説明

定量弁、およびこうした弁を有する流体投与装置

定量弁、およびこうした弁を有する流体投与装置
流体投与のための定量弁であって、弁本体(10)と、定量チャンバ(20)と、そして当該定量チャンバ(20)に格納された流体の投与のため前記弁本体(10)の中でスライド移動することが可能な弁部材(30)とを有し、前記定量チャンバ(20)の壁(27)は、軸方向の断面において、少なくとも部分的に曲線になっている、という定量弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量弁、およびこうした弁を有する流体投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定量弁は公知であり、一般的に、定量弁は弁本体を有し、当該弁本体の中で弁部材が、休止位置と投与位置との間をスライド移動する。弁は定量チャンバを有し、当該定量チャンバにより、弁の1回の駆動につき投与される流体の量または「ドーズ分」が規定される。一般的に、定量チャンバは、弁部材がその投与位置にある間は当該弁部材の投与開口部に接続されており、弁部材がその投与位置から休止位置まで戻る間に容器に格納された流体で充てんされる。一般的に、定量チャンバは、2枚の水平方向の環状壁が組み付けられた筒形の管状部品で形成されており、前記2枚の水平方向の環状壁によって前記定量チャンバの軸方向の端部が形作られ、これら端部は弁部材のための中央貫通穴をそれぞれ有する。一般的に、2つの貫通穴には密封ガスケットが組み付けられ、確実に弁部材が定量チャンバに対し耐漏洩様態で移動されるようになっている。定量弁に関連した公知の問題とは、定量ドーズの再現性または反復性(すなわち、すべての駆動時に正確かつ同一である、という定量ドーズ)に関する。従来の定量チャンバには、筒形の管と各水平方向の環状壁部品との間の接合部において角または角ばった部分が形作られてしまう、という問題点が見られる。定量チャンバに格納された流体(一般的に、推進ガスを含む流体)は、定量チャンバの角ばった部分または角においてメニスカスの形成能力を有する。このため、推進活性流体はメニスカスにおいて保持され、したがって定量ドーズの精度は損なわれる。さらに、そうしたタイプのメニスカスは流体をチャンバの壁に付着させるため、定量ドーズの均一性がさらに損なわれる。特に、定量弁の駆動時、ユーザは弁部材を軸方向に押さえ、限られた時間の間だけ当該弁部材をその投与位置に保持する。駆動時、定量チャンバにメニスカスが存在していれば、弁部材は比較的速く駆動されるので、定量チャンバに格納されたドーズ分全てを投与することはできないだろう。こうした場合、定量精度を向上させるためには、押し入れた弁部材を比較的長い時間(一般的には、数秒間)投与位置に保持する必要があるが、このことは重大な問題点となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の問題を生じない流体投与弁を提供することを目的とする。
さらに具体的に言えば、本発明は、弁の1回の駆動ごとの定量ドーズ分の高度な再現性を保証する、という定量弁を提供することを目的とする。
また、本発明の別の目的は、流体投与のための定量弁であって、弁の1回の駆動ごとの定量ドーズ分の均一性を向上させる、という弁を提供することである。
【0004】
本発明のさらに別の目的は、流体投与のための定量弁であって、製造および組み立てが容易かつ低コストであって、毎駆動時安全かつ信頼性がある、という弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は、流体投与のための定量弁であって、弁本体と、定量チャンバと、そして当該定量チャンバに格納された流体の投与のため前記弁本体の中でスライド移動することが可能な弁部材とを有し、前記定量チャンバの壁は、軸方向の断面において、少なくとも部分的に曲線になっている、という定量弁を提供する。
【発明の効果】
【0006】
効果的な構成として、前記定量チャンバは上側開口部と下側開口部とを有し、前記弁部材は前記上側開口部と下側開口部とを通過し、円筒形の壁は前記上側開口部と下側開口部とを相互接続する形で前記定量チャンバを形作っており、前記円筒形の壁は少なくとも部分的に曲線または丸みを付けられた形で、角ばった部分を全く形成していないこととする。
また、効果的な構成として、前記円筒形の壁は中央壁部分と、上側壁部分と、そして下側壁部分とを有し、前記上側壁部分は中央壁部分を前記上側開口部に接続し、前記下側壁部分は中央壁部分を前記下側開口部に接続していることとする。
また、効果的な構成として、前記中央壁部分は筒形であることとする。
また、効果的な構成として、前記上側壁部分は丸みをつけられており、具体的に言えば球状であることとする。
また、効果的な構成として、前記下側壁部分は丸みをつけられており、具体的に言えば球状であることとする。
また、効果的な構成として、前記定量チャンバは、耐漏洩様態で相互に固定し合う2つの壁部品で作られていることとする。
また、効果的な構成として、上側開口部と下側開口部とは密封ガスケットをそれぞれ有し、前記壁部品は、前記密封ガスケットをほぼ覆うことにより、前記ガスケットと前記定量チャンバに格納された流体との接触面積を制限する、および/あるいは、駆動中に前記ガスケットが移動する程度を制限することとする。
【0007】
さらに、本発明は、上記の定量弁を有する流体投与装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に関する他の特徴および効果については、添付図面を参照しながら、非限定的な例として示す本発明の特定の実施の形態に関する以下の詳細な説明を読めば、さらに明らかになるだろう。
図1を参照する。弁は弁本体10と弁部材30とを有する。定量チャンバ20は弁の中に形作られており、弁部材30は弁本体10に対し休止位置(図に示す)と投与位置(図示せず)との間をスライド移動し、当該投与位置において弁部材は弁本体10の中に軸方向に入れられている。定量弁は、たとえば固定用のリングまたはキャップ60を用いて流体容器(図示せず)に組み付けられ、当該固定用のリングまたはキャップ60はいかなるタイプであってもよい。従来の様態では、弁部材30がその投与位置の方へ移動されている間、定量チャンバ20は容器から隔離されており、投与位置において定量チャンバ20の内部が弁部材30の投与開口部35に接続される。ユーザが弁部材30に加えた力を緩めると、当該弁部材は戻しスプリング50の作用を受け自動的にその休止位置に戻り、こうして戻る間、定量チャンバ20は何らかの既知の方法で容器に接続され、これにより、当該定量チャンバは、直前に投与されたドーズ分により生じた吸い込み力および/あるいは前記弁が上下逆さまに使用された場合の重力の作用を受け充てんされる、ということが可能となる。
本発明において、定量チャンバ20の軸方向の断面は少なくとも部分的に曲線の形となっている。「軸方向の断面」という言葉は、図に示すような弁の中心軸Xを含む切断面を意味する。さらに厳密に言えば、図1から見て取れるように、定量チャンバ20は円筒形の壁27を有し、当該円筒形の壁27は上側開口部25を下側開口部26に接続し、弁部材30はその休止位置と投与位置との間を移動中、上側開口部と下側開口部とを通過する。効果的な構成として、円筒形の壁27は少なくとも部分的に曲線または丸みがつけられた形で、角ばった部分を全く形成していない。「曲線または丸みがつけられた形」という言葉は、壁が、たとえば多角形面に起こり得るように急な角ばった部分またはエッジをほぼ全く有さない、ということを意味する。定量チャンバに角ばった部分または角が全く存在しないことにより、メニスカスの形成を防除し、それにより弁の1回の駆動ごとの定量ドーズ分の再現性と均一性とを向上させることができる。
【0009】
効果的な構成として、円筒形の壁27は中央壁部分22を有し、当該中央壁部分22は効果的な構成として筒形にすることができる。中央壁部分22は上側壁部分21を介して上側開口部25に、下側壁部分23を介して下側開口部26に接続されている。好ましい構成として、上側壁部分および/または下側壁部分は、丸みがつけられているか、または曲線の形で、具体的に言えば球状または楕円形であり、これら部分におけるメニスカスの形成を完全に防除する。
【0010】
図1に示す実施の形態において、定量チャンバ20は実際には、耐漏洩様態で相互に固定された2つの壁部品28、29で形成されている。したがって、それぞれの壁部品は、丸みの付けられた形、曲線の形、あるいは球状の形をした部分と、筒状の部分の部分とを両方有する、とすることができる。
この実施の形態にはさらに別の効果的な点が見られる。その効果的な点とはすなわち、上側開口部25と下側開口部26とに組み付けられ、移動中の弁部材30が接触しながらスライド移動する密封ガスケット45、46は、前記曲線の壁部品28、29によりほぼ覆われており、それにより前記密封ガスケット45、46と前記定量チャンバ20に格納された流体との接触面積が制限される、というものである。投与される流体の性質によっては(特に流体が医薬品の場合)、このことは有益な効果を発揮し得る。さらに、効果的な構成として、駆動中、丸みをつけられた上側壁および下側壁の存在により密封ガスケットの移動が制限される。
【0011】
ここまで、本発明に関して、その特定の具体的な実施の形態を参照しながら説明してきた。当然のことながら、さまざま変更を考えることもできる。たとえば、弁の構造(特に、弁本体または弁部材の構造)を変更してもよい。さらに、丸みがつけられた定量チャンバの形状は、当該定量チャンバがメニスカスの形成を完全に防除し、したがってこうしたメニスカスの生成を促す角、エッジ、または角ばった部分の存在を完全に排除する限り、図示された形状と異なる形としてもよい。また、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を逸脱しない形で他の変形も施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】は、本発明の効果的な実施の形態を構成する定量弁の概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体投与のための定量弁であって、
弁本体(10)と、定量チャンバ(20)と、そして当該定量チャンバ(20)に格納された流体の投与のため前記弁本体(10)の中でスライド移動することが可能な弁部材(30)とを有し、
特徴となるのは、
前記定量チャンバ(20)の壁(27)は、軸方向の断面において、少なくとも部分的に曲線になっていることである、
という定量弁。
【請求項2】
前記定量チャンバ(20)は上側開口部(25)と下側開口部(26)とを有し、前記弁部材(30)は前記上側開口部(25)と下側開口部(26)とを通過し、円筒形の壁(27)は前記上側開口部(25)と下側開口部(26)とを相互接続する形で前記定量チャンバ(20)を形作っており、前記円筒形の壁(27)は少なくとも部分的に曲線または丸みを付けられた形で、角ばった部分を全く形成していないこと、
を特徴とする請求項1に記載の定量弁。
【請求項3】
前記円筒形の壁(27)は中央壁部分(22)と、上側壁部分(21)と、そして下側壁部分(23)とを有し、前記上側壁部分(21)は中央壁部分(22)を前記上側開口部(25)に接続し、前記下側壁部分(23)は中央壁部分(22)を前記下側開口部(26)に接続していること、
を特徴とする請求項2に記載の定量弁。
【請求項4】
前記中央壁部分(22)は筒形であること、
を特徴とする請求項3に記載の定量弁。
【請求項5】
前記上側壁部分(21)は丸みをつけられており、具体的に言えば球状であること、
を特徴とする請求項3または4に記載の定量弁。
【請求項6】
前記下側壁部分(23)は丸みをつけられており、具体的に言えば球状であること、
を特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の弁。
【請求項7】
前記定量チャンバ(20)は、耐漏洩様態で相互に固定し合う2つの壁部品(28、29)で作られていること、
を特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の定量弁。
【請求項8】
上側開口部(25)と下側開口部(26)とは密封ガスケット(45、46)をそれぞれ有し、前記壁部品(28、29)は、前記密封ガスケット(45、46)をほぼ覆うことにより、前記ガスケット(45、46)と前記定量チャンバ(20)に格納された流体との接触面積を制限する、および/あるいは、駆動中に前記ガスケットが移動する程度を制限すること、
を特徴とする請求項7に記載の定量弁。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の定量弁を有すること、
を特徴とする流体投与装置。

【図1】
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【公表番号】特表2007−507397(P2007−507397A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530457(P2006−530457)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050482
【国際公開番号】WO2005/032971
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(502343252)バルワー エス.アー.エス. (144)
【Fターム(参考)】