説明

容器蓋材およびその製造方法

【課題】本発明は、内容物充填した容器を密封するためのシール性能と容易に容器蓋を開封することのできる易剥離性能と、容器蓋剤表面に内容物が付着することを防止する性能を併せ持ったヒートシール層を含む容器蓋剤を提供する。
【解決手段】基材とヒートシール層とを含んでなる容器蓋材であって、
基材の容器内容物側にヒートシール層が形成され、前記ヒートシール層の表面粗さが平均で0.8μm以下であり、また表面粗さが最大で7.0μm以下であり、かつ、ヒートシール層を構成するヒートシール剤が、ワックス(A)40〜48重量%、エチレン−不飽和エステル共重合体(B)31〜46重量%、粘着付与剤(C)5%〜19重量%、及びシリコーン(D)0〜2重量%からなる容器蓋材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物がヨーグルト、ゼリー、プリンなどである食品など容器の蓋材において、容器の内容物を密封するヒートシール層からなる容器蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
内容物充填した容器を密封するためのシール性能と容易に容器蓋材を開封することのできる易剥離性能があり、かつ、内容物を容器に充填する工程や内容物を充填密封した容器の輸送時に、容器蓋材内面側表面に内容物が付着するため、消費者が蓋材を開ける時容器蓋材内面側表面に付着した内容物が飛散して手や服を汚す問題が発生することを防止する性能を併せ持った容器蓋材が求められている。
【0003】
特許文献1には、非イオン界面活性剤を含むポリエチレンをヒートシール層に用い、特定層構成のとき、内容物がニュートン流動に近い液状物対しては、ある程度の両性能の両立が可能であることが示されているが、それでも付着したヨーグルトを蓋材内面側表面から落とすために容器を数回以上打ち付ける必要があるのと、内容物がチキソトロピー挙動の大きなヨーグルトである場合には、さらに防止効果が出難くい。ヨーグルトは種類の違いで、流動性が異なることが多く、一般に充填前に発酵を行うヨーグルトは、充填後に発酵を行うヨーグルトよりもチキソトロピー挙動が大きい。付着問題に対しては、特に充填前に発酵を行ったチキソトロピーの大きいヨーグルト(以降「前発酵ヨーグルト」と省略)が問題になる。そして、ヨーグルトが容器蓋材内面側表面に付着する原因としては、冷蔵保存したヨーグルトを輸送あるいは、消費者がヨーグルトを購入後運んでいる際に、容器が横倒し又は逆さまになることで付着することが多く、よって横倒しや逆さまになることを防ぐことができれば付着を防止できる。しかし、消費者が購入した場合には、そのような横倒しや逆さまを防止するのが難しく、内容物が流動性の良くないヨーグルトに対する付着防止の点で、さらに改良が望まれていた。
【特許文献1】特開2002−37310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、内容物充填した容器を密封するためのシール性能と容易に容器蓋を開封することのできる易剥離性と、内容物に前発酵ヨーグルトを用いても容器に充填する工程や内容物を充填密封した容器の輸送時に、容器蓋材表面に内容物が付着することを防止する性能とを併せ持ったヒートシール層を含む容器蓋材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基材とヒートシール層とを含んでなる容器蓋材であって、基材の容器内容物側にヒートシール層が形成され、前記ヒートシール層の表面粗さが平均で0.8μm以下であり、かつ、ヒートシール層を構成するヒートシール剤が、ワックス(A)40〜48重量%、エチレン−不飽和エステル共重合体(B)31〜46重量%、粘着付与剤(C)5%〜19重量%、及びシリコーン(D)0〜2重量%からなる容器蓋材に関する。
【0006】
更に、本発明は、基材とヒートシール層とを含んでなる容器蓋材であって、基材の容器内容物側にヒートシール層が形成され、前記ヒートシール層の表面粗さが最大で7.0μm以下であり、かつ、ヒートシール層を構成するヒートシール剤が、ワックス(A)40〜48重量%、エチレン−不飽和エステル共重合体(B)31〜46重量%、粘着付与剤(C)5%〜19重量%、及びシリコーン(D)0〜2重量%からなる容器蓋材に関する。
【0007】
更に、本発明は、基材とヒートシール層とを含んでなる容器蓋材であって、
基材の容器内容物側にヒートシール層が形成され、前記ヒートシール層の表面粗さが平均で0.8μm以下であり、前記ヒートシール層の表面粗さが最大で7.0μm以下であり、かつ、ヒートシール層を構成するヒートシール剤が、ワックス(A)40〜48重量%、エチレン−不飽和エステル共重合体(B)31〜46重量%、粘着付与剤(C)5%〜19重量%、及びシリコーン(D)0〜2重量%からなる容器蓋材に関する。
【0008】
更に、本発明は、容器が、食品用である上記容器蓋材に関する。
【0009】
更に、本発明は、基材に、ワックス(A)40〜48重量%、エチレン−不飽和エステル共重合体(B)31〜46重量%、粘着付与剤(C)5%〜19重量%、及びシリコーン(D)0〜2重量%からなるヒートシール剤でヒートシール層を形成した後、
前記ヒートシール層を、平滑な面を備えたロールでプレスする、あるいは、
前記ヒートシール層を、離型処理されたフィルムを覆ったのちロールでプレスする上記容器蓋材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、内容物充填した容器を密封するためのシール性能と、容器蓋材表面に内容物が付着することを防止する性能を併せ持った容器蓋材を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、ヒートシール剤とは加熱して接着する感熱接着剤であり、100%固形成分からなる配合物を加熱溶融すると液状または流動性のある半固体となるもので、溶剤を実質的に含有しないものをいう。
【0012】
本発明におけるワックス(A)としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等である。さらに好ましくは、パラフィンワックスである。
【0013】
本発明に用いられる粘着付与剤(C)としては、例えば、ロジン、ロジン誘導体(水素化ロジン、不均化ロジン、ロジンエステル(アルコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどのエステル化ロジンなど))、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂あるいはそれらの水添付加されたもの、テルペン樹脂(α−ピネン、β−ピネン)等である。さらに好ましくは、芳香族系石油樹脂の水添付加されたものである。
【0014】
本発明のヒートシール剤に用いられるエチレン−不飽和エステル共重合体(B)の原料となる不飽和エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニルのようなビニルエステル等である。好ましくは、エチレン−不飽和エステル共重合体(B)としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはエチレン−メタクリル酸メチル共重合体である。
【0015】
本発明のヒートシール剤に用いられるシリコーン(D)は、基材表面とヒートシール層がブロッキングするのを防止するのために用いられ、具体的に、ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0016】
本発明で用いられるヒートシール剤は、(A)、(B)、(C)、(D)以外に、熱劣化、熱分解を防ぐために、高分子ヒンダード・フェノールなどの酸化防止剤を添加しても差し支えない。
【0017】
本発明のヒートシール剤の配合量は、ヒートシール剤全体に対して、ワックス(A)が40重量%以上48重量%以下、エチレン−不飽和エステル共重合体(B)が31重量%以上46重量%以下、粘着付与剤(C)が5重量%以上19重量%以下、シリコーン(D)0重量%〜2重量%以下、好ましくはワックス(A)が43重量%以上48重量%以下、エチレン−不飽和エステル共重合体(B)が36重量%以上46重量%以下、粘着付与剤(C)5重量%以上14重量%以下である。
【0018】
ワックス(A)が40重量%未満では内容物が付着し易くなり、48重量%を越えると接着強度が低くなる。エチレン−不飽和エステル共重合体(B)が46重量%を越えると内容物の付着が多くなる。粘着付与剤(C)が5重量%未満では、接着不良になりやすく、19重量%を超えると内容物の付着が多くなる。シリコーン(D)が2重量%を越えると接着不良になりやすくなる。
【0019】
本発明におけるヒートシール層の表面粗さの平均では、0.8μm以下、好ましくは0.7μm以下である。表面粗さの平均が0.8μmを超えると内容物の付着が多くなる。
【0020】
本発明におけるヒートシール層の表面粗さの最大値では、7.0μm以下、好ましくは6.0μm以下である。表面粗さの最大が7.0μmを超えると内容物の付着が多くなる。
【0021】
表面粗さは、接触式、あるいは、非接触式の公知の表面粗さ計で測定できる。
【0022】
本発明で用いることのできる基材としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、セルロースアセテート、セロハン、紙、木材などが挙げられる。必要に応じて、これら異種の基材がラミネートされたものであってもよい。また、アルミニウムなどが蒸着されたものであってもよい。コロナ処理、エンボス化工、印刷のなどの表面処理がなされたものであってもよい。
【0023】
ヒートシール剤の基材への形成方法としては、共押出の他、リバースコーター、グラビアコーター、ロールコーターやダイ方式などでの塗工があるがどのような形成方法でも差し支えない。溶剤に溶解し塗工した後、加熱乾燥させて溶剤を取り除いてもよい。
【0024】
ヒートシール層の表面を平滑にする方法としては、リバースコーター、ロールコーターやダイ方式においては、塗工面が平滑になるが、塗工後に平滑な面を備えた冷却ロールを用いることでさらに表面を平滑にすることができる。また、そのような冷却ロールが無い場合には、離型処理をしているフィルムを用いて塗工面と熱が掛かったロールプレスでラミネートを行い、冷却後離型フィルムを除くことで表面を平滑にすることができる。
【実施例】
【0025】
以下に本発明を具体的に示す。
【0026】
<ヒートシール剤の作成方法>
表1に示したワックス(A)を攪拌機の備えたステンレスビーカーに加え、内容物が180℃以上にならないように注意して加熱した。溶融したら攪拌を開始し、エチレン−不飽和エステル共重合体(B)、最後に粘着付与剤(C)とシリコーン(D)を添加してヒートシール剤を作成した。
【0027】
<平滑面の作成方法>
PET20μm/AL15μm/PE20μm基材にヒートシール剤約16g/m2をグラビアコーターで塗工したヒートシール層を、離型処理された任意の表面粗さのフィルムを用いてロールでプレスを行うのと同時に、その時のロール温度を調整することで、任意の表面粗さの試料をそれぞれ得た。また、グラビアコーターで塗工したヒートシール層を熱風で加熱後、直ぐに冷却ロールを用いて平滑面も得た。
【0028】
実施例1〜10の平滑面は、離型処理されたニッパ株式会社製の商品名「ニッパシートPET25×2B」を用いて、120℃、0.24MPa、20m/分でロールプレスを行った後冷却し、その後離型処理されたPET25μmフィルムを取り除いて得た。実施例11の平滑面は、グラビアコーターで塗工したヒートシール層を110℃の熱風で加熱後、直ぐに硬質クロームメッキした表面粗さが0.08μmの冷却ロールを用いて得た。
【0029】
<ヒートシール剤の評価方法>
<開封強度>
上記の平滑面の作成方法にて作成した蓋材を100mm×100mmのサイズに断裁後、ゲージ圧0.45MPa,140℃1秒にて任意の量の水を入れた紙/カップ容器にヒートシールし、密封を行った。温度23℃湿度50%の恒温恒湿室に24時間放置し、同恒温恒湿室にて45°角剥離(速度:200mm/分)で測定を行い、最大値を開封強度とした。8N以上必要である。また、10N以下は易剥離性が良好である。
【0030】
<付着の試験>
上記の平滑面の作成方法にて作成した蓋材を100mm×100mmのサイズに断裁後、ゲージ圧0.45MPa,140℃1秒にて任意の量の市販品前発酵ヨーグルトを冷蔵保存から取り出し透明なPPカップに入れ、直ちにヒートシールし密封を行った後、容器を傾けて、蓋表面にヨーグルトが約90%付着させた。その後容器を冷蔵庫内に30分静置した後、蓋材を剥がしてヨーグルトの付着状態を観察した。その時の蓋材にヨーグルトが全く付着していない場合◎、蓋材の10%以下の面績にヨーグルトが付着した場合○、蓋材の90%程度の面積にヨーグルトが付着した場合×とした。
【0031】
<表面粗さの測定>
ビーコインスルメンツ社製DEKTAK8使用した。
測定距離1000μm,測定速度13秒,触針12.5μm,触針圧10mgの条件で測定を行い、平均値と最大値を算出した。
【0032】
【表1】

【0033】

【0034】

【0035】
ワックス1:パラフィンワックス 融点60℃
ワックス2:フィッシャートロプシュワックス 軟化点108℃
EVA :エチレン酢酸ビニル共重合体 酢酸ビニル含有量32%、MFR30g/10分
EMMA :エチレンメタクリレート共重合体 メタクリレート含有量28%、MFR150g/10分
TF1 :C9系完全水添石油樹脂、軟化点100℃
TF2 :ロジンペンタエリスリトールエステル、軟化点100℃




























【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とヒートシール層とを含んでなる容器蓋材であって、
基材の容器内容物側にヒートシール層が形成され、前記ヒートシール層の表面粗さが平均で0.8μm以下であり、かつ、ヒートシール層を構成するヒートシール剤が、ワックス(A)40〜48重量%、エチレン−不飽和エステル共重合体(B)31〜46重量%、粘着付与剤(C)5%〜19重量%、及びシリコーン(D)0〜2重量%からなる容器蓋材。
【請求項2】
基材とヒートシール層とを含んでなる容器蓋材であって、
基材の容器内容物側にヒートシール層が形成され、前記ヒートシール層の表面粗さが最大で7.0μm以下であり、かつ、ヒートシール層を構成するヒートシール剤が、ワックス(A)40〜48重量%、エチレン−不飽和エステル共重合体(B)31〜46重量%、粘着付与剤(C)5%〜19重量%、及びシリコーン(D)0〜2重量%からなる容器蓋材。
【請求項3】
基材とヒートシール層とを含んでなる容器蓋材であって、
基材の容器内容物側にヒートシール層が形成され、前記ヒートシール層の表面粗さが平均で0.8μm以下であり、前記ヒートシール層の表面粗さが最大で7.0μm以下であり、かつ、ヒートシール層を構成するヒートシール剤が、ワックス(A)40〜48重量%、エチレン−不飽和エステル共重合体(B)31〜46重量%、粘着付与剤(C)5%〜19重量%、及びシリコーン(D)0〜2重量%からなる容器蓋材。
【請求項4】
容器が、食品用である請求項1〜3いずれか記載の容器蓋材。
【請求項5】
基材に、ワックス(A)40〜48重量%、エチレン−不飽和エステル共重合体(B)31〜46重量%、粘着付与剤(C)5%〜19重量%、及びシリコーン(D)0〜2重量%からなるヒートシール剤でヒートシール層を形成した後、
前記ヒートシール層を、平滑な面を備えたロールでプレスする、あるいは、
前記ヒートシール層を、離型処理されたフィルムを覆ったのちロールでプレスする請求項1〜4いずれか記載の容器蓋材の製造方法。

【公開番号】特開2008−100736(P2008−100736A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285613(P2006−285613)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【出願人】(591004881)東洋ペトロライト株式会社 (51)
【Fターム(参考)】