説明

射出成形方法

【課題】インラインスクリュー型の射出成形装置を用い、ペレット等の粉体状材料と、粉体状材料とを十分に混ぜないまま加熱シリンダに直接供給しても、品質の安定した成形品が得られるようにする。
【解決手段】射出成形装置の加熱シリンダ13の先端部に圧力センサ27を組み込む。計量工程中に、投入口28に連なるホッパー40に、定量フィーダ52,54から粒体状のバイオマス樹脂45と粉体状の添加剤46とを少量ずつ供給する。投入口28直下では、加熱シリンダ内の空間に隙間を残しつつ材料が時間的に分散して供給される。コントローラ25は、圧力センサ27で検知した圧力値に基づいてスクリュー14の後退力PJを算出し、これに係数K(1.2〜2.0)を乗じた力がスクリュー14に加わる前進力PHとなるように駆動装置18を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量機能を有するスクリューを用いて、溶融成形材料を金型内に注入する射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形の代表的なものとして射出成形方法が広く知られている。この射出成形方法では、加熱シリンダ内にスクリューを配置した射出成形機と、雄型と雌型からなる金型が用いられる。一般的な射出成形方法では、計量工程(可塑化計量工程とも称す)、型締工程、射出充填工程、保圧及び冷却工程、及び離型取出工程が順次実行される。
【0003】
計量工程では、プラスチックを主成分とする成形材料が加熱シリンダ内に供給される。成形材料は、加熱シリンダからの加熱とスクリュー回転による摩擦熱によって溶融されながら、シリンダ先端に向けて送られる。この溶融成形材料は、ノズルから流出しない状態で、シリンダ先端に貯留される。溶融成形材料の貯留量が増加すると、回転中のスクリューが後方に押圧され、ノズルと反対方向に向かって後退する。このスクリューの後退位置から、溶融成形材料の貯留量が計測される。スクリューが所定の後退位置まで戻ると、スクリューの回転が停止して、計量工程が終了する。
【0004】
次に、雄型と雌型を組み合わせて型締をしてから、加熱シリンダの先端にあるノズルを金型のゲートに接続する。スクリューの回転を停止したままで、シリンダ先端に向けて移動することにより、溶融した成形材料を高い圧力で金型内のキャビティに射出充填する。この射出充填後も金型内の溶融成形材料が所定の圧力に保たれるように、ノズルを金型のゲートに押し当てたままにして保圧する。その後、金型を冷却し、成形品を固化する。最後に、金型を雄型と雌型に分離し、成形品を取り出す。
【0005】
計量工程では、ホッパー内の成形材料が加熱シリンダに供給される。このホッパー内には、1回の射出成形に必要な成形材料を上まわる十分な量の成形材料が収納され、成形材料が自重によって順次加熱シリンダ内に供給される。そして、スクリューの送り量に合わせて成形材料を自重でホッパーから加熱シリンダ内に供給し、ホッパーに連なる投入口の直下では、加熱シリンダ内が成形材料で常に充満状態となる供給方法が標準的に用いられる。
【0006】
加熱シリンダ内に供給された成形材料は、溶融・攪拌され、溶融成形材料としてシリンダ先端の液溜り部に向けて送られる。この溶融成形材料は、シャットオフノズル(ニードル状のバルブを装備したノズル)などによりノズル先端からの洩れが阻止されるため、液溜り部に溜まってゆく。この溶融成形材料の貯留に応じて、スクリューがその圧力を受けて後退する。
【0007】
スクリューが後退するときに、スクリューは加熱シリンダ先端に充満した成形材料の圧力を受けて後退する。ここで、スクリューの回転数が高いほど加熱シリンダ内での成形材料の送り量が大きくなるので、初期位置(前進位置)から特定位置までスクリューが後退するまでの時間(計量時間)が短くなる。他方、スクリューの回転数が低いほど、成形材料の送り量が小さくなるから、計量時間が長くなる。なお、スクリュー回転数が一定の場合には、スクリューが後端側から受ける圧力を低く設定するほどスクリューが速く後退するので計量時間が短くなり、高いほど計量時間が長くなる。
【0008】
計量工程において、溶融成形材料がスクリューと一緒に回転(「ともまわり」と称する)すると、溶融成形材料を液溜りへ搬送することができない。溶融成形材料が搬送されるには、溶融成形材料とシリンダ内壁との摩擦によって、溶融成形材料がスクリューの回転よりも遅く回転するか、又は回転しない(いずれもスクリューとの位置関係が変わる)ことが必要である。
【0009】
しかし、溶融成形材料が高密度化したり、摩擦の大きなものであると、溶融成形材料がシリンダ内壁に押し付けられた際に、シリンダ内壁に貼り付いて移動し難い状態が生じる。その結果、スクリューが溶融成形材料を押そうとする時に、シリンダ内壁に貼り付いた溶融成形材料の抵抗に負けて、スクリュー自体が後退することがある(これを「ネジ抜き現象」と称する)。これは、シリンダ内壁に貼り付いた溶融成形材料がナットに、そしてスクリューがボルトとして機能し、スクリューだけが後退するように作用する。
【0010】
溶融成形材料が完全にシリンダ内壁に貼り付いていると、スクリューはその抵抗によって後退してしまい、液溜り部の溶融成形材料の圧力を高めることができない。しかし、通常行われている射出成形では、溶融成形材料がスクリューと「ともまわり」しない程度の適度の摩擦によって、シリンダ内壁に貼り付くことなく下流に搬送されるように、スクリューの構造や、成形条件が選定される。
【0011】
特許文献1には、スクリューの後退力と前進力を制御して、内部歪みなどが生じない高品質の成形品を製造可能とする射出成形機が記載されている。この射出成形機では、計量工程では、成形材料が一定の割合で加熱シリンダに供給され、そして加熱シリンダ内でスクリューが一定速度で回転しており、溶融した成形材料を加熱シリンダ先端の液溜まり部に向けて送り込む。液溜まり部には、溶融樹脂圧力を測定する圧力センサが配置されている。樹脂圧力を圧力センサで監視しながら、樹脂圧力が所定値に保たれるように、スクリューの軸方向の位置を調整して、液溜まり部の容積を調整する。これとともに、樹脂圧力は演算部に送られ、スクリューの断面積を用いて、スクリューの先端に作用する後退力が算出される。サーボモータは、後退力と同じ大きさの前進力を発生し、スクリューの後端を押圧する。これにより、計量工程などで、スクリューの後退力と前進力とをバランスさせている。
【0012】
特許文献2には、射出・保圧工程中に、樹脂圧力の異常によって、金型やスクリューが破損しないようにした射出成形機が記載されている。この射出成形機は、液溜まり部に樹脂圧センサが配置されている。また、スクリューの後端に作用する背圧センサ(ロードセル)が設けられている。コントローラは、射出・保圧工程中に、樹脂圧センサで測定した樹脂圧と、背圧センサで測定した背圧値とを比較し、2つの測定値の差が許容範囲内である場合には射出・保圧工程を続行させ、許容範囲外のときには射出・保圧工程を強制終了し、金型等の破損を防止する。
【0013】
ところで、自然環境への負担を軽減する方法として、石油系の樹脂材料に代えて植物などの生物由来の樹脂材料を用いることが様々な分野で試みられている。このような樹脂材料はバイオマス樹脂(バイオプラスチック)とも称され、中でもポリ乳酸樹脂(PLA)やセルロース系樹脂はカーボンニュートラルであることからその実用化が検討されている。ところが、バイオマス樹脂で作られた成形品の多くは、一般樹脂の成形品と比較して耐熱性に乏しく、成形品が燃えやすいという難点がある。
【0014】
バイオマス樹脂の耐熱性や難燃性は添加剤の混入により改善することが可能である。一般樹脂の場合には、主成分となるベース樹脂に目的に応じた各種の添加剤を混入させるにあたっては、これらの材料を混練機に一斉に投入し、十分に混合・分散させた上で粒体状のペレット材料にしている。そして、こうして得たペレット材料を射出成形機に投入して成形を行えばよい。この点、ベース樹脂としてバイオマス樹脂を用いる場合、成形品の難燃性を改善するには粉体状の添加剤が不可欠で、これらの添加剤の多くはバイオマス樹脂とともに混練機に一斉投入しても十分な混合・分散作用を得ることが難しい。このため、まず主成分たるバイオマス樹脂を単独でペレット化しておき、その上でこのペレットと添加剤とを混練機に投入して十分に混合・分散させて再ペレット化する必要がある。
【0015】
したがって射出成形工程も含めると、もともと耐熱性が乏しいバイオマス樹脂に対して3回の加熱処理が加わり、こうした熱履歴によって分子量の低下や着色などが生じ、成形品の品質を著しく劣化させる原因となる。熱履歴の回数を減らすには、すでにペレット化されているバイオマス樹脂に添加剤を混合して再ペレット化する混練処理を止め、バイオマス樹脂のペレットとともに粉体状の各種添加剤をそのまま射出成形機のシリンダに供給すればよい。この手法は、「直接材料投入混練成形法(Direct Mixing:DM成形法)」として利用されており、複数種類の成形材料をブレンドしてペレット化する前処理を不要とする。これにより、成形材料の熱履歴を減らして成形品の品質を高く維持し、かつ工程コストの低減も図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−211508号公報
【特許文献2】特開2006−272867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述のように、例えば耐熱性が改善されたバイオマス樹脂で高品質の成形品を得るには、主成分となる粒体状のベース樹脂に加え、耐熱性を高めるための粉体状の添加剤を直接的に射出成形機に投入するDM成形法が有利である。ところが、耐熱性を高めるための添加剤は一般に機械的強度を低下させるため、これを補うために粉体状の添加剤や相溶剤などの添加剤も併用される。
【0018】
このように、粒体状のベース樹脂に対して粉体状の添加剤を組み合わせてDM成形を行う場合には、射出成形機のシリンダ内で粒体状、粉体状などの異種の材料を十分に混練・分散させることが難しくなる。特に、粉体状材料の割合が30%を越えるようになると、粒体状材料と粉体材料との混練・分散にムラが生じやすくなる。材料の混練・分散ムラは材料とシリンダ内壁との間の摩擦を変動させる要因になり、計量工程にも悪影響を及ぼして成形品の重量や物性にバラツキを生じさせる結果となる。
【0019】
本発明は、以上の問題点を考慮してなされたもので、ペレットのような粒体状材料とともに粉体材料とを射出成形機に直接供給しても、これらの成形材料をシリンダ内で十分に混合するとともに安定した計量が行われるようにして品質の安定した成形品が得られる射出成形方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明による射出成形方法は、ベース樹脂となる粒体状材料と粉体状の添加剤とを含む複数の材料を混合した成形材料を投入口から加熱シリンダ内に供給し、加熱シリンダの内部でスクリューを回転して成形材料をシリンダ内で混練分散しながらシリンダ先端部に貯蔵するとともに、貯蔵された成形材料からの押圧力で前記スクリューを計量設定位置に後退させて計量を行った後にスクリューを前進させて材料を金型の中に高い圧力で押し込んで射出成形を行う成形方法であって、計量を行う際にはシリンダ先端部に貯蔵された成形材料からの圧力を検出し、検出された圧力値に対応して決まるスクリューの後退力に、1.2〜2.0の範囲から予め設定された係数を乗じた作用力をスクリューの前進力として加え、かつ前記投入口から前記成形材料を疎らに投入する制限供給を行って投入口の直下では加熱シリンダの内壁とスクリューとの間に形成される成形材料の移送空間に隙間を残しながら成形材料を供給し、計量に要する時間を、投入口の直下で加熱シリンダの内壁とスクリューとの間に形成される成形材料の移送空間を稠密に満たすように粒体状材料を充填供給する際の標準計量時間よりも長くしている。
【0021】
本発明では、加熱シリンダとスクリューとの間に形成される成形材料の移送空間が粒体状材料だけで稠密に満たされるように材料供給する場合の標準的な計量時間に対し、1.5倍〜3倍の計量時間で計量が行われるようにすることが望ましい。この範囲の下限よりも短い計量時間では粒体状のベース樹脂と粉体状の添加材などとの混練が不足しがちになり、上限よりも長い計量時間では成形材料、特に粉状の添加剤の熱劣化が懸念される。こうした条件は、特に粉体状の添加物の比率が粒体状材料の30重量%以上である場合に適している。
【0022】
具体的な例としては、ベース樹脂としてポリ乳酸樹脂又はセルロース系樹脂、添加物として難燃剤又は相溶化剤を用いることができる。これらの成形材料の供給を時間的に分散させて少量ずつ供給する制限供給を行うにあたっては、粒体状のベース樹脂と粉体状の添加剤とを加熱シリンダ内に少量ずつ連続供給する手法、またこれらの材料をシリンダに間欠的に供給する手法、粒体状のベース樹脂と粉体状の添加剤とを交互に供給する手法などがある。また、成形サイクルは、計量工程と型締工程と射出充填工程と保圧冷却工程と離型取出工程とを有し、保圧冷却工程開始から離型取出工程終了までの間に成形材料の計量が行われる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、PLA等、強度が脆弱な粒体状のベース材料に難燃性能を付与するための難燃剤や添加剤など、粉体状の材料を高い比率で加えた成形材料を用いて射出成形を行うにあたり、粒体状、粉体状という異種の材料を十分に混錬しないままで、直接、射出成形機のシリンダに供給して成形を行った場合でも、重量に大きなバラツキがなく、品質の安定した成形品が得られる。なお、本発明方法は、ペレットの形状や供給状態によっては、シリンダ内壁の樹脂抵抗が大きく変化するエラストマーなどのペレット材料にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の射出成形方法を実施する射出成形装置の概略構成図
【図2】スクリューのゾーン構成を説明する図
【図3】射出成形サイクルを説明する図
【図4】計量工程の途中におけるスクリューの位置を説明する図
【図5】計量工程終了時におけるスクリューの位置を説明する図
【図6】射出・充填工程におけるスクリューの位置を説明する図
【図7】型開及び計量工程におけるスクリューの位置を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示されるように、本発明方法に好適に用いられるインラインスクリュー型の射出成型装置10は、先端にノズル12を有する加熱シリンダ13を備え、その中にスクリュー14が回転可能に配設される。スクリュー14の後端には、スクリュー14を回転させるモータ16と、スクリュー14を軸方向(図1の左右方向)に移動させるピストン17とを備えた駆動装置18が設けられる。ピストン17には、計量工程においてスクリュー14が後退する際の抵抗力となる背圧を検出する背圧センサ21と、スクリュー14の後退位置、即ち計量完了位置を検出する位置センサ22が設けられ、それぞれの検出結果がコントローラ25に入力される。
【0026】
また、駆動装置18は、コントローラ25と協働してピストン17の背圧を制御する機能を備えている。このため、駆動装置18にはコントローラ25からの指令を受けてオン/オフ制御され、ピストン17に適宜の背圧を与えるためにタンク19からのエアー供給を行うポンプ19aと、コントローラ25からの設定指示に応じてピストン17の背圧を設定する調圧装置20と、背圧センサ21で検出された背圧値に応じてコントローラ25からの制御信号に基づき、調圧装置20に設定された背圧が保たれるようにフィードバック制御されるサーボバルブ20aが設けられている。
【0027】
加熱シリンダ13の外周にはヒータ26が巻回して設けられ、加熱シリンダ13の内部に供給された成形樹脂を可塑化に必要な所定温度に加熱する。成形用金型30は内部にキャビティ31が形成された固定型32と可動型33とから構成され、固定型32のスプルー34にノズル12の先端が接続される。また、ピストン17がスクリュー14を図1の左方向(前進方向)に押圧し移動させて射出動作が行われ、溶融された樹脂が所定の圧力でノズル12を通して成形用金型30へ射出される。
【0028】
加熱シリンダ13の長さ方向における後端側に投入口28が形成され、この投入口28の上方にホッパー40が取り付けられている。ホッパー40の上方に材料供給装置50が設けられ、この材料供給装置50から供給される成形材料がホッパー40、投入口28を通して加熱シリンダ13内に供給される。材料供給装置50はドラム51,53を備え、ドラム51には成形材料の主成分となるベース樹脂として粒体状材料であるバイオマス樹脂45が投入され、ドラム53には粉体状材料である添加物46が投入される。
【0029】
ドラム51,53の出口には計量フィーダ52,54が設けられ、それぞれの計量フィーダ52,54から計量済みのバイオマス樹脂45、添加物46がホッパー40に供給される。ペレットと称される粒体状の一般的な成形材料を加熱シリンダ13に供給する場合には、成形材料は自重で途切れることなくホッパー40に供給されるのが標準である。このため、投入口28の直下では、加熱シリンダ13の内壁とスクリュー14との間に形成される空間にはほとんど隙間が生じないように成形材料が稠密に充填される。
【0030】
これに対し、この実施形態ではバイオマス樹脂45、添加物46の各々は計量フィーダ52,54で一定量が計量された後、それぞれが時間をかけて少しずつホッパー40に供給される。具体的には、スクリュー14が回転して計量工程が開始される時点から、スクリュー14が停止して計量工程が終了するまでの間に、一定量のバイオマス樹脂45、添加物46は時間的に分散してホッパー40に供給されるようになる。このため、投入口28の直下では、加熱シリンダ13の内壁とスクリュー14との間に形成される成形材料の移送空間に隙間を生じさせながらバイオマス樹脂45と添加物46とが供給される。
【0031】
なお、計量フィーダ52,54からバイオマス樹脂45と添加物46とをホッパー40に供給する際には、計量工程期間中に各々を少量ずつ同時に連続的に供給し、あるいは計量工程期間中に各々を同時に小刻みに間欠的に供給したり、さらには少量ずつ交互に供給したりしてもよい。計量フィーダとしては、成形材料の供給に支障がなければ特に制限はなく、スクリューフィーダー、振動式フィーダ、ポケット型定容量切り出し式フィーダ、テーブルフィーダや、サークルフィーダなどを用いることができる。
【0032】
コントローラ25には、成形材料の種類(樹脂の種類や添加物の種類等)、材料の形状(粉体、粒体、液体、ペレット)、混合比率(ベース樹脂と添加物との割合)、射出成形条件(1ショットの射出量、シリンダの加熱温度、スクリューの回転数、背圧設定値等)等の諸因子に応じて、成形材料が均一且つ十分に混練されるための必要混練時間データが入力されている。この必要混練時間データは予め予備試験等により得られたものが用いられる。また、計量時間が必要混練時間以上となるように、計量時間に対する計量フィーダ52,54における成形材料の単位時間当りの供給量が入力されている。
【0033】
コントローラ25は、シリンダ先端部にある圧力センサ27、背圧センサ21、位置センサ22からの情報によって最初の成形のスタート時と前の成形が保圧冷却工程に入ったことを確認した後、計量フィーダ52,54からそれぞれの成形材料を選択された供給プログラムにしたがってホッパー40に供給し始める。
【0034】
図2に示されるように、加熱シリンダ13内のスクリュー14は、投入口28側から順に供給ゾーン41、圧縮ゾーン42、計量ゾーン43の3ゾーンに区分される。計量工程が開始される時点では、投入口28の直下に計量ゾーン43が位置している。ホッパー40に投入された成形材料は投入口28から供給ゾーン41に供給され、スクリュー14の回転によって加熱シリンダ13内をスクリュー先端側に搬送される。加熱シリンダ13内を搬送される成形材料は、回転するスクリュー14の表面と加熱シリンダ13の内壁との間で発生する剪断熱、及び加熱シリンダ13の外周に設けられたヒータ26からの熱によって徐々に溶融される。
【0035】
圧縮ゾーン42において成形材料の溶融混練が開始され、溶融混練された成形樹脂が更に先端側に搬送されて計量ゾーン43に達する。加熱シリンダ13の先端部内壁に圧力センサ27が設けられ、溜まった溶融樹脂の圧力が検出される。検出された圧力値はコントローラ25に送信される。そして、溶融混練された成形材料がシリンダ先端部15に溜まるに伴ってスクリュー14はその圧力を受けて後退し、計量設定位置(図5参照)に到達するとモータ16の回転が停止され後退も停止する。
【0036】
図3に示されるように、射出成形サイクルは、計量工程、型締工程、射出充填工程、保圧冷却工程、離型取出工程の繰返しとなっている。計量工程では、モータ16の駆動により加熱シリンダ13内でスクリュー14が回転する。計量工程の開始とともにホッパー40を通して加熱シリンダ13に成形材料が供給されているから、成形材料はスクリュー14の回転により混練・溶融(可塑化)されながらシリンダ先端側に送られ、徐々にシリンダ先端部15に貯蔵される(図4参照)。
【0037】
シリンダ先端部15における成形材料の貯蔵量が増えるのに伴い、貯蔵された成形材料自身の圧力に基づく後退力がスクリュー14に加わる。このため、スクリュー14は回転しながら後退し、予め設定された計量設定位置まで後退したことが位置センサ22で検知されるとモータ16が停止し、同時にスクリュー14の回転及び後退も停止して一回の計量を終了する(図5)。この計量工程に要する時間が計量時間である。
【0038】
型締工程は、型開状態にある可動型33と固定型32とを閉じて成形用金型30内に成形空間を形成する工程であり、型締シリンダ(図示せず)によって可動型33を固定型32の方向に移動して当接させる。その後、固定型32のスプルー34をノズル12に接合させるノズルタッチを行うが、接合させた状態で成形を繰り返しても良い。
【0039】
射出充填工程(射出工程、あるいは充填工程とも言う)は、加熱シリンダ13内で溶融され流動状態になってシリンダ先端部15に貯蔵された成形材料を、スクリュー14の前進によりノズル12から成形用金型30内に射出する。これにより、溶融した成形材料が成形用金型30のキャビティ31内に充填される。
【0040】
保圧冷却工程は、射出され充填された後も、スクリュー14によってキャビティ31内に圧力が加えられる保圧と、その状態で充填された樹脂を固化させるための冷却とを行う。保圧は、成形用金型30のキャビティ31内に充填された成形材料に圧力をかけ続けることで、小さな気泡が抜けてキャビティ31に形成された詳細な形状が成形品に転写される。また、保圧は保圧冷却工程の略前半で完了するが、冷却はその後も続けられ成形品が離型の際に十分な剛性が得られる程度まで行われる。
【0041】
離型取出工程では、型締シリンダにより可動型33を固定型32から離れる方向に移動させて成形用金型30を開き(図6参照)、この型開動作の終了間際に突出しピン35によって成形品が可動型33から離型される。
【0042】
上記各工程の中の保圧冷却工程において、保圧が完了する前であっても充填された樹脂がある程度固化されたところでスクリュー14を回転させ、次の計量工程が開始される。また、冷却が終了するまでに計量工程を終了させればよい。もちろん、計量の開始時期を時間的に後にずらすこともできるが、上記のようにnサイクル目の保圧冷却工程中に、n+1サイクル目の計量工程を行うことで成形サイクルの効率化を図ることができる。
【0043】
次に、本発明による射出成形方法について、図1に戻って説明する。
【0044】
コントローラ25に成形材料の種類、成形条件等の諸因子が入力されると、コントローラ25は入力されている必要混練時間データから成形材料に必要な計量時間を選択する。また、コントローラ25は、計量フィーダ52,54に貯留されている1サイクル分のバイオマス樹脂45及び添加物46について、計量を開始してから終了するまでの計量時間内に、計量フィーダ52,54からホッパー40に供給される単位時間当りのバイオマス樹脂45と添加物46との供給量を算出して計量フィーダ52,54に設定する。これにより、計量フィーダ52,54で計量された一定量のバイオマス樹脂45と添加物46の双方は、計量工程が開始されてから終了するまでの間に、加熱シリンダ13に少しずつ分散して供給されるようになる。
【0045】
バイオマス樹脂45と添加物46とを均一且つ十分に混練するために必要な必要混練時間が20秒であるとした場合、計量工程での計量時間が少なくとも20秒以上になるように決められる。この計量時間内に計量フィーダ52,54に貯留されている1サイクル分の材料がホッパー40に制限供給されるが、材料の単位時間あたりの供給量、あるいは材料の供給速度は、供給開始から供給終了までの間、できるだけ均等であることが好ましい。したがって、成形材料を計量フィーダ52,54からホッパー40に少量ずつ連続的にぱらぱら落とす少量連続供給方法(パラパラ入れと称する)か、ホッパー40に一定間隔で一定量を間欠的に落とす間欠供給方法を採用することが好ましい。間欠供給の場合、計量フィーダ52,54から交互に供給されるようにしても良い。
【0046】
計量工程がスタートすると、コントローラ25は圧力センサ27、背圧センサ21、位置センサ22からの情報に基づいて、計量フィーダ52,54からそれぞれの成形材料をホッパー40に制限供給し始め、モータ16を駆動してスクリュー14を回転させる。
【0047】
溶融された成形材料が徐々に前方に送られ、シリンダ先端部15に溜まってくるとスクリュー14が押し戻され、加熱シリンダ13の後方に移動し始める。シリンダ先端部15に設けられた圧力センサ27が溶融された成形材料の樹脂圧S(MPa)を検出し、背圧センサ21がスクリュー14を前方に付勢する背圧Tを検出する。樹脂圧Sが検出されると、コントローラ25はこの樹脂圧Sのもとでスクリュー14に加わる後退力PJを算出し、算出された後退力PJに係数Kを乗じた前進力PHを算出する。そして、この前進力PHを得るための背圧Tを調圧装置20に設定する。
【0048】
ところで、スクリュー14は自らの回転で成形材料を加熱シリンダ13の前方に移送しているから、その際の樹脂抵抗は反力PTとなってスクリュー14を後退方向に押圧することになる。このため、スクリュー14に対しては、後退方向では後退力PJのほかに樹脂抵抗による反力PTが加わり、前進方向では背圧Tによる前進力PHが加わった状態となっている(PH=PJ+PT)。したがって、前進力PHが樹脂抵抗による反力PTの分だけ低くなり、しかも反力PTはスクリュー14の回転速度や成形材料の混練状況などの影響で変動しやすく、正確な計量のためにスクリュー14に加えておくべき前進力PHが不安定になる。
【0049】
この点、この射出成形装置にあっては、前進力PHが過大にならないように、しかも樹脂抵抗による反力PTの変動を無視することができるように、コントローラ25によって最適な前進力PHを保つことができるようにしている。このためコントローラ25は、圧力センサ27で検出された樹脂圧Sに対応して決まる後退力PJを基準とし、この後退力PJに、1.2〜2.0の範囲で設定された係数Kを乗じ、スクリュー14に対してこの力「K・PJ」が前進力PHとして作用するように背圧Tを制御する。
【0050】
係数Kの値は、予め予備試験等を行うことによって、成形材料や成形条件などの諸因子に応じてそれぞれ最適な値を用意しておくことが可能で、適宜に最適のものを選択して用いればよい。この結果、樹脂抵抗による反力PTが変動するようなことがあっても、そのときの樹脂圧に基づく後退力PJに追随するように、前進力PHがバランスよく調整されるから、計量工程が安定に保たれ、したがって計量時間(混練時間)も大きく変動することがなくなり、粒体状のベース樹脂と粉体状の添加剤とからなる成形材料を用いながらも、高品質の成形品を得ることが可能となる。
【0051】
以上のような係数Kを用いて前進力PHを調整することにより「PH/PJ=K」となる。係数Kの値は「1.2〜2.0」の範囲であれば任意であるが、具体的には1.2,1.3,1.5,1.8を用意しておき、成形条件に応じて適宜に切り替えて用いることができる。係数Kが1又は1に近いと、摩擦抵抗をほとんど無視した設定になる。このため、実際には樹脂の摩擦抵抗でスクリュー14が後退しやすい状態となり、成形材料をシリンダ先端部15に向けて送ることができず、成形材料がスクリュー14と一緒にともまわりしやすくなる。また、係数Kが「2.0」を越えて大きくなると、スクリュー14に対する前進力PHが過大になってスクリュー14が後退しにくくなり、計量時間が延長され成形材料の熱劣化が懸念される。
【0052】
一般に、スクリュー14の供給ゾーン41に成形材料が密に詰まっている状態では、スクリュー14を回転させたときの樹脂抵抗は大きくなり、また変動しやすくなる。このため、スクリュー14の回転速度を一定に保つ上では不利になるが、上述のような制限供給により供給ゾーン41に供給される成形材料を少量にすれば、樹脂抵抗は小さく、かつ変動も抑えることができ反力PTの影響も小さくなる。
【0053】
本発明の成形方法の場合、成形材料を時間的に分散させて加熱シリンダ13に供給する制限供給が行われることから、成形品一個当たりに必要な成形材料の計量には時間がかかるようになる。標準的に成形材料をシリンダに供給する場合、例えば上述した粒体状のバイオマス樹脂45だけを定量フィーダ52を通さずに自重でホッパー40に流し込み、そのまま投入口28から加熱シリンダ13に供給する場合、他の条件を共通とすれば、成形材料の溶融及び混練の状態が良好で、かつ成形材料に熱劣化を生じさせないためには、スクリュー14の回転数と計量時間との組み合わせとしては、以下の[表1]に示す組み合わせが妥当なものとして確認されている。なお、成形材料が粒体状のものだけであることから、係数Kは「2.5」に設定している。
【0054】
【表1】

【0055】
[表1]に示す計量時間を、それぞれのスクリュー回転数における標準計量時間とすると、本発明方法の場合には、粒体状材料と粉体状材料とが計量フィーダ52,54を利用して少量ずつ時間的に分散して供給されるため、十分に混練が進むように各々のスクリュー回転数における計量時間は、上記の標準計量時間の1.5倍〜3倍程度に延長しておくことが好ましい。なお、使用する成形材料が耐熱性に劣るものである場合には、加熱シリンダ13内に長時間滞留することを避けるために、計量時間の上限は3倍未満の方が好ましいこともあり得る。
【0056】
スクリュー14の回転数は、混練性能の向上と剪断発熱による劣化の両方を考慮して30〜300rpmの範囲内で設定することが好ましいが、50〜200rpmの範囲であればより好ましく、それぞれの回転数に適した計量時間のもとで計量を行えばよい。なお、スクリュー14の回転数が30rpm未満では、十分に均一混練を行うことができず、300rpmを超えると剪断発熱によって成形材料が劣化する虞がある。特に、成形材料のベース樹脂がバイオマス樹脂の場合には、300rpmを超えると劣化の危険が大きくなる。
【0057】
なお、図示はしていないが、射出成形機の加熱シリンダの外側を、送風などの手段によって冷却する装置を付加すると、材料の剪断発熱による温度上昇を抑制することができ、スクリュー回転数を高く設定することができる。
【0058】
本発明の射出成形方法は、標準的な材料供給、すなわち粒体状の成形材料を自重でホッパー40に流し込み、スクリュー14の計量ゾーン41内の空間が成形材料でほぼ稠密に満たされる材料供給に対し、計量ゾーン41内の空間に隙間が生じるように粒体状材料と粉体状材料とを時間的に少量ずつに制限しながら供給する制限供給方式が採られている。このため、スクリュー14の回転数は、例えば50〜200rpmの中から適宜に選択することが可能であるが、標準的計量時間に対する計量時間比は長くなる。しかし、ホッパー40の出口や加熱シリンダ13の内部で成形材料が詰まることはなく、成形材料を前方に移送する際の樹脂抵抗も低く抑えられ、均一な混練作用が得られる。
【0059】
本発明の射出成形方法を用いて成形テストを行い、成形条件を変えながら実施例1〜実施例6、そして比較例1〜比較例6のサンプルを成形した。これらのサンプルについては、共通の条件で各種の試験を行ってその良否を評価した。以下、成形テストの概要及びその評価結果について説明する。
【0060】
[成形材料]
成形材料としては、以下を用いた。
・ポリ乳酸樹脂(ペレット)…ネーチャーワークス製、4032D 100重量部
・難燃剤(粉状)…ADEKA、アデカスタブFP2200 35重量部
・相溶剤(粉状)…伏見製薬所製、ラビトルFP110 20重量部
・分解防止剤(粉状)…三菱レイヨン製、メタブレンW600A 5重量部
・PTFEドリップ防止剤(粉状)…ダイキン工業製、FA500H 0.5重量部
・加水分解防止剤(粉状)…ラインケミー製、スタバクゾール1FL 3重量部
・フィラー(微粉末)…日本タルク工業製、P3 8重量部
〈合 計〉 171.5重量部
【0061】
ポリ乳酸樹脂としては、予め熱風乾燥機内で80℃で5時間乾燥したものを使用した。また、難然剤は予め減圧乾燥機内で80℃で5時間減圧乾燥したものを使用した。上記成形材料のうち粉体比率は41重量%である。
【0062】
[射出成形装置]
試験に供した射出成形装置は、住友重機械工業社製のSG150U−3を用い、この射出成形装置にJISダンベル試験片、シャルピー試験片と、UL試験片(厚み1.6mm)が同時に射出成形できる金型をセットした。射出成形装置のヒータ温度は、ノズル側から195℃―195℃―190℃―180℃―30℃に設定した。また、1ショットの射出量は120gになるようにした。射出成形は、材料を十分パージしてから、50ショットの捨てショット後、50ショットの成形を行った。
【0063】
テスト成形に用いた金型には、各種試験で用いられる3種類の試験片成形用のキャビティのあるものを用い、一回の成形工程ごとに3種類の試験片を得た。50ショット分のサンプルについて、後述する難燃性試験に用いる試験片は、その50ショット分の全てを重量測定に流用した。シャルピー衝撃試験、破断伸び試験、難燃性試験については、50ショットのうち10ショット経過ごとに得られる5個を試験片として用いた。試験方法と判定基準は次のとおりである。
【0064】
(重量測定)
電子天秤を用いて試験片の重量を測定した。50個の試験片の重量の平均値に対し、個々の重量の変動幅(重量偏差)が全て0.8%以下であれば合格、一個でも0.8%を越えた場合には不合格とした。[表2]には、サンプル中での最大変動幅のものを示す。
【0065】
(シャルピー衝撃試験)
シャルピー衝撃試験用に、JISK−7111に準じて、長さ80mm±2mm、幅10mm±0.2mm、厚さ4mm±0.2mmの試験片を成形し、この試験片にノッチ加工(ノッチ半径0.25mm±0.05mm、ノッチ部の幅8.0mm±0.2mm)を行った。ノッチ付き試験片の質量は4.2gであった。試験装置はTOYOSEIKI社製のIMPACTTESTER(アナログ式)を用いた。10ショットごとにサンプリングした5個の試験片について、JISK−7111に準じてシャルピー衝撃試験に供し、最低値が5(KJ/m)以上である場合を合格とした。
【0066】
(破断伸び試験)
試験片はJIS(K−7113、1号型試験片)に準じて成形した。試験片を島津オートグラフ(AGS−J型)を用いて掴み、引っ張り速度(50mm/min)にて破断するまで引っ張り、破断したときの伸び(破断伸び)の値を測定した。5個の試験片の破断伸びが最も低いもので6%以上であれば合格、6%未満であれば不合格とした。
【0067】
(燃焼性試験:UL−94V)
試験片として、長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.6mmのものを成形した。UL94−Vはプラスチック部品などの燃焼性試験のうちでも最も基本的なもので、規定された寸法の試験片にガスバーナーの炎を当てて試験片の燃焼の程度を調べる。その等級は、難燃性が高い方から順に5VA,5VB,V−0,V−1,V−2,そしてHBがあり、5本のサンプルがいずれもV−1以上(5VA〜V−1)の難燃性を合格とした。
【0068】
実施例1〜6及び比較例1〜6についてそれぞれの試験項目ごとに評価し、試験項目の全てで合格したものを合格と評価し、1項目でも不合格があったものは不合格と評価した。これらの評価結果について、実施例1〜実施例6及び比較例1〜比較例6の成形条件・計量条件とともに以下の[表2]に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
上記[表2]において、「制限」は、計量フィーダで計量された一定量の成形材料が計量期間中に少しずつホッパーに供給される制限供給を意味する。「充填」は、計量フィーダを用いることなく成形材料を自重でホッパーに供給し、シリンダ内にほぼ稠密に充填される供給方式を意味している。計量時間比の欄には、それぞれの実施例及び比較例の計量時間が、[表1]で説明したスクリュー回転数ごとの標準計量時間に対してどの程度の割合になっているかを示している。
【0071】
実施例1〜6については、係数Kの値、スクリューの回転数と計量時間との組み合わせを6種類設定して実験を行ったところ、いずれも評価基準をクリアした。これらの実施例では、計量時間が適切な範囲に収まるように材料の制限供給が行われており、それぞれの計量時間は、[表1]中の標準計量時間に対して1.5倍〜3倍の範囲に収まっている。結果的に、この射出成形装置を用いて射出成形を行うにあたり、スクリューの高速回転による過大な剪断発熱を避けつつ、成形材料を十分に混練分散させ、また熱履歴としても悪影響を生じさせない適切な成形条件であることが確認された。
【0072】
比較例1,2は係数Kの値が不適切で、スクリュー回転数に対して計量時間が適正範囲に収まらない。計量時間が短いと複数種類の成形材料を十分に混練することができず、長すぎると材料の熱劣化が避けられない。また、係数Kが適切な範囲であっても、制限供給の度合によっては計量時間が適切な範囲とならず、良好な評価結果は得られない(比較例3,4)。比較例5,6は充填方式による材料供給であり、粒体状材料のほかに30重量%以上の粉体材料を含む成形材料で射出成形する場合には実用性がないことが分かる。
【0073】
以上、本発明の射出成形方法について詳細に説明したが、本発明は、上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんのことである。また、本発明方法は、ペレットの形状や供給状態によって、シリンダ内壁の樹脂抵抗(PT)が大きく変化するエラストマーなどのペレット材料を用いて射出成形を行う場合にも有効である。
【符号の説明】
【0074】
10 射出成形装置
13 加熱シリンダ
14 スクリュー
16 モータ
17 ピストン
18 駆動装置
21 背圧センサ
22 位置センサ
25 コントローラ
27 圧力センサ
28 投入口
30 成形用金型
40 ホッパー
41 供給ゾーン
42 圧縮ゾーン
43 計量ゾーン
45 バイオマス樹脂
46 添加物
50 材料供給装置
51,53 ドラム
52,54 計量フィーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂となる粒体状材料と粉体状の添加剤とを含む複数の材料を混合した成形材料を投入口から加熱シリンダ内に供給し、加熱シリンダの内部でスクリューを回転して前記成形材料を混練分散しながらシリンダ先端部に貯蔵するとともに、貯蔵された成形材料からの押圧力で前記スクリューを計量設定位置に後退させて計量を行った後、前記スクリューを前進させて射出成形を行う成形方法であって、
前記計量を行う際に、前記シリンダ先端部に貯蔵された成形材料からの圧力を検出し、検出された圧力に基づいて前記スクリューを後退させる方向に作用する後退力に、1.2〜2.0の範囲から予め設定された係数を乗じた力を前記スクリューに前進力として加え、かつ前記投入口から前記成形材料を疎らに投入する制限供給を行って、前記投入口の直下では加熱シリンダの内壁と前記スクリューとの間に形成される成形材料の移送空間に隙間を残しながら成形材料を供給し、前記計量に要する時間を、前記投入口の直下で加熱シリンダの内壁とスクリューとの間に形成される成形材料の移送空間を稠密に満たすように粒体状材料を充填供給する際の標準計量時間よりも長くすることを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
前記投入口の直下で加熱シリンダの内壁とスクリューとの間に形成される成形材料の移送空間を稠密に満たすように粒体状材料を充填供給する際の標準計量時間に対し、1.5倍〜3倍の計量時間で計量を行うことを特徴とする請求項1記載の射出成形方法。
【請求項3】
前記成形材料は、前記粉体状の添加物の比率が30重量%以上であることを特徴とする請求項2記載の射出成形方法。
【請求項4】
前記ベース樹脂がポリ乳酸樹脂又はセルロース系樹脂であるとともに、前記添加物が難燃剤又は相溶化剤であることを特徴とする請求項3記載の射出成形方法。
【請求項5】
前記成形材料の制限供給は、前記シリンダ内に少量ずつ連続供給されることによって行われることを特徴とする請求項3記載の射出成形方法。
【請求項6】
前記成形材料の制限供給は、前記シリンダ内に間欠供給されることによって行われることを特徴とする請求項3記載の射出成形方法。
【請求項7】
前記成形材料の制限供給は、ベース樹脂と複数の添加物が交互に供給されることによって行われることを特徴とする請求項3記載の射出成形方法。
【請求項8】
前記射出成形装置の成形サイクルは計量工程と型締工程と射出充填工程と保圧冷却工程と離型取出工程とを有し、前記保圧冷却工程開始から離型取出工程終了までの間に前記成形材料の計量が行われることを特徴とする請求項1記載の射出成形方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−18283(P2013−18283A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134904(P2012−134904)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】