説明

導電性ゴムローラ

【課題】製造安定性や耐汚染性が良好であり、かつ電気抵抗値の電圧依存性や環境依存性が低減された導電性ゴムローラを提供する。
【解決手段】導電性ゴム層を有し、ポリマー成分の100質量部と、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩ならびにポリアルキレンオキサイドからなるポリアルキレンオキサイド成分の1〜20質量部と、BET比表面積が170m2/g以上であるシリカの1〜20質量部と、を含む導電性ゴム組成物を該導電性ゴム層に用いた導電性ゴムローラである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば電子写真方式による複写機、FAX、プリンター等の画像形成装置に対して好適に使用される導電性ゴムローラに関し、より詳細には、上記のような画像形成装置の感光体、転写ベルト等に接触させて使用する導電性ゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式等の画像形成装置に使用される導電性ゴムローラにおいては、カーボンブラックを含有させることにより電子導電性を付与する方法が用いられてきた。しかし、カーボンブラックをポリマー中に均一に分散させることは非常に困難である点、カーボンブラックの配合量の僅かなずれによって導電性ゴムローラの電気抵抗値が大きく変わってしまう点等において、製造安定性に欠けるという問題がある。また、低電圧印加時と高電圧印加時とにおける電気抵抗値の差、すなわち電気抵抗値の電圧依存性、が大きいという問題もある。
【0003】
上記のような電子導電性タイプの材料に対し、イオン導電性物質を使用することにより導電性を得るイオン伝導性タイプの材料は、ポリマー中に比較的容易に均一分散させることができ、配合量のずれによる電気抵抗値の変動が小さい点、電気抵抗値の電圧依存性が低い点で有利である。
【0004】
イオン導電性の材料を用いた導電性ゴムローラとしては、たとえば、イオン導電性を有するエピクロルヒドリン系ゴムをポリマーとして用いた導電性ゴムローラ等が提案されている。
【0005】
特許文献1には、エピクロルヒドリン系ゴムと、重量平均分子量(Mw)が3000〜10000であるポリエーテルポリオールとを含有するゴム組成物からなる弾性層を有する導電性ゴムローラが提案されている。
【0006】
特許文献2には、ゴム成分としてアクリロニトリル含有量が10〜20質量%であるアクリロニトリルブタジエンゴムを50〜85質量部、エチレンオキサイドが50モル%以上占めるエピクロルヒドリンゴムを15〜50質量部含むゴム組成物から形成し、最大セル径が200μm以下、最小セル径が10μm以上で、かつショアE硬度が20〜50である導電性発泡体を備えた導電性ロールが提案されている。
【0007】
しかし、エピクロルヒドリンゴム、またはエピクロルヒドリンゴムと他のゴムとのブレンドゴムを用いる場合、エピクロルヒドリンゴム中に含まれる塩素が支持軸として使われるステンレス材を劣化させたり、ローラ使用後の焼却処分時に有害なガスを発生させて環境に負荷を与える等の問題がある。
【0008】
そこで、塩素を含まないポリマーを用いた導電性ゴムローラが注目されてきている。
特許文献3には、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとの混合物を含むゴム成分を主成分とし、該ゴム成分の100質量部に対して、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を0.01重量部以上20重量部以下の割合で含有し、化学発泡剤を用いて発泡させた発泡層を備え、該発泡層の圧縮永久歪が30%以下である導電性発泡ロールが提案されている。
【0009】
特許文献4には、連続相と非連続相とからなる導電性弾性層として、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体から構成される非連続相のみに、イオン導電剤を1〜20重量%の割合で予め混合して含有させ、連続相と非連続相とを構成するポリマーの合計100質量部に対して、連続相を構成するポリマーの含有量を60質量部以上80質量部未満とするとともに、導電剤を含有する上記のエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体の含有量を1質量部以上25質量部以下とした導電性弾性層を備えた導電性ロールが提案されている。
【0010】
しかし、イオン導電性の材料のみで導電性ゴムローラの低抵抗化を実現しようとする場合、電気抵抗値の低減は可能であるものの、導電性ゴムローラの重要な要求特性である耐汚染性が悪化する等の問題がある。すなわち、上記の技術では、総合的な性能のバランスを満足する導電性ゴムローラを得ることは困難である。
【特許文献1】特開2006−39394号公報
【特許文献2】特開2006−259131号公報
【特許文献3】特開2004−170814号公報
【特許文献4】特開2006−105374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、たとえば画像形成装置用に用いられる導電性ローラであって、塩素を含有するポリマーを使用しない場合にも低い電気抵抗値を維持すると共に、電気抵抗値の電圧依存性および使用環境の変動による環境依存性がいずれも低く連続通電時の通電上昇が抑制されていること等によって良好な電気特性を有し、さらに、画像形成装置内の接触部品(たとえば感光体等)を汚染しない導電性ゴムローラを提供することを目的とする。
【0012】
より具体的には、感光体や転写ベルトと互いに接触して配置される現像ロール、帯電ロール、転写ロール等として好適に使用できる導電性ゴムローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の導電性ゴムローラは、導電性ゴム層を有し、ポリマー成分の100質量部と、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩ならびにポリアルキレンオキサイドからなるポリアルキレンオキサイド成分の1〜20質量部と、BET比表面積が170m2/g以上であるシリカの1〜20質量部と、を含む導電性ゴム組成物を該導電性ゴム層に用いたものである。
【0014】
本発明の導電性ゴムローラにおいては、シリカの吸水率が、0.3〜1.0質量%の範囲内であることが好ましい。
【0015】
本発明の導電性ゴムローラにおいては、ポリマー成分が、ジエン系ゴムおよび非ジエン系ゴムから選択される少なくとも1種からなることが好ましい。
【0016】
本発明の導電性ゴムローラにおいて、ポリマー成分は、ジエン系ゴム成分と非ジエン系ゴム成分とからなり、ポリマー成分に占めるジエン系ゴム成分の割合が、60〜90質量%の範囲内であることが好ましい。
【0017】
本発明の導電性ゴムローラにおいては、導電性ゴム組成物のアスカーC硬度が、15〜70°の範囲内であることが好ましい。
【0018】
本発明の導電性ゴムローラにおいて、導電性ゴム組成物は、ポリマー成分の100質量部に対して発泡剤を1〜5質量部の範囲内でさらに含み、導電性ゴム組成物が構成する導電性ゴム層のアスカーC硬度が70°以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の導電性ゴムローラにおいては、ポリアルキレンオキサイド成分中のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩の含有量が、1〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0020】
本発明の導電性ゴムローラは、支持軸と、該支持軸の外周に形成された単層または複層のゴム層とを備え、ゴム層のうち少なくとも1層が上述したいずれかの導電性ゴム層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、たとえば画像形成装置用に用いられ、塩素を含有するポリマーを使用しない場合にも低い電気抵抗値を維持すると共に、電気抵抗値の電圧依存性および使用環境の変動による環境依存性がいずれも低く連続通電時の通電上昇が抑制されていること等によって良好な電気特性を有し、さらに、画像形成装置内の接触部品(たとえば感光体等)を汚染しない、総合的な性能を満足する導電性ゴムローラを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の導電性ゴムローラは、導電性ゴム層を有し、ポリマー成分の100質量部と、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩ならびにポリアルキレンオキサイドからなるポリアルキレンオキサイド成分の1〜20質量部と、BET比表面積が170m2/g以上であるシリカの1〜20質量部と、を含む導電性ゴム組成物を該導電性ゴム層に用いる。
【0023】
本発明で用いられるポリアルキレンオキサイド成分は良好なイオン導電性を有する。ポリアルキレンオキサイド自体も、アルキレンオキサイド構造に起因するイオン導電性を有するが、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を含有することでさらに優れたイオン導電性が付与される。
【0024】
本発明で用いられる導電性ゴム組成物は、BET比表面積が170m2/g以上であるシリカを含む。本発明においては、上記のようなポリアルキレンオキサイド成分を用いるが、ポリアルキレンオキサイド成分の含有量が多すぎる場合には、導電性ゴムローラの耐汚染性を低下させるおそれがある。本発明においては、上記のポリアルキレンオキサイド成分とともに、比表面積が制御されたシリカを組合せて用いる。
【0025】
本発明において用いられるシリカは、大きな比表面積を有するために吸湿性を有する。シリカの吸湿によってアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩の解離度を上昇させる効果が得られる他、シリカの添加によりポリアルキレンオキサイド成分中に解離したイオンの流路が形成されるという効果が得られる。これらの効果により、本発明において用いられるシリカは導電性ゴム組成物の導電性の向上作用に優れると考えられる。
【0026】
すなわち本発明で用いられる導電性ゴム組成物においては、ポリアルキレンオキサイド成分の含有量を比較的少なくしても良好なイオン導電性を確保できるため、該導電性ゴム組成物を用いることにより、導電性ゴムローラの耐汚染性と高イオン導電性との両立が可能となる。よって本発明によれば、塩素を含有するポリマーを使用しない場合にも低い電気抵抗値を維持すると共に、電気抵抗値の電圧依存性および使用環境の変動による環境依存性がいずれも低く連続通電時の通電上昇が抑制されていること等によって良好な電気特性を有し、さらに、画像形成装置内の接触部品(たとえば感光体等)を汚染しない、総合的な性能を満足する導電性ゴムローラを得ることができる。
【0027】
[ポリアルキレンオキサイド成分]
本発明で用いられる導電性ゴム組成物においては、ポリアルキレンオキサイド成分の含有量がポリマー成分の100質量部に対して、1〜20質量部の範囲内とされる。ポリアルキレンオキサイド成分の該含有量が1質量部未満では、導電性ゴムローラに所望されるイオン導電性を付与することができず、電気抵抗値が高くなってしまう。一方、該含有量が20質量部を超えると、ポリアルキレンオキサイド成分のブリードアウトにより、導電性ゴムローラの耐汚染性が損なわれてしまう。ポリアルキレンオキサイド成分の該含有量は、5質量部以上であることがより好ましく、また、15質量部以下であることがより好ましい。
【0028】
ポリアルキレンオキサイド成分中のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩の含有量は、1〜20質量%の範囲内であることが好ましい。該含有量が1質量%以上である場合、特に良好なイオン導電性が付与される。該含有量が20質量%を超えると、該含有量を増やしても低抵抗化の効果の顕著な向上が望めない一方耐汚染性が低下する傾向が現れる。よって、該含有量が20質量%以下である場合、耐汚染性およびコストの点で好ましい。該含有量は、5質量%以上であることがより好ましく、また、15質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
<ポリアルキレンオキサイド>
ポリアルキレンオキサイド成分に含まれるポリアルキレンオキサイドとしては、たとえば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドランダム共重合体、エポキシ(イソ)ブタン、エポキシへキサン、エポキシヘプタン、エポキシノナン、エポキシオクタン、エポキシデカン等を例示できる。これらは、イオン伝導性と吸湿性の抑制とのバランスに優れる点で好ましい。
【0030】
<アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩>
アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のカチオン(陽イオン)と、該カチオンと解離可能なアニオン(陰イオン)と、で構成される。カチオンとしては、たとえば、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、マグネシウムイオン(Mg+)、カルシウムイオン(Ca+)等を例示できる。また、アニオンとしては、ClO4-、SCN-、CF3SO3-、(CF3SO22-、(CF3SO33-、BF4-、F-、Cl-、Br-、I-等を例示できる。
【0031】
上記のカチオンの1種以上と、上記のアニオンの1種以上とを組合せることにより、本発明で好ましく用いられるアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を形成できる。
【0032】
中でも、高い解離度と導電性とを示す点で、カチオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンから選択される少なくともいずれかであることがより好ましい。より好ましい金属塩の例としては、LiClO4、NaClO4、KClO4、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiC(CF3SO33、KSCN、NaSCN等を例示できる。
【0033】
[シリカ]
本発明において用いられるシリカのBET比表面積は、170m2/g以上とされる。BET比表面積が170m2/g未満であると、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩の解離度の上昇作用が十分発揮されず、導電性ゴム組成物のイオン伝導度の向上作用を所望の程度得ることができない。シリカのBET比表面積は、190m2/g以上であることがより好ましい。
【0034】
導電性ゴム組成物において、BET比表面積が170m2/g以上であるシリカの含有量は、ポリマー成分の100質量部に対して、1〜20質量部の範囲内とされる。該含有量が1質量部未満であると、イオン伝導度の向上作用を所望の程度発揮させることができない。一方該含有量が20質量部を超えると、導電性ゴムローラの使用環境の変動による電気抵抗値の変化、すなわち電気抵抗値の環境依存性が大きくなり使用に適さない。該含有量は、5質量部以上であることがより好ましく、また、15質量部以下であることがより好ましい。
【0035】
本発明で用いられるシリカの吸水率は、0.3〜1.0質量%の範囲内であることが好ましい。該吸水率が0.3質量%以上である場合、イオン伝導度の向上作用が良好であり、1.0質量%以下である場合、電気抵抗値の環境依存性を低く維持できる点で好ましい。
【0036】
なお上記の吸水率とは、120℃で4時間乾燥させた後の質量を初期質量とし、該乾燥後、温度28℃、湿度85%の環境下に12時間放置した後の質量を放置後質量として、下記の式、
吸水率(%)=[{(放置後質量)−(初期質量)}/(初期質量)]×100
に従って求められる値である。
【0037】
本発明で用いられるシリカの具体例としては、たとえば、東ソーシリカ株式会社製の「ニップシールVN3」、DSL.ジャパン株式会社製の「CARPLEX♯67」「CARPLEX♯70」等を例示できる。
【0038】
[ポリマー成分]
ポリマー成分としては、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴム等を使用できる。ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等を例示できる。また、非ジエン系ゴムとしては、たとえば、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム等を例示できる。これらは単独でも2種以上の組合せでも使用できる。
【0039】
本発明のポリマー成分は、塩素等のハロゲンを含まないことが好ましい。本発明で用いられる導電性ゴム組成物は優れたイオン導電性を有するため、ポリマー成分がハロゲンを含まなくも導電性ゴムローラに優れた導電性を付与することができる。ポリマー成分がハロゲンを含まない場合、導電性ゴムローラの支持軸等の周辺部材の劣化やローラ使用後の処分時における環境への負荷を顕著に低減することができる。
【0040】
ポリマー成分は、ジエン系ゴム成分と非ジエン系ゴム成分とからなることが好ましい。この場合、導電性ゴムローラに良好な物性を得るとともに、オゾンに対する劣化および電気抵抗値の環境依存性を低減することができる。またこの場合、ポリマー成分に占めるジエン系ゴム成分の割合が、60〜90質量%の範囲内であることが好ましい。該割合が60質量%以上である場合、圧縮永久歪、反発弾性、伸び等の良好な機械特性を得ることができる点で好ましく、該割合が90質量%以下である場合、非ジエン系ゴム成分を10質量%以上含有できるため、導電性ローラのオゾンに対する劣化を低減できるという効果が得られる。該割合は、70質量%以上であることがより好ましく、また、80質量%以下であることがより好ましい。
【0041】
一方、導電性ローラの使用においてオゾンによる劣化が問題とならない場合等においては、ジエン系ゴムおよび非ジエン系ゴムから選択される少なくとも1種からなるポリマー成分を用いても良い。この場合、圧縮永久歪、反発弾性、伸び等の良好な機械特性を得ることができる。
【0042】
本発明の導電性ゴムローラにおいては、ポリマー成分が、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを含むことが特に好ましい。アクリロニトリル−ブタジエンゴムは、塩素を含有しないポリマーの中でも、自身がイオン導電性を示す点で有利である。
【0043】
本発明の導電性ゴムローラにおいては、導電性ゴム組成物のアスカーC硬度が、15〜70°の範囲内であることが好ましい。アスカーC硬度が15°以上である場合、導電性ゴムローラの圧縮永久歪や耐久性が良好であり、70°以下である場合、導電性ゴムローラの柔軟性が損なわれず、紙送り性、安定した導電性を付与するための広いニップ幅等のローラ性能を良好に維持できる。
【0044】
なお上記のアスカーC硬度とは、JIS K6253に準拠したアスカーAでの測定において20ポイント以下を示すためにアスカーC硬度を選定して測定した値である。
【0045】
本発明で用いられる導電性ゴム組成物は、上記した以外に、たとえば、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、充填剤等の、公知のゴム配合剤を必要に応じて含有し得る。
【0046】
加硫剤としては、たとえば、硫黄、テトラアルキルチラウム−ジサルファイド、モルホリン−ジサルファイド、アルキル−フェノール−ジサルファイド等の硫黄および硫黄系有機化合物、酸化マグネシウム等の金属化合物、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、n−ブチル,4,4−ジ(t−メチルパーオキシ)バレレート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、ジクミルパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシンー3等のジアルキルパーオキサイド類、ジ(3−t−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジ(4−t−メチルベンゾイル)パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)−ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル類等の有機過酸化物、等があるが、安価で容易に入手でき、かつ加硫作用も十分に大きく、ゴム表面の耐摩耗性が優れる点で、硫黄または硫黄系有機化合物が好ましい。これらの加硫剤は単独で用いても2種類以上組み合わせても良い。
【0047】
加硫促進剤としては、一般的に用いられる加硫促進剤を適宜配合でき、たとえば、ジベンゾチアゾイルジサルファイド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾール(D)、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(MZ)等のチアゾール類、ジイソプロピルスルフェンアミド類(DIBS)、シクロヘキシルスルフェンアミド(CZ)等のスルフェンアミド類、テトラメチルチラウムジサルファイド(TT)、テトラエチルチラウム−ジサルファイド(TET)、ジペンタメチレンチラウム−テトラサルファイド(TRA)等のチラウム類、ジメチルジチオカーバメート亜鉛塩(PZ)、ジエチルジチオカーバメート亜鉛塩(EZ)等のジチオ酸塩、その他グアニジン類、チオウレア類、アルデヒドアンモニア塩、ザンテート類などがある。これらの加硫促進剤は単独で用いても2種類以上組み合わせても良い。
【0048】
老化防止剤としては、たとえば公知の老化防止剤を適宜配合することができ、フェニル−α−ナフチルアミン,N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン等のアミン類、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、スチレン化フェノール等のフェノール類、2−メルカプトベンゾイミダゾール等のイミダゾール類などが挙げられる。
【0049】
軟化剤としては、たとえば公知の軟化剤を適宜配合することができ、鉱物油、植物油、合成軟化剤等を使用できる。鉱物油としては、パラフィン鎖炭素数が全炭素中の50%以上を占めるパラフィン系鉱物油、ナフテン環炭素数が全炭素中の30〜45%を占めるナフテン系鉱物油、芳香族炭素数が全炭素中の35%以上を占めるアロマティック系鉱物油等が挙げられる。植物油としては、脂肪油系軟化剤、パインタール油、トール油、ファクチス等が挙げられる。合成軟化剤としては、脂肪族二塩基酸エステル系、エーテル系、ポリエステル系等の軟化剤が挙げられる。
【0050】
充填剤としては、たとえば公知の充填剤を適宜配合することができ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、コルク、タルク、ゼオライト、アルミナ、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、二塩基亜リン酸塩、木片、ガラス粉、セラミックス粉等が挙げられる。また本発明で配合されるシリカの他にBET比表面積が170m2/g未満のシリカを併用しても良い。これらの充填剤は単独で用いても2種類以上組み合わせても良い。
【0051】
その他、公知の可塑剤、加工助剤等を添加、混合して使用できる。加工助剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、亜鉛華等の金属酸化物、等を例示できる。
【0052】
本発明で形成される導電性ゴム層は、硬質ゴムからなるソリッドゴム層であっても発泡ゴムからなるスポンジゴム層であっても良く、本発明の導電性ゴムローラが適用される画像形成装置に所望される性能に応じて適宜選択すれば良い。
【0053】
発泡ゴムは、導電性ゴム組成物の調製時に、発泡剤、および必要に応じて発泡助剤を添加し、好ましくは密閉条件下で加硫成型することにより形成できる。
【0054】
発泡剤としては、たとえば化学発泡剤が好適に用いられ、該化学発泡剤は有機系と無機系とに分類される。有機系の発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、バリウムアゾジカルボキシレート(Ba/AC)等のアゾ化合物、N,N‘−ジニトロソペンタメチレンテトラアミン(DPT)等のニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH),4,4オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)等のヒドラジン誘導体が使用できる。無機系の発泡剤としては、重炭酸ナトリウム(重曹)、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム等が使用できる。これらの発泡剤は単独で用いても2種類以上組み合わせても良い。
【0055】
中でも、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4,4オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、N,N‘−ジニトロソペンタメチレンテトラアミン(DPT)は特に好ましい。
【0056】
発泡剤の配合量は、ポリマー成分の100質量部に対して1〜5質量部の範囲内とされることが好ましい。該配合量が1質量部以上である場合、良好な発泡が可能である。一方該配合量が5質量部以下である場合、加硫阻害で加硫が不十分になることによる加工性の悪化や電気抵抗値の環境依存性の増大という問題が生じ難い。発泡剤の該配合量は、2質量部以上であることがより好ましく、また、4質量部以下であることがより好ましい。
【0057】
発泡助剤としては、たとえば、サリチル酸等の有機酸系助剤の他、尿素系助剤等が使用可能である。
【0058】
本発明において、発泡剤が配合された導電性ゴム組成物が構成する導電性ゴム層、すなわちスポンジゴム層が形成される場合、該スポンジゴム層のアスカーC硬度は、70°以下であることが好ましい。この場合、スポンジゴム層の耐クッション性が良好であり、スポンジローラとしたときに十分なニップ幅が得られることで、安定した転写性または帯電性を付与することができ、良好な画像が得られる。スポンジゴム層のアスカーC硬度は、60°以下であることがより好ましい。一方、スポンジゴム層のアスカーC硬度が低すぎると、該スポンジゴム層の圧縮永久歪が大きくなったり、耐久性が低下する場合がある。このような観点では、スポンジゴム層のアスカーC硬度が15°以上、さらに20°以上であることが好ましい。
【0059】
本発明の導電性ゴムローラは、支持軸と、該支持軸の外周に形成された単層または複層のゴム層とを備え、ゴム層のうち少なくとも1層が上述したいずれかの導電性ゴム層であることが好ましい。これにより、耐汚染性および製造安定性の向上、電気抵抗値の電圧依存性や環境依存性の低減、通電上昇の低減を実現できる。
【0060】
図1および図2は、本発明に係る導電性ゴムローラの構成の例を示す断面図である。導電性ゴムローラ1は、支持軸11の外周に、本発明において用いられる導電性ゴム層12がゴム層として形成された構成を有する。また導電性ゴムローラ2は、支持軸21の外周に、本発明において用いられる導電性ゴム層22,23がゴム層として形成された構成を有する。図2においては、ゴム層を構成する2層がいずれも本発明で用いられる導電性ゴム層である構成を示しているが、たとえば、導電性ゴム層23に代えて、カーボン導電性の層を形成しても良い。
【0061】
また、ゴム層の外側には、たとえば、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等からなる樹脂層を形成しても良い。この場合、導電性ゴムローラの表面の摩擦抵抗や粘着力が低減され、トナー離型性やクリーニング性がより良好となる。
【0062】
また、樹脂層とゴム層との電気抵抗値はできるだけ近接することが好ましい。この場合、樹脂層の厚みを変えた場合の電気抵抗値の変動が小さく製造工程管理の上で好都合である。
【0063】
本発明においては、導電性ゴムローラの表面を紫外線照射等によって炭化させ、摩擦抵抗や粘着力を低減する表面処理も有用である。このような表面処理を行なう場合、感光体、転写ベルト、トナー、クリーニングプレート等に対する摩擦抵抗や粘着力が低減されるため、紙汚れ、導電性ゴムローラからの汚染を防止できる。
【0064】
本発明においては、ゴム層として導電性ゴム層以外の層を設けても良く、該導電性ゴム層が導電性ゴムローラの最表面でない部位に形成されていても、耐汚染性および製造安定性の向上効果、電気抵抗値の電圧依存性の低減効果を得ることができるが、特に、耐汚染性をより良好に確保するためには、本発明における導電性ゴム層を導電性ゴムローラの最表面に形成するか、該導電性ゴム層よりも外側には樹脂層のみを形成することが好ましい。
【0065】
本発明の導電性ゴムローラは、たとえば以下の方法で製造することができる。なお以下では、ゴム層が導電性ゴム層の単層からなり、該ゴム層の外周に樹脂層を設ける場合を例に説明する。まず、導電性を有する支持軸の外周に導電性ゴム層を形成する。導電性ゴム層は、たとえば以下の方法で製造することができる。
【0066】
すなわち、導電性ゴム組成物の配合成分を、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等で素練りしてゴムコンパウンドを調製し、これを円筒形に押出し成型する。これをたとえば0.4MPaの荷重下で、150℃で50分間蒸気加硫し、導電性ゴムローラの支持軸となるステンレス製等の芯金に挿入した後、ゴム表面を研磨して、円筒形のゴム層を得ることができる。または、上記のゴムコンパウンドを芯金に被せた後に、プレス加硫成型して円筒形のゴム層を形成し、ゴム表面を研磨しても良い。加硫剤として有機過酸化物を用いる場合には、密閉により空気と遮断した状態で加硫を行なうことが好ましい。
【0067】
ゴム表面の研磨は、たとえば、砥石等を用いた乾式研磨機や湿式研磨機等を用いて行なうことができる。研磨により、寸法精度が良く表面形状が均一なゴム層を形成することができる。
【0068】
支持軸とゴム層とは接着しても良いが、リサイクル性の向上や製造コストの低減の点で、ゴム層の内径を支持軸の外径の80〜95%程度とし、その圧入しろを用いて支持軸にゴムを圧入して保持する方式がより好ましい。また、支持軸とゴム層とを接着する場合には、電気抵抗値の上昇を防止するために、導電性の接着剤を用いることが好ましい。
【0069】
次に、該ゴム層の外周に、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を、所定の乾燥厚みとなるように、スプレー塗装、静電塗装、ディッピング塗装等の方法や、チューブ形状にした樹脂をゴム層の上に被覆する方法等によって形成し、たとえば150℃の雰囲気温度で1時間乾燥させ、樹脂層を形成する。以上の方法で本発明の導電性ゴムローラを製造することができる。
【0070】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
<実施例1>
アクリロニトリル−ブタジエンゴムの60質量部と、エチレン−プロピレンゴムの40質量部と、アルカリ金属塩を含むポリアルキレンオキサイド成分の15質量部と、をオープンローラーで素練りし、ステアリン酸の1質量部、亜鉛華の5質量部、カーボンブラックの10質量部、表面積195m2/gのシリカの5質量部、軟化剤としてナフテン系オイルの10質量部、加硫剤として硫黄の1質量部、加硫促進剤1の2質量部、加硫促進剤2の1.5質量部、を順にオープンローラーに投入し、混練りしてゴムコンパウンドを得た。
【0072】
このゴムコンパウンドを円筒形に押出成形し、蒸気加硫缶にて0.5Mpaの蒸気圧にて1時間加硫させた後、電気乾燥炉により160℃、2時間の2次加硫を行って円筒型のゴムチューブを得た。該ゴムチューブを冷却した後、適切な長さにカットし、導電性ゴムローラの支持軸となる直径8mmのステンレス製の芯金に挿入した後、ゴム表面を砥石研磨機によりゴム外径16mmに研磨することにより導電性ゴムローラを得た。
【0073】
<実施例2〜11、比較例1〜11>
表1〜4に示す配合(単位:質量部)で、実施例1と同様にして導電性ゴムローラを得た。なお実施例11,比較例11においては、配合成分のオープンローラーへの投入時に、発泡剤の2質量部を最後に投入した。
【0074】
<実施例12>
表5に示す配合(単位:質量部)で、内層および外層の2層からなるゴム層を有する導電性ゴムローラを得た。
【0075】
まず、実施例1と同様にして、内層用ゴムコンパウンドおよび外層用ゴムコンパウンドを得た。なお内層用ゴムコンパウンドの調製においては、配合成分のオープンローラーへの投入時、発泡剤の2質量部を最後に投入した。
【0076】
次に、内層用ゴムコンパウンドおよび外層用ゴムコンパウンドを円筒形に押出成形し、それぞれ、蒸気加硫缶にて0.5Mpaの蒸気圧にて1時間加硫させた後、電気乾燥炉により160℃、2時間の2次加硫を行って円筒型のゴムチューブを得た。該ゴムチューブを冷却した後、適切な長さにカットした。内層用のゴムチューブを、導電性ゴムローラの支持軸となる直径8mmのステンレス製の芯金に挿入した後、ゴム表面を砥石研磨機によりゴム外径16mmに研磨した。続いて、外層用のゴムチューブを圧入した後、ゴム表面を砥石研磨機により直径16.8mmに研磨し、2層のゴム層が形成された導電性ゴムローラを得た。
【0077】
<性能評価>
(圧縮永久歪)
JIS K 6262に基づいて行なった。上記の工程において、150℃で15分間加硫して得られた直径18mm×高さ12.5mmのテストピースを測定サンプルとした。該測定サンプルにつき、圧縮割合:25%、試験温度:70℃、試験時間:24時間の条件で圧縮永久歪を測定した。
【0078】
(電気抵抗値)
図3は、実施例および比較例における電気抵抗値の測定方法について説明する模式図である。図3に示すように、直径30mmの回転金属ロール31に、導電性ゴムローラ32を両端0.5kg、合計1kgで当接し、抵抗計33(商品名:R8340A、アドバンテスト社製)を用いて、1000Vの電圧を印加し、10秒間の測定における体積抵抗値の最大値と最小値との平均値を電気抵抗値とした。
【0079】
電気抵抗値の環境依存性
上記の電気抵抗値は、LL(温度10℃、湿度15%)、NN(温度22℃、湿度55%)、HH(温度28℃、湿度85%)の各環境下に24時間以上放置した導電性ゴムローラについてそれぞれ測定した。
【0080】
測定結果から、下記の式、
(環境依存性指数)=(LL環境下の抵抗値(logΩ))−(HH環境下の抵抗値(logΩ))
に従って、環境依存性指数を算出した。
【0081】
(耐汚染性)
上記で作製した導電性ゴムローラを感光体に当接して荷重をかけた状態で、温度50℃、湿度90%の環境に1週間放置した。放置後の感光体を用いて画像評価を行なった。導電性ゴムローラを当接した部分による色抜け等の異常画像が認められなかった場合を「良」、色抜け等の異常画像が画像評価の1枚目のみ認められ2枚目以降は発生しない場合を「やや不良」、色抜け等の異常画像が画像評価の5枚目以降にも発生する場合を「不良」とした。
【0082】
(アスカーC硬度)
JIS K 6253に準じて、導電性ゴムローラをアスカーC硬度計に1kgで当接させた後、5秒後の硬度を測定した。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
【表4】

【0087】
【表5】

【0088】
注1:NBRは、日本ゼオン製のニトリルゴム「DN401」である。
注2:EPDMは、三井化学製のエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体「EPT4021」である。
注3:ポリアルキレンオキサイド成分は、LiCF3SO3を10質量%含有するエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドである。
注4:カーボンブラックは、旭カーボン製「アサヒサーマル」である。
注5:シリカ1は、日本シリカ製「ニップシールVN3」(BET比表面積:195m2/g)である。
注6:シリカ2は、デグサジャパン製「カープレックス#67」(BET比表面積:429m2/g)である。
注7:シリカ3は、デグサジャパン製「カープレックス#80」(BET比表面積:193m2/g)である。
注8:シリカ4は、日本シリカ製「ニップシールER」(BET比表面積:90m2/g)である。
注9:シリカ5は、デグサジャパン製「カープレックス#1120」(BET比表面積:109m2/g)である。
注10:ステアリン酸は、旭電化製「脂肪酸SA−200」である。
注11:亜鉛華は、正同化学製「亜鉛華特号、正同化学」である。
注12:軟化剤は、日本サン石油製「サンセン450」である。
注13:離型剤は、信越化学社製のシリコンオイル「KF96−50」である。
注14:硫黄は、鶴見化学製「サルファックスA」である。
注15:加硫促進剤1は、川口化学製「アクセルDM」である。
注16:加硫促進剤2は、川口化学製「アクセルTT」である。
注17:発泡剤は、永和化成製のOBSH系発泡剤「ネオセルボン#1000M」である。
注18:過酸化物は、ジクミルパーオキサイドである。
【0089】
実施例および比較例で用いたシリカ1〜5の比表面積と吸水率とを表6に示す。なお、シリカの吸水率は、各シリカを120℃で4時間乾燥させた後の質量を初期質量とし、該乾燥後、温度28℃、湿度85%の環境下に12時間放置した後の質量を放置後質量として、下記の式、
吸水率(%)=[{(放置後質量)−(初期質量)}/(初期質量)]×100
に従って求めた。
【0090】
【表6】

【0091】
図4は、実施例1〜4および比較例1,2で測定された体積抵抗値の結果を示す図である。なお図中の配合量(phr)とは、ポリマー成分100質量部に対する配合量(質量部)を示す。表1および図4に示す結果から、ポリマー成分の100質量部に対してポリアルキレンオキサイド成分を15質量部配合し、さらにBET比表面積が195m2/gのシリカを配合する場合においては、ポリマー成分100質量部に対するシリカの配合量が多くなる程体積抵抗値の低減効果が良好であるが、20質量部を超えると電圧抵抗値の環境依存性が大きくなり、使用に適さなくなることが分かる。
【0092】
表2に示す結果から、シリカを配合しない場合には、ポリアルキレンオキサイド成分の配合量が多くなるに従って、体積抵抗値は低減されていくが、同時に耐汚染性が悪化していくことが分かる。すなわち、シリカを配合せず、ポリアルキレンオキサイド成分のみで電気抵抗値を低減しようとすると耐汚染性を十分確保できないことが分かる。また、ポリアルキレンオキサイド成分を配合せずシリカのみを配合した比較例7においては、ポリアルキレンオキサイド成分およびシリカを配合しない比較例3と比べて電気抵抗値が高くなっており、ポリアルキレンオキサイド成分を配合せずシリカのみを配合すると、該シリカによって電気抵抗値が上昇してしまうことが分かる。
【0093】
表1および表3に示す結果から、本発明の所定のポリアルキレンオキサイド成分およびシリカを配合することにより、ポリマー成分の組成を変えても電気抵抗値の低減効果と耐汚染性の確保とを両立できることが分かる。
【0094】
図5は、実施例8〜10および比較例9,10で測定された体積抵抗値の結果を示す図である。表4および図5に示す結果から、BET比表面積が90m2/g、109m2/gのシリカをそれぞれ配合した比較例9,10においては、シリカを配合しない比較例8と比べて電気抵抗値の低減効果をほとんど得られていないが、BET比表面積が170m2/g以上、具体的には、193m2/g、195m2/g、429m2/gのシリカをそれぞれ配合した実施例8,9,10においては、電気抵抗値の低減効果が顕著に得られていることが分かる。
【0095】
表5に示す結果から、スポンジゴムにおいても、ポリアルキレンオキサイド成分とシリカとを配合した実施例11においては、ポリアルキレンオキサイド成分のみを配合した比較例11と比べ、電気抵抗値の低減効果および耐汚染性が良好に得られたことが分かる。また、スポンジゴムとソリッドゴムとの2層からなるゴム層を設けた実施例12においても、ポリアルキレンオキサイド成分とシリカとを配合したことにより、良好な電気特性と耐汚染性とを確保できることが分かる。
【0096】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の導電性ゴムローラは、たとえば電子写真方式による複写機、FAX、プリンター等の画像形成装置に対して好適に適用可能であり、より詳細には、上記のような画像形成装置の感光体、転写ベルト等に接触させて使用する導電性ゴムローラとして好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係る導電性ゴムローラの構成の例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る導電性ゴムローラの構成の例を示す断面図である。
【図3】実施例および比較例における電気抵抗値の測定方法について説明する模式図である。
【図4】実施例1〜4および比較例1,2で測定された体積抵抗値の結果を示す図である。
【図5】実施例8〜10および比較例9,10で測定された体積抵抗値の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0099】
1,2,32 導電性ゴムローラ、11,21 支持軸、12,22,23 導電性ゴム層、31 回転金属ロール、33 抵抗計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ゴム層を有する導電性ゴムローラであって、
ポリマー成分の100質量部と、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩ならびにポリアルキレンオキサイドからなるポリアルキレンオキサイド成分の1〜20質量部と、BET比表面積が170m2/g以上であるシリカの1〜20質量部と、を含む導電性ゴム組成物を前記導電性ゴム層に用いてなる、導電性ゴムローラ。
【請求項2】
前記シリカの吸水率が、0.3〜1.0質量%の範囲内である、請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
前記ポリマー成分が、ジエン系ゴムおよび非ジエン系ゴムから選択される少なくとも1種からなる、請求項1または2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
前記ポリマー成分は、ジエン系ゴム成分と非ジエン系ゴム成分とからなり、前記ポリマー成分に占める前記ジエン系ゴム成分の割合が、60〜90質量%の範囲内である、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。
【請求項5】
前記導電性ゴム組成物のアスカーC硬度が、15〜70°の範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。
【請求項6】
前記導電性ゴム組成物は、前記ポリマー成分の100質量部に対して発泡剤を1〜5質量部の範囲内でさらに含み、前記導電性ゴム組成物が構成する前記導電性ゴム層のアスカーC硬度が70°以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。
【請求項7】
前記ポリアルキレンオキサイド成分中の前記アルカリ金属塩および/または前記アルカリ土類金属塩の含有量が、1〜20質量%の範囲内である、請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。
【請求項8】
支持軸と、前記支持軸の外周に形成された単層または複層のゴム層とを備え、前記ゴム層のうち少なくとも1層が前記導電性ゴム層である、請求項1〜7のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−152201(P2008−152201A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342800(P2006−342800)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】