説明

導電性ゴムローラ

【課題】温多湿のような環境下に放置された後でも、ゴム層が接着不良にならず、画像形成装置に組み付けた際にも画像形成性能を低下させない導電性ゴムローラを提供する。
【解決手段】ピクロロヒドリン系ゴムを含有するゴム層を、チューブ形状に押出し成形後、加硫工程を経て導電性芯金へ圧入して得られる導電性ゴムローラにおいて、該エピクロロヒドリン系ゴムは、エピクロロヒドリン・エチレンオキサイド共重合体またはエピクロロヒドリン・エチレンオキサイド・アリルグリシジルエーテル三元共重合体から選ばれた少なくとも1つであり、該エピクロロヒドリン系ゴムのエチレンオキサイド単位は、40mol%以上90mol%以下であり、かつ、該ゴム層と該導電性芯金を接着する接着剤は、フェノール系樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)の両方を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンターおよびファクシミリ等に代表される電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に使用される帯電ローラ、現像ローラおよび転写ローラ等の導電性ゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターおよびファクシミリ等に代表される電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に組み込まれる前記導電性ゴムローラにおいて、使用されるゴム組成物は、目的とする導電性を実現するために、カーボンブラック等の導電性フィラーを添加分散する方法、あるいはゴム自身に導電性を有するものを選択する方法がある。導電性フィラーを添加分散する方法ではその分散状態および配向によって電気特性に影響を及ぼすため、混練りバッチごとにばらつきが生じ、さらに同バッチ内でもローラごとのばらつきが生じやすくなる。対して、導電性を有するゴム材を使用する方法ではこのようなばらつきはほとんど発生しないばかりか、前記カーボンブラック等による電子導電性ゴムローラより抵抗値を低くすることが可能で、かつ安定した抵抗を得ることができる。そのため、近年の製品の低抵抗化、高性能化に伴い、導電性ゴムを用いたローラの製造が増加している。さらに、均一帯電や均一転写が特に求められ、抵抗ムラを引き起こす可能性が高いローラ形状精度についても向上が要求されている。
【0003】
前記導電性ゴムとして一般的に、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロロヒドリン系ゴム(CO、ECO、GECO)及びアクリルゴム(ACM)等が挙げられる。中でもエピクロロヒドリン系ゴムは、エピクロロヒドリン系ゴムとエチレンオキサイド(以下、EOと約す場合がある)の組成比によって体積抵抗を調整することができ、また、上記導電性ゴム中で抵抗が最も低いため、導電性ゴムローラ用ゴム材として好ましく使用できることが知られている。
【0004】
前記導電性ゴムローラの製造方法としては、例えば、以下に示す方法が知られている。導電性芯金を金型にセットして、そこに未加硫のゴム材を充填し加硫することで得る金型方式や、未加硫のゴム材を押出し機でチューブ形状に成形し、加硫缶や熱風炉で加硫を行い、得られたゴムチューブを導電性芯金へ圧入後、目的の導電性ゴムローラを得る圧入方式が知られている。金型方式は、金型の管理費、設計変更などにより形状変更があると新規に金型を作製しなければならないというデメリットがある。圧入方式は、金型方式より形状や寸法変更に容易に対応ができるメリットがある。さらに、外径形状の精度を求めるため、円筒状の研削盤でゴム層を研削することにより目的の精度を出す方法も知られている。また、表面性向上や電気特性の改善や安定性のため、少なくとも1層の表層が設けられた構成が採用されることが多い。
【0005】
前記の製造方法で導電性ゴムローラを製造した場合、ローラを回転させた時、導電性芯金と導電性ゴム層の間でずれが生じたり、研削時のストレスによりずれが生じ、びびが発生し、外径精度が悪くなったりするという問題がある。この問題の解決策として導電性芯金と導電性ゴム層の間に接着剤が使用されている。接着剤は、エピクロロヒドリンやNBRやウレタンゴムの導電性ゴム層と導電性芯金を接着する場合、一般的に加硫接着剤やホットメルト系接着剤が用いられ、各社メーカーより提供されている。例えば、加硫接着剤の種類としては、フェノール系、クロロプレン系、ポリオレフィン系及びエポキシ系等の加硫接着剤が挙げられる。
【0006】
しかしながら、上述したように、製品の低抵抗化、高性能化に伴いエピクロロヒドリン系ゴムとエチレンオキサイド(以下、EOと約す場合がある)単位値を多くして、より低抵抗を求めたエピクロロヒドリン系ゴム組成物を用いて前記製造方法で作製した導電性ゴムローラにおいて、前記ゴム組成物のEO単位値の増加に比例して吸湿性が高くなり、その結果、高温多湿環境下に放置するとゴム層が膨張し、芯金から浮き上がって接着不良となる場合や、ごく一部のみ浮き上がりが発生して、その部分のローラ形状に歪みが生じ、画像形成装置に組み付けても正常な画像が得られないという問題がある。
【0007】
前記接着不良を解決する方法として、エピクロロヒドリンゴム組成物を主体とするゴム層を有する導電性ゴムローラにおいて、接着剤としてフェノール系のものを用いる方法がある(例えば特許文献1参照)。この方法では、確かに成形後に強固な接着力を得ることができるが、フェノール系接着剤は強度や耐熱性および耐摩耗性に乏しいため、塗布後の接着剤層が脆く、わずかに接着層に接触しただけで、接着層が剥がれてしまい、その部分が接着不良になりやすい。これを補うために接着剤を塗布した後に焼付けて使用するのが一般的であるが、その温度条件が制限されるために焼付け時間を長くとる必要があり、製造工程上不利になる。また、高温多湿環境下に放置するとゴム層が膨張し、芯金から浮き上がって接着不良となることについては何ら検討をされていない。
【特許文献1】特開平10−293440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記事情に鑑みてなされたもので、高温多湿のような環境下に放置された後に、ゴム層の膨張による接着不良を発生させることなく、該ゴム層を画像形成装置に組み付けた際にも画像形成性能を低下させない導電性ゴムローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明は、少なくともエピクロロヒドリン系ゴムを含有するゴム層を、チューブ形状に押出し成形後、加硫工程を経て導電性芯金へ圧入して得られる導電性ゴムローラにおいて、該エピクロロヒドリン系ゴムがエピクロロヒドリン・エチレンオキサイド共重合体またはエピクロロヒドリン・エチレンオキサイド・アリルグリシジルエーテル三元共重合体から選ばれた少なくとも1つであり、かつ、エチレンオキサイド単位が40〜90mol%であり、かつ、該ゴム層と該導電性芯金を接着する接着剤がフェノール系樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)の両方を含有することを特徴とする導電性ゴムローラである。
【0010】
さらに、該導電性芯金の外径寸法に対してチューブ内径が8〜20%細く、かつ、該ゴム層から形成してなるゴムチューブを、該導電性芯金へ圧入して得られることを特徴とする上記の導電性ゴムローラである。
【発明の効果】
【0011】
少なくともエピクロロヒドリン系ゴムを含有するゴム層が、チューブ形状に押出し後、加硫工程経て導電性芯金へ圧入して得られる導電性ゴムローラにおいて、強固な接着力を得るための接着剤の扱い方や塗工工程が容易に管理できて、かつ高温多湿のような環境下に放置された後に、ゴム層の膨張による接着不良を発生させることなく、該ゴム層を画像形成装置に組み付けた際にも、画像形成性能を低下させない導電性ゴムローラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
本発明は、少なくともエピクロロヒドリン系ゴムを含有するゴム層を、チューブ形状に押出し成形後、加硫工程を経て導電性芯金へ圧入して得られる導電性ゴムローラにおいて、該エピクロロヒドリン系ゴムがエピクロロヒドリン・エチレンオキサイド共重合体またはエピクロロヒドリン・エチレンオキサイド・アリルグリシジルエーテル三元共重合体から選ばれた少なくとも1つであり、かつ、該エチレンオキサイド単位が40〜90mol%であり、かつ、該ゴム層と該導電性芯金を接着する接着剤がフェノール系樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)の両方を含有することを特徴とする以外、特に限定するものではない。
【0014】
本発明の導電性ゴムローラに使用するエピクロロヒドリン系ゴムは、エピクロロヒドリン系ゴムが、エピクロロヒドリン・エチレンオキサイド共重合体かエピクロロヒドリン・エチレンオキサイド・アリルグリシジルエーテル三元共重合体かが好ましく、より好ましくは、エピクロロヒドリン・エチレンオキサイド・アリルグリシジルエーテル三元共重合体が好ましい。エピクロロヒドリン系ゴムは、他の導電性ゴムの中で電気抵抗値を最も低くでき、より低抵抗を求める要求品質を充たすことができるからである。また、エピクロロヒドリン系ゴムは、エピクロロヒドリンモノポリマー、エピクロロヒドリン・エチレンオキサイド共重合体、エピクロロヒドリン・エチレンオキサイド・アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロロヒドリン・アリルグリシジルエーテル重合体等が挙げられる。
【0015】
エチレンオキサイド単位を含む共重合体は、より電気抵抗を低くできることや、他のポリマーとブレンドすることで、所望の抵抗値の得られやすいという特長がある。また、エピクロロヒドリン系ゴム中に、アリルグリシジルエーテル単位を含む共重合体は、不飽和結合を持つことから硫黄系加硫剤による加硫が可能になり、加硫方法や製造上での制約が少なくなるばかりか、熱軟化劣化性や耐オゾン性を向上できるという利点もあり、好ましく用いられる。
【0016】
エピクロロヒドリン・エチレンオキサイド・アリルグリシジルエーテル三元共重合体は共重合の割合により数々の種類があるが、エチレンオキサイド(以下、EOと略記する場合がある)単位値が40〜90mol%あることが好ましく、より好ましくは、50〜80mol%である。EO単位が40mol%未満であると所望の電気抵抗を求めることが難しくなる。90mol%を超えるとEOによる結晶化が進み、高硬度化を防ぐことが難しくなり、また、加工性が悪化し生産性が悪くなるという問題がある。エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテルの共重合の割合は、本発明の導電性ローラの電気抵抗や硬度あるいは加工性に何ら不具合がない範囲であれば特に制限されることはなく任意に設定できる。
【0017】
本発明の導電性ゴムローラに使用するゴム組成物は、少なくとも上記エピクロロヒドリン系ゴムを含有すれば、特に制限されるものでなく、必要に応じて各種ゴムを1種またはそれ以上をブレンドしても何ら差し支えない。また、本発明で使用するゴム組成物用には、各種配合剤を適宜使用できる。例えば、補強性あるいは加工性等や増量充填の目的から、カーボンブラック、各種重質炭酸カルシウム、各種軽質炭酸カルシウム、クレー類、炭酸マグネシウム、シリカ、珪酸マグネシウム、タルク等の各種フィラー類を添加できる。
【0018】
導電性や電気抵抗安定性等の目的から、各種導電剤が使用でき、各種塩からなるイオン導電剤等が必要に応じて添加できる。その他、亜鉛華,ステアリン酸等の加硫促進助剤、スコーチ防止剤、粘着付与剤、その他ゴム用添加剤を適宜添加することができる。また、加硫剤はゴム組成物の加硫の制御を容易に行うことができる点から、硫黄加硫系が好ましい。加硫促進剤としては、チアゾール類,スルフェンアミド類,チオウレア類,チウラム類,ジチオカルバミン酸塩類,グアニジン類,アルデヒドアミン類,アルデヒドアンモニア類が挙げられ、これらの一種を単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0019】
次に、本発明の導電性ゴムローラの製造方法としては、チューブ形状に押出し成形後、加硫工程経て導電性芯金へ圧入して得ることが好ましい。導電性ゴムローラの製造方法としては2つが知られている。1つは、導電性芯金を金型にセットして、そこに未加硫のゴム材を充填し加硫することで得る金型方式と、もう一方は、未加硫のゴム材を押出し機でチューブ形状に成形し、加硫缶や熱風炉で加硫を行い、得られたゴムチューブを導電性芯金へ圧入後して、目的の導電性ゴムローラを得る圧入方式が知られている。
【0020】
金型方式は、金型の管理費、設計変更などにより形状変更があると新規に金型を作製しなければならないというデメリットがある。圧入方式は、金型方式より形状や寸法変更に容易に対応ができるメリットがある。近年の傾向である多品種を生産するには、圧入方式の方が有利である。
【0021】
また、導電性芯金の外径寸法に対してチューブの内径が8〜20%細く、かつ、ゴム層から形成してなるゴムチューブを、導電性芯金へ圧入することが好ましい。ゴムチューブの内径が8%未満であると、ゴムチューブの導電性芯金への圧入が困難となり好ましくない。20%を超えると、ゴムチューブの導電性芯金への締め代が少なくなり好ましくない。
【0022】
また、加硫工程は直接水蒸気を用いた加硫缶を用いることが好ましい。熱風炉等による無加圧の加硫工程は、加硫工程時にゴムチューブが自身の重さにより変形が生じやすく、希望した内径を持つように、安定して生産することが難しい。これに対して、直接水蒸気による加硫缶の加硫では一定した圧力下のもとで加硫されるため、ゴムチューブの内径が安定しており、本発明のようにゴムチューブの内径管理がより必要とされる場合は、直接水蒸気を用いた加硫缶を用いることが好ましい。
【0023】
次に、本発明の導電性ゴムローラのゴム層と導電性芯金を接着する接着剤は、フェノール系樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)の両方を含有することが好ましい。フェノール系樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)の両方を含む接着剤を用いることを特徴とすることで、フェノール樹脂単体では得られなかった接着剤塗布後の強度、耐熱性、耐摩耗性を大幅に向上させ、かつ成形後の接着力も強固であり、高温多湿環境下に放置された後、ゴム層の膨張による接着不良を発生することなく、画像形成装置に組み付けた際にも画像形成性能を低下させないことを可能にした。つまり、フェノール系樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)の両方を含む接着剤を用いることを特徴とすることで、接着剤塗布時の塗布ムラや塗布後の接着剤剥離がなくなり、芯金とゴム層との間で部分的な接着不良や接着力の弱い部分がなくなり、均一に強固な接着力を得ることができる。したがって、エピクロロヒドリン系ゴムとエチレンオキサイド(以下、EOと約す場合がある)単位値を多くして、より低抵抗を求めたエピクロロヒドリン系ゴム組成物を用いた導電性ゴムローラにおいても、高温多湿環境下に放置するとゴム層が膨張して、導電性芯金から浮き上がる現象を抑え込むことができるのである。
【0024】
次に、使用されるアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)としては従来公知のものであれば特に制限されるものではないが、アクニルニトリル(以下、ANと約す場合がある)量が25〜60wt%であるものが好ましい。AN量が25wt%未満である場合、ともに使用するフェノール系樹脂との相溶性が悪くなり、接着剤の強度、耐熱性および耐摩耗性が得られない。また、AN量が多いほど強度、耐熱性、耐摩耗性およびフェノール樹脂との相溶性が向上し、本発明の効果を発揮するのに非常に有効となる。しかしながら、AN量が60wt%を超えると柔軟性が失われて脆くなるため、加工性に乏しく、接着剤に添加して芯金に塗布できても剥離あるいは削り取られやすくなる。また、汎用性もないためコストが高くなる。より好ましくは、AN量は25〜60wt%である。
【0025】
また、フェノール系樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)の混合割合は、特に制限するものではないが、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)量としては接着剤に含まれる固形成分として1wt%〜30wt%相当量が、本発明の効果を十分に発揮するためにより好ましい。
【0026】
導電性芯金への接着剤塗布方法は特に制限されるものではないが、例えば両端部をチャックした芯金を円周方向に回転させながら、接着剤を含浸させたシリコーンゴムスポンジ、アクリルゴムスポンジ、ウレタンゴムスポンジ等を芯金に押し当てながら行う方法が挙げられる。芯金の両端部分にも塗布できるのであればロールコーター等の機器を用いても差し支えない。接着剤の濃度についても製造工程上および画像形成装置に使用される部材として要求される接着力を十分有していれば所定の濃度に希釈して塗布しても差し支えない。
【実施例】
【0027】
本発明を実施例にもとづいて詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0028】
[ゴム組成物の作製]
エピクロロヒドリンゴム100質量部〔商品名:CG102あるいはエピオンON301ダイソー株式会社製〕、酸化亜鉛[商品名:酸化亜鉛2種 ハクスイテック株式会社製]5質量部、ステアリン酸[商品名:ステアリン酸S 花王株式会社製]1質量部、カーボンブラック[商品名:旭#15 旭カーボン株式会社製]5質量部、炭酸カルシウム[商品名:シルバーW 白石工業株式会社製]40質量部、加硫促進剤テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)[商品名 ノクセラーTT 大内振興化学工業(株)製] 2質量部、加硫祖促進剤テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)[商品名 ノクセラーTET 大内振興化学工業(株)製]2質量部、硫黄[商品名 サルファックス200S 鶴見化学工業(株)製]2質量部を密閉型混練機およびオープンロール機を用いて混練を行なうことにより未加硫のゴム組成物を得た。
【0029】
[接着剤の作製]
約2mm角に切断した各種アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)とMEKを500mlのガラス瓶にそれぞれ所定量添加し、ホットプレートで60℃に加熱して3〜5日間攪拌することにより所定濃度のアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)−MEK溶液を得た。さらに市販の導電性フェノール系樹脂接着剤および前記アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)溶液を所望の割合になるように所定量を秤量したもの(アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)量としては接着剤に含まれる固形成分として10wt%〜20wt%相当量になるように調整した)を500mlのガラス瓶に加え、室温で8時間攪拌することにより、フェノール系樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)の両方を含有する接着剤を得た。
【0030】
[導電性芯金の作製]
厚さ3〜6μmの無電解ニッケルメッキを施した直径6mm、長さ240mmSUS22材の芯金の外周上に、前記方法にて得た接着剤をロールコーターにて芯金両端部から10mmを除部分に塗布し、導電性芯金を得た。
【0031】
[導電性ゴムローラの作製]
前記未加硫のゴム組成物を、押出し機を用いて、加硫後にチューブ内径が導電性芯金の外径寸法に対して、ゴムチューブの内径が10〜15%細くなるようにチューブ形状に押出し成形した後、直接加圧水蒸気を用いる加硫缶で160℃、30分間加硫させた。得られたゴムチューブを前記導電性芯金へ圧入し、160℃、30分間接着加硫させた後、両端部のゴム層10mmを、カッター刃を入れて剥離した後、研削機にて外径10mmになるように研削し、導電性ゴムローラを得た。
【0032】
[接着性の評価方法]
接着性の評価方法については、前記方法で得られた導電性ゴムローラを各10本、40℃×95%RTに設定した試験炉に1ヶ月放置した後、目視により導電性ゴムローラ表面の形状の歪みを観察し、○は導電性ゴムローラ表面の形状の歪みが全くないもの、△はわずかに歪があるもの、×は歪みがひどいものとした。また、導電性ゴムローラのゴム層をカッターで切り接着状態も目視で確認し、接着剥がれを確認した。
【0033】
表1にエピクロロヒドリンゴムのエチレンオキサイド(EO)単位、使用した接着剤の種類及び接着性の評価結果を示す。実施例1〜4に記載の接着剤を用いたものに関しては、高温多湿環境下に放置するとゴム層が膨張し導電性芯金から浮き上がる現象を完全に抑え込むことができ、さらに、導電性ゴムローラの表面の歪も全く発生しなかった。実施例5に関しては、接着剥がれが1本発生した以外は特に問題も無かった。
【0034】
これに対して、比較例1、2はフェノール系接着剤単体でNBRを添加しなかったものであるが、接着剥がれが発生し、特に、エピクロロヒドリンゴムのエチレンオキサイド(EO)単位が75mol%のものは、接着不良品がより多く発生した。また、比較例3はフェノール系接着剤を使用せずオレフィン系の接着剤を用いたが、全て接着不良になってしまった。比較例4は、比較例3にNBR添加したものを用いたが、NBRが相溶せず接着剤を得ることができなかった。
【0035】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明により、高温多湿環境下に放置しても、ゴム層が膨張し導電性芯金から浮き上がる現象を完全に抑え込むことができ、さらに、導電性ゴムローラの表面の歪も全く発生しなかった。従って、本発明は、複写機、プリンターおよびファクシミリ等に代表される電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に使用される帯電ローラ、現像ローラおよび転写ローラ等の導電性ゴムローラとしての利用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともエピクロロヒドリン系ゴムを含有するゴム層を、チューブ形状に押出し成形後、加硫工程を経て導電性芯金へ圧入して得られる導電性ゴムローラにおいて、該エピクロロヒドリン系ゴムがエピクロロヒドリン・エチレンオキサイド共重合体またはエピクロロヒドリン・エチレンオキサイド・アリルグリシジルエーテル三元共重合体から選ばれた少なくとも1つであり、かつ、エチレンオキサイド単位が40乃至90mol%であり、かつ、該ゴム層と該導電性芯金を接着する接着剤がフェノール系樹脂とアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)の両方を含有することを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
前記エピクロロヒドリン系ゴムが、エピクロロヒドリン・エチレンオキサイド・アリルグリシジルエーテル三元共重合体であり、少なくとも該エチレンオキサイド単位が50乃至80mol%であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
前記アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)のアクリロニトリル(AN)量が25乃至60wt%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
前記加硫工程において直接加圧水蒸気を用いる加硫缶を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項5】
前記導電性芯金の外径寸法に対してチューブ内径が8乃至20%細く、かつ、該ゴム層から形成してなるゴムチューブを、該導電性芯金へ圧入して得られることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の導電性ゴムローラ。

【公開番号】特開2007−17595(P2007−17595A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197495(P2005−197495)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】