説明

専用に設定されているパルスバースト

シードソースとシードソースに結合されている光増幅器とを有している光学システムからの出力パルスは、シードソースからのシード信号のパワーを制御することによって制御できる。シード信号は、シード信号が1つまたは2つ以上のパルスバーストを示すように最小値と最大値との間で変化させることができる。各パルスバーストは1つまたは2つ以上のパルスを含んでもよい。パルスバースト内の連続しているパルスの間、または連続しているパルスバースト間のパルス間期間中に、シード信号のパワーを最小値よりも大きく且つ最大値よりも小さい中間値に調整することができる。中間値はその期間に続くパルスまたはパルスバーストが所望の挙動を示すように光増幅器内の利得を制御するように選択されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の利益の主張
本出願は、参照によって本明細書に全内容が援用される、2009年7月21日付けで出願された米国特許出願第12/506,849号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明の実施形態は、一般にレーザと光増幅器に関し、材料処理用途に適している高いピークパワーとパルスエネルギーとを有する波長変換光学システムに特に関する。
【背景技術】
【0003】
現在のダイオード励起固体(DPSS)レーザは動作パラメータの狭い範囲にわたってのみ安定して動作する。指定された範囲内でさえ、ビームポイントおよびビームサイズなどのパラメータは変化する。現在のレーザ用途では、可干渉光の頂部が平坦なパルスバーストが有利である。頂部が平坦ということは、パルスはパルスのグループ内で比較的一貫したパルス高であることを意味している。そのような頂部が平坦なパルスバーストは、レーザキャビティが不安定な場合や連続して動作しない場合は、必要な音声/光学変調器または内部Qスイッチなどの高速な外部変調器を使用して通常生成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし外部変調器と内部Qスイッチとは、両方が扱いにくく実装が高価になる。
本発明の実施形態が生じるのはこのような状況である。
本発明の他の目的と利点とは、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことで明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本発明の実施形態の光学システムの模式図である。
【図2】定常パルス状態でのパワー増幅器の挙動を示しているタイミング図である。
【図3】初期利得が過度の場合、初期利得が整合している場合、および初期利得が不足している場合のパルスバーストを示しているタイミング図である。
【図4】頂部が平坦なパルスバースト内のシードソース電力の対数、パワー増幅器の出力の対数、およびパワー増幅器の非飽和利得の対数を示しているタイミング図である。
【図5】頂部が平坦なパルスバースト内のパルスバースト間の休止期間中のシードソースパワーが一定値の場合の、シードソースパワーの対数、パワー増幅器の出力の対数、およびパワー増幅器の非飽和利得の対数を示しているタイミング図である。
【図6】頂部が平坦なパルスバーストについてパルスバースト間の休止期間中のシードソースパワーが傾斜してそれから一定値の場合の、シードソースパワーの対数、パワー増幅器の出力の対数、およびパワー増幅器の非飽和利得の対数を示しているタイミング図である。
【図7】最初の専用に設定されているパルスバーストとそれに続く頂部が平坦なパルスバーストとを示しており、シードソースパワーの対数、パワー増幅器の出力の対数、およびパワー増幅器の非飽和利得の対数を示している一連のパルスバーストのタイミング図である。
【図8】垂直方向が線形目盛りの、専用に設定されているパルスバーストとそれに続く頂部が平坦なパルスバーストについてのパワー増幅器の出力を示している一連のパルスバーストのタイミング図である。
【図9】本発明の実施形態のパルスバーストを発生する電子制御システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の詳細な説明には説明のための多くの具体的な詳細が含まれているが、以下の詳細の多くの変形と代替が本発明の範囲において存在することを当業者は理解するであろう。それに応じて、以下で説明する本発明の典型的な実施形態を、請求する発明の一般性を失うことなく、また制限することなく示す。
【0007】
用語:
本明細書で使用する場合
ビームスプリッタは、光のビームを2つまたは3つ以上の部分に分離することができる光学装置を指す。
【0008】
ブリルアン散乱は、媒体を通過する光と音波との間の相互作用による媒体中の光の自然散乱が伴う非線形光学現象を指す。
キャビティまたは光学共振キャビティは、光が往復または循環できる2つまたは3つ以上の反射表面によって定められている光路を指す。光路に交差する物体は、キャビティ内にあると言う。
【0009】
チャーピングは、光源の発光波長の長期的なドリフトとは反対の急速な変化を指す。
連続波(CW)レーザは、パルス状レーザにおいてのような短いバーストではなく連続的に発光するレーザを指す。
【0010】
デューティーサイクル(D)は、規則的な間隔で発生するパルスについてパルス持続期間τとパルス繰り返し周波数(PRF)との積を指す。デューティーサイクルは、0.01などの比として表したり、等価的にたとえば1%などのパーセントとして表したりすることができる。
【0011】
ダイオードレーザは、誘発発光を使用して可干渉光出力を発生するように構成されている発光ダイオードを指す。ダイオードレーザはレーザダイオードまたは半導体レーザとしても知られている。
【0012】
ダイオード励起レーザは、ダイオードレーザによって励起される利得媒体を有しているレーザを指す。
利得は、一点から他の点に増幅器を通して伝達される信号の強度、パワー、またはパルスエネルギーの増加を指す。「非飽和利得」という用語は、増幅器における反転準位を著しく変化させない増幅器を通過する小信号の増加を指す。本明細書で使用される場合、利得と非飽和利得とは、互換的に使用されることになる。
【0013】
利得媒体は、レーザについて以下で説明するように光学利得を発生することができる材料を指す。
ガーネットは、たとえばイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、ガドリニウムガリウムガーネット(GGG)、ガドリニウムスカンジウムガリウムガーネット(GSGG)、イットリウムスカンジウムガリウムガーネット(YSGG)などの酸化結晶の特定のクラスを指す。
【0014】
赤外線放射は、真空波長が約700ナノメートル(nm)と約100,000nmとの間の電磁放射を指す。
レーザは、励起誘導放射による光増幅の頭字語である。レーザはレーザ発生可能材料を含んでいるキャビティである。つまり、たとえば光または電荷によって励起することによって原子が準安定な状態に励起可能な水晶、ガラス、液体、半導体、染料、または気体な
どの任意の材料である。光は準安定な状態から基底状態に戻るときに物質によって放射される。発光は通過する光子の存在によって励起され、それによって放出された光子が励起させる光子と同じ位相と方向とを有すことになる。光(本明細書では励起放射を指す)はキャビティ内で振動し、一部がキャビティから放射されて出力ビームを形成する。
【0015】
光:本明細書で使用される場合、「光」という用語は、赤外線から紫外線からまでの約1ナノメートル(10−9メートル)から約100ミクロンまでの真空波長の範囲に概ね対応する周波数の範囲の電磁放射を一般に指す。
【0016】
モード同期レーザは、高いピークパワーでたとえばピコ秒(10−12秒)の程度の短い持続期間のエネルギーバーストを選択的に内部で発生させるように各モードの相対位相を(場合によって時間に対する変調によって)制御することによって機能するレーザを指す。
【0017】
非線形効果は、レーザによって発生するようなほぼ単色の方向性のある光のビームを使用してのみ見ることが通常可能な光学現象の種類を指す。高調波の発生(たとえば第2、第3、および第4の高調波の発生)、光パラメトリック発振、和周波数の発生、差周波数の発生、光パラメトリック増幅、誘導ラマン効果は非線形効果の例である。
【0018】
非線形光波長変換プロセスは、非線形媒体を通過する所与の真空波長λの入力光が、入力光とは異なる真空波長を有する出力光を発生するように媒体および/または媒体を通過する他の光と相互作用する非線形光学プロセスである。非線形波長変換は非線形周波数変換と等価であり、それは2つの値が真空中の光の速度によって関連しているからである。両用語は、互換的に使用してもよい。非線形光波長変換には以下が含まれる:
高調波発生(HHG)、たとえば第2高調波発生(SHG)、第3高調波発生(THG)、第4高調波発生(FHG)等で、入力光の2つまたは3つ以上の光子が周波数Nfを有している出力光の光子を生成するように相互作用し、ここでNは相互作用する光子の数である。たとえば、SHGにおいてはN=2である。
【0019】
和周波数発生(SFG)では、周波数fの入力光の光子が周波数fの他の入力光の光子と周波数がf+fの出力光の光子を生成するように相互作用する。
差周波数発生(DFG)では、周波数fの入力光の光子が、周波数がf−fの出力光の光子を生成するように、周波数fの他の入力光の光子と相互作用する。
【0020】
非線形材料は非線形な効果を引き起こす可能性のある光学放射に対する非零の非線形誘電応答を有している材料を指す。非線形材料の例には、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、三ホウ酸リチウム(LBO)、β‐ホウ酸バリウム(BBO)、ホウ酸セシウムリチウム(CLBO)、KDPおよびその同類形態、LiIOに加えて、PPLN、PPSLT、PPKTPなどの擬似位相整合材料などがある。光ファイバもファイバ内に微小構造を構成することによって光学放射に対して非線形応答をするようにすることができる。
【0021】
光増幅器は、入力光信号のパワーを増幅する装置を指す。光増幅器は、励起放射によって駆動される利得媒体を使用する点がレーザと同様である。増幅器は、概ねフィードバック(つまりキャビティ)が無いので、利得はあるが、発振はしない。本明細書で使用する場合、光パワー増幅器は増幅されたビームを目標または波長変換器に伝える前の最後の光増幅器を一般に指す。放射源とパワー増幅器との間の増幅段階は、本明細書では前置増幅器と一般に呼ぶ。
【0022】
位相整合は、波の間のエネルギーのコヒーレント伝達が可能な距離を増加させる多波非線形光プロセスで使用される技法を指す。たとえば、3波プロセスは、kがプロセスに
関連しているi番目の波の波ベクトルで、k+k=kの場合、位相整合していると言える。たとえば周波数逓倍において、基本波と第2高調波の位相速度が整合しているときにプロセスは最も効果的である。通常、位相整合状態は、非線形材料中の光波長、分極状態、および伝搬方向を注意深く選択することによって達成される。
【0023】
パルス持続期間(τ)は、パルスの立ち上がりと立ち下がりの半分のパワーの点の間の時間間隔など、繰り返し信号の時間持続期間つまり寿命を指す。パルス持続期間は、「パルス幅」とも呼ばれる。
【0024】
パルスエネルギーは、パルス内のエネルギーの量を指す。パルスエネルギーは、パルス期間にわたって瞬間パルスパワーを積分することによって計算してもよい。
パルス期間(T)は、2つまたは3つ以上のパルスの列において連続しているパルスの同じ点の間の時間を指す。
【0025】
パルス繰り返し周波数(PRF)は、単位時間あたりのパルスの繰り返し回数を指す。PRFは、期間Tに逆に関連しており、たとえば、PRF=1/Tである。
Qは共振器(キャビティ)の性能指数を指し、(2π)×(共振器に保存されている平均エネルギー)/(サイクルあたり散逸するエネルギー)と定義される。光共振器の表面の反射率が高くなり、吸収損失が減少するほど、Qが増加し、所望のモードからのエネルギー損失が減少する。
【0026】
Qスイッチは、光共振器のQを急速に変更するために使用される装置を指す。
Qスイッチレーザは、レーザ発生媒体において高準位の反転(光学利得とエネルギー蓄積)が達成されるまで、レーザ発生作用を防止するためにレーザキャビティ内のQスイッチを使用するレーザを指す。スイッチが音響光学変調器または電気光学変調器または可飽和吸収体によってキャビティのQを急速に増加させたときに、大きなパルスが発生する。
【0027】
疑似CWは、連続しているように見えるように十分に高い繰り返し率で連続しているパルスの発生を指す。
疑似位相整合(QPM)材料:疑似位相整合材料において、基本波の放射と高調波の放射とを、材料の非線形係数の符号を定期的に変化させることによって位相整合させている。符号の変化の期間(kQPM)によって、kQPM+k+k=kのように追加の項が位相整合方程式に追加される。QPM材料において、基本波と高調波とは、同一の分極を有することがあり、効率を改善することが多い。疑似位相整合材料の例には周期分極ニオブ酸タンタル(PPLT)、周期分極ニオブ酸リチウム(PPLN)、周期分極低比組成ニオブ酸タンタル(PPSLT)、周期分極チタンリン酸カリウム(PPKTP)または周期分極微細構造ガラス繊維がある。
【0028】
ラマン散乱は、散乱光が入射光よりも低い周波数を有している材料による入射光の散乱を指す。入射光と散乱光との間の周波数の違い(ラマンシフトと呼ぶ)は分散材料の固有振動周波数に対応している。
【0029】
光増幅器の飽和は、何らかの遷移周波数の近傍の入射放射が特定の値を超えた場合にその周波数の近傍での媒体の利得係数の減少を指す。利得係数が一定の場合、媒体が放射するパワーは入射パワーに比例する。しかし、利得媒体がパワーを放射できる割合には限界が通常存在する。この限界は関連しているエネルギー順位の寿命に依存している。この限界に到達すると、誘導遷移は、上位のエネルギー順位の占有数を著しく低下させるのに十分に急速になり、利得係数を減少させる。その効果は、入力パワーの関数として増幅されたパワーを「平坦にする」ことである。
【0030】
誘導ブリルアン散乱は、強烈な光が結晶格子内で超音波を発生させる結晶格子の変形を引き起こす増幅プロセスの種類を指す。
誘導ラマン散乱(SRS)は、強力な光ビームを伴って発生する可能性があるラマン散乱の一種である。ラマン散乱光は利得を得て、そのパワーは指数関数的に増加する。入力光のパワーが閾値を超えると、入射光の大部分が、入射光よりも周波数が低いラマン散乱光に変換される。SRSは、誘導ラマン効果またはコヒーレントラマン効果としても知られていることがある。
【0031】
紫外(UV)放射は、可視領域よりも短いが軟X線よりも長い真空波長によって特徴付けられる電磁放射を指す。
紫外放射は、以下の波長範囲に細分できる:約380nmから約200nmまでの近UV、約200nmから約10nmまでの遠または真空UV(FUVまたはVUV)、約1nmから約31nmまでの超UV(EUVまたはXUV)。
【0032】
真空波長:電磁放射の波長は一般に波が進行する媒体の関数である。真空波長は所与の周波数の電磁放射が真空中を進行する場合の電磁放射の波長であって、周波数で除した真空中の光の速度で与えられる。
【0033】
飽和強度(Isat):増幅器の利得をその小信号値の半分に減少させる強度である。増幅器は、増幅器を通過する信号強度が飽和強度よりも著しく大きい場合、飽和していると言われる。
【0034】
本発明の実施形態は、出願人のシード付きファイバ増幅光学システムの出力パワーとパルス特性とを、パルス間シード放射を制御することによって、パルストリガ履歴とは独立させることができるという発見を利用する。ここで、パルス間はパルスバースト内の連続しているパルスの間または連続しているパルスバーストの間の期間を指す。通常、この放射は零または何らかの低い値になる。しかし、出願人は、非零の態様のパルス間シード放射を放射が適切な非零値を有するように制御することによって、パワー増幅器において一定のまたはユーザ定義の非飽和利得が各パルスの開始点に存在できることを発見した。
【0035】
この発見に基づいて、本発明の実施形態の光学システムが開発された。光学システムによって、パルスバースト内の個別のパルスの制御が可能になり、各個別パルスにおいて、パルスエネルギー、ピークパワーおよびパルス幅などのパルスの特徴を制御することができる。さらに、そのような制御は、パワー増幅器への公称上一定の励起パワーによって達成できる。そのような光学システムは、物質処理用途において先例のないレベルの制御を実現できる。
【0036】
図1は本発明の実施形態の光学システム100を示している。具体的には、システム100は、コントローラ101、シードソース102、1つまたは2つ以上の任意採用の光増幅器106、パワー増幅器108、および任意採用の波長変換器110を一般に有している。シードソース102は光シード信号104を生成し、任意採用の前置増幅器106に光学的に結合されている。シード信号104は、増幅された出力109を生成するようにパワー増幅器108においてさらに増幅される前置増幅された信号107を生成するように前置増幅器106によって増幅されてもよい。光増幅器108は公称上一定の励起速度で励起されてもよい。例として、光増幅器108はファイバ増幅器であってもよい。ファイバ増幅器の例が、その全体が参照によって本明細書に援用される本出願人による米国特許第7,529,281号に記載されている。特に、米国特許第7,529,281号の図3と該当している記述はファイバ増幅器の例を説明している。
【0037】
当該分野で周知のように、後方へ伝搬するビームを防止し、シーディングのない自然放
射の影響を最小化するように、増幅器段階の間に帯域通過フィルタ、光スイッチ、および光アイソレータを配置することができる。
【0038】
光パワー増幅器108からの増幅されている出力109は、光波長変換器110に光学的に結合されてもよい。波長変換器110は、増幅された出力109とは異なる光学周波数によって特徴付けられる波長変換出力111を生成するように増幅された出力109の少なくとも一部を変換する。波長変換器110は、非線形光学波長変換プロセスを実装してもよい。本発明の何らかの実施形態において、システム100は光増幅器108からの増幅された出力109を受けて、波長変換器110へ送る結合光学部分105を有していてもよい。実施形態によっては、波長変換器110は必要ないことがある。
【0039】
システム100は、波長変換出力111を受け、最終出力113を送る結合光学部分112も有していてもよい。結合光学部分112は、簡単なウィンドウを有していてもよいし、光ファイバも有していてもよい。
【0040】
コントローラ101は、シードソース102および/または任意の光増幅器106、パワー増幅器108、および/または波長変換器110に作動的に結合していてもよい。コントローラ101はシード信号104のパワーを制御するように構成されているロジック121を有している。コントローラ101は、ユーザ制御入力123に応答して、残りの出力115の波長変換平均パワーおよび/またはパルスエネルギーを調整してもよい。具体的には、ロジック121は以下で説明するようにシード信号104のパワーを制御するように構成されていてもよい。実施形態によっては、システムコントローラ101は1つまたは2つ以上のフィードバック信号に応答して動作してもよい。たとえば、フィードバックセンサ120は目標118上の残りの出力115に対する応答を検知してもよい。その代わりに、最終出力113の一部を、ビームスプリッタ114によってパワーモニタ116に向けて偏向させて、この信号をフィードバックループの一部として使用してもよい。さらなる代替の形態は、シードソース光パワー104を安定させ制御するように、シードソース102からコントローラ101へのフィードバック信号を使用していてもよい。例として、そして限定ではなく、フィードバックセンサ120は、目標118の移動の速度を計測してもよい。コントローラ101は、出力115が均等に分離された位置にある目標118に当たるように、所与のバースト内のパルス間の期間または連続しているパルスバーストの間の期間を調整して目標118の移動の速度の変化に応答してもよい。
【0041】
残りの出力115は、用途に依存して任意の数の異なる種類のプロセスを実装するように任意の数の異なる種類の目標118に送達されてもよい。用途には、材料処理、医学処置、レーザ粒子加速、およびウェーファ検査があるが、これらには限定されない。適切な目標の例には、金属、セラミック、半導体、ポリマー、合成物、薄膜、有機材料、試験管内または生体内の生物学標本、および素粒子があるが、これらには限定されない。材料処理の具体的な場合において、目標はたとえば、配線、プリント回路(PC)基板、集積回路(IC)パッケージ、ICウェーファダイ、LEDウェーファ、パッケージ、ダイなどを有していてもよい。材料処理用途の例には、表面テクスチャ形成、熱処理、表面彫刻、細かいマイクロマシニング、表面アブレーション、切削、溝形成、バンプ形成、被覆、はんだ付け、ろう付け、密封、溶接、リンクブローイング、ウェーハスクライビング、ダイシングとマーキング、ビアドリリング、メモリ修復、フラットパネルディスプレイ修復、ステレオリソグラフィ、マスクレスリソグラフィ、表面拡散、および合成物への表面変換がある。
【0042】
シードソース102は、分布帰還型レーザ(DFB)、分布ブラッグ反射型半導体レーザ(DFB)、ファブリ−ペローレーザ(FP)、外部キャビティダイオードレーザ、垂直キャビティ半導体レーザ(VCSEL)、垂直拡張キャビティ半導体レーザ(VECS
EL)、または増幅誘導放出源(ASE)などの半導体シードソースの代表的なレーザの種類のいずれかとすることができる。前述のシードソースの全ては、駆動電流を変調することによって素早く変調されている出力パワーを有していてもよい。その代わりに、シードソース102は他の半導体部品に一体化されている前述の半導体シードソースのいずれかであってもよい。たとえば、DFBレーザは、半導体増幅器および/または電気吸収型変調器に一体化されていてもよい。シードソース102は、高速の外部変調器を備えている他のシードソースであってもよい。たとえば、マッハツェンダ型電気光学変調器を備えているファイバレーザであってもよい。シードソース102は、所望のシード出力特性を発生する電流変調器と外部変調器の組み合わせとすることができる。
【0043】
図1に示しているシステムのパルス状動作は、多くの用途で使用可能であって、それは、パワー増幅器108に保存されているパワーを短いパルス内で開放することができるからである。パルス状動作の最も単純な形式は、パワー増幅器108が一定の励起速度で励起される連続パルス列である。1次までは、ピーク基本波出力は1/DC倍で増加し、DCはパルスデューティーサイクルである。デューティーサイクルは、0.01から0.00001の範囲であってもよい。増幅された出力109中のピークパワーは連続波(CW)状態で動作しているパワー増幅器の出力の100から100,100倍である。
【0044】
図2は定常状態のパルス状状態で動作しているシード付きパルス状パワー増幅器の時間的な挙動の例を示している。曲線(a)はシード信号104のパワーの対数を表している。この場合、シードソース出力パワーは最小値Pseedminと最大値Pseedmaxとの間で変調される。パルス期間はTであって、パルス繰り返し周波数は1/Tである。パルス繰り返し周波数は、1kHzと100MHzとの間の広い範囲であってもよい。最小値Pseedminは、シード信号104がパルス内で取り出されたパワーに対してパワー増幅器108から著しい利得を得ることがないように一般的に十分に低パワーである。Pseedminは、零であってもよい。この条件は以下のように数学的に記述することができる。
【0045】
seedmin<<DC*Pseedmax
デューティーサイクルは通常<0.01であるので、パルスは図2において幅の狭いスパイクとして現れる。わかりやすくなるように、図2のパルスの間隔は圧縮している。
【0046】
曲線(b)はシード信号104に概ね追従するパワー増幅器108の増幅されている出力109の対数を表している。パルス間間隔内の増幅された出力109は、パワー増幅器内の非飽和利得の増加によって増加する。
【0047】
曲線(c)はGmaxが非飽和利得の最大値で、Gminが非飽和利得の最小値であるパワー増幅器内の非飽和利得を表している。非飽和利得の値はGmaxとGminとの間で振動する。パルスの放出によって利得が消滅し、利得はパルスの間の間隔で増加する。利得の増加は、パルスの間の期間中のパワー増幅器108の連続しており公称上一定の光励起が原因である。GmaxとGminとは励起速度、デューティーサイクル、および各パルスから取り出されるエネルギーの量に依存している。GmaxとGminの両方は励起速度が増加するときに増加する。しかし、GmaxとGminの両方はデューティーサイクルDCが増加するときに減少する。
【0048】
連続しているパルス列によるシステム100の動作は用途が限定されている。選択的に出力パルス列のオンとオフとが切り換えできるように出力パルスを制御することがより好ましい。外部変調器をこの目的に使用してもよいが、これらの装置は高価で、追加のタイミング回路類が必要である。外部変調器は、出力パルスの強力なパワーによって損傷することがある。出力パルス列を制御するように光学システム100の既存の部品を使用して
いる制御システムを実装してもよい。この方法は、追加のハードウェアのコストを削減し、過度の利得の偶発的な増加によるパワー増幅器108に対する光学的損傷のおそれを最小にし、不可能でないにしても困難な外部変調器を使用している制御のレベルを達成できるようにする。
【0049】
非同期の頂部が平坦なパルスバーストの出力によってシステム100を動作させることは一般的に使用される動作の態様である。多くの用途では、同一の特性を有しているパルスバースト(1つまたは2つ以上の出力光学パルスのグループ)が必要であるが、それらの間の時間τdwellは可変であってユーザ制御入力123に応答して非同期に制御される。頂部が平坦なパルスバースト内の全てのパルスは公称上等しいパルスエネルギーとピークパワーとを有している。パルスバースト内の連続しているパルスの間の期間Tは通常一定である。連続しているバースト間の遅延は任意であるが、それ以外は全てのバーストは公称上同一である。例として、しかし限定ではなく、レーザビアドリリングにおいて、各ビアが同一となるように各パルスバーストが公称上同一であることが好ましい。連続しているビアドリリング動作の間の時間は、ビアの間隔とビアをドリリングする基板にレーザビームを相対的に配置するのに必要な時間とに依存して可変である。
【0050】
しかし、頂部が平坦なパルスバーストの実現は困難である。パルスの特徴はパワー増幅器108内の利得に依存しており、この利得は励起速度とエネルギー取り出し速度とに依存して変化する。全てのパルスが等しくなるには、パルスの最初のパワー増幅器内の非飽和利得がGmaxに等しいことが必要であって、各シードソースパルスは公称上同一である。
【0051】
図3はパルスバーストの3つの例を示している。この図に示しているように、各パルスバーストは7つのパルスを有しており、各バースト内の連続しているパルス間の期間はTである。各パルスバーストの全長はτburstで表される。パルスバーストの連続している開始の間の時間はτで表され、1つのパルスバーストの終わりと次のパルスバーストの開始との間の時間はrdwellで表される。図3はバースト中に7つのパルスを示しているが、これは例示のためのみであって、バースト中のパルスの数は任意である。例として、多くの現実的な用途では、パルスバーストはバーストあたり1つのパルスから何十、何百のパルスまで任意の数のパルスを有していてもよい。パルスバーストには3つの分類がある。まず、過度の初期利得、G>Gmaxの場合、図3の曲線a)に例示しているようにバースト中の1つまたは2つ以上の初期パルスは後のパルスよりも大きい。第2の、整合している初期利得、G=Gmaxの場合、パルスは頂部が平坦なパルスバーストであって、その中の全てのパルスは図3の曲線b)に示しているように高さが等しい。第3に、過度の不足している利得、G<Gmaxの場合、図3の曲線c)に例示しているようにバースト中の1つまたは2つ以上の初期パルスは後のパルスよりも小さい。
【0052】
本発明の実施形態によれば、曲線b)に示される整合している初期利得に示している形式の頂部が平坦なパルスバーストは、パルスバースト間の休止シードソースパワーレベルを制御することによって実現してもよい。連続しているパルスバーストの間の間隔τdwellの間に、シード信号104のシードパワーを最小シードパワー、Pseedminと最大シードパワー、Pseedmaxとの間の中間の値に制御してもよい。この中間値を本明細書ではシマーパワー、Psimmerと表す。シード信号104のシードパワーは、利得がパルスバーストのGmaxに対応する非飽和利得の定常状態値に到達するようにパワー増幅器108から利得を機能上引き出す。連続しているパルスバーストの間の間隔τdwellの間で、「シマー」シードパワーPsimmerは、シード信号104が、パルスの定常状態の列によってτdwellの間に取り出されるであろうエネルギーと同じエネルギーをパワー増幅器108から取り除くほど十分に大きいパルス速度等価パワー(PREP)に該当している。
中間値はパルス間期間に続くパルスまたはパルスバーストが所望の挙動を示すように光増幅器内の利得を制御するように選択してもよい。パルスまたはパルスバーストが所望の挙動を示す多くの態様がある。たとえば、パルスまたはパルスバーストの間に、利得が光増幅器108内で光増幅器108、またはシステム100の他の構成要素を破損させたり故障させたりする点まで蓄積しないことが好ましい。専用に設定されているパルス、たとえば頂部が平坦なパルスのバーストが望ましいことが多い。バースト内の一様なパルスが望ましいことが多い。バースト内のパルスの非一様なしかし有用なパターンが望ましいこともある。要求に応じて一様な信号パルスを発生させることが望ましいことも多い。望ましい挙動はユーザによってシステム100の動作前に決められてもよい。
【0053】
図4は頂部が平坦なパルスバーストを発生させるシードソース102の動作の方法の例を示している。図4は、シードソースパワーの対数を示している曲線a)、パワー増幅器の出力の対数を示している曲線b)、およびパワー増幅器の非飽和利得を示している曲線c)を有している。
【0054】
図4に示しているように、通常のサイクルは、曲線a)に示しているように、Pseedminの位置にあるシードパワーから始まってもよい。期間Tの後、シードパワーはPseedmaxまで増加して、パルスが始まる。シードパワーは、パルスバーストの持続期間、τburstの間とパルスバーストの終了後の期間Tの間、PseedminとPseedmaxの間を循環する。パルスバーストの間のほとんどの休止期間の間、シードソース出力パワー104は、値Psimmerに固定されている。Psimmerは、パルスバーストの間の任意の長い期間の間に、PREP状態に該当する整合した初期利得Gmaxを全てのパルスバーストが有するように選択されている。結果としてのパルスバーストは、すべて公称上同一であって、バースト内の全てのパルスは公称上等しい。パルバーストの間の期間、τdwellは任意であって、ユーザ制御入力123またはフィードバック信号120によって非同期に制御される。
【0055】
曲線(b)はパワー増幅器108の増幅された出力109の対数を表している。増幅された出力は、シードパワーに概ね追従し、パルスの間でASEから何らかの小さい可変の出力がある。ただし、曲線(b)の尺度は、パワーレベルの差が圧縮されるような対数尺度である。
【0056】
パワー増幅器の非飽和利得を曲線(c)に示している。パルスバーストの間の休止時間のほとんどの間、利得は最小ゲインレベルGminに保持されている。パルスバーストサイクルが開始されると、シードパワーが減少し、時間Tの後、利得がGmaxまで増加し、この時に、シードパワーをPseedmaxまで増加させることによって、パルスが始まる。
図4に示している例において、頂部が平坦なパルスバーストは7つの公称上同一のパルスを各々が有している。前述のように、バースト内のパルスの数は任意であって、バースト内に1つだけのパルスであってもよい。パルスバーストは、ユーザ制御入力123またはフィードバック信号120に応答して非同期に発生してもよい。この動作のモードは「パルスオンデマンド」として知られている。バースト内の全てのパルスは公称上同一であるのに対して、実際にはパルス間の変動はある程度は避けられない。しかし、そのような変動があっても、変動の程度が意図した用途に対して許容可能な場合、パルスバーストは頂部が平坦であると見なしてもよい。実際的な用途について、バースト内のパルスについてのパルスエネルギーまたはパルス振幅(ピークパワーに等しい)のいずれかの標準偏差が10%未満のバーストは、頂部が平坦であると見なすことができる。
【0057】
図4に示している例では、シード信号104のパワーは、パルスバーストの開始の前に期間Tの間、最小値Pseedminまで低下しており、バースト内の最後のパルスの後
で期間Tの間、最小値Pseedminにとどまっている。シードパワー制御のこの特定の形態は、頂部が平坦なパルスバーストには厳密には必要ないが、システムの制御の実装の他の局面については便利なことがある。たとえば、シードパワー制御のこの形態によって、バースト内の全てのパルスに隣接しているバックグラウンドレベルを同じにすることができ、また、パルスバーストが制御信号に対する遅延Tを伴ってトリガされて、トリガされたシーケンス内の第1のパルスを効果的に抑制することもできる。さらに、シードパワーをバースト後の期間Tの間、最小値Pseedminに維持することによって、利得が急速にその最小値に回復するため、パルスバースト間で必要な回復時間が最小になる。
【0058】
しかし、パルスバースト間でシードパワーを制御する他のアルゴリズムを使用して同様に頂部が平坦なパルスバーストを生成してもよい。アルゴリズムがPREP条件を満たす限り、頂部が平坦なパルスバーストを発生させることができる。重要な点は、バースト内の第1のパルスの開始時のパワー増幅器内の非飽和利得は最大利得Gmaxに等しくなければならない。シード信号104は、パワー増幅器108内の非飽和利得がパルスバーストの開始時にGmaxに等しい限り、パルスバースト間の休止時間において一連の傾斜、パルス、任意の波形をもたらすように変調されてもよい。パルスバースト間のシード信号104の波形は、制御信号とパルスバーストの開始との間の遅延の最小化、連続しているパルスバースト間の回復時間の最小化、および制御アルゴリズムの実装の容易さなどの要因に基づいて便宜上選択されてもよい。
【0059】
図5は休止期間、τdwellの間のシードソース出力パワー104の波形が異なる代替の例を示している。図4の波形とは異なり、シードソース出力パワー104は、パルスバーストの最後のパルスの後でPseedminに戻っていない。その代わりに、シードソースパワーは値Psimmerに変化し、次のパルスバーストの開始までこの値のままである。ただし、図5のPsimmerの値は、図4のPsimmerの値よりも小さい。この種類の休止期間の波形の利点は、システムコントローラ101がユーザ制御入力123またはパルスバーストの開始のきっかけとなる他の信号を受け取った時に、パルスバーストが即座に初期化されることである。パワー増幅器は既に非飽和利得、Gmaxの適切な値であるので図4に示している場合のように期間Tの遅延時間は必要ない。
【0060】
図6は休止期間、τdwellの間のシード信号104のパワーを表している異なる波形のさらなる代替の例を示している。図5の波形とは異なり、シートソース出力パワー104は休止期間全体を通して一定ではない。1つのバースト内の最後のパルスの終了後、シード信号104のパワーは最小値Pseedminに戻っている。それからシードソースパワーはτrampで表されている時間間隔にわたって一定値Psimmerまで傾斜している。この場合、図6のPsimmerの値は、図5のPsimmerの値と同一である。図5に示している制御アルゴリズムのように、この種類の休止期間の波形の利点は、システムコントローラ101がユーザ制御入力123またはパルスバーストの開始のきっかけとなる他の信号を受け取った時に、パルスバーストが即座に初期化されることである。実際には、図5に示しているようなステップ関数型の変化よりもシードソースパワー上の傾斜を使用してPsimmerの最適値を求めることがより簡単かもしれない。
【0061】
専用に設定されているパルスバーストは、全てのパルスが等しくはないが、その代わりにユーザが定義するように制御可能なパルスバーストに対するパルスバーストの概念の一般形態である。これは、たとえばパルスバースト内のパルス間の期間中にシード信号104のパワーを制御することによって実装してもよい。結果として得られる専用に設定されているパルスバーストは、パルスバーストの前部のより高いエネルギーパルス、パルスバーストの後部のより高いエネルギーパルスなどの多くの考え得るバースト波形を有していてもよいし、バースト内のパルスが存在しなくてもよい。パルスの繰り返し率は、バーストの全持続期間にわたって一定である必要はなく、異なるパルスの間の期間は異なってい
てもよい。個別のパルス幅、パルスエネルギー、およびパルスピークパワーはバースト内の各パルスの間で異なっていてもよい。同様に、パルス間の期間つまりパルス間隔はパルス内で異なっていてもよい。
【0062】
さらに、一連のパルスバースト内の全てのパルスバーストは同じ波形である必要はない。一連のパルスバースト内に頂部が平坦なパルスバーストもあれば他の専用に設定されているパルスバーストがあってもよい。専用に設定されているパルスバーストの発生は、前述の着想の拡張によって実現されてもよい。頂部が平坦なパルスバーストの生成は、パルスバースト間の休止時間中のシードソース出力パワー104の制御によって実現されてもよい。類似の方法で、パルスバースト内の個別のパルスに対する制御が、パルスバースト内の個別のパルスの間のシード信号104のパワーの制御によって実現されてもよい。
【0063】
2つの異なるパルスバーストを有しているパルス列の例を図7に示している。図7には3つの異なる曲線が示されており、それらは、シードソースパワーの対数を示している曲線a)、パワー増幅器の出力の対数を示している曲線b)、およびパワー増幅器の非飽和利得の対数を示している曲線c)である。
【0064】
図7に示している一連のパルスバーストには、バースト内の全てのパルスの振幅が等しいわけではない第1の専用に設定されているパルスバーストと、バースト内の全てのパルスの振幅が公称上等しいそれに続く第2の頂部が平坦なパルスバーストとがある。バースト内のパルスの数とパルスバースト波形の詳細とは、例としてのみ示しており、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではない。第1の専用に設定されているパルスバーストには5つのパルスが含まれている。第1のパルスは、頂部が平坦な第2のバースト内のパルスと同一である。第1と第2のパルスの間で、シード信号104のパワーがPseedminとPseedmaxとの間の中間パワーレベル、Pcontrolに保持されている。パワーレベルは、以降のパルスの所望のパルスエネルギーによって設定されている。Pcontrolを最小値、Pseedminの上方にさらに増加させることによってパルスエネルギーを減少させてもよい。第2のパルスは、シード信号104のパワーがPseedmaxまで増加した時に放射されている。ただし、シードパルスは全てのパルスについて同じであってもよい。しかし、第2のパルスのパワーは減少しているが、こればパワー増幅器108内の非飽和利得のレベルがGmax未満であるためである。対数尺度のせいで、第2のパルスのパワーの減少は、図7においてわかりやすく明白ではないかもしれない。第2のパルスの放射後、シードパワーはPcontrolの異なるレベルで作動してもよい。このレベルはバースト内の第3のパルスが第1のパルスと同様になるように選択される。第2と第3の放射されたパルスの持続時間も、第1と第2のパルスの間の持続時間より長く、これはパルスバースト内でのパルス繰り返し率を変更できる能力を示している。図7に示している例では、パルスの間の持続時間はパルスバースト内のいくつかのパルスを抑制することによって増加する。
【0065】
第3のパルスは、シードパワーが最大値Pseedmaxまで増加した時に放射される。第3と第4のパルスの間で、シードソース102を第1と第2のパルスの間で以前使用されたパワーレベルと同様のPcontrolのパワーレベルで動作させてもよい。第4のパルスは、シードパワーが最大値Pseedmaxまで増加した時に放射される。そのため、その結果の第4のパルスは第2のパルスと同様の特性を有していてもよい。第4と第5のパルスの間で、シードソース102を異なる制御パワーレベルで動作させる。そのため、その結果の第5の出力パルスは、第4の出力パルスと同様である。
【0066】
図7に示しているパルスに対応している増幅されている出力109のパルス特性は、図8を参照するとより明確に理解されるかもしれない。時間に対する増幅されている出力109は、図8に線形の垂直尺度で示しており、これは、図7の曲線(b)における対数垂
直尺度上に示している同じパルスバーストに対応している。図8は、最大のパワーPoutmaxを有している第1と第3のパルスと、最大のパワーPoutmax/2を有している第2、第4、および第5のパルスを有している専用に設定されているパルスも示している。この例では、第1と第2のパルスの間、第3と第4のパルスの間、および第4と第5の間の持続時間はTである。第2と第3のパルスの間の持続時間はより長く、この場合はパルスバースト内の他のパルスの間のパルス期間Tの3倍である。
【0067】
頂部が平坦なパルスバーストの場合の休止時間について記述した制御アルゴリズムと同様に、バースト内のパルスの間のシードパワーを制御する異なるアルゴリズムを使用して専用に設定されているパルスバーストを生成してもよい。重要な点は、バースト内のパルスの開始時のパワー増幅器108内の非飽和利得がその所望の値と等しいことである。パワー増幅器108内の非飽和利得がパルスの開始時の所望の値に等しい限り、シード信号104のシードパワーには一連の傾斜、パルス、または任意の波形が含まれていてもよい。パルス間のシード信号104の波形は、便宜上、制御信号パルス間の遅延の最小化、バースト内の隣接しているパルス間の回復時間の最小化、および制御アルゴリズムの容易な実装などの要因に基づいて選択されてもよい。
【0068】
頂部が平坦なパルスバーストと専用に設定されているパルスバーストいずれかに対して、パワー増幅器108の出力は波長変換器110で波長変換されてもよい。波長変換プロセスの効率は、ピークパワーに通常依存しており、参照によって本明細書に援用される米国特許第7,529,281号に記述されている。多くの場合、変換効率は、ピークパワーの広い範囲にわたって、線形に、またはピークパワーの2乗として増加し、たとえば、2次高調波の発生において、変換効率はピークパワーの広い範囲にわたって線形に増加し、3次高調波の発生において、変換効率はピークパワーの広い範囲にわたって2乗として増加する。
【0069】
高調波変換プロセスの効率のピークパワーへの依存は、基本波の増幅出力109と比べて波長変換出力111のオン/オフコントラスト比を増加させ、それによって、パワー増幅器からの公称上一定の平均出力パワーと公称上一定の励起パワーとを維持しながら、平均波長変換パワーの制御と調整とが可能になる。
【0070】
本発明の好ましい実施形態のパルスバーストを発生するのに適している電子制御システムの模式図を図9に示している。図9に示しているように、シード信号104のパワーつまり振幅はシードソース102からのシード信号104を制御するように構成されている2つの制御回路によって制御される。制御回路にはパルスバースト内で1つまたは2つ以上のパルスの生成に使用されるバーストモード制御回路124と休止モード制御回路125とが含まれている。制御回路124、125は、たとえば、2つの異なるモードの特定の1つでシードソース102を駆動するように専用に設定されている電流または電圧の形態のエネルギーである駆動信号を供給する。例として、しかし限定としてではなく、シードソース102は前述のような何らかの型式の半導体レーザシードソースであってもよい。そのような場合、制御回路124、125はシードソース102に加わる駆動電流を制御することによってシード信号104の振幅またはパワーを制御するように構成されていてもよい。その代わりに、外部変調器がシード信号104のパワーを制御するように使用される場合、制御回路は変調器に選択的に結合可能な電圧源を有していてもよい。
【0071】
高速電子スイッチ126によって、これら2つの制御回路124、125の間の素早い切り換えが可能になる。たとえば、シードソース102が半導体レーザである場合、シードソース102は加わる駆動電流に比例しているシード信号104を放射する。放射されたシード信号104のいくらかは、光パワー増幅器108に向けられ、そこで増幅される。放射された光のいくらかは、監視センサ127(たとえばフォトダイオード)に任意採
用で向けられてもよく、監視センサ127はフィードバック信号をバーストモード制御回路124および/または休止モード制御回路125に供給してもよい。2つの制御回路124、125と高速電子スイッチ126とはシステムコントローラ101によって制御され、システムコントローラ101はパルスバーストを開始する信号、パルスバースト内の持続時間とパルス繰り返し率、専用に設定されているパルスバーストの波形、励起パワーレベルなどの動作パラメータを提供してもよい。その代わりに、他のシステム動作パラメータがコントローラ101によって提供されてもよい。
【0072】
電子切り換えは、休止モードから光出力への好ましくない寄与によってパルス振幅でエラーを発生させないように、パルス間の休止時間よりも著しく短い必要がある。切り換え時間は、休止時間の1%未満でなければならない。
【0073】
図9に示しているように、コントローラ101は、パルスバーストを開始しなければならないことを示している。高速の電子スイッチ126は、シードソース102を休止モード電流源125からバーストモード電流源124へと切り換える。バーストモード電流源124は、コントローラ101に指示されたように一連のパルスを生成するパルス状の形態でシードソース102を駆動する。パルスバーストは、シード信号104のパワーがバースト内のパルスの間で公称上一定の値に維持される場合、頂部が平坦であってもよい。その代わりに、パルスバーストは、シード信号104のパワーがパルスの間で変化する場合、専用に設定されてもよい。必要な数のパルスが生成されると、コントローラ101は高速電子スイッチ126にバーストモード制御回路124から休止モード制御回路125に切り換えて戻すように指令する。それから、シードソース102は休止モード制御回路125によって次のパルスバーストがコントローラ101によって開始されるまで駆動される。シード信号104のパワーは任意採用の監視フォトダイオードとフィードバックループを使用して制御されてもよい。
【0074】
フィードバックループは、フォトモニタ127からの入力をコントローラ101からの入力と比較することによって休止モード電流源125を制御する。2つの入力の差が増幅され、スイッチ126によって選択されたときに、シードソース102に加わる。シードソースは両入力を等しくし、それによってフィードバックループを閉じるように応答する。
【0075】
ビアドリリングにおいてなど、専用に設定されているパルスバーストのいくつかの可能な用途がある。たとえば、パルスバースト内の初期パルスを使用して大量の材料を取り除くことが好ましいかもしれない。その結果、パルスバーストを1つまたは2つ以上の高パワーで高パルスエネルギーのパルスで開始することが好ましい。場合によっては、ビアが導体の位置で終端するかもしれず、導体表面を貫通するつまり損傷することは好ましくない。その結果、パルスバーストの終わり近くでは、下にある導体を損傷することなく、上にある材料をゆっくりと取り除くのに十分なより低いパワーとより低いエネルギーのパルスを使用してもよい。
【0076】
専用に設定されているパルスバーストの他の用途は基板の切削つまりスクライビングにおいてである。一様な切削つまりスクライビングを行うために、隣接しているパルスを基板に一様な間隔で当てなければならない。光学システムと基板との間の相対運動が一定である場合、これはシステムが一定のパルス繰り返し周波数で動作しなければならないことを意味している。
【0077】
しかし、基板は光学システムに対して加速したり減速したりすることが多く、そのため、専用に設定されているパルスバースト内のパルス周波数を基板の速度に一致するように漸次変化させて、間隔が一様なパルスを発生させなければならない。パルス周波数と、し
たがってパルス間期間とを、基準期間またはその一部を増分として変化させることができることが好ましい。基準期間は、コントローラ101の一部であるクロックのクロック周期であってもよい。
【0078】
代替の実施形態において、シード信号104のパワーは、パルスごとにパルスバースト中に調整してもよい。そのような動作モードによって制御のレベルがさらに向上し、そのような動作モードはパワー増幅器108および/または前置増幅器106の飽和が好ましくない場合に有用かもしれない。さらに、パルス幅はパルスバースト内の全てのパルスについて一定である必要は無い。バーストモード制御回路124は、シード信号104がさまざまなパルス幅を有するようにシードソース102または外部変調器を制御してもよい。さらに、パルスバースト内の個別のパルスを専用に設定することができる。
【0079】
本発明の実施形態は、物質処理用途において、高出力パワーに対応可能なやっかいで高価な装置の必要性をなくし、未踏の制御レベルを可能にする。レーザドリリングと機械加工の用途の場合には、これによってよりエネルギー効率の高い材料除去が可能になり、処理速度とスループットが改善される。
【0080】
前述の説明は、本発明の好ましい実施形態の完全な説明であるのに対して、様々な代替の形態、修正、および同等の物を使用することができる。そのため、本発明の範囲は、前述の説明を参照して判断すべきではなく、その代わりに添付の特許請求の範囲をそれらの等効物の完全な範囲と共に参照して判断すべきである。それが好ましいかそうでないかに係わらず任意の特徴を、それが好ましいかそうでないかに係わらず任意の他の特徴と組み合わせてもよい。以下の特許請求の範囲において、不定冠詞「A」または「An」は、明示的に記述されている場合を除いて、冠詞に続く1つまたは2つ以上の品目の量を示す。添付の請求項は、ミーンズプラスファンクションの限定が句「means for(〜の方法)」を使用して所与の請求項において明示的に記述されていない限り、そのような限定を含むものと解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シードソースと、
前記シードソースに結合されている光増幅器と、
前記シードソースからのシード信号が1つまたは2つ以上のパルスバーストを示すように、最小値と最大値との間で前記シード信号のパワーを変化させるように構成されている第1の制御信号を生成するように構成されているロジックを有しているコントローラと、を備え、
各前記パルスバーストは1つまたは2つ以上のパルスを含み、
前記ロジックは前記パルスバースト内の連続しているパルスの間または連続している前記パルスバーストの間のパルス間期間の間に前記最小値よりも大きく且つ前記最大値よりも小さい中間値に前記シード信号の前記パワーを調整するように構成されている第2の制御信号を生成するようにさらに構成されており、
前記中間値は前記パルス間期間に続く前記パルスまたは前記パルスバーストが所望の挙動を示すように前記光増幅器内の利得を制御するように選択されている、
光学システム。
【請求項2】
前記所望の挙動は、頂部が平坦なパルスバーストである、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記所望の挙動は、パルスの高さ、パルスの幅、および/またはパルスの間隔の所望のパターンを備えている1つまたは2つ以上のパルスを有しているパルスバーストである、請求項1に記載の光学システム。
【請求項4】
前記コントローラに結合されているバーストモード制御回路と、
前記コントローラに結合されている休止モード制御回路と、
スイッチと、
をさらに有し、
前記スイッチは前記コントローラに結合されており、
前記スイッチは前記バーストモード制御回路に結合されており、
前記スイッチは前記休止モード制御回路に結合されており、
前記スイッチは前記シードソースに結合されており、
前記スイッチは前記コントローラからのモード選択信号に応答して前記バーストモード制御回路からの前記第1の制御信号または前記休止モード制御回路からの前記第2の制御信号を前記シードソースに選択的に結合するように構成されている、
請求項1に記載の光学システム。
【請求項5】
前記シードソースはレーザダイオードを有しており、
前記第1及び第2の制御信号は前記レーザダイオードに加わる駆動電流を調整するように構成されている、
請求項4に記載の光学システム。
【請求項6】
前記シードソースからの前記シード信号を検出し、前記シード信号に比例するフィードバック信号を生成するように構成されているシード信号センサをさらに有し、
前記シードソースは前記バーストモード制御回路または前記休止モード制御回路に結合されており、
前記バーストモード制御回路が前記フィードバック信号に応答して前記第1の制御信号を調整するように構成されているか、又は前記休止モード制御回路が前記フィードバック信号に応答して前記第2の制御信号を調整するように構成されている、請求項4に記載の光学システム。
【請求項7】
前記シードソースはレーザダイオードを有している、請求項1に記載の光学システム。
【請求項8】
前記第1及び第2の制御信号は前記レーザダイオードに加わる駆動電流を調整するように構成されている、請求項7に記載の光学システム。
【請求項9】
前記シードソースが光変調器を有しているか、又は外部光変調器が前記シードソースと前記光増幅器との間に結合されている、請求項1に記載の光学システム。
【請求項10】
前記第1及び第2の制御信号は前記光変調器または前記外部光変調器の光伝送を調整するように構成されている、請求項9に記載の光学システム。
【請求項11】
前記光増幅器の出力に光学的に結合されている波長変換器をさらに有する、請求項1に記載の光学システム。
【請求項12】
前記光増幅器はファイバ増幅器である、請求項1に記載の光学システム。
【請求項13】
シードソースと前記シードソースに結合されている光増幅器とを有している光学システムからの出力パルスを制御する方法であって、
a)前記シードソースからのシード信号が1つまたは2つ以上のパルスバーストを示すように、最小値と最大値との間で前記シード信号のパワーを変化させるように構成されている第1の制御信号を生成し、各パルスバーストが1つまたは2つ以上のパルスを有しているステップと、
b)パルスバースト内の連続しているパルスの間または連続しているパルスバーストの間のパルス間期間の間に前記最小値よりも大きく且つ前記最大値よりも小さい中間値に前記シード信号の前記パワーを調整するように構成されている第2の制御信号を生成するステップと、
を有し、
前記中間値は前記パルス間期間に続く前記パルスまたは前記パルスバーストが所望の挙動を示すように前記光増幅器内の利得を制御するように選択されている、方法。
【請求項14】
前記所望の挙動は頂部が平坦なパルスバーストである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記所望の挙動は、パルスの高さ、パルスの幅、および/またはパルスの間隔の所定のパターンを備えている1つまたは2つ以上のパルスを有しているパルスバーストである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記a)はバーストモード制御回路を使用して前記第1の制御信号を生成するステップを有し、
前記b)は休止モード制御回路を使用して前記第2の制御信号を生成するステップを有し、
前記バーストモード制御回路または前記休止モード制御回路を前記シードソースに選択的に結合するステップをさらに有する、
請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記シードソースはレーザダイオードを有しており、
前記第1及び第2の制御信号は前記レーザダイオードに加わる駆動電流を調整するように構成されている、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記シード信号に比例するフィードバック信号を生成するステップと、
前記バーストモード制御回路を使用して前記フィードバック信号に応答して前記第1の制御信号を調整するか、又は前記休止モード制御回路を使用して前記フィードバック信号に応答して前記第2の制御信号を調整するステップと、
をさらに有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記シードソースが光変調器を有しているか、又は外部光変調器が前記シードソースと前記光増幅器との間に結合されており、
前記第1及び第2の制御信号は前記光変調器または前記外部光変調器の光伝送を調整するように構成されている、
請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記光増幅器を公称上一定の励起速度で励起するステップをさらに有する、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
シードソースと、
前記シードソースに結合されている光増幅器と、
前記シードソースに作動的に結合されており、前記シードソースが1つまたは2つ以上のパルスバーストを生成するように構成されているロジックを有しているコントローラと、
を有し、所与のパルスバースト内のパルスの間の期間は漸次可変である、光学システム。
【請求項22】
前記パルスバーストは頂部が平坦なパルスバーストである、請求項21に記載の光学システム。
【請求項23】
前記コントローラは、移動している目標に当たるパルスの間隔が公称上一定であるようにパルスの間の前記期間を調整するように構成されている、請求項22に記載の光学システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−500583(P2013−500583A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521741(P2012−521741)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/042663
【国際公開番号】WO2011/011461
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(508310148)モビアス フォトニクス, インク. (4)
【Fターム(参考)】