説明

実装基板

【課題】実装基板の半田付け状態の確認作業を容易とすると共に、確認作業の誤認定を低減することができる、新規な構造の実装基板を提供すること。
【解決手段】プリント基板12に複数のスルーホール28を貫設する一方、前記プリント基板12の一方の面20に配設された複数の電気部品14の端子部18を、前記スルーホール28に挿通して前記プリント基板12の他方の面22に突出して半田付けすると共に、前記プリント基板12における前記他方の面22に、前記スルーホール28を前記電気部品14毎に識別する識別表示36を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に複数の電気部品が実装された実装基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板上にリレーやコネクタ等の複数の電気部品が搭載された実装基板が知られており、自動車用電気接続箱の内部回路等として広く用いられている。例えば、特開2009−38890号公報(特許文献1)に記載のものがそれである。
【0003】
ところで、このような実装基板では、プリント基板の一方の面(表面)に載置された複数の電気部品の端子部が、プリント基板に貫設されたスルーホールに挿通されて、プリント基板の他方の面(裏面)側に突出されている。そして、これらの端子部がスルーホールに対して半田付けされることにより、各電気部品の端子部がプリント配線へ接続されて導通されている。従って、それら各電気部品の半田付けの状態を確認して接続安定性を確保することが重要となっている。
【0004】
ところが、各電気部品の端子部のスルーホールに対する半田付け状態の確認は、半田付けがされる側の面となる裏面側から行う必要があり、裏面側からの確認では、半田付け不良の端子部が一体どの電気部品のものであるのか、特定が難しいという問題があった。即ち、図5に、特許文献1にも示されている従来のプリント基板100の裏面102を示すように、プリント基板の裏面側からの平面視では、近接状態で設けられた同一又は類似形状の多数のスルーホール104と、それらの略中央に突出する各電気部品の端子部の先端部分(図示省略)が確認できるのみであって、電気部品の存在が把握できない。従って、仮に半田付け不良の端子部を発見した場合でも、どの電気部品にかかるものであるのか、プリント基板の表裏を反転させて確認する必要があり、確認作業が非常に煩雑となっていた。特に、プリント基板を表裏反転しながら、半田付け不良の端子部を有する電気部品を特定することから、誤認が生じやすいという問題もあった。なお、スルーホール104の近傍に回路名106を表示することも行なわれているが、電気部品を特定するためには別途回路配線図等を参照しなければならず、手間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−38890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、実装基板の半田付け状態の確認作業を容易とすると共に、確認作業の誤認定を低減することができる、新規な構造の実装基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、複数の電気部品がプリント基板に実装された実装基板において、前記プリント基板には複数のスルーホールが貫設されている一方、前記プリント基板の一方の面に配置された前記複数の電気部品の端子部が、前記複数のスルーホールに挿通されて前記プリント基板の他方の面に突出されて半田付けされていると共に、前記プリント基板の他方の面には、前記複数のスルーホールを前記電気部品毎に識別する識別表示が設けられていることを、特徴とする。
【0008】
本発明によれば、電気部品が配設されている側の反対側となるプリント基板の他方の面(裏面)に識別表示を設けたことによって、多数のスルーホールを、電気部品単位で容易に識別することが出来る。これにより、プリント基板の裏面側から半田付けの状態を確認するに際して、プリント基板の表裏を反転したり、回路配線図等を参照したりすることなしに、半田付け不良の電気部品を直ちに且つ確実に特定することが可能となり、半田付け状態の確認の作業性を格段に向上することが出来る。
【0009】
なお、識別表示は、好適には、シルク印刷で形成され、顔料インクと熱硬化性エポキシ樹脂等からなるシルク印刷塗料で形成される。また、識別表示の色としては任意の色が選択可能であるが、プリント基板の裏面に製造番号や回路記号等がシルク印刷される場合には、それらと同色とすることによって、同一のシルク印刷工程で効率良く形成することも出来る。
【0010】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記識別表示が前記電気部品の外形状を表す形状とされており、該識別表示の内側に前記スルーホールが位置されているものである。
【0011】
本態様によれば、プリント基板の裏面側に電気部品の外形状が表示されることから、電気部品の外形状とこれに対するスルーホールの位置から、表面側に配設されている電気部品が何であるかを容易に想起することが出来る。これにより、表面側の電気部品の特定をより容易且つ確実に行なうことが出来る。なお、電気部品の外形状としては、電気部品をプリント基板の表面側から見た場合の外形状でも良いし、プリント基板の裏面側からプリント基板を透視した場合に見える外形状でも良い。
【0012】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記識別表示が枠表示により構成されているものである。このようにすれば、識別表示を少ない印刷塗料で、コスト効率良く形成することが出来る。
【0013】
本発明の第四の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記識別表示が塗り潰し表示により構成されているものである。
【0014】
本態様における塗り潰し表示とは、レジスト層等のプリント基板の表面色とは異なる色で所定領域を塗り潰した表示をいう。本態様によれば、識別表示の視認性を向上することが出来て、塗料の色数を増やしたりすることなく、コスト効率良く識別性を向上することが出来る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プリント基板において電気部品が配置される側と反対側の面に、複数のスルーホールを電気部品毎に識別する識別表示を設けた。これにより、スルーホールに挿通された端子部と電気部品の対応を、プリント基板の裏面側から容易且つ確実に判別することが可能となり、半田付け状態の確認の作業性を向上することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一の実施形態としての実装基板の要部を示す分解斜視図。
【図2】図1に示したプリント基板の表面側の平面図。
【図3】図1に示したプリント基板の裏面側の平面図。
【図4】本発明の第二の実施形態としての実装基板を構成するプリント基板の裏面側の平面図。
【図5】従来構造に従うプリント基板の裏面側の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
先ず、図1に、本発明の第一の実施形態としての実装基板10の要部の分解斜視図を示す。実装基板10は、プリント基板12に複数の電気部品としてのリレー14a,14bが装着された構造とされている。
【0019】
リレー14a,14bは従来公知のものであり、矩形ブロック形状とされた部品本体16の下面17から、複数(本実施形態においては、5つ)の端子部18が突出された構造とされている。リレー14a,14bは部品本体16の大きさおよび端子部18の配設位置が異ならされている。
【0020】
一方、図2に、プリント基板12の要部の表面20を示すと共に、図3に、同要部の裏面22を示す。プリント基板12には、リレー14aが装着される複数(図2および図3においては、3つ)のリレー装着部24aと、リレー14bが装着される複数(図2および図3においては、2つ)のリレー装着部24bや、図示しない抵抗が装着される複数(図2および図3においては、2つ)の抵抗装着部26等が設けられている。なお、図3においては、一部のリレー装着部24aとリレー装着部24b(図3中、下方のリレー装着部24a,24b)に、リレー14aおよびリレー14bが装着された状態を示している。以下、リレー装着部24aとリレー装着部24b、およびリレー14aとリレー14bに共通する部分については、特に区別することなくリレー装着部24およびリレー14として説明する。
【0021】
リレー装着部24には、それぞれ、リレー14の複数(本実施形態においては、5つ)の端子部18に対応して、端子部18と同数(本実施形態においては、5つ)のスルーホール28がプリント基板12を貫通して形成されている。そして、リレー14aとリレー14bで端子部18の配列態様が異ならされているのに対応して、リレー装着部24aとリレー装着部24bは、スルーホール28の形成位置が互いに異ならされている。
【0022】
図2に示すように、リレー装着部24には、プリント基板12の表面20において、リレー装着部24の外周を囲む外枠や、コイルおよびスイッチ等の記号を示す従来公知の回路表示30が形成されている。また、表面20には、各スルーホール28の近傍に、スルーホール28に挿通される端子部18を識別可能とするための数字からなる回路名32aが形成されている。これら回路表示30および回路名32aは、従来公知のように、例えばシルク印刷によって、白色のシルク印刷塗料で形成されている。
【0023】
なお、抵抗装着部26には、一対のスルーホール28,28が設けられている。そして、プリント基板12の表面20において、一対のスルーホール28,28の間に、抵抗の配設位置を示す矩形状に塗り潰された位置表示34が前記回路表示30等と同じくシルク印刷で形成されている。
【0024】
一方、図3に示したように、プリント基板12の裏面22において、各リレー装着部24には、識別表示36がそれぞれ形成されている。識別表示36は、リレー14の部品本体16を、プリント基板12の裏面22側からプリント基板12を透視して見た場合の外形状(要するに、部品本体16の下面17の外形状)と略等しい矩形の枠表示で構成されており、リレー装着部24の外周を囲む線とされている。そして、リレー装着部24に設けられた複数(本実施形態においては、1つのリレー装着部24について5つ)のスルーホール28が、識別表示36で囲まれて、識別表示36の枠内に位置されている。これにより、プリント基板12に形成された複数のスルーホール28が、各リレー14に対応する単位で識別表示36で囲まれて、各リレー14に対応するスルーホール28毎に区別可能とされている。識別表示36は、好適には、シルク印刷を用いて形成される。本実施形態における識別表示36は白色とされているが、識別表示36の色としては任意の色が選択可能である。
【0025】
また、プリント基板12の裏面22には、各スルーホール28の近傍に、表面20と同様の回路名32bがシルク印刷で形成されている。回路名32bの色としても任意の色が採用可能であるが、識別表示36および回路名32bを例えば白色等の同一色で形成することによって、識別表示36と回路名32bを同じシルク印刷工程で効率良く形成することが出来る。
【0026】
そして、プリント基板12のリレー装着部24a,24bに対して、リレー14a,14bがそれぞれ装着される。リレー14は、各端子部18が、プリント基板12の表面20側からリレー装着部24の各スルーホール28に挿通される。そして、図3に示したように、各端子部18がスルーホール28を通じてプリント基板12の裏面22側に突出されて、半田38で半田付けされる。これにより、リレー14が、部品本体16を表面20側に配置した状態で各リレー装着部24に装着されて、実装基板10が構成されている。なお、図示は省略するが、プリント基板12の抵抗装着部26に形成された一対のスルーホール28,28には、電気部品としての抵抗の両端のリード部が表面20側から挿通されて半田付けされるようになっている。
【0027】
このような構造とされた実装基板10においては、プリント基板12の裏面22に、複数のスルーホール28を各リレー14に対応する単位で囲んで表示する識別表示36が形成されている。これにより、プリント基板12を裏面22から目視した場合でも、多数のスルーホール28を、リレー14毎に区別して容易に識別することが出来る。その結果、例えば裏面22側から端子部18の半田付け不良を確認した場合に、該端子部18が何れのリレー14に対応したものであるかを容易に特定することが出来る。特に、識別表示36が電気部品の外形状を表す枠形状とされており、本実施形態においては、リレー14の外形状を表していることから、識別表示36の形状とこれに囲まれたスルーホール28の識別表示36内での位置により、該識別表示36の位置にはリレーが配設されていることを想起することも出来て、電気部品の特定をより容易に行なうことが出来る。また、リレー装着部24に識別表示36を設けたことによって、識別表示36を有さない抵抗装着部26にはリレーとは異なる電気部品(具体的には、抵抗)が配設されることを裏面22側から認識することも出来る。
【0028】
次に、図4に、本発明の第二の実施形態としての実装基板を構成する、プリント基板40の要部を示す。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と同様の構造とされた部材および部位には、図中に前記第一の実施形態と同一の符号を付すことにより、その説明を適宜に省略する。
【0029】
本実施形態においては、プリント基板40の裏面22において、各リレー装着部24の識別表示42が、リレー14の部品本体16における下面17の外形状と略等しい矩形の塗り潰し表示で構成されており、該塗り潰し領域内に、リレー14に対応するスルーホール28が位置されている。このような識別表示42は、シルク印刷で所定領域を塗り潰すことによって好適に形成される。なお、識別表示42内の回路名32bは、周囲が塗り潰されないことによって表示されている。識別表示42の色は特に限定されるものではないが、回路名32bと同じ色で形成されることが好ましく、そのようにすれば、識別表示42と回路名32bを同一のシルク印刷工程で効率良く形成することも出来る。本実施形態においては、識別表示42および回路名32bは白色のシルク印刷塗料で形成されている。
【0030】
このようにすれば、識別表示42が塗り潰しで表示されることから、塗料の色を増やしたりすること無しに、識別表示42の視認性をコスト効率良く向上することが出来る。その結果、多数のスルーホール28の識別性を、コスト効率良く向上することが出来る。また、識別表示42を回路名32bと同色とすることによって、回路名32bと同一のシルク印刷工程で効率良く形成することも出来る。
【0031】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、電気部品がリレーに限定されないのは勿論であって、従来からプリント基板に実装される各種の電気部品が任意に採用可能である。また、識別表示を複数色で色分けしても良く、例えば、電気部品の種類毎に識別表示の色を異ならせるなどしても良い。更にまた、識別表示は、必ずしも電気部品の外形状と等しい形状とされている必要は無く、電気部品の外形状に対して非相似の形状であっても良い。
【符号の説明】
【0032】
10:実装基板、12,40:プリント基板、14a,b:リレー(電気部品)、18:端子部、20:表面(一方の面)、22:裏面(他方の面)、24a,b:リレー装着部、28:スルーホール、36,42:識別表示、38:半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気部品がプリント基板に実装された実装基板において、
前記プリント基板には複数のスルーホールが貫設されている一方、
前記プリント基板の一方の面に配置された前記複数の電気部品の端子部が、前記複数のスルーホールに挿通されて前記プリント基板の他方の面に突出されて半田付けされていると共に、
前記プリント基板の他方の面には、前記複数のスルーホールを前記電気部品毎に識別する識別表示が設けられている
ことを特徴とする実装基板。
【請求項2】
前記識別表示が前記電気部品の外形状を表す形状とされており、該識別表示の内側に前記スルーホールが位置されている
請求項1に記載の実装基板。
【請求項3】
前記識別表示が枠表示により構成されている請求項1又は2に記載の実装基板。
【請求項4】
前記識別表示が塗り潰し表示により構成されている請求項1又は2に記載の実装基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−99671(P2012−99671A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246669(P2010−246669)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】