説明

容器洗浄機及び容器の洗浄方法

【課題】本発明は、マイクロバブルを使用して、洗浄効果向上による洗浄剤の使用量の削減及び環境適性の向上並びに順次・連続的な容器の洗浄が可能な容器洗浄機を提供することである。また、マイクロバブルを使用して、中性乃至酸性の洗浄剤を用いてアルカリ性洗浄剤による容器寿命低下の問題を解決することを目的とする。
【解決手段】本発明の容器洗浄機は、予備濯ぎ槽2と、洗浄槽3と、仕上げ濯ぎ槽4と、未洗浄容器1aを順次連続的に予備濯ぎ槽、洗浄槽及び仕上げ濯ぎ槽に通過させる容器搬送手段7と、洗浄槽に蓄えられた洗浄液10に流れを生じさせる洗浄液循環手段24と、洗浄槽の洗浄液中に設置された微細気泡発生器31と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リターナブル又はリフィラブルと呼称されるガラス壜、プラスチックボトル等の通い容器を繰り返し使用するための容器洗浄機及び容器の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス壜の通い容器は、洗壜機と呼ばれる複数の槽を備えた装置内を通過する際に、各槽の水、湯又は洗浄液に浸漬され、再充填可能なレベルまできれいに洗浄される(例えば特許文献1を参照。)。洗浄液には通常、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性洗浄剤が用いられている。
【0003】
一方、洗浄の効率化を図るため、マイクロバブルと呼ばれる微細気泡(以下、「マイクロバブル」ともいう)を洗浄液中で発生させる技術がある(例えば特許文献2を参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平5‐50051号公報
【特許文献2】特開2004‐121962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1などに記載されている洗壜機において用いられるアルカリ性洗浄剤は、洗浄力が強い一方、ガラスを侵す性質があり、ガラス壜の繰り返し使用可能回数に影響を与える。また、ビール用途に表面を薄膜で被覆したポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製のボトルの場合、PET樹脂の加水分解を促進する。したがって、長期的には徐々に薄膜のガスバリア性能を低下させる問題を生じる。
【0006】
アルカリ性洗浄剤における諸問題を解決するため、酸性洗浄剤を使用することも考えられる。しかし、一般に酸性洗浄剤では蛋白などの洗浄力に欠け、実用化されていない。
【0007】
特許文献2の開示に代表されるマイクロバブルを使用した洗浄技術は、有機溶剤等の洗浄剤の使用量をゼロにしたり、低減したりできる効果が知られている。環境調和技術として主として日本国内で注目されている一方、原理解明がさほど進んでいないのが現状であり、飲料用容器の洗浄機に活用した事例はこれまでのところ知られていない。
【0008】
そこで本発明の目的は、マイクロバブルを使用して、洗浄効果向上による洗浄剤の使用量の削減及び環境適性の向上並びに順次・連続的な容器の洗浄が可能な容器洗浄機を提供することである。また、本発明の目的は、マイクロバブルを使用して、中性乃至酸性の洗浄剤を用いてアルカリ性洗浄剤による容器寿命低下の問題を解決し、かつ、洗浄効果向上による洗浄剤の使用量の削減及び環境適性の向上並びに順次・連続的な容器の洗浄が可能な容器の洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、複数槽を有する容器洗浄機において、洗浄槽で微細気泡を発生させ、かつ、容器に効率的に微細気泡を接触させることで、中性乃至酸性の洗浄液で飲料用容器を、リターナブルの使用が可能な程度まで順次・連続的に洗浄できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る容器洗浄機は、予備濯ぎ槽と、洗浄槽と、仕上げ濯ぎ槽と、未洗浄容器を順次連続的に前記予備濯ぎ槽、前記洗浄槽及び前記仕上げ濯ぎ槽に通過させる容器搬送手段と、前記洗浄槽に蓄えられた洗浄液に流れを生じさせる洗浄液循環手段と、前記洗浄槽の洗浄液中に設置された微細気泡発生器と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る容器洗浄機では、前記微細気泡発生器が、個数平均径又はメディアン径が50μm以下の微細気泡を発生させることが好ましい。発生させる気泡として、個数平均径又はメディアン径が50μm以下の微細気泡とすることで、洗浄効果を高めることができる。
【0011】
本発明に係る容器洗浄機では、前記洗浄液循環手段は、前記洗浄槽に蓄えられた洗浄液を液面より低位置にて吸引し、吐出する循環ポンプ付きの配管であることが好ましい。洗浄槽内で洗浄液の流れを高めることが可能であり、微細気泡を素早く容器まで移動させることができ、その際に洗浄液の泡立ちを抑制できる。
【0012】
本発明に係る容器洗浄機では、前記洗浄液循環手段は、前記洗浄槽に蓄えられた洗浄液を低位置から前記洗浄液の液面まで汲み上げる循環ポンプ付きの配管であることとしてもよい。洗浄槽内の洗浄液を上から下に至るまで満遍なく循環させ、これに伴い微細気泡も洗浄槽全体に行き渡らせることが可能となる。
【0013】
本発明に係る容器洗浄機では、前記洗浄液の流れ方向を、前記容器搬送手段の容器搬送方向に対して直交若しくはほぼ直交させていることが好ましい。洗浄槽内で搬送中の容器に微細気泡を効率よく接触させることが可能である。
【0014】
本発明に係る容器洗浄機では、前記微細気泡発生器が、前記洗浄槽に蓄えられた洗浄液の流れのある箇所にて微細気泡を発生させることが好ましい。洗浄槽内全体に微細気泡を素早く行き渡らせることができる。
【0015】
本発明に係る容器洗浄機では、前記微細気泡発生器は、洗浄中の容器に対して洗浄液の流れの上流側に配置されていることが好ましい。微細気泡は、洗浄液の流れに逆らって拡散できない場合があるため、このような配置によって効果的かつ一様に微細気泡を洗浄中の容器に接触させることができる。
【0016】
本発明に係る容器洗浄機では、前記容器搬送手段が、洗浄中の容器の開口部を前記微細気泡発生器に対向させるように該容器を搬送することが好ましい。洗浄槽内では容器の上下を自在に変更しながら搬送することが可能であるが、容器の開口部(のみ口又は注ぎ口)と微細気泡の発生器を対向させることで、微細気泡が品質に特に重要な容器の内部に行き渡りやすくし、洗浄効率を高めることができる。
【0017】
本発明に係る容器の洗浄方法は、未洗浄容器を順次連続的に予備濯ぎ槽、洗浄槽及び仕上げ濯ぎ槽に通過させて、洗浄済容器とする容器の洗浄方法において、前記洗浄槽で使用する洗浄液を、中性洗浄液、弱酸性洗浄液又は酸性洗浄液とし、前記洗浄液を循環させて、生じた洗浄液の流れの中で微細気泡を発生させることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る容器の洗浄方法では、前記容器が、ガラス容器、プラスチック容器、コーティングを施したガラス容器又はコーティングを施したプラスチック容器である形態が含まれる。ここで、薄膜又は塗被膜が容器にコーティングされている形態が含まれ、さらに薄膜がガスバリア性を有する薄膜である形態が含まれる。
【0019】
本発明に係る容器の洗浄方法では、前記微細気泡が、個数平均径又はメディアン径が50μm以下の気泡であることが好ましい。発生させる気泡として、個数平均径又はメディアン径が50μm以下の微細気泡とすることで、洗浄効果を高めることができる。気泡がこのような微細な径の気泡であると、洗浄液中を移動中に気泡に働く浮力による急速に液面へ浮上することが抑制され、微細気泡の均一な洗浄液中への拡散及び未洗浄容器への均一な接触が可能となる。したがって、浮力の観点からは、10μm以下がより好ましく、1μm以下がより好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の容器洗浄機は、マイクロバブルを使用して、洗浄効果向上によって洗浄剤の使用量を削減し、環境適性を向上させ、並びに順次・連続的に容器を洗浄することができる。また、本発明の容器の洗浄方法は、マイクロバブルを使用して、中性乃至酸性の洗浄剤を用いてアルカリ性洗浄剤による容器寿命低下の問題を解決できる。また、洗浄効果向上によって洗浄剤の使用量を削減し、環境適性を向上させ、並びに順次・連続的に容器を洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されず、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更が可能である。
【0022】
本実施形態に係る容器洗浄機を図1及び図2を用いて説明する。図1は本実施形態に係る容器洗浄機の全体の構成を説明するための概略図である。図2は洗浄槽の構成を説明するための概略図である。図1に示したように、本実施形態に係る容器洗浄機100は、予備濯ぎ槽2と、洗浄槽3と、仕上げ濯ぎ槽4と、未洗浄容器1aを順次連続的に予備濯ぎ槽2、洗浄槽3及び仕上げ濯ぎ槽4に通過させる容器搬送手段7と、洗浄槽3に蓄えられた洗浄液10に流れを生じさせる洗浄液循環手段(図2の符号24)と、洗浄槽3の洗浄液中に設置された微細気泡発生器(図2の符号31)と、を有する。本実施形態に係る容器洗浄機100は、予備濯ぎ槽2と、洗浄槽3と、仕上げ濯ぎ槽4のほか、予備濯ぎ槽2の予備タンク5と、仕上げ濯ぎ槽4の予備タンク6とをさらに有する。図1と図2を参照して、本実施形態に係る容器洗浄機とその作動状況を説明する。
【0023】
図1で示した本実施形態に係る容器洗浄機は、2つの予備濯ぎ槽2a,2bを備えている。ここで1つ又は3つ以上の予備濯ぎ槽から構成されていてもよい。未洗浄容器1aは、容器搬送手段7に載せられた後、直ちに予備濯ぎ槽2につけられず、その前にジェット水流噴射機13によって水又は湯の水流を浴びて物理的な洗浄が加えられる。ジェット水流噴射機13によって噴射された水又は湯は、未洗浄容器1aに当たった後、予備濯ぎ槽2の予備タンク5に蓄えられる。水又は湯の水流を浴びた洗浄中の容器1bは、容器搬送手段7によって予備濯ぎ槽2a,2bにつけられる。予備濯ぎ槽2には、水又は湯が蓄えられていて、予備タンク5内の水又は湯と相互に循環されている。
【0024】
容器搬送手段7は、容器を順次・連続的に予備濯ぎ槽2、洗浄槽3及び仕上げ濯ぎ槽4に搬送することができればいかなる形態であってもよいが、例えば、循環式のコンベアに、容器を収容する容器ホルダーをコンベア方向に配列・固定した形態である。容器ホルダーとしては、例えば、入れ物構造、掴み構造、摘み構造又は挟み構造を有する保持具である。
【0025】
洗浄の対象とする容器1aは、ガラス容器(ガラス壜)、プラスチック容器、コーティングを施したガラス容器又はコーティングを施したプラスチック容器である。これらの容器は、ワンウェイで用いられることがあるが、リターナブルで繰り返し使用されることもある。ここで、コーティング物としては、例えば薄膜又は塗被膜がある。薄膜としては、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜、SiOx薄膜、アルミナ薄膜、窒化物薄膜などの各種のガスバリア性を有する薄膜がある。また、塗被膜としては、例えば破壜防止用のセラミック製又は樹脂製塗被膜又はラベル印刷を目的とした塗被膜がある。
【0026】
図1で示した本実施形態に係る容器洗浄機は、3つの洗浄槽3a,3b,3cを備えている。ここで2つ以下又は4つ以上の洗浄槽から構成されていてもよい。洗浄中の容器1bは、予備濯ぎ槽2に続いて、容器搬送手段7によって洗浄槽3a,3b,3cにつけられる。洗浄槽3には、洗浄液10が蓄えられており、洗浄槽3a,3b,3cに蓄えられている洗浄液10a,10b,10cは相互に循環されている。また、洗浄槽3には、ジェット水流噴射機14によって洗浄液が噴射され、洗浄中の容器1bに洗浄液の水流を浴びて物理的な洗浄を加える。ジェット水流噴射機14によって噴射された洗浄液は、洗浄中の容器1bに当たった後、洗浄槽3に蓄えられる。
【0027】
洗浄液10としては、容器の寿命低下防止の観点から、中性洗浄液(pHがほぼ7)、弱酸性洗浄液(pHが4以上7未満)又は酸性洗浄液(pHが4未満)が好ましい。ただし、本実施形態に係る容器洗浄機では、洗浄液10として従来から使用されている水酸化ナトリウム、グルコン酸ナトリウム等のアルカリ性薬剤を含有するアルカリ性洗浄剤を使用することも可能である。
【0028】
図2に示すように、洗浄液循環手段24は、洗浄槽3に洗浄液10の水面よりも低位置に設けた2つ以上の開口部23と、開口部23a,23b同士を洗浄槽3の外側にて連結する配管22と、配管22内の洗浄液に流れを与える循環ポンプ21とを有する。すなわち、洗浄液循環手段24は、洗浄槽3に蓄えられた洗浄液10を低位置から洗浄液10の液面まで汲み上げる循環ポンプ付きの配管である。洗浄液循環手段24によって、洗浄槽3に蓄えられた洗浄液10がその液面よりも低位置の開口部23aにて吸引され、開口部23bから吐出される。洗浄液中の汚れや洗浄液濃度を一定に保つことができる他、洗浄槽3内で洗浄液10の流れ25を高めることが可能であり、微細気泡を素早く容器まで移動させることができ、その際に洗浄液10の泡立ちを抑制できる。なお、図2において、※1は、配管22がつながっていることを意味している。
【0029】
図3に洗浄液循環手段の他形態を説明するための概略図を示した。図3に示すように、洗浄液循環手段24は、洗浄槽3に洗浄液10の水面よりも低位置に設けた開口部23と、開口部23bに一端が連結され、他端が洗浄液10の水面にて開放された配管22と、配管22内の洗浄液に流れを与える循環ポンプ21とを有する。すなわち、洗浄液循環手段24は、洗浄槽3に蓄えられた洗浄液10を低位置から洗浄液10の液面まで汲み上げる循環ポンプ付きの配管としてもよい。ここで、配管22の他端は、洗浄液10の水面よりも上方に位置しているが、洗浄液10の水面よりもわずかに低い位置に位置していてもよい。洗浄液循環手段24によって、洗浄槽3に蓄えられた洗浄液10がその液面よりも低位置の開口部23にて吸引され、配管22の他端から吐出される。洗浄液中の汚れや洗浄液濃度を一定に保つことができる他、洗浄槽3内の洗浄液10を上から下に至るまで満遍なく循環させ、これに伴い微細気泡も洗浄槽3全体に行き渡らせることが可能となる。また、配管22の他端が洗浄液10の水面よりもわずかに低い位置に位置する場合には、洗浄液の泡立ちが抑制される。
【0030】
微細気泡発生器の方式は、マイクロバブルという微細気泡を発生させることができればいかなる方式でもよいが、例えば、超高速旋回・せん断方式、加圧気液混合方式又は超音波方式がある。図2に示した微細気泡発生器31は、超高速旋回・せん断方式の形態である。このとき、微細気泡発生手段33は、洗浄槽3内で、洗浄液10の水面よりも低位置を通る循環配管30と、循環配管30内の洗浄液に流れを与える循環ポンプ32と、洗浄槽3内の循環配管30に接続された微細気泡発生器31と、循環配管30内に空気を取り込む空気取り込み口29とを有する。図2で示した微細気泡発生器31は、洗浄槽3の洗浄液10中に設置されている。循環配管30内には、空気取り込み口29から取り込まれた空気と洗浄液とが気液混合流体を形成して高速で循環している。なお、空気は大気を取り込んでも、加圧してから取り込んでもいずれでもよい。空気圧は気泡形成に影響を与えることがある。そして、気液混合流体が循環配管から分岐されて微細気泡発生器31まで供給される。微細気泡発生器31内において、気液混合流体は高速回転流れを付与されて、微細気泡が発生する。
【0031】
本実施形態に係る容器洗浄機では、微細気泡発生器31が、個数平均径又はメディアン径が50μm以下の微細気泡を発生させることが好ましい。微細気泡発生器31からは、直径がmmオーダーの粗大な気泡が発生する場合があるが、個数平均径又はメディアン径が50μm以下の微細気泡を主として発生させることで、洗浄効果を高めることができる。本実施形態でいう微細気泡には、ナノオーダーの超微細気泡も含まれる。なお、微細気泡発生器31が、その機構上、直径50μmを超える気泡を発生させるとしても、個数平均径又はメディアン径が50μm以下の微細気泡を発生させる限り、本実施形態に係る容器洗浄機の微細気泡発生器として使用することができる。
【0032】
本実施形態に係る容器洗浄機では、図2で示すように、洗浄液の流れ25の方向を、容器搬送手段7の容器搬送方向に対して直交若しくはほぼ直交させていることが好ましい。洗浄槽内で搬送されている洗浄中の容器1bに洗浄液の流れ25を当てれば、微細気泡も効率よく洗浄中の容器1bに接触させることが可能である。
【0033】
本実施形態に係る容器洗浄機では、図2で示すように、微細気泡発生器31が、洗浄槽3に蓄えられた洗浄液10の流れ25のある箇所にて微細気泡を発生させることが好ましい。洗浄槽内全体に微細気泡を素早く行き渡らせることができる。また、微細気泡発生器31を複数設置する場合には、洗浄液の流れ25の方向に沿って配置することが好ましい。洗浄中の容器1bに接触する微細気泡の濃度を高めることができる。
【0034】
本実施形態に係る容器洗浄機では、微細気泡発生器31は、洗浄中の容器に対して洗浄液の流れの上流側に配置されていることが好ましい。図2では、微細気泡発生器31aが、容器搬送手段7に対して洗浄液の流れ25の上流側に設置されている。微細気泡は、洗浄液の流れに逆らって拡散できない場合があるため、このような配置によって効果的かつ一様に微細気泡を洗浄中の容器に接触させることができる。
【0035】
本実施形態に係る容器洗浄機では、容器搬送手段7が、洗浄中の容器の開口部を前記微細気泡発生器に対向させるように該容器を搬送することが好ましい。洗浄槽3内では容器の上下を自在に変更しながら搬送することが可能であるが、容器の開口部(飲み口又は注ぎ口)と微細気泡の発生器を対向させることで、微細気泡が品質に特に重要な容器の内部に行き渡りやすくし、洗浄効率を高めることができる。また、洗浄中の容器が洗浄液につけられて、容器の開口部から洗浄液が入り込む位置において、微細気泡が豊富に存在するように、微細気泡発生器31の位置、洗浄液の流れ25を調整してもよい。
【0036】
図1で示した本実施形態に係る容器洗浄機は、1つの仕上げ濯ぎ槽4を備えている。ここで2つ以上の仕上げ濯ぎ槽から構成されていてもよい。洗浄中の容器1bは、洗浄槽3に続いて、容器搬送手段7によって仕上げ濯ぎ槽4につけられる。仕上げ濯ぎ槽4には、水又は湯11が蓄えられており、後流にある予備タンク6に蓄えられている水又は湯12a,12b,12cとの間で相互に循環されている。また、仕上げ濯ぎ槽4には、ジェット水流噴射機15によって水又は湯が噴射され、洗浄中の容器1bに水又は湯の水流を浴びて物理的な洗浄を加え、主として洗浄液を落とす。ジェット水流噴射機15によって噴射された水又は湯は、洗浄中の容器1bに当たった後、予備タンク6に蓄えられる。
【0037】
以上のとおり、容器洗浄機100を通過した容器は、洗浄済容器1cとして、仕上げられる。
【0038】
図1では予備濯ぎ槽2、洗浄槽3及び仕上げ濯ぎ槽4が順に配置するように設置された形態で説明したが、本実施形態に係る容器洗浄機は、この形態に限定されない。例えば、予備濯ぎ槽、洗浄槽及び仕上げ濯ぎ槽を順に環状に配置し、ロータリー型の容器洗浄機としてもよい。
【0039】
次に、容器洗浄機100を用いた場合を例として、本実施形態に係る容器の洗浄方法を説明する。本実施形態に係る容器の洗浄方法は、未洗浄容器1aを順次連続的に予備濯ぎ槽2、洗浄槽3及び仕上げ濯ぎ槽4に通過させて、洗浄済容器1cとする容器の洗浄方法において、洗浄槽3で使用する洗浄液10を、中性洗浄液(pHがほぼ7)、弱酸性洗浄液(pHが4以上7未満)又は酸性洗浄液(pHが4未満)とし、洗浄液10を循環させて、生じた洗浄液の流れ25の中で微細気泡を発生させる。微細気泡を発生させることによって、洗浄剤の種類に拠らず、洗浄力が増強されるので、洗浄剤の使用量の低減が実現でき、コストダウンが図れる。本実施形態に係る容器の洗浄方法のように、洗浄液として中性洗浄液、弱酸性洗浄液又は酸性洗浄液を使用してもアルカリ洗浄剤と同等まで容器を洗浄することができる。
【0040】
洗浄の対象とする容器1aをガラス容器(ガラス壜)とした場合、アルカリ性の洗浄剤であれば、ガラスが溶解しやすいのでガラス表面に生じた傷が拡大されるところ、洗浄液として中性洗浄液、弱酸性洗浄液又は酸性洗浄液を使用すれば、ガラスの溶解が起こりにくいので、傷が広がらず、容器の寿命延長が図られる。プラスチック容器、例えPETボトルの場合においては、アルカリ性洗浄剤の使用によって樹脂の加水分解が起きるので、ガラス壜と同様に表面に生じた傷が拡大されるところ、洗浄液として中性洗浄液、弱酸性洗浄液又は酸性洗浄液を使用すれば、樹脂の加水分解が起こりにくいので、傷が広がらず、容器の寿命延長が図られる。さらに、ガラス容器又はプラスチック容器の表面に薄膜又は塗被膜を形成した場合、ガラスの溶解又はプラスチックの加水分解が、薄膜又は塗被膜とガラス容器又はプラスチック容器の表面との界面にて起こりやすいため、薄膜又は塗被膜が剥離しやすい。洗浄液として中性洗浄液、弱酸性洗浄液又は酸性洗浄液を使用すれば、ガラスの溶解又はプラスチックの加水分解が起こりにくいので、薄膜又は塗被膜が剥離しにくく、容器の寿命延長が図られる。洗浄剤として弱酸性洗浄液を用いた場合、後述する実施例で実証されるとおり、洗浄率が高く、アルカリ性洗浄剤の場合を超えて良好に洗浄することができる。
【実施例】
【0041】
pHの異なる洗浄剤を使用して、微細気泡の発生による洗浄効果の確認を行なった。
【0042】
(洗浄のまでの手順)
(1)珪藻土、蓚酸カルシウム、ビール、牛乳の混合物ペーストを76mm×25mmの面積のサンプル板に塗り、60℃で16時間乾燥させ、ビールモデル汚れを固着させた。
(2)モデル汚れ固着前後で、各サンプル板の光沢度を、ハンディー光沢度計(堀場社製IG‐320)で測定した。各サンプルの光沢度は表1のとおりであった。なお、DLC膜の膜厚は20nmとした。DLC膜の成膜方法は、例えば、特許文献3により開示されている方法を用いた。
【特許文献3】特許第2788412号公報
【表1】

(3)10リットルの模擬洗浄槽内で、できるだけ水流を発生させないように、各サンプルを液面下に設置した。このとき、各洗浄剤及びマイクロバブルを水道水に所定の状態となるように加えた。55℃10分間放置し、その後の光沢度を測定した。図4に各条件(N=3)でのサンプルの光沢度の平均値のグラフを示した。表2に図4のデータを整理した。なお、水流を発生させないようにしたのは、水流による誤差を含ませないためである。
(4)ここで、洗浄率(%)は、数1によって求めた。洗浄率(%)が80%以上で合格品に相当する。
【数1】


【表2】

【0043】
(洗浄剤の種類)
(1)強アルカリ性洗浄剤:市販界面活性剤入り1w/w(%)NaOH水 室温pH13
(2)弱アルカリ性洗浄剤:市販界面活性剤入り5w/w(%)珪酸ソーダ 室温pH11。
(3)弱酸性洗浄剤:1.2w/w(%)グリコール酸に界面活性剤と弱酸を加えた試作洗剤で、室温pH4。
(4)中性洗剤:市販弱酸性洗剤にNaOHを加えて、室温pH7に調整した。室温pH7。
【0044】
(洗浄条件)
55℃、10分とした。微細気泡発生装置は次の装置を用いた。
ホルス社製 パワーミスト ECP J‐150S。
【0045】
図4で示されているとおり、次のことがわかった。すなわち、マイクロバブルによってガラス板及びPET板共に洗浄が可能であった。特に、弱酸性洗浄剤でも、強アルカリ性洗浄剤よりも良好に洗うことが可能であった。
【0046】
(洗浄前後におけるガスバリア性の保持率の検証)
DLC膜を内面にコーティングした500mlのPETボトルをサンプルとして、モデル汚れは塗布せずに、前記各洗浄液を用いて、微細気泡を発生させ、55℃、10分の条件を1セットとして、洗浄を10回行なった。洗浄10回の前後で酸素透過率の比較を行なった。酸素透過率の測定には、Mocon社のOxtran2/21を用いた。このとき、測定温度は23℃、湿度90%とした。サンプル数N=2とし、平均値を求めた。結果を表3に示した。
【0047】
ガスバリア性の保持率(%)は数2より求めた。
【数2】

なお、洗浄前の酸素透過率は、0.0025cc/日/本であった。
【0048】
【表3】

【0049】
弱酸性洗浄剤を用いた場合、高いガスバリア性の保持率が得られていることがわかった。この結果より、DLC膜をコーティングしたPETボトルのリターナブル回数が、強アルカリ性洗浄剤又は弱アルカリ性洗浄剤を用いたときと比較して多いことが予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態に係る容器洗浄機の全体の構成を説明するための概略図である。
【図2】洗浄槽の構成を説明するための概略図である。
【図3】洗浄液循環手段の他形態を説明するための概略図である。
【図4】実施例における各条件(N=3)でのサンプルの光沢度の平均値を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1a 未洗浄容器
1b 洗浄中の容器
1c 洗浄済容器
2,2a,2b 予備濯ぎ槽
3,3a,3b,3c 洗浄槽
4 仕上げ濯ぎ槽
5 予備濯ぎ槽の予備タンク
6 仕上げ濯ぎ槽の予備タンク
7 容器搬送手段
10,10a,10b,10c 洗浄液
11,12,12a,12b,12c水又は湯
24 洗浄液循環手段
31 微細気泡発生器
13,14,15 ジェット水流噴射機
21 循環ポンプ
22 配管
23,23a,23b開口部
25 洗浄液の流れ
29 空気取り込み口
30 循環配管
31,31a,31b,31c 微細気泡発生器
32 循環ポンプ
100 容器洗浄機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備濯ぎ槽と、洗浄槽と、仕上げ濯ぎ槽と、未洗浄容器を順次連続的に前記予備濯ぎ槽、前記洗浄槽及び前記仕上げ濯ぎ槽に通過させる容器搬送手段と、前記洗浄槽に蓄えられた洗浄液に流れを生じさせる洗浄液循環手段と、前記洗浄槽の洗浄液中に設置された微細気泡発生器と、を有することを特徴とする容器洗浄機。
【請求項2】
前記微細気泡発生器が、個数平均径又はメディアン径が50μm以下の微細気泡を発生させることを特徴とする請求項1に記載の容器洗浄機。
【請求項3】
前記洗浄液循環手段は、前記洗浄槽に蓄えられた洗浄液を液面より低位置にて吸引し、吐出する循環ポンプ付きの配管であることを特徴とする請求項1又は2に記載の容器洗浄機。
【請求項4】
前記洗浄液循環手段は、前記洗浄槽に蓄えられた洗浄液を低位置から前記洗浄液の液面まで汲み上げる循環ポンプ付きの配管であることを特徴とする請求項1又は2に記載の容器洗浄機。
【請求項5】
前記洗浄液の流れ方向を、前記容器搬送手段の容器搬送方向に対して直交若しくはほぼ直交させていることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の容器洗浄機。
【請求項6】
前記微細気泡発生器が、前記洗浄槽に蓄えられた洗浄液の流れのある箇所にて微細気泡を発生させることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の容器洗浄機。
【請求項7】
前記微細気泡発生器は、洗浄中の容器に対して洗浄液の流れの上流側に配置されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載の容器洗浄機。
【請求項8】
前記容器搬送手段が、洗浄中の容器の開口部を前記微細気泡発生器に対向させるように該容器を搬送することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の容器洗浄機。
【請求項9】
未洗浄容器を順次連続的に予備濯ぎ槽、洗浄槽及び仕上げ濯ぎ槽に通過させて、洗浄済容器とする容器の洗浄方法において、前記洗浄槽で使用する洗浄液を、中性洗浄液、弱酸性洗浄液又は酸性洗浄液とし、前記洗浄液を循環させて、生じた洗浄液の流れの中で微細気泡を発生させることを特徴とする容器の洗浄方法。
【請求項10】
前記容器が、ガラス容器、プラスチック容器、コーティングを施したガラス容器又はコーティングを施したプラスチック容器であることを特徴とする請求項9に記載の容器の洗浄方法。
【請求項11】
前記微細気泡が、個数平均径又はメディアン径が50μm以下の気泡であることを特徴とする請求項9又は10に記載の容器の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−272674(P2008−272674A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119729(P2007−119729)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】