説明

室内循環型レンジフードファン

【課題】 長期に亘って油脂分の分解性能、脱臭性能を維持し、清掃頻度、交換頻度を少なくして、清掃性の向上を図る室内循環型レンジフードファンを提供する。
【解決手段】 含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする連続多孔構造の脱臭材11が、その含水珪酸マグネシウム粘土鉱物で水分、油脂分、臭気成分を吸着すると共にその含水珪酸マグネシウム粘土鉱物自らの触媒作用でその油脂分、臭気成分を加水分解して高い油脂分分解性能を持続して、油脂分を下流の光触媒脱臭装置31に供給させず、光触媒脱臭装置31の本来の優れた除菌、脱臭性能を継続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃焼ガスに含まれる油脂分、臭気成分を除去するのに最適な室内循環型レンジフードファンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、厨房に設けられる調理用加熱器具はガス燃焼器具に代わり、燃焼ガス等の有害ガスを発生しない電気コンロや電磁調理器が求められるようになっている。
加熱器具の上方には、レンジフードファンを設け、発生した油煙や臭気を吸い込み、屋外に排出していたが、折角空調された屋内の空気を排出すると、空調エネルギーのロスが発生することから省エネルギーの観点でも課題があった。
また、近年住宅の高気密化が進むなかで、室内空気を大量に屋外に排出すると、室内に圧力差が生じ、ドアの開閉が困難になる等の現象が発生していた。
そこで、従来、燃焼ガスを発生しない調理器具から発生した油煙や臭気を捕獲して、グリスフィルタ(グラスウール等の織布や不織布フィルタ、ラス網,スロットフィルタ,パンチングメタル等の金属製フィルタ)で油脂分を除去すると共に、その下流に脱臭材として、無機系イオン吸着型の消臭要素を添着加工した連続多孔質の発泡体を備えて、脱臭する空気を室内に循環するレンジフードファンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、グリスフィルタは従来から周知の通り、上昇気流に含有される油脂分の概ね50乃至60%を捕獲する。
そして、その捕獲できない油脂分、臭気成分を前記する連続多孔質の発泡体からなる脱臭材で吸着除去しているが、短期間で目詰まりを起こして吸着性能を維持できなくなり、清掃を頻繁に繰り返さなければならない。
また、グリスフィルタはレンジフードファンの上昇気流の捕獲空間に臨んで配設されているため、比較的容易に取り外して洗浄できるようにしてあるものの、前記する脱臭材は排気手段の下流側に配設されるので取り外しが面倒であり、その作業性の悪さも清掃の滞りに拍車をかけている。
また、臭気成分の吸着除去特性に優れた活性炭を前記脱臭材の代わりに使用するにしても、目詰まりによる吸着性能の低下を抑制できず、交換頻度が高くなってしまう。
【特許文献1】特開平11−125444号公報
【特許文献2】特許第3504165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は長期に亘って油脂分の分解性能、脱臭性能を維持し、清掃頻度、交換頻度を少なくして、清掃性の向上を図る室内循環型レンジフードファンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、油脂分、臭気成分を吸着する含水珪酸マグネシウムがその油脂分、臭気成分を自らの触媒作用で加水分解して高い油脂分分解性能を持続して光触媒作用の妨げとなる油脂分の光触媒脱臭装置への供給を継続して抑制し、光触媒脱臭装置が本来の優れた除菌、脱臭性能を継続することを知見し、本発明に至ったものである。
即ち、本発明は、燃焼ガスを発生しない調理器具から発生するその上昇気流を吸気して排気する室内循環型レンジフードファンにおいて、上流側から含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とし油脂分、臭気成分を吸着して自らの触媒作用でその油脂分、臭気成分を加水分解する脱臭材、光触媒脱臭装置を順次配し、前記脱臭材、光触媒脱臭装置を順次経て、前記上昇気流を排気することを特徴とする室内循環型レンジフードファンである(請求項1)。
燃焼ガス等の有害ガスを発生しない電気コンロや電磁調理器から発生する上昇気流は含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材に接触する。その脱臭材に形成されている微細孔にその水分や油脂分、臭気成分が吸着され、吸着された油脂分、臭気成分をその含水珪酸マグネシウムで加水分解して、油脂分の高い分解性能を持続する。
光触媒脱臭装置の基本構成は前記
【特許文献3】に示すような電極と、その電極間に配置した光触媒を保持する光触媒担持体(例えば多孔質セラミックス)とからなり、電極への電流供給によって放電現象が生じて、光触媒を活性化し、また空気中の放電でオゾンを発生させるものであり、光触媒に接触または付着もしくは近接する臭気成分、細菌類等を光触媒反応で分解し、且つそのオゾンの酸化作用で気体から除菌や臭気成分を分解する優れた除菌、脱臭性能を有する。 油脂分が、光触媒脱臭装置に混入すると、光触媒担持体の多孔を閉塞したり、光触媒をコートして、光触媒を不活性にして光触媒作用を起こさなくなる。 含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材が油脂分を加水分解して下流の光触媒脱臭装置に供給せず、光触媒脱臭装置の本来の優れた脱臭性能を妨害しなくする。 この含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材は、その細片を、上昇気流を通気可能とするように積み重ねて構成して、その脱臭具必要段を、室内への循環路を閉塞するように配設することがその使用例の一例として提案することができる。
【0006】
そして、光触媒脱臭装置は、発生したオゾンを酸素に分解するオゾン除去フィルタを有するものであると好適なものである(請求項2)。
放電時に発生するオゾンをオゾン除去フィルタで酸素に分解し、その酸化力で臭気成分等を分解し、また浮遊菌を除菌、不活性化する。
【0007】
また、最も下流に除塵フィルタを配設すると、好適なものとなる(請求項3)。
含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする前記脱臭材は僅かながら粉塵を発生させる。上昇気流を前記脱臭材に通すと、その粉塵が舞い上がり室内排気口から浄化された空気に混入して排出されてしまう。この粉塵を室内等に流出させないために除塵フィルタを設けて、一層清潔な空気を室内に排気する。
【0008】
そして、脱臭材が連続多孔構造であると好適なものである(請求項4)。
ハニカム通気孔の連続多孔構造であれば、通気圧力損失を大きくすることなく脱臭表面積を大きく確保することができるため、油脂分の吸着性能を向上させると共に油脂分の接触面積を増加させて加水分解を促進させる。
ただし、ハニカム通気孔の連続多孔構造の場合には、接近して多段状に配設すると、規則的な流れとなって脱臭材表面への接触率が低下する。そのため、所要間隔をおいて多段状に配置するのが好適なものである。
その連続多孔がハニカム通気孔にあっては、1inch当たり200乃至300個の細孔を有するものが適当である。その以上微細なハニカム通気孔を有するものは通気抵抗も高くなり、また油脂等が詰まる可能性も高くなるため使用する排気手段(送風機)の能力として高い出力のものを使用しなければならなくなる。
【0009】
更に、排気手段の下流に室内への循環排気を行うための循環路と、屋外に排気するための排気路を備え、各々の流路に切替可能とし、該循環路に前記脱臭材、光触媒脱臭装置、除塵フィルタを配設した構成を採用すると、好ましいものである(請求項5)。
中華料理やイタリア料理等でニンニク等の臭いの強い材料を使用する調理を行なう場合は十分な脱臭が出来ない虞れが出てくる。そのような問題を解決するために室内への循環路と、屋外への排気路に切替可能にして、臭いが強い料理を行なう場合には脱臭材、光触媒脱臭装置、除塵フィルタを通すことなく屋外に排気できるようにしている。
流路の切り替えは、使用者が任意に行っても良いものであるし、臭気検出手段を設け、所定レベル以上の臭気を検知したときに自動で流路が切替えられるようにする。
【0010】
また、脱臭材、光触媒脱臭装置を所定配設箇所(例えば室内の循環路)に抜き差し可能にしていると便利なものである(請求項6)。
【0011】
そして、脱臭材の上流側にグリスフィルタを配設していると、含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とするその脱臭材を油脂分のその加水分解性能をより長期的に持続させる上で効果的である(請求項7)。
グリスフィルタは、脱臭材とは排気手段を挟んで下流側に配設されており、グラスウール等の織布や不織布フィルタ、ラス網,スロットフィルタ,パンチングメタル等の金属製のフィルタをその一例として挙げることができる。
調理で油脂分が多量に発生することがあり、油脂分が前記脱臭材の許容能力を越えると、脱臭材の加水分解性能では賄えず、光触媒脱臭装置に油脂分を供給してしまう虞れがある。
脱臭材の加水分解性能のより長期的な維持や、過剰な油脂分の脱臭材への供給を回避するために、その上昇気流に含まる油脂分を荒取りするグリスフィルタを排気手段の上流側に配設する。
【0012】
前記脱臭材は、その細片を、上昇気流を通気可能とするように積み重ねた構成のものでも良いものである。この場合には、連続多孔構造の脱臭材は、1inch当たり20乃至80程度の孔径を有するランダム方向への連続気孔を有するものが適当である。
また、脱臭材が、複数に分割されるとともに単一または複数の支持枠に交換可能に収容されていると良いものである。前記連続多孔構造の脱臭材は単一な大きなフィルタとしても良いが、予備を保管する場合に嵩張る。そのため、複数に分割したものを使用する。その連続多孔フィルタサイズは、100乃至200cm程度が適当である。含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材は、連続多孔構造のため、比較的重量が重い。それ故、各々複数の支持枠に収容して清掃作業、交換作業を簡単にするのが良いものである。
そして、脱臭材に光触媒を担持させ、その脱臭材に紫外線を照射するようにしても良いものである
光触媒の油脂分分解促進性能で油脂分の分解が促進される。
例えばハニカム状の脱臭材を使用する場合、光触媒を粘土鉱物等の材料混練工程で混合することが望ましい。そして、光源により紫外線を照射する。その照射は、一方向からの照射を避け、反射板等を用いて通気孔の隅々まで光を照射するようにすることが良いものとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上のように構成したので、下記の利点がある。
(請求項1)水分、油脂分、臭気成分等を、含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材で吸着して自らの触媒作用で加水分解して光触媒脱臭装置での油脂分による除菌、脱臭性能の低下を阻止することを知見した。実施例での実験でも明らかなようにサラダ油の主成分の一つであるリノール酸を疎水性ゼオライトが7日間で重量比で20%以下しか分解できないのに対して、含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材が約95%以上分解したことからも立証されるように、その脱臭材が接触で吸着する油脂分、臭気成分を自らの触媒作用で加水分解して油脂分の高い分解性能を持続するので、脱臭材の高い油脂分分解持続性能が、光触媒脱臭装置の所定の脱臭性能を持続させ、清掃頻度、交換頻度を少なく清掃性を向上させることができる。
(請求項2)光触媒脱臭装置で発生するオゾンを分解するオゾン除去フィルタで除去して人体に害にならずにクリーンな空気にして室内循環できる。
(請求項3)その上、含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材から発生する粉塵を除塵フィルタが除塵して、室内に排出せず、室内を汚染しない。
(請求項4)しかも、連続多孔構造にすると、通気圧力損失を高めることなく脱臭材の吸着加水分解面積を非常に大きく確保し、臭気、油脂分の分解性能を高くすることができる。
(請求項5)また、あまりにも臭いの強い調理が行なわれて脱臭されないと判断された時には、脱臭材、光触媒脱臭装置を通すことなく屋外に排気して、脱臭材をその状況から保護することができる。
(請求項6)含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材、光触媒脱臭装置の定期的な清掃、交換が容易に行なえる。
(請求項7)含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材の上流側にグリスフィルタを配設して、上昇気流に含まれる水分、油脂分を荒取りするようにしていると、その脱臭材の加水分解性能をより長い持続させることは勿論のこと、多量な油脂分を含む調理を行っても、脱臭材の加水分解性能に弊害を与えることなく清掃時期、交換時期まで所定の加水分解性能、光触媒脱臭装置の除菌、脱臭性能を持続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明室内循環型レンジフードファンの実施の形態を説明すると、図1乃至図3は、脱臭材の上流側にグリスフィルタを配設した室内循環型レンジフードファンを示している。
図1において、符号Aはその室内循環型レンジフードファンであり、この室内循環型レンジフードファンAは、含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材11下流側に光触媒脱臭装置31を、更にその光触媒脱臭装置の下流側に除塵フィルタ41を配置した脱臭ユニット1を、フード本体aの天板2上に内部の排気手段Bに連絡して設置し、排気手段Bの上流側にグリスフィルタ21を配設している。
【0015】
この室内循環型レンジフードファンAは、図1に示すように、斜面を開放した側面視三角形状を呈するフード本体aの上部に斜め状の金属製のグリスフィルタ21を上側の支持板3と下側のカール状に湾曲形成した結露水案内板4とで支持し、その結露水案内板4から前記金属製のグリスフィルタ21の殆どを隠すようにその前方に渦流生成体5を配設し、前記結露水案内板4、渦流生成体5の下端に設けた結露水受水体6でそのグリスフィルタ21、案内板4、渦流生成体5に付着する結露水を受水するようになっており、結露受水板4下位を湾曲カバー10で被蓋し、前記支持板3、グリスフィルタ21、結露水案内板4で背後に区画される空間に排気手段Bを収容し、前記脱臭ユニット1を前方に立設するパンチングメタルからなる取外可能な幕板7で隠す構成になっている。
【0016】
渦流生成体5は、整流板(後述では符号を付して説明する)と呼称される面板であり、図示するようにフード本体aにおいて前記湾曲カバー10上部部分に配設されている。
【0017】
また、この渦流生成体5は、同図1に示すようにフード本体a内に収容状に配設されており、水分、油脂分、臭気成分を含む上昇気流Cが丁度衝突する部位を含んで全幅に亘って形成された下方へのガイド面15と、そのガイド面15の下位に同ガイド面15に連続して前方に向けて全幅に亘り円弧状に湾曲形成されたカール状面25とからなっている。
【0018】
そして、渦流生成体5の上縁と前記支持板3との間及び左右縁とフード本体aの左右側板との間に吸引用の隙間Sが形成されるように支持されて、調理に伴って発生する前記上昇気流Cを、ガイド面15に衝突させて下向きに案内し、そのガイド面15に連続して前方に向けて円弧状に湾曲形成したカール状面25で更に案内する際に負圧作用を生み出し、それによって渦流Qを生成し、それを排気手段Bの排気能力で吸気し脱臭ユニット1で脱臭して室内に循環するようになっており、フード本体aの上昇気流Cの捕獲空間cから脱臭ユニット1先端の排気口51までエアー流路Eを形成している。
【0019】
エアー流路Eは、室内への前記循環路e1と排気路e2とに切替可能になっている。
この排気路e2は、流路閉鎖ダンパ8を備え、その流路閉鎖ダンパ8の直ぐ下流に屋外に開口する連絡路e2’を連通して形成されており、その入口に排気用ダンパ9を設け、フード本体aの所要箇所に設置した臭いセンサDが所定以上の濃い濃度の臭気を検知した時に前記流路閉鎖ダンパ8で循環路e1を閉路すると同時に排気用ダンパ9で連絡路e2’の入口を開放して直接上昇空気Cを屋外に排気するようにしている。
【0020】
脱臭ユニット1には、先端の排気口51を前記幕板7に向けて開口したユニットケース1’の下端に流路閉鎖ダンパ8を配置し、上流側から含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする連続多孔構造の脱臭材11と、光触媒脱臭装置31と、除塵フィルタ41とを順次配置している。
【0021】
含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする前記脱臭材11は、連続多孔構造体であり、本実施の形態ではアタパルジャイト20乃至90重量部、セピオライト20乃至90重量部、骨材としてシリカ20乃至90重量部、バインダーとしてメチルセルロース数重量部を湿式混練した後、押出成形し、乾燥してから、500℃以下で焼成したハニカム構造のものを使用しており、図2に示すように、格子状の支持枠11dに交換可能に嵌合状に収容されている。符号11bはその蓋である。
支持枠11dは前記ユニットケース1’に設けたレールLで支持されて、前記循環路e1に対して抜き差し可能に設けられている。
【0022】
また、前記含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする前記脱臭材に、酸化チタン、酸化マンガン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化銅等の光触媒を前記混練工程で混合し、前記脱臭ユニット内に装設しているブラックライト等の光源及び反射板から各通気孔の隅々まで紫外線が照射されるようにして、その光触媒による分解性能で油脂分の分解を促進するようにすること自由なものである。
【0023】
前記光触媒脱臭装置31は、本実施の形態では放電式光触媒脱臭装置(後述では符号31と称する)を使用している。
この放電式光触媒脱臭装置31は、図3に示すように高電圧端子(電極)31a、31a間に光触媒を担持する多孔質の絶縁物質からなる光触媒担持体31bを配設して、その高電圧端子(電極)31a、31aに高周波電源、パルス電源、あるいは高圧直流電源または高圧交流電源Fを接続し、高電圧を印加することによって光触媒担持体31bの表面に発生する沿面放電を光源にしている。
【0024】
光触媒担持体31bとしては、本実施の形態では酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化チタンまたは酸化亜鉛の少なくとも1類を含む化合物からなる焼結体を使用しており、その焼結体は75乃至95%の気孔率にしてある。
光触媒は、焼結体の微細孔に担持される微粒子状のものであり、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、硫化カドニウム、硫化亜鉛等の主成分とするものを本実施の形態では適用している。
【0025】
前記する沿面放電によって、光触媒担持体31bの内部孔内の光触媒にも直接的に光照射して、光の陰陽を低減して、光触媒反応の活性を進める大きな触媒活性面積を得ることができる。
この放電式光触媒脱臭装置31は、高電子端子(電極)31a、31aを複数の突起(図示せず)を有する構成にして、電圧印加で、高電圧端子31a、31aの突起間に端子間放電を起こし、それによって発生する端子間放電光をも光源にしていても良いものである。
これによって、沿面放電光、端子間放電光を光源にして、光触媒反応を2種類の光源を利用して行うことができる(例えば特許第3504165号公報参照)。
尚、沿面放電光に代えて、光源を端子間放電光だけにしても良いものである。
【0026】
この放電式光触媒脱臭装置31では、放電現象による過程でオゾンが発生し、このオゾンによる除菌、脱臭作用をも利用している。
【0027】
このオゾンは、人体に対して悪影響を及ぼすが、カビ等の除菌作用の他、臭気成分を含む有害物質を分解することができる。
【0028】
放電式光触媒脱臭装置31は、前記オゾンを室内に循環させないためにオゾン除去フィルタ31cを下流に設けている。
【0029】
このオゾン処理フィルタは、オゾン処理のできる排オゾン処理機能を備え、放電時に発生するオゾンを酸素に分解し、その酸化力で臭気成分等を分解し、また浮遊菌を除菌、不活性化する働きがある。
【0030】
放電式光触媒脱臭装置31は、図1に示すように支持体31dに支持され、この支持体31dをユニットケース1’に設けたレールLで前記循環路e1に対して抜き差し可能に設けられている。
【0031】
前記除塵フィルタ41は、耐熱性ポリアミドフィルタまたは、高捕集タイプをその一例として挙げることができる。高捕集タイプは、HAPA(ヘパ)フィルタ、ULPA(ウルパ)フィルタを挙げることができる。この除塵フィルタもユニットケース1’の排気口51部分に抜差し可能に設けられている。
【0032】
また、脱臭ユニット1における前記脱臭材11用の支持枠11d、光触媒脱臭装置(放電式光触媒脱臭装置)31用の支持体31dに臨む前面部を開閉部1”にして抜差し可能とし、含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とするその脱臭材11や、光触媒脱臭装置(放電式光触媒脱臭装置)31の清掃、交換作業が容易に行なえるようになっている。
【0033】
【表1】

【0034】
表1は、調理で最も多く使用されているサラダ油の組成である。
【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
表2は、含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材(ハニカム構造体)が、サラダ油に含まれる主組成分(パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸)を分解する実験データを、表3は、脱臭用吸着材として使用される疎水性ゼオライトが、そのサラダ油に含まれる主組成分(パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸)を分解する実験データを各々示している。
【0038】
サラダ油は、主にグリセリンと脂肪酸とで構成されており、そのうちの脂肪酸の主組成分であるパルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸の分解率について測定した。尚、オレイン酸とリノール酸はサラダ油に含まれる全脂肪酸のうち、約70%を占めるものである。
【0039】
これによると、疎水性ゼオライトがリノール酸を7日間で重量比20%以下の分解率に止まるのに対して、含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材(1inch当たり200乃至300個の通気孔を有するハニカム構造体)が重量比で約95%以上分解するものであった。
加水分解は、脱臭材11表面に分解生成物を生成することで立証され、その分解率の高さは、含水珪酸マグネシウムがその連続気孔構造による表面積拡張機能で油脂分、臭気成分の吸着性能を高めて加水分解を促進するためと推定される。
そして、その高い油脂分分解性能を、5年程度継続するものであった。
【0040】
また、臭気についても、脱臭性能測定を悪臭防止法に基づいた「三点比較式臭袋法」で行なった。この方法は、無臭空気を充満した臭袋2つと、豚肉野菜炒め5人分相当の材料をサラダ油を使用して調理した時に発生した臭気を捕獲して疎水性ゼオライト及び含水珪酸マグネシウムを主成分とする脱臭材で通気脱臭させたものを捕獲し、その捕獲臭気を所定の濃度となるように希釈した希釈臭気袋の一つの計3つの袋を測定者6人(女性)に嗅いで貰い、臭気の有無を判定した。
嗅覚による臭気の有無については、含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材に比べて疎水性ゼオライトを通過した臭気の方が若干弱い臭いであった。
また、脱臭効率についても算出した。これは含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材と、疎水性ゼオライトとを通気させる前後の臭気濃度の差から算出したものである。
【0041】
【表4】

【0042】
この表4が、脱臭性能(脱臭効率)を示し、高性能脱臭材として知られている疎水性ゼオライトが脱臭率96%であるのに対して、含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする連続気孔(1inch当たり200乃至300個のハニカム通気孔)の脱臭材の脱臭率は75%とやや低い性能を示したが、下流の光触媒脱臭装置(放電式光触媒脱臭装置)の脱臭性能で、脱臭効率92%という疎水性ゼオライトの脱臭効率を上回り、下流に活性炭を配置した比較例に近い高い脱臭性能を示すものであった。
活性炭は、臭気成分を吸着除去するため、使用当初は優れた脱臭効率が示すが、目詰まりが進行して、6ヶ月乃至1年程度で清掃、交換を余儀なくされる。
実施結果によると、光触媒脱臭装置(放電式光触媒脱臭装置)の脱臭性能低下時期も、含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする前記脱臭材の油脂分分解性能低下時期と、臭気脱臭性能低下時期とがほぼ同時期であった。
【0043】
尚、前記各実験はアタパルジャイト、セピオライトを混合した含水珪酸マグネシウム粘土鉱物について行ったものであるが、これに限定されるものではなく、含水珪酸マグネシウム粘土鉱物であれば、前記実施結果と近似した油脂分分解性能、臭気脱臭性能を有するものであった。
【0044】
以上の実施結果で証明される含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする脱臭材(ハニカム構造体)11及び放電式光触媒脱臭装置31を、グリスフィルタ21を最上流にして配設している室内循環型レンジフードファンAは、調理によって発生した水分、油脂分、臭気成分を含有する上昇空気Cを排気手段Bの吸気性能で吸気し、そのグリスフィルタ21で油脂分を吸着除去(荒取り)して、脱臭ユニット1に送気する。
この種の金属製のグリスフィルタ21として、本実施の形態では金属製の薄板に所定のピッチでスリットを縦設し、そのスリット相互で区画された舌片全体を一方向に屈折傾斜してスリット相互間に平面部分を残すことなく所定幅の通気口を設けた(商品名:スロットフィルタ(富士工業株式会社製))を使用した(実公平2−43456号公報参照)。
このグリスフィルタ21で上昇気流Cに含有される水分、油脂分の60%程度を捕獲し、捕獲できない油脂分、臭気成分を、前記含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする前記ハニカム構造の表面積を拡張した脱臭材11で吸着する。吸着された水分、油脂分、臭気成分はその含水珪酸マグネシウム粘土鉱物自らの触媒作用で加水分解され、油脂分はそのほとんどが分解される。
そして、臭気成分とわずかな油脂分が光触媒脱臭装置31に供給させ、放電現象で光触媒を活性化して、光触媒担持体31bに接触、付着または接近した無機性、有機性物質を光触媒反応による還元作用と発生するオゾンの酸化作用で臭気分の分解、排気中に含まれるカビ類、細菌、有機塩素化合物、内分泌撹乱化学物質を酸化分解、消毒作用をも行う。
そして、オゾン除去フィルタ31cでオゾンが酸素に分解され、除塵フィルタ41で前記脱臭材11から発生する粉塵を除去し、クリーンな空気として室内に循環する。
また、臭いが強い上昇気流Cが発生すると、循環路e1から室内に循環せずに排気路e2から直接屋外に排気する。
【0045】
以上のように含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とする消臭材11が、特に油脂分をその接触で吸着し自らの触媒作用で加水分解して、高い油脂分分解性能を持続することを知見したものであるから、無機系イオン吸着型の消臭要素を添着加工した連続多孔質の発泡体や、活性炭のように初期の高い油脂分吸着性能が目詰まりの進行と共に低下して短期間でその性能を無くして度々清掃、交換を遂行する必要がなくなり、清掃頻度、交換頻度を少なくして、清掃性を向上する油脂分分解性能、除菌、脱臭性能に優れた室内循環型レンジフードファンを提供することができる。
【0046】
本発明はグリスフィルタを併用しない室内循環型レンジフードファンをも対象とする。それは健康のために少ない油脂分の摂取に気を配る調理法を慣習とする家庭用の室内循環型レンジフードファンである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施の形態の室内循環型レンジフードファンの側面図で一部切欠して示す。
【図2】脱臭材と支持枠との関係を示す斜視図。
【図3】光触媒脱臭装置の概略を示す縦断面図で、拡大して示す。
【符号の説明】
【0048】
A:室内循環型レンジフードファンa:フード本体
11:脱臭材 E:エアー流路
21:グリスフィルタ B:排気手段
31:光触媒脱臭装置 41:除塵フィルタ
e1:循環路 e2:排気路
8:流路閉鎖ダンパ C:上昇気流
11d:支持枠 D:臭いセンサ
31c:オゾン除去フィルタ 31d:支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼ガスを発生しない調理器具から発生するその上昇気流を吸気して排気する室内循環型レンジフードファンにおいて、上流側から含水珪酸マグネシウム粘土鉱物を主成分とし油脂分、臭気成分を吸着して自らの触媒作用でその油脂分、臭気成分を加水分解する脱臭材、光触媒脱臭装置を順次配し、前記脱臭材、光触媒脱臭装置を順次経て、前記上昇気流を排気することを特徴とする室内循環型レンジフードファン。
【請求項2】
請求項1記載の光触媒脱臭装置は、発生したオゾンを酸素に分解するオゾン除去フィルタを有することを特徴とする室内循環型レンジフードファン。
【請求項3】
請求項1または2記載において、最も下流に除塵フィルタを配設したことを特徴とする室内循環型レンジフードファン。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか1項記載の前記脱臭材が連続多孔構造であることを特徴とする室内循環型レンジフードファン。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか1項記載において、排気手段の下流に室内への循環排気を行うための循環路と、屋外に排気するための排気路を備え、各々の流路に切替可能とし、該循環路に前記脱臭材、光触媒脱臭装置、除塵フィルタを配設したことを特徴とする室内循環型レンジフードファン。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか1項記載の前記脱臭材、光触媒脱臭装置を所定配設箇所に抜き差し可能にしていることを特徴とする室内循環型レンジフードファン。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか1項記載において、前記脱臭材の上流側にグリスフィルタを配設したことを特徴とする室内循環型レンジフードファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−322648(P2006−322648A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145131(P2005−145131)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000237374)富士工業株式会社 (112)
【出願人】(597139620)株式会社カルモア (4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューママーケティング株式会社 (2,480)
【Fターム(参考)】