説明

射出成形機のノズル前後進用モータの制御装置

【課題】型閉じ工程における金型タッチ位置までの工程と金型タッチ位置から型締め完了までの工程と同期して動作させることにより、サイクル時間が伸び生産性が低下する問題を解決する射出成形機のノズル前後進用モータの制御装置の提供。
【解決手段】金型開閉用サーボモータで金型の開閉を行う型締機構と、ノズル前後進用サーボモータでノズルを前後進させるノズル前後進機構を有する射出成形機の該ノズル前後進用サーボモータの制御装置は、前記金型開閉用サーボモータによって可動側金型が固定側金型にタッチする位置まで型閉じを行い、可動側金型が固定側金型にタッチした位置から型締め完了位置まで型締めし、可動側金型が固定側金型にタッチするのと同時に前記ノズルが金型とタッチするように前記ノズル前後進用のサーボモータによって前記ノズルを前進させ、型締め完了と同時に所定のノズルタッチ力を発生するように前記ノズルを前進させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の制御装置に関し、特に、射出成形機のノズル前後進用モータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は型締め部と射出部を備え、樹脂の排出時以外の通常の射出成形動作では、通常、射出部のノズルは固定側金型に当接し、金型に対して所定のノズルタッチ力が発生した状態が維持される。しかしながら、ノズルを金型にタッチさせたまま連続成形運転を行うとノズル先端部の熱が金型に奪われるため、計量工程終了後にノズルを金型から離し、ノズル先端の熱が金型に奪われないようにするスプルブレイクと呼ばれる動作が行われる。スプルブレイクには、ノズルの後退によってスプルをノズルと金型の間で切断し、金型が開いて成形品を取り出す際に成形品が金型から抜けやすくなるという効果もある。
スプルブレイク動作を行った場合には次回の成形サイクルで再びノズルを前進させる必要があるが、その際、前記の固定金型の倒れの問題が発生しないよう、従来は型締めが完了してからノズルを前進させる動作が行われてきた。金型が開いた状態でノズルタッチ力が発生していると、ノズルタッチ力が固定側に金型に作用し、固定金型が倒れる。固定金型が倒れたまま型閉じを行うと、金型が閉まる際に金型のガイドピンをかじったり、成形品のバリや成形品の厚み寸法の偏りが発生するという問題が発生する。
【0003】
固定側金型の倒れを防止し、ノズル先端部の熱が金型から奪われないようにするために、従来はノズルの前進動作は型閉じ・型締め動作が完了してから行われてきた。例えば、特許文献1の段落「0003」および図4に、射出工程の1サイクルが、型閉、型締、ノズル前進、射出保圧、冷却(計量)、ノズル後退、エジェクタなどから構成されることが開示されている。また、特許文献2の段落「0013」〜「0021」および図2には、射出成形機の1成形サイクルのシーケンス制御の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−178377号公報
【特許文献2】特開平7−125035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術で説明した従来技術では、ノズルが前進動作を行うのは型締め完了後であるため、ノズル前進動作を行う分だけサイクル時間が伸び生産性が低下するという問題が発生していた。前述の固定側金型の倒れやノズルの熱が奪われる問題とサイクル時間が伸びる問題を解決するためには型閉じによって金型がタッチするタイミングとノズルが金型にタッチするタイミングが同時となり、かつ型締めが完了するタイミングとノズルがさらに前進して所定のノズルタッチ力を発生させるタイミングとが同時となることが望ましい。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ノズル前進工程をノズルが金型にタッチするまでの工程と、ノズルが金型にタッチしてから所定のノズルタッチ力が発生するまでの工程に分け、それぞれを型閉じ工程における金型タッチ位置までの工程と金型タッチ位置から型締め完了するまでの工程と同期して動作させることにより、サイクル時間が伸び生産性が低下する問題を解決する射出成形機のノズル前後進用モータの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、金型開閉用のサーボモータで金型の開閉を行う型締機構と、ノズル前後進用のサーボモータで射出シリンダ先端のノズルを前後進させるノズル前後進機構を有する射出成形機において、前記金型開閉用のサーボモータによって可動側金型が固定側金型にタッチする位置まで型閉じを行う型閉じ制御部と、前記金型開閉用のサーボモータによって可動側金型が固定側金型にタッチした位置から型締め完了位置まで型締めを行う型締め制御部と、前記型閉じ制御部によって可動側金型が固定側金型にタッチするのと同時に前記ノズルが金型とタッチするように前記ノズル前後進用のサーボモータによって前記ノズルを前進させるノズル前進制御部と、型締め完了と同時に所定のノズルタッチ力を発生するように前記ノズル前後進用のサーボモータによってノズルを前進させるノズルタッチ力制御部と、を有する射出成形機のノズル前後進用モータの制御装置である。
請求項2に係る発明は、前記ノズル前進制御部と前記ノズルタッチ力制御部は、前記型閉じ制御部と前記型締め制御部に金型開閉用サーボモータに指令される移動指令をノズル移動指令換算部において換算して用いることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機のノズル前後進用モータの制御装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ノズル前進工程をノズルが金型にタッチするまでの工程と、ノズルが金型にタッチしてから所定のノズルタッチ力が発生するまでの工程に分け、それぞれを型閉じ工程における金型タッチ位置までの工程と金型タッチ位置から型締め完了するまでの工程と同期して動作させることにより、ノズルタッチ力による固定側金型の倒れを防止し、また、ノズルの熱が金型に奪われるのを最小限に抑え、しかもこれらをサイクル時間を伸ばすことなく実行できる。
さらに、本発明により、型閉じ・型締め動作と同期してノズルが動作するので、作業者が射出成形機の画面で型閉じ速度やストロークを変更した場合には、変更された速度に応じて金型開閉用サーボモータの移動指令が変更されると共にノズル前後進用サーボモータの移動指令も変更される。したがって、作業者は型閉じ速度を変更したとしてもノズル前後進動作に関して何ら設定の変更を行う必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る射出成形機のノズル前後進用サーボモータの制御装置の概略構成を説明する図である。
【図2】本発明に係る射出成形機のノズル前後進用サーボモータの制御装置の制御ブロック図である。
【図3】本発明に係る射出成形機のノズル前後進用サーボモータの制御装置の他の制御ブロック図である。
【図4】型開閉用サーボモータの移動指令からノズル前後進用サーボモータの移動指令への換算を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
本発明は、金型開閉のサーボモータを有する型締機構とノズル前後進用のサーボモータを有する射出成形機に適用される。図1は、本発明に係る射出成形機のノズル前後進用サーボモータの制御装置の概略構成を説明する図である。
【0011】
射出成形機Mは、機台M3上に型締部M1、および射出部M2を備えている。射出部M2は樹脂材料(ペレット)を加熱溶融し、当該溶融樹脂を金型46のキャビティ内に射出するものである。射出シリンダ1の先端にはノズル2が取り付けられ、射出シリンダ1内には、スクリュ3が挿通されている。射出シリンダ1の側部には樹脂材料(図示せず)を射出シリンダ1内に供給するためのホッパ4が取り付けられている。
【0012】
まず、型締部M1を説明する。型締部M1は主に金型46(46a,46b)の開閉を行うものである。型締部M1は、固定側金型46bを取り付ける固定プラテン42、可動側金型46aを該固定側金型46bに対向するように取り付ける可動プラテン41、可動プラテン41を射出部M2方向に前後進させる金型開閉用サーボモータ114、該金型開閉用サーボモータ114の回転位置・速度を検出する位置・速度検出器116、リアプラテン40、トグルリンク43、ボールネジ44、クロスヘッド45を備えている。
【0013】
金型開閉用サーボモータ114の回転駆動はベルトなどによって構成された伝達機構118を介してボールネジ44に伝達される。型締部M1はその他に、リアプラテン40と固定プラテン42とを連結し、可動プラテン41をガイドして固定プラテン42に対して前後進させる複数本の図示しないタイバーを備えている。トグルリンク43は、金型開閉用サーボモータ114によって回転駆動されるボールネジ44に取り付けられたクロスヘッド45を固定プラテン42方向に進退させることによって、可動プラテン41を固定プラテン42方向に前後進させる。
【0014】
型締部M1は、金型開閉用サーボモータ114の駆動によって可動プラテン41が固定プラテン42方向に前進し型閉じが行われ、可動側金型46aと固定側金型46bが接触した後も更に可動プラテン41を固定プラテン42方向に前進させて所定の型締め力を発生させる。そして、可動プラテン41をリアプラテン40方向へ後退させることによって型開きが行われる。
【0015】
次に、射出部M2を説明する。射出部M2は、固定側金型46bを取り付けた固定プラテン42にノズル2を圧接(ノズルタッチ)するために、射出部M2を型締部M1側に前進させるためのノズルタッチ駆動装置を備えている。ノズルタッチ駆動装置は、機台M3に取り付けられたノズル前後進用サーボモータ214、ノズル前後進用サーボモータ214の回転位置・速度を検出する位置・速度検出器216、一端をノズル前後進用サーボモータ214の負荷軸に連結され他端を固定プラテン42に回転自在に支持されたボールネジ34、該ボールネジ34に螺合されたナット33、射出部M2の射出ユニット39の下部に固定された第1の受圧板36、該ナット33に取り付けられた第2の受圧板37、第1の受圧板36と第2の受圧板37の間隔を測定しバネ35の長さを検出するセンサ(図示せず)を備えている。
【0016】
射出ユニット39内には、スクリュ3をその軸周りに回転させるスクリュ回転用サーボモータ(図示せず)、その軸方向に前後進させるスクリュ前後進用サーボモータ(図示せず)、シリンダ1内の樹脂圧を測定するための樹脂圧力センサ(図示せず)などが配設されている。射出ユニット39内の構造は本発明に関連しないので、詳細な説明を省略する。
【0017】
ノズルタッチ駆動装置は、ノズル前後進用サーボモータ214を回転駆動しボールネジ34を回転させることによって、ナット33を固定プラテン42に対して前後進させる。ナット33の前後進によって第1の受圧板36と第2の受圧板37の間隔を調整し、バネ35の弾性力を調節する。図1に示されるバネ35のような弾性体を収縮させることによりノズル押し付け力を発生させる場合は、バネ35の長さを図示しないセンサで測定しノズル押し付け力を求めることができる。これにより、ノズル2の固定型金型46bへのノズル押し付け力(ノズルタッチ力)を発生させることができる。
【0018】
射出成形機Mの数値制御装置は、数値制御用のマイクロプロセッサであるCNCCPU20、プログラマブルマシンコントローラ用のマイクロプロセッサであるPMCCPU17、及びサーボ制御用のマイクロプロセッサであるサーボCPU15を有し、バス26を介して、相互の入出力を選択するようにすることにより各マイクロプロセッサ間で情報伝達が行えるように構成されている。
【0019】
サーボCPUには、位置ループ、速度ループ、電流ループの処理を行うサーボ制御専用の制御プログラムを格納したROM13およびデータの一時記憶に用いられるRAM14が接続されている。サーボCPU15には、サーボCPU15からの指令に基づいて駆動制御される、金型開閉用サーボモータ114とノズル前後進用サーボモータ214が接続されている。各サーボモータ114,214に取り付けられた位置・速度検出器116,216からの出力信号がサーボCPU15に帰還されるように接続されている。各サーボモータ114,214の回転位置は、位置・速度検出器116,216からの位置のフィードバック信号に基づいてサーボCPU15により算出され、各現在位置レジスタに更新記憶される。
【0020】
PMCCPU17には射出成形機Mのシーケンス動作を制御するシーケンスプログラム等を記憶したROM18および演算データの一時記憶等に用いられるRAM19が接続され、CNCCPU20には、射出成形機を全体的に制御する自動運転プログラムなどの各種プログラムを記憶したROM21および演算データの一時記憶に用いられるRAM22が接続されている。
【0021】
成形データ保存用RAM23は、不揮発性メモリであって、射出成形作業に関する成形条件と各種設定値、パラメータ、マクロ変数等を記憶する成形データ保存用のメモリである。LCD/MDI(手動データ入力装置)25は、液晶表示装置(LCD)と各種データを入力するための手動データ入力装置を備えている。液晶表示装置(LCD)は図示しないLCD表示回路によって表示制御される。LCD/MDIユニット25はインタフェース24を介してバス26に接続され、機能メニューの選択および各種データの入力操作が行える。また、数値データ入力用のテンキーおよび各種のファンクションキー等が設けられている。LCD/MDIユニット25を用いて予め設定するノズルタッチ力を射出成形機Mに設定することができる。
【0022】
なお、図1はノズル前後進用サーボモータ214と射出ユニット39の間にバネ35が設けられていてバネ35の反力によってノズルタッチ力を発生する機構を示しているが、本発明においては、バネ35は必ずしも必要ではない。
以上、射出成形機Mの概略構成を説明した。上記の構成は公知のものである。
【0023】
次に、上記射出成型機Mにより構成される本発明に係る射出成形機のノズル前後進用サーボモータ214の制御装置を、図2〜図4を用いて説明する。
図2は、本発明に係る射出成形機のノズル前後進用サーボモータ214の制御装置の制御ブロック図である。型締部M1の型閉じが開始されると、射出成形機Mを全体的に制御する数値制御装置のCNCCPU20は金型開閉用サーボモータ114を駆動制御するための移動指令が所定周期毎にサーボCPU15に出力される。サーボCPU15では、CNCCPU20から入力した移動指令をさらにサンプリング周期(位置、速度、電流ループの処理周期)の移動指令にMcCMDに分割し、図2に示される位置・速度・電流のループ制御を行う。
【0024】
サーボCPU15はCNCCPU20からの移動指令に基づいて、金型タッチ位置までの移動距離と設定された速度にしたがって、金型開閉用サーボモータ114のサーボ制御用の型閉じ方向のサンプリング周期ごとの金型開閉用サーボモータの移動指令McCMD(以下、「金型開閉用サーボモータ移動指令McCMD」、あるいは、「移動指令McCMD」という)をサンプリング周期毎に作成する。この移動指令McCMDは、同時に、ノズル前後進用サーボモータ214のサーボ制御部の移動指令に換算され、ノズル前後進用サーボモータ214の制御ブロックにも出力される。
【0025】
金型開閉モータ移動指令McDMDが減算器100とノズル移動指令換算器300に入力する。減算器100では、金型開閉モータ移動指令McDMDから、位置・速度検出器116よりフィードバックされた位置フィードバック(位置FB)が減算され、該減算器100から位置補償器102に位置偏差が出力される。位置補償器102では該位置偏差にポジションゲインを乗じて速度指令が求められる(位置ループ制御)。
【0026】
位置補償器102から出力された速度指令から、位置・速度検出器116よりフィードバックされた速度フィードバック(速度FB)が減算器104で減算され速度偏差として出力される。減算器104から出力された速度偏差は速度補償器106に出力される。速度補償器106は速度偏差に基づいて、比例、積分などを行ってトルク指令(電流指令)を求める(速度ループ制御)。
【0027】
速度補償器106から出力されるトルク指令(電流指令)から、サーボアンプ112の駆動電流を検出する電流検出器(図示せず)よりフィードバックされる電流フィードバック(電流FB)が減算器108で減算され電流偏差が電流補償器110に出力される。電流補償器110では、減算器108から入力する電流偏差を基にサーボアンプ112に出力されるPWM信号が生成される(電流ループ制御)。サーボアンプ112は電流補償器110から入力するPWM信号に基づいて金型開閉用サーボモータ114を駆動制御する。
【0028】
ノズル移動指令換算器300に入力した金型開閉用モータ移動指令McDMDは、ノズル移動指令換算器300において数1式、あるいは、数2式に基づいて、サンプリング周期ごとのノズル前後進用サーボモータの移動指令MnCMD(以下、「ノズル前後進用サーボモータ移動指令MnCMD」、あるいは、「移動指令MnCMD」という)に換算される。
減算器200では、ノズル前後進用サーボモータ移動指令MnCMDから、位置・速度検出器216よりフィードバックされた位置フィードバック(位置FB)が減算され、該減算器200から位置補償器202に位置偏差が出力される。位置補償器202では該位置偏差にポジションゲインを乗じて速度指令が求められる(位置ループ制御)。
【0029】
位置補償器202から出力された速度指令から、位置・速度検出器216よりフィードバックされた速度フィードバック(速度FB)が減算器204で減算され速度偏差として出力される。減算器204から出力された速度偏差は速度補償器206に出力される。速度補償器206は速度偏差に基づいて、比例、積分などを行ってトルク指令(電流指令)を求める(速度ループ制御)。
【0030】
速度補償器206から出力されるトルク指令(電流指令)から、サーボアンプ212の駆動電流を検出する電流検出器(図示せず)よりフィードバックされる電流フィードバック(電流FB)が減算器208で減算され電流偏差が電流補償器210に出力される。電流補償器210では、減算器208から入力する電流偏差を基にサーボアンプ212に出力されるPWM信号が生成される(電流ループ制御)。サーボアンプ212は電流補償器210から入力するPWM信号に基づいてノズル前後進用サーボモータ214を駆動制御する。
【0031】
ここで、金型開閉用サーボモータ114の移動指令からノズル前後進用サーボモータ214の移動指令への換算では、型閉じが行われる前にあらかじめ、数1式、数2式のL1n/L1cおよびL2n/L2cが計算されている。
【0032】
次に、金型開閉用サーボモータ114の駆動制御を、金型46がタッチする位置までの駆動制御と金型がタッチしてから型締めが完了する位置までの駆動制御とに分けて説明する。
まず、金型開閉用サーボモータ114の金型46がタッチする位置までの駆動制御を説明する。金型開閉用サーボモータ114は、サーボCPU15でサンプリング周期毎の移動指令McCMDに基づいて駆動制御される。一方、ノズル前後進用サーボモータ214は、ノズル移動指令換算器300において移動指令McCMDを数1式に基づいて換算して得られた移動指令MnCMDに従って駆動制御される。
【0033】
【数1】

【0034】
cCMD:サンプリング周期ごとの金型開閉用サーボモータの移動指令
nCMD:サンプリング周期ごとのノズル前後進用サーボモータの移動指令
1c:ノズルが前進を開始してから可動側金型と固定側金型がタッチする位置
(金型タッチ位置)までの金型開閉用サーボモータの移動距離(移動量)
1n:ノズルが前進を開始してからノズルが金型にタッチする位置(ノズルタッチ位置 )までのノズル前後進用サーボモータの移動距離(移動量)
【0035】
ここで、ノズル2が金型(固定側金型46b)にタッチする位置(ノズルタッチ位置)は、ノズル前後進用サーボモータ214を駆動することによって、定速でノズル2を固定プラテン42に向かって前進させた場合に、ノズル前後進用サーボモータ214の負荷やモータトルクが変化し始めた位置を検出し、この位置をノズルタッチ位置としてあらかじめ記憶しておけばよい。また、図1のようにノズル前後進用サーボモータ214と射出ユニット39の間にバネ35等の弾性部材が設けられている場合には弾性部材の反力によってノズルタッチ力が変化し始めた位置をノズルタッチ位置としてあらかじめ記憶しておけばよい。
【0036】
なお、上記説明では、型閉じが開始すると同時にノズルの前進を開始する場合について記載したが、型閉じの途中位置からノズル前進を開始した場合には、ノズルの前進を開始する時点の金型開閉用サーボモータ114の位置から金型タッチするまでの金型開閉用サーボモータ114の移動量を上記L1cに代入して同様にノズル前後進用サーボモータ214の移動量に換算するとよい。
【0037】
以上により、金型46が閉じてタッチするのと同時にノズル2も金型46(46b)にタッチすることができる。この状態では、固定側金型46bのノズルタッチ力が加わることがないため、固定プラテン42の倒れ、つまり、固定側金型46bの倒れは生じない。
なお、金型開閉用サーボモータ114の駆動制御が、請求項1における型閉じ制御部に対応し、ノズル前後進用サーボモータ214の駆動制御が、請求項1におけるノズル前進制御部に対応する。
【0038】
次に、金型開閉用サーボモータ114の金型46がタッチする位置から型締め完了位置までの駆動制御を説明する。金型開閉用サーボモータ114は、金型タッチ位置までの移動に続き、型締め完了位置までの移動、すなわち所定の型締力を発生させる型締め動作を開始する。金型46がタッチするまでの工程と同じく、射出成形機Mを全体的に制御する数値制御装置のサーボCPU15は、金型タッチ位置から型締め完了位置までの移動距離と設定された速度にしたがって、金型開閉用サーボモータ114を駆動制御するための型締め方向の移動指令McCMDをサンプリング周期毎の移動指令を作成する。この移動指令McCMDは、同時にノズル前後進用サーボモータ214の制御ブロックにも出力され、さらに、ノズル移動指令換算器300により、数2式に示されるように前記ノズル前後進用サーボモータ214の移動指令MnCMDに換算される。そして、該換算された移動指令が前記サンプリング周期毎に前記ノズル前後進用サーボモータ214の制御部に移動指令MnCMDとして出力される。
【0039】
【数2】

【0040】
cCMD:サンプリング周期ごとの金型開閉用サーボモータの移動指令
nCMD:サンプリング周期ごとのノズル前後進用サーボモータの移動指令
2c:金型タッチ位置から型締め完了位置までの金型開閉用サーボモータの移動距離(
移動量)
2n:ノズルタッチ位置から所定のノズルタッチ力を発生するまでのノズル前後進用サ
ーボモータの移動距離(移動量)
【0041】
図2に示される本発明の実施形態では、金型開閉用サーボモータ114の移動指令をノズル前後進用サーボモータ214の移動指令に換算するようにしたが、金型開閉用サーボモータ114の実際の移動量をノズル前後進用サーボモータ214の移動量に換算するようにしてもよい。この場合は、図3に示されるように、金型開閉用サーボモータ114に取り付けられた位置・速度検出器116で検出されたサンプリング周期毎の金型開閉用サーボモータ114の移動量を図2に示される実施形態と同様にノズル前後進用サーボモータ214の移動量に換算すればよい。
なお、金型開閉用サーボモータ114の駆動制御が、請求項1における型締め制御部に対応し、ノズル前後進用サーボモータ214の駆動制御が、請求項1におけるノズルタッチ力制御部に対応する。
【0042】
図4は、型開閉用サーボモータの移動指令からノズル前後進用サーボモータの移動指令への換算を説明する図である。図4(a)は、金型開閉用サーボモータ114のサンプリング周期毎の移動指令McCMDを説明する図である。図4(b)は、ノズル前後進用サーボモータ214のサンプリング周期毎の移動指令MnCMDを説明する図である。金型開閉用サーボモータ114への移動指令McCMDは、ノズル2が金型46にタッチするまでは数1式に基づいて換算される。ノズル2が金型46にタッチしてから型締めが完了するまでは数2式に基づいて換算される。型締め完了(所定の型締力が発生した)時には所定のノズルタッチ力が発生する。
【0043】
ところで、型締部M1の型締機構には、図1に示されるようにトグルリンク43のような速度増幅機構によってボールネジ44の直線運動を金型46の開閉動作に変換するものと、速度増幅機構を持たずにボールネジで直接金型の開閉動作を行うものとがある。図1の速度増幅機構を持つ型締機構の場合には、前記金型開閉用サーボモータ114への移動指令または金型開閉用サーボモータ114の実際の移動量を速度増幅機構の増幅率にしたがって金型の開閉速度に換算し、換算された速度からサンプリング周期毎の移動量を求めて前記ノズル前後進用サーボモータ214の移動指令としてもよい。この場合、前記L1c,L2cはそれぞれノズルが前進を開始してから金型タッチ位置までの金型の移動量と、金型タッチ位置から型締め完了位置までの金型の移動距離となる。
【0044】
なお、ノズル2の前後進を手動運転などによって、金型開閉用サーボモータ114とは独立して動作させる場合のために、図2および図3には金型開閉用サーボモータ114の移動指令で動作する場合と、単独で動作させるための切換スイッチ302が設けられている。スイッチ302が接点bに接続するように指示されると、金型開閉用サーボモータ114とノズル前後進用サーボモータ214とを独立して動作させることができる。
【符号の説明】
【0045】
cCMD 金型型開閉用サーボモータ移動指令
nCMD ノズル前後進用サーボモータ移動指令

1 シリンダ
2 ノズル
3 スクリュ
4 ホッパ

10 サーボアンプ
12 サーボアンプ

114 金型開閉用サーボモータ
214 ノズル前後進用サーボモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型開閉用のサーボモータで金型の開閉を行う型締機構と、ノズル前後進用のサーボモータで射出シリンダ先端のノズルを前後進させるノズル前後進機構を有する射出成形機において、
前記金型開閉用のサーボモータによって可動側金型が固定側金型にタッチする位置まで型閉じを行う型閉じ制御部と、
前記金型開閉用のサーボモータによって可動側金型が固定側金型にタッチした位置から型締め完了位置まで型締めを行う型締め制御部と、
前記型閉じ制御部によって可動側金型が固定側金型にタッチするのと同時に前記ノズルが金型とタッチするように前記ノズル前後進用のサーボモータによって前記ノズルを前進させるノズル前進制御部と、
型締め完了と同時に所定のノズルタッチ力を発生するように前記ノズル前後進用のサーボモータによってノズルを前進させるノズルタッチ力制御部と、
を有する射出成形機のノズル前後進用モータの制御装置。
【請求項2】
前記ノズル前進制御部と前記ノズルタッチ力制御部は、前記型閉じ制御部と前記型締め制御部に金型開閉用サーボモータに指令される移動指令をノズル移動指令換算部において換算して用いることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機のノズル前後進用モータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−22801(P2013−22801A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158691(P2011−158691)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【特許番号】特許第5118239号(P5118239)
【特許公報発行日】平成25年1月16日(2013.1.16)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】