説明

容器のシール不良検査方法

【課題】面接着されたヒートシール部での内容物の噛み込みによるシール不良を、ヒートシールの際に、容器の素材の厚さの変動に関係なく、正確に非破壊で全数検査できるようにする。
【解決手段】予め、非電導性の材質からなるヒートシール部の接着部分に対して、略平行で交差しない二本の導電線部を形成しておくと共に、この二本の導電線部のそれぞれの一端側を一対の端子としてヒートシール部の外部に露出させておき、その後、密封された容器1に対して、ヒートシーラー30によりヒートシール部を挟持している間に、ヒートシール部の外部に露出させた一対の端子を、ヒートシーラー30に付設された電極35を介して電流計5に接続させて、二本の導電線部の間に流れる微小電流の有無を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の内容物が充填・密封された袋状容器やカップ状容器のような、ヒートシールで密封された容器について、面接着されたヒートシール部での内容物の噛み込みによるシール不良を検査するための方法に関し、特に、ヒートシールの直後に非破壊で全数検査が可能なような容器のシール不良検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パウチと呼ばれる袋状容器や、シート状の蓋体を備えたカップ状容器では、容器内に食品等の内容物を充填してからヒートシールすることで容器を密封しているが、そのような容器では、ヒートシールされる部分に充填ノズルが触れたり、内容物が跳ねたりして、ヒートシールされる部分に内容物が付着することで、ヒートシールの際にヒートシール部に内容物が噛み込まれると、それによりシール不良が発生して内容物の漏れを起こすような虞がある。
【0003】
そのような袋状容器やカップ状容器におけるヒートシール部での内容物の噛み込みによるシール不良の検査について、下記の特許文献1には、ヒートシール検査装置およびこれを用いたヒートシール検査方法として、内容物が充填された包装袋(袋状容器)をヒートシールするヒートシーラーに渦電流センサを設けて、包装袋に内容物が充填され、これをヒートシールすると同時に、渦電流センサに流れる高周波電流の振幅を測定して、ヒートシール部の厚さを測定することで、ヒートシール部の厚みが設定値よりも厚くなった場合には内容物の噛み込みがあると判定する、ということが開示されている。
【特許文献1】特開2003−112714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来公知の容器のシール不良検査方法によれば、包装袋(袋状容器)をヒートシールするヒートシーラーに渦電流センサを設けて、この渦電流センサに流れる高周波電流の振幅を測定することにより、ヒートシール部の厚さを測定していることから、ヒートシールの際(ヒートシーラーによりヒートシールした直後)に、非破壊で全数の容器を検査することができる。
【0005】
しかしながら、例えば、袋状容器の場合には、原材料のシートの厚さに変動があり、カップ状容器の場合には、蓋板の厚さや容器本体のフランジ部の厚さに変動があるため、上記のようなヒートシール部の厚さを測定する技術では、容器の素材の厚さの変動に対応できない虞があり、また、容器の素材の厚さの変動に対応できるようにしても、噛み込まれた内容物の厚さが、容器の素材の厚さの変動の範囲内であれば、これを正確に検出できない虞がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、ヒートシールで密封された容器のシール不良を検査するための方法について、面接着されたヒートシール部での内容物の噛み込みによるシール不良を、ヒートシールの際に、容器の素材の厚さの変動に関係なく、正確に非破壊で全数検査できるようにするということを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するために、ヒートシールで面接着されて密封された容器のヒートシール部での内容物の噛み込みによるシール不良を検査するための方法として、予め、非電導性の材質からなるヒートシール部の接着部分に対して、略平行で交差しない二本の導電線部を形成しておくと共に、この二本の導電線部のそれぞれの一端側を一対の端子としてヒートシール部の外部に露出させておき、その後、密封された容器に対して、ヒートシーラーによりヒートシール部を挟持している間に、ヒートシール部の外部に露出させた一対の端子を、ヒートシーラーに付設された電極を介して電流計に接続させて、二本の導電線部の間に流れる微小電流の有無を検査することで、ヒートシール部でのシール不良の有無を検査するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
上記のような本発明の容器のシール不良検査方法によれば、導電線部の一対の端子に電流計を接続させて微小電流の有無を検査することにより、容器の素材の厚さの変動に関係なく、容器を破壊するような虞が全くない状態で、ヒートシール部での内容物の噛み込みによるシール不良の有無を検査することができる。すなわち、シール不良により食品等の内容物の液体がヒートシール部に存在する場合には、二本の導電線部がショートして回路が形成され、内容物の液中の金属原子等の電解質物質がイオン化して、微小なナノアンペア程度の電流が流れることから、この微少電流の有無を電流計で検出することで、ヒートシール部でのシール不良の有無を検出することができる。
【0009】
また、上記のような本発明の方法によれば、密封された容器に対して、ヒートシーラーによりヒートシール部を挟持している間(ヒートシールした直後)に、ヒートシール部でのシール不良の有無を全数検査できることから、その後の行程で高温・高圧による殺菌工程などがあったとしても、高温・高圧によりシール不良の部分から容器が破裂するのを未然に防ぐことができて、容器の破裂で設備を汚すような不測の事態が発生するのを確実に防止することができる。
【0010】
なお、上記のような本発明の方法を実施する際には、ヒートシーラーによりヒートシール部を挟持している間のうちで、ヒートシーラーの通電を停止してヒートシール部を冷却しているときに、二本の導電線部の間に流れる微小電流の有無を検出することが好ましく、そうすることで、ヒートシールによる熱の影響を受けることなく、微小電流の有無をより正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ヒートシールで密封された容器のシール不良を検査するための方法について、面接着されたヒートシール部での内容物の噛み込みによるシール不良を、ヒートシールの際に、容器の素材の厚さの変動に関係なく、正確に非破壊で全数検査できるようにするという目的を、最良の形態として以下の各実施例に具体的に示すように、予め、非電導性の材質からなるヒートシール部の接着部分に対して、略平行で交差しない二本の導電線部を形成しておくと共に、この二本の導電線部のそれぞれの一端側を一対の端子としてヒートシール部の外部に露出させておき、その後、密封された容器に対して、ヒートシーラーによりヒートシール部を挟持している間に、ヒートシール部の外部に露出させた一対の端子を、ヒートシーラーに付設された電極を介して電流計に接続させて、二本の導電線部の間に流れる微小電流の有無を検査することで、ヒートシール部でのシール不良の有無を検査する、ということで実現した。
【0012】
なお、本発明の方法が適用される容器、すなわち、ヒートシールで面接着されて密封された容器については、例えば、パウチと呼ばれる袋状の容器や、シート状の蓋体を備えたカップ状の容器が一般的に広く知られており、それらの容器では、食品等の内容物を容器内に充填してから、ヒートシーラーを使用してヒートシールにより密封している。そのような袋状容器とカップ状容器についての各実施例について以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
本実施例の方法は、パウチと呼ばれる袋状の容器に関するものであって、ヒートシールが可能な熱可塑性合成樹脂による単層フィルム、或いは、少なくとも内面側(接着面側)にヒートシールが可能な熱可塑性合成樹脂の層を備えた多層フィルムを素材とし、その一枚の細長いフィルムシートから袋状に製造される容器を検査の対象とするものである。
【0014】
本実施例の方法により検査される袋状の容器を製造する場合、図2に示すように、一枚の細長いフィルムシート10の中央を山型に折り込み、この折り込み部11の前後に続く表壁13と裏壁14とを、折り込み部11の山型を挟み込むように内包して重ね合わせた状態で、表壁13と裏壁14の両サイドと折り込み部11をヒートシール金型で挟んでヒートシールしている。
【0015】
なお、山型の折り込み部11の両サイドのほぼ中央部には、それぞれ半円形の切り欠き部12が形成されていて、折り込み部11を挟み込むように内包して表壁13と裏壁14を重ね合わせた状態で上記のようにヒートシールすることによって、表壁13と折り込み部11がヒートシールされ、裏壁14と折り込み部11がヒートシールされ、さらに、表壁13と裏壁14とが切り欠き部12の部分でヒートシールされて、袋状容器の底部が形成されることとなる。
【0016】
ところで、上記のように底部が形成されて表壁13と裏壁14の両サイドが接合されることで袋状に形成された容器に対して、図示していないが、底部とは反対側で開いた開口部から内容物が充填された後で、開口部(表壁13と裏壁14の上端部同士)をヒートシールすることで袋状の容器は密封されることとなるが、内容物を充填する際、容器の開口部に充填ノズルが触れたり、内容物が跳ねたりして、開口部の内側に内容物が付着したりすると、開口部をヒートシールして容器を密封したときに、ヒートシール部に内容物が噛み込まれることで、シール不良が発生して漏れが起きる虞がある。
【0017】
そのような内容物の噛み込みによるシール不良の有無を検査するために、本実施例の方法では、図2に示すように、袋状の容器を形成するためのフィルムシート10に対して、予め、開口部のヒートシールされる部分、具体的には、表壁13と裏壁14の何れでも良いが、本実施例では裏壁14の上端部の内面側に、略平行で交差しない二本の導電線部3、4を形成して、この二本の導電線部3、4のそれぞれの一端側を、一対の端子3a、4aとして裏壁14の上端両側でそれぞれ縦長に延ばすと共に、反対側の壁(表壁13)の上端両側を縦長の長方形に切り取っておくことで、開口部がヒートシールされた状態では、図1に示すように、一対の端子3a、4aがヒートシール部2の外部に露出されるようにしている。
【0018】
なお、本実施例の方法では、二本の導電線部3、4は、フィルムシートの状態のときに、人体に無害な金属粉を配合した導電性塗料でシート面に印刷することにより形成している。二本の導電線部3、4の間隔については、ヒートシール部2の幅や内容物の状態(粘度等)にもよるが、約2〜3mmが適切であり、導電線部3、4の幅は、感度を低下させないために、約1mmまでが望ましい。
【0019】
そのように、ヒートシール部2に二本の導電線部3、4が形成されて、その一端側が一対の端子3a、4aとしてヒートシール部2の外部に露出されている密封状態の袋状容器に対して、本実施例の方法では、ヒートシールした直後で、ヒートシーラーによりヒートシール部2を挟持している間に、ヒートシール部2の外部に露出させた一対の端子3a、4aを、図3に示すように、ヒートシーラー30に付設された電極35を介して電流計5に接続させて、この電流計5により微小電流の有無を検査することで、微小電流が検出された場合には、シール不良があると判定し、微小電流が検出されない場合には、シール不良がないと判定している。
【0020】
具体的に説明すると、本実施例の方法を実施するための袋状容器用のヒートシーラー30では、図3に示すように、発熱ヘッド31と受け側ヘッド32とを備えたヒートシーラー30において、発熱ヘッド31は、縦方向の幅として、袋状容器の上端に形成されるヒートシール部の幅を有し、横方向の長さとして、袋状容器の横方向の長さから両側のヒートシール部の幅を除いた長さを有するもので、発熱ヘッド31の両側には、袋状容器の上端両側を覆うように、縦方向の長さを有する直方体形状の側端ヘッド33が形成されている。
【0021】
また、発熱ヘッド31に対向する受け側へッド32は、硬質合成ゴム等のような樹脂製の電気的絶縁材料からなるもので、発熱ヘッド31の側端ヘッド33と対向するように、受け側へッド32の両側には、直方体形状の電極ヘッド34がそれぞれ設けられ、各電極ヘッド34にはそれぞれ電極35が設けられて、各電極35は、微小電流を検出するための電流計5に接続されている。
【0022】
そのように電流計5に接続される電極35が付設されたヒートシーラー30を使用して袋状容器を密封する場合、両側がヒートシールされて袋状にされてから内容物が充填された容器に対して、容器上端の開口部を発熱ヘッド31と受け側ヘッド32とで挟持しているが、そのような状態で、袋状容器の上端両側で一方の壁(表壁13)が縦長の長方形に切り取られた部分は、側端ヘッド33により裏から支えられた状態で電極へッド34に当接して、この部分で露出している各端子3a、4aは、電極ヘッド34に設けられた各電極35にそれぞれ接触している。
【0023】
そのような状態から、発熱ヘッド31を発熱させて、容器上端の開口部(ヒートシール部)を溶融させ、発熱へッド31と受け側ヘッド32とを合掌させたまま放熱させることで、印刷された二本の導電線部3、4を挟み込んだ状態で容器上端のヒートシール部2の樹脂が固まって、袋状容器は密封されることになるが、その際、容器上端のヒートシール部2に内容物が噛み込まれると、この内容物により導電線部3と導電線部4がショートすることで、微小なナノアンペア程度の電流が流れることになる。
【0024】
すなわち、本実施例の方法では、上記のようなヒートシーラー30による袋状容器の密封に際して、ヒートシーラー30によりヒートシールした直後(ヒートシーラー30への通電を停止してヒートシール部を冷却しているとき)に、導電線部3、4に流れる微少電流の有無を、ヒートシーラー30に設けられた電極35を介して電流計5により検出することで、容器上端のヒートシール部2での内容物の噛み込みを直ちに検出するようにしている。
【0025】
なお、電流計5による微少電流の検出の具体的なタイミングについては、ヒートシーラー30(発熱へッド31)への通電を停止してヒートシール部を冷却しているときに行うのが好ましく、そうすることで、ヒートシールによる熱の影響を受けることなく、微小電流の有無をより正確に検出することができる。
【実施例2】
【0026】
本実施例の方法は、フランジ部を備えた容器本体とシート状の蓋体とからなるカップ状の容器に関するものであって、カップ状容器の形状については、丸型のカップ状容器であっても、角型のカップ状容器であっても良いが、何れにしても、容器本体のフランジ部に蓋体がヒートシールされて密封された状態の容器を検査の対象とするものである。
【0027】
なお、カップ状容器の容器本体は、溶融させた合成樹脂をカップ型の金型内へ射出する射出成形法や、或いは、シート材(ヒートシールが可能な熱可塑性合成樹脂による単層シートや、少なくとも接着面側にヒートシールが可能な熱可塑性合成樹脂の層を備えた多層シート)を素材として、熱により軟化させたシートをカップ型の金型に圧縮空気で押し付ける圧空成形法や、軟化させたシートと金型との間を真空にしてシートをカップ型の金型に吸い付ける真空成形法など、適宜の方法により製造されるものである。
【0028】
また、容器本体のフランジ部にヒートシールされるシート状の蓋体は、ヒートシールが可能な熱可塑性合成樹脂による単層、或いは、少なくとも内面側(接着面側)にヒートシールが可能な熱可塑性合成樹脂の層を備えた多層のシート材によるもので、フランジ部の外縁形状と同じ形状を備えていると共に、蓋体をフランジ部から剥がすときに手掛かりとなるタブ部が設けられている。
【0029】
本実施例の方法により検査されるカップ状容器では、図5に示すように、内容物(図示せず)が充填された容器本体20は、底部21の外縁から胴部22が立ち上がり、胴部22の上端から水平方向で外方にフランジ部23が延びているものであり、この容器本体20のフランジ部23に対して、シート状の蓋体24がヒートシールにより面接着されていることで、容器は密封されている。
【0030】
ところで、上記のようなカップ状容器では、容器本体20の内部に食品等の内容物が充填されてから、容器本体20のフランジ部23に蓋体24をヒートシールすることで、容器は密封されることとなるが、内容物を充填する際、フランジ部23に充填ノズルが触れたり、内容物が跳ねたりして、フランジ部23の上面に内容物が付着したりすると、フランジ部23に蓋体24をヒートシールして容器を密封したときに、ヒートシール部(フランジ部23と蓋体24の接着部分)に内容物が噛み込まれることで、シール不良が発生して漏れが起きる虞がある。
【0031】
そのようなシール不良の有無を検査するために、本実施例の方法では、蓋体24の周辺部(ヒートシールされるフランジ部23の幅の範囲内)に対して、図4に示すように、予め、略平行で交差しない二本の導電線部3、4を形成しており、この二本の導電線部3、4のそれぞれの一端側は、蓋体24のタブ部24aにまで延ばされていて、図示していないが、蓋体24とフランジ部23とがヒートシールにより接着された状態で、一対の端子3a、4aとしてヒートシール部(フランジ部23と蓋体24の接着部分)の外部に露出されるようにしている。
【0032】
なお、本実施例の方法では、二本の導電線部3、4は、先に示した実施例(実施例1)の場合と同様に、人体に無害な金属粉を配合した導電性塗料で印刷することにより形成しており、二本の導電線部3、4の間隔については、ヒートシール部2の幅や内容物の状態(粘度等)にもよるが、約2〜3mmが適切であり、導電線部3、4の幅は、感度を低下させないために、約1mmまでが望ましい。そのために、二本の導電線部3、4は、蓋体24の周辺部を二重に周回させるように形成しており、それによって、導電線部3、4の幅を適切にした状態で、ヒートシール部(フランジ部23と蓋体24の接着部分)の全体に検知部分を設定することができる。
【0033】
そのように、ヒートシール部(フランジ部23と蓋体24の接着部分)に二本の導電線部3、4が二重に周回させた状態で形成されて、その一端側が一対の端子3a、4aとしてヒートシール部の外部でに露出されている密封状態のカップ状容器に対して、本実施例の方法では、ヒートシールした直後で、ヒートシーラーによりヒートシール部を挟持している間に、ヒートシール部の外部(蓋体24のタブ部24a)に露出させた一対の端子3a、4aを、図6に示すように、ヒートシーラー40に付設された電極45を介して電流計5に接続させて、この電流計5により微小電流の有無を検査することで、微小電流が検出された場合には、シール不良があると判定し、微小電流が検出されない場合には、シール不良がないと判定している。
【0034】
具体的に説明すると、本実施例の方法を実施するためのカップ状容器用のヒートシーラー40では、図6に示すように、発熱ヘッド41と受け側のリテーナー42とを備えたヒートシーラー40において、発熱ヘッド41は、蓋体24を載せた状態で容器本体20の全体を上方から覆うような形状を有しており、容器本体20のフランジ部23と対向する部分には、発熱コイル等のような発熱素子が埋め込まれている。
【0035】
そのような発熱ヘッド41に対向する受け側のリテーナー42は、硬質合成ゴム等のような樹脂製の電気的絶縁材料からなるもので、その中央部分には、容器本体20を収納する凹部43が形成されていて、リテーナー42の上面44は、凹部43の周縁に位置する部分で、容器本体20のフランジ部23を支持している。この受け側のリテーナー42には、蓋体24のタブ部24aに対向して、リテーナーの上面44からフランジ部23の厚さだけ突出するように、一対の電極45がリテーナー42を貫通するように設けられており、各電極45は、微小電流を検出するための電流計5に接続されている。
【0036】
そのように電流計5に接続される電極45が付設されたヒートシーラー40を使用してカップ状容器を密封する場合、容器本体20に内容物(図示せず)が充填されて蓋体24が載置された容器を、受け側のリテーナー42の凹部43に嵌め込み、リテーナー42の上面44に容器本体20のフランジ部23を載せた状態で、上から発熱へッド41を被せて、発熱へッド41とリテーナー42との間にフランジ部23と蓋体24を挟持させているが、そのような状態で、リテーナー42の上面44から突出した電極45は、蓋体24のタブ部24aの下面に形成された各端子3a、4aにそれぞれ接触している。
【0037】
そのような状態から、発熱ヘッド41の発熱素子を発熱させて、フランジ部23と蓋体24の接着面を溶融させ、発熱へッド41と受け側のリテーナー42とを合掌させたまま放熱させることで、フランジ部23と蓋体24の接着部分によるヒートシール部の樹脂が固まって、カップ状容器は密封されることになるが、その際、フランジ部23と蓋体24の接着部分によるヒートシール部に内容物が噛み込まれていると、この内容物により導電線部3と導電線部4がショートすることで、微小なナノアンペア程度の電流が流れることになる。
【0038】
すなわち、本実施例の方法では、上記のようなヒートシーラー40によるカップ状容器の密封に際して、ヒートシーラー40によりヒートシールした直後(ヒートシーラー40への通電を停止してヒートシール部を冷却しているとき)に、導電線部3、4に流れる微少電流の有無を、ヒートシーラー40に設けられた電極45を介して電流計5により検出することで、容器本体20のフランジ部23と蓋体24の接着部分によるヒートシール部での内容物の噛み込みを直ちに検出するようにしている。
【0039】
以上に説明したような各実施例(実施例1および実施例2)による容器のシール不良検査方法によれば、その何れにおいても、ヒートシール部に内容物が噛み込まれていると、この内容物の液体によって、導電線部3と導電線部4がショートして回路が形成され、内容物の液体に0.1%濃度の食塩等が含まれていると、内容物の液中に含まれた電解質のナトリウムなどがイオン化して、微小なナノアンペア程度の電流が流れることから、この微少電流の有無を電流計5により検出することで、内容物の噛み込みの有無を検出することができる。
【0040】
一方、ヒートシール部に噛み込まれた内容物が一方の導電線部4に接触しても他方の導電線部3には接触しない程度の欠陥については、軽微な欠陥であって、漏れを生じるには至らないため、そのようなものは検出する必要はないが、そのような場合には、導電線部3と導電線部4がショートせず、回路が形成されないことから、そのような欠陥は検出されず、その結果、実質的に問題のない軽微な欠陥は見逃すことで、製品の歩留まりを良くすることができる。
【0041】
以上、本発明の容器のシール不良検査方法の各実施例について説明したが、本発明は、上記の各実施例に示したような具体的な方法にのみ限定されるものではなく、例えば、検査の対象となる容器については、袋状容器やカップ状容器に限らず、その他の容器であっても良いものであり、また、導電線部(及び、その一端側の一対の端子)については、導電性塗料により印刷すれば簡単に形成することができるが、必ずしもそのようなものに限られるものではない等、適宜に変更可能なものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の検査方法の一実施例(実施例1)について、導電線部と端子が形成された袋状容器を示す正面図。
【図2】図1に示した袋状容器について、一枚の細長いフィルムシートを袋状に折り畳むときの状態を示す斜視図。
【図3】図1に示した袋状容器について、容器上端をヒートシーラーによりヒートシールして密封するときの状態を示す斜視説明図。
【図4】本発明の検査方法の他の実施例(実施例2)について、導電線部と端子が形成されたカップ状容器の蓋体を示す下面図。
【図5】図4に示した蓋体で密封されたカップ状容器の半分を断面で示す部分断面側面図。
【図6】図5に示したカップ状容器について、容器本体と蓋体をヒートシーラーによりヒートシールして密封するときの状態を示す断面説明図。
【符号の説明】
【0043】
1 容器(袋状容器、カップ状容器)
2 (袋状容器の)ヒートシール部
3 導電線部
3a 端子
4 導電線部
4a 端子
5 電流計
23 (カップ状容器のヒートシール部となる)フランジ部
24 (カップ状容器のヒートシール部となる)蓋体
30 ヒートシーラー
35 電極
40 ヒートシーラー
45 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシールで面接着されて密封された容器のヒートシール部での内容物の噛み込みによるシール不良を検査するための方法として、予め、非電導性の材質からなるヒートシール部の接着部分に対して、略平行で交差しない二本の導電線部を形成しておくと共に、この二本の導電線部のそれぞれの一端側を一対の端子としてヒートシール部の外部に露出させておき、その後、密封された容器に対して、ヒートシーラーによりヒートシール部を挟持している間に、ヒートシール部の外部に露出させた一対の端子を、ヒートシーラーに付設された電極を介して電流計に接続させて、二本の導電線部の間に流れる微小電流の有無を検査することで、ヒートシール部でのシール不良の有無を検査するようにしたことを特徴とする容器のシール不良検査方法。
【請求項2】
ヒートシーラーによりヒートシール部を挟持している間のうちで、ヒートシーラーの通電を停止してヒートシール部を冷却しているときに、二本の導電線部の間に流れる微小電流の有無を検出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の容器のシール不良検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−60440(P2010−60440A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226669(P2008−226669)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】