説明

対向払拭式ワイパ装置

【課題】ワイパアームがオーバーラン等によりカウルに衝突したときに発する衝突音を低減することである。
【解決手段】DR側のワイパアーム15aとAS側のワイパアーム15bを上反転位置と下反転位置との間で対向的に払拭動作させるとともに、ワイパ装置の停止時にはAS側のワイパアーム15bを下側として各ワイパアーム15a,15bをウインドガラス12の中央下側の停止位置に上下に並べて停止させる。車体のカウル61とAS側のワイパアーム15bとの間にカウル側ストッパ62を設け、DR側のワイパアーム15aとAS側のワイパアーム15bとの間にアーム側ストッパ63,64を設け、これらのストッパ62〜64により各ワイパアーム15a,15bとカウル61との衝突による衝撃を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドガラスを払拭するワイパ装置に関し、特に、一対のワイパアームをウインドガラスの両側部側の上反転位置と中央下側の下反転位置との間で対向的に払拭動作させるようにした対向払拭式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、ウインドガラス(ウインドシールドガラス)に付着した雨、雪、前車の飛沫などの付着物を払拭するためにワイパ装置が設けられている。ワイパ装置は車体に配置されるワイパ軸を有しており、ワイパ軸にはアーム本体とアーム本体の先端に装着されるブレードから成るワイパアームが取り付けられる。また、ワイパ軸はリンク機構を介して車体の内部に配置されたワイパモータに連結され、当該ワイパモータにより揺動駆動されるようになっている。そして、ワイパ軸がワイパモータにより揺動駆動されると、ワイパアームがウインドガラス上の所定の範囲を揺動して、ガラス面を払拭するようになっている。
【0003】
2本のワイパアームを備えたワイパ装置としては、各ワイパ軸を車体の左右両側に配置し、各ワイパアームをウインドガラスの左右両側部側の上反転位置と中央下側の下反転位置との間で対向的に払拭動作させるようにした対向払拭式のものが知られている。このような対向払拭式のワイパ装置では、例えば特許文献1、2に示されるように、ワイパ装置の停止時には、各ワイパアームを下反転位置つまりウインドガラスの中央下側に上下に並べた状態で定置させるようにしている。
【特許文献1】特開2003−220928号公報
【特許文献2】特許第2512590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような対向払拭式のワイパ装置では、各ワイパアームの停止位置をウインドガラスの中央下側に配置するようにしているので、停止位置においては下側のワイパアームはウインドガラスの下端に連なる車体のカウルに近接することになる。そのため、ワイパ装置を停止させるときに、リンク機構に撓み等が生じて下側(助手席側)のワイパアームが停止位置よりも下側にオーバーランした場合には、当該ワイパアームがカウルの先端部分に衝突して衝突音を発するおそれがあった。
【0005】
また、対向払拭式ワイパ装置では、ワイパ装置の停止時には、各ワイパアームを停止位置に上下に並べて配置するようにしているので、リンク機構に撓み等が生じて上側(運転席側)のワイパアームが停止位置よりも下側にオーバーランした場合には、上側のワイパアームが下側のワイパアームに衝突して衝突音を発するおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、ワイパアームがオーバーラン等によりカウルに衝突したときに発する衝突音を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の対向払拭式ワイパ装置は、車体の左右両側に配置される第1と第2のワイパ軸と、それぞれアーム本体とブレードとを備え対応する前記ワイパ軸に取り付けられる第1と第2のワイパアームとを有し、前記第1と第2のワイパアームをウインドガラスの両側部側の上反転位置と中央下側の下反転位置との間で対向的に払拭動作させるとともに、停止時には前記第2のワイパアームを下側として前記第1と第2のワイパアームを前記ウインドガラスの中央下側の停止位置に上下に並べて配置する対向払拭式ワイパ装置であって、前記ウインドガラスの車両進行方向側の端部に連なる前記車体のカウルと前記第2のワイパアームとの間にカウル側衝撃吸収部材を設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明の対向払拭式ワイパ装置は、前記ウインドガラスの車両進行方向側の端部に隣接する前記カウルの端部に前記カウル側衝撃吸収部材を取り付けたことを特徴とする。
【0009】
本発明の対向払拭式ワイパ装置は、前記カウル側衝撃吸収部材は、前記カウルの先端部分に取り付けられる第1のカウル側衝撃吸収片と、前記第2のワイパアームに取り付けられる第2のカウル側衝撃吸収片とから成ることを特徴とする。
【0010】
本発明の対向払拭式ワイパ装置は、前記カウル側衝撃吸収部材は、前記カウルの内部に収納された車体取付部と、前記カウル側衝撃吸収部材の車両進行方向側の端部に取り付けられた衝撃吸収部材取付部とが締結部材によって締結され、前記カウル側衝撃吸収部材は前記カウルの内部から車両進行方向の反対側に向けて外部に突出していることを特徴とする。
【0011】
本発明の対向払拭式ワイパ装置は、前記第1のワイパアームと前記第2のワイパアームとの間にアーム側衝撃吸収部材を設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明の対向払拭式ワイパ装置は、前記アーム側衝撃吸収部材は、前記第1のワイパアームに取り付けられる第1のアーム側衝撃吸収片と、前記第2のワイパアームに取り付けられる第2のアーム側衝撃吸収片とから成ることを特徴とする。
【0013】
本発明の対向払拭式ワイパ装置は、前記衝撃吸収部材をゴムまたは合成樹脂により形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、停止位置において車両進行方向側となる第2のワイパアームと車体のカウルとの間にカウル側衝撃吸収部材を設けるようにしたので、第2のワイパアームがカウルに衝突しても、その衝撃をカウル側衝撃吸収部材により吸収して、衝突音を低減させることができる。また、当該衝突により第2のワイパアームやカウルが破損することを防止することができる。
【0015】
本発明によれば、ウインドガラスの車両進行方向の端部に隣接するカウルの先端部分にカウル側衝撃吸収部材を取り付けるようにしたので、当該衝撃吸収部材によりウインドガラスが遮られることがなく、運転者等の乗員の視界を十分に確保することができる。
【0016】
本発明によれば、カウル側衝撃吸収部材を第1のカウル側衝撃吸収片と第2のカウル側衝撃吸収片とに分けて構成するようにしたので、第2のワイパアームとカウルとが衝突して生じる衝撃をカウル側衝撃吸収部材により効率よく吸収することができる。
【0017】
本発明によれば、カウル側衝撃吸収部材をカウルの内部に収容された車体取付部に締結するようにしたので、カウル側衝撃吸収部材を強固に取り付けることができる。
【0018】
本発明によれば、第1のワイパアームと第2のワイパアームとの間にアーム側衝撃吸収部材を設けるようにしたので、第1のワイパアームと第2のワイパアームとが衝突しても、その衝撃をアーム側衝撃吸収部材により吸収して、衝突音を低減させることができる。また、また、当該衝突により第1のワイパアームや第2のワイパアームが破損することを防止することができる。
【0019】
本発明によれば、アーム側衝撃吸収部材を第1のアーム側衝撃吸収片と第2のアーム側衝撃吸収片とに分けて構成するようにしたので、第1のワイパアームと第2のワイパアームとが衝突して生じる衝撃をアーム側衝撃吸収部材により効率よく吸収することができる。
【0020】
本発明によれば、カウル側衝撃吸収部材やアーム側衝撃吸収部材をゴムまたは合成樹脂により形成するようにしたので、衝突により生じる衝撃を当該衝撃吸収部材により効率よく吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施の形態である対向払拭式ワイパ装置を備えた車両の一部を示す正面図であり、この車両11にはフロントのウインドガラス12(ウインドシールドガラス)に付着した雨水等の付着物を払拭するために、対向払拭式ワイパ装置13(以下、ワイパ装置13とする。)が設けられている。
【0023】
このワイパ装置13は、車体11aの車幅方向の一方の側部側であってウインドガラス12の車両進行方向の端部に配置される運転席側つまりDR側のワイパ軸(第1のワイパ軸)14aと、車体11aの他方の側部側であってウインドガラス12の車両進行方向の端部に配置される助手席側つまりAS側のワイパ軸(第2のワイパ軸)14bとを有している。これらのワイパ軸14a,14bは、それぞれ車体パネルを貫通して車体11aの外部に突出しており、DR側のワイパ軸14aの先端には運転席側つまりDR側のワイパアーム(第1のワイパアーム)15aが取り付けられ、AS側のワイパ軸14bの先端には助手席側つまりAS側のワイパアーム(第2のワイパアーム)15bが取り付けられている。
【0024】
DR側のワイパアーム15aはDR側のワイパ軸14aに取り付けられるアーム本体15a1とアーム本体15a1の先端に装着されるブレード15a2とを備え、AS側のワイパアーム15bはAS側のワイパ軸14bに取り付けられるアーム本体15b1とアーム本体15b1の先端に装着されるブレード15b2とを備えている。アーム本体15a1,15b1にはそれぞれ図示しないバネ部材が内装されており、これらのバネ部材により付勢されて、ブレード15a2,15b2はそれぞれウインドガラス12に弾圧的に接触するようになっている。
【0025】
図1に示すように、各ワイパアーム15a,15bは、ワイパ装置13の停止時には、DR側のワイパアーム15aを上側、AS側のワイパアーム15bを下側としてこれらのワイパアーム15a,15bが上下に近接した状態となって、それぞれウインドガラス12の中央下側の停止位置17a,17bに停止するようになっている。
【0026】
ワイパ装置13が作動すると、DR側のワイパアーム15aは、ブレード15a2がウインドガラス12の一方の側部側の上反転位置18aとウインドガラス12の中央下側であって停止位置17aよりも上側の下反転位置19aとの間の払拭範囲20aをDR側のワイパ軸14aを中心として揺動することにより、当該払拭範囲20aを払拭するようになっている。一方、AS側のワイパアーム15bは、ブレード15b2がウインドガラス12の他方の側部側の上反転位置18bとウインドガラス12の中央下側であって停止位置17bよりも上側且つDR側の下反転位置19aよりも下側の下反転位置19bとの間の払拭範囲20bをAS側のワイパ軸14bを中心として揺動することにより、当該払拭範囲20bを払拭するようになっている。
【0027】
このように、このワイパ装置13の払拭パターンは、一対のワイパ軸14a,14bを車体11aの左右両側に配置し、各ワイパアーム15a,15bをウインドガラス12の左右両側部側の上反転位置18a,18bと中央下側の下反転位置19a,19bとの間で対向的に払拭動作させるようにした対向払拭式となっている。
【0028】
図2は図1に示す対向払拭式ワイパ装置の詳細を示す正面図である。
【0029】
図2に示すように、ワイパ装置13には運転席側つまりDR側のピボットホルダ21aと助手席側つまりAS側のピボットホルダ21bとが設けられ、DR側のワイパ軸14aはDR側のピボットホルダ21aに回転自在に支持され、AS側のワイパ軸14bはAS側のピボットホルダ21bに回転自在に支持されている。これらのピボットホルダ21a,21bは車体パネルの内側において車体11aの左右両側部側に固定されており、これにより、各ワイパ軸14a,14bが車体11aに位置決めされるようになっている。
【0030】
AS側のピボットホルダ21bにはパイプ状のフレーム22の一端が固定され、このフレーム22の他端は車体11aに固定されている。また、フレーム22の長手方向の略中間部にはブラケット23が固定されており、このブラケット23には、各ワイパ軸14a,14bを揺動駆動するためのワイパモータ24が取り付けられている。
【0031】
ワイパモータ24はモータ本体と出力軸24aを備えた減速機とが1つのユニットとして構成された減速機付きモータとなっており、その出力軸24aは正転と逆転の両方向に作動可能となっている。なお、出力軸24aはブラケット23を貫通し、当該ブラケット23の裏側から突出している。
【0032】
ワイパモータ24の出力軸24aの回転運動を揺動運動に変換してそれぞれのワイパ軸14a,14bに伝達するために、ワイパ装置13にはリンク機構31が設けられている。
【0033】
リンク機構31は出力軸24aの先端に固定されるクランクアーム32を有しており、このクランクアーム32の先端には駆動ロッド33の一端が回動自在に連結されている。フレーム22の他端には、3つの連結部34a,34b,34cを備えたY字形状の中間リンク34が各ワイパ軸14a,14bのほぼ中間部に位置して支軸35により回動自在に支持されており、駆動ロッド33の他端はこの中間リンク34の所定の連結部34aにボールジョイント(球体継手)36により回動自在に連結されている。
【0034】
DR側のワイパ軸14aには駆動レバー37aが固定され、この駆動レバー37aの先端には連結ロッド38の一端がボールジョイント(球体継手)39により回動自在に連結され、この連結ロッド38の他端は中間リンク34の所定の連結部34bにボールジョイント(球体継手)41により回動自在に連結されている。また、AS側のワイパ軸14bには駆動レバー37bが固定され、この駆動レバー37bの先端にはサブリンク機構42を介して連結ロッド43の一端がボールジョイント(球体継手)44により回動自在に連結され、この連結ロッド43の他端は中間リンク34の所定の連結部34cにボールジョイント(球体継手)45により回動自在に連結されている。
【0035】
図3は図2に示すサブリンク機構の詳細を示す正面図であり、このサブリンク機構42は先端部が分岐したT字形状に形成されたサブレバー46を有しており、このサブレバー46はAS側のワイパ軸14bに対して車体11aの内側に平行に隣接して配置された揺動軸47に回転自在に支持されている。サブレバー46のT字に分岐した一方の先端部46aには連結ロッド43の一端がボールジョイント44により回動自在に連結され、他方の先端部46bにはピン部材48によりサブリンク51の一端が回動自在に連結され、このサブリンク51の他端がAS側の駆動レバー37bの先端にピン部材52により回動自在に連結されている。
【0036】
AS側の駆動レバー37bはAS側のワイパ軸14bを基点として揺動軸47を避けるようにサブレバー46の側に大きく湾曲した形状に形成されており、各ワイパアーム15a,15bが下反転位置19a,19bにあるときには、サブレバー46とサブリンク51との連結部分(ピン部材48)と揺動軸47とを結ぶ直線Lに対して車体11aの内側にAS側の駆動レバー37bとサブリンク51との連結部分(ピン部材52)が配置されるようになっている。これにより、AS側のワイパ軸14bつまりAS側のワイパアーム15bの下反転位置19bにおける角速度はDR側のワイパ軸14aつまりDR側のワイパアーム15aの下反転位置19aにおける角速度よりも遅く設定されることになり、下反転位置19a,19bから上反転位置18a,18bに向けて移動する各ワイパアーム15a,15bの干渉を防止することができる。
【0037】
リンク機構31には、ワイパ装置13の停止時に下反転位置19a,19bよりも下側の停止位置17a,17bに各ワイパアーム15a,15bを停止させるために、ライズアップ機構53が設けられている。
【0038】
ライズアップ機構53はクランクアーム32と駆動ロッド33との連結部分に設けられており、クランクアーム32に対する駆動ロッド33の連結位置を変化させることにより、当該クランクアーム32の有効長(クランクアーム32に対する駆動ロッド33の回転中心軸から出力軸24aの軸心までの距離)を変化させて、各ワイパ軸14a,14bの揺動角度つまり各ワイパアーム15a,15bの払拭角度(払拭範囲20a,20bの角度)を変更するようになっている。
【0039】
図4(a)〜(c)はライズアップ機構の作動を説明するための説明図であり、ワイパ装置13が作動し、各ワイパアーム15a,15bが通常の払拭動作を行う際には、ライズアップ機構53はクランクアーム32の有効長を短くした状態となる。これにより、図4(a)に示すように、各ワイパアーム15a,15bは上反転位置18a,18bと下反転位置19a,19bとの間の所定の払拭範囲(角度範囲)20a,20bで払拭動作する。
【0040】
各ワイパアーム15a,15bが払拭動作をしているときにワイパスイッチ(不図示)がオフに切り替えられると、ワイパモータ24の出力軸24aが逆転し、これによりライズアップ機構53がクランクアーム32の有効長を長くするように作動して、各ワイパアーム15a,15bの作動範囲(揺動角度)が拡大される。これにより、図4(b)、図4(c)に示すように、各ワイパアーム15a,15bは下反転位置19a,19bを超えて下側に移動し、当該下反転位置19a,19bより下側の停止位置17a,17bに停止する。
【0041】
ここで、図4(c)に示すように、各ワイパアーム15a,15bが停止位置17a,17bに停止したときには、各ブレード15a2,15b2は互いに平行となる。また、これらのブレード15a2、15b2の停止位置17a,17bにおける払拭方向つまり車両上下方向の間隔は、下反転位置19a,19bにおける払拭方向の間隔よりも狭くなっている。つまり、このワイパ装置13では、ライズアップ機構53を用いることにより、各ワイパアーム15a,15bを下反転位置19a,19bよりも下側の停止位置17a,17bに停止させるとともに、停止位置17a,17bにおける各ブレード15a2,15b2の払拭方向の間隔を下反転位置19a,19bにおける当該間隔よりも狭くするようにしている。これにより、ワイパ装置13を停止させた状態のもとでは、各ワイパアーム15a,15bはウインドガラス12の中央下側の部分に互いに平行に接近した状態で並べて配置されることになり、各ワイパアーム15a,15bが間隔を空けて配置される場合に比べてその見栄えをよくすることができる。
【0042】
一方、停止状態からワイパアーム15a,15bの払拭動作が開始されると、図4(c)〜(a)の順で、各ワイパアーム15a,15bは停止位置17a,17bから互いの角度を徐々に傾斜させるとともにその払拭方向の間隔を広げながら下反転位置19a,19bに向けて移動し、当該下反転位置19a,19bに達すると、所定の払拭範囲(角度範囲)20a,20bで払拭動作することになる。
【0043】
図1に示すように、車体11aにはウインドガラス12の下端に連なって当該ウインドガラス12よりも車両前方側の部分を覆うカウル61が設けられている。このカウル61はウインドガラス12に沿って延び、その車両後方側の先端部分はウインドガラス12に隣接し、これにより、当該ウインドガラス12の下端を区画している。AS側のワイパアーム15bがウインドガラス12の中央下側にある停止位置17bに停止すると、当該AS側のワイパアーム15bはカウル61のウインドガラス12に隣接する先端部分に対して所定の間隔を空けて対向するようになっている。そのため、リンク機構31に撓み等が生じ、AS側のワイパアーム15bが停止位置17bを超えてカウル61の側に移動(オーバーラン)すると、AS側のワイパアーム15bがカウル61に衝突し、衝突音を生じるおそれがある。そこで、このワイパ装置13では、AS側のワイパアーム15bとカウル61との間にカウル側衝撃吸収部材としてのカウル側ストッパ62を設けるようにしている。
【0044】
また、ワイパ装置13を停止させた状態のもとでは、各ワイパアーム15a,15bはウインドガラス12の中央下側の部分に互いに平行に接近した状態で並べて配置される。そのため、リンク機構31に撓み等が生じ、DR側のワイパアーム15aが停止位置17aを超えてカウル61の側に移動(オーバーラン)すると、DR側のワイパアーム15aがAS側のワイパアーム15bに衝突し、衝突音を生じるおそれがある。そこで、このワイパ装置13では、DR側のワイパアーム15aとAS側のワイパアーム15bとの間にアーム側衝撃吸収部材としてのアーム側ストッパ63、64を設けるようにしている。
【0045】
図5(a)は図1におけるA−A線に沿う断面図であり、図5(b)は図1におけるB−B線に沿う断面図である。
【0046】
カウル側ストッパ62はゴムまたは合成樹脂によりブロック状に形成されており、図5(a)に示すように、カウル61のウインドガラス12の下端に隣接する先端部分に取り付けられている。カウル側ストッパ62の一端にはストッパ面62aが形成されており、AS側のワイパアーム15bが停止位置17bに停止したときには、ストッパ面62aはAS側のワイパアーム15bの側面に平行となって、当該側面に所定の間隔を空けて対向するようになっている。
【0047】
図5(a)に示すように、アーム側ストッパ63はゴムまたは合成樹脂により平板状に形成されており、AS側のワイパアーム15bのカウル側ストッパ62と対向する側とは反対側の側面にブラケット65を介して固定されている。このアーム側ストッパ63の一端にはストッパ面63aが形成されており、DR側のワイパアーム15aとAS側のワイパアーム15bとが停止位置17a,17bに停止したときには、図5(a)に示すように、ストッパ面63aはDR側のワイパアーム15aの側面に平行となって、当該側面に所定の間隔を空けて対向するようになっている。なお、本実施の形態においては、ストッパ面63aはDR側のワイパアーム15aのブレード15a2に対向する。
【0048】
一方、図5(b)に示すように、アーム側ストッパ64はゴムまたは合成樹脂により平板状に形成されており、DR側のワイパアーム15aのAS側のワイパアーム15bと対向する側の側面にブラケット66を介して固定されている。このアーム側ストッパ64の一端にはストッパ面64aが形成されており、DR側のワイパアーム15aとAS側のワイパアーム15bとが停止位置17a,17bに停止したときには、図5(b)に示すように、ストッパ面64aはAS側のワイパアーム15bの側面に平行となって、当該側面に所定の間隔を空けて対向するようになっている。なお、本実施の形態においては、ストッパ面64aはAS側のワイパアーム15bのブレード15b2に対向する。
【0049】
図6(a)、(b)はそれぞれ各ワイパアームが停止位置を超えて移動したときの各ストッパの状態を示す断面図である。
【0050】
このワイパ装置13では、AS側のワイパアーム15bとカウル61との間にカウル側ストッパ62を設けるようにしたので、ワイパアーム15a,15bを停止位置17a,17bにまで移動させる際に、リンク機構31に撓み等が生じてAS側のワイパアーム15bが停止位置17bを超えてカウル61の側に移動(オーバーラン)しても、図6(a)に示すように、AS側のワイパアーム15bの側面はカウル側ストッパ62のストッパ面62aに当接し、カウル61に直接衝突することがない。したがって、AS側のワイパアーム15bがカウル61へ加える衝撃は、カウル側ストッパ62の弾性変形により吸収され、当該衝突による衝突音が低減されることになる。また、衝突による衝撃がカウル側ストッパ62により吸収されるので、AS側のワイパアーム15bやカウル61に加わる衝撃荷重を低減して、AS側のワイパアーム15bやカウル61が当該衝突により破損することを防止することができる。
【0051】
一方、このワイパ装置13では、DR側のワイパアーム15aとAS側のワイパアーム15bとの間にアーム側ストッパ63,64を設けるようにしたので、ワイパアーム15a,15bを停止位置17a,17bにまで移動させる際に、リンク機構31に撓み等が生じてDR側のワイパアーム15aが停止位置17bを超えてAS側のワイパアーム15bの側に移動(オーバーラン)しても、図6(a)に示すように、AS側のワイパアーム15bに設けられたアーム側ストッパ63のストッパ面63aがDR側のワイパアーム15aの側面に当接するとともに、図6(b)に示すように、DR側のワイパアーム15aに設けられたアーム側ストッパ64のストッパ面64aがAS側のワイパアーム15bの側面に当接して、DR側のワイパアーム15aとAS側のワイパアーム15bとが直接衝突することがない。したがって、DR側のワイパアーム15aとAS側のワイパアーム15bとの間に生じる衝撃は、各アーム側ストッパ63,64の弾性変形により吸収され、当該衝突による衝突音が低減されることになる。また、衝突による衝撃が各アーム側ストッパ63,64により吸収されるので、DR側のワイパアーム15aやAS側のワイパアーム15bに加わる衝撃荷重を低減して、DR側のワイパアーム15aやAS側のワイパアーム15bが当該衝突により破損することを防止することができる。
【0052】
このように、このワイパ装置13では、停止位置17a,17bにおいて下側となるAS側のワイパアーム15bと車体11aのカウル61との間にカウル側ストッパ62を設けるようにしたので、AS側のワイパアーム15bがカウル61に衝突しても、その衝撃をカウル側ストッパ62の弾性変形により吸収して、衝突音を低減させることができる。また、カウル側ストッパ62により当該衝突による衝突荷重を低減させることができるので、当該衝突によりAS側のワイパアーム15bやカウル61が破損することを防止することができる。
【0053】
また、このワイパ装置13では、カウル61の先端部分にカウル側ストッパ62を取り付けるようにしたので、当該ストッパ62によりウインドガラス12が遮られることがなく、運転者等の乗員の視界を十分に確保することができる。
【0054】
さらに、このワイパ装置13によれば、DR側のワイパアーム15aとAS側のワイパアーム15bとの間にアーム側ストッパ63,64を設けるようにしたので、DR側のワイパアーム15aとAS側のワイパアーム15bとが衝突しても、その衝撃をアーム側ストッパ63,64により吸収して、衝突音を低減させることができる。また、アーム側ストッパ63,64により当該衝突による衝突荷重を低減させることができるので、当該衝突によりDR側のワイパアーム15aやAS側のワイパアーム15bが破損することを防止することができる。
【0055】
さらに、このワイパ装置13によれば、各ストッパ62〜64をゴムまたは合成樹脂により形成するようにしたので、衝突により生じる衝撃を当該ストッパ62〜64により効率よく吸収することができる。また、各ストッパ62〜64のコストを低減することができる。
【0056】
図7(a)は図5(a)に示すカウル側ストッパとアーム側ストッパの変形例を示す断面図であり、図7(b)は(a)において各ワイパアームが停止位置を超えて移動したときの各ストッパの状態を示す断面図である。
【0057】
図5(a)に示す場合では、カウル側ストッパ62を一体物として形成し、これをカウル61の先端部分に固定するようにしている。これに対して、図7に示す変形例では、カウル側ストッパ62を、第1のカウル側衝撃吸収片としての第1のカウル側ストッパ片71と第2のカウル側衝撃吸収片としての第2のカウル側ストッパ片72とに分けて構成するようにしている。
【0058】
図7(a)に示すように、第1のカウル側ストッパ片71はカウル61のウインドガラス12の下端に隣接する先端部分に取り付けられ、その一端にはストッパ面71aが形成されている。一方、第2のカウル側ストッパ片72は、AS側のワイパアーム15bのカウルと対向する側の側面にブラケット73を介して固定され、その一端にはストッパ面72aが形成されている。そして、AS側のワイパアーム15bが停止位置17bに停止したときには、図7(a)に示すように、第1のカウル側ストッパ片71のストッパ面71aと第2のカウル側ストッパ片72のストッパ面72aとが互いに平行となって所定の間隔を空けて対向するようになっている。
【0059】
ワイパアーム15a,15bを停止位置17a,17bにまで移動させる際に、リンク機構31に撓み等が生じてAS側のワイパアーム15bが停止位置17bを超えてカウル61の側に移動(オーバーラン)した場合には、図7(b)に示すように、第1のカウル側ストッパ片71のストッパ面71aと第2のカウル側ストッパ片72のストッパ面72aとが当接するようになっている。これにより、AS側のワイパアーム15bがカウル61へ加える衝撃は、第1のカウル側ストッパ片71と第2のカウル側ストッパ片72の弾性変形により吸収され、当該衝突による衝突音が効率よく低減されることになる。
【0060】
同様に、DR側のワイパアーム15aとAS側のワイパアーム15bとの間に設けられるアーム側ストッパ63,64についても、これを2つに分けて構成することができる。例えば、図7(a)に示すように、アーム側ストッパ63を、第1のアーム側衝撃吸収片としての第1のアーム側ストッパ片74と第2のアーム側衝撃吸収片としての第2のアーム側ストッパ片75とに分けて構成し、第1のアーム側ストッパ片74をDR側のワイパアーム15aの側面に固定し、第2のアーム側ストッパ片75をAS側のワイパアーム15bの側面に固定する。これにより、ワイパアーム15a,15bを停止位置17a,17bにまで移動させる際に、リンク機構31に撓み等が生じてDR側のワイパアーム15aが停止位置17bを超えてAS側のワイパアーム15bの側に移動(オーバーラン)しても、図7(b)に示すように、第1のアーム側ストッパ片74のストッパ面74aと第2のアーム側ストッパ片75のストッパ面75aとが当接して、当該衝突による衝突音が効率よく低減されることになる。
【0061】
このように、このワイパ装置13によれば、各ストッパ62〜64を2つのストッパ片71,72,74,75に分けて構成し、互いに衝突する一方と他方の部材にこれらのストッパ片71,72,74,75を分けて配置するようにしたので、衝突により生じる衝撃を各ストッパ片71,72,74,75により効率よく吸収して、衝突音を低減し、また、各部材の破損を防止することができる。
【0062】
図8はカウル側衝撃吸収部材62の取り付け構造の変形例であり、カウル61の内部に収納された車体取付部76と、カウル側衝撃吸収部材62の車両進行方向側の端部に取り付けられた衝撃吸収部材取付部78とが締結部材77(ボルト等)によって締結され、カウル側衝撃吸収部材62はカウル61の内部から車両進行方向の反対側に向けて外部に突出している。このことでカウル側衝撃吸収部材62を強固に取り付けることができる。
【0063】
また、カウル側衝撃吸収部材62は衝撃吸収部材取付部78と一体または別体からなっていてもよい。
【0064】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施の形態においては、リンク機構31にはライズアップ機構53を設けて、各ワイパアーム15a,15bの停止位置17a,17bを下反転位置19a,19bよりも下側に配置するようにしているが、これに限らず、ライズアップ機構53を設けずに下反転位置19a,19bに各ワイパアーム15a,15bを停止させるようにしてもよい。
【0065】
また、前記実施の形態においては、各ストッパ62〜64はワイパアーム15a,15bがオーバーランしたときに当該ワイパアーム15a,15bに当接するように配置されているが、これに限らず、各ワイパアーム15a,15bが停止位置17a,17bに達したときに各ストッパ62〜64を各ワイパアーム15a,15bに当接させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施の形態である対向払拭式ワイパ装置を備えた車両の一部を示す正面図である。
【図2】図1に示す対向払拭式ワイパ装置の詳細を示す正面図である。
【図3】図2に示すサブリンク機構の詳細を示す正面図である。
【図4】(a)〜(c)はライズアップ機構の作動を説明するための説明図である。
【図5】(a)は図1におけるA−A線に沿う断面図であり、(b)は図1におけるB−B線に沿う断面図である。
【図6】(a)、(b)はそれぞれ各ワイパアームが停止位置を超えて移動したときの各ストッパの状態を示す断面図である。
【図7】(a)は図5(a)に示すカウル側ストッパとアーム側ストッパの変形例を示す断面図であり、(b)は(a)において各ワイパアームが停止位置を超えて移動したときの各ストッパの状態を示す断面図である。
【図8】カウル側衝撃吸収部材62の取り付け構造の変形例である。
【符号の説明】
【0067】
11 車両
11a 車体
12 ウインドガラス
13 対向払拭式ワイパ装置
14a DR側のワイパ軸(第1のワイパ軸)
14b AS側のワイパ軸(第2のワイパ軸)
15a DR側のワイパアーム(第1のワイパアーム)
15b AS側のワイパアーム(第2のワイパアーム)
15a1,15b1 アーム本体
15a2,15b2 ブレード
17a,17b 停止位置
18a,18b 上反転位置
19a,19b 下反転位置
20a,20b 払拭範囲
21a DR側のピボットホルダ
21b AS側のピボットホルダ
22 フレーム
23 ブラケット
24 ワイパモータ
24a 出力軸
31 リンク機構
32 クランクアーム
33 駆動ロッド
33a 連結孔
34 中間リンク
34a,34b,34c 連結部
35 支軸
36 ボールジョイント
37a,37b 駆動レバー
38 連結ロッド
39,41 ボールジョイント
42 サブリンク機構
43 連結ロッド
44,45 ボールジョイント
46 サブレバー
46a,46b 先端部
47 揺動軸
48 ピン部材
51 サブリンク
52 ピン部材
53 ライズアップ機構
61 カウル
62 カウル側ストッパ(カウル側衝撃吸収部材)
62a ストッパ面
63,64 アーム側ストッパ(アーム側衝撃吸収部材)
63a,64a ストッパ面
65,66 ブラケット
71 第1のカウル側ストッパ片(第1のカウル側衝撃吸収片)
71a ストッパ面
72 第2のカウル側ストッパ片(第2のカウル側衝撃吸収片)
72a ストッパ面
73 ブラケット
74 第1のアーム側ストッパ片(第1のアーム側衝撃吸収片)
74a ストッパ面
75 第2のアーム側ストッパ片(第2のアーム側衝撃吸収片)
75a ストッパ面
76 車体取付部
77 締結部材
78 衝撃吸収部材取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の左右両側に配置される第1と第2のワイパ軸と、それぞれアーム本体とブレードとを備え対応する前記ワイパ軸に取り付けられる第1と第2のワイパアームとを有し、前記第1と第2のワイパアームをウインドガラスの両側部側の上反転位置と中央下側の下反転位置との間で対向的に払拭動作させるとともに、停止時には前記第2のワイパアームを下側として前記第1と第2のワイパアームを前記ウインドガラスの中央下側の停止位置に上下に並べて配置する対向払拭式ワイパ装置であって、
前記ウインドガラスの車両進行方向側の端部に連なる前記車体のカウルと前記第2のワイパアームとの間にカウル側衝撃吸収部材を設けたことを特徴とする対向払拭式ワイパ装置。
【請求項2】
請求項1記載の対向払拭式ワイパ装置において、前記ウインドガラスの車両進行方向側の端部に隣接する前記カウルの端部に前記カウル側衝撃吸収部材を取り付けたことを特徴とする対向払拭式ワイパ装置。
【請求項3】
請求項1記載の対向払拭式ワイパ装置において、前記カウル側衝撃吸収部材は、前記カウルの先端部分に取り付けられる第1のカウル側衝撃吸収片と、前記第2のワイパアームに取り付けられる第2のカウル側衝撃吸収片とから成ることを特徴とする対向払拭式ワイパ装置。
【請求項4】
請求項1記載の対向払拭式ワイパ装置において、前記カウル側衝撃吸収部材は、前記カウルの内部に収納された車体取付部と、前記カウル側衝撃吸収部材の車両進行方向側の端部に取り付けられた衝撃吸収部材取付部とが締結部材によって締結され、前記カウル側衝撃吸収部材は前記カウルの内部から車両進行方向の反対側に向けて外部に突出していることを特徴とする対向払拭式ワイパ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の対向払拭式ワイパ装置において、前記第1のワイパアームと前記第2のワイパアームとの間にアーム側衝撃吸収部材を設けたことを特徴とする対向払拭式ワイパ装置。
【請求項6】
請求項5記載の対向払拭式ワイパ装置において、前記アーム側衝撃吸収部材は、前記第1のワイパアームに取り付けられる第1のアーム側衝撃吸収片と、前記第2のワイパアームに取り付けられる第2のアーム側衝撃吸収片とから成ることを特徴とする対向払拭式ワイパ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の対向払拭式ワイパ装置において、前記衝撃吸収部材をゴムまたは合成樹脂により形成したことを特徴とする対向払拭式ワイパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−29193(P2009−29193A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193053(P2007−193053)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】