説明

導光板の製造方法

【課題】金型の転写性が良く、恒温恒湿環境下での寸法安定性に優れた導光板の製造方法を提供する。
【解決手段】脂環式構造含有重合体を用いて射出成形により導光板を製造する方法において、前記導光板がその光出射面又は光反射面の少なくとも一方に微細な凹凸パターンを有し、該脂環式構造含有重合体に酸素除去処理を行った後、射出率250cm/s以上で金型キャビティ内へ供給し、前記微細な凹凸パターンは、三角プリズム形状であり、当該三角プリズム形状の傾斜表面の算術平均粗さ(Ra)が150nm以下である導光板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、金型の転写性が良く、恒温恒湿環境下での寸法安定性に優れた導光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導光板は、各種表示装置に装着されるバックライトに使用される部材の一つであり、たとえば、エッジライト方式面状光源装置においては、導光板側端面から入射した光源の光を、光源に対して垂直方向に導きながら出射させる役目を果たすものである。
こうした導光板は、従来からポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリカーボネート(PC)を射出成形したものが一般的であった。近年、バックライトユニットの小型化、軽量化、低コスト化のために部品点数の省略化が検討されており、導光板の成形と同時に導光板表面の微細な凹凸パターンを形成することが試みられている(特許文献1および2)。PMMA又はPC製導光板の場合、微細な凹凸パターンのために導光板の出光面と反射面とで表面積が異なる結果、恒温恒湿環境下において、導光板の出光面と反射面とで吸水量が異なり、出光面と反射面との膨張率が異なるため、導光板に反りが生じ、輝度斑が発生するといった弊害が生じる。
一方、脂環式構造含有重合体樹脂は、耐熱性に優れ低吸水性であるため、恒温恒湿環境下での寸法安定性に優れた導光板を製造することが可能である。しかしながら、脂環式構造含有重合体樹脂を用いて射出成形により導光板を製造した場合、射出率が200cm/sを超えると成形品にシルバーストリーク(特許文献3)が発生し、また場合によっては成形品が黄色に変色するため、アクリル樹脂を用いた場合(特許文献4)に比べて射出率が上げられず、転写率が十分でない問題があった。
【特許文献1】特開2000−89033号公報
【特許文献2】特開2003−86012号公報
【特許文献3】特開平11−309761号公報
【特許文献4】特開2000−326356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、金型の転写性が良く、恒温恒湿環境下での寸法安定性に優れた導光板の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、射出成形によって脂環式構造含有重合体からなる導光板を製造する際に、脂環式構造含有重合体に酸素除去処理を行なった後、射出率250cm/秒以上にして射出を行なえば、シルバーストリークおよび黄変が発生せず、かつ転写率が向上することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1) 脂環式構造含有重合体を用いて射出成形により導光板を製造する方法において、
前記導光板がその光出射面又は光反射面の少なくとも一方に微細な凹凸パターンを有し、該脂環式構造含有重合体に酸素除去処理を行った後、射出率250cm/s以上で金型キャビティ内へ供給し、前記微細な凹凸パターンは、三角プリズム形状であり、当該三角プリズム形状の傾斜表面の算術平均粗さ(Ra)が150nm以下である導光板の製造方法、
(2) 前記三角プリズム形状は、各三角プリズムが間断なく連続した形状である前記導光板の製造方法、
(3) 前記光出射面に、頂角50〜160°の三角プリズムを、隣接する各三角プリズム間のピッチ10〜200μmで設ける前記導光板の製造方法、
(4) 前記光入射面に、頂角70〜180°の三角プリズムを、隣接する各三角プリズム間のピッチ10〜200μmで設ける前記導光板の製造方法、並びに
)酸素除去処理が、脂環式構造含有重合体を、酸素含有量2重量%以下の不活性ガス雰囲気下、40℃以上の温度に加温するものである前記導光板製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の導光板の製造方法によれば、金型の転写性が良く、恒温恒湿環境下での寸法安定性に優れた導光板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の導光板の製造方法は、脂環式構造含有重合体を用いて射出成形により導光板を製造する方法において、該脂環式構造含有重合体に酸素除去処理を行なった後、射出率250cm/秒以上で金型キャビティ内へ供給することを特徴とする。
【0008】
酸素除去処理の方法は、特に限定されないが、(a)常温または加温した状態で脂環式構造含有重合体を不活性ガスで処理する方法、(b)常温または加温下で真空脱気した後、不活性ガスで真空ブレークする方法、などが挙げられるが、高価な真空設備が不要な点で(a)の方法が好ましい。また、不活性ガスとしては、コストの観点から窒素ガスが好適に用いられる。窒素ガスを用いる場合、その酸素含有量は2重量%以下が好ましく、1重量%以下がさらに好ましく、0.5重量%以下がより好ましく、0.1重量%以下が特に好ましい。
【0009】
上記(a)の方法としては、脂環式構造含有重合体を不活性ガス雰囲気下で加温処理する態様が好ましく、不活性ガスを流通させながら脂環式構造含有重合体を加温する態様が特に好ましい。
【0010】
脂環式構造含有重合体を不活性ガス雰囲気下で加温処理する場合、その温度は好ましくは40℃以上、さらに好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上である。
また、加温処理の時間は、好ましくは2hr以上、さらに好ましくは3hr以上、特に好ましくは4hr以上である。
【0011】
射出率とは、射出成形時に金型キャビティ内へ充填される単位時間あたりの脂環式構造含有重合体の体積を表す。本発明において射出率は、250cm/秒以上、好ましくは350cm/秒以上、特に好ましくは450cm/秒以上である。
【0012】
射出率が250cm/秒未満であると導光板の光出射面の光出射用凹凸又は光反射面の光反射用凹凸が正常に形成されないため、転写率が低下する傾向にある。かかる射出率の上限は特に制限されないが、通常は射出量の制御が困難になるなどの理由から、2500cm/秒以下が好ましい。
【0013】
本発明における射出の態様としては、金型キャビティ内への脂環式構造含有重合体の充填開始から終了までの間継続して本発明で規定する射出率であってもよいが、射出成形装置のシリンダー移動速度の制御が容易である点で、金型内への成形用材料の充填開始から充填の終了までの間における最大の射出率が本発明で規定する射出率の範囲となっていればよい。
【0014】
本発明に用いられる脂環式構造含有重合体は、主鎖及び/または側鎖に脂環式構造を有するものであり、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。重合体の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械的強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造を有するものが最も好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械的強度、耐熱性、及び成形性の特性が高度にバランスされ好適である。
【0015】
本発明に用いられる脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が30重量%未満では機械的強度、耐熱性に劣り好ましくない。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位以外の残部は、使用目的に応じて適宜選択される。
【0016】
係る脂環式構造を有する重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役系ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体及びその水素添加物、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体及びその水素添加物などが好ましく、ノルボルネン系重合体及びその水素添加物がより好ましい。
【0017】
ノルボルネン系重合体としては、例えば、特開平3−14882号公報や特開平3−122137号公報などで開示される方法によってノルボルネン系モノマーを重合したものが用いられる。
【0018】
本発明に使用される脂環式構造含有重合体の、280℃、荷重2.16kgfにおけるJIS−K−6719により測定したメルトフローレートは、使用目的に応じて適宜選択すれば良いが、通常1〜200g/10min.、好ましくは2〜180g/10min.、より好ましくは3〜160g/10min.の範囲が好適である。メルトフローレートが低すぎると成形時に成形材料を加温する温度がより高温となるため加工しにくい場合が生じ、高すぎると成形品の強度不足が生じる傾向にある。
【0019】
ちなみに、これらの脂環式構造含有重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
上記脂環式構造含有重合体樹脂には、必要に応じて、その他のポリマー、各種配合剤または充填剤を単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0021】
その他のポリマーとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、SBS、SIS、SEBSなどのゴム;ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホンなどの樹脂;などが挙げられる。これらのその他のポリマーはそれぞれ単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。また、その割合は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択される。
【0022】
配合剤としては、熱可塑性樹脂材料で通常用いられているものであれば格別な制限はなく、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤などの配合剤が挙げられる。
【0023】
これらの配合剤は単独、2種以上混合して用いることができ、その割合は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択される。配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、脂環式構造含有重合体樹脂100重量部に対して通常0.0001〜5重量部、好ましくは0.001〜3重量部の範囲である。
【0024】
混合方法は、脂環式構造含有重合体中に、その他のポリマー、各種配合剤または充填剤が十分に分散される方法であれば、特に限定されない。例えば、ミキサー、二軸混練機、ロール、ブラベンダー、押出機などで樹脂を溶融状態で混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させて凝固法、キャスト法、または直接乾燥法により溶剤を除去する方法などがある。二軸混練機を用いる場合、混練後は、通常は溶融状態で棒状に押出し、ストランドカッターで適当な長さに切り、ペレット化して用いられることが多い。
【0025】
本発明においては、各種配合剤を必要に応じて混合されたもの(成形用材料)を射出成形することによって、目的とする導光板を得るようにすることが好ましい。各種配合剤が混合された成形用材料を射出成形することにより、寸法精度のより良い導光板を生産性高く得ることができる。
【0026】
本発明の導光板の製造方法は、導光板がその光出射面又は光反射面の少なくとも一方に微細な凹凸パターンを有する場合に好適に用いられる。
【0027】
微細な凹凸パターンは、導光板の輝度を均一にするために用いられ、光反射機能または集光機能を有する形状であれば特に制限されないが、側端面から入射した光を反射または集光する面を複数有する形状であることが好ましい。
このような形状として光出射面側においては、複数の平行するV型溝からなる形状、三角プリズム形状、円弧状プリズム形状、横置きの四角柱形状、横置きの台形柱形状、梨地状、半球状、円柱状、楕円柱状、四角柱状、三角錐状または四角錐台状などの微細な凹凸パターンが挙げられるが、これらの中でも梨地状、複数の平行するV型溝からなる形状、三角プリズム形状、円弧状プリズム形状、横置きの四角柱形状または横置きの台形柱形状好ましく、三角プリズム形状が特に好ましい。なお図1は三角プリズム形状、円弧状プリズム形状、横置きの四角柱形状および横置きの台形柱形状の模式図である。
また、光反射面側には半球状、円柱状、楕円柱状、四角柱状、三角錐状、四角錐台状、複数の平行するV型溝からなる形状、三角プリズム形状、円弧状プリズム形状、横置きの四角柱形状または横置きの台形柱形状の微細な凹凸パターンが好ましい。
【0028】
三角プリズム形状は、導光板の光出射面から出射する光、又は反射面で反射する光を可能な限り正面方向(0°)に向ける役割を果たすものであれば、特に限定されないが、各三角プリズムが間断なく連続した形状とすることが好ましい。隣接する各三角プリズム間のピッチは、通常、10〜200μm、好ましくは15〜150μm、より好ましくは20〜100μmである。ピッチが10μm未満では、三角プリズム形状を形成することが困難である。また、ピッチが200μmを超えると、三角プリズムの繰り返しが目立ち、またこの繰り返しによる出射光量の微小な脈動と、液晶セルの繰り返しピッチによるモアレが発生する。光出射面に三角プリズム形状を用いる場合、各三角プリズムの頂角は、好ましくは50〜160°、より好ましくは60〜130°、さらに好ましくは70〜110°、特に好ましくは90°である。頂角を50〜160°に調整することで、集光機能が向上する。また、光反射面に三角プリズム形状を用いる場合、各三角プリズムの頂角は、好ましくは70〜180°、より好ましくは90〜160°、さらに好ましくは100〜140°、特に好ましくは120°である。なお各三角プリズムの傾斜表面は、集光性能の観点から、より鏡面状態に近い形状である方が良いが、傾斜表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、特に好ましくは80nm以下である。
【0029】
円弧状プリズム形状としては、各円弧状プリズムが間断なく連続した形状とすることが好ましい。円弧状プリズムの曲率半径は、5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましく、15〜30μmであることがさらに好ましい。円弧状プリズムのピッチは、5〜500μmであることが好ましく、10〜400μmであることがより好ましく、15〜300μmであることが特に好ましい。
【0030】
横置きの四角柱形状としては、各四角柱が一定の間隔をあけて並んでいる形状が好ましい。各四角柱同士の間隔は、5〜400μmが好ましく、10〜300μmが特に好ましい。また、四角柱の導光板に垂直な辺の長さは5〜300μmが好ましく、10〜200μmが特に好ましい。四角柱の導光板に平行な短辺の長さは10〜200μmが好ましい。
【0031】
横置きの台形柱形状としては、各台形柱が一定の間隔をあけて並んでいても良いし、間断なく連続した形状でも良い。各台形柱同士の間隔は、0〜400μmが好ましい。また、台形柱の上辺の長さは1〜150μmが好ましく、台形柱の下辺の長さは2〜300μmが好ましい。
【0032】
半球の半径は、5〜100μmが好ましい。
円柱は、高さ又は深さhと最大開口幅Wmaxとの比h/Wmaxが0.3以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。楕円柱は、長径50〜600μm、短径5〜300μm、長径/短径の比が1〜10であることが好ましい。四角柱は、長辺50〜600μm、短辺5〜300μm、長辺/短辺の比が1〜10であることが好ましく、高さ又は深さhと最大開口幅Wmaxとの比h/Wmaxが0.3以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。三角錐は、斜面傾斜角度が20〜50度、底辺100μm以下、高さ1〜20μmであることが好ましい。
四角錐台は、斜面傾斜角度が25〜45度、底辺100μm以下、高さ2〜15μmであることが好ましい。
光反射面の半球、円柱、楕円柱、四角柱、三角錐または四角錐台は、格子状などのように規則的に配列することができ、あるいは、ランダムに配列することもできる。光反射面の半球、円柱、楕円柱、四角柱、三角錐または四角錐台をランダムに配列することにより、液晶パネルとの光学的な干渉を防ぐことができる。光反射面の半球、円柱、楕円柱、四角柱、三角錐または四角錐台は、導光板の側端面に設ける光源に近い方を疎に、光源から遠い方を密にすることが好ましい。光源に近い方を疎に、光源から遠い方を密にすることにより、面状光源装置の全面の輝度をほぼ等しくして、輝度むらを低減することができる。
【0033】
本発明の製造方法で得られる導光板の用途は、特に限定されないが、たとえばラップトップ型、ノート型、ブック型、パームトップ型などのパーソナルコンピューターまたはワードプロセッサーなどのOA機器;壁掛け用などの液晶テレビなどの家電製品;電飾看板;ライトテーブル;ビュワー、その他の表示装置;などにバックライト又はフロントライトとして使用される面状光源装置に用いられる。
【0034】
以下に、本発明を、図面に基づき詳細に説明する。
【0035】
図2(A)〜(E)は本発明の導光板製造方法の一態様を示す工程図である。本態様では、スクリュー式射出成形機を用いて導光板を製造する。スクリュー式射出成形機は、図2(A)に示すように、ホッパー1、加熱シリンダー2、スクリュー3、金型4およびノズル5とを有している。
【0036】
まず、図2(A)に示すように、ホッパー1に、上述した脂環式構造含有重合体および必要に応じて混合されるその他のポリマー、各種配合剤、充填剤からなる成形用材料を所定の割合で混合させて、たとえば二軸混練機にて混練後、ペレット化されたものを投入する。投入された成形用材料はその自重によって、加熱シリンダー2内に落下して、スクリュー3に接触するとともに、その回転によって次第に加熱シリンダー2の先端部に送られる。なお、この際、酸素除去処理したペレットが再び空気と接触しないよう、ホッパー1に囲いを設けて不活性ガスを流し、外気を遮断する構成とすることが好ましい。
【0037】
ここで、加熱シリンダー2の温度を制御することが望ましい。加熱シリンダー2の温度は、用いる脂環式構造含有重合体の種類によっても異なるが、通常200〜400℃、好ましくは210〜370℃、より好ましくは220〜350℃である。200℃未満では成形用材料の溶融が充分ではなく、良好な形状の成形品を得ることが出来ない。また、400℃を超えると成形用材料の酸化劣化が生じ、ヤケが成形品に混入し、光学的な不良となってしまう。加熱シリンダー2の温度の制御は、ジャケットやヒーターにより行うことができる。スクリュー3の回転数は、成形用材料が均一に混合されるように適宜決定される。
【0038】
このようにして可塑化溶融された成形用材料は、スクリュー3の先端部に所定量蓄えられ、この可塑化の進行にともなって、スクリュー3を加熱シリンダー2内で、加熱シリンダー2の先端部にあるノズル5から遠ざかるよう、所定距離を後退させる。
このとき、スクリュー3の後退運動を抑制するような方向で射出シリンダー(図示省略。)側に20〜150kgf/cmの背圧をかけることが望ましい。背圧が20kgf/cm未満の場合には、可塑化溶融した成形材料中に気泡が発生し、成形品中の気泡、成形品表面のシルバーストリークなどの外観不良が発生する。また、背圧が150kgf/cm以上では、スクリューの後退速度が遅くなり、射出成形に要する時間が長くなってしまう。
【0039】
スクリュー3を加熱シリンダー2内で所定の距離を後退させることにより、シリンダー3の先端部ノズル5付近に所定量の成形用材料が蓄えられていき、これが金型4内に射出される成形用材料の射出量となる。射出量は、導光板の大きさ、厚みなどの関係上、特に限定されない。この後退距離の制御は、マイクロスイッチ(図示省略。)などによって適宜決定される。
【0040】
次に、図2(B)および(C)に示すように、射出シリンダーによって、スクリュー3を加熱シリンダー2内のノズル5に向かって、所定の速度で前進させて、ノズル5付近に蓄えられていた可塑化溶融した成形用材料を、ノズル5を通して金型4内に充填させる。本発明においては、このときの射出率を250cm/秒以上とすることが必須である。
【0041】
また、スクリュー3をノズル5側に前進させることにより成形用材料をノズル5から射出する際の成形用材料に対して加えられる圧力は、主として、成形用材料の粘度特性(流動性)、成形品の形状や肉厚、または金型4の構造によって適宜決定することができる。圧力は、成形用材料を金型4内に射出する段階の圧力(以下、「射出圧」と略す。)と、金型内に充填し終わった後の段階の圧力(以下、「保圧」と略す。)の2段階に分けられる。
【0042】
保圧は、射出圧によって金型が略充填された後、金型4のゲート部分が完全に冷却固化するまでの一定時間かけられる圧力であり、特に限定されないが、好ましくは100kgf/cm以上、より好ましくは120kgf/cm以上、特に好ましくは150kgf/cm以上である。保圧を100kgf/cm未満とすると成形品たる導光板にひけが発生する。また、保圧の上限は、金型の型締め圧力の範囲内で決定することが望ましい。保圧が金型の型締め圧力を越えると、冷却途中の金型が開いてしまうおそれがあり、成形品にバリが発生する。
【0043】
金型4内に充填された成形用材料は、一定時間、金型4内に保持され、冷却固化させる。
金型温度は、特に限定されないが、好ましくは30〜180℃、より好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは60〜140℃である。金型温度が30℃未満では金型4内での成形用材料の流動性が悪くなり、成形不良の要因となってしまう。金型温度が180℃を超えると、成形用材料のガラス転移点Tgを越えてしまい,金型4と成形品たる導光板との型離れが悪くなり、成形品の面精度を確保することができなくなる恐れがある。
【0044】
冷却時間は、シリンダー温度、金型温度、成形品の厚みなどによって適宜変更され得る。冷却時間を長くすれば、成形品の変形を減少させることができが、サイクル時間が長くなってしまう。一方、冷却時間を短くすると、成形品の固化が不十分となり、それによって成形品の変形や寸法安定性の悪化をもたらせてしまう。
【0045】
このようにして、金型内で一定時間冷却された後、金型を開き、成形品を取り出して成形工程の1サイクルが終了する。このようなサイクルは、手動運転又は自動運転のいずれの運転で行ってもよい。
【0046】
次に本発明の製造方法によって得られる導光板を用いた面状光源装置および導光板について詳細に説明する。
図3(A)は本発明の製造方法により得られる導光板を用いた面状光源装置を示す概略斜視図、図3(B)は図3(A)をX方向からの見た正面図、図3(C)は図3(A)をY方向から見た正面図を表す。図4(A)は本発明の製造方法によって得られる導光板を用いた別の面状光源装置を示す概略斜視図、図4(B)は図4(A)をX方向からの見た正面図、図4(C)は図4(A)をY方向から見た正面図、図5は図3(A)記載の導光板を、図3(A)におけるX方向に垂直な面で切断した場合の部分断面図を表す。
【0047】
図3(A)〜(C)に示すように、本発明の製造方法により得られる導光板を用いたエッジライト方式面状光源装置8は、導光板6と、導光板6の少なくとも一端面に配置された光源7とを有している。
【0048】
光源7としては、冷陰極管、熱陰極管などの蛍光灯が挙げられるが、特に冷陰極管ば消費電力が少ないため、好適に用いられる。エッジライト方式面状光源装置の高輝度薄型化のために、光源7も細管径で高輝度のものが好ましく、管径1.5〜6.0mm、管面輝度15000cd/m以上のものがより好ましい。また、光源7の色温度(光源7がどのような色をしているかを温度[K]で表したもの。)が、導光板6の光出射面6bから出射される光の見え方に影響を与えるので、光出射面6bから出射される光が、色温度7000〜8000K、好ましくは7400〜7500K程度となるような光源を用いることが望ましい。
【0049】
なお、上記部材の他、図示しないが、光源7を囲むように配置され導光板6の光源側端面6aに直接入射しなかった光源光を導光板6に効率良く導くためのランプリフレクターや、導光板6の光反射面6c側に配置され、導光板6から漏れた光を再度導光板6内に戻すための反射シートも、面状光源装置を構成する部材として適宜用いられる。
【0050】
導光板6は、図3(C)に示すように、光入射面6aから入射した光源7の光を長手方向に導きながら光出射面6bから輝度斑なく出射させるための部材である。また図3(C)に示す態様においては、導光板6は断面が光源7側から遠ざかる方向(直線状光源の軸芯と略垂直方向)につれて厚みが漸次薄くなるようなくさび型をしており、光源7から遠ざかるにつれて、導光板6の光出射面6bに対する入射角θがより多く臨界角(全反射が起こる最小の入射角)以上になるようになっている。
【0051】
また、図3(A)〜(C)に示す態様では、導光板6の光出射面6bにはプリズム形状9が設けられている。このプリズム形状9は、導光板6の光出射面6bから出射される光の方向を可能な限り光出射面に垂直に外部に出射する機能を有する。
【0052】
また、図4(A)および(B)に示すように、プリズム14の上に、別途プリズムシートなどの集光シート13を、1枚または2枚以上重ねて使用するようにしてもよい。この際、図4(A)に示すように、集光シート13を1枚重ねて使用する場合には、導光板11のプリズム形状を構成する連続線と、集光シート13のプリズム形状を構成する連続線とが互いに略直交となるように配置することが好ましい。このように配置することで輝度効率の一層の向上が期待できる。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、特に断りのない限り、部および%は重量基準である。また、以下の実施例および比較例においては、次に示す方法で転写率、吸湿変形量および算術平均粗さを求めた。
【0054】
(1)転写率
3次元測定機(株式会社菱光社、非接触3次元測定機NH−3)で金型の凹凸の形状が分かっている部分について製品の形状を測定し、その最大高さを求めた。そして、金型の形状の最大高さに対しての比率を転写率として求めた。
(2)吸湿変形量
導光板を温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿室に120時間放置したのち、平板上に載置し、隙間ゲージ[東京シクネス(株)、100ML]を用いて4辺の各中点及び4隅の計8か所で平板との隙間を測定し、その最大値を吸湿変形量とした。
(3)算術平均粗さ(Ra)
株式会社キーエンス製超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK−9500を用いて測定した。
【0055】
[製造例1]脂環式構造を有する重合体樹脂の製造
脱水したシクロヘキサン500部、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部及びトリイソブチルアルミニウム0.30部を、室温で十分に乾燥し窒素置換したステンレス鋼製耐圧容器に入れて混合したのち、45℃に保ちながら、この混合物にトリシクロ[4.3.0.12、5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン、以下、「DCP」と略記する。)170部と8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12、5.17、10]ドデカ−3−エン(エチリデンテトラシクロドデセン、以下、「ETD」と略記する。)30部と六塩化タングステンの0.7%トルエン溶液40部とを、2時間かけて連続的に添加し、重合した。次いで、重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し、重合反応を停止させた。
得られた開環重合体を含有する反応溶液100部に対して、シクロヘキサン35部を加え、さらに水素添加触媒としてニッケル−アルミナ触媒[日揮化学(株)]5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら200℃まで加温して4時間反応させ、DCP/ETD開環重合体水素添加物20%を含有する反応溶液を得た。ろ過により水素添加触媒を除去したのち、DCP/ETD開環重合体水素添加物100部に対して、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1部を添加して溶解させた。次いで、円筒型濃縮乾燥機[(株)日立製作所]を用い、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去しつつ、DCP/ETD開環重合体水素添加物を溶融状態で押出機からストランド状に押し出し、冷却後ペレット化し、樹脂ペレットを回収した。次に回収した樹脂ペレットを市販の高純度窒素ガス(純度99.9重量%以上、酸素含有量0.1重量%以下)雰囲気下、窒素を流通させた状態で、80℃で4hr加温処理した。
【0056】
[実施例1]
製造例1で得られた樹脂ペレットから、図6に示すような短辺(AB)が232.7mm、長辺(AC)が308.4mm、一辺の厚みが2.4mmであり該一辺の対辺(CD)の厚みが0.8mmである楔形である導光板を成形した。
金型は、導光板の反射面となる固定型のキャビティ表面に、直径60μmの半球状突起を形成する半球状の穴を、図6の一辺ABの位置の平均ピッチ300μmから、図6の一辺CDの平均ピッチ150μmまで順次間隔をつめて設けた。導光板の出光面となる可動型のキャビティ表面に、図6の一辺ABと略直交する方向に、ピッチ50μm、頂角90°のプリズムを繰り返し形成した。
射出成形は、射出成形機[東洋機械金属株式会社、SI−450II、スクリュー径60mm]を用い、成形温度275℃、金型温度70℃、射出率565cm/秒の条件で行った。成形後、得られた導光板の評価を行ったところ、この導光板の転写率は良好であった。また、吸湿変形量も小さかった。この導光板の評価結果を表1に示す。
【0057】
[実施例2]
射出率を283cm/秒とした以外は実施例1と同様に成形実験を行ない、導光板を得た。成形後、得られた導光板の評価を行ったところ、この導光板の転写率は良好であった。また、吸湿変形量も小さかった。この導光板の評価結果を表1に示す。
【0058】
[比較例1]
射出率を141cm/秒とした以外は実施例1と同様に成形実験を行ない、導光板を得た。成形後、得られた導光板の評価を行ったところ、この導光板の転写率は低かった。
また、吸湿変形量は小さかった。この導光板の評価結果を表1に示す。
【0059】
[比較例2]
製造例1で得られた樹脂ペレットに代えて、メタクリル樹脂(旭化成株式会社、デルペット70NHX)を用いた以外は実施例1と同様に成形実験を行ない導光板を得た。成形後、得られた導光板の評価を行ったところ、この導光板の転写率は低く、吸湿変形量は大きかった。この導光板の評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1より、実施例1および2で得られた導光板は、比較例1および2で得られた導光板と比較して転写率が高い。実施例1の導光板と同じ形状であっても、メタクリル樹脂の射出成形体からなる比較例2の導光板は、実施例1の導光板に比べて吸湿変形量が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の製造方法で得られる導光板の微細な凹凸パターンの一態様である。
【図2】本発明の導光板製造方法の一態様を示す工程図である。
【図3】本発明の製造方法で得られる導光板を用いた面状光源装置の一態様である。
【図4】本発明の製造方法で得られる導光板を用いた面状光源装置の別の態様である。
【図5】図5は、図3(A)記載の導光板を、図3(A)におけるX方向に垂直な面で切断した場合の部分断面図である。
【図6】図6は、実施例および比較例で製造した導光板の形状を示す模式的な平面図である。
【図7】図7は、図6におけるE−F線での模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ホッパー
2 加熱シリンダー
3 スクリュー
4 金型
5 ノズル
6 導光板
6a 光入射面
6b 光出射面
6c 光反射面
7 光源
8 エッジライト方式面状光源装置
9 プリズム形状
10 エッジライト方式面状光源装置
11 導光板
12 光源
13 集光シート
14 プリズム
15 導光板
16 プリズム
16a 傾斜表面
16b 傾斜表面
17 ピッチ
18 頂角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式構造含有重合体を用いて射出成形により導光板を製造する方法において、
前記導光板がその光出射面又は光反射面の少なくとも一方に微細な凹凸パターンを有し、該脂環式構造含有重合体に酸素除去処理を行った後、射出率250cm/s以上で金型キャビティ内へ供給し、前記微細な凹凸パターンは、三角プリズム形状であり、当該三角プリズム形状の傾斜表面の算術平均粗さ(Ra)が150nm以下である導光板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の導光板の製造方法において、
前記三角プリズム形状は、各三角プリズムが間断なく連続した形状である導光板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の導光板の製造方法において、
前記光出射面に、頂角50〜160°の三角プリズムを、隣接する各三角プリズム間のピッチ10〜200μmで設ける導光板の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の導光板の製造方法において、
前記光入射面に、頂角70〜180°の三角プリズムを、隣接する各三角プリズム間のピッチ10〜200μmで設ける導光板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の導光板の製造方法において、
前記酸素除去処理が、前記脂環式構造含有重合体を、酸素含有量2重量%以下の不活性ガス雰囲気下、40℃以上の温度に加温するものである導光板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−296587(P2008−296587A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181348(P2008−181348)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【分割の表示】特願2003−340699(P2003−340699)の分割
【原出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】