説明

射出成形ノズル

本発明は、少なくとも2本の材料管20を備え、この各材料管20内に流動性物質用の流路30が形成されている、射出成形装置用射出成形ノズル10に関する。各材料管20は端側に、流動性物質用の少なくとも1つの出口34を有するノズルチップ32を備え、かつ外周側にヒータ40を備えている。共通の1つのケーシング50内に配置された材料管20を収容するための、互いに接近して並べて配置された独立した切欠き60により、均一な伝熱特性および温度分布特性を有する多数のノズルチップ32が狭い空間に収納されるので、最小のキャビティ間隔が実現可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、請求項1の前段に記載した射出成形ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形ノズルは、流動性物質を予め設定可能な温度でかつ高圧下で分離可能な金型ブロック(キャビティ)に供給するために、射出成形金型で使用される。射出成形ノズルは一般に、材料管の形をしたノズル本体を有し、このノズル本体内に、流動性物質用の流路が形成されている。この流路はノズルランドで終わっている。ノズルランドは端側が材料管に挿入され、流路用出口を形成している。材料管はたいていの場合ケーシング内に着座している。ケーシングは、材料管内の流路が分配プレート内の流路に流体連結されるように、射出成形金型の分配プレートに連結されている。
【0003】
たいていの場合高温物質がノズル内で過早に冷却されないようにするために、電気ヒータが設けられている。このヒータは材料管またはその中に形成された流路を同心的に取り囲んでいる。それによって、流動性物質をノズルチップ内まで一定の温度に保つことができる。高温ケーシングとたいてい冷却される金型の間の遮熱により、ノズル、特にノズルチップの領域が凍結せず、同時に金型(キャビティ)が加熱されない。温度を監視するために一般に、温度プローブが使用される。
【0004】
材料管とヒータは独立した構成要素として形成可能である。この場合、ヒータは温度プローブと共に、ノズル本体の外周に嵌め込まれた外壁と一体化されている。しかし、ヒータは例えばチューブヒータとしてまたはスパイラルチューブとして、材料管と一体化させることも可能であり、あるいはヒータは、膜ヒータとして材料一体的に材料管に取付けられる。
【0005】
この従来のノズルの重大な欠点は、射出成形ノズルのケーシングが比較的に大きな場所をとるので、個々の射出成形ノズルのノズルチップを密に並べて任意に位置決めすることができないことにある。キャビティの間隔が比較的に大きい。多くの用途において、独立したキャビティを同時に射出できるようにするためあるいは複雑化した部品を短い間隔をおいて何度も射出できるようにするために、キャビティ間隔をできるだけ短くする必要がある。
【0006】
従来のノズルの他の欠点は、ケーシングが複数の部材からなっていることにある。これにより、組み立てコストが高くつく。多くの場合、金型の組み立ての際に初めて、材料管がケーシング内に組み込まれる。これは同様に組み立てコストに不利に作用する。組み立てエラーが発生し、組み立てエラーは後の製造過程に支障をきたす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術のこれらの欠点および他の欠点を克服し、狭い空間に多数のノズルチップを収納し、それによって小さなキャビティ間隔を実現することができる射出成形ノズルを提供することである。ノズルは均一な伝熱特性および温度分布特性を有し、射出成形金型に組み込む際に狭い場所しか必要としないようにすべきである。射出成形ノズルはさらに、簡単かつ経済的に製作および組み立てできるようにすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる特徴は請求項1の特徴部分に記載してある。実施形態は従属請求項2〜24の主題である。
【0009】
少なくとも2本の材料管を備え、この各材料管内に流動性物質用の流路が形成され、各材料管が端側に、流動性物質用の少なくとも1つの出口を有するノズルチップを備え、各材料管が外周側にヒータを備えている、射出成形装置用射出成形ノズルにおいて、本発明では、材料管が共通の1つのケーシング内に配置され、このケーシングが各材料管を収容するために、独立した切欠きを有し、切欠きがケーシング内に互いに接近して並べて配置されている。
【0010】
それによって、1個だけの射出成形ノズルによって、多数のノズルチップを狭い空間に配置することができる。というのは、材料管がケーシング内で平行に配置されて互いに密接して並べて設けられているからである。射出成形ノズルは一緒に多重ノズルを形成する。この多重ノズルによって複数のキャビティまたはスプルー個所に同時に射出することができる。キャビティの間隔またはスプルー個所の間隔は非常に小さく選定することができる。
【0011】
さらに、各材料管のために、独立した切欠きが設けられている。それによって、ケーシングの各切欠きに、独立した流路を有する独立した材料管が付設されている。これは必要な場合に、非常に狭いところにあるスプルー個所に供給されるいろいろな材料を、1個だけのノズルで加工することを可能にする。
【0012】
本発明に係る射出成形ノズルの他の重要な利点は、加工すべき材料に応じて、各材料管と各ヒータを異なるように形成できることにある。例えば材料管を異なる材料によって製作し一方、加熱要素を異なるように採寸および/または制御することができる。
【0013】
隣接する2つの切欠きの内壁の間隔が、切欠きの最小半径よりも小さいときには、小さなキャビティ間隔を実現するために寄与する。それによって、材料管はケーシングの狭い空間に着座し、ケーシングはもはや大きな寸法を有する必要がない。
【0014】
好ましくは、間隔が同じ大きさである。しかしながら、製造すべき物品に依存して、間隔を異なる大きさに形成することができる。
【0015】
切欠きがマトリックスのようにケーシングに穿設されていると、きわめて有利である。マトリックスは一般に、行とカラムに配置された点からなるパターンである。従って、材料管、ひいてはノズルチップを点パターンに配置し、それによって製品の要求に個々に適合させることができる。製品には複数の成分を同時に射出できる。例えば異なる材料からなる複数のキーを有するキーボードである。その際、ノズルチップが非常に狭い寸法を有するので、個々のキーを非常に密接させて並べることができる。
【0016】
本発明の他の実施形態では、各切欠きが段状に形成され、下側の第1区間と上側の第2区間を有する。この場合、第1区間の内径が第2区間の内径よりも大きい。それによって、各切欠きはそれに付設された材料管を下側区間において問題なく収容する。一方、上側区間は材料管を固定するために使用可能である。
【0017】
材料管は好ましくは下側の第1区間と上側の第2区間を有する。この場合、ヒータは材料管の第1区間の領域内に形成されている。
【0018】
材料管の第2区間が材料管に付設された切欠きの第2区間内に固定されていることにより、ケーシングの切欠きの上側区間において材料管の固定が有利に行われる。その際、材料管の第2区間が材料管に付設された切欠きの第2区間内に圧入されていることが望ましい。それによって、組み立てコストが最小限に抑えられる。追加の固定手段が不要である。
【0019】
上記に補足してまたはその代わりに、材料管をケーシング内にろう付け、溶接または接着することができる。さらに、例えば切欠きの上側区間と材料管の上側区間が対応するねじを有することにより、ねじ継手を使用することが考えられる。
【0020】
材料管内を案内される溶融物が常に最適におよび均一に加熱されるようにするために、各材料管のヒータが材料管に付設された切欠きの第1区間内まで延在している。この場合、ヒータの外径が射出成形ノズルの冷間状態で、切欠きの第1区間の直径よりも小さい。それによって、ノズルを迅速かつ簡単に組み立てることができる。ヒータは切欠き内に差し当たり十分な場所を有する。
【0021】
しかしながら、射出成形ノズルの運転状態では、ヒータの外径が切欠きの第1区間の内径に等しい。それによって、ヒータがケーシングと熱接触するので、材料管の上側の第1区間は常に最適に加熱される。射出成形ノズル全体はノズルチップ内まで、均一で一定の温度分布を有する。構造はきわめてコンパクトにかつ低コストになるように実現可能である。
【0022】
ノズル全体にわたってだけでなく、個々の各材料管内においても、必要な温度を一定に保つことができるようにするために、本発明では、各ヒータが制御装置によって個別的に制御可能である。
【0023】
他の実施形態では、ケーシングが断熱板を備えている。この断熱板はほとんど低温のキャビティプレートに対して高温のケーシングを断熱するので、一方では熱の損失が少なく、他方ではノズルチップが凍結しない。
【0024】
断熱板は好ましくはケーシングに固定されている。断熱板はさらに、切欠きと合致する貫通穴を有するので、ケーシングの切欠きに材料管を下から挿入することができる。
【0025】
ケーシングを金型内で正確にかつ再現可能に配向できるようにするために、ケーシングは少なくとも1本のドエルピンを備えている。ドエルピンが断熱板を貫通しているので、この断熱板の位置も、ケーシングに対しておよび金型に対して常に最適に定められる。
【0026】
本発明の他の実施形態では、材料管がシャフトによって取り囲まれている。このシャフトは金型内で一層良好な断熱を行う。さらに、ヒータが外部からの影響に対して保護される。シャフトを複数の部分、例えば上側部分と下側部分によって形成すると合目的である。この場合、材料管に接触するこの下側部分は、熱伝導しにくい材料で製作可能である。
【0027】
各シャフトは断熱板の付設の貫通穴内に達している。それによって、シャフトを簡単に固定することができる。これは同時に、断熱作用を改善する。
【0028】
本発明の他の特徴、詳細および効果は、特許請求の範囲の文面と、図に基づく実施形態の次の説明とから明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】射出成形ノズルの実施形態の縦断面図である。
【図2】図1のA−A方向から射出成形ノズルを見た図である。
【図3】射出成形ノズルの他の実施形態の縦断面図である。
【図4】図3のA−A方向から見た図である。
【図5】射出成形ノズルの他の実施形態の縦断面図である。
【図6】図5のA−A方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1において全体を10で示した射出成形ノズルは、ホットランナノズルとして形成されている。この射出成形ノズルは流動性物質、例えば合成樹脂溶融物を射出成形金型(図示せず)内で加工する働きをする。その際、合成樹脂溶融物は予め設定可能な温度でかつ高圧下で分配プレート(同様に図示せず)と射出成形ノズル10とを通って、分離可能な金型ブロック(キャビティ)に供給され、個々のキャビティインサートの形状に応じて成形されて合成樹脂製品となる。そのために、射出成形ノズル10は全部で3本の分離した材料管20を有する。この材料管は共通のケーシング50内に密に並べて配置され、材料管の中心軸線Aはケーシング50内において円K上に位置している(図2参照)。
【0031】
各材料管20は中心軸線Aに対して同心的に、流動性物質用の流路30を有する。この流路は材料管20の上端21に入口31を有し、下端25がノズルチップ32に接続している。このノズルチップは材料出口34を経てキャビティ(図示せず)内に合成樹脂溶融物を案内する。この場合、ノズルチップ32の好ましくは円錐状の尖端部はスプルー開口(図示せず)手前の分離面内に位置している。好ましくは高熱伝導性材料で作られたノズルチップ32は端側が材料管20に挿入、好ましくはねじ込まれている。しかし、ノズルチップは用途に応じて、同じ機能を有しつつ材料管20と一体であってもよい。
【0032】
ノズルチップ32をスプルー開口に対して正確に心合わせするために、熱伝導しにくい材料からなる心合わせリング26が材料管20の下端25に装着されている。このリング26は射出成形金型のキャビティプレート(同様に図示せず)に係合している。このキャビティプレートはそのために適当な着座部を備えている。リング26はキャビティプレートに対して材料管20をシールするので、出口34から出る材料はキャビティ内に直接達する。リング26の熱伝導しにくい材料は必要な断熱を行う。
【0033】
分配プレートに対して射出成形ノズル10をシールするために、シールリング27が材料管20に対して同心的にケーシング50内に設けられている。このシールリングは射出成形ノズル10の組み立て状態でケーシング溝(詳しく示していない)内で材料管20と分配プレートの下面に封止的に接触している。同時に、材料管20の上端21はケーシング50の平らな上面51から少しだけ(好ましくは10分の数ミリメートルまたは100分の数ミリメートル)突出している。それによって、射出成形ノズル10を加熱する際に材料管20が材料膨張によって分配プレートにしっかり押し付けられ一方、心合わせリング26の下端がキャビティプレート内にしっかり押される。全体のシステムが常に確実にシールされる。
【0034】
材料管20の外周に電気ヒータ40が装着されている。このヒータは例えば、熱伝導性の良好な材料、例えば銅または真鍮からなるスリーブ(詳しく示していない)によって形成されている。このスリーブは材料管20の軸方向長さの大部分にわたって延在している。スリーブの壁部(同様に詳しく示していない)内には、電気的な熱導体コイル(図示せず)が流路30に対して同軸に形成されている。この熱導体コイルの端子(同様に見えない)はケーシング50から側方に案内されている。ケーシングはそのために穴52を有する。ヒータ40は制御装置(同様に図示せず)に接続されている。この場合、ノズル10の3個のヒータ40の各々のために、中央の1個の制御装置または独立した制御装置を設けることができる。ヒータ40の外径HDは実質的に、材料管20の外径を決定する。
【0035】
ヒータ40によって発生した温度を検知するために、材料管20のすぐ近くに、収容通路(図示せず)が設けられ、この収容通路内に温度プローブ(図示せず)が挿入可能である。温度プローブの測定感度の高い端部はノズルチップ32の領域内にある。温度プローブの端子(図示せず)はヒータ本体40から側方に案内され、そして同様にケーシング50の穴52を通ってヒータ40用制御装置に接続されている。各ヒータ40のために、独立した温度プローブが設けられている。
【0036】
図1から分かるように、材料管20は2つの区間22、24を有する。下側の第1区間22はヒータ40を備え、上側の第2区間24は下側の第1区間22よりも直径が幾分大きく形成されている。ヒータ40の長さは材料管20の第1区間22の長さにほぼ一致している。この第1区間22の長さは材料管20の上側の第2区間24の長さよりもはるかに長い。
【0037】
ケーシング50は各材料管20のために切欠き60を有する。この切欠きの中心軸線Aは同様に、円K上に位置している。切欠き60はケーシング50内に互いに接近して並べて配置されている。この場合、隣接する2つの切欠き60の内壁61の間隔aは、切欠きの半径rよりも非常に短い(図2参照)。それによって、切欠き60内に挿入された材料管20は比較的に密に並べて配置される。これは更に、非常に小さな寸法によって可能である。図1の実施形態では、間隔aがすべで同じ大きさである。キャビティまたはスプルー個所の位置に応じて、間隔aを異なるように選定してもよい。
【0038】
各切欠き60は段状に形成され、下側の第1区間62と上側の第2区間64を有する。下側の第1区間62の内径Dは上側の第2区間64の内径dよりも大きい。この上側の区間の長さは下側の区間62の長さよりも短い。
【0039】
図1に示すように、各材料管20は付設の切欠き60に挿入され、その第2区間24がこの材料管に付設された切欠き60の第2区間64内に固定、好ましくは圧入されている。従って、材料管20の第2区間24の外径は切欠き60の第2区間64の直径dよりも少しだけ大きい。それによって、持続する固着したプレス嵌めが生じる。
【0040】
図1に更に示すように、材料管20の下側区間22に装着されたヒータ40は、材料管20に付設された切欠き60の第1区間62内まで延在している。この場合、下側区間62の内径Dとヒータ40の外径HDは、射出成形ノズル(10)の冷間状態で、ヒータの外径が切欠き60の下側区間62の内径Dよりも小さくなるように選定されている。これに対して、射出成形ノズル10の運転状態では、ヒータ40の外径HDが切欠き60の第1区間62の内径Dに等しくなるので、ケーシング50もヒータによって一緒に暖められる。それによって、切欠き60の上側区間64内にある材料管20の区間24が同様に加熱される。これはノズル10内の全体の温度分布に有利に作用する。
【0041】
各材料管20のために独立した固有の切欠き60が設けられていることが重要である。その際一方では、切欠き60の間隔aが切欠き60の最小半径rよりもきわめて小さい。同時に、円Kの半径KRはヒータ40の外径HDの半分よりも少しだけ大きいかまたはこの半分に等しい。すなわち、円Kの半径KRはヒータ40を含めた材料管20の半径(詳しく示していない)よりも少しだけ大きいかまたはこの半径に等しい。さらに換言すると、円Kの直径はヒータ40の外径HDよりも少しだけ大きいかまたはこの外径に等しい。それによって、すべての材料管20がきわめて狭い空間で互いに密接してケーシング50内に装着される。ノズルチップ32の寸法が非常に小さいので、金型内のキャビティ間隔を非常に小さくすることができる。
【0042】
材料管20は同じように使用可能である。すなわち、同じ材料が3本のすべての材料管20を通って運ばれる。その代わりに、材料管20は互いに独立して使用可能である。すなわち、必要な場合には、各材料管20を通って異なる合成樹脂材料を金型に搬入することができる。この場合、材料管20の各ヒータ40は制御装置によって個別に制御可能であり、搬入は射出個所が非常に密に並べて設けられた状態で行われる。
【0043】
冷却される成形プレートからケーシング50を断熱するために、断熱板70が設けられている。この断熱板はねじ71によってケーシング50に固定されている。断熱板70はケーシング50の切欠き60に合致する貫通穴72を有する。この貫通穴の内径は切欠き60の第1区間62の内径Dに等しい。従って、材料管20はそのヒータ40と共に断熱板70を通過することができる。
【0044】
ケーシング50を金型内で所定の方向に向けることができるようにするために3本のドエルピン80が設けられている。このドエルピンの一端はケーシング50に係合し、他端は断熱板70を通って金型に係合する。
【0045】
図3と4に示した射出成形ノズル10は構造が図1と2のノズルにほぼ一致しているが、ここでは材料管20が全部で4本設けられ、そして各材料管20と各ヒータ40がシャフト90によって取り囲まれている。
【0046】
シャフト90は複数の部分、好ましくは2つの部分によって、すなわち上側のシャフト部分92と下側のシャフト部分94によって形成されている。上側のシャフト部分92の上側エッジは断熱リング70に挿入されている。そのために、断熱リングはその貫通穴72の領域に、段部74を有する。シャフト部分92は断熱リング70に圧入可能である。このシャフト部分と断熱リングは互いに螺合も可能である。下側のシャフト部分94の下端95は材料管20に接触している。材料管20を介して熱が失われないようにするために、下側のシャフト部分は熱伝導しにくい材料からなっている。材料管20が加熱相および冷却相の間、好ましくは密接するシャフト部分94内で移動できるようにするために、シャフト部分94の下端95は材料管20のためのすべり嵌め部を形成している。このすべり嵌め部は好ましくは、材料管20の外周に密着する円筒状内面の形をしている。上側と下側のシャフト部分92、94はその分離個所96で、好ましくは互いに螺合しているかまたはろう付けされている。
【0047】
各材料管20のために、独立した固有の切欠き60が設けられていることが重要である。切欠き60の間隔aは切欠き60の最小半径rよりもきわめて小さい。同時に、円Kの半径KRはシャフト90の外径HSの半分よりも少しだけ大きいかまたはこの半分に等しい。すなわち、円Kの半径KRはシャフト装置90の半径(詳しく示していない)よりも少しだけ大きいかまたはこの半径に等しい。さらに換言すると、円Kの直径はシャフト90の外径HSよりも少しだけ大きいかまたはこの外径に等しい。それによって、すべての材料管20がきわめて狭い空間で互いに密接してケーシング50内に装着される。ノズルチップ32の寸法が非常に小さいので、金型内のキャビティ間隔を非常に小さくすることが実現可能である。
【0048】
図5と6の実施形態では、ケーシング50内に2本の材料管20が並べて配置されている。ノズルチップ32は端側に、材料管20と金型の間で支持されるフランジ付きリング36を備えている。その場合、フランジ付きリング36と金型の間には、ノズルチップ32から金型への伝熱を最小限に抑えるために、熱伝導しにくい材料からなるインサート(図示せず)が設けられている。
【0049】
本発明は前述の実施形態の一つに限定されることがなく、そして多様な変更が可能である。例えば、ヒータ40を必ずしも材料管20上に装着しなくてもよい。ヒータ40を、例えば膜ヒータ、特に厚膜ヒータの形に、材料管に材料一体的に連結してもよい。
【0050】
材料管20の上側区間24はケーシング50内にろう付けしてもよいし、ケーシング50に溶接してもよい。接着も考えられるし、可能である。
【0051】
ケーシング50と断熱板70は、運転温度に達した後で、好ましくは分配プレートと金型プレートの間に挟持される。この場合、ドエルピン80がケーシング50と材料管20を常に正しく配向する。それに補足してあるいはその代わりに、ケーシング50をねじによって分配プレートに固定することもできる。
【0052】
材料管20、ひいてはノズルチップ32は密接させて格子状に並べて配置されている。この配置構造は特にスプルー個所の配置構造に相応して、マトリックスを形成する。
【0053】
特許請求の範囲、明細書および図面から明らかになるすべての特徴および効果は、構造的な詳細、空間的な配置および方法ステップを含めて、単独でも様々な組み合わせでも本発明にとって重要である。
【符号の説明】
【0054】
a 間隔
A 中心軸線/縦軸線
d 直径(内径)
r 半径
D 直径(内径)
HD 外径
K 円
KR 半径
10 ホットランナノズル
20 材料管
21 上端
22 第1区間
24 第2区間
25 下端
26 心合わせリング
27 シールリング
30 流路
31 入口
32 ノズルチップ
34 出口
36 フランジ付きリング
40 ヒータ
50 ケーシング
51 上面
52 開口
60 切欠き
61 内壁
62 第1区間
64 第2区間
70 断熱板
71 ねじ
80 ドエルピン
90 シャフト
92 上側シャフト部分
94 下側シャフト部分
95 下端
96 分離個所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本の材料管(20)を備え、前記各材料管(20)内に流動性物質用の流路(30)が形成され、前記各材料管(20)が端側に、流動性物質用の少なくとも1つの出口(34)を有するノズルチップ(32)を備え、前記各材料管(20)が外周側にヒータ(40)を備えている、射出成形装置用射出成形ノズル(10)であって、
a)前記材料管(20)が共通の1つのケーシング(50)内に配置されていることと、
b)前記ケーシング(50)が前記各材料管(20)を収容するために、独立した切欠き(60)を有することと、
c)前記切欠き(60)が前記ケーシング(50)内に互いに接近して並べて配置されていることを特徴とする射出成形ノズル。
【請求項2】
前記各材料管(20)のために、独立した切欠き(40)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形ノズル。
【請求項3】
隣接する2つの切欠き(60)の内壁(61)の間隔(a)が、切欠きの最小半径(r)よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形ノズル。
【請求項4】
前記間隔(a)が同じ大きさであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の射出成形ノズル。
【請求項5】
前記間隔(a)が異なっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の射出成形ノズル。
【請求項6】
前記切欠き(60)がマトリックスのように前記ケーシング(50)に穿設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の射出成形ノズル。
【請求項7】
前記各切欠き(60)が段状に形成され、下側の第1区間(62)と上側の第2区間(64)を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の射出成形ノズル。
【請求項8】
前記第1区間(62)の内径(D)が前記第2区間(64)の内径(d)よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の射出成形ノズル。
【請求項9】
前記各材料管(20)が下側の第1区間(22)と上側の第2区間(24)を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の射出成形ノズル。
【請求項10】
ヒータ(40)が前記材料管(20)の前記第1区間(22)の領域内に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の射出成形ノズル。
【請求項11】
前記材料管(20)の前記第2区間(24)が前記材料管に付設された前記切欠き(60)の前記第2区間(64)内に固定されていることを特徴とする請求項9または10に記載の射出成形ノズル。
【請求項12】
前記材料管(20)の前記第2区間(24)が前記材料管に付設された前記切欠き(60)の前記第2区間(64)内に圧入されていることを特徴とする請求項11に記載の射出成形ノズル。
【請求項13】
前記各材料管(20)の前記ヒータ(40)が前記材料管(20)に付設された前記切欠き(60)の前記第1区間(62)内まで延在していることを特徴とする請求項7〜12のいずれか一項に記載の射出成形ノズル。
【請求項14】
前記ヒータ(40)の外径(HD)が前記射出成形ノズル(10)の冷間状態で、前記切欠き(60)の前記第1区間(62)の直径(D)よりも小さいことを特徴とする請求項7〜13のいずれか一項に記載の射出成形ノズル。
【請求項15】
前記ヒータ(40)の前記外径(HD)が前記射出成形ノズル(10)の運転状態で、前記切欠き(60)の前記第1区間(62)の前記内径(D)に等しいことを特徴とする請求項7〜14のいずれか一項に記載の射出成形ノズル。
【請求項16】
前記材料管(20)の前記各ヒータ(40)が制御装置によって個別的に制御可能であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の射出成形ノズル。
【請求項17】
前記ケーシング(50)が断熱板(70)を備えていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の射出成形ノズル。
【請求項18】
前記断熱板(70)が前記ケーシング(50)に固定されていることを特徴とする請求項17に記載の射出成形ノズル。
【請求項19】
前記断熱板(70)が前記切欠き(60)と合致する貫通穴(72)を有することを特徴とする請求項17または18に記載の射出成形ノズル。
【請求項20】
前記ケーシング(50)が少なくとも1本のドエルピン(80)を備えていることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の射出成形ノズル。
【請求項21】
前記ドエルピン(80)が前記断熱板(70)を貫通していることを特徴とする請求項20に記載の射出成形ノズル。
【請求項22】
前記材料管(20)がシャフト(90)によって取り囲まれていることを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載の射出成形ノズル。
【請求項23】
前記シャフト(90)が複数の部分によって形成されていることを特徴とする請求項22に記載の射出成形ノズル。
【請求項24】
前記各シャフト(90)が前記断熱板(70)の付設の前記貫通穴(72)内に達していることを特徴とする請求項22または23に記載の射出成形ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−505280(P2011−505280A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536340(P2010−536340)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009105
【国際公開番号】WO2009/071157
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(599005136)ギュンター・ハイスカナルテヒニク・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (22)
【Fターム(参考)】