説明

導電コンタクタ、検査装置および電子部品

【課題】 繰り返し使用により、また温度上昇下で、接圧低下が生じにくい、導電コンタクタ、そのような導電コンタクタを用いた検査装置および電子部品を提供する。
【解決手段】 この導電コンタクタ10は、多孔質シート12と、多孔質シートに形成された導電性金属の平面状接続部2とを備え、多孔質シート12が主要構成材に弾性を有するセラミックスを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電コンタクタ、検査装置および電子部品に関し、より具体的には、微細ピッチの複数の電極配列を持つ2つの装置間に介在してそれらの電極間の電気的接続を容易に実現するために用いられる耐久性の高い導電コンタクタ、それを用いた検査装置および電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIなどの半導体装置に用いられるプリント回路基板などでは、電極間のピッチが狭くなり高密度化・複雑化する傾向が高まっている。たとえば内層回路基板と外層回路基板とを含む多層基板が用いられる傾向が高くなっている。このようなLSIの回路基板のリード電極と他の回路端子などとの電気的な接続を達成するために、従来より、これらの間に異方性導電シートを介在させることが行われている。LSIの検査の際に、異方性導電シートを介在させることにより、LSIの電極端子とLSI検査装置の端子との間に、電気的接続が容易に実現される。
【0003】
上記のような異方性導電シートとして次のものが知られている。繊維を編んで形成したメッシュシートに、感光剤をパターンに合わせて充填塗布して露光・現像して透過パターンを形成し、その透過パターンに金属めっきを充填して導通パターンを形成した導電シートが開示されている(特開平10−321989号公報)。上記の導電シートは、メッシュという支持体があるため、導電パターンを透過部に確実に埋め込んで製造することができ、製造が容易であり、製造コストを低減することができる。しかし、上記のようなLSIの検査に用いる異方性導電シートは、異なる部品上の電極端子同士を接触させ、確実に導通を確保するために、厚み方向に弾性的に変形・復元可能であることが要求される。
【0004】
上記のような、厚さ方向にのみ導電性を有し、加圧に対して厚み方向に弾性変形または回復可能な変形をすることが可能なものとして、多孔質樹脂シートが提案された(特許文献2)。異方性導電シートの導電部を加圧して圧縮変形させることにより、上記回路基板の寸法精度、とくにリード電極の厚み方向位置にばらつきがあってもそのばらつきを吸収して確実に電気的接続を可能にできる。また上記圧縮変形に対して十分な復元力を持つことにより、異方性導電シートの導電部は、繰り返し使用しても回路基板の電極と所定値以上の圧力で接触し、このため低い接触抵抗で接触することができる。
【0005】
上記の異方性導電シートでは、たとえばその厚さの最大25%程度の圧縮ひずみを繰り返し安定的に付加できることが要求される。多孔質樹脂シートでは、樹枝状に幾重にも枝分かれした態様で樹脂がシート状に形成されており、樹脂材料自体の強度、弾性係数などを考慮して材料選択することにより、大きな圧縮ひずみに対して繰り返し復元可能な多孔質樹脂シートを実現している。
【特許文献1】特開平10−321989号公報
【特許文献2】特開2004−265844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、多孔質樹脂シートを基材とする異方性導電シートは、繰り返し使用すると、多孔質樹脂がクリープを生じ、接触対象の端子との導電性が劣化する可能性がある。例えば、特殊な高温下では、樹脂の弾性が温度上昇により急激に低下することに起因して、接触対象の端子との接圧が低下し、導通性が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、繰り返し使用により、また温度上昇下で、接圧低下が生じにくい、導電コンタクタ、そのような導電コンタクタを用いた検査装置および電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の導電コンタクタは、多孔質シートと、多孔質シートに形成された導電性金属の平面状接続部とを備える。そして、多孔質シートが主要構成材に弾性を有するセラミックスを含むことを特徴とする。
【0009】
多孔質シートが主要構成材にセラミックスを含むことにより、繰り返し使用に対してクリープを生じにくく、また温度上昇に伴って弾性率の低下を抑制することができる。ここで、多孔質シートが主要部材にセラミックスを含むとは、セラミックスが最大割合含まれる場合、多孔質シートがセラミックスで形成されていてもよい(100%セラミックス)。また、多孔質シートが繊維状セラミックスで形成されている構成であってもよいし、樹脂等を補強するように含まれている構成、その他の構成であってもよい。上記の導電コンタクタは、電極または回路と他の装置の電極との電気的接続の接圧を確保するために、多孔質シートは、導電性金属の平面状接続部が形成された箇所でも、多孔質性を維持し、厚み方向に押し込み変形可能であり、また復元可能であることを前提とする。
【0010】
また、多孔質シートを貫通する孔の壁に形成された導電性金属の導通部を備えることができる。この構成により、多孔質シートの表面と裏面とに、たとえば小サイズで間隔の狭い電極を持つLSIと、検査装置とを配置して、電極の位置精度の許容限界をそれほど厳しくしなくても、確実にかつ容易に電気的に接続して検査することができる。
【0011】
また、上記の多孔質シートが、ガラス繊維、ガラスビーズおよびガラス繊維強化樹脂の少なくとも1つで形成されていてもよい。この構成により、繰り返し耐久性に優れ、かつ温度上昇時の弾性率(ヤング率)の低下が小さい導電コンタクタを得ることができる。
【0012】
本発明の電子部品は、上記のいずれかの導電コンタクタを備える電子部品であって、導電コンタクタの、平面状接続部および導通部の少なくとも一方と、当該電子部品の電極とが電気的に接続されていることを特徴とする。この構成により、導電コンタクタ付き電子部品を形成することができる。ここで、電子部品は、LSI等の半導体チップを搭載した配線基板、他の配線板と電気的接続をとって多層構造の配線基板を形成するために準備される配線基板等が該当する。(1)電子部品がLSI等を搭載している配線基板である場合、検査装置への装着が容易になり、その結果、検査時間の短縮など検査効率を向上することができる。また検査とは関係なく、他の配線基板と多層構造を形成しやすくなる。(2)また、電子部品が、他の配線基板等と電気的接続をとる配線基板である場合、LSI等を含む配線基板の多層構造を形成するのが容易となる。
【0013】
本発明の検査装置は、上記のいずれかの導電コンタクタと検査用回路基板とを備える検査装置であって、導電コンタクタの、平面状接続部および導通部の少なくとも一方と、検査用回路基板の端子とが電気的に接続されていることを特徴とする。この構成により、導電コンタクタ付き検査装置を形成することができ、LSI等に、別に導電コンタクタや異方性導電シートなどを取り付けることなく、LSI等の半導体装置の検査を容易に行うことができるようになり、検査能率を向上させることができる。なお、検査装置に取り付けた上記の導電コンタクタは、繰り返し使用耐久性は優れているものの、所定の回数、使用した後は、新たな導電コンタクタに取り替える。したがって上記の導電コンタクタを使用することにより、導電コンタクタ取り替え頻度を抑えることができ、導電コンタクタの費用、導電コンタクタ取り替え工数、取り替え時間中の検査装置休止などの不利益を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の導電コンタクタ、その導電コンタクタを用いた電子部品および検査装置によれば、クリープが抑制され、また温度上昇時にも、接圧低下が少ない電気的接続を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における導電コンタクタ10を示す斜視図である。また、図2は、図1におけるII−II線に沿う断面図である。多孔質シート12は、ガラス繊維シートまたはシラス多孔質ガラスシートで形成されており、その表面に導電性金属の平面状接続部2が設けられている。導電性金属の平面状接続部2は、多孔質シート12の多孔質性を損なわないように、多孔質シート12の表面にしみ込むようにめっき処理などにより形成されている。すなわち、導電性金属膜は、ガラス繊維などの個々の繊維の外周面にめっき処理等により形成され、その際に、多孔質シート12の孔は十分残すようにして、孔を完全に充填しないようにする。
【0016】
上記のように、多孔質シート12の多孔質性を損なわないように導電性金属膜2を形成するので、多孔質シート12を構成するガラス繊維またはシラス多孔質ガラスは、破壊することなく所定の範囲、変形可能であり、また復元可能である。すなわち、多孔質シート12は厚み方向に所定レベル、たとえば厚みの数%〜25%程度まで、弾性変形可能である。また、図2(またこのあと説明する図4)では、図面の簡単化のために単に多孔質シート12の表面に、導電性めっき層の平面状接続部2を配置するように描いているが、実際は、平面状接続部2を形成する導電性めっき層が、多孔質シート12の多孔質性を損なわないように形成されている(図5および図6参照)。
【0017】
図2では、平面状接続部2は多孔質シート12の側部を通って表面と裏面とに配置される。このため、多孔質シート12の表面と裏面とに、実測基板に実装されたLSIと、検査装置とを配置して、両者の電極端子同士の接続を導電コンタクタ10によって確保することができる。多孔質シート12を貫通する孔に、導電性金属の導通部5が形成されている場合または導通部5がなくても、上記の平面状接続部2は、多孔質シート12の端面を通って、表面と裏面とに連続するように配置する必要はない。すなわち、導通部5の有無によらず、平面状接続部2は、多孔質シートの表裏面の一方にのみ配置されていてもよい。この平面状接続部2は、電極とみてもよいし、回路配線とみてもよい。
【0018】
図3は、多孔質シート12に貫通孔をあけ、その貫通孔の壁面にしみ込ませるように導電性金属により形成した導通部5を示す平面図である。また、図4は、図3におけるIV−IV線に沿う断面図である。図4の場合も、図面の簡単化のために単に多孔質シート12の表面に、導電性めっき層が形成されたように描いるが、実際は、導通部5を形成する導電性めっき層は、多孔質シート12の多孔質性を損なわないように形成されている(図5および図6参照)。
【0019】
図5は、多孔質シート12をガラス状繊維Fで形成した場合の、平面状接続部2または導通部5を形成する導電性金属が、どのような形態で位置しているかを示す模式図である。図5において、ガラス繊維Fの外周面に導電性金属膜2aまたは5aが形成され、多孔質の孔Hは導電性金属膜2aまたは5aの分だけ、導電性金属膜が形成されない内部の孔Hよりも狭められる。表面に近い部分では、多孔質の孔Hは完全に埋められていてもよい。したがってHはゼロであってもよく、H≧0である。ただし、表面部の多孔質の孔を埋め込む層が厚くなり、導電性金属により高い剛性の壁層が形成されると、電気的接続の際の押し込み変形が困難になるので、押し込み変形が容易にできる程度に、導電性金属を形成する。このようなガラス繊維Fは、あとで説明するようにゾルゲル状態から糸にされたものであり、ガラスとしては繊維方向に高い靭性および延性を有する。このため、繊維方向に交差する方向に力が加わっても、破壊することなく、撓(たわ)むことができ弾性変形することができる。
【0020】
図6は、多孔質シート12をガラスビーズBで形成した場合の、平面状接続部2または導通部5を形成する導電性金属が、どのような形態で位置しているかを示す模式図である。図6において、ガラスビーズBの外周面に導電性金属膜2aまたは5aが形成され、多孔質の孔Hは導電性金属膜2aまたは5aの分だけ、導電性金属膜が形成されない内部の孔Hよりも狭められる。表面に近い部分では、多孔質の孔Hは完全に埋められていてもよい。したがってHはゼロであってもよく、H≧0である。ただし、表面部の多孔質の孔を埋め込む層が厚くなり、導電性金属により高い剛性の壁層が形成されると、電気的接続の際の押し込み変形が困難になるので、押し込み変形が容易にできる程度に、導電性金属を形成する。このようなガラスビーズBで形成されたシートは、あとで説明するように市販されており、容易に入手することができる。
【0021】
(導電コンタクタの形成方法)
1.基膜(多孔質シート)
LSI等のバーンイン試験用の導電コンタクタ10では、その基膜12は、クリープ変形しにくく、温度上昇に伴う弾性率の低下が小さいことが要求される。基膜12は、電気絶縁性であることが求められ、ガラス繊維やガラスビーズなどのセラミックスは高い電気絶縁性を有するので、好適である。またFRP(Fiber Reinforced Plasticity)のように樹脂を含む場合には、樹脂は絶縁性樹脂であることが望ましい。
【0022】
ガラス繊維シートは、ゾル状態から紡糸されたガラス糸から形成されるが、市販されているガラス繊維シートを用いることができる。たとえば日本板硝子株式会社製の産業用ガラス繊維であるMCペーパー(製品名)、電池用ガラス繊維であるAGMセパレーター(製品名)などを用いることができる。これらガラス繊維から構成される多孔質シート12のヤング率(縦弾性率)は、50GPa〜100GPaの範囲内が好ましい。ヤング率が50GPa未満では、十分な接圧を得ることが難しく、100GPaを超えると、押し込み変形がしにくくなり、クッション性が劣化して、寸法精度を厳格にとらないと導電コンタクタとして機能しにくくなる。とくに上述のように、厚みの最大25%程度の圧縮ひずみを繰り返し安定的に付加することが要求される場合、ヤング率が100GPaを超えると圧縮ひずみ25%の押し込み変形を安定的に付加することが困難になるので、上記のヤング率の範囲は重要である。上記のことから、ヤング率は60GPa〜90GPaの範囲内にあればより望ましい。
【0023】
そのほかの多孔質シート12については、たとえばSPGテクノ株式会社製のSPG膜(製品名)を用いることができる。SPG膜は、シラス多孔質ガラスと呼ばれるが、CaO、Al、B、SiO系のガラスを1350℃に加熱して形成し、成形した後、650〜750℃で熱処理すると、スピノーダル分解を生じて(CaO、B)と(Al、SiO)とに分離するが、酸処理によって(CaO、B)を溶出して、多孔質の(Al、SiO)系ガラスシートを得ることができる。
【0024】
いずれの材質を用いた場合でも、多孔質シート12の厚みは、使用目的や使用箇所に応じて適宜選択することができるが、通常、3mm以下、好ましくは1mm以下である。特にバーンイン試験用の異方性導電シートでは、膜厚は、多くの場合、好ましくは5〜1000μm、より好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜100μm程度である。多孔質シートの面積は、例えば2cm角程度である。
【0025】
2.平面状接続部および導通部の形成
従来、セラミックスシート12は、(1)貫通孔の形成など加工が困難なために、また(2)弾性的な押し込み変形と復元とが実現不可能であるために、導電コンタクタへの適用が考えられたことはなかった。しかし、セラミックスシートの構成を多孔質状にすることにより、上記(2)の困難性は打破されることを確認することができた。また上記(1)についても、多孔質セラミックスシートの貫通孔の形成には、パルスレーザーやLIGA(登録商標)プロセスを用いることで解決できることを確認した。
【0026】
まず、多孔質セラミックスシート12の複数箇所に、表面から裏面に貫通する貫通孔を設ける。次いで、多孔質シート12の外面に平面状接続部2を、また貫通孔の壁(多孔質構造)に、それぞれ導電性金属を付着させて、膜厚方向に導電性を付与することが可能な導通部を設ける。以下では、導通部の壁への導電性金属の付着を主体に説明するが、その方法は写真製版技術のレジストパターンを形成することにより、平面状接続部2についても容易に適用することができる。
【0027】
基膜の複数箇所に導通部5を形成するには、先ず、導電性金属を付着する位置を特定する必要がある。導電性金属を付着させる位置を特定する方法としては、例えば、多孔質膜に液体レジストを含浸させて、パターン状に露光し、現像して、レジスト除去部を導電性金属の付着位置とする方法がある(フォトリソグラフィ法)。このとき平面状接続部2のレジストパターンも同時に形成することができる。レジストパターンを用いないで導通部の貫通孔を形成する方法も利用できる。多孔質膜の特定位置の膜厚方向に微細な貫通孔を形成して、該貫通孔の壁面を導電性金属の付着位置とする方法を好適に採用することができる。多孔質膜に多数の貫通孔を形成する方法は、フォトリソグラフィ技術を用いる前者の方法に比べて、ファインピッチで導電性金属を付着させる場合に適している。また、多孔質膜に多数の貫通孔を形成する方法は、例えば、30μm以下、さらには25μm以下の微細な直径の導通部を形成するのに適している。情況に応じていずれの方法を用いてもよい。ただし、平面状接続部2を形成するには、フォトリソグラフィ技術によるのがよい。
【0028】
多孔質膜からなる基膜の複数箇所に、表面から裏面に貫通する貫通孔の壁(多孔質構造)に導電性金属を付着させて導通部を形成する。フォトリソグラフィ技術を用いる方法では、無電解めっき法などによりレジスト除去部に導電性金属粒子を析出させて、壁(多孔質構造)に導電性金属を連続して付着させる。この場合、レジスト除去部の表面から裏面に貫通する状態となるように、多孔質構造壁面に導電性金属を連続して付着させる。貫通孔を形成する方法では、貫通孔の壁面に露出している多孔質構造に、無電解めっき法などにより導電性金属粒子を析出させる方法により付着させる。
【0029】
多孔質構造とは、多孔質膜の多孔質構造を形成している骨格部を意味している。多孔質構造の形状は、多孔質膜の種類や多孔質膜の形成方法によって異なっている。多孔質構造に導電性金属を付着させて導通部を形成する際、導電性金属の付着量を適度に制御することによって、導通部での多孔質構造を保持することができる。本発明の導電コンタクタでは、導電性金属が多孔質構造の表面に沿って付着しているため、導電性金属層の部分が多孔質構造と一体となって多孔質状構造となっており、その結果、導通部が多孔質状となっているということができる。このため、上述のように、電極端子等とのコンタクト時の導通部自身の変形容易性、および金属ばねの挿し込み固定容易性を得ることができる。導電性金属層の大部分または実質的にほとんどが、多孔質状構造であってもよい。
【0030】
無電解めっき法などを採用すると、導電性金属粒子が多孔質構造に付着する。本発明の導電コンダクタでは、多孔質膜を構成する多孔質構造(多孔性)をある程度維持したまま、導電性金属粒子が付着した状態が得られる。多孔質構造の孔間部分の太さは、50μm以下であることが好ましい。導電性金属粒子の粒子径は、0.001〜5μm程度であることが好ましい。導電性金属粒子の付着量は、多孔性と弾性を維持するために、0.01〜4.0g/ml程度とすることが好ましい。基膜となる多孔質の気孔率にもよるが、導電性金属粒子の付着量が多すぎると、導電コンタクタの弾性が大きくなりすぎて、通常の使用圧縮荷重では、導電コンタクタの弾性回復性能が著しく低下する。導電性金属粒子の付着量が少なすぎると、圧縮荷重を加えても膜厚方向への導通を得ることが困難になる。
【0031】
次に、貫通孔の壁面で多孔質構造部に導電性金属を付着させる方法について説明する。多孔質シート(基膜)12には、表面から裏面にかけて貫通する貫通孔が複数箇所に形成されている。これらの貫通孔は、一般に、所定のパターンで多孔質シート12に形成される。多孔質シート12は、基膜となっており、所定の複数箇所に貫通孔が設けられており、貫通孔壁面の多孔質構造には導電性金属粒子が付着して導通部5が形成されている。この導通部5は、多孔質構造の表面に付着して形成されているため、多孔質としての特性を有しており、膜厚方向に圧力(圧縮荷重)を加えることにより、膜厚方向のみに導電性が向上する。圧力を除去すると、導通部を含む多孔質シート全体が弾性回復するので、導電コンタクタは、繰り返して使用することができる。
【0032】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2における導電コンタクタ10を用いて、LSI等の被検査体20を検査装置30で検査する状態を示す図である(30を検査装置の配線基板とみる)。また、図7は、導電コンタクタ10を取り付けた導電コンタクタ付き電子部品50を、検査装置30に配置した図と見ることもできるし、また導電コンタクタ付き検査装置70にLSI等のデバイス20を配置した図と見ることもできる。さらに、検査とは無関係に、導電コンタクタ付き電子部品50を実装基板31に実装した実装半導体製品と解釈することもできる(30を配線基板と解釈する)。
【0033】
以下においては、被検査体20を検査装置30によって検査する構成として説明する(電気的接続に関することなので実装半導体製品の構成としても同様な説明となる)。本実施の形態では、導通部の両端が凹部9の底に露出している点に特徴がある。このため、被検査体の電極端子23、はんだバンプ24および検査装置の電極端子33がともに導通部5の端に接触する際、被検査体20の基板21のシート対向面と検査装置30の配線基板31のシート対向面とが、第1表面側と第2表面側とから挟むように多孔質シート12に当接して厚み方向に圧縮応力を負荷する。
【0034】
この結果、多孔質シート12は、厚み方向の圧縮変形における復元性は優れており、はんだバンプ24および電極端子33と、導通部5および平面状接続部2との間に高い面圧を生じて、高信頼性の電気的接続を得ることができる。また、多孔質シート12はガラス繊維等のセラミックスを含むため、クリープを生じることがなく繰り返し耐久性に優れ、また温度上昇時の弾性率低下も抑制され、接触部で高い面圧を維持することができる。
【0035】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、クリープを生じず、かつ昇温時に弾性率低下が生じにくい導電コンタクタを提供するので、高精細化する電極を持つLSI等の検査における検査能率向上や、また検査装置とは関係なく、多層構造の配線体の電極間の接続の確実性向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1における導電コンタクタの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す導電コンタクタのII−II線に沿う断面図である。
【図3】実施の形態1における導電コンタクタの変形例を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】多孔質シートにガラス繊維を用いた場合の平面状接続部または導通部を示す模式図である。
【図6】多孔質シートにガラスビーズを用いた場合の平面状接続部または導通部を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態2における導電コンタクタの使用形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
2 平面状接続部、5 導通部、7 中空部、10 導電コンタクタ、12 多孔質シート、20 半導体装置(被検査体)、21 基板、23 電極端子、24 はんだバンプ、30 検査装置または配線基板、31 配線基板、33 電極端子、50 導電コンタクタ付き電子部品、70 導電コンタクタ付き検査装置または導電コンタクタ付き配線基板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質シートと、
前記多孔質シートに形成された導電性金属の平面状接続部とを備え、
前記多孔質シートが主要構成材に弾性を有するセラミックスを含むことを特徴とする、導電コンタクタ。
【請求項2】
前記多孔質シートを貫通する孔の壁に形成された導電性金属の導通部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の導電コンタクタ。
【請求項3】
前記多孔質シートが、ガラス繊維、ガラスビーズおよびガラス繊維強化樹脂の少なくとも1つで形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の導電コンタクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電コンタクタを備える電子部品であって、前記導電コンタクタの、平面状接続部および導通部の少なくとも一方と、当該電子部品の電極とが電気的に接続されていることを特徴とする、電子部品。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電コンタクタと検査用回路基板とを備える検査装置であって、前記導電コンタクタの、平面状接続部および導通部の少なくとも一方と、前記検査用回路基板の端子とが電気的に接続されていることを特徴とする、検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−210635(P2008−210635A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45649(P2007−45649)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】