説明

定着装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】定着装置の定着ローラを加熱するのに用いられるヒータを、ウォームアップ用と定着動作用を独立させて、別個のヒータを用いる定着装置において、定着動作用のヒータが故障しても、暫定的に継続して使用が可能な定着装置を提供する。
【解決手段】回転する定着ローラ71と加圧ローラ72とが接して形成されるニップ部に記録用紙等の記録材を通過させて、該記録材上の未定着画像を定着させる定着動作を行う定着装置を、定着ローラ71には、定着動作を行う前に、低温状態にある該定着ローラ71をウォームアップする補助ヒータHL4と、定着動作の時に、該定着ローラ71を加熱する少なくとも1つの定着ヒータHL1,HL2とを備えると共に、定着動作の時に、少なくとも1つの定着ヒータHL1,HL2が使用不能である場合は、全ての定着ヒータHL1,HL2に代えて、補助ヒータHL4を使用するようにして構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、及び、ファクシミリ装置などの画像形成装置に用いられる定着装置で、詳しくは、定着ローラの内側で該定着ローラを加熱する定着ヒータを有する定着装置、及び、それを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、及び、ファクシミリ装置などの従来の画像形成装置は、例えば、記録用紙等のシート上にトナーを用いてトナー像を形成し、得られたシート上の未定着のトナー像を定着装置にて加熱、定着するように構成されている。
【0003】
例えば、電子写真方式の画像形成プロセスによって画像形成を行う従来の画像形成装置は、感光体等の像担持体表面を帯電させ、その帯電域に画像露光して静電潜像を形成し、該静電潜像を現像剤にて現像して形成されたトナー像をシートに静電的に転写し、該シートに転写された未定着トナー像を定着装置にて定着させることにより、該シート上に画像を形成する。
【0004】
このような従来の画像形成装置に使用される定着装置においては、一般的に、シート上の未定着トナー像を、定着装置における加熱ローラと加圧ローラとの間の定着ニップ部に通過させて、定着させる仕組である。
【0005】
即ち、従来の定着装置は、一般的に、定着ローラの内側に定着ヒータが設けられ、この定着ヒータが内側で定着ローラを所定の定着温度に加熱し、該加熱された定着ローラと加圧ローラとの間の定着ニップ部に、未定着トナー像が形成されたシートを該未定着トナー像が該定着ローラに接触するように通過させて加圧、加熱することにより、定着が行われる。
【0006】
このような定着装置においては、電源投入時の初期状態から、定着動作へスムースに移行できるようにするために、一般的には、定着動作を行う前に、低温状態にある定着ローラを所定の定着温度に達するまで事前に加熱するウォームアップが、行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1は、定着装置に関するもので、この定着装置には、コピー用紙のサイズに合わせて、大サイズ用ヒータと小サイズ用ヒータが備えられており、この内、大サイズ用ヒータは、この定着装置のウォームアップ用と、定着動作用とに兼用して使用されている。
【0008】
そのほか、従来の画像形成装置に使用される定着装置として、定着装置の定着ローラを加熱するのに用いられるヒータを、ウォームアップ用と定着動作用を独立させて、別個のヒータを用いる定着装置も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭63−47371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、画像形成装置に使用される定着装置として、定着装置の定着ローラを加熱するのに用いられるヒータを、ウォームアップ用と定着動作用を独立させて、別個のヒータを用いる上記の定着装置では、定着動作用のヒータは、ウォームアップ用のヒータに比べて、使用される時間が長い。
【0011】
そのため、ウォームアップ用のヒータに比べて定着動作用のヒータのほうが、断線等で故障してしまう傾向があり、そうすると、定着動作用のヒータの故障により、ウォームアップ用のヒータが故障していなくても、定着動作用のヒータの交換が済むまでは、画像形成装置が使用できないという問題があった。
【0012】
そこで、この発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、定着装置の定着ローラを加熱するのに用いられるヒータを、ウォームアップ用と定着動作用を独立させて、別個のヒータを用いる定着装置において、定着動作用のヒータが故障しても、暫定的に継続して使用が可能な定着装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の定着装置は、回転する定着ローラと加圧ローラとが接して形成されるニップ部に記録用紙等の記録材を通過させて、該記録材上の未定着画像を定着させる定着動作を行う定着装置である。
【0014】
上記の定着装置において、定着ローラには、定着動作を行う前に、低温状態にある該定着ローラをウォームアップする補助ヒータと、定着動作の時に、該定着ローラを加熱する少なくとも1つの定着ヒータとが、備えられている。
【0015】
この定着装置では、定着動作の時に、少なくとも1つの定着ヒータが使用不能である場合は、全ての定着ヒータに代えて、補助ヒータを使用することを特徴としている。
【0016】
上記の定着装置によれば、定着動作の時に、少なくとも1つの定着ヒータが使用不能である場合は、全ての定着ヒータに代えて、補助ヒータを使用するので、定着ヒータが故障しても、補助ヒータを使用することにより、定着装置を暫定的に継続して使用することができる。
【0017】
上記の定着装置において、定着動作の時に、少なくとも1つの定着ヒータが使用不能である場合は、全ての定着ヒータの通電を停止すると共に、補助ヒータに通電するのが好適である。
【0018】
このようにすることにより、一部の定着ヒータと補助ヒータとを同時に使用することを避けることができ、定着ヒータの代用として補助ヒータを使用することに対する定着装置の制御をシンプルにすることができる。
【0019】
また、上記の定着装置において、定着ローラには、該定着ローラの表面温度を測定する定着ローラ温度測定手段を備えるのが、好適である。この場合には、上記の定着装置では、定着動作の時に、該定着ローラ温度測定手段の測定温度が限界温度以下である場合は、少なくとも1つの定着ヒータが使用不能であるとするのである。
【0020】
このようにすることにより、上記の定着装置では、定着ヒータが使用不能であるか否かを、正確に、且つ、容易に判断することができる。
【0021】
また、上記の定着装置において、定着ヒータが複数の場合、この定着ヒータとしては、相互に、定着ローラの全定着領域に対して異なる配熱特性を備えているものを使用するのが、一般的である。
【0022】
そして、この場合、定着ローラには、定着ヒータ毎に、該定着ヒータが備える配熱特性に対応した定着ローラの表面の一部分の温度を測定する定着ローラ部分温度測定手段を備えるのが好適である。
【0023】
そうすると、この場合には、この定着ローラ部分温度測定手段の測定温度が限界部分温度以下である場合は、上記の定着装置では、該定着ローラ部分温度測定手段と対応する定着ヒータが使用不能であると判断するのである。
【0024】
このようにすることにより、上記の定着装置では、定着ヒータが使用不能であるか否かを、さらに正確に、且つ、容易に判断することができる。
【0025】
また、上記の定着装置において、補助ヒータとして、定着ローラの全定着領域に対して一様な配熱特性を備えた補助ヒータを用いるのが、好適である。このようにすることにより、上記の定着装置において、定着ヒータを使用した場合から、定着ヒータの代用として補助ヒータを使用する場合へ切り換える制御を、容易にすることができる。
【0026】
上記の説明は、本発明の定着装置に関するものであるが、画像形成処理を行う機能を備えた画像形成装置として、上記の定着装置を備えた画像形成装置を、構成することができる。
【0027】
上記の画像形成装置として、この画像形成装置に表示手段を備えると共に、定着装置における定着動作の時に、少なくとも1つの定着ヒータが使用不能である場合は、該定着ヒータが使用不能であることを、上記の表示手段に表示するようにしてもよい。
【0028】
このようにすることにより、画像形成装置の定着装置において、定着ヒータが使用不能であることを、画像形成装置の操作者に、容易に知らせることができ、定着ヒータが使用不能であることに対する対処を、迅速に行うことができる。
【0029】
上記の画像形成装置において、上記と同様にして、この画像形成装置に表示手段を備えると共に、定着装置における定着動作の時に、少なくとも1つの定着ヒータが使用不能である場合は、補助ヒータを使用することを、上記表示手段に表示するようにしてもよい。
【0030】
このようにすることにより、画像形成装置の定着装置において、定着ヒータの代用として、補助ヒータが使用されていることを、画像形成装置の操作者に、容易に知らせることができ、定着ヒータの代用として、補助ヒータが使用されていることに対する対処を、迅速に行うことができる。
【0031】
また、上記の画像形成装置において、定着装置の補助ヒータとして、この補助ヒータの消費電力が、全ての定着ヒータの消費電力の合計よりも小さい補助ヒータを用いるようにしてもよい。
【0032】
この場合は、上記の画像形成装置において、この定着装置における定着動作の時に、定着ヒータに代えて補助ヒータを使用する場合には、全ての定着ヒータが使用不能でない場合に比べて、画像形成処理の速度を低下するようにするのが、好適である。
【0033】
このようにすることにより、定着装置の補助ヒータとして、ウォームアップに必要十分な範囲で、消費電力の小さい補助ヒータを使用することができると共に、このような補助ヒータを、定着ヒータの代用として用いた定着動作を、支障なくなく行わせることができる。
【0034】
また、上記の画像形成装置において、表示手段を備えると共に、定着装置の加圧ローラに、定着動作の時に、該加圧ローラを加熱する補完ヒータを備えるのが、一般的である。
【0035】
この場合には、定着動作の時に、少なくとも1つの定着ヒータが使用不能である場合に、補完ヒータが使用不能でなければ、全ての定着ヒータに代えて、補助ヒータを使用し、補完ヒータが使用不能である場合は、該補完ヒータが使用不能であることを、上記表示手段に表示すると共に、画像形成処理を中止するようにしてもよい。
【0036】
このようにすることにより、上記の画像形成装置における定着装置の定着動作に対して、きめ細かい対処をすることができる。
【0037】
上記の該補完ヒータを備えた加圧ローラを有する定着装置を備えた画像形成装置において、この定着装置の加圧ローラには、該加圧ローラの表面温度を測定する加圧ローラ温度測定手段を備えるのが、好適である。
【0038】
この場合には、上記の定着装置では、定着動作の時に、該加圧ローラ温度測定手段の測定温度が補完限界温度以下である場合は、補完ヒータが使用不能であるとするのである。
【0039】
このようにすることにより、上記の画像形成装置における定着装置では、定着ヒータが使用不能であるか否かを、正確に、且つ、容易に判断することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、定着装置において、定着動作の時に、少なくとも1つの定着ヒータが使用不能である場合は、全ての定着ヒータに代えて、補助ヒータを使用するので、定着ヒータが故障しても、補助ヒータを使用することにより、定着装置を暫定的に継続して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施の形態における画像形成装置の概略構成を示した側面断面図である。
【図2】本実施の形態における定着装置の定着ローラ、及び、加圧ローラ部分の構成を模式的に示した説明図である。
【図3】本実施の形態における定着装置の定着ローラのヒータに関する、(a)は、メインヒータの配熱特性を示したグラフ、(b)は、サブヒータの配熱特性を示したグラフ、そして、(c)は、補助ヒータの配熱特性を示したグラフである。
【図4】本実施の形態における定着装置の定着ローラの、(a)は、ヒータの側面図、(b)は、(a)における矢印bから視た正面図である。
【図5】本実施の形態における画像形成装置の制御部における定着装置のヒータの制御に関連する部分の構成を示したブロック図である。
【図6】本実施の形態における画像形成装置の操作表示部を示した平面図である。
【図7】本実施の形態における画像形成装置の定着装置のヒータの使用状態に関する動作を示したフローチャート(その1)である。
【図8】本実施の形態における画像形成装置の定着装置のヒータの使用状態に関する動作を示したフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
次に、本発明の実施の形態における定着装置について、図面に基づき詳細に説明する。この定着装置は、通常、画像形成装置で使用される。そこで、最初に、この定着装置が備えられた画像形成装置全体について説明した後、次に、この画像形成装置に備えられている、本発明の実施の形態における定着装置について、説明する。
【0043】
<画像形成装置全体の説明>
まず、最初に、本発明の実施の形態における定着装置が備えられた画像形成装置について、説明する。図1は、本実施の形態における定着装置が備えられた画像形成装置100の構成の概略を示した側面断面図である。
【0044】
図1において、本実施の形態における画像形成装置100の装置本体110には、露光ユニット1、現像器2、感光体ドラム3、クリーナユニット4、帯電器5、定着装置7、2次転写ユニット10、中間転写体ベルト61、中間転写ローラ64、及び、中間転写ベルトクリーニングユニット65が備えられている。
【0045】
また、画像形成装置100の装置本体110には、画像形成装置100が行う画像形成処理に対する指示の入力や、画像形成処理に関する各種の表示を行うための操作表示部9が備えられている。図6は、この操作表示部9を示した平面図である。
【0046】
上記の構成において、感光体ドラム3は、像担持体として使用される。帯電器5は、感光体ドラム3表面を帯電させるための帯電装置である。露光ユニット1は、感光体ドラム3上に静電潜像を形成するための露光装置である。現像器2は、静電潜像をトナーによって可視化して感光体ドラム3上にトナー像を形成するための現像装置である
また、中間転写体ベルト61は、中間転写体として使用される。中間転写ローラ64は、感光体ドラム3上のトナー像を一旦中間転写ベルト61上に転写する1次転写装置である。クリーナユニット4は、中間転写ローラ64によって転写されずに感光体ドラム3表面に残った残留トナーを除去する1次クリーニング装置である。2次転写ユニット10は、中間転写ベルト61上のトナー像をシートP上に転写する2次転写装置である。
【0047】
また、中間転写ベルトクリーニングユニット65は、2次転写ユニット10によって転写されずに中間転写ベルト61表面に残った残留トナーを除去する2次クリーニング装置である。そして、定着装置7は、シートP上に形成されたトナー像を加熱溶融して固着させることで該シートP上に定着させる装置である。
【0048】
また、この画像形成装置100は、上記の構成に加えて、シートPの搬送路Sと、搬送路Sの両側に沿って配設される一対の搬送ローラ12a〜12dと、原稿の画像を読み取る原稿読取装置(ここではスキャナー装置)90と、原稿が載置される原稿載置台92と、自動原稿処理装置120とを備えている。
【0049】
即ち、装置本体110の上部には、原稿読取装置90が設けられている。原稿読取装置90の上側には透明ガラスからなる原稿載置台92が設けられ、さらに、原稿載置台92の上側には自動原稿処理装置120が取り付けられている。自動原稿処理装置120は、原稿を原稿読取装置90上へ自動で搬送する。また、自動原稿処理装置120は、原稿搬送方向に沿った枢支軸回りに回動自在とされ、原稿載置台92の上を開放することにより原稿を手置きで載置することができる。これにより、原稿読取装置90は、自動原稿処理装置120にて搬送される原稿の画像、または、原稿載置台92上に載置される原稿の画像を読み取ることができる。
【0050】
そして、画像形成装置100は、原稿読取装置90により読み取られた原稿に対応する画像データ、または、外部から伝達された画像データに応じて、シートPに対して多色、及び、単色の画像を形成するように構成されている。
【0051】
さらに説明すると、本画像形成装置100において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及び、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたもの、または、単色(例えばブラック)を用いたモノクロ画像に応じたものである。従って、現像装置2、感光体ドラム3、帯電器5、クリーナユニット4、及び、中間転写ローラ64は各色に応じた4種類の画像を形成するためにそれぞれ4個ずつ設けられている。
【0052】
即ち、これら4つの部材は、それぞれ、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローに設定され、これらの部材によって、画像ステーションが構成されている。
【0053】
帯電器5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段である。帯電器5は、接触型の帯電器(例えばローラ型やブラシ型のもの)や、図1に示したようなチャージャ型の帯電器を用いることができる。
【0054】
露光ユニット1は、帯電された感光体ドラム3の表面を、入力された画像データに応じて露光することにより、該表面に画像データに応じた静電潜像を形成する機能を有するものである。詳しくは、露光ユニット1には、レーザビームを走査するポリゴンミラーと、ポリゴンミラーによって反射されたレーザ光を感光体ドラム3に導くためのレンズやミラー等の光学要素が配置されている。
【0055】
この露光ユニット1としては、レーザ照射部、及び、反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)、ELやLED等の発光素子をアレイ状に並べた書込み装置(例えば、書込みヘッド)を用いることができる。
【0056】
現像装置2は、それぞれの感光体ドラム3上に形成された静電潜像を4色(Y,M,C,K)のトナーにより顕像化(可視化)するものである。クリーナユニット4は、現像、画像転写後における感光体ドラム3上の表面に残留したトナーを除去、回収するものである。
【0057】
感光体ドラム3の上方には中間転写ベルトユニット6が配置されている。この中間転写ベルトユニット6は、上記の中間転写ベルト61、中間転写ローラ64、及び、中間転写ベルトクリーニングユニット65に加えて、中間転写ベルト駆動ローラ62、及び、中間転写ベルト従動ローラ63を備えている。
【0058】
中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ローラ64、中間転写ベルト従動ローラ63等のローラは、中間転写ベルト61を張架して支持し、中間転写ベルト61の表面を所定方向(図中矢印D方向)に移動させ得るように構成されている。
【0059】
中間転写ローラ64は、中間転写ベルト61を間にして感光体ドラム3とは反対側に回転可能に支持されている。この中間転写ローラ64は、感光体ドラム3のトナー像を中間転写ベルト61に転写バイアスを与えるものである。
【0060】
中間転写ベルト61は、それぞれの感光体ドラム3に接触するように設けられている。そして、感光体ドラム3に形成された各色のトナー像を、中間転写ベルト61に順次的に重ねて転写することによって、中間転写ベルト61上にカラーのトナー像(多色トナー像)を形成する機能を有している。この中間転写ベルト61は、ここでは、厚さ100μm〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
【0061】
感光体ドラム3から中間転写ベルト61へのトナー像の転写は、中間転写ベルト61の裏側(即ち、中間転写ベルト61の感光体ドラム3とは反対側)に接触している中間転写ローラ64によって行われる。中間転写ローラ64には、トナー像を中間転写ベルト61に転写するための高電圧の転写バイアス、即ち、トナーの帯電極性(例えばマイナス電極)とは、逆極性(例えばプラス電極)の高電圧の転写バイアスが、印加される。
【0062】
中間転写ローラ64は、ここでは、直径8mm〜10mmの金属(例えばステンレススチール)からなる回転軸をベースとされ、その表面は、導電性の弾性材(例えばEPDM、発泡ウレタン等の材料からなるもの)により覆われたローラである。
【0063】
この中間転写ローラ64は、この導電性の弾性材により、中間転写ベルト61に対して均一に高電圧を印加できる。本実施の形態では、転写電極としてローラ形状のものを使用しているが、それに限定されるものではなく、ブラシ形状のもの等も、用いることができる。
【0064】
上述したように、感光体ドラム3上で各色のトナーにより顕像化(可視化)されたトナー像は、中間転写ベルト61で積層される。このように積層された各色のトナー像は、中間転写ベルト61の回転によって、シートPと中間転写ベルト61とが対向する転写部位に配置された2次転写ユニット10によってシートP上に転写される。
【0065】
中間転写ベルト61と2次転写ユニット10の転写ローラ10aとは、相互に圧接されて、ニップ域を形成している。また、2次転写ユニット10の転写ベルト10aには、中間転写ベルト61上の各色のトナー像をシートPに転写させるための電圧、即ち、トナーの帯電極性(例えばマイナス電極)とは、逆極性(例えばプラス電極)の電圧が、印加される。
【0066】
さらに、ニップ域を定常的に得るために、2次転写ユニット10のローラ若しくは中間転写ベルト駆動ローラ62の何れか一方を、金属ローラ等の硬質材料のものとし、他方を、弾性ローラ等の軟質材料(例えば弾性ゴムや発泡性樹脂等の軟質材料)のものとしている。
【0067】
ところで、2次転写ユニット10によって中間転写ベルト61上の各色のトナー像がシートP上に完全に転写されず、中間転写ベルト61上にトナーが残存することがある。この残存トナーは次工程でトナーの混色を発生させる原因となる。
【0068】
そのため、中間転写ベルトクリーニングユニット65は、該残存トナーが除去、回収されるように構成されている。例えば、中間転写ベルトクリーニングユニット65には、クリーニング部材として中間転写ベルト61に接触するクリーニングブレードが備えられている。このクリーニングブレードは、中間転写ベルト従動ローラ63と対向する位置において、中間転写ベルト61の裏側(すなわち、中間転写ベルト61の従動ローラ63とは反対側)で、支持されている。
【0069】
画像形成装置100は、さらに、給紙カセット81、手差し給紙カセット82、及び、排出部91を備えている。
【0070】
給紙カセット81は、画像形成に使用するシートPを格納しておくためのものであり、装置本体110の下側に設けられている。また、手差し給紙カセット82にも画像形成に使用するシートを置くことができる。また、排出部91は、装置本体110の上部に設けられており、本実施の形態では、排紙トレイとされている。この排出部91は、画像形成済みのシートPをフェイスダウンで載置するためのトレイである。
【0071】
また、装置本体110には、給紙カセット81、または、手差し給紙カセット82のシートPを2次転写ユニット10や定着装置7を経由させて排出部91に送るための、略S字形状の主搬送路S1が、設けられている。
【0072】
さらに、給紙カセット81、または、手差し給紙カセット82から排出部91までの主搬送路S1に沿って、ピックアップローラ11a,11b、レジストローラ13、2次転写ユニット10、及び、定着装置7が配設されている。
【0073】
搬送ローラ12a〜12dは、例えば、シートPの搬送を促進、補助するための小型のローラであり、搬送路Sに沿って設けられている。尚、搬送路Sは、主搬送路S1の他、スイッチバック搬送路S2、及び、反転搬送路S3によって構成されている。
【0074】
ピックアップローラ11a,11bは、それぞれ、給紙カセット81、及び、手差し給紙カセット82の端部近傍に設けられ、給紙カセット81、及び、手差し給紙カセット82から、シートPを1枚ずつ主搬送路S1に供給する呼び込みローラである。
【0075】
また、レジストローラ13は、給紙カセット81から搬送されてくるシートPを一旦停止させて、シートPの先端を揃えるものである。また、このレジストローラ13は、シートPを中間転写ベルト61上のトナー像と同期をとって、タイミングよく搬送する機能を有している。
【0076】
定着装置7は、シートP上に形成された未定着トナー像を加熱溶融して固着させることで、該シートP上に定着させるものである。この定着装置7については、後述する。
【0077】
上記で説明した画像形成装置100では、片面画像形成の要求の際には、先ず、給紙カセット81、または、手差し給紙カセット82から搬送されるシートPが、主搬送路S1中の搬送ローラ12aによってレジストローラ13まで搬送される。
【0078】
次いで、レジストローラ13によってシートPが、中間転写ベルト61上のトナー像と同期をとって、転写部位に搬送される。この転写部位に搬送されたシートP上に、2次転写ユニット10に印加される転写電界にて、中間転写ベルト61上のトナー像が転写される。
【0079】
その後、シートPは、定着装置7を通過することによって、該シートP上に転写された未定着トナーが熱量と加圧力とを受け、溶融、固着され、シート上に定着される。トナー像が定着されたシートPは、その後、搬送ローラ12bを経て、排出部91上に排出される。
【0080】
一方、両面画像形成の際には、前述したように片面画像形成が終了し、定着装置7を通過したシートPは、スイッチバック搬送路S2で搬送ローラ12bにてチャックされた状態で、搬送ローラ12bが逆回転することによって、停止前の搬送方向上流側端部が前になるように搬送ローラ12c,12dにて反転搬送路S3に搬送される。そして反転搬送路S3に搬送されたシートPは、搬送ローラ12c、12dにて転写部位より搬送方向上流側に導かれた後、レジストローラ13を経て、裏面に画像形成され、排出部91に排出される。
【0081】
<定着装置の説明>
次に、本発明の実施形態における定着装置7について、図面を参照しつつ説明する。図2は、図1に示す画像形成装置100に備えられた定着装置7における、定着ローラ71、及び、加圧ローラ72の構成を、模式的に示した説明図である。
【0082】
図2において、本実施形態における定着装置7は、定着ローラ71と、この定着ローラ71に対峙して配置された加圧ローラ72とを備えている。定着ローラ71、及び、加圧ローラ72は、シートP(図示されていない)を挟んで回転し、図1に示すように、このシートPを、図1に示すように、搬送ローラ12bへ向けて搬送する。
【0083】
上記の定着ローラ71の内部には、第1定着ヒータHL1(以下、メインヒータと称する)、及び、第2定着ヒータHL2(以下、サブヒータと称する)の2つのヒータが設けられている。これらのメインヒータHL1、及び、サブヒータHL2は、ハロゲンヒータランプで構成されており、それぞれ、定着ローラ71の長手方向全域にわたって延びている。
【0084】
そして、さらに、定着ローラ71の内部には、補助ヒータHL4が設けられている。この補助ヒータHL4は、ハロゲンヒータランプで構成されており、定着ローラ71の長手方向全域にわたって延びている。また、この補助ヒータHL4は、主としてウォームアップ時にのみ通電される。
【0085】
図4は、上記の定着ヒータHL1,HL2、及び、補助ヒータHL4の構成を示した構成図であり、図4(a)は、該ヒータHL1,HL2,HL4の側面図、図4(b)は、該ヒータHL1,HL2,HL4を図4(a)の矢印bから視た正面図である。
【0086】
本実施の形態においては、図4に示すように、複数の定着ヒータHL1,HL2、及び、補助ヒータHL4は、一体的に構成されている。即ち、複数の定着ヒータHL1,HL2、及び、補助ヒータHL4は、長手方向の両端部が保持部材74a,74bにて保持されることで、一体的に構成されている。
【0087】
本実施の形態では、加圧ローラ72にも、定着ローラ71と同様、図2に示すように、加圧ローラ72の内側に、加圧ローラ用のヒータである補完ヒータHL3が備えられている。この補完ヒータHL3は、ハロゲンヒータランプで構成されており、加圧ローラ72の長手方向全域にわたって延びている。
【0088】
上述したように、定着装置7では、定着ローラ71は、メインヒータHL1、サブヒータHL2、及び、補助ヒータHL4で加熱されると共に、加圧ローラは、補完ヒータHL3で加熱される。しかし、このほか、図1に示すように、定着ローラ71を外部から加熱するための外部加熱ベルト73が設けられていてもよい。
【0089】
上記の定着ローラ71の内部に備えられているメインヒータHL1、及び、サブヒータHL2は、互いに異なる配熱特性を有している。図3は、定着ローラ71に設けられるヒータの長手方向に沿った配熱特性を示したグラフであり、図3(a)は、メインヒータHL1の配熱特性を示し、図3(b)は、サブヒータHL2の配熱特性を示している。
【0090】
これらの、図3(a)、及び、図3(b)において、縦軸は、ヒータの長手方向に沿った配熱分布の内、最大値を100%とした比率を示し、横軸は、センター基準の搬送でのシートの幅方向の中央部を0とした距離(単位:mm)を示している。
【0091】
上記のメインヒータHL1、及び、サブヒータHL2は、図3(a)、及び、図3(b)から分かるように、定着ローラの全定着領域に対して異なる配熱特性を備えている。
【0092】
即ち、上記のメインヒータHL1、及び、サブヒータHL2の双方共、配熱特性は、定着ローラ71の長手方向の中央部分である第1領域(図2のα1)と、両端部分である第2領域(図2のα2,α3)とに分けられる。
【0093】
これらの配熱特性として、メインヒータHL1では、図3(a)に示すように、第1領域(図3(a)のβ1)が、第2領域(図3(a)のβ2,β3)よりも高い配熱特性を示している。ここでは、図3(a)に示すように、メインヒータHL1における第1配熱分布β1が、最大サイズシートより小さい小サイズシートの幅方向(定着ローラ71の長手方向に直交する幅方向)の長さL1にほぼ対応している。
【0094】
これに対して、サブヒータHL2では、図3(b)に示すように、第2領域(図3(b)のβ2’,β3’)が、第1領域(図3(b)のβ1’)よりも高い配熱特性を示している。ここでは、図3(b)に示すように、サブヒータHL2における第2配熱分布のうち、一方(図中前側)の配熱分布β2’外側端と、他方(図中後側)の端部領域β3’の外側端との間の領域が、最大サイズシートの幅方向の長さL2にほぼ対応している。
【0095】
上記のメインヒータHL1、及び、サブヒータHL2に対して、補助ヒータHL4の配熱分布は、ヒータの長手方向に沿って、同一レベルである。即ち、定着ローラの全定着領域に対して一様な配熱特性を備えている。
【0096】
図3(c)は、この補助ヒータHL4の配熱特性を示している。ここでは、図3(c)に示すように、補助ヒータHL4の配熱分布γ1は、同一レベルである。この図3(c)においても、縦軸及び横軸は、上記のメインヒータHL1、及び、サブヒータHL2と同様である。
【0097】
上記のように、補助ヒータHL4が、定着ローラの全定着領域に対して一様な配熱特性を備えるようにすることにより、上記の定着装置7において、メインヒータHL1、及び、サブヒータHL2を使用した場合から、これらの代用として補助ヒータHL4を使用する場合へ切り換える後述する制御部200における制御を、容易にすることができる。
【0098】
上記の定着装置7では、定着ローラ71の表面温度を測定するために、定着ローラ71には、温度測定手段として、温度センサRTHが設けられている(前述した定着ローラ温度測定手段に相当)。この温度センサRTHとしては、第1温度センサRTH1、及び、第2温度センサRTH2の2つの温度センサが設けられている。これらの第1温度センサRTH1、及び、第2温度センサRTH2は、サーミスタで構成されている。また、これらの温度センサは、前述した定着ローラ部分温度測定手段に相当する。
【0099】
この内、第1温度センサRTH1は、図2に示すように、定着ローラ71表面の第1領域α1の温度を測定する。また、第2温度センサRTH2は、定着ローラ71表面の第2領域α2,α3の内の一方であるα2の温度を測定する。即ち、第1温度センサRTH1は、メインヒータHL1と対応しており、第2温度センサRTH2は、サブヒータHL2と対応している。
【0100】
定着ローラ71のメインヒータHL1、及び、サブヒータHL2は、これらの第1温度センサRTH1、及び、第2温度センサRTH2の測定値に基づき、画像形成装置100における制御手段である後述する制御部200によって、制御される。また、定着ローラ71のウォームアップに用いられる補助ヒータHL4も、これらの第1温度センサRTH1、及び、第2温度センサRTH2の測定値に基づき、制御される。
【0101】
また、加圧ローラ72には、加圧ローラ72の表面温度を測定する加圧ローラ用温度センサPRTHが設けられている(前述した加圧ローラ温度測定手段に相当)。この加圧ローラ用温度センサPRTHは、サーミスタで構成されている。加圧ローラ72の補完ヒータHL3は、加圧ローラ用温度センサPRTHの測定値に基づき、定着ローラ71におけるのと同様、画像形成装置100における制御手段である後述する制御部200によって、制御される。
【0102】
上述したように、定着ローラ71を加熱するメインヒータHL1、及び、サブヒータHL2、補助ヒータHL4、及び、加圧ローラ72を加熱する補完ヒータHL3は、画像形成装置100における制御手段である制御部200によって、制御される。
【0103】
図5は、この制御部200における定着装置のヒータの制御に関連する部分の構成を示したブロック図である。
【0104】
この制御部200は、CPU(Central Processing Unit)等の情報処理装置201と、記憶部202とを備えている。記憶部202は、各種制御プログラムや必要な関数を記憶しており、ROM(Read Only Memory)、及び、RAM(Random Access Memory)を含んでいる。
【0105】
また、制御部200は、CPU201によって、各種制御プログラムを記憶部202から読出すと共に、この読出した該制御プログラムを実行することで、定着装置7の定着機能の制御を行わせるための定着ローラ71、及び、加圧ローラ72における各ヒータの制御を行う。
【0106】
また、制御部200には、メインヒータHL1、サブヒータHL2、補助ヒータHL4、及び、補完ヒータHL3の各ヒータと、第1温度センサRTH1、第2温度センサRTH2、及び、加圧ローラ用温度センサPRTHの各温度センサが、図示しないドライバを介して、接続されている。
【0107】
また、制御部200には、画像形成装置100に備えられている図6に示す上述した操作表示部9も、接続されている。この制御部200は、操作者により、操作表示部9を用いて行われた指示入力に基づいて、画像形成装置100における画像形成を行うと共に、必要な情報を、操作表示部9の表示パネル9aに表示する。
【0108】
尚、制御部200は、定着装置7の定着機能のみでなく、図5には、図示されていないが、画像形成装置100全体の動作を制御するように構成されている。
【0109】
上記の制御部200は、定着装置7において、第1温度センサRTH1、第2温度センサRTH2、及び、加圧ローラ用温度センサPRTHにより測定された温度を基にして、定着ローラ71用の、メインヒータHL1、サブヒータHL2、補助ヒータHL4、及び、加圧ローラ72用の補完ヒータHL3の、各ヒータの制御、即ち、これらの各ヒータの通電のON/OFF制御を、次のようにして行う。
【0110】
まず、画像形成装置100の電源投入後に、低温状態にある該定着ローラを所定の定着温度に達するまで、補助ヒータHL4をONにしてウォームアップする。この定着温度としては、例えば150℃程度である。そして、第1温度センサRTH1、及び、第2温度センサRTH2により測定された温度が、所定の定着温度に達すると、補助ヒータHL4をOFFする。
【0111】
尚、画像形成装置100のモードとして、待機中のモードが用いられる場合は、待機温度として、50℃程度の温度を用いてもよい。
【0112】
画像形成装置100において、定着装置7における定着動作が行われるときに、第1温度センサRTH1により測定された温度が、定着に必要な設定温度#1(前述した限界部分温度に相当)以下であった場合は、制御部200は、メインヒータHL1が使用不能になったと判断する。この場合には、メインヒータHL1が使用不能になったことを、操作表示部9の表示パネル9aに表示する。
【0113】
また、第2温度センサRTH2により測定された温度が、定着に必要な設定温度#2(前述した限界部分温度に相当)以下であった場合は、制御部200は、サブヒータHL2が使用不能になったと判断する。この場合には、サブヒータHL2が使用不能になったことを、操作表示部9の表示パネル9aに表示する。尚、上記の定着に必要な定着温度を総称したのが、前述した限界温度に相当する。
【0114】
上記のように、メインヒータHL1やサブヒータHL2が使用不能になったことを、操作表示部9の表示パネル9aに表示することにより、定着ヒータが使用不能であるか否かを、さらに正確に、且つ、容易に判断することができる。従って、メインヒータHL1やサブヒータHL2が使用不能であることに対する対処を、迅速に行うことができる。
【0115】
上記のメインヒータHL1が使用不能になった場合、及び、サブヒータHL2が使用不能になったいずれの場合においても、制御部200は、まず、これらのメインヒータHL1、及び、サブヒータHL2をOFFすると共に、これらのメインヒータHL1、及び、サブヒータHL2に代えて、補助ヒータHL4をONする。
【0116】
このようにすることにより、メインヒータHL1、または、サブヒータHL2のいずれかと、補助ヒータHL4とを同時に使用するようなことを避けることができ、メインヒータHL1、及び、サブヒータHL2の代用として補助ヒータHL4を使用することに対する、定着装置7の制御をシンプルにすることができる。
【0117】
上記の場合、メインヒータHL1、及び、サブヒータHL2に代えて、補助ヒータHL4が使用されていることを、操作表示部9の表示パネル9aに表示する。このようにすることにより、画像形成装置100の定着装置7において、メインヒータHL1、及び、サブヒータHL2の代用として、補助ヒータHL4が使用されていることを、画像形成装置100の操作者に、容易に知らせることができる。従って、メインヒータHL1、及び、サブヒータHL2の代用として、補助ヒータHL4が使用されていることに対する対処を、迅速に行うことができる。
【0118】
上記の場合は、補助ヒータHL4は、あくまで、メインヒータHL1、及び、サブヒータHL2の代用であり、メインヒータHL1、または、サブヒータHL2が使用不能になったときに、その状態下で定着装置7で行われている定着動作を、暫定的に継続させるために使用する。
【0119】
従って、この場合には、メインヒータHL1、または、サブヒータHL2が使用不能になったときに、その状態下で定着装置7で行われている一連の定着動作が終了した時点で、制御部200は、定着装置7の動作を停止させる。即ち、メインヒータHL1、または、サブヒータHL2が使用不能になった状態下で行われている画像形成装置100における一連の画像形成処理が終了した時点で、画像形成処理を停止させる。
【0120】
また、画像形成装置100において、定着装置7における定着動作が行われるときに、加圧ローラ用温度センサPRTHにより測定された温度が、加圧ローラに対して定着に必要な設定温度#3(前述した補完限界温度に相当)以下であった場合は、制御部200は、補完ヒータHL3が使用不能になったと判断する。この場合には、補完ヒータHL3が使用不能になったことを、操作表示部9の表示パネル9aに表示する。
【0121】
この場合、定着装置7における定着動作を継続することができない状態となるので、制御部200は、直ちに、定着装置7の動作を停止させる。即ち、画像形成装置100における画像形成処理を、直ちに、停止させる。
【0122】
次に、本実施の形態における画像形成装置100において、この画像形成装置100に使用されている定着装置7の定着ローラ71と加圧ローラ72に備えられているヒータの使用状態に関する画像形成装置100の動作について、説明する。
【0123】
図7、及び、図8は、画像形成装置100における上記の動作を示したフローチャートである。図7、及び、図8において、まず、画像形成装置100において、画像形成処理の開始指令が生じているか否かをチェックし(S1)、生じていると(S2)、次に、S3へ進む。
【0124】
S3では、第1温度センサRTH1により測定された温度が、定着ローラ71に対して定着に必要な設定温度#1以下であるかチェックし、設定温度#1以下でなければ(S4)、メインヒータHL1は正常であるので、次に、S5に進む。
【0125】
S5では、第2温度センサRTH2により測定された温度が、定着に必要な設定温度#2以下であるかチェックし、設定温度#2以下でなければ(S6)、サブヒータHL2は正常であるので、次に、S7に進む。
【0126】
S7では、加圧ローラ用温度センサPRTHにより測定された温度が、加圧ローラ72に対して定着に必要な設定温度#3以下であるかチェックし、設定温度#3以下でなければ(S8)、補完ヒータHL3は正常であるので、次に、S9に進む。
【0127】
S9では、画像形成装置100における画像形成が終了したか否かをチェックし、終了していないと、S3へ戻って、S3以下の処理を繰返す。画像形成装置100における画像形成が終了していると、S1へ戻って、最初からS1以下の処理を繰返す。
【0128】
上記のS3における、第1温度センサRTH1により測定された温度が、定着ローラ71に対して定着に必要な設定温度#1以下であるか否かのチェックで、設定温度#1以下であると(S4)、メインヒータHL1は使用不能であるので、次に、S11に進む。
【0129】
S11では、メインヒータHL1が使用不能であることを、画像形成装置100の表示操作部9に表示して、次に、S12に進む。
【0130】
S12では、加圧ローラ用温度センサPRTHにより測定された温度が、加圧ローラ72に対して定着に必要な設定温度#3以下であるかチェックし、設定温度#3以下でなければ(S13)、補完ヒータHL3は正常であるので、次に、S14に進む。
【0131】
S14では、メインヒータHL1、及び、サブヒータHL2に対する通電を共にOFFする。そして、次に、補助ヒータHL4をONすると共に(S15)、メインヒータHL1、及び、サブヒータHL2に代えて、補助ヒータHL4を使用していることを、画像形成装置100の表示操作部9に表示する(S16)。
【0132】
この場合は、上述したように、補助ヒータHL4は、あくまで、メインヒータHL1、及び、サブヒータHL2の代用であり、メインヒータHL1、または、サブヒータHL2が使用不能になった状態下で、定着装置7で行われている定着動作を、暫定的に継続させるために使用する。
【0133】
従って、この場合には、メインヒータHL1、または、サブヒータHL2が使用不能になったときに、その状態下で定着装置7で行われている一連の定着動作が終了した時点で、制御部200は、定着装置7の動作を停止させる。即ち、メインヒータHL1、または、サブヒータHL2が使用不能になったときに、その状態下で行われている画像形成装置100における一連の画像形成処理が終了した時点で、画像形成処理を停止させる。そこで、このようにするべく、次に、S17に進む。
【0134】
S17では、画像形成装置100における画像形成が終了したか否かをチェックし、終了するのを待って(S18)、画像形成装置100を動作停止にする処理をして(S19)、図7、及び、図8に示すフローチャートの処理を終了する。
【0135】
上記のS3における、第2温度センサRTH2により測定された温度が、定着ローラ71に対して定着に必要な設定温度#2以下であるか否かのチェックで、設定温度#2以下であると(S6)、メインヒータHL1は使用不能であるので、次に、S21に進む。
【0136】
S21では、サブヒータHL2が使用不能であることを、画像形成装置100の表示操作部9に表示して、次に、S12に進む。このS12以降の処理フローについては、既に、上述している。
【0137】
上記のS7における、或いは、上記のS12における、加圧ローラ用温度センサPRTHにより測定された温度が、加圧ローラに対して定着に必要な設定温度#3以下であるか否かのチェックで、設定温度#3以下であれば(S8、または、S13)、補完ヒータHL3は使用不能である。
【0138】
従って、この場合は、上述したように、定着装置7における定着動作を継続することができない状態となり、制御部200は、直ちに、定着装置7の動作を停止させる、即ち、画像形成装置100における画像形成処理を、直ちに、停止させる必要がある。そこで、このようにするべく、次に、S31に進む。
【0139】
S31では、メインヒータHL1が使用不能であることを、画像形成装置100の表示操作部9に表示して、次に、画像形成装置100を動作停止にする処理をして(S19)、図7、及び、図8に示すフローチャートの処理を終了する。
【0140】
上記の定着装置7によれば、定着動作の時に、メインヒータHL1、または、サブヒータHL2の少なくとも1つが使用不能である場合は、これらのヒータHL1、HL2に代えて、補助ヒータHL4を使用するので、メインヒータHL1、または、サブヒータHL2が故障しても、補助ヒータHL4を使用することにより、定着装置7を暫定的に継続して使用することができる。
【0141】
上記の定着装置7において、次のような対処を行うようにしてもよい。即ち、定着装置7の補助ヒータHL4を、この補助ヒータHL4の消費電力が、メインヒータHL1、及び、サブヒータHL2の消費電力の合計よりも小さい補助ヒータHL4を用いるようにするのである。
【0142】
この場合は、上記の画像形成装置100において、この定着装置7における定着動作の時に、メインヒータHL1、及び、サブヒータHL2に代えて、補助ヒータHL4を使用する場合には、メインヒータHL1、或いは、サブヒータHL2が使用不能でない場合に比べて、画像形成処理100の速度を、低下するようにするのが、好適である。
【0143】
このようにすることにより、定着装置7の補助ヒータHL4として、ウォームアップに必要十分な範囲で、消費電力の小さい補助ヒータHL4を使用することができると共に、このような補助ヒータHL4を、メインヒータHL1、及び、サブヒータHL2の代用として用いた定着装置7における定着動作を、支障なく行わせることができる。
【符号の説明】
【0144】
1 露光ユニット
2 現像器
3 感光体ドラム
4 クリーナユニット
5 帯電器
7 定着装置
9 操作表示部
9a 表示パネル
10 2次転写ユニット
61 中間転写体ベルト
64 中間転写ローラ
65 中間転写ベルトクリーニングユニット
71 定着ローラ
72 加圧ローラ
100 画像形成装置
200 制御部
HL1 メインヒータ
HL2 サブヒータ
HL3 補完ヒータ
HL4 補助ヒータ
RTH1 第1温度センサ
RTH2 第2温度センサ
PRTH 加圧ローラ用温度センサ
α1 定着ローラの第1領域
α2,α3 定着ローラの第2領域
β1 メインヒータの第1配熱分布
β2,β3 メインヒータの第2配熱分布
β1’ サブヒータの第1配熱分布
β2’,β3’ サブヒータの第2配熱分布
γ1 補助ヒータの配熱分布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する定着ローラと加圧ローラとが接して形成されるニップ部に記録材を通過させて、該記録材上の未定着画像を定着させる定着動作を行う定着装置であって、
前記定着ローラには、前記定着動作を行う前に、低温状態にある該定着ローラをウォームアップする補助ヒータと、前記定着動作の時に、該定着ローラを加熱する少なくとも1つの定着ヒータとが、備えられており、
前記定着動作の時に、少なくとも1つの前記定着ヒータが使用不能である場合は、全ての前記定着ヒータに代えて、前記補助ヒータを使用することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
前記定着動作の時に、少なくとも1つの前記定着ヒータが使用不能である場合は、全ての前記定着ヒータの通電を停止すると共に、前記補助ヒータに通電する定着装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の定着装置において、
前記定着ローラには、該定着ローラの表面温度を測定する定着ローラ温度測定手段が備えられており、
前記定着動作の時に、該定着ローラ温度測定手段の測定温度が限界温度以下である場合は、少なくとも1つの前記定着ヒータが使用不能であるとする定着装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記定着ヒータが複数の場合、該定着ヒータは、相互に、前記定着ローラの全定着領域に対して異なる配熱特性を備えており、
前記定着ローラには、前記定着ヒータ毎に、該定着ヒータが備える前記配熱特性に対応した前記定着ローラの表面の一部分の温度を測定する定着ローラ部分温度測定手段が備えられており、
該定着ローラ部分温度測定手段の測定温度が限界部分温度以下である場合は、該定着ローラ部分温度測定手段と対応する前記定着ヒータが使用不能であるとする定着装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記補助ヒータは、前記定着ローラの全定着領域に対して一様な配熱特性を備えている定着装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の定着装置を備えており、画像形成処理を行う機能を備えた画像形成装置。
【請求項7】
請求項6記載の画像形成装置において、
表示手段を備えると共に、
前記定着装置における前記定着動作の時に、少なくとも1つの前記定着ヒータが使用不能である場合は、該定着ヒータが使用不能であることを、上記表示手段に表示する画像形成装置。
【請求項8】
請求項6または7記載の画像形成装置において、
表示手段を備えると共に、
前記定着装置における前記定着動作の時に、少なくとも1つの前記定着ヒータが使用不能である場合は、前記補助ヒータを使用することを、上記表示手段に表示する画像形成装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記定着装置の補助ヒータの消費電力は、全ての前記定着ヒータの消費電力の合計よりも小さいと共に、
前記定着装置における前記定着動作の時に、前記補助ヒータを使用する場合は、全ての前記定着ヒータが使用不能でない場合に比べて、前記画像形成処理の速度を低下する画像形成装置。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
表示手段を備えると共に、
前記定着装置の前記加圧ローラには、前記定着動作の時に、該加圧ローラを加熱する補完ヒータが、備えられており、
前記定着動作の時に、少なくとも1つの前記定着ヒータが使用不能である場合に、前記補完ヒータが使用不能でなければ、全ての前記定着ヒータに代えて、前記補助ヒータを使用し、前記補完ヒータが使用不能である場合は、該補完ヒータが使用不能であることを、上記表示手段に表示すると共に、前記画像形成処理を中止する画像形成装置。
【請求項11】
請求項10記載の画像形成装置において、
前記定着装置の前記加圧ローラには、該加圧ローラの表面温度を測定する加圧ローラ温度測定手段が備えられており、
前記定着動作の時に、該加圧ローラ温度測定手段の測定温度が補完限界温度以下である場合は、前記補完ヒータが使用不能であるとする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−191201(P2010−191201A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35554(P2009−35554)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】