説明

対物レンズ駆動装置

【課題】複数の対物レンズの光軸と光記録媒体との間のタンジェンシャル方向の傾きを精度良く補正して、ディスクの互換性を安定して保つことができる対物レンズ駆動装置を提供する。
【解決手段】DVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11b等を搭載するレンズホルダ11と、レンズホルダ11をサスペンションワイヤ9を介し支持するサスペンションベース12と、サスペンションベース12を支持すると共に、DVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bの中心を結ぶ延長線上に回動軸部13c1,13d1が設けられたヨーク13と、回動軸部13c1,13d1を回動可能に支持する回動軸押さえ部14と、サスペンションベース12に固定されたタンジェンシャル方向揺動支持バネ16と、タンジェンシャル方向駆動用コイル17a,17bおよびタンジェンシャル方向駆動用磁石18a,18bと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DVD/CD用対物レンズやBD用対物レンズ等の波長の異なるレーザ用の複数の対物レンズを介してレーザ光を、BDや、DVD、CD等円盤状情報記録媒体に照射することにより、データを光学的に記録再生または消去等を行う光ピックアップに装備される対物レンズ駆動装置に関する。特に、複数の対物レンズを円盤状情報記録媒体に追従してタンジェンシャル方向にチルトする対物レンズ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
BDや、DVD、CD等の円盤状情報記録媒体(以下、ディスクという。)に光ビームスポットを照射し、ディスク記録面上にピット列で構成される情報を記録再生する光学的情報記録再生装置が知られている。この情報記録再生装置において、対物レンズ駆動装置は、光スポットを形成する対物レンズを駆動するものである。対物レンズ駆動装置は、ディスクの回転に伴い、光スポットとピット列との空間的なずれ、すなわちディスク面ぶれ等の上下運動から発生するフォーカシングずれやディスクの偏心等によるトラッキングずれが発生する。これらを補正するため、対物レンズ駆動装置は、対物レンズをディスク面に対して垂直な方向(以下、フォーカス方向という。)、ディスクの半径方向(以下、トラッキング方向という。)に駆動して、常にスポットがピット列に対して適切に位置するように制御する。
【0003】
このような光学的情報記録再生装置において、ディスクの回転による面ぶれやディスクの撓みにより、ディスク面に対する対物レンズの光軸傾き(以下、チルトという。)が発生する。このチルトは、ディスク円周方向(接線方向)を軸として対物レンズの光軸がディスク半径方向に傾斜するラジアルチルトと、ディスクの半径方向を軸として対物レンズの光軸がディスク円周方向(接線方向)に傾斜するタンジェンシャルチルトとに分解することができる。
【0004】
チルトが発生すると、光学的な収差が対物レンズ開口率の3乗に比例して発生し、記録再生信号の劣化の原因となる。DVDやBD等の高密度記録ディスクにおいては、チルト発生による記録信号の時間軸変動(ジッタ)劣化への影響が増大し、データの正常な記録や再生が困難となる。
【0005】
特に、近年は、赤外レーザや赤色レーザでCDやDVDにデータの記録や再生を行うのみならず、青色レーザ等の短波長レーザを搭載し、短波長レーザ対応の光ディスクにも情報の記録や再生を行うことが求められてきている。そのため、最近の光学的情報記録再生装置では、波長の異なるレーザ用のDVD/CD用対物レンズやBD用対物レンズ等の2個の対物レンズを搭載した対物レンズ駆動装置となっている。光ピックアップの組立時のチルト調整ではどちらか一方の対物レンズにのみ合わせることになるため、チルトのばらつきが大きくなる傾向にある。
【0006】
そこで、従来より、ディスクのそりで発生するラジアル方向の傾きだけでなく、これと直交するタンジェンシャル方向の傾きも補正する対物レンズ駆動装置が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−228281号公報
【特許文献2】特開2000−155970号公報
【特許文献3】特開2000−113482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の背景技術では、対物レンズ駆動装置のボビン内で対物レンズを保持する対物レンズホルダとボビンとを、対物レンズホルダのトラッキング方向両端において一対の弾性連結部材で連結し、対物レンズホルダをトラッキング方向の回転軸を中心にしてチルト可能に支持する。また、タンジェンシャルチルト用板バネまたはタンジェンシャルチルト用ワイヤの中心軸の延長線が対物レンズの主点近傍を通過するように構成する。これにより、タンジェンシャル方向のチルト補正を行うようにしていたため、レンズボビンとレンズの密着性がなくなるので、対物レンズ上で不要な共振が発生してしまう、という問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の背景技術では、フォーカス用サスペンションワイヤとトラッキング用サスペンションワイヤを別々に設けている。また、フォーカス用にはジンバル板バネを用いて、ラジアル傾き方向とともにタンジェンシャル傾き方向にも動くようになっていて、磁気回路を2系統もつバランス型の構成である。これらの駆動力配分を変えることでチルト補正を行うようにしている。しかし、このような構成ではレンズ周りにジンバル板バネを配置して保持しなければならないので、大きなスペースが必要となる。よって、ディスクの最内周まで読み込めるようにするために、スピンドルモータを高さ方向に離して配置する必要が生じ、装置を薄型化できない、という問題がある。
【0010】
また、特許文献3に記載の背景技術では、対物レンズホルダは光を対物レンズへ導く円形空間部とマグネットを挿通する略矩形開口部分と、一端を略矩形開口部分のタンジェンシャル方向に関する中央部に固定されたチルト用弾性部材とを有する。対物レンズ保持筒はチルト用弾性部材を中心としてタンジェンシャル方向に回動可能に支持してタンジェンシャルチルト補正を行っている。このため、このような2重の支持構造とした場合、ラジアル方向の寸法が大きくなってしまい、ラジアル方向に対物レンズを2つ搭載した対物レンズ駆動装置ではスピンドルモータと干渉してしまい、装置の薄型化を達成できない、という問題が生じる。
【0011】
そこで、本発明は、波長の異なるレーザ用の複数の対物レンズの光軸と光記録媒体との間のタンジェンシャル方向の傾きを精度良く補正して、ディスクの互換性を安定して保つことができる対物レンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明に係る対物レンズ駆動装置の第1の特徴は、波長の異なるレーザ用の複数の対物レンズ(11a,11b)と、その複数の対物レンズ(11a,11b)をフォーカス方向およびトラッキング方向に駆動させるフォーカシング駆動用コイル(11c,11d)およびトラッキング駆動用コイル(11e)とを搭載するレンズホルダ(11)と、前記レンズホルダ(11)を、サスペンションワイヤ(12a,12b)を介し支持するサスペンションベース(12)と、前記レンズホルダ(11)および前記サスペンションベース(12)を収容すると共に、前記複数の対物レンズ(11a,11b)の中心を結ぶ延長線上の両側それぞれに、前記延長線の軸回りにタンジェンシャル方向に回動するための回動軸部(13c1,13d1)が設けられたヨーク(13)と、一端がハウジング(2)に固定されると共に、他端が前記ヨーク(13)の前記回動軸部(13c1,13d1)を回動可能に支持する回動軸押さえ部(14)と、一端が前記ハウジング(2)に固定されると共に、他端が前記サスペンションベース(12)に固定されたタンジェンシャル方向揺動支持弾性部材(16)と、前記サスペンションベース(12)の両側に設けられたタンジェンシャル方向駆動用コイル(17a,17b)と、前記タンジェンシャル方向駆動用コイル(17a,17b)に対向する前記ハウジング(2)の内側面に設けられたタンジェンシャル方向駆動用磁石(18a,18b)と、を有することにある。
【0013】
また、前記目的を達成するため、本発明に係る対物レンズ駆動装置の第2の特徴は、前記タンジェンシャル方向揺動支持バネは、前記ハウジング(2)に固定され、タンジェンシャル方向に変形するハウジング側水平バネ部(16a)と、前記サスペンションベース(12)に固定され、タンジェンシャル方向に変形するベース側水平バネ部(16b)と、前記ハウジング側水平バネ部(16a)と前記ベース側水平バネ部(16b)との間を繋ぎ、トラッキング方向とは垂直方向に変位する垂直バネ部(16c)と、を有することにある。
【0014】
また、前記目的を達成するため、本発明に係る対物レンズ駆動装置の第3の特徴は、前記回動軸押さえ部(14)は、その両側から突出した突出押さえ部(14a,14b)により、前記回動軸部(13c1,13d1)をフォーカス方向における一方の方向のみから回動可能に支持する、ことにある。
【0015】
また、前記目的を達成するため、本発明に係る対物レンズ駆動装置の第4の特徴は、前記サスペンションベース(12)の背面には、給電基板(15)が取り付けられており、前記サスペンションベース(12)の左右両側面に設けられたタンジェンシャル方向駆動用コイル(17a,17b)は、前記給電基板(15)からタンジェンシャル方向駆動用の電流が供給される、ことにある。
【0016】
また、前記目的を達成するため、本発明に係る対物レンズ駆動装置の第5の特徴は、さらに、前記レンズホルダ(11)における前記複数の対物レンズ設置部位とは反対側に、前記レンズホルダ(11)のタンジェンシャル方向の回動を調製するためのバランサ(11f)が設けられている、ことにある。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る対物レンズ駆動装置では、複数の対物レンズ等を搭載したレンズホルダおよびサスペンションベースを収容するヨークの先端側には、複数の対物レンズの光軸を結ぶ延長線上にタンジェンシャル方向に回動するための回動軸部を設けると共に、そのヨークの他端側には、一端がハウジングに固定されると共に、他端が対物レンズ駆動装置を介しヨークの反対側であるサスペンションベースに固定されたタンジェンシャル方向揺動支持弾性部材を設け、サスペンションベース両側に設けたタンジェンシャル方向駆動用コイルと、対向するハウジング内側面に設けたタンジェンシャル方向駆動用コイルとにより、ヨーク全体を回動軸部を中心にタンジェンシャル方向に回動させて、複数の対物レンズのタンジェンシャル方向の傾きを制御するようにしたため、対物レンズ単品のタンジェンシャル方向の傾き調整でなくなり、不要な共振が発生する心配もなく、また、回動軸部の支持部材である回動軸押さえ部を複雑な構成とする必要もないので、光ピックアップやドライブのサイズを大きくすることなく小型かつ薄型に構成して、複数の対物レンズの光軸と光記録媒体との間のタンジェンシャル方向の傾きを精度良く補正して低減し、ディスクの互換性を安定して保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る対物レンズ駆動装置1を、光ピックアップ装置のハウジングに実装した状態を示す図である。
【図2】本発明に係る対物レンズ駆動装置1の実施の形態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す対物レンズ駆動装置1の実施の形態の側面を示す側面図である。
【図4】図1に示す対物レンズ駆動装置1の実施の形態の背面を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る対物レンズ駆動装置1の実施の形態について説明する。
【0020】
図1に示すように、実施の形態の対物レンズ駆動装置1は、光ピックアップ装置のヘッドのハウジング2に搭載されるもので、図2〜図4に示すように、レンズホルダ11と、サスペンションベース12と、ヨーク13と、回動軸押さえ部14と、給電基板15と、タンジェンシャル方向揺動支持バネ16と、タンジェンシャル方向駆動用コイル17a,17bと、タンジェンシャル方向駆動用磁石18a,18bと、を有する。
【0021】
レンズホルダ11は、DVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bと、フォーカシング駆動用コイル11c,11dと、トラッキング駆動用コイル11eとを搭載する。DVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bは、ディスク3(図3参照。)の種類に応じて、DVD/CD規格用の赤色レーザまたは赤外レーザやBD規格用の青色レーザ光等の波長の異なるレーザ光をディスク3に照射する。フォーカシング駆動用コイル11c,11dは、そのDVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bを支持するレンズホルダ11全体をディスク3(図3参照。)に向かうフォーカス方向Aに駆動させる。トラッキング駆動用コイル11eは、そのレンズホルダ11全体をディスク3(図3参照。)の半径方向であるトラッキング方向(ラジアル方向)Bに駆動させる。
【0022】
また、レンズホルダ11において、サスペンションベース12に対向する後側面には、レンズホルダ11全体の重量バランスや製品間のバラツキ等を調整する任意の重量のバランサ11fが設けられている。なお、このバランサ11fは、任意的なもので、本発明では、省略してもよい。
【0023】
サスペンションベース12は、レンズホルダ11の両側面を、それぞれ、弾性を有する変位自在のサスペンションワイヤ12a,12bを介し支持するものである。ここで、本実施の形態のサスペンションベース12では、レンズホルダ11に対向する前側面側には、凹部12cを形成している。この凹部12cにおいて、レンズホルダ11のバランサ11fがサスペンションベース12に接触しないように位置させている。このため、本実施の形態のサスペンションベース12では、前側面側に凹部12cが形成されているので、レンズホルダ11の後側面にバランサ11fを設けても、レンズホルダ11の後側面と、サスペンションベース12の前側面との間の距離を短くすることが可能となる。この点で、対物レンズ駆動装置1全体を小型化することができる。
【0024】
ヨーク13は、その上面にサスペンションベース12が取り付けられ、レンズホルダ11およびサスペンションベース12を収容するものである。従って、ヨーク13は、サスペンションベース12両側のサスペンションワイヤ12a,12bを介し、レンズホルダ11を宙に浮かせた状態で、上下方向であるフォーカス方向Aに変位自在に支持している。
【0025】
また、ヨーク13の上面中央には、フォーカス及びトラッキング駆動用のフォーカス・トラッキング駆動用マグネット13a,13bが設けられている。フォーカス・トラッキング駆動用マグネット13a,13bは、レンズホルダ11に設けられたフォーカシング駆動用コイル11c,11dおよびトラッキング駆動用コイル11eの前後両側に位置するように設けられている。フォーカス・トラッキング駆動用マグネット13a,13bとフォーカシング駆動用コイル11c,11dおよびトラッキング駆動用コイル11eとの間で発生する磁場により、レンズホルダ11全体をフォーカス方向Aおよびトラッキング方向Bに独立して駆動させる。
【0026】
さらに、ヨーク13におけるDVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bの両側に対向する上面両側から起立したレンズ側起立側面13c,13dが設けられている。このレンズ側起立側面13c,13dにおけるDVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bそれぞれの中心を結ぶ延長線上には、それぞれ、レンズホルダ11全体をタンジェンシャル方向E(図3参照。)に回動するための円柱状の回動軸部13c1,13d1が設けられている。そして、このヨーク13の回動軸部13c1,13d1は、一端がハウジング2にネジ141により固定された回動軸押さえ部14両側から突出した突出押さえ部14a,14bにより、図上上方向、すなわちフォーカス方向Aにおける一方の方向のみから回動可能に支持されている。
【0027】
ここで、本実施の形態の対物レンズ駆動装置1では、ヨーク13の回動軸部13c1,13d1を、軸受け孔等による回動支持ではなく、回動軸押さえ部14の両側から突出した平板状の突出押さえ部14a,14bにより上方向からのみから回動可能に支持している。これにより、簡単な構成で、レンズホルダ11およびサスペンションベース12等を収容したヨーク13全体を、その回動軸部13c1,13d1を中心にタンジェンシャル方向に回動させることができる。即ち、B軸(図2参照。)回りに回動させることができる。ただし、本発明では、ヨーク13の回動軸部13c1,13d1を回動軸押さえ部14両側の平板状の突出押さえ部14a,14bにより図上上方向のみから回動可能に支持する必要はない。例えば、軸受け孔等によりレンズホルダ11およびサスペンションベース12等を収容しているヨーク13全体を回動可能に支持するようにしても良い。
【0028】
また、ヨーク13におけるレンズ側起立側面13c,13dとは反対側となるサスペンションベース12側の上面両側には、起立したベース側起立側面13e,13fが設けられている。そして、このベース側起立側面13e,13fには、それぞれ、ヨーク13全体をタンジェンシャル方向E(図3参照。)に傾けるためのタンジェンシャル方向駆動用コイル17a,17bが取り付けられている。そして、このタンジェンシャル方向駆動用コイル17a,17bに対向するハウジング2(図1参照。)の両内側面には、タンジェンシャル方向駆動用コイル17a,17bとの間で発生する磁場によりヨーク13全体をタンジェンシャル方向(図3参照。)に駆動するためのタンジェンシャル方向駆動用磁石18a,18bが設けられている。
【0029】
そして、ヨーク13の上面に固定されたサスペンションベース12の後側面には、タンジェンシャル方向駆動用コイル17a,17bやフォーカシング駆動用コイル11c,11dおよびトラッキング駆動用コイル11e等に給電する給電基板15が取り付けられている。給電基板15には、サスペンションベース12を貫通したサスペンションワイヤ12a,12bが接続されている。
【0030】
ここで、本実施の形態の対物レンズ駆動装置1では、ヨーク13のベース側起立側面13e,13fに設けられたタンジェンシャル方向駆動用コイル17a,17bと、サスペンションベース12の後側面の設けられた給電基板15との間の距離は、図2〜図4に示すように、とても近接している。このため、タンジェンシャル方向駆動用の電流を確実かつ簡単な構成で供給することができる共に、装置を小型化することができる。また、本実施の形態の対物レンズ駆動装置1では、タンジェンシャル方向E(図3参照。)の駆動部であるタンジェンシャル方向回動駆動用磁石18a,18bおよびタンジェンシャル方向回動駆動用コイル17a,17bは、ハウジング2とサスペンションベース12のベース側起立側面13e,13fとの間のピックアップの空きスペースに設けられる。この点でも、小型で薄型の光ピックアップを構成することができる。なお、サスペンションワイヤ12a,12bを、金属性のワイヤスプリングや板バネから構成してもよい。これにより、給電基板15からサスペンションワイヤ12a,12bを介してフォーカシング駆動用コイル11c,11dおよびトラッキング駆動用コイル11e等に給電することができる。
【0031】
また、ヨーク13の上面に固定されたサスペンションベース12の後側面には、給電基板15を介して、タンジェンシャル方向E(図3参照。)におけるヨーク13全体の傾き姿勢の調整と保持を行うためのタンジェンシャル方向揺動支持弾性部材であるタンジェンシャル方向揺動支持バネ16の一端がネジ161等により固定されている。タンジェンシャル方向揺動支持バネ16の他端は、ハウジング2にネジ162等により固定される。
【0032】
そのため、給電基板15を介して、タンジェンシャル方向駆動用コイル17a,17bにタンジェンシャル方向駆動電流が供給されると、ヨーク13はタンジェンシャル方向揺動支持バネ16の弾性力に抗した状態を維持しつつ、ヨーク13のサスペンションベース12側がタンジェンシャル方向駆動電流の大きさに応じて図3の矢印D方向(図3参照。)に撓むので、レンズホルダ11およびサスペンションベース12等を収容しているヨーク13全体をヨーク13の回動軸部13c1,13d1を中心に、タンジェンシャル方向E(図3参照。)に回動させることができる。これにより、2つのDVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bをそれらの中心を結ぶ延長線上に位置する回動軸部13c1,13d1を中心に、即ちB軸周りに回動させて、2つのDVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bのタンジェンシャル方向Eの傾きを調整することができる。
【0033】
その結果、レンズホルダ11とは独立させてDVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bのレンズのみを単独でタンジェンシャル方向に回動させるのではなく、レンズホルダ11およびサスペンションベース12等を収容しているヨーク13全体を、DVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bそれぞれの中心を結ぶ延長線上に設けられた回動軸部13c1,13d1を中心にタンジェンシャル方向E(図3参照。)に回動させる。このため、DVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bにおける不要な共振の発生等を低減することができる。
【0034】
特に、ヨーク13全体がタンジェンシャル方向E(図3参照。)に回動するための駆動は、DVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bとは遠く離れたサスペンションベース12の後部の後側面に設けたタンジェンシャル方向駆動用コイル17a,17bと、そのタンジェンシャル方向駆動用コイル17a,17bに対向したハウジング2側に設けられたタンジェンシャル方向駆動用磁石18a,18bとにより行っている。このため、タンジェンシャル方向Eの傾きを調整する際に、タンジェンシャル方向揺動支持バネ16が矢印D方向(図3参照。)に撓んだ際に生じる不要な振動がDVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bに伝達することを低減することができ、より細かい精度の高いタンジェンシャル方向への傾斜補正を実行することが可能となる。
【0035】
また、ヨーク13全体がタンジェンシャル方向に回動した際の復元を、DVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bとは遠く離れたサスペンションベース12の後側面に固定されたタンジェンシャル方向揺動支持バネ16の弾性力により行っている。この点でも、タンジェンシャル方向揺動支持バネ16の撓みが開放された際に生じる不要な振動がDVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bに伝達することを低減することができ、より細かい精度の高いタンジェンシャル方向への傾斜補正を実行することが可能となる。
【0036】
また、本実施の形態の対物レンズ駆動装置1では、サスペンションベース12の後側面に固定されたタンジェンシャル方向揺動支持バネ16は、図2〜図4等に示すように、タンジェンシャル方向に変形または変位等するハウジング側水平バネ部16aとベース側水平バネ部16bとの間に、ディスク3(図3参照。)の接線方向、すなわちトラッキング方向Bとは垂直の矢印C方向(図2参照。)に変位する垂直バネ部16cとを有する。
【0037】
そのため、ヨーク13全体が回動軸部13c1,13d1を中心にタンジェンシャル方向に回動した時に、垂直バネ部16cが矢印C方向(図2参照。)に変形し、ヨーク13全体のタンジェンシャル方向Eの回動をスムーズに実行させることができる。なお、本実施の形態では、タンジェンシャル方向揺動支持弾性部材として板バネ状のタンジェンシャル方向揺動支持バネ16を使用したが、本発明では、これに限らず、ワイヤやスプリングなどを使用しても勿論よい。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態の対物レンズ駆動装置1によれば、ディスク3に対して軸C回りの傾きであるラジアルチルトや軸B回りの傾きであるタンジェンシャルチルトを、記録再生対象のディスク3に合わせて精度良く補正することができ、良好な記録再生を行うことができる。例えば、BD用対物レンズ11aに対して光ディスク装置組立時の調整が行われている場合、DVD/CD用対物レンズ11bに発生するレンズ搭載等の組立ばらつきによる相対チルトズレに対しても補正を行うことができ、多種類のディスクに対して良好な記録再生を行うことが可能となる。
【0039】
その結果、前述の特許文献1(特開2006−228281号公報)に記載された背景技術とは異なり、DVD/CD用対物レンズ11aおよびBD用対物レンズ11bがレンズボビンやレンズホルダ11に対し動くという対物レンズ単品の可動式でないので、タンジェンシャルチルト補正を行う際、不要な共振の発生を極力低減化することができる。また、前述の特許文献2(特開2000−155970号公報)や、特許文献3(特開2000−113482号公報)とは異なり、回動軸部13c1,13d1の支持部材である回動軸押さえ部14を単純に構成することができ、複雑な構成とする必要もない。このため、対物レンズ駆動装置1や光ピックアップ装置、光ドライブ装置のサイズを大きくすることなく小型かつ薄型に構成できる。
【0040】
最後に、上述の実施の形態は、本発明の一例である。このため、本発明は上述の実施の形態に限定されることはなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論であることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0041】
1 対物レンズ駆動装置
11 レンズホルダ
11a DVD/CD用対物レンズ
11b BD用対物レンズ
11c,11d フォーカシング駆動用コイル
11e トラッキング駆動用コイル
11f バランサ
12 サスペンションベース
12a,12b サスペンションワイヤ
13 ヨーク
13a,13b フォーカス・トラッキング駆動用マグネット
13c,13d レンズ側起立側面
13c1,13d1 回動軸部
13e,13f ベース側起立側面
14 回動軸部押さえ部
14a,14b 突出押さえ部
15 給電基板
16 タンジェンシャル方向揺動支持バネ
16a ハウジング側水平バネ部
16b ベース側水平バネ部
16c 垂直バネ部
17a,17b タンジェンシャル方向回動駆動用コイル
18a,18b タンジェンシャル方向駆動用磁石
2 ハウジング
3 ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長の異なるレーザ用の複数の対物レンズと、前記複数の対物レンズをフォーカス方向およびトラッキング方向に駆動させるフォーカシング駆動用コイルおよびトラッキング駆動用コイルとを搭載するレンズホルダと、
前記レンズホルダを、サスペンションワイヤを介し支持するサスペンションベースと、
前記レンズホルダおよび前記サスペンションベースを収容すると共に、前記複数の対物レンズの中心を結ぶ延長線上の両側それぞれに、前記延長線の軸回りにタンジェンシャル方向に回動するための回動軸部が設けられたヨークと、
一端がハウジングに固定されると共に、他端が前記ヨークの前記回動軸部を回動可能に支持する回動軸押さえ部と、
一端が前記ハウジングに固定されると共に、他端が前記サスペンションベースに固定されたタンジェンシャル方向揺動支持弾性部材と、
前記サスペンションベースの両側に設けられたタンジェンシャル方向駆動用コイルと、
前記タンジェンシャル方向駆動用コイルに対向する前記ハウジングの内側面に設けられたタンジェンシャル方向駆動用磁石と、
を有することを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の対物レンズ駆動装置において、
前記タンジェンシャル方向揺動支持バネは、
前記ハウジングに固定され、タンジェンシャル方向に変形するハウジング側水平バネ部と、
前記サスペンションベースに固定され、タンジェンシャル方向に変形するベース側水平バネ部と、
前記ハウジング側水平バネ部と前記ベース側水平バネ部との間を繋ぎ、トラッキング方向とは垂直方向に変位する垂直バネ部と、
を有することを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の対物レンズ駆動装置において、
前記回動軸押さえ部は、
その両側から突出した突出押さえ部により、前記回動軸部をフォーカス方向における一方の方向のみから回動可能に支持する、
ことを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一の請求項に記載の対物レンズ駆動装置において、
前記サスペンションベースの背面には、給電基板が取り付けられており、
前記サスペンションベースの左右両側面に設けられたタンジェンシャル方向駆動用コイルは、前記給電基板からタンジェンシャル方向駆動用の電流が供給される、
ことを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一の請求項に記載の対物レンズ駆動装置において、
さらに、
前記レンズホルダにおける前記複数の対物レンズ設置部位とは反対側に、前記レンズホルダのタンジェンシャル方向の回動を調製するためのバランサが設けられている、
ことを特徴とする対物レンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−174316(P2012−174316A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36879(P2011−36879)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】