による渦電流を定着ベルトに発生させ、発生する渦電流により定着ベルト自身を発熱、昇温せしめる定着装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
このような電磁誘導により定着ベルトを昇温させる定着装置は、従来のハロゲンランプ等を用いて定着ローラや定着ベルトを加熱、昇温させる方式等と比較して効率が高く、より少ない電力で、定着ベルトを所定の定着温度まで迅速に昇温させることができる。
【0008】
ところで、用紙を加圧、加熱する定着方式では、用紙に担持されたトナー(像)が定着ベルト等の加熱部に圧接、加熱されるので、加熱部に溶融したトナーが付着し、ニップ部を通過後の用紙が加熱部から分離されないことが生じる。
【0009】
対策として、加熱部の用紙に当接する面に、例えば、フッ素系樹脂等をコーティングし離型性を付与することが行われる。しかし、このような離型性を有する加熱部を使用しても、溶融したトナーは軟かくかつ粘性が高いため、加熱部の表面に付着しやすく、ニップ部を通過後の用紙が加熱部に付着して巻きつくことがある。そこでニップ部の用紙搬送方向下流側に剥離爪を配し、剥離爪にてニップ部から排出される用紙を加熱部から剥離し、巻き付きを防止することが提案されている(特許文献3参照)。
【0010】
しかし、このような剥離爪を備えた定着装置では、剥離爪により加熱部の表面に傷がつくことがあり、加熱部の寿命に影響する。また、用紙に担持されたトナー(像)の厚さが比較的薄く、かつその粘度が高い場合は問題なく剥離することができるが、トナーが多量に載った画像や、フルカラー画像のような、トナー(像)の厚さが比較的厚い場合は、ニップ部通過直後のトナー(像)が剥離爪によって傷付けられて画像欠陥を生じることがある。特に、カラー画像の定着の場合はトナーを十分に発色させる必要から、トナーを十分に加熱して溶融させなければならず、ニップ部通過直後のトナーは低粘度となっているので、ますます画像欠陥を生じやすくなることになる。
【0011】
剥離爪を用いずに、用紙と加熱部との間に空気を吹きつけ、用紙を加熱部から剥離する技術が提案されている(特許文献4参照)。
【0012】
このような、用紙と加熱部との間に空気を吹きつけ、用紙を加熱部から剥離する方式(以下エア剥離方式とも記す)は、画像、用紙、および定着ローラ等の加熱部に損傷を与えることなく、剥離が困難な用紙であっても、安定した剥離を行うことができる。
【0013】
このようなエア剥離方式では、用紙と加熱部との間に吹きつけられた空気が加熱部にも当たり、所定の温度まで昇温された加熱部の表面の温度を低下させることが起こりうる。加熱部の温度の低下は定着不良を引き起こす原因となる。そこで、特許文献4にては、吹きつける空気を加熱するための加熱機構を配し、吹きつける空気の温度を上昇させる技術も提案されている。これにより、加熱部の表面の温度の低下が防止され、定着不良の発生が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−77607号公報
【特許文献2】特開2005−77609号公報
【特許文献3】特開昭59−188681号公報
【特許文献4】特開2005−157179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献4に提案されているエア剥離方式の技術は、加熱部の表面の温度の低下が防止され、定着不良の発生が防止されるが、吹きつける空気を加熱するための専用の加熱機構を必要としており、構造が複雑になる。
【0016】
本発明は、エア剥離方式のための空気を加熱するのに専用の空気加熱手段を必要としない簡潔な構造の定着装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題は以下の手段により解決される。
【0018】
1.トナー像を記録媒体に定着する定着装置であって、
加熱源、前記加熱源により加熱される加熱部、及び前記加熱部に接することによりニップ部を形成する加圧部を有する定着ユニットと、
前記ニップ部から排出される記録媒体に対して空気を吹きつける吹き付けダクト、及び前記吹き付けダクトと前記定着ユニットとを連通して接続する接続ダクトを有する吹き付けユニットと、を備えること、
を特徴とする定着装置。
【0019】
2.前記定着ユニット内部の空気を、前記接続ダクトを介して前記吹き付けダクトに送風する送風部を備えることを特徴とする前記1に記載の定着装置。
【0020】
3.前記加熱源は、電磁誘導コイル、及び前記電磁誘導コイルが生成する磁束によって発熱される電磁誘導発熱部を有することを特徴とする前記1または2に記載の定着装置。
【0021】
4.前記送風部は、前記定着ユニットの外部からその内部に空気を吸引するとともに、該定着ユニットの内部に吸引された空気を前記接続ダクトに送風し、
前記電磁誘導コイルは、前記送風部により前記定着ユニットの内部に吸引された空気が前記接続ダクトに送風される経路に配置されていること、
を特徴とする前記3に記載の定着装置。
【0022】
5.前記吹き付けユニットの外部からその内部に空気を取り入れる取り入れ部を備えることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の定着装置。
【0023】
6.前記取り入れ部は前記吹き付けユニットの一部を開閉する開閉扉を有することを特徴とする前記5に記載の定着装置。
【0024】
7.トナー像を記録媒体に定着する定着装置を有する画像形成装置であって、
前記定着装置は、加熱源、前記加熱源により加熱される加熱部、及び前記加熱部に接することによりニップ部を形成する加圧部を有する定着ユニットと、前記ニップ部から排出される記録媒体に対して空気を吹きつける吹き付けダクト、及び前記吹き付けダクトと前記定着ユニットとを連通して接続する接続ダクトを有する吹き付けユニットと、を備えること、
を特徴とする画像形成装置。
【0025】
8.前記定着ユニット内部の空気を、前記接続ダクトを介して前記吹き付けダクトに送風する送風部を備えることを特徴とする前記7に記載の画像形成装置。
【0026】
9.前記加熱源は、電磁誘導コイル、及び前記電磁誘導コイルが生成する磁束によって発熱される電磁誘導発熱部を有することを特徴とする前記7または8に記載の画像形成装置。
【0027】
10.前記送風部は、前記定着ユニットの外部からその内部に空気を吸引するとともに、該定着ユニットの内部に吸引された空気を前記接続ダクトに送風し、
前記電磁誘導コイルは、前記送風部により前記定着ユニットの内部に吸引された空気が前記接続ダクトに送風される経路に配置されていること、
を特徴とする前記9に記載の画像形成装置。
【0028】
11.前記吹き付けユニットの外部からその内部に空気を取り入れる取り入れ部と、
前記取り入れ部から取り入れられる空気量を制御する制御部と、
前記吹き付けユニット内部を流れる空気の流れ方向に対して前記取り入れ部よりも下流側の空気の温度を検知する検知部と、を備え、
前記制御部は、前記検知部が検知した温度が、目標温度よりも高い場合には前記空気量を増やし、目標温度よりも低い場合には前記空気量を減らす制御を行うこと、
を特徴とする前記7〜10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0029】
12.前記取り入れ部は前記吹き付けユニットの一部を開閉する開閉扉を有し、
前記制御部は、前記検知部が検知した温度が、目標温度よりも高い場合には前記開閉扉を開くことにより前記空気量を増やし、目標温度よりも低い場合には前記開閉扉を閉じることにより前記空気量を減らすこと、
を特徴とする前記11に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、エア剥離方式のための空気を加熱するのに専用の空気加熱手段を必要としない簡潔な構造の定着装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る定着装置30を搭載した画像形成装置Aを説明する図である。
【図2】本発明の実施の形態の一例である定着装置30を説明する図である。
【図3】取り入れ部35の動作及び、取り入れ部35の動作に伴う空気の流れを説明する図である。
【図4】画像形成装置Aの動作を制御する制御系のブロック図である。
【図5】操作表示部80に表示される基本画面の例を示す図である。
【図6】基本画面におけるA01ボタンがタッチされたときに表示される用紙設定欄A1の画面を示す図である。
【図7】用紙設定欄A1におけるA12ボタンがタッチされたときの用紙設定欄A2を示す図である。
【図8】空気流A1の温度を制御する動作を説明するフローチャートである。
【図9】ハロゲンランプにより定着ベルトを昇温せせる定着装置の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本欄の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。
【0033】
図1は、本発明に係る定着装置30を搭載した画像形成装置Aを説明する図である。
【0034】
画像形成装置Aは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部によりカラー画像形成を行う。
【0035】
原稿台上に載置された原稿は画像読み取り装置SCの原稿画像走査露光装置の光学系により画像が走査露光され、ラインイメージセンサに読み込まれ、光電変換された画像情報信号は、画像処理部(非図示)において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、画像形成部の光書込部に入力される。
【0036】
4組の画像形成部はイエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Y、マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10M、シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10C、黒(K)色の画像を形成する画像形成部10Kであり、それぞれ共通する符号10の後に形成する色をあらわす符号Y、M、C、Kを付して表記する。
【0037】
画像形成部10Yは、像担持体である感光体ドラム1Y及びその周囲に配置された帯電部2Y、光書込部3Y、現像装置4Y及びドラムクリーナ5Yを有して構成される。
【0038】
同様に、画像形成部10Mは、像担持体である感光体ドラム1Mの周囲に配置された帯電部2M、光書込部3M、現像装置4M及びドラムクリーナ5Mを、画像形成部10Cは、像担持体である感光体ドラム1Cの周囲に配置された帯電部2C、光書込部3C、現像装置4C及びドラムクリーナ5Cを、画像形成部10Kは、像担持体である感光体ドラム1Kの周囲に配置された帯電部2K、光書込部3K、現像装置4K及びドラムクリーナ5Kを有して構成される。
【0039】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kにおけるそれぞれの感光体ドラム1Y、1M、1C、1K、帯電部2Y、2M、2C、2K、光書込部3Y、3M、3C、3K、現像装置4Y、4M、4C、4K及びドラムクリーナ5Y、5M、5C、5Kはそれぞれ共通する内容の構成である。以下、特に区別が必要な場合を除き符号Y、M、C、Kを付さずに表記することにする。
【0040】
画像形成部10は、光書込部3にて画像情報信号を感光体ドラム1に書き込み、感光体ドラム1に画像情報信号に基づく潜像を形成する。そして潜像は現像装置4により潜像にトナーを付着されて現像され、感光体ドラム1に可視画像であるトナー像が形成される。
【0041】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kのそれぞれ感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに、それぞれ、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、黒(K)色、の画像が形成される。
【0042】
中間転写ベルト6は、複数のローラにより巻回され、走行可能に支持されている。
【0043】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、走行する中間転写ベルト6上に一次転写部7Y、7M、7C、7Kにより逐次転写されてY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の各色層が重畳したカラー画像が形成される。
【0044】
用紙搬送部20は記録媒体である用紙Sを搬送する。用紙Sは給紙トレイ291、292、293に収容されており、第1給紙部21により給紙され、レジストローラ22を経て、二次転写部7Aに搬送され、用紙S上に中間転写ベルト6上のカラー画像が転写される。カラー画像が転写された用紙Sは、定着装置30にて熱と圧力とを加えることにより用紙S上のトナー像が定着され、定着搬送ローラ23及び排紙ローラ25を経て装置外に排出される。
【0045】
また、画像形成装置Aは用紙反転部24を備えており、定着がなされた用紙を定着搬送ローラ23から用紙反転部24に導いて表裏を反転し排出、あるいは用紙の両面に画像形成を行うことを可能としている。
【0046】
画像形成装置Aの本体上部に設置された操作表示部80から画像形成を行うに際しての用紙Sのサイズ、枚数等を設定できる。
【0047】
なお、画像形成装置Aの説明においては、カラー画像形成にて説明したが、モノクロ画像を形成する場合も本発明に含まれるものである。
【0048】
画像形成装置Aの本体上部に設置された操作表示部80から画像形成を行うに際しての条件(ジョブ条件)を入力することができる。操作表示部80から入力されるジョブ条件には、用紙Sのサイズ、坪量の選択結果が含まれる。
【0049】
画像形成装置Aは、制御部90を有している。制御部90は、操作表示部80から入力されたジョブ条件に基づいて収納されているプログラムを実行することにより画像形成装置Aの各機構部の動作を制御し、入力されたジョブ条件に基づく画像形成を実行する。また制御部90は定着装置30の動作、具体的には後述する定着装置30における取り入れ部35から取り入れる空気の量を制御する制御部としても機能する。
【0050】
操作表示部80はタッチパネル式LCDの画面を有し、画面を介して、図1における給紙トレイ291、292、293に収納されている用紙の種類、例えば用紙の厚さの設定を行うことができる。操作表示部80を介して行う用紙の厚さの設定については後述する。
【0051】
図2は、本発明の実施の形態の一例である定着装置30を説明する図である。
【0052】
定着装置30は、定着ユニット31と、吹き付けユニット32とからなる。定着ユニット31は、上部定着ハウジング31H1と下部定着ハウジング31H2からなる定着ハウジング31Hの内部に、発熱ローラ311と、発熱ローラ311と軸線が平行となるように配置した定着ローラ312と、発熱ローラ311と定着ローラ312とに掛け渡される無端の定着ベルト315を有するとともに、定着ローラ312に掛け渡された定着ベルト315を圧接する加圧ローラ313を有する。そして、不図示の定着ローラ駆動モータにより定着ローラ312を図示r2方向に回転することにより定着ベルト315を、図示矢印b方向に駆動させる。定着ベルト315は、掛け渡された発熱ローラ311と定着ローラ312との相互間を循環駆動され、発熱ローラ311をr1方向に回転させるとともに、加圧ローラ313を図示r3方向に回転させる。
【0053】
発熱ローラ311は、例えば鉄、コバルト、ニッケルあるいはこれらの合金等の中空円筒状の磁性金属部材からなる。低熱容量で昇温の速い構成とすることが好ましい。
【0054】
定着ローラ312は、例えばステンレススチール等の金属製の芯金を、耐熱性を有するシリコンゴムをソリッド状または発泡状にして被覆して構成される。そして加圧ローラ313は、例えばステンレススチール等の金属製の芯金の表面に耐熱性でかつトナー離型性の高い弾性部材を設けて構成される。
【0055】
なお定着ローラ312と加圧ローラ313は、定着ベルト315を介して圧接し、定着ベルト315と加圧ローラ313が当接する部位に、用紙Sを挟持し、加熱、加圧するためのニップ部Nが形成される。
【0056】
テンションローラ314は、発熱ローラ311と定着ローラ312とに掛け渡される定着ベルト315を図示側面からテンションローラバネ314Sの付勢力により押圧する。テンションローラ314が定着ベルト315を押圧することにより定着ベルト315に一定の張力を発生させ、定着ベルト315の発熱ローラ311と定着ローラ312間の循環駆動を確実に行わせるように作用する。
【0057】
発熱ローラ311の図示上方には、発熱ローラ311に対向して磁束発生部318が配置されている。
【0058】
磁束発生部318は、磁束発生手段である電磁誘導コイル318Lと、コイルガイド板318Gと、電磁誘導コイル318Lの外側に配したフェライト等の強磁性体からなる電磁誘導コイルコア318Cと、を有して構成される。
【0059】
電磁誘導コイル318Lは、一本の線材(細線を束ねたリッツ線)を、発熱ローラ311の軸方向に沿って巻きあわせるとともに、巻きあわせた部位が発熱ローラ311の外周面に対向して半円筒形状をなすコイルガイド板318Gに沿うように構成される。
【0060】
電磁誘導コイル318Lは、極性が高周波で変化する交番電流を供給する駆動電源(不図示)に接続されており、駆動電源から交番電流を供給されることにより、発熱ローラ311と対向する部位に磁極が双方向に交互に切り替わる交番磁束を形成する。
【0061】
交番磁束により過電流を発生し発熱する発熱ローラ311は、例えばニッケルのような磁性を有する金属またはそれらの合金を基材として形成される。
【0062】
電磁誘導コイル318Lにより形成される交番磁束は、電磁誘導コイル318Lに対向する発熱ローラ311に渦電流が発生せしめる。そして発生した渦電流と基材の電気抵抗とによるジュール熱により発熱ローラ311が発熱し昇温する。
【0063】
発熱ローラ311と定着ローラ312との間を図示矢印B方向に循環駆動される定着ベルト315は、発熱ローラ311に接触する過程で、用紙Sに担持されたトナーを溶融させ用紙Sに固着することができる温度に昇温される。
【0064】
定着ローラ312のr2方向の回転駆動によって、定着ベルト315は図2中の矢印b方向に循環駆動され、発熱ローラ311もr31時計方向に回転する。また、加圧ローラ313もr3方向に回転する。
【0065】
電磁誘導コイル318Lに高周波の交番電流を流すことで、電磁誘導コイル318Lと発熱ローラ311との対向部位に交番磁束が形成される。この交番磁束は、発熱ローラ311に渦電流を発生せしめる。
【0066】
そして渦電流と発熱ローラ311の電気抵抗によるジュール熱にて、発熱ローラ311が発熱し、発熱ローラ311に掛け渡され、当接する定着ベルト315を、トナーを溶融させることができる温度にまで昇温する。電磁誘導コイル318Lおよび電磁誘導コイル318Lが生成する磁束により発熱する電磁誘導発熱部として機能する発熱ローラ311は、加熱部である定着ベルト315を加熱する加熱源として機能する。
【0067】
定着ベルト315は、例えばポリイミド樹脂を基材とし、その表面をシリコンゴムやフッ素ゴム等の弾性部材からなる離型層で覆って構成した複合層構成をなす無端ベルトである。この定着ベルト315は、磁束発生部318により過電流が発生し昇温する発熱ローラ311との接触部位で発熱ローラ311からの熱伝導を受け、昇温される。なお定着ベルト315には、熱伝導性が良好で撓み等の変形が生じにくいものであれば適宜のものを採用できる。例えば、PFA等のフッ素系樹脂、ポリアミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂等の耐熱性を有するものをも用いることができる。
【0068】
昇温された定着ベルト315は、循環駆動されて、定着ローラ312に掛け渡された定着ベルト315と加圧ローラ313とが対向するニップ部Nにて二次転写部7Aから搬送されてきたトナー像を転写された用紙Sを挟持するとともに、加圧、加熱して用紙Sに担持されたトナーを溶融し、用紙Sに固着、すなわちトナー像を用紙Sに定着する。このように加圧ローラ313は、加熱部として機能する定着ベルト315に接してニップ部Nを形成する加圧部として機能する。
【0069】
図中31Fは吹き付けファンである。吹き付けファン31Fは上部定着ハウジング31H1に配されたハウジング第1開口31H1h1を介して定着装置30周囲の外気を上部定着ハウジング31H1内に取り入れ、磁束発生部318に吹き付ける。
【0070】
交番磁束を発生する電磁誘導コイル318Lは、電磁誘導コイル318L自身に通電されることによるジュール発熱及び発熱ローラあるいは定着ベルトからの熱放射のために、電磁誘導コイル318L及びその周辺の温度が上昇する。電磁誘導コイル318Lの温度上昇は電磁誘導コイル318Lの電気抵抗の上昇をもたらし、必要電力が増加してしまうことや、電磁誘導コイル318Lやその周辺の絶縁性を損なう原因となることがある。吹き付けファン31Fが吹き付ける空気により電磁誘導コイル318Lを含む磁束発生部318から熱が奪われるので、磁束発生部318の温度が適切な範囲に抑制され、このような問題の発生が防止される。
【0071】
電磁誘導コイル318Lから熱を奪い昇温された空気は、後述する送風ファン33Fの作用により、上部定着ハウジング31H1に配されたハウジング第2開口31H1h2を介して吹き付けユニット32に送り込まれる。
【0072】
吹き付けユニット32は、吹き付けダクト33と、接続ダクト34とからなる。接続ダクト34は、両端に接続第1開口34h1及び接続第2開口34h2を有する筐体である。そして、接続第1開口34h1を上部定着ハウジング31H1に配されたハウジング第2開口31H1h2に対向させて上部定着ハウジング31H1に接続され、図中鎖線にて示される接続第2開口34h2を後述する吹き付けダクト筐体33Hに配されたダクト第3開口33Hh3に対向させて吹き付けダクト筐体33Hに接続されて配置される。なお、接続第2開口34h2とダクト第3開口33Hh3とは同寸法、同形状に構成されている。
【0073】
接続第1開口34h1をハウジング第2開口31H1h2に対向させ、接続第2開口34h2をダクト第3開口33Hh3に対向させて配置することにより、定着ユニット31と吹き付けダクト32とは連通した状態、すなわち定着ユニット31と吹き付けダクト32間の空気の流通を可能にして接続される。
【0074】
吹き付けダクト33は、吹き付けダクト筐体33H、送風ファン33F、温度センサ33T、及び取り入れ部35を有する。
【0075】
吹き付けダクト筐体33Hは、ダクト第1開口33Hh1、ダクト第2開口33Hh2、ダクト第3開口33Hh3を有する筐体である。ダクト第1開口33Hh1、ダクト第2開口33Hh2、ダクト第3開口33Hh3を介しての空気の流通は自在である。吹き付けダクト筐体33Hは、ダクト第1開口33Hh1がニップ部Nの用紙搬送方向の下流側近傍に位置し、ダクト第2開口33Hh2が画像形成装置Aの左側面に開口するように配置される。図中鎖線にて示されるダクト第3開口33Hh3は後述する接続ダクト34に接続される。取り入れ部35は、吹き付けダクト筐体33Hにおけるダクト第2開口33Hh2とダクト第3開口33Hh3との間に配置される。
【0076】
送風ファン33Fは、送風ファン33Fは、定着ユニット31内部の空気を、接続ダクト34を介して吹き付けダクト33に送風する送風部として機能するとともに、吹き付けダクト筐体33H内の空気を第1開口33Hh1から吹き出させる。図示される矢印A1は第1開口33Hh1から吹き出す空気流をあらわす。
【0077】
ダクト第1開口33Hh1から吹き出す空気流A1がニップ部Nから送り出される用紙Sに吹き付けられることにより、トナー像の定着がなされた用紙Sが定着ベルト315から剥離され、用紙Sが定着ベルト315に付着して巻きつくことが防止される。
【0078】
検知部として機能する温度センサ33Tは、吹き付けユニット内部を流れる空気の流れ方向に対して、取り入れ部35よりも下流側に配置され、取り入れ部35よりも下流側の空気の温度を検知する。
【0079】
取り入れ部35は、開閉扉351、隔壁352、付勢バネ353、接続板355、ソレノイド35Sを有する。隔壁352には表裏を貫通する隔壁開口352hが配されている。
【0080】
開閉扉351はその一端を隔壁352に回動自在に蝶着されている。付勢バネ353は一端を開閉扉351に、他端を吹き付けダクト筐体33Hに固定された引っ張りバネであり、開閉扉351を隔壁352の方向に回動するように付勢する。一端を隔壁352に回動自在に蝶着され、付勢バネ353により付勢された開閉扉351は隔壁352に当接し、隔壁352に配された隔壁開口352hは開閉扉351により閉じられる。隔壁開口352hが開閉扉351により閉じられた状態では、隔壁開口352hを介しての隔壁352の表裏の空気の流通はなされない。
【0081】
ソレノイド35Sは通電すると可動鉄芯35SPが本体に引き込まれるタイプのソレノイドで、吹き付けダクト筐体33Hに固定されている。接続板355は一端をソレノイド35Sの可動鉄芯35SPに、他端を開閉扉351に、それぞれ回動自在に固定されている。ソレノイド35Sが通電されると、ソレノイド35Sは付勢バネ353の付勢力に抗して開閉扉351を隔壁352から離間させる方向に回動する。開閉扉351が隔壁352から離間すると、隔壁開口352hは開放され、隔壁開口352hを介しての隔壁352の表裏の空気の流通が可能になる。ソレノイド35Sの通電、非通電は、制御部90の制御のもとになされる。
【0082】
図3は、取り入れ部35の動作及び、取り入れ部35の動作に伴う空気の流れを説明する図である。図3(a)は、取り入れ部35のソレノイド35Sが通電されない状態を示す図である。ソレノイド35Sが通電されない状態では、開閉扉351は付勢バネ353の付勢力により隔壁352に当接し、隔壁352に配された隔壁開口352hは開閉扉351により塞がれる。隔壁開口352hが開閉扉351により塞がれた状態では、隔壁開口352hを介しての隔壁352の表裏の空気の流通はなされない。
【0083】
図中A3は、接続ダクト34に送風される空気の流れ(空気流)を示す。空気流A3は、接続ダクト34に送風される過程で磁束発生部318に沿って流れ、電磁誘導コイル318Lを含む磁束発生部318から熱を奪い、磁束発生部318を冷却する。したがって、接続ダクト34に送風される空気流A3は磁束発生部318から奪った熱により昇温されている。
【0084】
接続ダクト34に送り込まれた昇温された空気は吹き付けダクト33に送り込まれ、送風ファン33Fにより空気流A2となり、さらにダクト第1開口33Hh1から吹き出す空気流A1となってニップ部Nから送り出される用紙Sに吹き付けられる。空気流A1が用紙Sに吹き付けられることにより、トナー像の定着がなされた用紙Sが定着ベルト315に付着して巻きつくことが防止され、定着ベルト315から剥離される。このように、用紙Sと定着ベルト315との間に空気を吹きつけ、用紙Sを定着ベルト315から剥離することは、定着ベルト315や用紙Sに当接する部材を必要としないので、定着ベルト315の表面に傷をつけることなく、また、ニップ部Nを通過直後のトナー像を傷つけて画像欠陥を生じることがない。
【0085】
また、ダクト第1開口33Hh1から吹き出す空気流A1は、磁束発生部318から奪った熱により昇温されているので、空気流A1の吹きつけによる定着ベルト315(昇温されている)の表面の温度の低下が抑制され定着不良の発生を防止できる。さらには、温度が低下した定着ベルト315を定着可能な温度に昇温させるために消費されるエネルギを節約できる。また、空気流A1は磁束発生部318を冷却し、磁束発生部318から奪った熱により昇温された空気を利用するので、空気流A1の昇温のための専用の加熱源を必要とせず定着装置の構成を簡素化できる。
【0086】
ダクト第1開口33Hh1から吹き出す空気流A1は、ニップ部Nの用紙搬送方向下流側にて定着ベルト315とともにニップ部Nから排出される定着済みの用紙にも吹き付けられる。
【0087】
前述のように、定着ベルト315の温度を低下させないためには空気流A1の温度は、高い方が好ましい。
【0088】
ところで、定着済みの用紙が急激に冷却されることにより、カール(用紙の反り)が発生することが知られている。そのため、カール防止の観点からも定着済みの用紙に吹き付ける空気流の温度は高い方が好ましい。発明者は、この点に着目し、発生するカールの度合いは用紙の厚さ(紙厚)に依存し、薄い紙は発生するカールの度合いが顕著であり、厚い紙は薄い紙ほどに顕著ではないことを実験により見出した。このようにカールが紙厚に依存する理由の1つとして、冷却される用紙の表面の収縮と用紙のこしが考えられている。
【0089】
一方で、所定の温度よりも高い温度の空気流はニップ部Nから排出された用紙S上に固着されたトナーを軟化させる原因となる。もし軟化されたトナーを保持する用紙Sが定着搬送ローラ23や排紙ローラ25を通過すると、トナーが荒らされて画像不良を惹起する原因となることがある。よって、トナーの軟化による画像不良を防止する観点からは定着済みの用紙に吹き付ける空気流の温度は高すぎないことが好ましい。
【0090】
以上の事から、発明者は、上記のカール防止と画像不良を考慮し、定着済みの用紙に吹き付ける空気流の温度を、用紙の紙厚によって変えることが好ましいことを見出した。
【0091】
画像形成、定着を大量に行う場合は、磁束発生部318の連続動作時間が長くなるので磁束発生部318の温度上昇が大きくなる。したがって、磁束発生部318から熱を奪い接続ダクト34に送風される空気流A3の温度が高くなり、ダクト第1開口33Hh1から吹き出す空気流A1の温度も高くなる。
【0092】
前述の定着装置30を搭載した画像形成装置Aは、空気流A1の温度を予め設定した範囲に制御し、定着ベルト315の温度の低下による定着不良の発生及び用紙のカール発生を防止するとともに、高すぎる温度の空気流の吹きつけによる画像不良の発生を防止する。
【0093】
前述のように定着装置30は、吹き付けダクト33に磁束発生部318から奪った熱により昇温された空気を導入し、ダクト第1開口33Hh1から空気流A1として吹き出す。画像形成装置Aは、吹き付けダクト33空気の温度が所定の値を越える場合には取り入れ部35を介して吹き付けダクト33に定着装置外部の空気を取り入れ、取り入れた空気を混ぜることにより空気流A1の温度を予め設定した範囲に制御する。
【0094】
図3(b)は、ソレノイド35Sが通電された状態を示す図である。ソレノイド35Sが通電されと、ソレノイド35Sは付勢バネ353の付勢力に抗して開閉扉351を隔壁352から離間させる方向に回動する。開閉扉351が隔壁352から離間すると、隔壁開口352hは開放され、隔壁開口352hを介しての隔壁352の表裏の空気の流通が可能になる、すなわち、取り入れ部35を介して吹き付けダクト33に定着装置30の外部の空気を取り入れることが可能になる。
【0095】
送風ファン33Fは、吹き付けダクト33内の空気により第1開口33Hh1に向かう空気流A2を形成するが、取り入れ部35の隔壁開口352hが開放されたときは、画像形成装置Aの左側面に開口しているダクト第2開口33Hh2及び取り入れ部35を介して外部より空気を吹き付けダクト33内に取り入れる。矢印A4は、取り入れ部35を介して取り入れる空気の流れ(空気流A4)をあらわす。
【0096】
取り入れ部35を介して取り入れた空気(空気流A4)は、送風ファン33Fの作用により、接続ダクト34を経由して送り込まれた空気(空気流A3)と混ぜ合わされ、ダクト第1開口33Hh1に向かう空気流A2となる。このとき空気流A2の温度は、接続ダクト34を経由して送り込まれた昇温された空気(空気流A3)の温度より低くなる。
【0097】
画像形成装置Aは、空気流A2の温度が予め設定した温度を超えるときは、取り入れ部35の開閉扉351を動作させて、隔壁開口352hを介して外部の空気を吹き付けダクト33内に取り入れる。吹き付けダクト33内に取り入れられた外部の空気は、接続ダクト34を経由して送り込まれた空気(空気流A3)と混ぜ合わせられ、空気流A2の温度が予め設定した範囲に制御される。
【0098】
具体的には、制御部90が、空気流A2の温度を検知する温度センサ33Tの検知結果を踏まえてソレノイド35Sの通電、非通電を制御することにより、取り入れ部35から取り入れる空気の量を制御し、第1開口33Hhから吹き出す空気流A1により定着ベルト315の温度を低下させず、かつ、用紙S上に固着されたトナーを軟化することによる画像不良の発生を防止する。さらには、用紙の厚さ(紙厚)によりソレノイド35Sの通電、非通電を行う温度を変えることにより、空気流A1を、紙厚が薄い用紙ではカール防止に好ましい温度範囲に、紙厚が厚い用紙では画質に好ましい温度範囲に制御している。なお、用紙やトナーの特性により空気流A1の温度を制御する必要がない場合には、取り入れ部35を設けず、ダクト第2開口33Hh2を閉鎖した構成として、吹き付けダクト33内に外部の空気取り入れない構成としても良い。
【0099】
画像形成装置Aは、操作表示部80を介して入力されたジョブ情報により画像形成を行う。操作表示部80を介して入力されるジョブ情報には記録媒体である用紙のサイズ、紙厚の情報が含まれる。
【0100】
図4は、画像形成装置Aの動作を制御する制御系のブロック図である。なお、同図では本発明の実施形態の動作に必要な部分の周囲を中心に記載してあり、その他の画像形成装置として周知の部分については省略してある。
【0101】
制御部90は、CPU91、ROM92、RAM93を有するコンピュータシステムである。制御部90は、画像形成装置Aの画像読み取り装置SC、画像形成部10Y、10M、10C、10K、用紙搬送部20、定着装置30、操作表示部80の動作を制御するとともに、定着装置30における取り入れ部35から取り入れる空気の量を制御する制御部として機能する。
【0102】
CPU91は、ROM92に収納されたプログラムを実行することにより操作表示部80を介して入力されたジョブ条件に基づいて画像形成装置Aの各部の動作を制御し、用紙S1に画像形成を行う。
【0103】
ROM92は、操作表示部80を介して入力されたジョブ条件に基づいて画像形成装置Aを動作させるためのプログラム及び定数データを収納する。本実施の形態においては、定着装置30における空気流A1の温度を制御するための2つの定数t1、t2を収納している。
【0104】
ここで、t1は、空気流A1を、紙厚の薄い用紙にカールを発生させることなく、用紙に固着されたトナーを軟化することのない温度にする吹き付けダクト33内の空気温度の上限値である。またt2は、紙厚の厚い用紙にカールを発生させることなく、用紙に固着されたトナーを軟化することのない温度にする吹き付けダクト33内の空気温度の上限値である。紙厚の厚い用紙は、低い温度の空気流A1を吹き付けてもカールの発生が紙厚の薄い用紙に比較して顕著ではないので、t2はt1より低い温度、すなわち、用紙に固着されたトナーを軟化の危険が少ない温度に設定される。2つの定数t1、t2は、画像形成装置Aの構成及び使用される用紙、トナー等の特性をふまえた実験を経て予め定められた数値である。
【0105】
また、ROM92は、操作表示部80に表示する画面の情報を収納している。操作表示部80に表示する画面については後述する。
【0106】
RAM93は、複数の情報の収納と読み出しが可能であり、CPU91が、画像形成装置Aの制御を実行する際に生成したデータあるいは取得したデータを収納する。RAM93が収納するデータには、操作表示部80を介して入力された用紙の紙厚情報を含むジョブ条件情報、温度センサ33Tが検知した空気流A2の温度の情報tが含まれる。
【0107】
99はバスであり、バス99には、制御部90とともに、画像形成装置Aの各部が接続されており、相互の情報の授受を可能にしている。
【0108】
そして、制御部90は、操作表示部80から入力されたジョブ情報に基づいて、バス99に接続された各装置、機構部の動作を制御し、ジョブ情報に基づいて選定された用紙に、ジョブ情報に基づいて画像形成を行わせる。
【0109】
また、用紙の紙厚により空気流A1の温度を予め設定した範囲に制御し、定着ベルト315の温度の低下による定着不良の発生及び用紙のカール発生を防止するとともに、高すぎる温度の空気流の吹きつけによる画像不良の発生を防止する。
【0110】
図5は操作表示部80に表示される基本画面の例を示す図である。
【0111】
基本画面には用紙設定欄A0が表示され、用紙設定欄A0にA01ボタン、A02ボタン、A03ボタンが表示される。A01ボタンには、給紙トレイ291に収納されている用紙のサイズと、用紙の厚さにより区分された用紙の種類情報が表示される。同様に、A02ボタンには、給紙トレイ292に収納されている用紙のサイズと種類情報が、A03ボタンには、給紙トレイ293に収納されている用紙のサイズと種類情報が表示される。同図に示す例においては、給紙トレイ1にはA4サイズの普通紙と区分される用紙が、給紙トレイ2にはA3サイズの普通紙と区分される用紙が、給紙トレイ3にはA4サイズの厚手紙と区分される用紙が収納されていることが表示されている。なお、普通紙あるいは厚手紙の区分は収納された用紙の厚さ(坪量)によるもので詳しくは後述する。
【0112】
ユーザが、基本画面に表示されるA01、A02、A03ボタンをタッチすることにより、給紙トレイ291、292、293に収容する用紙のサイズや厚さの設定を行うことができる。
【0113】
図6は、基本画面におけるA01ボタンがタッチされたときに表示される用紙設定欄A1の画面を示す図である。用紙設定欄A1にはA11ボタン、A12ボタン、A1Yボタンが表示されるとともに、A11ボタンのとなりの表示欄A111に給紙トレイ291に収納されている用紙のサイズ(A4)が、A12ボタンのとなりの表示欄A121に給紙トレイ291に収納されている用紙の厚さを表す尺度である坪量の範囲、64〜99g/m、が、表示される。
【0114】
図6において、給紙トレイ291に収納されている用紙の坪量が表示欄A121に表示された範囲にない場合にはA12ボタンをタッチすることによりその値を変更することができる。
【0115】
図7は、用紙設定欄A1におけるA12ボタンがタッチされたときの用紙設定欄A2を示す図である。用紙設定欄A2にはA21ボタン、A22ボタン、A23ボタン、A2Yボタンが表示される。A21ボタンには坪量の範囲、64〜99g/m、が、A22ボタンには坪量の範囲、100〜199g/m、が、A23ボタンには坪量の範囲、200〜299g/m、が、表示される。
【0116】
ユーザは、給紙トレイ291に収納されている用紙の坪量が含まれるA21ボタン、A22ボタン、A23ボタンのいずれかをタッチし、A2Yボタンをタッチすると用紙設定欄A2は用紙設定欄A1に切り替わり、表示欄A121に用紙設定欄A2にてタッチした用紙の坪量の範囲が表示される。
【0117】
坪量の範囲が確定すると、用紙設定欄A1に示されるA1Yボタンをタッチすると、確定された用紙の坪量の範囲情報は制御部90のRAM93に収納された後、基本画面にもどり設定が終了する。
【0118】
なお基本画面においては、給紙トレイ291、292、293に収容されている用紙の種類を用紙の厚さ(坪量)により区分して普通紙、あるいは厚手紙として表示する。本実施の形態においては、坪量99g/m、以下の用紙を普通紙、坪量100g/m、以上の用紙を厚手紙としてA01ボタン、A02ボタン、A03ボタンに表示される。
【0119】
なお、A23ボタンに表示される坪量の範囲の最低値34g/m、からA23ボタンに表示される坪量の範囲の最高値299g/m、までの範囲が画像形成装置Aが対応できる用紙の厚さの範囲であるが、本発明はこの数値範囲に限定されるものではなくもっと広い範囲に対応できるようにしても良い。
【0120】
次に、画像形成装置Aが空気流A1の温度を制御する動作を説明する。
【0121】
図8は、空気流A1の温度を制御する動作を説明するフローチャートである。なお、このフローチャートを実行するためのプログラムは、ROM92に収納されており、CPU91が実行する。
【0122】
CPU91は、ステップS1にてジョブ実行中(画像形成中)の用紙が普通紙であるか否かを確認する。ジョブ実行中の用紙の種別は、操作表示部80から入力されたジョブ情報に基づいて給紙トレイ291、292、293のいずれかから選定した用紙の紙厚による。CPU91は選定した用紙の坪量が99g/m以下の用紙を普通紙である、と判断し、坪量100g/m以上の厚手紙を普通紙ではない、と判断する。
【0123】
ジョブ実行中の用紙が普通紙であるとき(ステップS1 Yes)はステップS2に移行する。
【0124】
ステップS2では、空気流A2の温度を検知する温度センサ33Tの検知結果tがROM92に収納されている定数t1以上であるか否かを確認する。t1は空気流A1を、紙厚の薄い用紙にカールを発生させることなく、用紙に固着されたトナーを軟化することのない温度にする吹き付けダクト33内の空気温度の上限値である。
【0125】
CPU91は、tがt1以上である(ステップS2 Yes)ときはステップS4に移行し、ソレノイド35SをON(通電)させ、ステップS6に移行する。ステップS4におけるソレノイド35Sの通電により開閉扉351が隔壁352から離間し、開放された隔壁開口352hを介して引きつけダクト33内に外部の空気が取り入れられる。外部の空気の取り入れにより、吹き付けダクト33内の空気温度は低下する。
【0126】
ステップS2にてtがt1以上でない(ステップS2 No)ときはステップS5に移行し、ソレノイド35SをOFF(非通電)させ、ステップS6に移行する。ステップS5におけるソレノイド35Sの非通電により開閉扉351が隔壁352から当接し、閉鎖された隔壁開口352hを介してのダクト33内への外部の空気の取り入れはなされない。外部の空気の取り入れがなされないことにより、吹き付けダクト33内の空気温度は低下せず、磁束発生部318の動作に伴い上昇する。
【0127】
また、前述のステップS1にて、ジョブ実行中の用紙が普通紙でない(ステップS1 No)ときはステップS3に移行する。
【0128】
ステップS3では、空気流A2の温度を検知する温度センサ33Tの検知結果tがROM92に収納されている定数t2以上であるか否かを確認する。t2は空気流A1を紙厚の厚い用紙にカールを発生させることなく、用紙に固着されたトナーを軟化することのない温度にする吹き付けダクト33内の空気温度の上限値である。
【0129】
CPU91は、tがt2以上である(ステップS3 Yes)ときはステップS4に移行し、ソレノイド35SをON(通電)させ、ステップS6に移行する。ステップS4におけるソレノイド35Sの通電により、開放された隔壁開口352hを介して引きつけダクト33内に外部の空気が取り入れられ、吹き付けダクト33内の空気温度は低下する。
【0130】
ステップS3にてtがt2以上でない(ステップS3 No)ときはステップS5に移行し、ソレノイド35SをOFF(非通電)させ、ステップS6に移行する。ステップS5におけるソレノイド35Sの非通電により閉鎖された隔壁開口352hを介してのダクト33内への外部の空気の取り入れはなされず、吹き付けダクト33内の空気温度は低下せず、磁束発生部318の動作に伴い上昇する。
【0131】
ステップS6では、ジョブ実行が継続中であるか否かを確認する。ジョブ実行が継続中である(ステップS6 Yes)ときはステップSに戻り、ステップS1〜ステップS6の工程をジョブ実行が終了するまでくり返す。
【0132】
ステップS6にて、ジョブ実行が継続中ではない、すなわちジョブ実行が終了した(ステップS6 No)ときはステップS7に移行する。
【0133】
ステップS7では、ソレノイド35SをOFF(非通電)させて隔壁開口352hを閉鎖し、空気流A1の温度を制御する動作を終了する。
【0134】
このように、CPU91は、温度センサ33Tが検知した吹き付けダクト33内の温度が目標温度よりも高い場合には開閉扉351を開いて外部から取り入れる空気の量を増やし、目標温度よりも低い場合には開閉扉351を閉じて外部から取り入れる空気の量を減らすことにより空気流A1の温度を適切な範囲に制御する。
【0135】
また、用紙の種類、本実施の形態においては用紙の厚さ(坪量)の範囲、に対応した目標温度を設定することにより、用紙の種類に応じた適切な温度の空気流A1を吹き付けることができる。なお、本実施の形態においては用紙の種類を、用紙の厚さ(坪量)の範囲により区分しているが、例えば塗工紙か否か等、用紙の表面処理の有無のちがい等により区分しても良い。
【0136】
また、定着装置30においては、電磁誘導コイル318Lによる交番磁束により発熱ローラ311に渦電流を発生させて発熱させ、発熱ローラ311に当接する定着ベルト315を昇温しているが、定着ベルトを、例えばニッケル電鋳体を基材とした無端ベルトとし、定着ベルト自身に渦電流を発生させて定着ベルト自身を直接発熱させる構成にしても良い。またさらには定着ベルトを電磁誘導に依らず、例えばハロゲンランプ等の発熱部材により昇温させる構成にしても良い。
【0137】
図9はハロゲンランプにより定着ベルトを昇温せせる定着装置の一例を説明する図である。図中311Xは上部ローラであり、中心部にハロゲンヒータHH1を内包する。また312Xは定着ローラであり、中心部にハロゲンヒータHH2を内包する。その他、図2に示した定着装置と同じ符号を付された部材は、図2にて説明した部材と同じ機能を有する。
【0138】
上部ローラ311Xと定着ローラ312Xとに掛け渡される無端の定着ベルト315は、ハロゲンヒータHH1により加熱、昇温される上部ローラ311XとハロゲンヒータHH2により加熱、昇温される定着ローラ312Xに当接して昇温され、定着ベルト315と加圧ローラ313が当接するニップ部Nに、用紙Sを挟持し、加熱、加圧して用紙Sに担持されたトナー像を定着する。
【0139】
上部定着ハウジング31H1内の、定着ベルト315、上部ローラ311X及び定着ローラ312Xにより昇温された空気は、吹き付けファン31F、送風ファン33Fの作用により吹き付けユニット32のダクト第1開口33Hh1を介して空気流A1となり、ニップ部Nから排出される用紙Sに引きつけられ、定着ベルト315から剥離する。
【0140】
昇温されている空気流A1の吹きつけによる定着ベルト315(昇温されている)の表面の温度の低下が抑制され定着不良の発生を防止できる。さらには、温度が低下した定着ベルト315を定着可能な温度に昇温させるために消費されるエネルギを節約できる。
【0141】
CPU91は、図8に示されるフローチャートを実行して、空気流A1の温度を制御する。すなわち、温度センサ33Tが検知した吹き付けダクト33内の温度が目標温度よりも高い場合には開閉扉351を開いて外部から取り入れる空気の量を増やし、目標温度よりも低い場合には開閉扉351を閉じて外部から取り入れる空気の量を減らすことにより空気流A1の温度を適切な範囲に制御する。
【符号の説明】
【0142】
A 画像形成装置
10Y、10M、10C、10K 画像形成部
6 中間転写ベルト
7Y、7M、7C、7K 一次転写部
7A 二次転写部
20 用紙搬送部
21 給紙部
24 用紙反転部
25 排紙ローラ
291、292、293 給紙トレイ
30 定着装置
31 定着ユニット
31F 吹き付けファン
31H 定着ハウジング
31H1 上部定着ハウジング
31H2 下部定着ハウジング
311 発熱ローラ
312 定着ローラ
313 加圧ローラ
314 テンションローラ
315 定着ベルト
318 磁束発生部
32 吹き付けユニット
33 吹き付けダクト
33F 送風ファン
33H 吹き付けダクト筐体
33T 温度センサ
34 接続ダクト
35 取り入れ部
35S ソレノイド
35SP 可動鉄芯
351 開閉扉
352 隔壁
353 付勢バネ
355 接続板
80 操作表示部
90 制御部
N ニップ部
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を記録媒体に定着する定着装置であって、
加熱源、前記加熱源により加熱される加熱部、及び前記加熱部に接することによりニップ部を形成する加圧部を有する定着ユニットと、
前記ニップ部から排出される記録媒体に対して空気を吹きつける吹き付けダクト、及び前記吹き付けダクトと前記定着ユニットとを連通して接続する接続ダクトを有する吹き付けユニットと、を備えること、
を特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着ユニット内部の空気を、前記接続ダクトを介して前記吹き付けダクトに送風する送風部を備えることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記加熱源は、電磁誘導コイル、及び前記電磁誘導コイルが生成する磁束によって発熱される電磁誘導発熱部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記送風部は、前記定着ユニットの外部からその内部に空気を吸引するとともに、該定着ユニットの内部に吸引された空気を前記接続ダクトに送風し、
前記電磁誘導コイルは、前記送風部により前記定着ユニットの内部に吸引された空気が前記接続ダクトに送風される経路に配置されていること、
を特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記吹き付けユニットの外部からその内部に空気を取り入れる取り入れ部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記取り入れ部は前記吹き付けユニットの一部を開閉する開閉扉を有することを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
トナー像を記録媒体に定着する定着装置を有する画像形成装置であって、
前記定着装置は、加熱源、前記加熱源により加熱される加熱部、及び前記加熱部に接することによりニップ部を形成する加圧部を有する定着ユニットと、前記ニップ部から排出される記録媒体に対して空気を吹きつける吹き付けダクト、及び前記吹き付けダクトと前記定着ユニットとを連通して接続する接続ダクトを有する吹き付けユニットと、を備えること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記定着ユニット内部の空気を、前記接続ダクトを介して前記吹き付けダクトに送風する送風部を備えることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記加熱源は、電磁誘導コイル、及び前記電磁誘導コイルが生成する磁束によって発熱される電磁誘導発熱部を有することを特徴とする請求項7または8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記送風部は、前記定着ユニットの外部からその内部に空気を吸引するとともに、該定着ユニットの内部に吸引された空気を前記接続ダクトに送風し、
前記電磁誘導コイルは、前記送風部により前記定着ユニットの内部に吸引された空気が前記接続ダクトに送風される経路に配置されていること、
を特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記吹き付けユニットの外部からその内部に空気を取り入れる取り入れ部と、
前記取り入れ部から取り入れられる空気量を制御する制御部と、
前記吹き付けユニット内部を流れる空気の流れ方向に対して前記取り入れ部よりも下流側の空気の温度を検知する検知部と、を備え、
前記制御部は、前記検知部が検知した温度が、目標温度よりも高い場合には前記空気量を増やし、目標温度よりも低い場合には前記空気量を減らす制御を行うこと、
を特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記取り入れ部は前記吹き付けユニットの一部を開閉する開閉扉を有し、
前記制御部は、前記検知部が検知した温度が、目標温度よりも高い場合には前記開閉扉を開くことにより前記空気量を増やし、目標温度よりも低い場合には前記開閉扉を閉じることにより前記空気量を減らすこと、
を特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−93407(P2012−93407A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238279(P2010−238279)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】