説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】小型化できるとともに、消費電力を減少させることができる定着装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】無端ベルト状の定着スリーブ21と、定着スリーブ21を押圧可能に配置される加圧ローラ31と、加圧ローラ31の押圧により定着スリーブ21を介して加圧ローラ31と当接する当接部材22と、当接部材22を加圧ローラ31の押圧方向に対して保持する保持部材23と、定着スリーブ21を加熱するヒータ33と、定着スリーブ21の両端部に配置され、定着スリーブ21の内周面に摺接して定着スリーブ21の形状を維持するフランジ35と、を備え、加圧ローラ31は、断面方向における搬送方向と垂直方向の第1の中心軸Xを有し、フランジ35は、断面方向における搬送方向と垂直方向の第2の中心軸Yを有し、第1の中心軸Xより搬送方向上流側にヒータ33を設け、第2の中心軸Yより搬送方向下流側に保持部材23を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルトの定着部材を有する定着装置及び該定着装置を備える電子写真方式、静電記録方式等を利用したFAX、プリンタ、複写機またはそれらの複合機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置として、電子写真方式を利用した画像形成装置が種々考案されており公知技術となっている。その画像形成プロセスは、像担特体である感光ドラムの表面に静電潜像を形成し、感光ドラム上の静電潜像を現像剤であるトナー等によって現像して可視像化し、現像された画像を転写装置により記録紙(用紙、記録媒体ともいう) に転写して画像を担持させ、圧力や熱等を用いる定着装置によって記録紙上のトナー画像を定着する過程により成立している。
【0003】
この定着装置では、対向するローラもしくはベルトもしくはそれらの組み合わせにより構成された定着部材及び加圧部材が当接してニップ部を形成するように配置されており、該ニップ部に記録紙を挟みこみ、熱および圧力を加えて前述したトナー像を記録紙上に定着することを行っている。
【0004】
前記定着装置の一例を挙げると、複数のローラ部材に張架された定着ベルトを定着部材として用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。) 。このような定着ベルトを用いた装置は、定着部材としての定着ベルト(無端状ベルト) 、定着ベルトを張架・支持する複数のローラ部材、複数のローラ部材のうち1つのローラ部材に内設されたヒータ、加圧ローラ(加圧部材) 等で構成されている。ヒータは、ローラ部材を介して定着ベルトを加熱する。そして、定着ベルトと加圧ローラとの間に形成されたニップ部に向けて搬送された記録媒体上のトナー像は、ニップ部にて熱と圧力とを受けて記録媒体上に定着される(ベルト定着方式) 。
【0005】
また、上述した画像形成装置に用いられる定着装置において、回転体である定着部材の内面に摺接する固定部材を有している定着装置がある。
例えば、特許文献2では、発熱体としてのセラミックヒータと、加圧部材としての加圧ローラとの間に耐熱性フィルム(定着フィルム) を挟ませて定着ニップ部を形成させ、前記定着ニップ部のフィルムと加圧ローラとの間に画像定着すべき未定着トナー画像を形成担持させた被記録材を導入して、フィルムと一緒に挟持搬送させることで、ニップ部においてセラミックヒータの熱がフィルムを介して被記録材に与えられ、また、定着ニップ部の加圧力にて未定着トナー画像を被記録材面に熱圧定着させるフィルム加熱方式の定着装置が開示されている。このフィルム加熱方式の定着装置は、セラミックヒータ及びフィルムとして低熱容量の部材を用いてオンデマンドタイプの装置を構成することができるとともに、画像形成装置の画像形成実行時のみ熱源としてのセラミックヒータに通電して所定の定着温度に発熱させた状態にすればよく、画像形成装置の電源オンから画像形成実行可能状態までの待ち時間が短く(クイックスタート性) 、スタンバイ時の消費電力も大幅に小さい(省電力) 等の利点がある。
【0006】
また、特許文献3 、4では、表面が弾性変形する回転可能な加熱定着ロールと、前記加熱定着ロールに接触したまま走行可能なエンドレスベルト(加圧ベルト) と、前記エンドレスベルトの内側に非回転状態で配置されて、前記エンドレスベルトを前記加熱定着ロールに圧接させ、前記エンドレスベルトと前記加熱定着ロールとの間に記録紙が通過させられるベルトニップを設けると共に、前記加熱定着ロールの表面を弾性変形させる加圧パッドとを具備してなる加圧ベルト方式の画像定着装置が提案されている。この定着方式によれば、下の加圧部材をベルトにし、用紙とロールの接触面積を広げることで熱伝導効率を大幅に向上させ、エネルギー消費を抑制すると同時に小型化を実現することが可能となっている。
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1記載の定着装置は、定着ローラを用いた装置に比べて装置の高速化に適しているものの、ウォームアップ時間(プリント可能な温度に達するまでに要する時間である。) やファーストプリント時間(プリント要求を受けた後にプリント準備を経てプリント動作を行い排紙が完了するまでの時間である。) の短縮化に限界があった。
【0008】
これに対して、特許文献2記載の定着装置は、低熱容量化によりウォームアップ時間やファーストプリント時間の短縮化が可能になるとともに、装置の小型化も可能になる。しかし、特許文献2記載の定着装置では、耐久性の問題と、ベルト温度安定性の問題があった。すなわち、熱源であるセラミックヒータとベルト内面の摺動による耐磨耗性が不十分であり、長時間運転すると連続摩擦を繰り返す面が荒れて摩擦抵抗が増大し、ベルトの走行が不安定になる、もしくは定着装置の駆動トルクが増大する等の現象が生じ、その結果、画像を形成する転写紙のスリップが生じ画像のずれが生じる、または駆動ギヤに係る応力が増大し、ギヤの破損を引き起こすという不具合が発生した(課題1) 。
また、フィルム加熱方式の定着装置では、ベルトをニップ部で局所的に加熱しているため回転するベルトがニップ入り口に戻ってくる際に、ベルト温度は最も冷えた状態になり、(特に高速回転を行うと) 定着不良が出やすいという問題があった(課題2) 。
【0009】
一方、特許文献3では、圧力パッドの表層に低摩擦シート(シート状摺動材) としてPTFEを含浸させたガラス繊維シート(PTFE含浸ガラスクロス) を用い、ベルト内面と固定部材の摺動性の問題を改善する手段が開示されている。しかし、このような加圧ベルト方式の定着装置(特許文献3、4) では、定着ローラの熱容量が大きく、昇温が遅いため、ウォームアップにかかる時間が長いという問題があった(課題3) 。
【0010】
以上のような課題1〜3に対して、特許文献5、6では、無端状の定着ベルトの内周側に配置される略パイプ状の対向部材(金属熱伝導体) と、前記対向部材の内周側に配置され該対向部材を加熱するセラミックヒータ等の抵抗発熱体とを設けることにより、定着ベルト全体を温めることを可能にし、ウォームアップ時間やファーストプリント時間を短縮することができ、かつ高速回転時の熱量不足を解消することのできる定着装置が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献5、6記載の定着装置において、定着部材の内周面に対向するように配置された金属熱伝導体が略真円形状であるため、その内部にハロゲンヒータ等の熱源を設けると、定着部材の円周長が大きくなってしまう。このため、定着装置が大型化するばかりか、定着装置全体の熱容量も大きくなるので消費電力も大きくなるといった問題があった。また、さらに消費電力を低減させるためにハロゲンヒータより熱効率のよい面状発熱体を設けることも考えられるが、このような面状発熱体を定着部材もしくは金属熱伝導体に均一な面圧で密着させるために面状発熱体を加圧する加圧機構をその内部に設ける必要がある。このため、ハロゲンヒータに代えて面状発熱体を用いる場合でも、定着部材もしくは金属熱伝導体の内部に面状発熱体を含む加圧機構を設ける必要があり、前述したものと同様に定着部材の円周長が大きくなってしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、以上のように従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、小型化できるとともに、消費電力を減少させることができる定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る定着装置は、上記目的達成のため、可携性を有し回転する無端ベルト状の定着部材と、前記定着部材の外周側で該定着部材を押圧可能に配置される加圧部材と、前記定着部材の内周側に配置され、前記加圧部材の押圧により前記定着部材を介して該加圧部材と当接する当接部材と、前記定着ベルトの内周側に配置され、前記当接部材を前記加圧部材の押圧方向に対して保持する保持部材と、前記定着部材を加熱する加熱手段と、前記定着部材の両端部に配置され、前記定着部材の内周面に直接または間接的に摺接して前記定着部材の形状を維持する形状維持手段と、を備え、前記加圧部材は、断面方向における搬送方向と垂直方向の中心軸を有し、前記形状維持手段は、断面方向における搬送方向と垂直方向の円弧軸を有し、前記中心軸より搬送方向上流側に前記加熱手段を設け、前記円弧軸より搬送方向下流側に前記保持部材を設けている。
【0014】
この構成により、定着部材の内周側で当接部材の上流側の空間を大きくすることができるので熱源を最適な位置に配置できるともに、定着部材の円周長を小さくすることができる。このため、従来と比較して定着装置を小型化することができるので、定着装置全体の消費電力を減少させることができる。さらに、形状維持手段により定着部材の両端部に蓋をして定着部材を回転摺動させることができ、定着部材の円筒形状を形状維持手段に応じた形状に維持することができる。
【0015】
また、本発明に係る定着装置は、前記加熱手段は、輻射熱を発するハロゲンヒータによって構成されている。
【0016】
この構成により、輻射熱を利用して定着部材を直接加熱することができるので、効率良く定着部材を温めることができる。
【0017】
また、本発明に係る定着装置は、前記定着部材の内周側に配置され、該定着部材の回転を支持するパイプ形状の回転支持部材をさらに備えるよう構成されている。
【0018】
この構成により、定着部材を回転可能に支持することができ、定着部材の形状を維持することができ、結果として定着部材の撓みを抑制することができる。
【0019】
また、本発明に係る定着装置は、前記定着部材の内周面が黒色であるよう構成されている。
【0020】
この構成により、輻射熱の吸収率を向上させることができるので、より効率良く設定された温度に制御することが可能になる。
【0021】
また、本発明に係る定着装置は、前記加熱手段は、前記定着部材と摺接する面状の発熱部材である前記面状発熱体と、前記面状発熱体を前記定着部材に押し当てる押し当て部材と、前記面状発熱体が前記定着部材に密着するよう押し当て部材を加圧する加圧部材と、を有するよう構成されている。
【0022】
この構成により、輻射熱を利用して定着部材を直接加熱するハロゲンヒータよりも省スペース化を図ることができ、熱効率もハロゲンヒータよりも良好で、効率良く定着部材を温めることができる。また、面状発熱体および押し当て部材が定着部材に接しているため、定着部材が回転しているときでもその形状を維持することができるので、定着部材の安定した回転を得ることができる。
【0023】
また、本発明に係る定着装置は、前記加熱手段は、前記定着部材の軸方向中央部分を加熱する中央部加熱部と、前記定着部材の軸方向端部を加熱する端部加熱部とを有し、前記中央部加熱部の温度を検出する中央部温度検出部と、前記端部加熱部の温度を検出する端部温度検出部とを有し、前記中央部温度検出部および前記端部温度検出部は、前記中央部加熱部および端部加熱部がそれぞれ最も発熱する箇所に配置されるよう構成されている。
【0024】
この構成により、各加熱部の発熱する箇所にそれぞれ設置しているので、精度良く各発熱部を温度検出することができる。
【0025】
また、本発明に係る定着装置は、前記定着部材は、前記形状維持手段と摺動する部分にコーティングを施している。
【0026】
この構成により、形状維持手段に対して定着部材が回転するので、摺動抵抗を低減することができ、加圧部材を介して前記定着部材を回転させるための駆動モータの消費電力を低減させることができ、従来と比較して定着装置全体の消費電力を減少させることができる。しかも、摺動抵抗が大きいことに起因した加圧部材に対するスリップを抑制することができる。
【0027】
また、本発明に係る定着装置は、前記定着部材は、前記面状発熱体と摺動する部分にコーティングを施している。
【0028】
この構成により、定着部材の内周面と面状発熱体の表面とが摺動することによる摩擦抵抗を低減することができ、経時摩耗を低減することができる。したがって、従来と比較して耐久性に優れた定着装置を提供することが可能となる。
【0029】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記定着装置を備えるよう構成されている。
【0030】
この構成により、従来と比較して定着装置を小さくすることができるので、画像形成装置全体の消費電力を減少させることができるとともに、ウォームアップ時間を短縮することができる。したがって、ユーザビリティの高い画像形成装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、小型化できるとともに、消費電力を減少させることができる定着装置および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す全体構成図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態に係る定着装置の一部断面図である。
【図3】本発明に係る第1の実施の形態に係る定着装置を構成する定着スリーブの(a)斜視図と(b)側面図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態に係る定着装置を構成するフランジの斜視図である。
【図5】本発明に係る第1の実施の形態に係る定着装置の加圧ローラを除いた一部断面図である。
【図6】本発明に係る第1の実施の形態に係る定着装置の定着スリーブとフランジの概略図である。
【図7】本発明に係る第1の実施の形態に係る定着装置を構成するニップ形成部材の斜視図である。
【図8】本発明に係る第1の実施の形態に係る定着装置を構成する定着スリーブの内部部品の斜視図である。
【図9】本発明に係る第2の実施の形態に係る定着装置の加熱部材の斜視図である。
【図10】本発明に係る第2の実施の形態に係る定着装置の一部断面図の斜視図である。
【図11】本発明に係る第2の実施の形態に係る定着装置を構成する定着スリーブの内部部品の斜視図である。
【図12】本発明に係る第3の実施の形態に係る定着装置の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
まず、図1を参照して本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置について説明する。
図1に示すように、画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック) に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在に設置されている。このため、これらの4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kは、ユーザ等によって交換自在になっている。
【0034】
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック) に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
【0035】
各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像部76、クリーニング部77、不図示の除電部等が配設されている。そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程) が行われて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。
【0036】
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、不図示の駆動モータによって図1中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75の位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である。) 。
【0037】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像装置76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程である。) 。その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78および第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(第1転写工程である。) 。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
【0038】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程である。) 。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で行われる、一連の作像プロセスが終了する。
【0039】
その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト78上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成されるここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78の4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82〜84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
【0040】
4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
【0041】
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト78は、2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ82が、2次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト78上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト78には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。こうして、中間転写ベルト78上で行われる、一連の転写プロセスが終了する。
【0042】
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98等を経由して搬送されたものである。詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
【0043】
レジストローラ対98に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0044】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着スリーブ21および加圧ローラ31による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された被転写Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0045】
次に、図2を参照して、定着装置20の構成について詳細に説明する。
定着装置20は、図2に示すように、定着装置20は、定着スリーブ21、ニップ形成部材22、保持部材23、ヒータ33、第1の板金29、第2の板金41、加圧部材しての加圧ローラ31、温度センサ27およびフランジ35を備えている。
【0046】
定着スリーブ21は、図3に示すように、薄肉で可撓性を有する無端状ベルトにより形成されており、図2に示す矢印A方向に走行する。図2に戻り、定着スリーブ21は、ニップ形成部材22との摺接面となる内周面21a側から、基材層、弾性層、離型層が順次積層され、全体の厚さが1mm以下となるよう形成されている。
【0047】
定着スリーブ21の基材層は、層厚が25〜35μmであり、ニッケル、ステンレス等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料により形成されている。
定着スリーブ21の弾性層は、層厚が100〜300μmであり、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴムあるいはフッ素ゴム等のゴム材料で形成されている。この弾性層が設けられることにより、定着ニップ部38における定着スリーブ21の表面の微小な凹凸が形成されなくなり、記録媒体P上のトナー像Tに均一に熱が伝わりユズ肌画像の発生が抑止される。
【0048】
定着スリーブ21の離型層は、層厚が10〜50μmであって、PFA(4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(4フッ化エチレン樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等により形成されている。この離型層が設けられることにより、トナー像Tに対する離型性(剥離性)が担保される。
【0049】
また、定着スリーブ21の直径は15〜120mmに設定されると好適である。本実施の形態においては、定着スリーブ21の直径は30mm程度に設定されている。
【0050】
また、定着スリーブ21は、本発明に係る定着部材を構成している。なお、ニッケルやSUS等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料を用いたフィルムでもよい。
【0051】
定着スリーブ21の内周面側には、ニップ形成部材22、保持部材23、ヒータ33、第1の板金29および第2の板金41が設けられている。
【0052】
ニップ形成部材22は、定着スリーブ21の内周面に摺接するように固定されている。このニップ形成部材22が定着スリーブ21を介して加圧ローラ31に圧接することにより、記録媒体Pを搬送する定着ニップ部38が形成される。したがって、ニップ形成部材22は、定着スリーブ21の内周側に配置され、加圧ローラ31の押圧により定着スリーブ21を介して加圧ローラ31と当接して定着ニップ部38を形成するようになっている。
【0053】
ニップ形成部材22は、幅方向の両端部が定着装置20の後述するフランジ35に固定支持されている。なお、ニップ形成部材22の構成については、後でさらに詳しく説明する。
【0054】
図2に示すように熱源としてのヒータ33は、公知のハロゲンヒータにより構成されており、定着スリーブ21を輻射熱により加熱するようになっている。またヒータ33は、第1のヒータ33Aおよび第2のヒータ33Bを含んで構成されており、それぞれの両端部がフランジ35の開口部より突出して定着装置20の本体(例えば、側板など)に固定されている。
【0055】
第1のヒータ33Aは、定着スリーブ21の軸方向の中央領域である中央部分を加熱するようになっており、定着スリーブ21の長手方向の中央領域に強い発光分布を有する。第2のヒータ33Bは、定着スリーブ21の軸方向の端部領域である端部を加熱するようになっており、定着スリーブ21の長手方向の端部領域に強い発光分布を有する。また、第1のヒータ33Aおよび第2のヒータ33Bは、定着スリーブ21を直接加熱しているので、本発明に係る加熱手段を構成している。
【0056】
また、ヒータ33は、IHであってもよいし、抵抗発熱体、カーボンヒータ等であってもよいが、ベルトを昇温させる領域は図2中下側でニップ直前の領域とする方が効率良く加熱できる。
【0057】
温度センサ27は、定着スリーブ21の表面に対向するように設けられており、公知のサーミスタ等により構成されている。温度センサ27は、定着スリーブ21の長手方向の中央領域に設置され、第1のヒータ33Aの温度を検出する第1の温度センサ27Aと、定着スリーブ21の長手方向の端部領域に設置され、第2のヒータ33Bの温度を検出する第2の温度センサ27Bとを含んで構成されている。第1の温度センサ27Aは、本発明に係る中央部温度検出部を構成し、第2の温度センサ27Bは、本発明に係る端部温度検出部を構成している。
【0058】
第1の温度センサ27Aおよび第2の温度センサ27Bは、熱容量の小さな薄い定着スリーブ21を高精度に温度制御するためには定着スリーブ21の長手方向でそれぞれヒータ33が最も発熱する箇所に近接させて設置することが最も望ましい。
【0059】
前述したように、中央部および端部のそれぞれ、最も近接した位置に第1の温度センサ27Aおよび第2の温度センサ27Bがあるため、より高精度に温度検知することができ、温度制御することが可能となるのでより高品質な画像を得られる。第1の温度センサ27Aおよび第2の温度センサ27Bは定着スリーブ21と非接触にした方がその表面を摺動により傷つけることがないのでより好ましい。非接触式のものとしては、サーモパイルや非接触式のサーミスタが挙げられる。接触式のものとしては、接触タイプのサーミスタが挙げられる。
【0060】
また、第1のヒータ33Aおよび第2のヒータ33Bは、装置本体1の電源部から電力が供給されており、図示しない本体制御部により、出力制御されている。本体制御部は、第1の温度センサ27Aおよび第2の温度センサによる定着スリーブ21の表面温度の検出結果を表す信号を取得し、この信号に応じて第1のヒータ33Aおよび第2のヒータ33Bの出力を制御するようになっている。また、本体制御部は、第1のヒータ33Aおよび第2のヒータ33Bを消点灯させる制御により、定着スリーブ21の温度(定着温度)を所望の温度に設定することができる。
【0061】
また、定着スリーブ21は、ヒータ33によって定着ニップ部38を除く位置、かつ定着ニップ部38の近傍で記録媒体Pの上流側が特に加熱された状態で定着ニップ部を通過する。これにより、加熱された定着スリーブ21の表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられる。
【0062】
このように、本実施の形態における定着装置20は、ヒータ33によって定着スリーブ21が定着ニップ部38よりも回転方向上流側近傍の位置を中心にして周方向にわたって広範囲に加熱されるので、記録媒体Pの搬送を高速化した場合においても定着スリーブ21が充分に加熱されて定着不良の発生を抑止することができる。したがって、比較的簡易な構成で効率良く定着スリーブ21を加熱できるために、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短縮化されるとともに、装置の小型化が達成される。
【0063】
保持部材23は、定着ニップ部38を形成するニップ形成部材22を保持するようになっており、定着スリーブ21の内周面側に配置されている。保持部材23は、定着スリーブ21の内周側に配置され、ニップ形成部材22を加圧ローラ31の押圧方向に対して保持しているので、本発明に係る保持部材を構成している。
【0064】
また、保持部材23は、ニップ形成部材22と略同じ長さを有しており、その幅方向両端部がフランジ35を介して定着装置20の本体(例えば、側板)に固定されている。また、保持部材23は、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成されている。この構成により、保持部材23がニップ形成部材22および定着スリーブ21を介して加圧ローラ31に当接するため、ニップ形成部材22が定着ニップ部38において加圧ローラ31から加圧力を受けて大きく変形することを抑止できる。このように、保持部材23は、ニップ形成部材22を加圧ローラ31の押圧方向に対して保持するようになっている。また、保持部材23には、図8に示すように、ニップ形成部材22と当接する突部23aを有している。
【0065】
保持部材23は、ヒータ33の輻射熱等により加熱されてしまうので、表面に断熱もしくは鏡面処理が施されている。このため、保持部材23が、加熱されることを防止することで、無駄なエネルギー消費を抑制することができる。
【0066】
図2に戻り、加圧ローラ31は、定着スリーブ21の外周面に加圧回転体として圧接し、双方の部材間に所望の定着ニップ部38を形成するようになっている。本実施の形態においては、加圧ローラ31は、直径が30mmに設定されており、中空構造の芯金34上に弾性層36が形成されている。加圧ローラ31の弾性層36は、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の材料により形成されている。なお、加圧ローラ31は、弾性層36の表層にPFA、PTFE等からなる薄肉の離型層を設けていてもよい。加圧ローラ31は、図示しないスプリング等により定着スリーブ21側に押し付けられており、ゴム層が押しつぶされて変形することにより、所定のニップ幅を有している。加圧ローラ31は中実のローラであってもよいが、中空のほうが熱容量は少なくてよい。
【0067】
加圧ローラ31は、図示しない駆動機構により、加圧ローラ31は図2の矢印B方向に回転駆動される。また、加圧ローラ31は、その幅方向両端部が定着装置20の側板51(図6に示す)にベアリングを介して回転自在に支持されている。なお、加圧ローラ31の内部に、ハロゲンヒータ等の熱源を設けてもよい。
【0068】
加圧ローラ31の弾性層36が発泡性シリコーンゴム等のスポンジ状の材料で形成される場合には、定着ニップ部38に作用する加圧力を減ずることができるために、ニップ形成部材22に生じる撓みを軽減することができる。また、加圧ローラ31の断熱性が高まり定着スリーブ21の熱が加圧ローラ31に移動しにくくなるため、定着スリーブ21の加熱効率が向上する。なお、弾性層36は、ソリッドゴムでもよい。
ここで、加圧ローラ31は、定着スリーブ21の外周側で定着スリーブ21を押圧可能に配置されているので、本発明に係る加圧部材を構成している。
【0069】
ニップ形成部材22は、平板形状で定着スリーブ21の軸方向に長さを有し、少なくとも定着スリーブ21を介して加圧ローラ31と圧接する部分がLCP(液晶ポリマー)やPAI(ポリアミドイミド樹脂)やPI(ポリイミド樹脂)などの耐熱性を有する樹脂部材からなるものであり、保持部材23により定着スリーブ21の内周側の所定位置に保持された状態で固定されている。
【0070】
また、図7に示すように、ニップ形成部材22の定着スリーブ21の内周面と接する部分は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の繊維を編み込んだメッシュ状シートや、テフロン(登録商標) シート等の摺動性及び耐磨耗性の優れたシート材料22aからなるものとするとよい。このため、ニップ形成部材22は、シート材料22aが端部22cを除く中央部分に巻きつけられており、板状の固定プレート22dにより固定されている。この固定プレート22dは、シート材料22aを巻きつけた状態でボルト22fにより固定プレート22dを介してニップ形成部材22に固定されている。これにより、シート材料22aは、ニップ形成部材22に定着スリーブ21が摺接した状態でもニップ形成部材22に対しズレを防止することができる。
【0071】
また、ニップ形成部材22は、突部22eが複数設けられており、保持部材23の突起部23aと当接するようになっている。このため、シート材料22aは、突部22eが露出するように所定の間隔で図示しない穴が形成されていると好ましい。
【0072】
図2に戻り、ニップ形成部材22は、定着スリーブ21の内周側に配置され、加圧ローラ31の押圧により定着スリーブ21を介して加圧ローラ31と当接して定着ニップ部38を形成するので、本発明に係る当接部材を構成している。このように、定着スリーブ21は、ニップ形成部材22と加圧ローラ31との間に挟み込まれて回転するが、定着ニップ部38の上流側はベルトの張り側となり、定着ニップ部38に記録媒体Pが案内される。
【0073】
また、定着ニップ部38の下流側における記録媒体Pの分離性能は、加圧ローラ31の最下流部の形状に依存する。このため、ニップ形成部材22の最下流部をラウンド形状とした場合、曲率Rが大きく設定すると分離性能は高い。一方、曲率Rの値を小さくすれば一般的には加圧ローラ31と接触する面積が小さくなるため、定着ニップ部38のニップ幅が小さくなる。
【0074】
ニップ形成部材22は、その形状が平板形状であるが,凹形状やその他の形状であってもよい。ニップ形成部材22の形状が凹形状の方が、記録媒体P先端の排出方向が加圧ローラ31寄りになり、定着スリーブ21との分離性が向上するのでジャムの発生が抑制される。また、平板形状としてニップ出口形状のみを凹形状にして分離性を向上させるような、組み合わせの形状であってもよい。
【0075】
第1の板金29は、厚さが1.5mmのステンレス板をコの字状に形成したものであって、図8に示すように、保持部材23の突起部23aがニップ形成部材22と当接するように複数の溝43が形成されている。
【0076】
また、第2の板金41は、第1の板金29よりも薄いステンレス板をコの字状に形成したものであって、保持部材23の突起部23aがニップ形成部材22と当接するように第1の板金29と同様に複数の溝43が形成されている。第2の板金41は、定着スリーブ21の内周面側からニップ形成部材22を覆うようになっている。このため、第2の板金41の下流側側面部41aおよび上流側側面部41bは、少なくともニップ形成部材22を図8中矢印Cで示す方向に移動させてコの字部分に嵌め込んだ際に、ニップ形成部材22の上面部(定着ニップ部38を形成する面である)が定着スリーブ21に接触するように、ニップ形成部材22の上面部より低い位置になるように設定させる。
【0077】
第1の板金29および第2の板金41には、ボルト穴が形成されており、第1の板金29および第2の板金41は、ボルト締めによって固定される。また、第1の板金29には、定着スリーブ21の軸方向に延びる板状突起29aが形成されており、この板状突起29aはフランジ35(図4に示す)に形成された溝穴に嵌まるようになっている。このため、第1の板金29は、フランジ35を介して定着装置20の側板51(図6に示す)に固定され、同様に第2の板金41も定着装置20の側板51(図6に示す)に固定される。
【0078】
また、ニップ形成部材22は、第2の板金41のコの字状の部分に嵌まるようになっているので、第2の板金41、第1の板金29およびフランジ35を介して定着装置20の側板51(図6に示す)に固定される。
【0079】
図4に示すように、フランジ35は、定着スリーブ21の両端部でその内周面部と摺接する第1フランジ部35aと、定着スリーブ21の両端エッジ部と摺接して軸方向の位置決めを行う第2フランジ部35fと、を有しており、図6に示すように第2フランジ部35fの外側で側板51に固定されている。
【0080】
さらに、フランジ35は、保持部材23の両端部を収容する開口部35dが形成され、このフランジ35には、保持部材23の位置決めを可能にする溝35eが形成されている。これにより、フランジ35は、保持部材23の周方向の回転を規制することが可能になり、結果として、ニップ形成部材22を安定して保持することが可能になっている。また、フランジ35は、図示していないが、保持部材23の軸方向への移動を規制する溝が形成されている。
【0081】
また、フランジ35には、第1の板金29の端部29aおよびニップ形成部材22の端部22bを挿入する開口部35bが形成されており、ニップ形成部材22の端部22bに形成されたU字溝22cと係合する突起35cが形成されている。このため、第1の板金29およびニップ形成部材22が、定着装置20の組み付け時に、本体1に固定されるようになっている。
【0082】
図5に示すように、フランジ35の第1フランジ部35aは、定着スリーブ21の両端部でその内周面と摺接することで、定着スリーブ21の形状を維持するようになっている。また、第1フランジ部35aは、定着スリーブ21の略同一半径の円弧を定着ニップ部38の上流側で有しており、その円弧軸を35gで表している。一方、第1フランジ部35aは、円弧軸35gの上側半分の領域は、特に保持部材23を収容できるスペースを確保できればよいので、円弧軸35gの下側半分の領域の方が、大きい断面積を有するように形成されている。
【0083】
さらに、フランジ部35aは、円弧軸35gの上側半分の領域で、円形状ではなくフラットな形状のフラット面部35hを有している。このような形状により定着スリーブ21の円周長が同一でも、円弧軸35gの下側半分の領域を大きくすることができる。しかも、第1フランジ部35aは、フラット面部35hを有しているので、定着ニップ部38より下流側で、定着スリーブ21を第1フランジ部35aから分離させることができ、定着スリーブ21は、第1フランジ部35aから熱を奪われることを抑制することができる。
【0084】
ここで、フランジ35は、定着スリーブ21の両端部に配置され、定着スリーブ21の内周面に直接または間接的に摺接して定着スリーブ21の形状を維持しているので、本発明に係る形状維持手段を構成している。
【0085】
図5に示すように、フランジ35の外形線は複数の円弧形状を組み合わせた形状としてもよい。また、定着スリーブ21のうち、一部はニップ形成部材22により定着ニップ部38となるため、定着スリーブ21の周長に応じてフランジ35の一部を円ではない異形状とすることも可能である。定着スリーブ21の形状はフランジ35の外形線で作り出される形状に沿う形となる。
【0086】
図6に示すように、定着スリーブ21の内周面部21aには、フランジ部35aと摺接しない部分に、定着スリーブ21の内部に配置された熱源からの輻射熱を効率良くかつすばやくベルト表面まで伝えるために熱吸収率の高い黒色にすべく黒色に塗装されている。これにより、定着スリーブ21の長手方向の中央付近、すなわち定着ニップ部38において未定着トナーを永久定着する箇所において熱源からの熱を効率良く定着スリーブ21の表面に伝達することができる。前述したように、定着スリーブ21の内周面部21aを黒色に塗装する場合について説明したがこれに限らず内周面部が黒色の定着スリーブを用いてもよい。この場合、塗装する工程を削減することができる。
【0087】
一方、定着スリーブ21の内周面部21aのうち、両端部でしかもフランジ部35aと摺接する箇所(図6中ハッチングで示す)にコーティングが施されている。コーティングの一例としては、PFAやPTFE等のフッ素系コーティングが挙げられる。このような構成により、定着スリーブ21のフランジ35aに対する摺動抵抗を削減することができる。特に、加圧ローラ31の回転駆動により連れ回りする定着スリーブ21は、摺動抵抗の増大によるその回転姿勢の変化を抑制することができ、安定した定着スリーブ21の回転を維持することができる。ここで、定着スリーブ21にコーティングを施す場合について説明したが、これに限らずグリスを塗布する方法も一例として挙げられる。
【0088】
また、前述したように、定着スリーブ21の端部のコーティングと中央部の黒色塗装を施す場合について説明したが、摩擦係数の低い黒色のコーティングをベルト内周面部の一面に施す方法も挙げられ、この場合には、伝達効率向上及び摺動抵抗低減の二つの効果を同時に得ることが可能となる上に、加工費も安く済むといったメリットもある。
【0089】
このように、定着スリーブ21の摺動抵抗を低減することができ、加圧ローラ31を介して定着スリーブ21を回転させるための駆動モータの消費電力を低減させることができ、従来と比較して定着装置20全体の消費電力を減少させることができる。しかも、摺動抵抗が大きいことに起因した加圧ローラ31に対するスリップを抑制することができる。
【0090】
再び図2に戻り、加圧ローラ31の第1の中心軸線X(図2上では水平方向の線に相当する)は、定着スリーブ21の第2の中心軸線Y(図2上では水平方向の線に相当する)と一直線上にはない。すなわち、定着スリーブ21の中心軸線Yは、加圧ローラ31の第1の中心軸線Xより所定間隔Dの分だけニップ上流側にある。この中心軸ズレ量を図2中Dで表している。
【0091】
ここで、加圧ローラ31は、その回転中心である中心軸31aを有しており、第1の中心軸線Xは、中心軸31aから延びる加圧ローラ31の断面方向における記録媒体Pの搬送方向と垂直方向の線を表している。
【0092】
一方、フランジ35は、その円弧軸である35gを有しており、第2の中心軸線Yは、円弧軸35gから延びるフランジ35の断面方向における記録媒体Pの搬送方向と垂直方向の線を表している。ここで、本実施形態では第1フランジ部35aのうち定着ニップ部38の上流側に位置する一部が一定の曲率を有する円弧形状であり、円弧軸35gとはこの円弧形状の中心を意味している。なお、第1フランジ部35aが一定の円弧形状を有さない場合には、記録媒体搬送方向における第1フランジ部35aの最大長さの中間の位置を35gとして定義するようにすればよい。
【0093】
したがって、加圧ローラ31の中心軸31aと定着ニップ部38の略中心31bとを結ぶ第1の中心軸線Xは、円弧軸35gと、定着ニップ部38と反対側で第1フランジ部35aの円弧が終了する部分35i(図5に示す)と、を結ぶ第2の中心軸線Yより変位Dだけ離隔している。
【0094】
このため、第1の中心軸線Xより搬送方向上流側にヒータ33を設け、第2の中心軸線Yより搬送方向下流側に保持部材23を設けている。
【0095】
このように、フランジ35のフランジ部35aにより定着スリーブ21の形状を維持することができるとともに、その形状によって定着スリーブ21の多彩な形状を作り出すことができる。したがって、熱源のレイアウトを従来と比較してより最適な場所に配置することができるとともに、定着スリーブ21の円周長を小さくすることができ、結果として小型化が可能となる。
【0096】
しかも、ニップ形成部材22は、定着スリーブ21内で図2上方に偏っているため、定着ニップ部38の上流側には、ヒータ33を配置するためのスペースを広く取ることができる。よって、ヒータ33(熱源)を2本に限らず3本以上配置したりすることも可能となる。複数本配置できれば、それぞれのヒータに、定着スリーブ22の例えば軸方向に複数配列させることが可能で、より高精度にベルト軸方向を加熱することができる。図2ではヒータを2本配置しているがこの限りではなく、1本でもよいし、また3本以上でもよい。
【0097】
次に、図2を参照して、定着装置20の動作について説明する。
まず、画像形成装置が出力信号を受けると(例えばユーザの操作パネルの操作あるいはパソコンからの通信等により画像形成装置に印刷要求があると) 、定着装置20において、加圧脱圧手段により加圧ローラ31が定着スリーブ21を介してニップ形成部材22を押圧し、定着ニップ部38を形成する。
【0098】
ついで、不図示の駆動装置によって、加圧ローラ31が図2の時計回り方向(矢印B方向)に回転駆動されると、定着スリーブ21も連れ回りして反時計回り方向(矢印A方向)に回転する。このとき、定着スリーブ21は、定着ニップ部38とフランジ35の位置関係により所定領域(図2ではY軸より下半分側) に張力が付与されており、少なくとも定着ニップ部38の上流側の領域で所定の圧力でニップ形成部材22と当接し摺動する状態となる。
【0099】
そして、それと同期して外部電源または内部の蓄電装置からヒータ33に電力が供給され、定着スリーブ21はヒータ33から周方向、軸方向全幅において効率的に熱が伝達され、急速に加熱される。なお、駆動装置の動作とヒータ33による加熱は同時刻に同時に開始する必要はなく、適宜時間差を設けて開始してもよい。
【0100】
このとき、定着ニップ部38の上流側であって、定着スリーブ21に対して接触又は非接触に配置された温度センサ27で検知される温度により、定着ニップ部38が所定の温度となるように、ヒータ33による加熱制御が行われており、定着に必要な温度まで昇温された後、保持され、記録媒体Pの通紙が開始される。
【0101】
このように、定着装置20では、定着スリーブ21およびヒータ33の熱容量が小さいため、省エネを図りつつウォームアップ時間やファーストプリント時間を短くすることができる。
【0102】
また、画像形成装置への出力信号がない場合、通常は消費電力を抑えるために加圧ローラ31および定着スリーブ21は非回転で、ヒータ33は通電を停止されているが、すぐに再出力を開始したい(復帰させたい) 場合は、加圧ローラ31及び定着スリーブ21が非回転の状態でもヒータ33に通電しておくことが可能である。この場合は、ヒータ33に定着スリーブ21の全体を保温させておく程度の通電を行う。
【0103】
以上説明したように、本実施の形態に係る定着装置は、定着スリーブ21の内周側で当接部材23の上流側の空間を大きくすることができるので熱源を最適な位置に配置できるともに、定着スリーブ21の円周長を小さくすることができる。このため、従来と比較して定着装置20を小型化することができるので、定着装置20全体の消費電力を減少させることができる。
さらに、フランジ35により定着スリーブ21の両端部に蓋をして定着部材20を回転摺動させることができ、定着スリーブ21の円筒形状を維持することができる。
【0104】
また、本実施の形態に係る定着装置は、ヒータ33が輻射熱を発するハロゲンヒータによって構成されているので、輻射熱を利用して定着スリーブ21を直接加熱することができるので、効率良く定着スリーブ21を温めることができる。
【0105】
また、本実施の形態に係る定着装置は、定着スリーブ21の内周面が黒色であるので、輻射熱の吸収率を向上させることができ、より効率良く設定された温度に制御することが可能になる。
【0106】
また、本実施の形態に係る定着装置は、ヒータ33は、定着スリーブ21の軸方向中央部分を加熱する第1のヒータ33Aと、定着スリーブ21の軸方向端部を加熱する第2のヒータ33Bとを有し、第1のヒータ33Aの温度を検出する第1の温度センサ27Aと、第2のヒータ33Bの温度を検出すると第2の温度センサ27Bを有し、第1の温度センサ27Aおよび第2の温度センサ27Bは、第1のヒータ33Aおよび第2のヒータ33Bがそれぞれ最も発熱する箇所に配置されているので、各加熱部の発熱する箇所にそれぞれ設置しているので、精度良く各発熱部を温度検出することができる。
【0107】
また、本実施の形態に係る画像形成装置は、前述した定着装置20を備えているので、従来と比較して定着装置を小さくすることができるので、画像形成装置全体の消費電力を減少させることができるとともに、ウォームアップ時間を短縮することができる。しかも、良好な定着性及び均一な画像光沢を得ることが可能となる。したがって、ユーザビリティの高い画像形成装置を提供することができる。
【0108】
以上説明した第1の実施の形態に係る定着装置に代えて、以下に説明する第2の実施の形態のように、金属製の熱伝導部材を具備した定着装置を含む画像形成装置でもよい。
【0109】
(第2の実施の形態)
次に、図9〜図11を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置について説明する。
本実施の形態に係る画像形成装置においては、第1の実施の形態に係る画像形成装置とは、定着装置が金属製の熱伝導部材を有する点でその構成が異なるが、他の構成は略同様に構成されている。したがって、図1〜図8に示した第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点のみ詳述する。
【0110】
図9に示すように、加熱部材39は、肉厚が0.1mmの鉄製の断面略C字形状のパイプ状部材により形成されている。加熱部材39は、定着ニップ部38を除く位置で定着スリーブ21の内周面に直接的に対向するように形成されている。また、加熱部材39は、定着ニップ部38の位置において内部41に凹状に形成されるとともに開口部49を有している。この凹状に形成された位置に、ニップ形成部材22がクリアランスをあけて嵌め込まれるようになっている。
【0111】
加熱部材39は、図10に示すように、幅方向両端部がフランジ35の第1フランジ部35aを介して定着装置20に固定支持されている。
【0112】
また、加熱部材39は、内周側に設置されているヒータ33の輻射熱により加熱され、この加熱された加熱部材39により定着スリーブ21が加熱されるようになっている。すなわち、加熱部材39がヒータ25より直接的に加熱され、定着スリーブ21がヒータ33によって加熱部材39を介して間接的に加熱される。
【0113】
加熱部材39は、アルミニウム、鉄、ステンレス等の熱伝導性を有する金属により構成されている。ここで、加熱部材39の肉厚を0.2mm以下に設定した場合には、加熱部材39の加熱効率が向上するため、定着スリーブ21の加熱効率も向上することとなり好適である。本実施の形態においては、加熱部材39は、ステンレスにより構成されている。
【0114】
定着スリーブ21と加熱部材39とは、加熱領域(本実施の形態の場合には定着ニップ部38の上流側の領域であって、ヒータ33から加熱部材39への輻射熱が保持部材23により遮蔽されない領域)において接触して摺動する構成、もしくは0.3mm以下のギャップδを有する構成としている。これにより、定着スリーブ21を加熱部材39により効率的に加熱することが可能となるが、加熱領域において両者が接触して摺動する構成とした方が加熱効率が高くより望ましい。但し、加熱領域において定着スリーブ21と加熱部材39とを密着させる場合には、加熱領域における定着スリーブ21と加熱部材39との圧接力が大きくなりすぎても定着スリーブ21のトルクが増大し、磨耗を加速する恐れがある。そこで、かかる場合には定着スリーブ21と加熱部材39との圧接力は0.3kgf/cm2以下になるようにすることが好ましい。
【0115】
このように、加熱部材39は、定着スリーブ21の内周側に配置され、定着スリーブ21の回転を支持するパイプ形状のものであり、定着スリーブ21の回転を支持するようになっており、本発明に係る回転支持部材を構成している。これにより、定着スリーブ21を回転可能に支持することができ、定着スリーブ21の形状を維持することができ、結果として定着スリーブ21の撓みを抑制することができる。
【0116】
また、定着スリーブ21は、加熱部材39と摺動するようになっている。
【0117】
加熱部材39は、図9に示すように、C型のパイプ形状となっており、一端にニップ形成部材22を収納するニップ凹部41を有している。
【0118】
このニップ凹部41は、加熱部材39の内側に向けて平行に延びる一対の側壁47と、各側壁47の先端を結ぶ底壁48と、底壁48に形成された開口49とを備えている。図10および図11に示すように、ニップ凹部41には、ニップ凹部41の外側、すなわち加熱部材39の内側に設けられた略コの字形状の第2の板金41と、ニップ凹部41の内側に設けられた略コの字形状の第1の板金29とが装着されている。これら第2の板金41と第1の板金29とは、加熱部材39のニップ凹部41の側壁47および底壁48を挟持してねじ止めされている。これら第2の板金41と第1の板金29との装着により、ニップ凹部41の形状が維持される。
【0119】
また、加熱部材39の外周部には、定着スリーブ21の磨耗が軽減されるよう潤滑剤としてのフッ素グリスが塗布されている。なお、加熱部材39と定着スリーブ21との摺動抵抗を低下させるために、加熱部材39の摺接面を摩擦係数の低い材料で形成したり、定着スリーブ21の内周面21aにフッ素を含む材料からなる表面層を形成してもよい。
【0120】
また、本実施の形態では、図10に示すように、加熱部材39は、その両端部の内周面がフランジ部35aの外周面と摺接するように、少なくともフランジ35のフランジ部35aと同様の形状に成型される。このため、加熱部材39は、その端部でフランジ35に固定される。また、加熱部材39の外周面に摺接する定着スリーブ21も加熱部材39の形状に依存するので、定着スリーブ21も第1の実施の形態で示した形状に略同一の形状となる。
【0121】
以上説明したように、本実施の形態に係る定着装置は、第1の実施の形態の定着装置の作用効果に加えて、回転支持部材としても機能する加熱部材39を備えているので、定着スリーブ21を回転可能に支持することができ、定着スリーブ21の形状を維持することができ、結果として定着スリーブ21の撓みを抑制することができる。
【0122】
以上説明した第1の実施の形態に係る定着装置に代えて、以下に説明する第3の実施の形態のように、ハロゲンヒータではなく面状発熱体を用いた定着装置を含む画像形成装置でもよい。
【0123】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置について説明する。
本実施の形態に係る画像形成装置においては、第1の実施の形態に係る画像形成装置とは、定着装置がハロゲンヒータに代えて面状発熱体を備えている点でその構成が異なるが、他の構成は略同様に構成されている。したがって、図1〜図8に示した第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点のみ詳述する。
なお、以下の説明においては、図12を用いて主に定着装置について説明し、第1の実施の形態に係る定着装置の説明で用いた図4〜図8を適宜参照しながら説明する。
【0124】
図12に示すように熱源としての面状発熱体53は、面状の発熱部材で構成されており、定着スリーブ21と摺接してその熱を伝達することにより、定着スリーブ21を加熱するようになっている。また面状発熱体53は、第1の面状発熱体53Aおよび第2の面状発熱体53Bを有しており、それぞれの両端部がフランジ35の開口部より突出して定着装置20の本体に固定されている。加圧機構52は、面状発熱体53を定着スリーブ21の方向に加圧されており、第1の面状発熱体53Aおよび第2の面状発熱体53Bをそれぞれ加圧する第1の加圧機構52Aおよび第2の加圧機構53Bを備えている。この加圧機構52は、面状発熱体53を定着スリーブ21に押し当てる押し当て部材54A、54Bと、面状発熱体53が定着スリーブ21に密着するように押し当て部材54A、54Bを加圧する加圧部材としてのバネ部材56A、56Bと、を有している。なお、バネ部材56A、56Bは、本発明に係る加圧部材を構成している。
【0125】
第1の面状発熱体53Aは、定着スリーブ21の軸方向の中央領域である中央部分を加熱するようになっており、定着スリーブ21の長手方向の中央領域に強い発熱分布を有する。第2のヒータ33Bは、定着スリーブ21の軸方向の端部領域である端部を加熱するようになっており、定着スリーブ21の長手方向の端部領域に強い発熱分布を有する。また、第1の面状発熱体53Aおよび第2の面状発熱体53Bは、定着スリーブ21を直接加熱しているので、本発明に係る加熱手段を構成している。
【0126】
温度センサ27は、定着スリーブ21の表面に対向するように設けられており、公知のサーミスタ等により構成されている。温度センサ27は、定着スリーブ21の長手方向の中央領域に設置され、第1の面状発熱体53Aの温度を検出する第1の温度センサ27Aと、定着スリーブ21の長手方向の端部領域に設置され、第2の面状発熱体53Bの温度を検出する第2の温度センサ27Bとを含んで構成されている。第1の温度センサ27Aは、本発明に係る中央部温度検出部を構成し、第2の温度センサ27Bは、本発明に係る端部温度検出部を構成している。
【0127】
第1の温度センサ27Aおよび第2の温度センサ27Bは、熱容量の小さな薄い定着スリーブ21を高精度に温度制御するためには定着スリーブ21の長手方向でそれぞれ面状発熱体53が最も発熱する箇所に近接させて設置することが最も望ましい。
【0128】
前述したように、中央部および端部のそれぞれ、最も近接した位置に第1の温度センサ27Aおよび第2の温度センサ27Bがあるため、より高精度に温度検知することができ、温度制御することが可能となるのでより高品質な画像を得られる。第1の温度センサ27Aおよび第2の温度センサ27Bは定着スリーブ21と非接触にした方がその表面を摺動により傷つけることがないのでより好ましい。非接触式のものとしては、サーモパイルや非接触式のサーミスタが挙げられる。接触式のものとしては、接触タイプのサーミスタが挙げられる。
【0129】
また、第1の面状発熱体53Aおよび第2の面状発熱体53Bは、装置本体1の電源部から電力が供給されており、図示しない本体制御部により、出力制御されている。本体制御部は、第1の温度センサ27Aおよび第2の温度センサによる定着スリーブ21の表面温度の検出結果を表す信号を取得し、この信号に応じて第1の面状発熱体53Aおよび第2の面状発熱体53Bの出力を制御するようになっている。また、本体制御部は、第1の面状発熱体53Aおよび第2の面状発熱体53Bを消点灯させる制御により、定着スリーブ21の温度(定着温度)を所望の温度に設定することができる。
【0130】
また、面状発熱体53の定着スリーブ21と接する側とは対抗する側に押し当て部材54が設けられている。この押し当て部材54は、第1の面状発熱体53Aを定着スリーブ21に押し当てる第1の押し当て部材54Aと、第1の面状発熱体53Bを定着スリーブ21に押し当てる第2の押し当て部材54Bと、を有している。
【0131】
この押し当て部材54は、面状発熱体53を定着スリーブ21に押し当てるようになっており、面状発熱体53の面を定着スリーブ21に均一に密着させるために、発砲シリコーンスポンジ、もしくはシリコーンゴムであることが望ましい。弾性体であれば、面状発熱体53の全域を均一な面圧に保つことができ、面状発熱体53からの熱を効率良く定着スリーブ21に伝達することが可能となる。その他、この押し当て部材54の材質としては、前述したものの他に耐熱性および弾性の特徴を持つものが望ましく、フッ素ゴムであってもよい。さらにこの押し当て部材54は、熱電動率の低いものであれば、面状発熱体53から押し当て部材54への熱伝達を抑制することができるので、より効率良く面状発熱体53から定着スリーブ21のほうへ熱伝達することができ、省エネになる。
【0132】
バネ部材56A、56Bは、一端が押し当て部材54A、54Bにそれぞれ固定されており、その他端が図示しない支持部材にそれぞれ固定されている。支持部材は、バネ部材56A、56Bを所望の位置で支持するようになっており、定着装置20に固定されている。
【0133】
また、押し当て部材54と加圧部材としてのバネ部材56との間に、より安定した圧力分布を定着スリーブ21と面状発熱体53との間に得られるよう、図示しない剛体を設けてもよい。この剛体の一例としては板金や金属体が挙げられる。これらを設けることで、バネ部材56から加わる力を押し当て部材54に均一に分布させることが可能になる。
【0134】
これらの面状発熱体53、押し当て部材5、バネ部材56および剛体を定着スリーブ21の内部に設けるために、後述する第1の中心軸Xと第2の中心軸Yとを搬送方向でずらして設置することでスペースを確保することができる。従来のように、第1の中心軸Xと第2の中心軸Yとを搬送方向でずらして設置しない場合と比較して定着スリーブ21の周長を小さくすることができるので、熱容量を減少させることができ、省エネ効果を得ることができる。
【0135】
また、定着スリーブ21は、面状発熱体53によって定着ニップ部38を除く位置、かつ定着ニップ部38の近傍で記録媒体Pの上流側が特に加熱された状態で定着ニップ部を通過する。これにより、加熱された定着スリーブ21の表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられる。
【0136】
このように、本実施の形態における定着装置20は、面状発熱体53によって定着スリーブ21が定着ニップ部38よりも回転方向上流側近傍の位置を中心にして周方向にわたって全体的に加熱されるので、記録媒体Pの搬送を高速化した場合においても定着スリーブ21が充分に加熱されて定着不良の発生を抑止することができる。したがって、比較的簡易な構成で効率良く定着スリーブ21を加熱できるために、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短縮化されるとともに、装置の小型化が達成される。
【0137】
保持部材23は、定着ニップ部38を形成するニップ形成部材22を保持するようになっており、定着スリーブ21の内周面側に配置されている。保持部材23は、定着スリーブ21の内周側に配置され、ニップ形成部材22を加圧ローラ31の押圧方向に対して保持しているので、本発明に係る保持部材を構成している。
【0138】
また、保持部材23は、ニップ形成部材22と略同じ長さを有しており、その幅方向両端部がフランジ35を介して定着装置20の本体に固定されている。また、保持部材23は、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成されている。この構成により、保持部材23がニップ形成部材22および定着スリーブ21を介して加圧ローラ31に当接するため、ニップ形成部材22が定着ニップ部38において加圧ローラ31から加圧力を受けて大きく変形することを抑止できる。このように、保持部材23は、ニップ形成部材22を加圧ローラ31の押圧方向に対して保持するようになっている。また、保持部材23には、図8に示すように、ニップ形成部材22と当接する突部23aを有している。
【0139】
保持部材23は、面状発熱体53の輻射熱等により加熱されてしまうので、表面に断熱もしくは鏡面処理が施されている。このため、保持部材23が、加熱されることを防止することで,無駄なエネルギー消費を抑制することができる。
【0140】
図12に戻り、加圧ローラ31は、定着スリーブ21の外周面に加圧回転体として圧接し、双方の部材間に所望の定着ニップ部38を形成するようになっている。本実施の形態においては、加圧ローラ31は、直径が30mmに設定されており、中空構造の芯金34上に弾性層36が形成されている。加圧ローラ31の弾性層36は、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の材料により形成されている。なお、加圧ローラ31は、弾性層36の表層にPFA、PTFE等からなる薄肉の離型層を設けていてもよい。加圧ローラ31は、図示しないスプリング等により定着スリーブ21側に押し付けられており、ゴム層が押しつぶされて変形することにより、所定のニップ幅を有している。加圧ローラ31は中身がローラであってもよいが、中空のほうが熱容量は少なくてよい。
【0141】
加圧ローラ31は、図示しない駆動機構により、加圧ローラ31は図12の矢印B方向に回転駆動される。また、加圧ローラ31は、その幅方向両端部が定着装置20に回転自在に支持されている。なお、加圧ローラ31の内部に、ハロゲンヒータ等の熱源を設けてもよい。
【0142】
加圧ローラ31の弾性層36が発泡性シリコーンゴム等のスポンジ状の材料で形成される場合には、定着ニップ部38に作用する加圧力を減ずることができるために、ニップ形成部材22に生じる撓みを軽減することができる。また、加圧ローラ31の断熱性が高まり定着スリーブ21の熱が加圧ローラ31に移動しにくくなるため、定着スリーブ21の加熱効率が向上する。なお、弾性層36は、ソリッドゴムでもよい。
ここで、加圧ローラ31は、定着スリーブ21の外周側で定着スリーブ21を押圧可能に配置されているので、本発明に係る加圧部材を構成している。
【0143】
ニップ形成部材22は、平板形状で定着スリーブ21の軸方向に長さを有し、少なくとも定着スリーブ21を介して加圧ローラ31と圧接する部分がフッ素系ゴムなどの耐熱性を有する弾性体からなるものであり、保持部材23により定着スリーブ21の内周側の所定位置に保持された状態で固定されている。
【0144】
また、図7に示すように、ニップ形成部材22の定着スリーブ21の内周面と接する部分は、テフロン(登録商標) シート等の摺動性及び耐磨耗性の優れたシート材料22aからなるものとするとよい。このため、ニップ形成部材22は、シート材料22aが端部22cを除く中央部分に巻きつけられており、板状の固定プレート22dにより固定されている。この固定プレート22dは、シート材料22aを巻きつけた状態でボルト22fにより固定プレート22dを介してニップ形成部材22に固定されている。これにより、シート材料22aは、ニップ形成部材22に定着スリーブ21が摺接した状態でもニップ形成部材22に対しズレを防止することができる。
【0145】
また、ニップ形成部材22は、突部22eが複数設けられており、保持部材23の突起部23aと当接するようになっている。このため、シート材料22aは、突部22eが露出するように所定の間隔で図示しない穴が形成されていると好ましい。
【0146】
図12に戻り、ニップ形成部材22は、定着スリーブ21の内周側に配置され、加圧ローラ31の押圧により定着スリーブ21を介して加圧ローラ31と当接して定着ニップ部38を形成するので、本発明に係る当接部材を構成している。このように、定着スリーブ21は、ニップ形成部材22と加圧ローラ31との間に挟み込まれて回転するが、定着ニップ部38の上流側はベルトの張り側となり、定着ニップ部38に記録媒体Pが案内される。
【0147】
また、定着ニップ部38の下流側における記録媒体Pの分離性能は、加圧ローラ31の最下流部の形状に依存する。このため、ニップ形成部材22の最下流部をラウンド形状とした場合、曲率Rが大きく設定すると分離性能は高い。一方、曲率Rの値を小さくすれば一般的には加圧ローラ31と接触する面積が小さくなるため、定着ニップ部38のニップ幅が小さくなる。
【0148】
ニップ形成部材22は、その形状が平板形状であるが,凹形状やその他の形状であってもよい。ニップ形成部材22の形状が凹形状の方が、記録媒体P先端の排出方向が加圧ローラ31寄りになり、定着スリーブ21との分離性が向上するのでジャムの発生が抑制される。また、平板形状としてニップ出口形状のみを凹形状にして分離性を向上させるような、組み合わせの形状であってもよい。
【0149】
第1の板金29は、厚さが1.5mmのステンレス板をコの字状に形成したものであって、図8に示すように、保持部材23の突起部23aがニップ形成部材22と当接するように複数の溝43が形成されている。
【0150】
また、第2の板金41は、第1の板金29よりも薄いステンレス板をコの字状に形成したものであって、保持部材23の突起部23aがニップ形成部材22と当接するように第1の板金29と同様に複数の溝43が形成されている。第2の板金41は、定着スリーブ21の内周面側からニップ形成部材22を覆うようになっている。このため、第2の板金41の下流側側面部41aおよび上流側側面部41bは、少なくともニップ形成部材22を図8中矢印Cで示す方向に移動させてコの字部分に嵌め込んだ際に、ニップ形成部材22の上面部が定着スリーブ21に接触するように、ニップ形成部材22の上面部より低い位置になるように設定させる。
【0151】
第1の板金29および第2の板金41には、ボルト穴が形成されており、第1の板金29および第2の板金41は、ボルト締めによって固定される。また、第1の板金29には、定着スリーブ21の軸方向に延びる板状突起29aが形成されており、この板状突起29aはフランジ35(図4に示す)に形成された溝穴に嵌まるようになっている。このため、第1の板金29は、フランジ35を介して定着装置20に固定され、同様に第2の板金41も定着装置20に固定される。
【0152】
また、ニップ形成部材22は、第2の板金41のコの字状の部分に嵌まるようになっているので、第2の板金41、第1の板金29およびフランジ35を介して定着装置20に固定される。
【0153】
図4に示すように、フランジ35は、定着スリーブ21の両端部でその内周面部と摺接する第1フランジ部35aと、定着スリーブ21の両端エッジ部と摺接して軸方向の位置決めを行う第2フランジ部35fと、を有している。
【0154】
さらに、フランジ35は、保持部材23の両端部を収容する開口部35dが形成され、このフランジ35には、保持部材23の位置決めを可能にする溝35eが形成されている。これにより、フランジ35は、保持部材23の周方向の回転を規制することが可能になり、結果として、ニップ形成部材22を安定して保持することが可能になっている。また、フランジ35は、図示していないが、保持部材23の軸方向への移動を規制する溝が形成されている。
【0155】
また、フランジ35には、第1の板金29の端部29aおよびニップ形成部材22の端部22bを挿入する開口部35bが形成されており、ニップ形成部材22の端部22bに形成されたU字溝22cと係合する突起35cが形成されている。このため、第1の板金29およびニップ形成部材22が、定着装置20の組み付け時に、本体1に固定されるようになっている。
【0156】
図5に示すように、フランジ35の第1フランジ部35aは、定着スリーブ21の両端部でその内周面と摺接することで、定着スリーブ21の形状を維持するようになっている。また、第1フランジ部35aは、定着スリーブ21の略同一半径の円弧を定着ニップ部38の上流側で有しており、その円弧軸を35gで表している。一方、第1フランジ部35aは、円弧軸35gの上側半分の領域は、特に保持部材23を収容できるスペースを確保できればよいので、円弧軸35gの下側半分の領域の方が、大きい断面積を有するように形成されている。
【0157】
さらに、フランジ部35aは、円弧軸35gの上側半分の領域で、円形状ではなくフラットな形状のフラット面部35hを有している。このような形状により定着スリーブ21の円周長が同一でも、円弧軸35gの下側半分の領域を大きくすることができる。しかも、第1フランジ部35aは、フラット面部35hを有しているので、定着ニップ部38より下流側で、定着スリーブ21を第1フランジ部35aから分離させることができ、定着スリーブ21は、第1フランジ部35aから熱を奪われることを抑制することができる。
【0158】
ここで、フランジ35は、定着スリーブ21の両端部に配置され、定着スリーブ21の内周面に直接または間接的に摺接して定着スリーブ21の形状を維持しているので、本発明に係る形状維持手段を構成している。
【0159】
図5に示すように、フランジ35の外形線は複数の円弧形状を組み合わせた形状としてもよい。また、定着スリーブ21のうち、一部はニップ形成部材22により定着ニップ部38となるため、定着スリーブ21の周長に応じてフランジ35の一部を円ではない異形状とすることも可能である。定着スリーブ21の形状はフランジ35の外形線で作り出される形状に沿う形となる。
【0160】
なお、図5においては、ハロゲンヒータを用いた構成が図示されているが、面状発熱体53が設けられている構成については図12を参照する。
【0161】
図6に示すように、定着スリーブ21の内周面部21aには、フランジ部35aと摺接しない部分であり、面状発熱体53と摺接する部分に、摺動性を高め、かつ面状発熱体53から定着スリーブ21への熱伝達を高めるためのコーティングが施されている。これにより、定着スリーブ21の長手方向の中央付近、すなわち定着ニップ部38において未定着トナーを永久定着する箇所において面状発熱体53からの熱を効率良く定着スリーブ21の表面に伝達することができ、また、経時での摩耗を低減させることができる。なお、第1の実施の形態における定着装置において、黒色に塗装されている部分が、本実施の形態における定着装置におけるコーディングが施されている部分であり、図6を引用して図示することを割愛する。
【0162】
一方、定着スリーブ21の内周面部21aのうち、両端部でしかもフランジ部35aと摺接する箇所(図6中ハッチングで示す)にコーティングが施されている。コーティングの一例としては、PFAやPTFE等のフッ素系コーティングが挙げられる。このような構成により、定着スリーブ21のフランジ35aに対する摺動抵抗を削減することができる。特に、加圧ローラ31の回転駆動により連れ回りする定着スリーブ21は、摺動抵抗の増大によるその回転姿勢の変化を抑制することができ、安定した定着スリーブ21の回転を維持することができる。ここで、定着スリーブ21にコーティングを施す場合について説明したが、これに限らずグリスを塗布する方法も一例として挙げられる。
【0163】
また、前述したように、定着スリーブ21の端部のコーティングと中央部のコーティングを施す場合について説明したが、両者は別の材質、特性を持つコーティングでもよい。摩擦係数の低いコーティングをベルト内周面部の一面に施す方法も挙げられ、この場合には、伝達効率向上及び摺動抵抗低減の二つの効果を同時に得ることが可能となる上に、加工費も安く済むといったメリットもある。
【0164】
このように、定着スリーブ21の摺動抵抗を低減することができ、加圧ローラ31を介して定着スリーブ21を回転させるための駆動モータの消費電力を低減させることができ、従来と比較して定着装置20全体の消費電力を減少させることができる。しかも、摺動抵抗が大きいことに起因した加圧ローラ31に対するスリップを抑制することができる。
【0165】
再び図12に戻り、加圧ローラ31の第1の中心軸線X(図12上では水平方向の線に相当する)は、定着スリーブ21の第2の中心軸線Y(図12上では水平方向の線に相当する)と一直線上にはない。すなわち、定着スリーブ21の中心軸線Yは、加圧ローラ31の第1の中心軸線Xより所定間隔Dの分だけニップ上流側にある。この中心軸ズレ量を図12中Dで表している。
【0166】
ここで、加圧ローラ31は、その回転中心である中心軸31aを有しており、第1の中心軸線Xは、中心軸31aから延びる加圧ローラ31の断面方向における記録媒体Pの搬送方向と垂直方向の線を表している。
【0167】
一方、フランジ35は、その円弧軸である35gを有しており、第2の中心軸線Yは、円弧軸35gから延びるフランジ35の断面方向における記録媒体Pの搬送方向と垂直方向の線を表している。ここで、本実施形態では第1フランジ部35aのうち定着ニップ部38の上流側に位置する一部が一定の曲率を有する円弧形状であり、円弧軸35gとはこの円弧形状の中心を意味している。なお、第1フランジ部35aが一定の円弧形状を有さない場合には、記録媒体搬送方向における第1フランジ部35aの最大長さの中間の位置を35gとして定義するようにすればよい。
【0168】
したがって、加圧ローラ31の中心軸31aと定着ニップ部38の略中心31bとを結ぶ第1の中心軸線Xは、円弧軸35gと、定着ニップ部38と反対側で第1フランジ部35aの円弧が終了する部分35i(図5に示す)と、を結ぶ第2の中心軸線Yより変位Dだけ離隔している。
【0169】
このため、第1の中心軸線Xより搬送方向上流側に面状発熱体53を設け、第2の中心軸線Yより搬送方向下流側に保持部材23を設けている。
【0170】
このように、フランジ35のフランジ部35aにより定着スリーブ21の形状を維持することができるとともに、その形状によって定着スリーブ21の多彩な形状を作り出すことができる。したがって、熱源のレイアウトを従来と比較してより最適な場所に配置することができるとともに、定着スリーブ21の円周長を小さくすることができ、結果として小型化が可能となる。
【0171】
しかも、ニップ形成部材22は、定着スリーブ21内で図12上方に偏っているため、定着ニップ部38の上流側には、面状発熱体53を配置するためのスペースを広く取ることができる。よって、面状発熱体53を(熱源)を2本に限らず3本以上配置したりすることも可能となる。複数本配置できれば、それぞれの発熱体に、定着スリーブ22の例えば軸方向に複数配列させることが可能で、より高精度にベルト軸方向を加熱することができる。図12ではヒータを2本配置しているがこの限りではなく、1本でもよいし、また3本以上でもよい。
【0172】
次に、図12を参照して、定着装置20の動作について説明する。
まず、画像形成装置が出力信号を受けると(例えばユーザの操作パネルの操作あるいはパソコンからの通信等により画像形成装置に印刷要求があると) 、定着装置20において、加圧脱圧手段により加圧ローラ31が定着スリーブ21を介してニップ形成部材22を押圧し、定着ニップ部38を形成する。
【0173】
ついで、不図示の駆動装置によって、加圧ローラ31が図12の時計回り方向(矢印B方向)に回転駆動されると、定着スリーブ21も連れ回りして反時計回り方向(矢印A方向)に回転する。このとき、定着スリーブ21は、定着ニップ部38とフランジ35の位置関係により所定領域(図12ではY軸より下半分側) に張力が付与されており、少なくとも定着ニップ部38の上流側の領域で所定の圧力でニップ形成部材22と当接し摺動する状態となる。
【0174】
そして、それと同期して外部電源または内部の蓄電装置から面状発熱体53に電力が供給され、定着スリーブ21は面状発熱体53から周方向、軸方向全幅において効率的に熱が伝達され、急速に加熱される。なお、駆動装置の動作と面状発熱体53による加熱は同時刻に同時に開始する必要はなく、適宜時間差を設けて開始してもよい。
【0175】
このとき、定着ニップ部38の上流側であって、定着スリーブ21に対して接触又は非接触に配置された温度センサ27で検知される温度により、定着ニップ部38が所定の温度となるように、面状発熱体53による加熱制御が行われており、定着に必要な温度まで昇温された後、保持され、記録媒体Pの通紙が開始される。
【0176】
このように、定着装置20では、定着スリーブ21および面状発熱体53の熱容量が小さいため、省エネを図りつつウォームアップ時間やファーストプリント時間を短くすることができる。
【0177】
また、画像形成装置への出力信号がない場合、通常は消費電力を抑えるために加圧ローラ31および定着スリーブ21は非回転で、面状発熱体53は通電を停止されているが、すぐに再出力を開始したい(復帰させたい) 場合は、加圧ローラ31及び定着スリーブ21が非回転の状態でも面状発熱体53に通電しておくことが可能である。この場合は、面状発熱体53に定着スリーブ21の全体を保温させておく程度の通電を行う。
【0178】
以上説明したように、本実施の形態に係る定着装置は、定着スリーブ21の内周側で当接部材23の上流側の空間を大きくすることができるので熱源を最適な位置に配置できるともに、定着スリーブ21の円周長を小さくすることができる。このため、従来と比較して定着装置20を小型化することができるので、定着装置20全体の消費電力を減少させることができる。
さらに、フランジ35により定着スリーブ21の両端部に蓋をして定着部材20を回転摺動させることができ、定着スリーブ21の円筒形状を維持することができる。
【0179】
また、本実施の形態に係る定着装置は、加熱手段が面状発熱体53によって構成されており、面状発熱体33と定着スリーブ21と直接接触して定着スリーブ21を直接加熱することができるので、効率良く定着スリーブ21を温めることができる。
【0180】
また、本実施の形態に係る定着装置は、定着スリーブ21の内周面にコーティングを施すことで、面状発熱体との摺動抵抗を低減させて熱伝達効率を向上させることができるので、より効率良く設定された温度に制御することが可能になる。
【0181】
また、本実施の形態に係る定着装置は、面状発熱体53は、定着スリーブ21の軸方向中央部分を加熱する第1の面状発熱体53Aと、定着スリーブ21の軸方向端部を加熱する第2の面状発熱体53Bとを有し、第1の面状発熱体53Aの温度を検出する第1の温度センサ27Aと、第2の面状発熱体53Bの温度を検出すると第2の温度センサ27Bを有し、第1の温度センサ27Aおよび第2の温度センサ27Bは、第1の面状発熱体53Aおよび第2の面状発熱体53Bがそれぞれ最も発熱する箇所に配置されているので、各加熱部の発熱する箇所にそれぞれ設置しているので、精度良く各発熱部を温度検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0182】
以上説明したように、本発明に係る定着装置は、小型化できるとともに、消費電力を減少させることができ、画像形成装置等に有用である。
【符号の説明】
【0183】
1 画像形成装置
20 定着装置
21 定着スリーブ(定着部材)
22 ニップ形成部材(当接部材)
23 保持部材
27 温度センサ
27A 第1の温度センサ(中央部温度検出部)
27B 第2の温度センサ(端部温度検出部)
29 第1の板金
31 加圧ローラ(加圧部材)
31a 中心軸
33 ヒータ(加熱手段)
33A 第1のヒータ(中央加熱部)
33B 第2のヒータ(端部加熱部)
35 フランジ(形状維持手段)
35g 円弧軸
38 定着ニップ部
39 加熱部材(回転支持部材)
41 第2の板金
52 加圧機構
53 面状発熱体
54 押し当て部材
56 バネ部材(加圧部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0184】
【特許文献1】特開平11−2982号公報
【特許文献2】特開平4−44075号公報
【特許文献3】特開平8−292903号公報
【特許文献4】特開平10−213984号公報
【特許文献5】特開2007−334205号公報
【特許文献6】特開2008−158482号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可携性を有し回転する無端ベルト状の定着部材と、
前記定着部材の外周側で該定着部材を押圧可能に配置される加圧部材と、
前記定着部材の内周側に配置され、前記加圧部材の押圧により前記定着部材を介して該加圧部材と当接する当接部材と、
前記定着ベルトの内周側に配置され、前記当接部材を前記加圧部材の押圧方向に対して保持する保持部材と、
前記定着部材を加熱する加熱手段と、
前記定着部材の両端部に配置され、前記定着部材の内周面に直接または間接的に摺接して前記定着部材の形状を維持する形状維持手段と、
を備え、
前記加圧部材は、断面方向における搬送方向と垂直方向の第1の中心軸を有し、
前記形状維持手段は、断面方向における搬送方向と垂直方向の第2の中心軸を有し、
前記第1の中心軸より搬送方向上流側に前記加熱手段を設け、前記第2の中心軸より搬送方向下流側に前記保持部材を設けたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、輻射熱を発するハロゲンヒータによって構成されたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着部材の内周側に配置され、該定着部材の回転を支持するパイプ形状の回転支持部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記定着部材の内周面が黒色であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記加熱手段は、前記定着部材と摺接する面状の発熱部材である面状発熱体と、前記面状発熱体を前記定着部材に押し当てる押し当て部材と、前記面状発熱体が前記定着部材に密着するよう前記押し当て部材を加圧する加圧部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
前記加熱手段は、前記定着部材の軸方向中央部分を加熱する中央部加熱部と、前記定着部材の軸方向端部を加熱する端部加熱部とを有し、
前記中央部加熱部の温度を検出する中央部温度検出部と、前記端部加熱部の温度を検出する端部温度検出部とを有し、
前記中央部温度検出部および前記端部温度検出部は、前記中央部加熱部および端部加熱部がそれぞれ最も発熱する箇所に配置されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記定着部材は、前記形状維持手段と摺動する部分にコーティングを施したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
前記定着部材は、前記面状発熱体と摺動する部分にコーティングを施したことを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−118488(P2012−118488A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293174(P2010−293174)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】