説明

導電性ゴムローラ

【課題】フィルム層が絶縁状態で有する従来のトナー離型性を失うことなく、導電性を付与したトナー離型性を有する導電性ゴムローラを提供する。
【解決手段】芯軸12と、芯軸周上に設けられ、体積固有抵抗値が104 〜106Ωcmのゴム材料からなるゴム弾性体層14と、ゴム弾性体層の周上に設けられ、表面抵抗値が106 〜109Ω/sqであるフィルム層16とを備えている。ローラ抵抗値は105 〜107Ωcm、ローラ表面粗さ(Ra)は0.15μm以下である。フィルム層16の導電性の付与はカーボンブラックによりなされている。フィルム層16に含まれるカーボンブラックは平均粒子径が10 〜50nm、DBP吸油量が100 〜500 ml/100gである。フィルム層16に含まれるカーボンブラック量は、5〜6 wt%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やレーザービームプリンタ(LBP)等の転写ユニットに使用される吸着ローラ、あるいは、定着ユニットに使用される定着ローラ、加圧ローラ等に適用できる導電性ゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
吸着ローラは複写機やLBP等の転写ユニットにおいて、コピー紙を電気的に引き付け、転写部にコピー紙を搬送するためのローラで、導電性が必要な他、トナーと直接接触するために、トナー離型性を有することが必要である。
従来より、複写機やLBP等に使用される導電性ゴムローラのうち、トナーとの離型性を必要とする場合には、表層に離型性を有する樹脂層を設けたローラが使用されている。樹脂層としてはフッ素系樹脂の被膜を設けたものや、フィルム状のものが使用されており、表層材への導電性の付与はカーボンブラックを含有させる方法やイオン導電性物質を含有させることにより行われている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−224018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
導電性を付与するためにカーボンブラックを使用したものは表面粗さが粗く、樹脂フィルムが有する従来のトナー離型性が損なわれる場合がある。またイオン導電性物質を使用したものは湿度の影響により抵抗値が変化するという欠点を有していた。
本発明は以上の点に着目してなされたもので、フィルム層が絶縁状態で有する従来のトナー離型性を失うことなく、導電性を付与したトナー離型性を有する導電性ゴムローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
芯軸と、上記芯軸周上に設けられ、体積固有抵抗値が104 〜106Ωcmのゴム材料からなるゴム弾性体層と、上記ゴム弾性体層の周上に設けられ、表面抵抗値が106 〜109Ω/sqであるフィルム層とを備え、ローラ抵抗値が105 〜107Ωcm、ローラ表面粗さ(Ra)が0.15μm以下であることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【0005】
所望の導電性とトナー離型性とを備えた導電性ゴムローラが得られる。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載の導電性ゴムローラにおいて、上記フィルム層は、カーボンブラックにより導電性が付与されていることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【0007】
〈構成3〉
構成2に記載の導電性ゴムローラにおいて、上記フィルム層は、平均粒子径が10 〜50nm、DBP吸油量が100 〜500 ml/100gのカーボンブラックを含むものであることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【0008】
〈構成4〉
構成2又は3に記載の導電性ゴムローラにおいて、上記フィルム層に含まれるカーボンブラックの重量は、5〜6 wt%であることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【0009】
〈構成5〉
構成1〜4のいずれかに記載の導電性ゴムローラにおいて、上記ゴム弾性体層を構成するゴム材料は、付加反応型のシリコーンゴムであることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【0010】
〈構成6〉
構成1〜5のいずれかに記載の導電性ゴムローラにおいて、上記フィルム層は、PFA樹脂からなることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者は、芯軸と、この芯軸の周上に設けられたゴム弾性体層と、このゴム弾性体層の周上に表層として設けられたフィルム層とを備えた導電性ゴムローラにつき、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ゴム弾性体層とフィルム層の各材料を含む構成を一定の範囲で特定することによって所望の導電性とトナー離型性とを備えた導電性ゴムローラが得られることを確認し本発明をするに至った。
以下、本発明の実施の形態を実施例により説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1の導電性ゴムローラを示す断面図である。
導電性ゴムローラは、芯軸12と、芯軸12周上に設けられたゴム弾性体層14と、ゴム弾性体層14の周上に表層として設けられたフィルム層16とを備えている。ゴム弾性体層14は、体積固有抵抗値が104 〜106Ωcmのゴム材料により構成されている。ゴム弾性体層14のゴム材料としては、付加反応型のシリコーンゴム、二トリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムに、カーボン等の導電性粉末や導電性繊維等を混入したものが用いられる。
【0013】
フィルム層16は、PFA樹脂により構成され、表面抵抗値が106 〜109Ω/sqを有している。フィルム層16にはカーボンブラックが混入されて導電性が付与されてもよい。この場合、フィルム層16に含まれるカーボンブラックは、平均粒子径が10 〜50nm、重量が5〜6 wt%、DBP吸油量が100 〜500 ml/100gである。
このように構成された導電性ゴムローラは、ローラ全体の抵抗値が105 〜107Ωcmで、ローラ全体の表面粗さ(Ra)が0.15μm以下となっている。
【0014】
図2は、本発明の実施例1及び比較例1〜5の比較を示す図である。
図2に示す本発明の実施例1及び比較例1〜5の各ゴム弾性体層は、付加反応型のシリコーンゴムを使用した。また、表層の各フィルム層は、厚さ50μmのPFA樹脂を使用した。なお、ゴム弾性体層のゴム材料としては、シリコーンゴムに限られず、段落番号[0012]に記載した二トリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムに、カーボン等の導電性粉末や導電性繊維等を混入した材料、その他すべてのゴム材料を用いてもよい。また、フィルム層の材料としては、PFA樹脂に限られず、フッ化ビニリデン、ETFE等のフッ素系樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド等を使用してもよい。
【0015】
図2に示す実施例1及び比較例1〜5は、外径9mmφ、ゴム厚1.5mmの導電性ゴムローラを成型した後、このローラをLBP転写ユニットに組み込み、導電性の指標としてコピー用紙の吸着性の評価とトナー離型性の評価を行った結果を示している。コピー用紙の吸着性の評価には、用紙の配列に乱れが生じていないものを○、生じたものを×とした。また、トナー離型性の評価にはトナー付着による用紙の汚れが目立たないものを○、目立つものを×とした。
図2により、実施例1については吸着性、トナー離型性共に良好であるが、比較例1から比較例5は両特性を満足するローラは得られていないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の導電性ゴムローラを示す断面図である。
【図2】本発明の実施例1及び比較例1〜5の比較を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
12 芯軸
14 ゴム弾性体層
16 フィルム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯軸と、
前記芯軸周上に設けられ、体積固有抵抗値が104 〜106Ωcmのゴム材料からなるゴム弾性体層と、
前記ゴム弾性体層の周上に設けられ、表面抵抗値が106 〜109Ω/sqであるフィルム層とを備え、
ローラ抵抗値が105 〜107Ωcm、ローラ表面粗さ(Ra)が0.15μm以下であることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性ゴムローラにおいて、
前記フィルム層は、カーボンブラックにより導電性が付与されていることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項3】
請求項2に記載の導電性ゴムローラにおいて、
前記フィルム層は、平均粒子径が10 〜50nm、DBP吸油量が100 〜500 ml/100gのカーボンブラックを含むものであることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の導電性ゴムローラにおいて、
前記フィルム層に含まれるカーボンブラックの重量は、5〜6 wt%であることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ゴムローラにおいて、
前記ゴム弾性体層を構成するゴム材料は、付加反応型のシリコーンゴムであることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ゴムローラにおいて、
前記フィルム層は、PFA樹脂からなることを特徴とする導電性ゴムローラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−256299(P2007−256299A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76500(P2006−76500)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(306013119)昭和電線デバイステクノロジー株式会社 (118)
【Fターム(参考)】