説明

導電シート及びタッチパネル

【課題】タッチパネルにおいて、金属細線のパターンで電極を構成した場合においても、高い透明性を確保することができ、しかも、歩留まりの向上を図ることができる導電シートを提供する。
【解決手段】透明基体12と、該透明基体12の他主面に形成された第2導電部13Bとを有し、少なくとも第2導電部13Bが透明粘着剤120を介して表示装置108に接着される導電シートにおいて、第2導電部13Bは、金属細線による網目状構造部を有し、透明基体12の主面と金属細線の側壁とのなす角が鋭角であり、第2導電部13Bにおける透明粘着剤120とのピール粘着力が、0.1N/10mm以上5N/10mm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電シート及びタッチパネルに関し、例えば投影型静電容量方式のタッチパネルに用いて好適な導電シート及びタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
金属細線を用いた透明導電膜については、例えば、特許文献1及び2で開示されているように、研究が継続されている。
近時、タッチパネルが注目されている。タッチパネルは、PDA(携帯情報端末)や携帯電話等の小サイズへの適用が主となっているが、パソコン用ディスプレイ等への適用による大サイズ化が進むと考えられる。
このような将来の動向において、従来の電極は、ITO(酸化インジウムスズ)を用いていることから、抵抗が大きく、適用サイズが大きくなるにつれて、電極間の電流の伝達速度が遅くなり、応答速度(指先を接触してからその位置を検出するまでの時間)が遅くなるという問題がある。
そこで、金属製の細線(金属細線)にて構成した格子を多数並べて電極を構成することで表面抵抗を低下させることが考えられる。金属細線を電極に用いたタッチパネルとしては、例えば、特許文献3〜9が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0229028号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/001461号パンフレット
【特許文献3】特開平5−224818号公報
【特許文献4】米国特許第5113041号明細書
【特許文献5】国際公開第1995/27334号パンフレット
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0239650号明細書
【特許文献7】米国特許第7202859号明細書
【特許文献8】国際公開第1997/18508号パンフレット
【特許文献9】特開2003−099185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属細線を電極に用いる場合、金属細線が不透明な材料で作製されることから透明性や視認性が問題となる。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、タッチパネルにおいて、金属細線のパターンで電極を構成した場合においても、高い透明性を確保することができ、しかも、歩留まりの向上を図ることができる導電シート及びタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1] 第1の本発明に係る導電シートは、基体と、該基体の一主面に形成された導電部とを有し、少なくとも前記導電部が粘着剤を介して他の物体に接着される導電シートにおいて、前記導電部は、金属細線による網目状構造部を有し、前記基体の主面と前記金属細線の側壁とのなす角が鋭角であり、前記導電部における前記粘着剤とのピール粘着力が、0.1N/10mm以上5N/10mm以下であることを特徴とする。
導電部が金属細線による網目状構造を有する場合、さらなる表面抵抗の低下を目的として、金属細線の厚みを大きくすることが考えられる。しかし、電極上に粘着剤(あるいは粘着シート)を介して他の物体(例えば表示装置や反射防止フイルム等)を貼着する際に、導電シートと粘着剤(あるいは粘着シート)間に気泡が入り易くなり、美観を損なうことになる。金属細線の厚みが大きいと、粘着剤(あるいは粘着シート)が金属細線に強固に固着し易くなり、貼着ミス(貼着位置のずれ等)があった場合の貼り直しの際に、一部の金属細線が剥離したり、導電シートが変形して、金属細線の一部に断線が生じるという問題がある。
そこで、第1の本発明では、基体の一主面と金属細線の側壁とのなす角を鋭角とし、導電部における粘着剤とのピール粘着力を、0.1N/10mm以上5N/10mm以下となるようにしている。
これにより、表面抵抗の低下を目的として、金属細線の厚みを大きくしても、粘着剤(あるいは粘着シート)の金属細線に対する接着力が金属細線の基体に対する接着力よりも小さくなるため、粘着剤(あるいは粘着シート)の貼り直しを行なっても、金属細線が基体から剥離することがない。しかも、粘着剤(粘着シート)を貼着した際に気泡の混入がほとんどない。このようなことから、粘着剤(あるいは粘着シート)の貼着作業並びに貼り直し作業が容易にできるようになり、タッチパネル全体の組み立て作業にかかる時間を短縮することができると共に、タッチパネルの歩留まりも向上させることができる。
[2] 第1の本発明において、前記金属細線は、断面ほぼ台形状であってもよい。
[3] 第1の本発明において、前記なす角が50°以上90°未満であることが好ましい。
[4] 第1の本発明において、前記導電部における前記粘着剤とのピール粘着力が、0.3N/10mm以上であることが好ましい。
[5] 導電シートをタッチパネルの導電シートとして使用する場合、薄いほど表示パネルの視野角が広がるため好ましく、視認性の向上の点でも薄膜化が要求される。このような観点から、金属細線の厚みは、9μm以下であることが好ましい。
[6] 第1の本発明において、前記基体の一主面側から測定した前記導電部の反射色度をb1*、前記基体の他主面側から測定した前記導電部の反射色度をb2*としたとき、
|b1*−b2*|≦2.0
であることを特徴とする。
これにより、導電シートを表面から見た導電部の色合いと導電シートを裏面から見た導電部の色合いがほとんど変わらなくなる。
[7] この場合、前記基体の厚みが75μm以上200μm以下であることが好ましい。
[8] 第1の本発明において、全光線透過率が85%以上で、且つ、前記導電部の表面抵抗が100オーム/sq.以下であることが好ましい。
[9] 第1の本発明において、下記の屈曲試験を行う前の前記導電部の表面抵抗をR1、下記屈曲試験を行ったあとの前記導電部の表面抵抗をR2としたとき、R2/R1<3を満足することを特徴とする。
[屈曲試験は、基台に対して回転自在に取り付けられた直径4mmのローラーに前記導電シートを引っかけ、前記導電シートの一方の端部を幅1mあたり28.6kgのテンションで引っ張りながら前記ローラーを回転させて前記導電シートを屈曲させる工程と、前記導電シートの他方の端部を幅1mあたり28.6kgのテンションで引っ張りながら前記ローラーを回転させて前記導電シートを屈曲させる工程とを繰り返し行って、前記導電シートを100回屈曲させる。]
これにより、粘着剤(あるいは粘着シート)の貼り直しの際に、導電シートが変形しても、金属細線の一部が断線するということがなく、製造上の歩留まりの向上を図ることができる。
[10] さらに好ましくはR2/R1<1.5である。
[11] 第2の本発明に係る導電シートは、基体と、該基体の一主面に形成された第1導電部と、前記基体の他主面に形成された第2導電部とを有し、前記第1導電部及び前記第2導電部のうち、少なくともいずれか一方の導電部が粘着剤を介して別の物体に接着される導電シートであって、前記第1導電部及び前記第2導電部は、それぞれ金属細線による網目状構造部を有し、前記基体の一主面と前記第1導電部における前記金属細線の側壁とのなす角及び前記基体の他主面と前記第2導電部における前記金属細線の側壁とのなす角が共に鋭角であり、前記導電部における前記粘着剤とのピール粘着力が、0.1N/10mm以上5N/10mm以下であることを特徴とする。
これにより、基体の両面に導電部を有する導電シートにおいて、粘着剤(粘着シート)を貼着した際に、気泡の混入がほとんどなく、また、粘着剤を貼り直しても、金属細線が剥離することがない。これは、導電シートの歩留まりの向上を図る上で有利となる。
[12] 第2の本発明において、前記第1導電部が第1粘着剤を介して第1物体に接着され、前記第2導電部が第2粘着剤を介して第2物体に接着され、前記第1導電部における前記第1粘着剤とのピール粘着力及び前記第2導電部における前記第2粘着剤とのピール粘着力が、それぞれ0.1N/10mm以上5N/10mm以下であってもよい。
[13] 第2の本発明において、前記金属細線は、断面ほぼ台形状であってもよい。
[14] 第2の本発明において、前記なす角が50°以上90°未満であることが好ましい。
[15] 第2の本発明において、前記導電部における前記粘着剤とのピール粘着力が、0.3N/10mm以上であることが好ましい。
[16] 第2の本発明において、金属細線の厚みは9μm以下であることが好ましい。
[17] 第2の本発明において、前記基体の一主面側から測定した前記第1導電部の反射色度をb1*、前記基体の一主面側から測定した前記第2導電部の反射色度をb2*としたとき、
|b1*−b2*|≦2.0
であることを特徴とする。
これにより、第1導電部の網目状構造と第2導電部の網目状構造との境界が目立たなくなり、視認性が向上する。
[18] 第2の本発明において、前記基体の厚みが75μm以上200μm以下であることが好ましい。
[19] 第2の本発明において、全光線透過率が85%以上で、且つ、前記第1導電部及び前記第2導電部の表面抵抗が100オーム/sq.以下であることが好ましい。
[20] 第2の本発明において、下記の屈曲試験を行う前の前記第1導電部及び前記第2導電部の各表面抵抗をR1a及びR1b、下記屈曲試験を行ったあとの前記第1導電部及び前記第2導電部の各表面抵抗をR2a及びR2bとしたとき、R2a/R1a<3、且つ、R2b/R1b<3を満足することを特徴とする。
[屈曲試験は、基台に対して回転自在に取り付けられた直径4mmのローラーに前記導電シートを引っかけ、前記導電シートの一方の端部を幅1mあたり28.6kgのテンションで引っ張りながら前記ローラーを回転させて前記導電シートを屈曲させる工程と、前記導電シートの他方の端部を幅1mあたり28.6kgのテンションで引っ張りながら前記ローラーを回転させて前記導電シートを屈曲させる工程とを繰り返し行って、前記導電シートを100回屈曲させる。]
これにより、粘着剤(あるいは粘着シート)の貼り直しの際に、導電シートが変形しても、金属細線の一部が断線するということがなく、製造上の歩留まりの向上を図ることができる。
[21] さらに好ましくはR2a/R1a<3、且つ、R2b/R1b<3である。
[22] 第3の本発明に係るタッチパネルは、表示装置の表示パネル上に粘着剤を介して接着された導電シートを有するタッチパネルにおいて、前記導電シートは、基体と、前記基体の一主面に形成された導電部とを有し、前記導電部は、金属細線による網目状構造部を有し、前記基体の主面と前記金属細線の側壁とのなす角が鋭角であり、前記導電部における前記粘着剤とのピール粘着力が、0.1N/10mm以上5N/10mm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように、本発明に係る導電シートによれば、基体上に形成される導電パターンの低抵抗化を図ることができると共に、タッチパネルにおいて、金属細線パターンで電極を構成した場合においても、高い透明性を確保することができ、しかも、導電シートの歩留まりの向上を図ることができる。
また、本発明に係るタッチパネルは、基体上に形成される導電パターンの低抵抗化を図ることができると共に、金属細線パターンで電極を構成した場合においても、高い透明性を確保することができ、例えば投影型静電容量方式のタッチパネルの大サイズ化にも対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施の形態に係るタッチパネルの構成を示す分解斜視図である。
【図2】図2Aは透明基体の一主面を示す斜視図であり、図2Bは透明基体の他主面を示す斜視図である。
【図3】図3Aは導電シートの一例を一部省略して示す断面図であり、図3Bは金属細線の断面形状を拡大して示す断面図である。
【図4】図4Aは透明基体の一主面に形成された第1導電部のパターンを示す斜視図であり、図4Bは透明基体の他主面に形成された第2導電部のパターンを示す斜視図である。
【図5】第1導電部のパターン例を示す平面図である。
【図6】第2導電部のパターン例を示す平面図である。
【図7】導電シートを上面から見たパターン例を示す平面図である。
【図8】図8Aは導電シートの第1構成例を示す模式図であり、図8Bは同じく第2構成例を示す模式図であり、図8Cは同じく第3構成例を示す模式図である。
【図9】屈曲試験に使用される装置の一例を示す斜視図である。
【図10】導電シートの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図11】図11Aは作製された感光材料を一部省略して示す断面図であり、図11Bは感光材料に対する両面同時露光を示す説明図である。
【図12】第1感光層に照射された光が第2感光層に到達せず、第2感光層に照射された光が第1感光層に到達しないようにして第1露光処理及び第2露光処理を行っている状態を示す説明図である。
【図13】図13A及び図13Bは導電シートの製造方法の他の例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る導電シート及びタッチパネルの実施の形態例を図1〜図13Bを参照しながら説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0009】
先ず、本実施の形態に係る導電シートが使用されるタッチパネルについて説明する。
タッチパネル100は、センサ本体102と図示しない制御回路(IC回路等で構成)とを有する。センサ本体102は、後述する導電シート10と、その上に積層された保護板(ガラス板等)106とを有する。導電シート10及び保護板106は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置108における表示パネル110上に配置されるようになっている。導電シート10は、上面及び背面から見たときに、図2A及び図2Bに示すように、表示パネル110の表示画面110a(図1参照)に対応した領域に配されたセンサ部112と、表示パネル110の外周部分に対応する領域に配された端子配線部114(いわゆる額縁)とを有する。
本実施の形態に係る導電シート10は、図3Aに示すように、透明基体12の一主面12a上に形成された第1導電部13Aと透明基体12の他主面12bに形成された第2導電部13Bとを有する。なお、透明基体12の一主面12aと第1導電部13Aとの間、透明基体12の他主面12bと第2導電部13Bとの間に、それぞれ他の層(アンチハレーション層等)が存在してもよい。
第1導電部13Aは、図4A及び図5に示すように、金属細線15による2以上の導電性の第1大格子14Aと、隣接する第1大格子14A間を電気的に接続する金属細線15による第1接続部16Aとが形成され、各第1大格子14Aは、それぞれ2以上の小格子18が組み合わされて構成され、第1大格子14Aの組み合わせによって回路(導電性の回路パターン)が構成されている。小格子18は、ここでは一番小さいひし形(正方形状を含む)とされている。金属細線15は、図3Bに示すように、透明基体12の一主面12aと金属細線15の側壁15aとのなす角θが鋭角とされている。なす角θは50°以上90°未満が好ましく、さらに好ましくは60°以上80°以下である。図3Bでは、金属細線15の上面が平坦とされて断面ほぼ台形状とされた例を示している。もちろん、この断面形状に限定されることなく、上面の形状が湾曲状(例えば凸面等)であってもよい。金属細線15は例えば金(Au)、銀(Ag)又は銅(Cu)で構成されている。
【0010】
第1大格子14Aの一辺の長さは、3〜10mmであることが好ましく、4〜6mmであることがより好ましい。一辺の長さが、上記下限値未満であると、導電シート10を例えばタッチパネルに利用した場合に、検出時の第1大格子14Aの静電容量が減るため、検出不良になる可能性が高くなる。他方、上記上限値を超えると、位置検出精度が低下する虞がある。同様の観点から、第1大格子14Aを構成する小格子18の一辺の長さは50〜500μmであることが好ましく、150〜300μmであることがさらに好ましい。小格子18が上記範囲である場合には、さらに透明性も良好に保つことが可能であり、表示装置108の前面にとりつけた際に、違和感なく表示を視認することができる。
【0011】
さらに、2以上の第1大格子14Aが第1接続部16Aを介してx方向(第1方向)に配列されて金属細線による1つの導電性の回路パターン(以下、第1導電パターン22Aと記す)が構成され、2以上の第1導電パターン22Aがx方向と直交するy方向(第2方向)に配列され、隣接する第1導電パターン22A間は、小格子18が存在しない電気的に絶縁された第1絶縁部24Aが配されている。
x方向は、例えばタッチパネル100(図1参照)の水平方向(又は垂直方向)あるいはタッチパネル100を設置した表示パネル110の水平方向(又は垂直方向)を示す。
【0012】
そして、図5に示すように、第1大格子14Aの4つの辺部のうち、隣接する第1大格子14Aと接続していない一方の頂点部分26aに隣接する第1辺部28a及び第2辺部28bについては、それぞれ第1辺部28a及び第2辺部28bに沿って連続する直線部30から多数の針状の線32(小格子18の辺)がくし歯状に張り出した形態とされている(以下、線32をくし歯32とも記す)。一方、隣接する第1大格子14Aと接続していない他方の頂点部分26bに隣接する第3辺部28c及び第4辺部28dについては、それぞれ第3辺部28c及び第4辺部28dに沿って連続する直線部30形成された形態とされ、さらに、他方の頂点部分26bに対応する1つの小格子18(正確には隣接する2つの辺)を取り外したような形態となっている。
【0013】
第1接続部16Aは、4つ分の小格子18を含む大きさを有する中格子20が4つ(第1中格子20a〜第4中格子20d)、ジグザグ状に配列された形状を有する。すなわち、第1中格子20aは、第2辺部28bの直線部30と第4辺部28dの直線部30との境界部分に存在し、1つの小格子18とL字状の空間が形成された形状を有する。第2中格子20bは、第1中格子20aの1つ辺(第2辺部28bの直線部30)に隣接し、正方形状の空間が形成された形状、すなわち、4つ分の小格子18をマトリクス状に配列し、中央の十字を取り外したような形状を有する。第3中格子20cは、第1中格子20aに隣接すると共に、第2中格子20bに隣接して配され、第2中格子20bと同様の形状を有する。第4中格子20dは、第3辺部28cの第2番目の直線部30(一番外側から第1大格子14Aの内方に向かって2番目の直線部30)と第1辺部28aとの境界部分に存在し、第2中格子20bに隣接すると共に、第3中格子20cに隣接して配され、第1中格子20aと同様に、1つの小格子18とL字状の空間が形成された形状を有する。第4中格子20dの1つの辺は第1大格子14Aにおける第4辺部28dの直線部30の延長上に存在する。そして、小格子18の配列ピッチをPsとしたとき、中格子20の配列ピッチPmは2×Psの関係を有している。
図4Aに示すように、各第1導電パターン22Aの一方の端部側に存在する第1大格子14Aの開放端は、第1接続部16Aが存在しない形状となっている。各第1導電パターン22Aの他方の端部側に存在する第1大格子14Aの端部は、第1結線部40aを介して金属細線による第1端子配線パターン41aに電気的に接続されている。すなわち、第1導電部13Aは、センサ部112に対応した部分に、上述した多数の第1導電パターン22Aが配列され、端子配線部114には各第1結線部40aから導出された金属細線による複数の第1端子配線パターン41aが配列されている。
【0014】
一方、第2導電部13Bは、図4B、図6に示すように、金属細線15による2以上の導電性の第2大格子14Bと、隣接する第2大格子14B間を電気的に接続する金属細線15による第2接続部16Bとが形成され、各第2大格子14Bは、それぞれ2以上の小格子18が組み合わされて構成され、第2接続部16Bは、小格子18のn倍(nは1より大きい実数)のピッチを有する1以上の中格子20が配置されて構成されている。第2大格子14Bの一辺の長さについても、上述した第1大格子14Aと同様に、3〜10mmであることが好ましく、4〜6mmであることがより好ましい。金属細線15は、第1導電部13の場合と同様に、透明基体12の他主面12bと金属細線15の側壁15aとのなす角θ(図3B参照)が鋭角とされている。なす角θは50°以上90°未満が好ましく、さらに好ましくは60°以上80°以下である。
さらに、2以上の第2大格子14Bが第2接続部16Bを介してy方向(第2方向)に配列されて金属細線による1つの導電性の回路パターン(以下、第2導電パターン22Bと記す)が構成され、2以上の第2導電パターン22Bがy方向と直交するx方向(第1方向)に配列され、隣接する第2導電パターン22B間は小格子18が存在しない電気的に絶縁された第2絶縁部24Bが配されている。
【0015】
そして、図6に示すように、第2導電パターン22Bにおける第2大格子14Bの4つの辺部のうち、隣接する第2大格子14Bと接続していない一方の頂点部分26aに隣接する第5辺部28e及び第6辺部28fについてみると、第5辺部28eについては、第1導電シート10Aにおける第1大格子14Aの第1辺部28aと同様に、第5辺部28eに沿って連続する直線部30から多数の針状の線32(小格子18の辺)がくし歯状に張り出した形態とされている。第6辺部28fについては、第1導電シート10Aにおける第1大格子14Aの第3辺部28cと同様に、第6辺部28fに沿って連続する直線部30が形成された形態とされている。隣接する第2大格子14Bと接続していない他方の頂点部分26bに隣接する第7辺部28g及び第8辺部28hについてみると、第7辺部26gについては、第5辺部28eと同様に、第7辺部28gに沿って連続する直線部30から多数の針状の線32(小格子18の辺)がくし歯状に張り出した形態とされ、第8辺部28hについては、第6辺部28fと同様に、第8辺部28hに沿って連続する直線部30が形成された形態とされている。
【0016】
また、第2接続部16Bは、4つ分の小格子18を含む大きさを有する中格子20が4つ(第5中格子20e〜第8中格子20h)、ジグザグ状に配列された形状を有する。すなわち、第5中格子20eは、第6辺部28fの第2番目の直線部30(一番外側から第2大格子14Bの内方に向かって2番目の直線部)と第8辺部28hの直線部30との境界部分に存在し、1つの小格子18とL字状の空間が形成された形状を有する。第6中格子20fは、第5中格子20eの1つの辺(第6辺部28fの第2番目の直線部30)に隣接し、正方形状の空間が形成された形状、すなわち、4つ分の小格子18をマトリクス状に配列し、中央の十字を取り外したような形状を有する。第7中格子20gは、第5中格子20eに隣接すると共に、第6中格子20fに隣接して配され、第6中格子20fと同様の形状を有する。第8中格子20hは、第7辺部28gの直線部30と第5辺部28eとの境界部分に存在し、第6中格子20fに隣接すると共に、第7中格子20gに隣接して配され、第5中格子20eと同様に、1つの小格子18とL字状の空間が形成された形状を有する。第8中格子20hの1つの辺は第5中格子20eにおける第8辺部28hの直線部30の延長上に存在する。この第2導電シート10Bにおいても、小格子18の配列ピッチをPsとしたとき、中格子20の配列ピッチPmは2×Psの関係を有している。
【0017】
図4Bに示すように、1つ置き(例えば奇数番目)の第2導電パターン22Bの一方の端部側に存在する第2大格子14Bの開放端、並びに偶数番目の第2導電パターン22Bの他方の端部側に存在する第2大格子14Bの開放端には、それぞれ第2接続部16Bが存在しない形状となっている。一方、奇数番目の各第2導電パターン22Bの他方の端部側に存在する第2大格子14Bの端部、並びに偶数番目の各第2導電パターン22Bの一方の端部側に存在する第2大格子14Bの端部は、それぞれ第2結線部40bを介して金属細線による第2端子配線パターン41bに電気的に接続されている。すなわち、第2導電部13Bは、センサ部112に対応した部分に、多数の第2導電パターン22Bが配列され、端子配線部114には各第2結線部40bから導出された複数の第2端子配線パターン41bが配列されている。
そして、導電シート10を例えば上面から見たとき、図7に示すように、第1導電パターン22Aの第1接続部16Aと第2導電パターン22Bの第2接続部16Bとが透明基体12(図3A参照)を間に挟んで対向し、第1導電パターン22Aの第1絶縁部24Aと第2導電パターン22Bの第2絶縁部24Bとが同じく透明基体12を間に挟んで対向した形態となる。なお、第1導電パターン22Aと第2導電パターン22Bの各線幅は同じであるが、図7においては、第1導電パターン22Aと第2導電パターン22Bの位置がわかるように、第1導電パターン22Aの線幅を太く、第2導電パターン22Bの線幅を細くして誇張して図示してある。
【0018】
導電シート10を上面から見たとき、透明基体12の一主面12aに形成された第1大格子14Aの隙間を埋めるように、透明基体12の他主面12bに形成された第2大格子14Bが配列された形態となる。つまり、大格子が敷き詰められた形態となる。このとき、第1大格子14Aの第1辺部28a及び第2辺部28bにおけるくし歯32の各先端が第2大格子14Bの第6辺部28f及び第8辺部28hの各直線部30にて接続されたような形状となって、結果的に小格子18が配列された形態となり、同様に、第2大格子14Bの第5辺部28e及び第7辺部28gにおけるくし歯32の各先端が第1大格子14Aの第3辺部28c及び第4辺部28dの各直線部30にて接続されたような形状となって、結果的に小格子18が配列された形態となる。
ところで、導電シート10を上面から見たとき、図3Aに示すように、例えば第1大格子14Aに対応する部分では、第1導電部13Aを構成する金属細線15の上面と側面(傾斜面)が見え、第2大格子14Bに対応する部分では、透明基体12を介して第2導電部13Bを構成する金属細線15の下面が見えることになる。この場合、第1導電部13Aからの反射色度と第2導電部13Bからの反射色度が異なると、第1大格子14Aと第2大格子14Bとの境界が肉眼にて視認され易くなり、視認性が劣化するおそれがある。
【0019】
そこで、本実施の形態では、透明基体12の一主面12a側から測定した第1導電部13Aの反射色度をb1*、透明基体12の一主面12a側から測定した第2導電部13Bの反射色度をb2*としたとき、
|b1*−b2*|≦2.0
となるようにしている。
具体的には、第1導電部13A及び第2導電部13Bを、透明基体12上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有する感光材料を露光、現像することによって形成する場合は、透明基体12の厚みを75μm以上200μm以下にすることが好ましい。
あるいは、一主面及び他主面にそれぞれ金属膜が形成された透明基体12を使用し、金属膜を選択的にエッチング除去して、透明基体12上に金属細線15による第1導電部13A及び第2導電部13Bを形成する場合は、透明基体の厚みを75μm以上200μm以下にすることと、金属細線15の表面を黒化処理することが好ましい。
これにより、第1大格子14Aと第2大格子14Bとの境界が肉眼にて視認され難くなり、視認性が向上する。
【0020】
導電シート10の外形は、図1、図2A及び図2Bに示すように、上面から見て長方形状を有し、センサ部112の外形も長方形状を有する。端子配線部114のうち、導電シート10の一主面(第1導電部13Aが形成された主面)における一方の長辺側の周縁部には、その長さ方向中央部分に、複数の第1端子116aが前記一方の長辺の長さ方向に配列形成されている。また、センサ部112の一方の長辺(導電シート10の一方の長辺に最も近い長辺:y方向)に沿って複数の第1結線部40aが直線状に配列されている。各第1結線部40aから導出された第1端子配線パターン41aは、第1導電シート10Aの一方の長辺におけるほぼ中央部に向かって引き回され、それぞれ対応する第1端子116aに電気的に接続されている。従って、センサ部112における一方の長辺の両側に対応する各第1結線部40aに接続された第1端子配線パターン41aは、ほぼ同じ長さにて引き回されることになる。もちろん、第1端子116aを第1導電シート10Aのコーナー部やその近傍に形成してもよいが、複数の第1端子配線パターン41aのうち、最も長い第1端子配線パターン41aと最も短い第1端子配線パターン41aとの間に大きな長さ上の違いが生じ、最も長い第1端子配線パターン41aとその近傍の複数の第1端子配線パターン41aに対応する第1導電パターン22Aへの信号伝達が遅くなるという問題がある。そこで、本実施の形態のように、導電シート10の一方の長辺の長さ方向中央部分に、第1端子116aを形成することで、局所的な信号伝達の遅延を抑制することができる。これは、応答速度の高速化につながる。
【0021】
一方、図2Bに示すように、端子配線部114のうち、導電シート10の他主面(第2導電部13Bが形成された主面)における一方の長辺側の周縁部には、その長さ方向中央部分に、複数の第2端子116bが前記一方の長辺の長さ方向に配列形成されている。また、センサ部112の一方の短辺(導電シート10の一方の短辺に最も近い短辺:x方向)に沿って複数の第2結線部40b(例えば奇数番目の第2結線部40b)が直線状に配列され、センサ部112の他方の短辺(導電シート10の他方の短辺に最も近い短辺:x方向)に沿って複数の第2結線部40b(例えば偶数番目の第2結線部40b)が直線状に配列されている。
【0022】
複数の第2導電パターン22Bのうち、例えば奇数番目の第2導電パターン22Bが、それぞれ対応する奇数番目の第2結線部40bに接続され、偶数番目の第2導電パターン22Bが、それぞれ対応する偶数番目の第2結線部40bに接続されている。奇数番目の第2結線部40bから導出された第2端子配線パターン41b並びに偶数番目の第2結線部40bから導出された第2端子配線パターン41bは、導電シート10の一方の長辺におけるほぼ中央部に向かって引き回され、それぞれ対応する第2端子116bに電気的に接続されている。従って、例えば第1番目と第2番目の第2端子配線パターン41bは、ほぼ同じ長さにて引き回され、以下同様に、第2n−1番目と第2n番目の第2端子配線パターン41bは、それぞれほぼ同じ長さにて引き回されることになる(n=1、2、3・・・)。
もちろん、第2端子116bを導電シート10のコーナー部やその近傍に形成してもよいが、上述したように、最も長い第2端子配線パターン41bとその近傍の複数の第2端子配線パターン41bに対応する第2導電パターン22Bへの信号伝達が遅くなるという問題がある。そこで、本実施の形態のように、導電シート10の一方の長辺の長さ方向中央部分に、第2端子116bを形成することで、局所的な信号伝達の遅延を抑制することができる。これは、応答速度の高速化につながる。
なお、第1端子配線パターン41aの導出形態を上述した第2端子配線パターン41bと同様にし、第2端子配線パターン41bの導出形態を上述した第1端子配線パターン41aと同様にしてもよい。
【0023】
そして、この導電シート10をタッチパネル100として使用する場合は、導電シート10上に例えば反射防止フイルム等を介して保護板106を貼着し、導電シート10の多数の第1導電パターン22Aから導出された第1端子配線パターン41aと、第2導電シート10Bの多数の第2導電パターン22Bから導出された第2端子配線パターン41bとを、例えばスキャンをコントロールする制御回路に接続する。
タッチ位置の検出方式としては、自己容量方式や相互容量方式を好ましく採用することができる。すなわち、自己容量方式であれば、第1導電パターン22Aに対して順番にタッチ位置検出のための電圧信号を供給し、第2導電パターン22Bに対して順番にタッチ位置検出のための電圧信号を供給する。指先が保護板106の上面に接触又は近接させることで、タッチ位置に対向する第1導電パターン22A及び第2導電パターン22BとGND(グランド)間の容量が増加することから、当該第1導電パターン22A及び第2導電パターン22Bからの伝達信号の波形が他の導電パターンからの伝達信号の波形と異なった波形となる。従って、制御回路では、第1導電パターン22A及び第2導電パターン22Bから供給された伝達信号に基づいてタッチ位置を演算する。一方、相互容量方式の場合は、例えば第1導電パターン22Aに対して順番にタッチ位置検出のための電圧信号を供給し、第2導電パターン22Bに対して順番にセンシング(伝達信号の検出)を行う。指先が保護板106の上面に接触又は近接させることで、タッチ位置に対向する第1導電パターン22Aと第2導電パターン22B間の寄生容量に対して並列に指の浮遊容量が加わることから、当該第2導電パターン22Bからの伝達信号の波形が他の第2導電パターン22Bからの伝達信号の波形と異なった波形となる。従って、制御回路では、電圧信号を供給している第1導電パターン22Aの順番と、供給された第2導電パターン22Bからの伝達信号に基づいてタッチ位置を演算する。このような自己容量方式又は相互容量方式のタッチ位置の検出方法を採用することで、保護板106の上面に同時に2つの指先を接触又は近接させても、各タッチ位置を検出することが可能となる。なお、投影型静電容量方式の検出回路に関する先行技術文献として、米国特許第4,582,955号明細書、米国特許第4,686,332号明細書、米国特許第4,733,222号明細書、米国特許第5,374,787号明細書、米国特許第5,543,588号明細書、米国特許第7,030,860号明細書、米国公開特許2004/0155871号明細書等がある。
【0024】
ところで、第1導電部13A及び第2導電部13Bにおいて、例えば第1大格子14A及び第2大格子14Bの辺部を全て直線部30として形成した場合、すなわち、第1大格子14Aの第1辺部28a及び第2辺部28bから張り出す多数の線32の開放端を接続して新たな直線部30とし、同様に、第2大格子14Bの第5辺部28e及び第7辺部28gから張り出す多数の線32の開放端を接続して新たな直線部30とした場合、重ね合わせの位置精度の僅かなズレにより、直線部30同士の重なり部分の幅が大きくなり(線太り)、これにより、第1大格子14Aと第2大格子14Bとの境界が目立ってしまい、視認性が劣化するという問題が生じるが、本実施の形態では、上述したように、くし歯32の先端と直線部30との重なりにより、第1大格子14Aと第2大格子14Bとの境界が目立たなくなり、視認性が向上する。なお、第1絶縁部24Aと第2絶縁部24Bとが対向する部分は、中格子1つ分の開口が形成されることになるが、上述した線太りと異なり、光を遮るということがないため、外部に目立つということがほとんどない。特に、中格子1つ分の開口であれば、周りの小格子18と比してサイズ的にもほとんど同じであるため、さらに目立たなくなる。
【0025】
また、例えば第1大格子14A及び第2大格子14Bの第1辺部28a〜第8辺部28hを全て直線部30として形成した場合、第1大格子14Aの第1辺部28a〜第4辺部28dにおける直線部30の直下に第2大格子14Bの第5辺部28e〜第8辺部28hにおける直線部30が位置することになる。このとき、各直線部30も導電部分として機能することから、第1大格子14Aの辺部と第2大格子14Bの辺部との間に寄生容量が形成され、この寄生容量の存在が電荷情報に対してノイズ成分として働き、S/N比の著しい低下を引き起こす。しかも、各第1大格子14Aと各第2大格子14B間に寄生容量が形成されることから、第1導電パターン22Aと第2導電パターン22Bに多数の寄生容量が並列に接続された形態となり、その結果、CR時定数が大きくなるという問題がある。CR時定数が大きくなると、第1導電パターン22A(及び第2導電パターン22B)に供給された電圧信号の波形の立ち上がり時間が遅くなり、所定のスキャン時間において位置検出のための電界の発生がほとんど行われなくなるおそれがある。また、第1導電パターン22A及び第2導電パターン22Bからの伝達信号の波形の立ち上がり時間又は立ち下がり時間も遅くなり、所定のスキャン時間において伝達信号の波形の変化を捉えることができなくなるおそれがある。これは、検出精度の低下、応答速度の低下につながる。つまり、検出精度の向上、応答速度の向上を図るためには、第1大格子14A及び第2大格子14Bの数を減らしたり(分解能の低減)、適応させる表示画面のサイズを小さくするしかなく、例えばB5版、A4版、それ以上の大画面に適用させることができないという問題が生ずる。
【0026】
これに対して、本実施の形態では、図3Aに示すように、第1大格子14Aの辺部における直線部30と、第2大格子14Bの辺部における直線部30との投影距離Lfを小格子18の1つの辺の長さ(50〜500μm)とほぼ同じにしている。さらに、第1大格子14Aの第1辺部28a及び第2辺部28bから張り出している針状の線32は、それぞれ先端のみが第2大格子14Bの第6辺部28f及び第8辺部28hにおける直線部30と対向し、第2大格子14Bの第5辺部28e及び第7辺部28gから張り出している針状の線32は、それぞれ先端のみが第1大格子14Aの第3辺部28c及び第4辺部28dにおける直線部30と対向するだけであるため、第1大格子14Aと第2大格子14B間に形成される寄生容量は小さくなる。その結果、CR時定数も小さくなり、検出精度の向上、応答速度の向上を図ることができる。
上述の投影距離Lfの最適距離は、第1大格子14A及び第2大格子14Bのサイズよりは、第1大格子14A及び第2大格子14Bを構成する小格子18のサイズ(線幅及び一辺の長さ)に応じて適宜設定することが好ましい。この場合、一定のサイズを有する第1大格子14A及び第2大格子14Bに対して、小格子18のサイズが大きすぎると、透光性は向上するが、伝達信号のダイナミックレンジが小さくなることから、検出感度の低下を引き起こすおそれがある。反対に、小格子18のサイズが小さすぎると、検出感度は向上するが、線幅の低減には限界があるため、透光性が劣化するおそれがある。
【0027】
そこで、上述の投影距離Lfの最適値(最適距離)は、小格子18の線幅を1〜9μmとしたとき、100〜400μmが好ましく、さらに好ましくは200〜300μmである。小格子18の線幅を狭くすれば、上述の最適距離も短くできるが、電気抵抗が高くなってくるため、寄生容量が小さくても、CR時定数が高くなってしまい、結果的に検出感度の低下、応答速度の低下を引き起こすおそれがある。従って、小格子18の線幅は上述の範囲が好ましい。
そして、例えば表示パネル110のサイズあるいはセンサ部112のサイズとタッチ位置検出の分解能(駆動パルスのパルス周期)とに基づいて、第1大格子14A及び第2大格子14Bのサイズ並びに小格子18のサイズが決定され、小格子18の線幅を基準に第1大格子14Aと第2大格子14B間の最適距離が割り出されることになる。
【0028】
また、第1接続部16Aと第2接続部16Bとが対向した部分を上面から見たとき、第2接続部16Bの第5中格子20eと第7中格子20gとの交点が第1大格子14Aの第2中格子20bのほぼ中心に位置し、第2接続部16Bの第6中格子20fと第8中格子20hとの交点が第1大格子14Aの第3中格子20cのほぼ中心に位置することとなり、これら第1中格子20a〜第8中格子20hの組み合わせによって、複数の小格子18が形成された形態となる。すなわち、第1接続部16Aと第2接続部16Bとが対向した部分に、第1接続部16Aと第2接続部16Bの組み合わせによって、複数の小格子18が配列された形態となり、周りの第1大格子14Aを構成する小格子18や第2大格子14Bを構成する小格子18と見分けがつかなくなり、視認性が向上する。
さらに、本実施の形態では、端子配線部114のうち、第1導電シート10Aの一方の長辺側の周縁部における長さ方向中央部分に複数の第1端子116aを形成し、第2導電シート10Bの一方の長辺側の周縁部における長さ方向中央部分に複数の第2端子116bを形成するようにしている。特に、図2A及び図2Bの例では、第1端子116aと第2端子116bとが重ならないように、且つ、互いに接近した状態で配列し、さらに、第1端子配線パターン41aと第2端子配線パターン41bとが上下で重ならないようにしている。なお、第1端子116aと例えば奇数番目の第2端子配線パターン41aとが一部上下で重なる形態にしてもよい。
これにより、複数の第1端子116a及び複数の第2端子116bを、2つのコネクタ(第1端子用コネクタ及び第2端子用コネクタ)あるいは1つのコネクタ(第1端子116a及び第2端子116bに接続される複合コネクタ)及びケーブルを介して制御回路に電気的に接続することができる。
また、第1端子配線パターン41aと第2端子配線パターン41bとが上下で重ならないようにしているため、第1端子配線パターン41aと第2端子配線パターン41b間での寄生容量の発生が抑制され、応答速度の低下を抑えることができる。
【0029】
第1結線部40aをセンサ部112の一方の長辺に沿って配列し、第2結線部40bをセンサ部112の両側の短辺に沿って配列するようにしたので、端子配線部114の面積を低減することができる。これは、タッチパネル100を含めた表示パネル110の小型化を促進させることができると共に、表示画面110aを印象的に大きく見せることができる。また、タッチパネル100としての操作性も向上させることができる。
端子配線部114の面積をさらに小さくするには、隣接する第1端子配線パターン41a間の距離、隣接する第2端子配線パターン41b間の距離を狭くすることが考えられるが、この場合、マイグレーションの発生防止を考慮すると、10μm以上50μm以下が好ましい。
【0030】
その他、上面から見たときに、隣接する第1端子配線パターン41a間に第2端子配線パターン41bを配置することによって、端子配線部114の面積を小さくすることが考えられるが、パターンの形成ずれがあると、第1端子配線パターン41aと第2端子配線パターン41bとが上下で重なり、配線間の寄生容量が大きくなるおそれがある。これは応答速度の低下をもたらす。そこで、このような配置構成を採用する場合は、隣接する第1端子配線パターン41a間の距離を50μm以上100μm以下にすることが好ましい。
また、図2A及び図2Bに示すように、第1導電シート10Aと第2導電シート10Bの例えば各コーナー部に、第1導電シート10Aと第2導電シート10Bの貼り合わせの際に使用する位置決め用の第1アライメントマーク118a及び第2アライメントマーク118bを形成することが好ましい。この第1アライメントマーク118a及び第2アライメントマーク118bは、第1導電シート10Aと第2導電シート10Bを貼り合わせて第1積層導電シート50Aとした場合に、新たな複合アライメントマークとなり、この複合アライメントマークは、該第1積層導電シート50Aを表示パネル110に設置する際に使用する位置決め用のアライメントマークとしても機能することになる。
【0031】
このように、導電シート10においては、例えば投影型静電容量方式のタッチパネル100に適用した場合に、応答速度を速めることができ、タッチパネル100の大サイズ化を促進させることができる。しかも、透明基体12の一主面12aに形成された第1大格子14Aと透明基体12の他主面12bに形成された第2大格子14Bとの境界が目立たなくなり、また、第1接続部16Aと第2接続部16Bとの組み合わせによって複数の小格子18が形づくられることから、局部的に線太りが生じる等の不都合がなくなり、全体として、視認性が良好となる。
また、多数の第1導電パターン22A及び第2導電パターン22BのCR時定数を大幅に低減することができ、これにより、応答速度を速めることができ、駆動時間(スキャン時間)内での位置検出も容易になる。これは、タッチパネル100の画面サイズ(縦×横のサイズで、厚みを含まず)の大型化を促進できることにつながる。
【0032】
ここで、表示装置108への導電シート10の積層構造について説明する。積層構造は、図8A〜図8Cに模式的に示すように、3つの態様を好ましく採用することができる。
すなわち、図8Aに示す第1構成例は、表示装置108上に透明粘着剤120(あるいは透明粘着シート)120を介して図3Aに示す導電シート10が積層され、さらに、この導電シート10上にハードコート層122が積層され、該ハードコート層122上に反射防止層124が積層された構成を有する。ここで、表示装置108上の透明粘着剤120、第2導電部13B、第1透明基体12A及び第1導電部13Aにてタッチパネル100が構成され、該タッチパネル100上のハードコート層122及び反射防止層124にて反射防止フイルム126が構成される。なお、反射防止フイルム126上には図1に示す保護板106が貼着される。これは、後述する第2構成例及び第3構成例でも同様である。
図8Bに示す第2構成例は、表示装置108上に透明粘着剤120を介して図3A導電シート10と保護樹脂層128が積層され、さらに、この保護樹脂層128上にハードコート層122が積層され、該ハードコート層122上に反射防止層124が積層された構成を有する。ここで、表示装置108上の透明粘着剤120、第2導電部13B、第1透明基体12A、第1導電部13A及び保護樹脂層128にてタッチパネル100が構成され、該タッチパネル100上のハードコート層122及び反射防止層124にて反射防止フイルム126が構成される。
図8Cに示す第3構成例は、表示装置108上に第1透明粘着剤120Aを介して図3Aに示す導電シート10と第2透明粘着剤120Bが積層され、さらに、この第2透明粘着剤120B上に透明フイルム130が積層され、該透明フイルム130上にハードコート層122が積層され、該ハードコート層122上に反射防止層124が積層された構成を有する。ここで、表示装置108上の第1透明粘着剤120A、第2導電部13B、第1透明基体12A、第1導電部13A及び第2透明粘着剤120Bにてタッチパネル100が構成され、該タッチパネル100上の透明フイルム130、ハードコート層122及び反射防止層124にて反射防止フイルム126が構成される。
【0033】
通常、特許文献3〜9に示すように、金属細線にて構成した格子を多数並べて電極を構成するようにした場合、さらなる表面抵抗の低下を目的として、金属細線の厚みを大きくすることが考えられる。しかし、電極上に粘着剤(あるいは粘着シート)を介して表示装置108や反射防止フイルム126を貼着する際に、以下のような問題が生じる。すなわち、導電シートと粘着剤(あるいは粘着シート)間に気泡が入り易くなり、美観を損なうことになる。金属細線の厚みが大きいと、粘着剤(あるいは粘着シート)が金属細線に強固に固着し易くなり、貼着ミス(貼着位置のずれ等)があった場合の貼り直しの際に、一部の金属細線が剥離したり、導電シートが変形して、金属細線の一部に断線が生じるという問題がある。
そこで、本実施の形態では、透明基体12の一主面12aと金属細線15の側壁15aとのなす角θ(図3B参照)を鋭角とし、導電部における粘着剤とのピール粘着力、すなわち、第2導電部13Bにおける透明粘着剤120(あるいは粘着シート)とのピール粘着力、第1導電部13Aにおける第2透明粘着剤120B(あるいは粘着シート)とのピール粘着力、第2導電部13Bにおける第1透明粘着剤120A(あるいは粘着シート)とのピール粘着力が、0.1N/10mm以上5N/10mm以下となるようにしている。
【0034】
これにより、粘着剤(あるいは粘着シート)の金属細線に対する接着力が金属細線の透明基体に対する接着力よりも小さくなるため、例えば導電部の表示装置に対する位置決めの際に粘着剤(あるいは粘着シート)の貼り直しの際に、金属細線が透明基体から剥離することがない。しかも、粘着剤(粘着シート)を貼着した際に、気泡の混入がほとんどない。このようなことから、粘着剤(あるいは粘着シート)の貼着作業並びに貼り直し作業が容易にできるようになり、タッチパネル全体の組み立て作業にかかる時間を短縮することができると共に、タッチパネルの歩留まりも向上させることができる。
【0035】
そして、上述のなす角は50°以上90°未満が好ましく、さらに好ましくは、60°以上80°以下である。一方、ピール粘着力の下限は、0.3N/10mm以上であることが好ましく、0.5N/10mm以上であることがさらに好ましい。ピール粘着力の上限は、5N/10mm以下であることが好ましく、3N/10mm以上であることがさらに好ましい。
また、本実施の形態では、下記屈曲試験を行う前の第1導電部13A及び第2導電部13Bの表面抵抗をR1a及びR2a、屈曲試験を行った後の第1導電部13B及び第2導電部13Bの表面抵抗をR1b及びR2bとしたとき、
R1a/R1a<3
R1b/R1b<3
を満足するようにしている。すなわち、柔軟性をもたせるようにしている。
【0036】
これにより、粘着剤(あるいは粘着シート)の貼り直しの際に、導電シート10が変形しても、金属細線15の一部が断線するということがなく、製造上の歩留まりの向上を図ることができる。さらに好ましくは、
R1a/R1a<1.5
R1b/R1b<1.5である。
ここで、屈曲試験は、例えば図9に示すように、基台200に対して回転自在に取り付けられた直径φが4mmのローラー202に長尺の導電シート10を引っ掛け、導電シート10の一方の端部10aを28.6(kg/m)のテンションで引っ張りながらローラー202を回転させて導電シート10を屈曲させる工程と、導電シート10の他方の端部10bを同じく28.6(kg/m)のテンションで引っ張りながらローラー202を回転させて導電シート10を屈曲させる工程とを繰り返し行って、導電シート10を100回屈曲させる。
【0037】
なお、小格子18のサイズ(1辺の長さや対角線の長さ等)や、第1大格子14Aを構成する小格子18の個数、第2大格子14Bを構成する小格子18の個数も、適用されるタッチパネルのサイズや分解能(配線数)に応じて適宜設定することができる。
上述の例では、導電シート10を投影型静電容量方式のタッチパネル100に適用した例を示したが、その他、表面型静電容量方式のタッチパネルや、抵抗膜式のタッチパネルにも適用することができることはもちろんである。
【0038】
次に、導電シート10の製造方法について、図10〜図13Bを参照しながら説明する。
先ず、第1の製造方法は、透明基体12の一主面12a及び他主面12bにそれぞれ感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施すことによって、露光部及び未露光部にそれぞれ金属銀部及び光透過性部を形成して第1導電部13A及び第2導電部13Bを形成する。なお、さらに金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施すことによって金属銀部に導電性金属を担持させるようにしてもよい。
【0039】
特に、図3Aに示すように、透明基体12の一主面12aに第1導電部13Aを形成し、透明基体12の他主面に第2導電部13Bを形成する場合、通常の製法に則って、最初に一主面を露光し、その後に、他主面を露光する方法を採用すると、所望の第1導電部13A及び第2導電部13Bを得ることができない場合がある。特に、第1大格子14A及び第2大格子14Bの辺部からくし歯32が張り出したパターン等を均一に形成することは困難性が伴う。
そこで、以下に示す製造方法を好ましく採用することができる。
すなわち、透明基体12の両面に形成された感光性ハロゲン化銀乳剤層に対して一括露光を行って、透明基体12の一主面に第1導電部13Aを形成し、透明基体12の他主面に第2導電部13Bを形成する。
【0040】
この製造方法の具体例を、図10〜図12を参照しながら説明する。
先ず、図10のステップS1において、長尺の感光材料140を作製する。感光材料140は、図11Aに示すように、透明基体12と、該透明基体12の一方の主面に形成された2層以上の感光性ハロゲン化銀乳剤層からなる第1感光層142aと、透明基体12の他方の主面に形成された2層以上の感光性ハロゲン化銀乳剤層からなる第2感光層142bとを有し、下層の感光性ハロゲン化銀乳剤層の感度を、上層の感光性ハロゲン化銀乳剤層よりも高く設定することで、現像後の断面形状をコントロールすることができる。乳剤層は必ずしも2層以上である必要はなく、例えばハロゲン化銀乳剤層が単層であっても、現像抑制素材を添加した現像液で処理を行い、ハロゲン化銀乳剤層のより上層に現像抑制を働かせることによって台形状の断面が形成される。また、長方形状の現像銀断面も、その後にカレンダー処理等の平滑化処理を行うことによって、上面の角が押しつぶされ、より好ましいドーム状を形成できる。
【0041】
図10のステップS2において、感光材料140を露光する。この露光処理では、第1感光層142aに対し、透明基体12に向かって光を照射して第1感光層142aを第1露光パターンに沿って露光する第1露光処理と、第2感光層142bに対し、透明基体12に向かって光を照射して第2感光層142bを第2露光パターンに沿って露光する第2露光処理とが行われる(両面同時露光)。図11Bの例では、長尺の感光材料140を一方向に搬送しながら、第1感光層142aに第1光144a(平行光)を第1フォトマスク146aを介して照射すると共に、第2感光層142bに第2光144b(平行光)を第2フォトマスク146bを介して照射する。第1光144aは、第1光源148aから出射された光を途中の第1コリメータレンズ150aにて平行光に変換されることにより得られ、第2光144bは、第2光源148bから出射された光を途中の第2コリメータレンズ150bにて平行光に変換されることにより得られる。図11Bの例では、2つの光源(第1光源148a及び第2光源148b)を使用した場合を示しているが、1つの光源から出射した光を光学系を介して分割して、第1光144a及び第2光144bとして第1感光層142a及び第2感光層142bに照射してもよい。
このとき、第1感光層142a及び第2感光層142bは、それぞれ2層以上の感光性ハロゲン化銀乳剤層にて構成され、且つ、最下層におけるハロゲン化銀乳剤層の感度が、少なくとも最上層のハロゲン化銀乳剤層の感度よりも高く設定されていれば、露光により現像可能となる画像幅は、最下層のハロゲン化銀乳剤層が最も大きく、最上層のハロゲン化銀乳剤層が最も小さくなり、断面ほぼ台形状の潜像が形成される。
【0042】
そして、図10のステップS3において、露光後の感光材料140を現像処理することで、図3Aに示すように、導電シート10が作製される。導電シート10は、透明基体12と、該透明基体12の一主面12aに形成された第1露光パターンに沿った第1導電部13A(第1導電パターン22A等)と、透明基体12の他主面12bに形成された第2露光パターンに沿った第2導電部13B(第2導電パターン22B等)とを有する。なお、第1感光層142a及び第2感光層142bの露光時間及び現像時間は、第1光源148a及び第2光源148bの種類や現像液の種類等で様々に変化するため、好ましい数値範囲は一概に決定することができないが、現像率が80〜100%となる露光時間及び現像時間に調整されている。
【0043】
そして、本実施の形態に係る製造方法のうち、第1露光処理は、図12に示すように、第1感光層142a上に第1フォトマスク146aを例えば密着配置し、該第1フォトマスク146aに対向して配置された第1光源148aから第1フォトマスク146aに向かって第1光144aを照射することで、第1感光層142aを露光する。第1フォトマスク146aは、透明なソーダガラスで形成されたガラス基板と、該ガラス基板上に形成されたマスクパターン(第1露光パターン152a)とで構成されている。従って、この第1露光処理によって、第1感光層142aのうち、第1フォトマスク146aに形成された第1露光パターン152aに沿った部分が露光される。第1感光層142aと第1フォトマスク146aとの間に2〜10μm程度の隙間を設けてもよい。
【0044】
同様に、第2露光処理は、第2感光層142b上に第2フォトマスク146bを例えば密着配置し、該第2フォトマスク146bに対向して配置された第2光源148bから第2フォトマスク146bに向かって第2光144bを照射することで、第2感光層142bを露光する。第2フォトマスク146bは、第1フォトマスク146aと同様に、透明なソーダガラスで形成されたガラス基板と、該ガラス基板上に形成されたマスクパターン(第2露光パターン152b)とで構成されている。従って、この第2露光処理によって、第2感光層142bのうち、第2フォトマスク146bに形成された第2露光パターン152bに沿った部分が露光される。この場合、第2感光層142bと第2フォトマスク146bとの間に2〜10μm程度の隙間を設けてもよい。
【0045】
第1露光処理及び第2露光処理は、第1光源148aからの第1光144aの出射タイミングと、第2光源148bからの第2光144bの出射タイミングを同時にしてもよいし、異ならせてもよい。同時であれば、1度の露光処理で、第1感光層142a及び第2感光層142bを同時に露光することができ、処理時間の短縮化を図ることができる。
ところで、第1感光層142a及び第2感光層142bが共に分光増感されていない場合、感光材料140に対して両側から露光すると、片側からの露光がもう片側(裏側)の画像形成に影響を及ぼすこととなる。
すなわち、第1感光層142aに到達した第1光源148aからの第1光144aは、第1感光層142a中のハロゲン化銀粒子にて散乱し、散乱光として透明基体12を透過し、その一部が第2感光層142bにまで達する。そうすると、第2感光層142bと透明基体12との境界部分が広い範囲にわたって露光され、潜像が形成される。そのため、第2感光層142bでは、第2光源148bからの第2光144bによる露光と第1光源148aからの第1光144aによる露光が行われてしまい、その後の現像処理にて導電シート10とした場合に、第2露光パターン152bによる導電パターン(第2導電部13B)に加えて、該導電パターン間に第1光源148aからの第1光144aによる薄い導電層が形成されてしまい、所望のパターン(第2露光パターン152bに沿ったパターン)を得ることができない。これは、第1感光層142aにおいても同様である。
【0046】
これを回避するため、鋭意検討した結果、第1感光層142a及び第2感光層142bの厚みを特定の範囲に設定したり、第1感光層142a及び第2感光層142bの塗布銀量を規定することで、ハロゲン化銀自身が光を吸収し、裏面へ光透過を制限できることが判明した。本実施の形態では、第1感光層142a及び第2感光層142bの厚みを1μm以上、4μm以下に設定することができる。上限値は好ましくは2.5μmである。また、第1感光層142a及び第2感光層142bの塗布銀量を5〜20g/m2に規定した。
上述した両面密着の露光方式では、フイルム表面に付着した塵埃等で露光阻害による画像欠陥が問題となる。塵埃付着防止として、フイルムに導電性物質を塗布することが知られているが、金属酸化物等は処理後も残存し、最終製品の透明性を損ない、また、導電性高分子は保存性等に問題がある。そこで、鋭意検討した結果、バインダーを減量したハロゲン化銀により帯電防止に必要な導電性が得られることがわかり、第1感光層142a及び第2感光層142bの銀/バインダーの体積比を規定した。すなわち、第1感光層142a及び第2感光層142bの銀/バインダー体積比は1/1以上であり、好ましくは、2/1以上である。
【0047】
上述のように、第1感光層142a及び第2感光層142bの厚み、塗布銀量、銀/バインダーの体積比を設定、規定することで、図12に示すように、第1感光層142aに到達した第1光源148aからの第1光144aは、第2感光層142bまで達しなくなり、同様に、第2感光層142bに到達した第2光源148bからの第2光144bは、第1感光層142aまで達しなくなり、その結果、その後の現像処理にて導電シート10とした場合に、図3Aに示すように、透明基体12の一主面12aには第1露光パターン152aによる導電パターン(第1導電部13Aを構成するパターン)のみが形成され、透明基体12の他主面12bには第2露光パターン152bによる導電パターン(第2導電部13Bを構成するパターン)のみが形成されることとなり、所望のパターンを得ることができる。
このように、上述の両面一括露光を用いた製造方法においては、導電性と両面露光の適性を両立させた第1感光層142a及び第2感光層142bを得ることができ、また、1つの透明基体12への露光処理によって、透明基体12の両面に同一パターンや異なったパターンを任意に形成することができ、これにより、タッチパネル100の電極を容易に形成することができると共に、タッチパネル100の薄型化(低背化)を図ることができる。
【0048】
上述の例は、感光性ハロゲン化銀乳剤層を用いて第1導電部13A及び第2導電部13Bを形成する製造方法であるが、その他の製造方法としては、両面に金属膜が形成された透明基体を使用し、金属膜を選択的にエッチング除去して、透明基体の両面に金属細線による導電部を形成する方法がある。
すなわち、図13Aに示すように、透明基体12の両面に形成された金属膜160(例えば銅箔)上のフォトレジスト膜を露光、現像処理してレジストパターン162を形成する。
その後、図13Bに示すように、レジストパターン162から露出する金属膜160を等方性エッチング(例えば湿式エッチング)にて除去する。これにより、金属膜160の上部が横方向にもエッチングが進み、結果として、断面ほぼ台形状の金属細線15による第1導電部13A及び第2導電部13Bが形成される。その後、レジストパターン162を除去することで、図3Aに示す導電シート10を得る。
【0049】
その他の製造方法としては、以下のような製造方法がある。すなわち、透明基体12の両面に金属微粒子を含むペーストを印刷し、ペーストに金属めっきを行うことによって、透明基体12の一主面12aに断面ほぼ台形状の金属細線15による第1導電部13Aを形成し、透明基体12の他主面12bに断面ほぼ台形状の金属細線15による第2導電部13Bを形成するようにしてもよい。
あるいは、透明基体12の一主面及び他主面に、第1導電部13Aのパターン及び第2導電部13Bのパターンをスクリーン印刷版又はグラビア印刷版によって印刷形成するようにしてもよい。
あるいは、透明基体12の一主面及び他主面に、第1導電部13Aのパターン及び第2導電部13Bのパターンをインクジェットにより形成するようにしてもよい。
【0050】
次に、本実施の形態に係る導電シート10において、特に好ましい態様であるハロゲン化銀写真感光材料を用いる方法を中心にして述べる。
本実施の形態に係る導電シートの製造方法は、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの形態が含まれる。
【0051】
(1) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
(2) 物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
(3) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部を非感光性受像シート上に形成させる態様。
【0052】
上記(1)の態様は、一体型黒白現像タイプであり、感光材料上に光透過性導電膜等の透光性導電性膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は熱現像銀であり、高比表面のフィラメントである点で後続するめっき又は物理現像過程で活性が高い。
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀粒子が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。これも一体型黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、現像銀は比表面の小さい球形である。
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀粒子が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。いわゆるセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
【0053】
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社、1955年刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Processes, 4th ed.」(Mcmillan社、1977年刊行)に解説されている。本件は液処理に係る発明であるが、その他の現像方式として熱現像方式を適用する技術も参考にすることができる。例えば、特開2004−184693号、同2004−334077号、同2005−010752号の各公報、特願2004−244080号、同2004−085655号の各明細書に記載された技術を適用することができる。
【0054】
ここで、本実施の形態に係る導電シートの各層の構成について、以下に詳細に説明する。
[透明基体12]
透明基体12としては、プラスチックフイルム、プラスチック板等を挙げることができる。
上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン類;ビニル系樹脂;その他、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
透明基体12としては、PET(融点:258℃)、PEN(融点:269℃)、PE(融点:135℃)、PP(融点:163℃)、ポリスチレン(融点:230℃)、ポリ塩化ビニル(融点:180℃)、ポリ塩化ビニリデン(融点:212℃)やTAC(融点:290℃)等の融点が約290℃以下であるプラスチックフイルム、又はプラスチック板が好ましく、特に、光透過性や加工性等の観点から、PETが好ましい。導電シート10のような導電性フイルムは透明性が要求されるため、透明基体12の透明度は高いことが好ましい。
【0055】
[銀塩乳剤層]
導電シート10の導電層(第1大格子14A、第1接続部16A、第2大格子14B、第2接続部16B、小格子18等の導電部)となる銀塩乳剤層は、銀塩とバインダーの他、溶媒や染料等の添加剤を含有する。
本実施の形態に用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩及び酢酸銀等の有機銀塩が挙げられる。本実施の形態においては、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0056】
<ハロゲン化銀>
ハロゲン化銀写真感光材料の写真乳剤の形で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
本実施の形態では、光センサとして機能させるためにハロゲン化銀を使用することが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本実施の形態においても用いることができる。
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらの組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrやAgClを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が用いられる。
なお、ここで、「AgBr(臭化銀)を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。このAgBrを主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0057】
本実施の形態に用いられるハロゲン化銀乳剤は、VIII族、VIIB族に属する金属を含有してもよい。特に、4以上の階調を得るためや低かぶりを達成するために、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物、オスミウム化合物等を含有することが好ましい。
また、高感度化のためにはK4〔Fe(CN)6〕やK4〔Ru(CN)6〕、K3〔Cr(CN)6〕のごとき六シアノ化金属錯体のドープが有利に行われる。
これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り10-10〜10-2モル/モルAgであることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0058】
その他、本実施の形態では、Pd(II)イオン及び/又はPd金属を含有するハロゲン化銀も好ましく用いることができる。Pdはハロゲン化銀粒子内に均一に分布していてもよいが、ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有させることが好ましい。ここで、Pdが「ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有する」とは、ハロゲン化銀粒子の表面から深さ方向に50nm以内において、他層よりもパラジウムの含有率が高い層を有することを意味する。
このようなハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀粒子を形成する途中でPdを添加することにより作製することができ、銀イオンとハロゲンイオンとをそれぞれ総添加量の50%以上添加した後に、Pdを添加することが好ましい。また、Pd(II)イオンを後熟時に添加する等の方法でハロゲン化銀表層に存在させることも好ましい。
このPd含有ハロゲン化銀粒子は、物理現像や無電解めっきの速度を速め、所望の発熱体の生産効率を上げ、生産コストの低減に寄与する。Pdは、無電解めっき触媒としてよく知られて用いられているが、本発明では、ハロゲン化銀粒子の表層にPdを偏在させることが可能なため、極めて高価なPdを節約することが可能である。
【0059】
本実施の形態において、ハロゲン化銀に含まれるPdイオン及び/又はPd金属の含有率は、ハロゲン化銀の、銀のモル数に対して10-4〜0.5モル/モルAgであることが好ましく、0.01〜0.3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
使用するPd化合物の例としては、PdCl4や、Na2PdCl4等が挙げられる。
銀塩乳剤層の塗布銀量(銀塩の塗布量)は、銀に換算して1〜30g/m2が好ましく、1〜25g/m2がより好ましく、5〜20g/m2がさらに好ましい。この塗布銀量を上記範囲とすることで、導電シート10とした場合に所望の表面抵抗を得ることができる。
【0060】
<バインダー>
本実施の形態に用いられるバインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
本実施の形態の銀塩乳剤層16中に含有されるバインダーの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。銀塩乳剤層16中のバインダーの含有量は、銀/バインダー体積比で1/4以上が好ましく、1/2以上がより好ましい。銀/バインダー体積比は、100/1以下が好ましく、50/1以下がより好ましい。また、銀/バインダー体積比は1/1〜4/1であることがさらに好ましい。1/1〜3/1であることが最も好ましい。銀塩乳剤層中の銀/バインダー体積比をこの範囲にすることで、塗布銀量を調整した場合でも抵抗値のばらつきを抑制し、均一な表面抵抗を有する導電シート10を得ることができる。なお、銀/バインダー体積比は、原料のハロゲン化銀量/バインダー量(重量比)を銀量/バインダー量(重量比)に変換し、さらに、銀量/バインダー量(重量比)を銀量/バインダー量(体積比)に変換することで求めることができる。
【0061】
<溶媒>
銀塩乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
本実施の形態の銀塩乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、銀塩乳剤層に含まれる銀塩、バインダー等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0062】
<その他の添加剤>
本実施の形態に用いられる各種添加剤に関しては、特に制限は無く、公知のものを好ましく用いることができる。
[その他の層構成]
銀塩乳剤層の上に図示しない保護層を設けてもよい。本実施の形態において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダーからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する銀塩乳剤層上に形成される。その厚みは0.5μm以下が好ましい。保護層の塗布方法及び形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法及び形成方法を適宜選択することができる。また、銀塩乳剤層よりも下に、例えば下塗り層を設けることもできる。
【0063】
次に、導電シート10の作製方法の各工程について説明する。
[露光]
本実施の形態では、第1導電部13Aのパターン及び第2導電部13Bのパターンを印刷方式によって施す場合を含むが、印刷方式以外は、第1導電部13Aのパターン及び第2導電部13Bのパターンを露光と現像等によって形成する。すなわち、透明基体12の両面に設けられた銀塩含有層を有する感光材料又はフォトリソグラフィ用フォトポリマーを塗工した感光材料への露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0064】
[現像処理]
本実施の形態では、乳剤層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、市販品では、例えば、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。
本発明における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明における定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
上記定着工程における定着温度は、約20℃〜約50℃が好ましく、さらに好ましくは25〜45℃である。また、定着時間は5秒〜1分が好ましく、さらに好ましくは7秒〜50秒である。定着液の補充量は、感光材料の処理量に対して600ml/m2以下が好ましく、500ml/m2以下がさらに好ましく、300ml/m2以下が特に好ましい。
【0065】
現像、定着処理を施した感光材料は、水洗処理や安定化処理を施されるのが好ましい。上記水洗処理又は安定化処理においては、水洗水量は通常感光材料1m2当り、20リットル以下で行われ、3リットル以下の補充量(0も含む、すなわちため水水洗)で行うこともできる。
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
【0066】
本実施の形態における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透光性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
以上の工程を経て導電シート10は得られるが、得られた導電シート10の表面抵抗は0.1〜100オーム/sq.の範囲にあることが好ましい。下限値は、1オーム/sq.以上、3オーム/sq.以上、5オーム/sq.以上、10オーム/sq.であることが好ましい。上限値は、70オーム/sq.以下、50オーム/sq.以下であることが好ましい。また、現像処理後の導電シート10に対しては、さらにカレンダー処理を行ってもよく、カレンダー処理により所望の表面抵抗に調整することができる。
【0067】
[物理現像及びめっき処理]
本実施の形態では、前記露光及び現像処理により形成された金属銀部の導電性を向上させる目的で、前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はめっき処理を行ってもよい。本発明では物理現像又はめっき処理のいずれか一方のみで導電性金属粒子を金属性銀部に担持させてもよく、物理現像とめっき処理とを組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部に担持させてもよい。なお、金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施したものを含めて「導電性金属部」と称する。
本実施の形態における「物理現像」とは、金属や金属化合物の核上に、銀イオン等の金属イオンを還元剤で還元して金属粒子を析出させることをいう。この物理現象は、インスタントB&Wフイルム、インスタントスライドフイルムや、印刷版製造等に利用されており、本発明ではその技術を用いることができる。
また、物理現像は、露光後の現像処理と同時に行っても、現像処理後に別途行ってもよい。
本実施の形態において、めっき処理は、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、又は無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができる。本実施の形態における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術を用いることができ、例えば、プリント配線板等で用いられている無電解めっき技術を用いることができ、無電解めっきは無電解銅めっきであることが好ましい。
【0068】
[酸化処理]
本実施の形態では、現像処理後の金属銀部、並びに、物理現像及び/又はめっき処理によって形成された導電性金属部には、酸化処理を施すことが好ましい。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
【0069】
[導電性金属部]
本実施の形態の導電性金属部の線幅(第1導電部13A及び第2導電部13Bの線幅)は、下限は1μm以上、3μm以上、4μm以上、もしくは5μm以上が好ましく、上限は10μm以下、9μm以下、8μm以下が好ましい。線幅が上記下限値未満の場合には、導電性が不十分となるためタッチパネル100に使用した場合に、検出感度が不十分となる。他方、上記上限値を越えると導電性金属部に起因するモアレが顕著になったり、タッチパネル100に使用した際に視認性が悪くなったりする。なお、上記範囲にあることで、導電性金属部のモアレが改善され、視認性が特によくなる。線間隔(ここでは小格子18の互いに対向する辺の間隔)は30μm以上500μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは50μm以上400μm以下、最も好ましくは100μm以上350μm以下である。また、導電性金属部は、アース接続等の目的においては、線幅は200μmより広い部分を有していてもよい。
本実施の形態における導電性金属部は、可視光透過率の点から開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが最も好ましい。開口率とは、第1大格子14A、第1接続部16A、第2大格子14B、第2接続部16B、小格子18等の導電部を除いた透光性部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅15μm、ピッチ300μmの正方形の格子状の開口率は、90%である。
【0070】
[光透過性部]
本実施の形態における「光透過性部」とは、導電シート10のうち導電性金属部以外の透光性を有する部分を意味する。光透過性部における透過率は、前述のとおり、透明基体12の光吸収及び反射の寄与を除いた380〜780nmの波長領域における透過率の最小値で示される透過率が90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上であり、さらにより好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
露光方法に関しては、ガラスマスクを介した方法やレーザー描画によるパターン露光方式が好ましい。
【0071】
[導電シート10]
本実施の形態に係る導電シート10における透明基体12の厚さは、75〜350μmであることが好ましく、75〜150μmであることがさらに好ましい。75〜350μmの範囲であれば所望の可視光の透過率が得られ、且つ、取り扱いも容易である。
透明基体12の両面に設けられる金属銀部の厚さは、透明基体12の両面に塗布される銀塩含有層用塗料の塗布厚みに応じて適宜決定することができる。金属銀部の厚さは、0.001mm〜0.2mmから選択可能であるが、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、0.01〜9μmであることがさらに好ましく、0.05〜5μmであることが最も好ましい。また、金属銀部はパターン状であることが好ましい。金属銀部は1層でもよく、2層以上の重層構成であってもよい。金属銀部がパターン状であり、且つ、2層以上の重層構成である場合、異なる波長に感光できるように、異なる感色性を付与することができる。これにより、露光波長を変えて露光すると、各層において異なるパターンを形成することができる。
【0072】
金属細線の厚さは、タッチパネルの用途としては、薄いほど表示パネルの視野角が広がるため好ましく、視認性の向上の点でも薄膜化が要求される。このような観点から、金属細線の厚さは、9μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがさらに好ましい。
本実施の形態では、上述した銀塩含有層の塗布厚みをコントロールすることにより所望の厚さの金属銀部を形成し、さらに物理現像及び/又はめっき処理により導電性金属粒子からなる層の厚みを自在にコントロールできるため、5μm未満、好ましくは3μm未満の厚みを有する導電シート10であっても容易に形成することができる。
なお、本実施の形態に係る導電シート10の製造方法では、めっき等の工程は必ずしも行う必要はない。本実施の形態に係る導電シート10の製造方法では銀塩乳剤層の塗布銀量、銀/バインダー体積比を調整することで所望の表面抵抗を得ることができるからである。なお、必要に応じてカレンダー処理等を行ってもよい。
【0073】
(現像処理後の硬膜処理)
銀塩乳剤層に対して現像処理を行った後に、硬膜剤に浸漬して硬膜処理を行うことが好ましい。硬膜剤としては、例えば、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類及びほう酸等の特開平2−141279号に記載のものを挙げることができる。
[カレンダー処理]
現像処理済みの金属銀部にカレンダー処理を施して平滑化するようにしてもよい。これによって金属銀部の導電性が顕著に増大する。カレンダー処理は、カレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは通常一対のロールからなる。
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のプラスチックロール又は金属ロールが用いられる。特に、両面に乳剤層を有する場合は、金属ロール同士で処理することが好ましい。片面に乳剤層を有する場合は、シワ防止の点から金属ロールとプラスチックロールの組み合わせとすることもできる。線圧力の上限値は1960N/cm(200kgf/cm、面圧に換算すると699.4kgf/cm2)以上、さらに好ましくは2940N/cm(300kgf/cm、面圧に換算すると935.8kgf/cm2)以上である。線圧力の上限値は、6880N/cm(700kgf/cm)以下である。
カレンダーロールで代表される平滑化処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュパターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダ種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
【0074】
[導電シート10]
導電シート10には、反射防止フイルム126を付与してもよい。この場合、上述した図8A〜図8Cに示す第1構成例〜第3構成例を好ましく採用することができる。
反射防止フイルム126は、例えば導電シート10上にハードコート層122及び反射防止層124を形成して(第1構成例及び第2構成例参照)、あるいは導電シート10上に透明フイルム130、ハードコート層122及び反射防止層124を形成して作製される(第3構成例参照)。
以下、反射防止フイルム126の好ましい態様を、第3構成例を主体にして説明する。
【0075】
<透明フイルム130>
透明フイルム130は、表示装置108の視認者側表面に用いるため、光透過率が高く、且つ、透明性に優れた無色のフイルムであることが要求される。このような透明フイルム130としては、プラスチックフイルムを用いることが好ましい。プラスチックフイルムを形成するポリマーとしては、セルロースアシレート(例、富士フイルム(株)製TAC−TD80U,TD80UF等のセルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR(株)製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン(株)製)、(メタ)アクリル系樹脂(アクリペットVRL20A:商品名、三菱レイヨン(株)製、特開2004−70296号公報や特開2006−171464号公報記載の環構造含有アクリル系樹脂)等が挙げられる。このうち、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、特にセルローストリアセテートが好ましい。
【0076】
<ハードコート層122>
反射防止フイルム126には、該反射防止フイルム126の物理的強度を付与するために、ハードコート層122を設けることが好ましい。ハードコート層122は、2層以上の積層から構成されてもよい。
【0077】
ハードコート層122の屈折率は、反射防止性のフイルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48〜1.90の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80であり、さらに好ましくは1.52〜1.65である。本実施の形態では、ハードコート層122の上に低屈折率層が少なくとも1層あるので、屈折率がこの範囲より小さ過ぎると反射防止性が低下し、大き過ぎると反射光の色味が強くなる傾向がある。
ハードコート層122は、反射防止フイルム126に十分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層122の厚さは、通常、0.5〜50μm程度とし、好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは2〜15μm、最も好ましくは3〜10μmである。また、ハードコート層122の強度は、鉛筆硬度試験で、2H以上であることが好ましく、3H以上であることがさらに好ましく、4H以上であることが最も好ましい。さらに、JISK5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0078】
ハードコート層122は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む組成物を透明フイルム130上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。具体的な化合物としては、特開2006−30740号公報の段落[0087]及び[0088]に記載のモノマーを使用することができ、同号公報の段落[0089]に記載の硬化方法を用いることができる。光重合の場合には、同号公報の段落[0090]〜[0093]に記載の光重合開始剤を用いることができる。
【0079】
ハードコート層122には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子を含有してもよい。これらの粒子としては特開2006−30740号公報の段落[0114]に記載の粒子を用いることができる。
ハードコート層122のバインダーには、ハードコート層122の屈折率を制御する目的で、高屈折率モノマー又は光散乱を生じない大きさの無機微粒子(一次粒子の直径が10〜200nm)、あるいは両者を加えることができる。無機微粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。無機微粒子としては特開2006−30740号公報の段落[0120]に無機フィラーとして記載されている化合物を用いることができる。
【0080】
<反射防止層124>
反射防止フイルム126は、上述したハードコート層122上に反射防止層124を形成したフイルム(下層の透明フイルム130を含む場合もある)であり、光学干渉を利用しているため、反射防止層124は以下に述べる屈折率と光学厚みを有することが好ましい。反射防止層124は1層のみでもよいが、より低い反射率が求められる場合には複数の反射防止層124を積層して形成する。複数の反射防止層124の積層には、異なる屈折率を有する光学干渉層を交互に積層してもよく、異なる屈折率を有する光学干渉層を2層以上積層してもよい。具体的には、ハードコート層122上に低屈折率層のみを設ける態様、ハードコート層122上に高屈折率層、低屈折率層をこの順に設ける態様、ハードコート層122上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層をこの順に設ける態様が常用されている。なお、屈折率層の低、中、高は、屈折率の相対的な大小関係の表現である。また、低屈折率層の屈折率は、上述したハードコート層122の屈折率より低く設定することが好ましい。低屈折率層とハードコート層122との屈折率差が小さすぎる場合は反射防止性が低下し、大き過ぎると反射光の色味が強くなる傾向がある。低屈折率層とハードコート層122との屈折率差は0.01以上0.40以下が好ましく、0.05以上0.30以下がより好ましい。
各層の屈折率と厚みは、以下を満たすことが好ましい。
【0081】
すなわち、低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.46であることが好ましく、1.25〜1.42であることがより好ましく、1.30〜1.38であることが特に好ましい。また、低屈折率層の厚さは、50〜150nmであることが好ましく、70〜120nmであることがさらに好ましい。
高屈折率層の上に低屈折率層を積層して、反射防止フイルム126を作製するためには、高屈折率層の屈折率は1.55〜2.40であることが好ましく、より好ましくは1.60〜2.20、さらに好ましくは、1.65〜2.10、最も好ましくは1.80〜2.00である。
透明フイルム130(あるいはタッチパネル100)から近い順に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を積層して反射防止フイルム126を作製する場合、高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。なお、高屈折率層、中屈折率層の厚みは、屈折率の範囲に応じた光学厚みとすることができる。
【0082】
[低屈折率層]
上述の低屈折率層は、層の形成後に硬化させることが好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
本発明の低屈折率層を形成するための好ましい組成物としては少なくとも以下の何れかを含む組成物であることが好ましい。
(1)架橋性もしくは重合性の官能基を有する含フッ素ポリマーを含有する組成物、
(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物を主成分とする組成物、
(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと中空構造を有する無機微粒子を含有する組成物、
が挙げられる。
【0083】
(1)架橋性もしくは重合性の官能基を有する含フッ素化合物
架橋性もしくは重合性の官能基を有する含フッ素化合物としては、含フッ素モノマーと架橋性又は重合性の官能基を有するモノマーの共重合体を挙げることができる。
上記共重合体のうちで、主鎖が炭素原子のみからなり、且つ、含フッ素ビニルモノマー重合単位と側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位とを含んでなる共重合体としては、特開2004−45462号公報の段落[0043]〜[0047]に記載のP−1〜P−40を用いることができる。また、耐擦傷性、すべり性の改良のためにシリコーン成分を導入した含フッ素ポリマーとして、側鎖にポリシロキサン部位を含む重合単位を有し、主鎖にフッ素原子を有するグラフトポリマーとしては特開2003−222702号公報の段落[0074]〜[0076]の表1及び表2に記載の化合物を用いることができ、主鎖にポリシロキサン化合物に由来する構造単位を含むエチレン性不飽和基含有フッ素重合体としては、特開2003−183322号公報に記載の化合物を用いることができる。
【0084】
上記のポリマーに対しては特開2000−17028号公報に記載のごとく適宜重合性不飽和基を有する硬化剤を併用してもよい。また、特開2002−145952号公報に記載のごとく含フッ素の多官能の重合性不飽和基を有する化合物との併用も好ましい。多官能の重合性不飽和基を有する化合物の例としては、上記の2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを挙げることができる。また、特開2004−170901号公報に記載のオルガノランの加水分解縮合物も好ましく、特に(メタ)アクリロイル基を含有するオルガノシランの加水分解縮合物が好ましい。これら化合物は、特にポリマー本体に重合性不飽和基を有する化合物を用いた場合に耐擦傷性改良に対する併用効果が大きく好ましい。
ポリマー自身が単独で十分な硬化性を有しない場合には、架橋性化合物を配合することにより、必要な硬化性を付与することができる。例えばポリマー本体に水酸基含有する場合には、各種アミノ化合物を硬化剤として用いることが好ましい。架橋性化合物として用いられるアミノ化合物は、例えば、ヒドロキシアルキルアミノ基及びアルコキシアルキルアミノ基のいずれか一方又は両方を合計で2個以上含有する化合物であり、具体的には、例えば、メラミン系化合物、尿素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物等を挙げることができる。これら化合物の硬化には、有機酸又はその塩を用いるのが好ましい。
【0085】
(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物
含フッ素のオルガノシラン化合物の加水分解縮合物を主成分とする組成物も屈折率が低く、塗膜表面の硬度が高く好ましい。フッ素化アルキル基に対して片末端又は両末端に加水分解性のシラノールを含有する化合物とテトラアルコキシシランの縮合物が好ましい。具体的組成物は、特開2002−265866号公報、特開2002−317152号公報に記載されている。
(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと中空構造を有する無機微粒子を含有する組成物
【0086】
さらに別の好ましい態様として、低屈折率の粒子とバインダーからなる低屈折率層が挙げられる。低屈折率粒子としては、有機でも無機でもよいが、内部に空孔を有する粒子が好ましい。中空粒子の具体例は、特開2002−79616号公報にシリカ系粒子が記載されている(例えば段落[0041]〜[0049]参照)。粒子屈折率は1.15〜1.40が好ましく、1.20〜1.30がさらに好ましい。バインダーとしては、上述したハードコート層122の項で述べた2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを挙げることができる。
【0087】
低屈折率層には、上述したハードコート層122の項で述べた重合開始剤(例えば特開2006−30740号公報の段落[0090]〜[0093]参照)を添加することが好ましい。ラジカル重合性化合物を含有する場合には、該化合物100質量部に対して1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部の重合開始剤を使用できる。
低屈折率層には、無機粒子を併用することができる。耐擦傷性を付与するために、低屈折率層の厚みの15%〜150%、好ましくは30%〜100%、さらに好ましくは45%〜60%の粒径を有する微粒子を使用することができる。
低屈折率層には、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のポリシロキサン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することができる。
【0088】
[高屈折率層/中屈折率層]
反射防止フイルム126には、上述したように低屈折率層とハードコート層122の間に屈折率の高い層を設け、反射防止性を高めることができる。
高屈折率層及び中屈折率層は、高屈折無機微粒子とバインダーを含有する硬化性組成物から形成されることが好ましい。ここで使用することのできる高屈折率無機微粒子は、ハードコート層122の屈折率を高めるために含有することのできる高屈折率の無機微粒子を用いることができる。高屈折率の無機微粒子としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。
【0089】
高屈折率層及び中屈折率層は、分散媒体中に無機粒子を分散した分散液に、好ましくは、さらにマトリックス形成に必要なバインダー前駆体(例えば、後述する電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマー等)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布組成物とし、例えば透明フイルム上に高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、電離放射線硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマー等)の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
【0090】
さらに、高屈折率層及び中屈折率層のバインダーを層の塗布と同時又は塗布後に、分散剤と架橋反応又は重合反応させることが好ましい。
このようにして作製した高屈折率層及び中屈折率層のバインダーは、例えば、上述した好ましい分散剤と電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取り込まれた形となる。さらに高屈折率層及び中屈折率層のバインダーは、アニオン性基が無機粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、無機粒子を含有する高屈折率層及び中屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良する。
【0091】
高屈折率層のバインダーは、該高屈折率層の塗布組成物の固形分量に対して、5〜80質量%添加する。
高屈折率層における無機粒子の含有量は、高屈折率層の質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜75質量%である。無機粒子は高屈折率層内で2種類以上を併用してもよい。
高屈折率層の上に低屈折率層を有する場合、高屈折率層の屈折率は透明フイルム130の屈折率より高いことが好ましい。
高屈折率層を光学干渉層として用いるときの膜厚は、30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜170nm、特に好ましくは60〜150nmである。
高屈折率層及び中屈折率層のヘイズは、低いほど好ましい。5%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
【0092】
低屈折率層を設けた反射防止フイルム126の好ましい積分反射率は、3.0%以下が好ましく、さらに好ましくは2.0%以下であり、最も好ましくは1.5%以下0.3%以上である。
また、防汚性向上の観点から、低屈折率層表面の表面自由エネルギーを下げることが好ましい。具体的には、含フッ素化合物やポリシロキサン構造を有する化合物を低屈折率層に使用することが好ましい。また、低屈折率層の上に下記の化合物を含む防汚層を低屈折率層とは別に設けてもよい。
ポリシロキサン構造を有する添加剤としては、反応性基含有ポリシロキサン{例えば“KF−100T”、“X−22−169AS”、“KF−102”、“X−22−3701IE”、“X−22−164B”、“X−22−5002”、“X−22−173B”、“X−22−174D”、“X−22−167B”、“X−22−161AS”(商品名)、以上信越化学工業(株)製;“AK−5”、“AK−30”、“AK−32”(商品名)、以上東亜合成(株)製;「サイラプレーンFM0725」、「サイラプレーンFM0721」(商品名)、以上チッソ(株)製等}を添加するのも好ましい。また、特開2003−112383号公報の表2、表3に記載のシリコーン系化合物も好ましく使用できる。これらのポリシロキサンは低屈折率層全固形分の0.1〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%の場合である。
【0093】
[反射防止フイルム126の作製方法]
反射防止フイルム126は、以下の塗布方式で形成することができるが、これらに制限されるものではない。
(塗布の準備作業)
先ず、ハードコート層122や反射防止層124等の各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。通常、塗布液は有機溶媒系が主であるので含水量を2%以下に抑制すると共に、密閉して溶媒の揮発量を抑制することが必要である。用いる有機溶媒は各層に用いられる材料により選択される。塗布液の均一性を得るために適宜、攪拌機や分散機が使用される。
調整された塗布液は、塗布故障を発生させないために塗布前に濾過されることが望ましい。濾過のフィルタは、塗布液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましく、濾過圧力も1.5MPa以下で適宜選択される。濾過した塗布液は、塗布直前に超音波分散して、脱泡、分散物の分散保持することが好ましい。
【0094】
透明フイルム130は、塗布前に、ベース変形の矯正のための加熱処理、又は、塗工性改良や塗設層との接着性改良のための表面処理を施してもよい。表面処理の具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理又は紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましく利用される。
さらに塗布の前工程として、除塵工程を設けることが好ましく、それに用いられる除塵方法としては、特開2010−32795号公報の段落[0119]に記載の方法を用いることができる。また、このような除塵工程を行う前に、透明フイルム130上の静電気を除電しておくことは、除塵効率を上げ、ゴミの付着を抑える点で特に好ましい。このような除電方法としては、特開2010−32795号公報の段落[0120]に記載の方法を用いることができる。さらに上記公報の段落[0121]及び[0123]記載の方法により、透明フイルム130の平面性の確保、接着性の改良をしてもよい。
【0095】
(塗布工程)
反射防止フイルム126の各層は以下の塗布方法により形成することができるが、この方法に制限されない。ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(ダイコート法)(米国特許第2681294号明細書、国際公開第05/123274号パンフレット参照)、マイクログラビアコート法等の公知の方法が用いられ、その中でもマイクログラビアコート法、ダイコート法が好ましい。マイクログラビアコート法については、特開2010−32795号公報の段落[0125]及び[0126]に、ダイコート法については、上記公報の段落[0127]及び[0128]に記載されており、本実施の形態においてもこれらの方法を用いることができる。ダイコート法を用い、20m/分以上の速度で塗布することが生産性の点で好ましい。
【0096】
(乾燥工程)
反射防止フイルム126は、透明フイルム130上に直接又は他の層を介して塗布された後、溶媒を乾燥するために加熱されたゾーンにウェブで搬送されることが好ましい。
溶媒を乾燥する方法としては、各種の知見を利用することができる。具体的な知見としては、特開2001−286817号公報、同2001−314798号公報、同2003−126768号公報、同2003−315505号公報、同2004−34002号公報等の記載技術が挙げられる。
乾燥ゾーンの温度条件については特開2010−32795号公報の段落[0130]に、乾燥風の条件については同公報の段落[0131]に記載されているそれぞれの条件を用いることができる。
【0097】
(硬化工程)
反射防止フイルム126は、溶媒の乾燥の後又は乾燥の後期に、ウェブとして電離放射線及び/又は熱により各塗膜を硬化させるゾーンを通過させ、塗膜を硬化することができる。上述の電離放射線は特に制限されるものではなく、皮膜を形成する硬化性組成物の種類に応じて、紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線等から適宜選択することができるが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。
紫外線硬化性化合物を光重合させる紫外線の光源については特開2010−32795号公報の段落[0133]に記載の光源を用いることができ、電子線については同公報の段落[0134]に記載の電子線を用いることができる。また、照射条件、照射光量、照射時間については同公報の段落[0135]及び[0138]に記載の条件を用いることができる。さらに、照射前後のフイルムの膜面温度、酸素濃度、酸素濃度の制御方法については、同公報の段落[0136]、[0137]、[0139]〜[0144]に記載の条件、方法を用いることができる。
【0098】
(連続製造のためのハンドリング)
反射防止フイルム126を連続的に製造するためには、ロール状の透明フイルム130を連続的に送り出す工程、塗布液を塗布・乾燥する工程、塗膜を硬化する工程、硬化した層を有する該透明フイルム130を巻き取る工程が行われる。
上記工程は、各層の形成毎に行ってもよいし、塗布部−乾燥室−硬化部を複数設けて(いわゆるタンデム方式)、各層の形成を連続的に行うことも可能である。
反射防止フイルム126を作製するためには、上記したように塗布液の精密濾過操作と同時に、塗布部における塗布工程及び乾燥室で行われる乾燥工程が高い清浄度の空気雰囲気下で行われ、且つ、塗布が行われる前に、透明フイルム130上のゴミ、ほこりが十分に除かれていることが好ましい。塗布工程及び乾燥工程の空気清浄度は、米国連邦規格209Eにおける空気清浄度の規格に基づき、クラス10(0.5μm以上の粒子が353個/m3以下)以上であることが望ましく、さらに好ましくはクラス1(0.5μm以上の粒子が35.5個/m3以下)以上であることが望ましい。また、空気清浄度は、塗布−乾燥工程以外の送り出し、巻き取り部等においても高いことがより好ましい。
【0099】
画像の鮮明性を維持する目的では、反射防止フイルム126はその表面形状をできるだけ平滑に調整することに加えて、透過画像鮮明度を調整することが好ましい。反射防止フイルム126の透過画像鮮明度は60%以上が好ましい。透過画像鮮明度は、一般にフイルムを透過して映す画像の呆け具合を示す指標であり、この値が大きい程、フイルムを通して見る画像が鮮明で良好であることを示す。透過画像鮮明度は好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
反射防止フイルム126は、表示装置108の視認側の表面フイルムとして用いることができる。表示装置108としては、各種の液晶表示装置、プラズマディスプレイ、有機EL、タッチパネル等、各種の表示装置に適用できる。反射防止フイルム126を用いる表示装置108の最表面の性質によって、反射防止フイルム126における透明フイルム130の塗布層を有さない側の表面(以下、背面と記す場合がある)に接着剤層を設けたり、透明フイルム130の前記背面をケン化したりしてタッチパネル100に張り合わせることができる。
透明フイルム130の前記背面をケン化する方法については、特開2010−32795号公報の段落[0149]〜[0160]に記載の技術を用いることができる。
【0100】
なお、本発明は、下記表1及び表2に記載の公開公報及び国際公開パンフレットの技術と適宜組合わせて使用することができる。「特開」、「号公報」、「号パンフレット」等の表記は省略する。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【実施例】
【0103】
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[第1実施例]
第1実施例は、実施例1〜5、比較例1に係る導電シートについて、粘着剤(粘着シート)の貼り合わせ性(気泡の混入状態及びリワーク性)と、視認性を評価した。実施例1〜5、比較例1の内訳を表3に示し、評価結果を表4に示す。
【0104】
<実施例1及び2>
(ハロゲン化銀感光材料)
水媒体中のAg150gに対してゼラチン10.0gを含む、球相当径平均0.1μmの沃臭塩化銀粒子(I=0.2モル%、Br=40モル%)を含有する乳剤を調製した。
また、この乳剤中にはK3Rh2Br9及びK2IrCl6を濃度が10-7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤にNa2PdCl4を添加し、さらに塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行い、この乳剤を乳剤Aとした。乳剤Aに対し、K3Rh2Br9量を減量して、感度を2倍に高めた乳剤を調製し、乳剤Bとした。
(感光層塗布)
その後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀の塗布量が10g/m2となるように透明基体12の一主面(ここでは、ポリエチレンテレフタレート(PET))上に塗布した。この際、Ag/ゼラチン体積比は2/1とした。透明基体12の厚みは100μmとした。下層に乳剤Bを5g/m2、上層に乳剤Aを5g/m2となるように重層塗布を行った。
幅30cmのPET支持体に25cmの幅で20m分塗布を行ない、塗布の中央部24cmを残すように両端を3cmずつ切り落としてロール状のハロゲン化銀感光材料を得た。
【0105】
(露光)
露光のパターンは、図4A及び図5に示すパターンで、A4サイズ(210mm×297mm)の透明基体12に行った。露光は上記パターンのフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光した。
【0106】
(現像処理)
・現像液1L処方
ハイドロキノン 20 g
亜硫酸ナトリウム 50 g
炭酸カリウム 40 g
エチレンジアミン・四酢酸 2 g
臭化カリウム 3 g
ポリエチレングリコール2000 1 g
水酸化カリウム 4 g
pH 10.3に調整
・定着液1L処方
チオ硫酸アンモニウム液(75%) 300 ml
亜硫酸アンモニウム・1水塩 25 g
1,3−ジアミノプロパン・四酢酸 8 g
酢酸 5 g
アンモニア水(27%) 1 g
pH 6.2に調整
上記処理剤を用いて露光済み感材を、富士フイルム社製自動現像機 FG−710PTSを用いて処理条件:現像35℃ 30秒、定着34℃ 23秒、水洗 流水(5L/分)の20秒処理で行って実施例1及び2に係る導電シートを得た。
【0107】
<実施例3>
現像処理後に圧密処理(カレンダー処理)を行ったこと以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る導電シートを作製した。カレンダー処理は、金属ロールとプラスチックロールの組み合わせにて行い、線圧力2940N/cm以上、6880N/cm以下で行った。
<実施例4>
厚みが100μmの透明基体12の片面に銅箔が形成された銅箔基板を準備し、該銅箔基板の銅箔を選択的に等方性エッチングして、図4A及び図5に示すパターンを形成して実施例4に係る導電シートを得た。
<実施例5>
銅箔による金属細線の表面に黒化処理を施したこと以外は、実施例4と同様にして実施例5に係る導電シートを作製した。
【0108】
<比較例1>
(ハロゲン化銀感光材料)
水媒体中のAg150gに対してゼラチン10.0gを含む、球相当径平均0.1μmの沃臭塩化銀粒子(I=0.2モル%、Br=40モル%)を含有する乳剤を調製した。
また、この乳剤中にはK3Rh2Br9及びK2IrCl6を濃度が10-7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤にNa2PdCl4を添加し、さらに塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行った後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀の塗布量が10g/m2となるように透明基体12の一主面(ここでは、ポリエチレンテレフタレート(PET))上に塗布した。この際、Ag/ゼラチン体積比は2/1とした。透明基体12の厚みは100μmとした。
幅30cmのPET支持体に25cmの幅で20m分塗布を行ない、塗布の中央部24cmを残すように両端を3cmずつ切り落としてロール状のハロゲン化銀感光材料を得た。
その後、実施例1と同様の露光及び現像処理を行い、さらに、めっき処理を行って比較例1に係る導電シートを得た。
【0109】
[測定]
以下に示すように、実施例1〜5、比較例1における金属細線の断面形状(なす角θ)、屈曲試験による抵抗変化率、反射色度の差を測定した。測定結果を表3に示す。
(金属細線の断面形状)
金属細線の断面写真をとり、画像処理を行って、金属細線の側壁と底面(透明基体の一主面)とのなす角を測定した。
(屈曲試験による抵抗変化率)
屈曲試験(図9参照)を行う前の導電部の表面抵抗R1と、屈曲試験を行った後の導電部の表面抵抗R2を求め、抵抗変化率R2/R1を求めた。
(反射色度の差)
導電シートの表面(透明基体の一主面側)から測定した導電部の反射色度をb1*、導電シートの裏面(透明基体の他主面側)から測定した導電部の反射色度をb2*を求め、反射色度の差の絶対値|b1*−b2*|を求めた。
[評価]
以下に示すように、実施例1〜5、比較例1における粘着シートの貼り合わせ性(気泡の混入状態及びリワーク性)と、視認性を評価した。評価結果を表4に示す。
(気泡の混入状態)
導電シートの導電部を含む全面に粘着シートを貼着した際に、直径0.5mm以上の気泡が1つでもあれば「×」、直径0.5mm未満の気泡が30個以上あれば「△」、直径0.5mm未満の気泡が10個以上30個未満であれば「○」、直径0.5mm未満の気泡が10個未満あれば「◎」と評価した。
(リワーク性)
導電シートの導電部を含む全面に粘着シートを貼着した後、該粘着シートを剥がした際に、金属細線が剥離した場合に「×」、金属細線が剥離しなかった場合に「○」と評価した。
(視認性)
導電シートを液晶表示装置の表示画面に貼り付け、液晶表示装置を駆動して白色を表示させた際に、線太りや黒い斑点がないかどうか、また、第1大格子14A及び第2大格子14Bの境界が目立つかどうかを肉眼で確認した。
【0110】
【表3】

【0111】
【表4】

【0112】
なお、表3において、比較例1は、なす角θが100°となっている。これは、断面矩形状の金属銀部にめっき層を形成して金属細線とした関係で、金属細線の上部の幅が下部の幅よりも大きくなったものと考えられる。
表4から、視認性については、比較例1、実施例1〜5共に良好であった。しかし、比較例1は粘着シートの貼り合わせ性が悪く、直径0.5mm以上の気泡が混入しており、また、粘着シートを剥がした際に、金属細線の剥離があった。
これに対して、実施例1〜5は、粘着シートの貼り合わせ性が良好で、特に、実施例3及び5については気泡の混入がほとんどなかった。
【0113】
[第2実施例]
第2実施例は、実施例11〜45、参考例1〜19に係る導電シートについて、金属細線の断面形状(なす角θ)、金属細線の厚みによるピール粘着力、導電シートの表面抵抗の違い、並びに導電性、リワーク性の違いをみたものである。
(実施例11)
金属細線の線幅が10μm、金属細線の断面形状(なす角θ)が85°、金属細線の厚みが9μmであること以外は、実施例1と同様にして、実施例11に係る導電シートを作製した。
(実施例12〜17)
金属細線の厚みが7μm、5μm、3μm、1μm、0.5μm、0.1μmであること以外は、実施例11と同様にして、実施例12〜17に係る導電シートを作製した。
(参考例1及び2)
金属細線の厚みが10μm及び0.05μmであること以外は、実施例11と同様にして、参考例1及び2に係る導電シートを作製した。
【0114】
(実施例18)
金属細線の線幅が10μm、金属細線の断面形状(なす角θ)が80°、金属細線の厚みが9μmであること以外は、実施例1と同様にして、実施例18に係る導電シートを作製した。
(実施例19〜24)
金属細線の厚みが7μm、5μm、3μm、1μm、0.5μm、0.1μmであること以外は、実施例18と同様にして、実施例19〜24に係る導電シートを作製した。
(参考例3及び4)
金属細線の厚みが10μm及び0.05μmであること以外は、実施例18と同様にして、参考例1及び2に係る導電シートを作製した。
【0115】
(実施例25)
金属細線の線幅が10μm、金属細線の断面形状(なす角θ)が70°、金属細線の厚みが9μmであること以外は、実施例1と同様にして、実施例25に係る導電シートを作製した。
(実施例26〜31)
金属細線の厚みが7μm、5μm、3μm、1μm、0.5μm、0.1μmであること以外は、実施例25と同様にして、実施例26〜31に係る導電シートを作製した。
(参考例5及び6)
金属細線の厚みが10μm及び0.05μmであること以外は、実施例25と同様にして、参考例5及び6に係る導電シートを作製した。
【0116】
(実施例32)
金属細線の線幅が10μm、金属細線の断面形状(なす角θ)が60°、金属細線の厚みが9μmであること以外は、実施例1と同様にして、実施例32に係る導電シートを作製した。
(実施例33〜38)
金属細線の厚みが7μm、5μm、3μm、1μm、0.5μm、0.1μmであること以外は、実施例32と同様にして、実施例33〜38に係る導電シートを作製した。
(参考例7及び8)
金属細線の厚みが10μm及び0.05μmであること以外は、実施例32と同様にして、参考例7及び8に係る導電シートを作製した。
【0117】
(実施例39)
金属細線の線幅が10μm、金属細線の断面形状(なす角θ)が50°、金属細線の厚みが9μmであること以外は、実施例1と同様にして、実施例39に係る導電シートを作製した。
(実施例40〜45)
金属細線の厚みが7μm、5μm、3μm、1μm、0.5μm、0.1μmであること以外は、実施例32と同様にして、実施例40〜45に係る導電シートを作製した。
(参考例9及び10)
金属細線の厚みが10μm及び0.05μmであること以外は、実施例39と同様にして、参考例9及び10に係る導電シートを作製した。
【0118】
(参考例11)
金属細線の線幅が10μm、金属細線の断面形状(なす角θ)が45°、金属細線の厚みが10μmであること以外は、実施例1と同様にして、参考例11に係る導電シートを作製した。
(参考例12〜19)
金属細線の厚みが9μm、7μm、5μm、3μm、1μm、0.5μm、0.1μm、0.05μmであること以外は、参考例11と同様にして、参考例12〜19に係る導電シートを作製した。
【0119】
(ピール粘着力)
温度23℃50%RH下にて1時間放置した後、温度23℃50%RH下で300mm/minの速度で180°の方向に引っ張って測定した。
(表面抵抗測定)
検出精度の良否を確認するために、導電シートの表面抵抗率をダイアインスツルメンツ社製ロレスターGP(型番MCP−T610)直列4探針プローブ(ASP)にて任意の10箇所測定した値の平均値である。
(導電性)
導電シートの導電部を含む全面に粘着シートを貼着する前の導電シートの表面抵抗が50オーム/sq.以下の場合に「◎」と判定し、50オーム/sq.を超え、100オーム/sq.以下の場合に「○」と判定し、100オーム/sq.を超えている場合に「×」と判定した。
(リワーク性)
導電シートの導電部を含む全面に粘着シートを貼着する前の導電シートの表面抵抗と、粘着シートを貼着してから該粘着シートを剥がした後の表面抵抗とを比較し、表面抵抗の違いが1%未満であれば導電性が最良「◎」と判定し、1%以上3%未満であれば導電性が良好「○」と判定し、3%以上であれば「×」と判定した。
結果を表5〜表7に示す。
【0120】
【表5】

【0121】
【表6】

【0122】
【表7】

【0123】
表5〜表7から、参考例1〜19はいずれもリワーク性が良好でなかった。一方、実施例1〜45は、いずれもリワーク性が良好で、特に、実施例15〜17、21〜24、27〜39、41〜44は、表面抵抗の違いが1%未満であり、金属細線がほとんど剥離されていないことがわかる。
このことから、導電部における粘着剤とのピール粘着力を、0.1N/10mm以上5N/10mm以下が好ましく、下限は0.3N/10mm以上、好ましくは0.5N/10mm以上であり、上限は3N/10mm以下であることが好ましいことがわかる。また、金属細線の厚みは、9μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがさらに好ましいことがわかる。
なお、本発明に係る導電シート及びタッチパネルは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0124】
10…導電シート 12…透明基体
12a…一主面 12b…他主面
13A…第1導電部 13B…第2導電部
14A…第1大格子 14B…第2大格子
15…金属細線 15a…側壁
16A…第1接続部 16B…第2接続部
18…小格子 22A…第1導電パターン
22B…第2導電パターン 100…タッチパネル
108…表示装置 110…表示パネル
120…透明粘着剤 120A…第1透明粘着剤
120B…第2透明粘着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、該基体の一主面に形成された導電部とを有し、少なくとも前記導電部が粘着剤を介して他の物体に接着される導電シートにおいて、
前記導電部は、金属細線による網目状構造部を有し、
前記基体の主面と前記金属細線の側壁とのなす角が鋭角であり、
前記導電部における前記粘着剤とのピール粘着力が、0.1N/10mm以上5N/10mm以下であることを特徴とする導電シート。
【請求項2】
請求項1記載の導電シートにおいて、
前記金属細線は、断面ほぼ台形状であることを特徴とする導電シート。
【請求項3】
請求項1記載の導電シートにおいて、
前記なす角が50°以上90°未満であることを特徴とする導電シート。
【請求項4】
請求項1記載の導電シートにおいて、
前記導電部における前記粘着剤とのピール粘着力が、0.3N/10mm以上であることを特徴とする導電シート。
【請求項5】
請求項1記載の導電シートにおいて、
前記金属細線の厚みが9μm以下であることを特徴とする導電シート。
【請求項6】
請求項1記載の導電シートにおいて、
前記基体の一主面側から測定した前記導電部の反射色度をb1*、前記基体の他主面側から測定した前記導電部の反射色度をb2*としたとき、
|b1*−b2*|≦2.0
であることを特徴とする導電シート。
【請求項7】
請求項6記載の導電シートにおいて、
前記基体の厚みが75μm以上200μm以下であることを特徴とする導電シート。
【請求項8】
請求項1記載の導電シートにおいて
全光線透過率が85%以上で、且つ、前記導電部の表面抵抗が100オーム/sq.以下であることを特徴とする導電シート。
【請求項9】
請求項1記載の導電シートにおいて、
下記の屈曲試験を行う前の前記導電部の表面抵抗をR1、下記屈曲試験を行ったあとの前記導電部の表面抵抗をR2としたとき、R2/R1<3を満足することを特徴とする導電シート。
[屈曲試験は、基台に対して回転自在に取り付けられた直径4mmのローラーに前記導電シートを引っかけ、前記導電シートの一方の端部を幅1mあたり28.6kgのテンションで引っ張りながら前記ローラーを回転させて前記導電シートを屈曲させる工程と、前記導電シートの他方の端部を幅1mあたり28.6kgのテンションで引っ張りながら前記ローラーを回転させて前記導電シートを屈曲させる工程とを繰り返し行って、前記導電シートを100回屈曲させる。]
【請求項10】
請求項1記載の導電シートにおいて、
下記の屈曲試験を行う前の前記導電部の表面抵抗をR1、下記屈曲試験を行ったあとの前記導電部の表面抵抗をR2としたとき、R2/R1<1.5を満足することを特徴とする導電シート。
[屈曲試験は、基台に対して回転自在に取り付けられた直径4mmのローラーに前記導電シートを引っかけ、前記導電シートの一方の端部を幅1mあたり28.6kgのテンションで引っ張りながら前記ローラーを回転させて前記導電シートを屈曲させる工程と、前記導電シートの他方の端部を幅1mあたり28.6kgのテンションで引っ張りながら前記ローラーを回転させて前記導電シートを屈曲させる工程とを繰り返し行って、前記導電シートを100回屈曲させる。]
【請求項11】
基体と、該基体の一主面に形成された第1導電部と、前記基体の他主面に形成された第2導電部とを有し、前記第1導電部及び前記第2導電部のうち、少なくともいずれか一方の導電部が粘着剤を介して別の物体に接着される導電シートであって、
前記第1導電部及び前記第2導電部は、それぞれ金属細線による網目状構造部を有し、
前記基体の一主面と前記第1導電部における前記金属細線の側壁とのなす角及び前記基体の他主面と前記第2導電部における前記金属細線の側壁とのなす角が共に鋭角であり、
前記導電部における前記粘着剤とのピール粘着力が、0.1N/10mm以上5N/10mm以下であることを特徴とする導電シート。
【請求項12】
請求項11記載の導電シートにおいて、
前記第1導電部が第1粘着剤を介して第1物体に接着され、前記第2導電部が第2粘着剤を介して第2物体に接着され、
前記第1導電部における前記第1粘着剤とのピール粘着力及び前記第2導電部における前記第2粘着剤とのピール粘着力が、それぞれ0.1N/10mm以上5N/10mm以下であることを特徴とする導電シート。
【請求項13】
請求項11又は12記載の導電シートにおいて、
前記金属細線は、断面ほぼ台形状であることを特徴とする導電シート。
【請求項14】
請求項11又は12記載の導電シートにおいて、
前記なす角が50°以上90°未満であることを特徴とする導電シート。
【請求項15】
請求項11記載の導電シートにおいて、
前記導電部における前記粘着剤とのピール粘着力が、0.3N/10mm以上であることを特徴とする導電シート。
【請求項16】
請求項11記載の導電シートにおいて、
前記金属細線の厚みが9μm以下であることを特徴とする導電シート。
【請求項17】
請求項11記載の導電シートにおいて、
前記基体の一主面側から測定した前記第1導電部の反射色度をb1*、前記基体の一主面側から測定した前記第2導電部の反射色度をb2*としたとき、
|b1*−b2*|≦2.0
であることを特徴とする導電シート。
【請求項18】
請求項17記載の導電シートにおいて、
前記基体の厚みが75μm以上200μm以下であることを特徴とする導電シート。
【請求項19】
請求項11記載の導電シートにおいて
全光線透過率が85%以上で、且つ、前記第1導電部及び前記第2導電部の表面抵抗が100オーム/sq.以下であることを特徴とする導電シート。
【請求項20】
請求項11記載の導電シートにおいて、
下記の屈曲試験を行う前の前記第1導電部及び前記第2導電部の各表面抵抗をR1a及びR1b、下記屈曲試験を行ったあとの前記第1導電部及び前記第2導電部の各表面抵抗をR2a及びR2bとしたとき、R2a/R1a<3、且つ、R2b/R1b<3を満足することを特徴とする導電シート。
[屈曲試験は、基台に対して回転自在に取り付けられた直径4mmのローラーに前記導電シートを引っかけ、前記導電シートの一方の端部を幅1mあたり28.6kgのテンションで引っ張りながら前記ローラーを回転させて前記導電シートを屈曲させる工程と、前記導電シートの他方の端部を幅1mあたり28.6kgのテンションで引っ張りながら前記ローラーを回転させて前記導電シートを屈曲させる工程とを繰り返し行って、前記導電シートを100回屈曲させる。]
【請求項21】
請求項11記載の導電シートにおいて、
下記の屈曲試験を行う前の前記第1導電部及び前記第2導電部の各表面抵抗をR1a及びR1b、下記屈曲試験を行ったあとの前記第1導電部及び前記第2導電部の各表面抵抗をR2a及びR2bとしたとき、R2a/R1a<1.5、且つ、R2b/R1b<1.5を満足することを特徴とする導電シート。
[屈曲試験は、基台に対して回転自在に取り付けられた直径4mmのローラーに前記導電シートを引っかけ、前記導電シートの一方の端部を幅1mあたり28.6kgのテンションで引っ張りながら前記ローラーを回転させて前記導電シートを屈曲させる工程と、前記導電シートの他方の端部を幅1mあたり28.6kgのテンションで引っ張りながら前記ローラーを回転させて前記導電シートを屈曲させる工程とを繰り返し行って、前記導電シートを100回屈曲させる。]
【請求項22】
表示装置の表示パネル上に粘着剤を介して接着された導電シートを有するタッチパネルにおいて、
前記導電シートは、
基体と、
前記基体の一主面に形成された導電部とを有し、
前記導電部は、金属細線による網目状構造部を有し、
前記基体の主面と前記金属細線の側壁とのなす角が鋭角であり、
前記導電部における前記粘着剤とのピール粘着力が、0.1N/10mm以上5N/10mm以下であることを特徴とするタッチパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−185607(P2012−185607A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47316(P2011−47316)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】