説明

導電性ゴムローラ、転写ローラ及び画像形成装置

【課題】製造が容易で、低コスト、被帯電部材への汚染が無く、電気的変動及び耐久性に優れる導電性ゴムローラ、該導電性ゴムローラを使用した転写ローラ及び該転写ローラを具備する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】電子写真プロセスに使用される導電性ゴムローラにおいて、該導電性ゴムローラのゴム成分が、少なくとも
アクリロニトリル含有量15〜25質量%のアクリロニトリルブタジエンゴムと、
エチレンオキサイド含有量70モル%以上のエピクロルヒドリン系ゴムと、
共重合比率がA+B<90モル%であり、且つB+C<20モル%を満たすエチレンオキサイド(A)/プロピレンオキサイド(B)/アリルグリシジルエーテル(C)の共重合体とを有し、
該ゴム成分のゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4 100℃)が30以上70以下である導電性ゴムローラ、該導電性ゴムローラを使用した転写ローラ及び該転写ローラを具備する画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写装置、プリンター及び静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ゴムローラに関する。詳しくは、電子写真感光体等の像担持体に電子写真プロセスや静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による可転写画像を紙等の記録媒体や転写材に転写させる転写装置の転写ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電式複写機、レーザープリンター及びファクシミリ等の種々の電子写真装置には、導電性ローラを始めとする各種導電性ゴム部品が使用されている。導電性ゴム部材は、適度の弾性と体積固有抵抗値が10乃至1010Ω・cmである中抵抗領域で、抵抗値のばらつきや印加電圧による抵抗値の変動が小さく、安定した抵抗値が得られる材料が使用されている。その材料としては、エピクロロヒドリンゴム・アクリロニトリルブタジエンゴムが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年ではカラー化、高画質化に対応するために、より低抵抗な導電性ゴムローラが求められている。そこで、
・エピクロルヒドリン系ゴムを単独で用いたり、
・イオン導電剤を添加したり、
・エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの共重合比率が50〜95モル%/1〜49モル%/1〜10モル%であり、かつ
数平均分子量Mnが10000以上であるエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を混合する、
ことで体積固有抵抗値を低くする提案がなされている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、一般的にこのようなゴム弾性体を用いた導電性ゴムローラの場合、温度や湿度の環境変動により抵抗値が変化するため、使用環境により画像品質が変化する、また部材表面にブリードし、感光体汚染を起こす等の課題が解決されていない。
【0004】
また、導電性ゴムローラにおいては、ドラムとの密着性を高めるため上記特性のほかに適度に低硬度であることが望まれている。ローラ硬度が高い場合、感光ドラム等とのニップ幅が小さくなるため、転写率が低下、電子写真感光体の表面の摩耗や損傷により画像の欠陥を生じ易い。また、硬度が低過ぎる場合は、柔らか過ぎて圧縮永久歪が大きくなり耐久性が劣るほか、搬送力が強くなり過ぎ画像に欠陥を生じ易い。
【0005】
導電性ゴムローラの低硬度化の方法としては、軟化剤や可塑剤等の各種添加剤を用いている方法が挙げられる。しかしながら、軟化剤や可塑剤等を添加した導電性ゴムローラを感光ドラムと接触使用した場合、導電性ゴムローラ内から低分子量の各種添加剤がブリードアウトし電子写真感光体表面に付着することで、画像劣化や電子写真感光体汚染等を起こすという課題が生じ易い。
【0006】
そのため、導電性ゴムローラの低硬度化は、一般的に、化学発泡剤を用いてスポンジゴムローラを得る方法が用いられる。近年では高画質化の検討が進み導電性ゴムローラのセル径のバラツキを低減や、微細セル径のスポンジローラの需要が高まっており、連続加硫方式による生産方式(例えば、特許文献3参照)により更なる低コスト化が期待されている。
【特許文献1】特開2002−287456号公報
【特許文献2】特開2002−105305号公報
【特許文献3】特開2002−221859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複写機・レーザビームプリンタ等の電子写真プロセスに使用される導電性ゴムローラに関するものであり、製造が容易で、低コスト、且つ、被帯電部材への汚染が無く、電気的変動ならびに耐久性に優れる導電性ゴムローラを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、上記導電性ゴムローラを使用した転写ローラ及び該転写ローラを具備する画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従って、電子写真プロセスに使用される導電性ゴムローラにおいて、
該導電性ゴムローラのゴム成分が、少なくとも
アクリロニトリル含有量15質量%以上25質量%以下のアクリロニトリルブタジエンゴムと、
エチレンオキサイド含有量70モル%以上のエピクロルヒドリン系ゴムと、
共重合比率が(A)+(B)<90モル%であり、且つ(B)+(C)<20モル%を満たすエチレンオキサイド(A)/プロピレンオキサイド(B)/アリルグリシジルエーテル(C)の共重合体とを有し、
該ゴム成分のゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4 100℃)が30以上70以下であることを特徴とする導電性ゴムローラが提供される。
【0010】
本発明に従って、電子写真プロセスの転写装置に使用する転写ローラが、上記記載の導電性ゴムローラを使用したものであることを特徴とする転写ローラが提供される。
【0011】
本発明に従って、電子写真プロセスを装置化した画像形成装置において、転写装置に使用する転写ローラが、上記転写ローラであることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明の導電性ゴムローラは、発泡セル径が均一で製造が容易で抵コスト且つ、電気的変動ならびに耐久性に優れ、ブリードが無い導電性ゴムローラとして適切である。そして、本発明の導電性ゴムローラを使用した転写ローラ及び該転写ローラを具備する画像形成装置を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明の導電性ゴムローラは、少なくとも
アクリロニトリル含有量15質量%以上25質量%以下のアクリロニトリルブタジエンゴムと、
エチレンオキサイド含有量70モル%以上のエピクロルヒドリン系ゴムと、
共重合比率が(A)+(B)<90モル%であり、且つ(B)+(C)<20モル%を満たすエチレンオキサイド(A)/プロピレンオキサイド(B)/アリルグリシジルエーテル(C)の共重合体とを有している。
【0015】
アクリロニトリル含有量が15質量%未満であると、体積固有抵抗値が高く、25質量%を超えると環境による抵抗値変化が大きくなる。
【0016】
またエチレンオキサイド含有量70モル%未満であると、体積固有抵抗値が高く、所定の抵抗値を得るためには材料単価が高価であるエピクロロヒドリン系ゴムを多く含有させなければいけなくなり、材料コストが上がってしまう。また、耐久性が悪化する。
【0017】
エチレンオキサイド(A)/プロピレンオキサイド(B)/アリルグリシジルエーテル(C)の共重合比率(A)+(B)が90モル%以上だと電気伝導を阻害する結晶性が増大し、体積固有抵抗値も増加する。相対的にアリルグリシジルエーテル(C)が減少するので、アリルグリシジルエーテル(C)による架橋サイトが不十分になりエピクロロヒドリンゴムやアクリロニトリルブタジエンゴムと共架橋しづらくなる。架橋による3次元構造が不十分になるため、部材表面にブリードし、被帯電部材を汚染させてしまう。
【0018】
また、共重合比率(B)+(C)が20モル%以上だと電気伝導に寄与するエチレンオキサド(A)が減少するため体積固有抵抗値が増加してしまう。よって上記記載の共重合比率でないと、低抵抗化は実現できないため材料コストが高価になってしまう。
【0019】
上記エチレンオキサイド含有量70モル%以上のエピクロロヒドリン系ゴムとは、エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル三元共重合体であることが好ましい。アリルグリシジルエーテルによりエチレンオキサイド(A)/プロピレンオキサイド(B)/アリルグリシジルエーテル(C)の共重合体と共架橋するので、3次元構造が適正に形成され、ブリードを抑制できる。エチレンオキサイドを共重合することで体積固有抵抗値を低下させる。
【0020】
本発明におけるゴム成分を100質量%とした場合、アクリロニトリルブタジエンゴムの含有量は30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。アクリロニトリルブタジエンゴムは、エピクロロヒドリン系ゴム・エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体より環境による抵抗値変化が少なく、材料単価が安価であるため抵抗値変動の向上と材料コストを抑えることが出来る。
【0021】
また、エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体は、吸水性が優れているため多く含有するとゴム組成物中に水分が多く存在してしまうため、抵抗値がばらついたり、発泡セル径を変化させたり課題が多く発生する。そのため、ゴム成分100質量%に対し、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0022】
本発明は、ゴム組成物の未加硫ゴムの粘度と加硫特性を測定して求められるムーニー粘度(ML1+4 100℃)が30以上70以下である必要がある。また、高周波による分子振動加熱手段で加硫発泡し、発泡セル径の大きさが50μm以上300μm以下であるように製造されることが好ましい導電性ゴムローラであって、分子振動加熱手段がマイクロ波発生装置(UHF)であることがより好ましいものである。
【0023】
ゴム組成物のムーニー粘度が30未満であると、加硫・発泡の際に変形が大きく導電性軸体への圧入が困難になる。また所定の外径を得るためにチューブを大きく成型する必要があり、研磨量も増加してしまう。また、変形したチューブで導電性ゴムローラにすると、通電による耐久性が悪化してしまう。ムーニー粘度が70を超えると、押出性が悪化しチューブ表面の凹凸が増大し、所定の外径を得るための研磨量が増加する。また、良好な発泡体が得られず高硬度になってしまい転写性能が低下する。
【0024】
また、発泡セル径が50μm未満であると、導電性ゴムローラを被帯電部材に押し当てた際、良好なニップを確保することができず、トナーを均一に転写することができなくなり画像が悪化し易くなる。発泡セル径が300μmを超えると、研磨後のローラ表面の凹凸が大きく外径精度が低下し易くなる。またローラ表面のゴムのむしれ、研磨カスの付着により、画質を悪化させてしまう。発泡セル径は、50μm以上200μm以下がより好ましい。
【0025】
本発明の導電性ゴムローラに使用されるゴム成分以外の充填材は、一般のゴムに使用されるその他の成分を必要に応じて含有してもよい。例えば、硫黄や有機含硫黄化合物等の加硫剤、各種加硫促進剤、発泡剤、各種滑剤やサブ等の加工助剤、老化防止剤、酸化亜鉛やステアリン酸等の加硫助剤、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、カーボンブラック等の充填剤が必要に応じて配合可能である。
【0026】
上記導電性ゴムローラに用いられるゴム組成物は、オープンロールあるいは、密閉式混練機等を用い混練りしたものを、押出機を使用して成型している。
【0027】
図1を用いて導電性ゴムローラの製造方法を説明する。本発明の導電性ゴムローラ6のゴム成分は、少なくとも
アクリロニトリル含有量15質量%以上25質量%以下のアクリロニトリルブタジエンゴムと、
エチレンオキサイド含有量70モル%以上のエピクロルヒドリン系ゴムと、
共重合比率が(A)+(B)<90モル%であり、且つ(B)+(C)<20モル%を満たすエチレンオキサイド(A)/プロピレンオキサイド(B)/アリルグリシジルエーテル(C)の共重合体とを有し、
該ゴム成分のゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4 100℃)が30以上70以下である。
【0028】
その導電性ゴムローラのゴム組成物を押出し機によりチューブ状に押出し、高周波の分子振動加熱手段であるマイクロ波加硫装置(UHF)で加熱させ、加硫・発泡し導電性のゴム(弾性体)チューブを作製する。その後、導電性軸体61を挿入して、所定の外径になるまで加硫発泡ゴム層62を研磨することにより導電性ゴムローラ6が得られる。また、本発明の導電性ゴムローラ6には、必要に応じて加硫発泡ゴム層62の外周上にゴム・樹脂等の層を設けることで2層構造以上の導電性ゴムローラにすることもできる。
【0029】
本発明の導電性ゴムローラは、発泡した導電性ゴムローラであり、マイクロ波発生装置を使用した連続加硫方式により発泡セル径が50μm以上300μm以下になるように作製される同一処方(同一部材)を上記方式で加硫発泡させている。しかしながら、マイクロ波出力・ラインスピード・熱風炉の温度が変わってしまうと、発泡セル径が変わってしまうことがある。本発明の範囲内にあることにより電子写真感光体との密着性が高まり画像欠陥を生じ難くなる。
【0030】
次に、本発明に係る転写ローラを、電子写真プロセスを装置化した画像形成装置に利用した一例を図面を用いて説明する。
【0031】
図2に示す画像形成装置は、電子写真方式のプロセスカートリッジを使用したレーザープリンターであり、同図はその概略構成を示す縦断面図である。また、同図に示す画像形成装置には、本発明の導電性ゴムローラを転写ローラとして有する転写手段が装着されている。
【0032】
同図に示す画像形成装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という)1を備えている。感光ドラム1は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム1は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/secで回転駆動される。
【0033】
感光ドラム1の表面は、接触帯電部材としての帯電ローラ2によって均一に帯電される。帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面に接触配置されており、感光ドラム1の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ2には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム1の表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム1の表面は、レーザースキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザー光3、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザー光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム1の表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。
【0034】
その静電潜像は、現像装置4の現像スリーブに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナーが付着され、トナー像として反転現像される。
【0035】
一方、給紙部(不図示)から給搬送された紙等の転写材7が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム1と導電性ゴムローラ6からなる転写ローラとの間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム1上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材7は、転写バイアスの印加電源により転写ローラに印加された転写バイアスによって、表面に感光ドラム1上のトナー像が転写される。このとき、転写材7に転写されないで感光ドラム1表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置9のクリーニングブレード8によって除去される。
【0036】
転写部Tを通った転写材7は、感光ドラム1から分離されて定着装置10へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体(不図示)外部に排出される。
【0037】
次に、本発明の導電性ゴムローラは、以下のようにして作製した。
【0038】
図3は導電性ゴムローラのマイクロ波を用いた連続加硫による製造装置を示す。本発明で使用した押出し加硫装置は全長13mからなり、押出機11、マイクロ波加硫装置(UHF)12、熱風加硫装置(HAV)13、引取機14、定尺切断機15で構成される。
【0039】
ゴム組成物のゴム成分は、少なくとも
アクリロニトリル含有量15質量%以上25質量%以下のアクリロニトリルブタジエンゴムと、
エチレンオキサイド含有量70モル%以上のエピクロルヒドリン系ゴムと、
共重合比率が(A)+(B)<90モル%であり、且つ(B)+(C)<20モル%を満たすエチレンオキサイド(A)/プロピレンオキサイド(B)/アリルグリシジルエーテル(C)の共重合体とを有し、
該ゴム成分のゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4 100℃)が30以上70以下である。これらゴム成分を、バンバリーミキサー又はニーダー等の密閉式混練機を用い混練した後、加硫剤、発泡剤をオープンロールで含有させ、リボン成形分出し機によりリボン状に成形し、上記押出機11に投入している。上記UHF12は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂でコーティングされたメッシュのベルト、又はPTFE樹脂を被覆したコロで上記押出機11より押出されたゴムチューブを搬送し、HAV13はPTFE樹脂を被覆したコロで搬送を行っている。UHF12とHAV13の間は、PTFE樹脂を被覆したコロで連結されている。
【0040】
上記装置12、13、14の長さは図示の通りで、本実施形態では、順に、4m、6m、1mとなっている。UHF12とHAV13の間、及びHAV13と引取機14の間は0.1m以上1.0m以下となるように設定されている。
【0041】
上記マイクロ波を用いた連続加硫による製造装置において、押出機11よりチューブ状に成形され押出されたゴムチューブは、該押出機11より押し出された直後に炉内雰囲気温度220℃に設定したUHF12内に搬送される。該ゴムチューブにマイクロ波を照射させて、該ゴムチューブを加熱させて加硫発泡し、つづいて、HAV13に搬送し、加硫を完了させている。
【0042】
上記加硫発泡工程において、UHF12のマイクロ波加硫炉で照射するマイクロ波は2450±50MHzが好ましく、この範囲内あることにより該ゴムチューブに対し、照射ムラが少なく、かつ効率良く照射が可能である。UHF炉内での熱風の温度は150℃以上250℃以下が好ましく、特には180℃以上230℃以下が好ましい。
【0043】
加硫、発泡後に巻引取機14より排出された直後に、定尺切断機15により所望の寸法に切断し、チューブ状の導電性ゴム成形物を作製した。次いでφ4mm以上10mm以下の導電性軸体を前記チューブ状の導電性ゴム成形物の内径部に圧入し、ローラ状の成形体が得られる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例及び比較例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。各実施例、比較例に用いたゴム材料の配合割合及び試験結果は、表1及び表2の通りである。なお、配合量の単位は質量部である。
【0045】
各実施例及び比較例で使用したゴム材料は、以下の通りである。
・アクリロニトリルブタジエンゴム
[1 結合アクリロニトリル(AN)量18質量%、商品名:NipolDN401LL、日本ゼオン(株)社製]
[2 結合アクリロニトリル(AN)量18質量%、商品名:NipolDN401L、日本ゼオン(株)社製]
[結合アクリロニトリル(AN)量35質量%、商品名:N230SV、JSR(株)社製]
・エピクロルヒドリン系ゴム
[エチレンオキサイド(EO)含量73モル%、商品名:EPION301、ダイソー(株)社製]
[エチレンオキサイド(EO)含量56モル%、商品名:HydrinT3106S、日本ゼオン(株)社製]
・エチレンオキサイド(A)/プロピレンオキサイド(B)/アリルグリシジルエーテル(C)共重合体
[エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合比率(モル%)=87:1:12、商品名:ゼオスパン8010、日本ゼオン(株)社製]
[エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合比率(モル%)=90:6:4、商品名:ゼオスパン8030、日本ゼオン(株)社製]
・加硫剤
[硫黄、商品名:サルファックスPMC、鶴見化学工業(株)社製]
・加硫促進剤
[2−メルカプトベンゾチアゾール(M)、商品名:ノクセラーM、大内新興化学工業(株)社製]
[ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、商品名:ノクセラーDM、大内新興化学工業(株)社製]
[テトラエチルチウラムジスルフィド(TET);商品名:ノクセラーTET、大内新興化学工業(株)社製]
・加硫促進助剤
[酸化亜鉛、商品名:亜鉛華2種、ハクスイテック(株)社製]
・助剤
[ステアリン酸、商品名:ルナックS20、花王株式会社製]
・充填剤
[カーボンブラック1、商品名:旭#35、旭カーボン株式会社製]
[カーボンブラック2、商品名:旭#15、旭カーボン株式会社製]
[炭酸カルシウム、商品名:スーパーSS、丸尾カルシウム(株)製]
・発泡剤
[p.p’−オキシビススルホニルヒドラジド(OBSH)、商品名:ネオセルボンN1000#S、永和化成(株)社製]
なお、実施例及び比較例の導電性ゴム部材は、表1及び表2に記載の配合で上述の製造装置を用いて2450MHzのマイクロ波を照射させるマイクロ波加硫炉(UHF)と連続熱風炉にて加硫を行った。それによりチューブ状のゴム加硫物の硬度が20°以上50°以下になるような条件で作製した。次いで、φ6mmの導電性軸体を前記チューブ状のゴム加硫物の内径部に挿入しローラ状の成形体を得た。この成形体を外径がφ14mmになるように研磨し作製した。
【0046】
<ムーニー粘度>
ムーニー粘度計(島津社製)を用い円筒形のダイスにゴム組成物を挿入し、ローターを回転させ、トルクを計測して求めた。測定方法はJIS K−6300に準拠し、100℃にて(ML1+4)を測定した数値である。
【0047】
<ローラの電気抵抗及び環境変動幅>
常温常湿(23℃/55%RH)環境下で導電性ゴムローラの軸体に片側4.9Nの荷重が両端に掛かるようにし、外径30mmのアルミニウムドラムに圧着し、回転させた状態で軸体とアルミニウムドラムの間に2kVの電圧を印加してローラ抵抗値を測定した。
【0048】
ローラ抵抗値の環境変動幅は、低温低湿環境(15℃/10%RH)下におけるローラ抵抗(T1)及び高温高湿環境(32.5℃/80%RH)下におけるローラ抵抗(T2)の対数の差とし、式:log10(T1)−log10(T2)で算出した。評価は、1.5以下を良好:○として1.5を超えるのを不良:×とした。
【0049】
<ローラの通電耐久性>
導電性ゴムローラを50℃の環境下に置き、軸体に片側4.9Nの荷重が両端に掛かるようにして外径30mmのアルミニウムドラムに圧着し、回転させた状態で、軸体とアルミニウムドラムとの間に25時間、80μAの定電流を印加し続けた。その後、常温常湿(23℃/55%RH)環境に戻して24時間以上放置した後で再びローラ抵抗を測定した。ここで初期の抵抗値と耐久後の抵抗値の対数の差を耐久変動桁として0.3以上とローラ表面に亀裂が発生しているものを不良:×とし、それ以外を良好:○とした。
【0050】
<電子写真感光体汚染>
得られた導電性ゴムローラをヒューレットパッカード製のレーザープリンターレーザージェット4000Nに使用されるカートリッジの電子写真感光体に接触させ、両端に1000gの荷重を加え、40℃/95%RHの環境下に一週間放置した。放置後、荷重を外し、電子写真感光体の表面状態を観察し、変色や張付きが無いものを良好:○、変色や張付きがあるものは不良:×とした。
【0051】
<加工性>
押出し機によりチューブ状に押出し、マイクロ波加硫装置(UHF)で加熱し導電性のゴム(弾性体)チューブを作製した。その後、導電性軸体を挿入して、所定の外径になるまで研磨する工程において、導電性軸体を挿入した後のチューブ外径より、外径を4mm(片側2mm)以上研磨する必要があるものを不良:×、それ以外を良好:○とした。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
比較例1は共重合比率が、(A)+(B)<90モル%であり、且つ(B)+(C)<20モル%を満たさないエチレンオキサイド(A)/プロピレンオキサイド(B)/アリルグリシジルエーテル(C)の共重合体を使用した場合の例である。このため、アリルグリシジルエーテルの共重合比率が4モル%で架橋サイトが少なく共架橋し難いため、被帯電部材である電子写真感光体を汚染させてしまう。
【0055】
比較例2、3はゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4 100℃)が30以上70以下を満たさない例であり、30未満であると、チューブ状に成型され加硫・発泡されたチューブの変形が大きく通電耐久性が悪化した。ローラ表面にも亀裂が入り良好な導電性ゴムローラとはいえない。また、変形量が大きいためチューブ外径を大きくする必要があり、コスト高になってしまう。ムーニー粘度が70を超えると、押出性が悪化しチューブ表面の凹凸が増大し、所定の外径を得るための研磨量が増加する。
【0056】
比較例4はエピクロロヒドリン系ゴムのエチレンオキサイド含有量が70モル%未満の例で、通電耐久性が悪化している。また実施例3と比較すると、抵抗値が高いことが確認でき同等の抵抗値を得るためには、エピクロロヒドロリンを多く含有させる必要があり、コスト高になる。
【0057】
比較例5及び6は、アクリロニトリルブタジエンゴムのアクリロニトリル含有量が15質量%以上25質量%以下を満たさない例で、抵抗値は低くなるものの環境による抵抗値の変動幅が大きくなってしまう。
【0058】
以上説明したように、本発明の導電性ゴムローラにより前記課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の導電性ゴムローラの概略構成図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の全体断面図である。
【図3】本発明の導電性ゴムローラのマイクロ波を用いた連続加硫による製造装置である。
【符号の説明】
【0060】
1 感光ドラム
2 帯電装置
3 露光手段
4 現像装置
5 トナー
6 導電性ゴムローラ(転写ローラ)
7 記録媒体
8 クリーニングブレード
9 廃トナー容器
10 定着装置
11 押出機
12 マイクロ波加硫装置(UHF)
13 熱風加硫装置(HAV)
14 引取機
15 定尺切断
61 導電性軸体
62 加硫発泡ゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真プロセスに使用される導電性ゴムローラにおいて、
該導電性ゴムローラのゴム成分が、少なくとも
アクリロニトリル含有量15質量%以上25質量%以下のアクリロニトリルブタジエンゴムと、
エチレンオキサイド含有量70モル%以上のエピクロルヒドリン系ゴムと、
共重合比率が(A)+(B)<90モル%であり、且つ(B)+(C)<20モル%を満たすエチレンオキサイド(A)/プロピレンオキサイド(B)/アリルグリシジルエーテル(C)の共重合体とを有し、
該ゴム成分のゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4 100℃)が30以上70以下である
ことを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
前記エピクロロヒドリン系ゴムが、エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体である請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
前記導電性ゴムローラが、高周波による分子振動加熱手段で、加硫・発泡し、発泡セルの大きさが、50μm以上300μm以下である請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
前記分子振動加熱手段が、マイクロ波発生装置(UHF)である請求項3に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項5】
電子写真プロセスの転写装置に使用する転写ローラが、請求項1乃至4のいずれかに記載の導電性ゴムローラを使用したものであることを特徴とする転写ローラ。
【請求項6】
電子写真プロセスを装置化した画像形成装置において、転写装置に使用する転写ローラが、請求項5に記載の転写ローラであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−31574(P2009−31574A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196140(P2007−196140)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】