説明

導電性フィルム

【課題】ディスプレイ用電極やタッチパネル用電極用途で長期間安定に動作できる、導電性フィルムの提供。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも片面に、下記(a)〜(c)を含有する組成物から形成される透明導電塗膜層を積層して、温度60℃湿度90%で240時間処理した後の表面抵抗変化率が150%以下である透明導電性フィルムを得る。(a)下記式で表される単位を主たる繰返し単位とするポリカチオン状のポリチオフェンとポリアニオンとからなる導電性高分子、(b)該導電性高分子の固形重量を基準として10〜1000重量%の割合で添加された、分子中に光硬化性官能基を3以上及びポリオキシエチレン単位を含有し、そのオキシエチレン単位の合計の繰返し単位数が10〜30である水溶性光硬化性化合物、(c)該導電性高分子の固形分に対して10〜1000重量%の割合で添加された、グリシジル基を有するアルコキシシラン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性フィルムに関するものである。さらに詳しくは、透明性および導電性に優れるだけでなく、その耐湿熱性にも優れ、液晶ディスプレイ(LCD)、透明タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極や電磁波シールド材として好適に使用することができる透明導電性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として透明導電性フィルムが好適に用いられている。かかる透明導電性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等の透明フィルム表面の少なくとも片面に、酸化インジウム(In)、酸化錫(SnO)、InとSnOの混合焼結体(ITO)等を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスによって設けたものがよく知られている。
【0003】
しかし、通常透明導電性フィルムは、ウェブ状での連続加工や打ち抜き加工があり、また、表面加工中も曲げられた状態で用いられたり、また保管されたりするため、上記ドライプロセスにより得られる透明導電性フィルムは、該加工工程や保管している間にクラックが発生して表面抵抗が増大したりすることがあった。
【0004】
一方、透明基材フィルムの上に導電性高分子を塗布すること(ウエットプロセス)により形成される透明導電塗膜層は、膜自体に柔軟性があり、クラックなどの問題は生じがたい。また、導電性高分子を塗布することによって透明導電性フィルムを得る方法は、ドライプロセスとは異なって製造コストが比較的安く、またコーティングスピードも一般的に速いので生産性に優れるという利点もある。このような導電性高分子の塗布によって得られる透明導電性フィルムは、これまで一般的に用いられてきたポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等は、開発の初期段階では高い導電性が得られないために帯電防止用途などに使用が限定されていたり、導電塗膜層自体の色相が問題となったりしていた。しかし、最近では製法の改良などによりこれらの問題も改善されてきている。例えば、3,4−ジアルコキシチオフェンをポリアニオン存在下で酸化重合することによって得られるポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリアニオンとからなる導電性高分子(特許文献1)は、近年の製法の改良(特許文献2および特許文献3)などにより、高い光線透過率を保ったまま非常に低い表面抵抗を発現している。
【0005】
しかしながら、これらの導電性高分子を透明導電塗膜層として用いた導電性フィルムは、その耐湿熱性が未だ不十分であり、液晶ディスプレイ(LCD)透明タッチパネルなどに用いる場合には問題となっている。
【0006】
一方、導電性高分子の耐水性を改良する目的で種々のバインダーを併用する方法が提案されているが(特許文献4)、導電性フィルムの耐湿熱性との関係については記載されていない。
【0007】
【特許文献1】特開平1−313521号公報
【特許文献2】特開2002−193972号公報
【特許文献3】特開2003−286336号公報
【特許文献4】特開2005−281704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記背景技術を鑑みてなされたもので、その目的は、ディスプレイ用電極やタッチパネル用電極の用途においても十分に長期間安定に動作できる、耐環境性(耐湿熱性)に優れた導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、水溶性の多官能光硬化性化合物を併用した場合、実用上十分な耐湿熱性を有する導電性フィルムが得られることを見出し本発明に到達した。
【0010】
かくして、本発明によれば、「基材フィルムの少なくとも片面に、
(a)下記一般式で表される単位を主たる繰返し単位とするポリカチオン状のポリチオフェンとポリアニオンとからなる導電性高分子、
【化1】

(式中、RおよびRは、相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
(b)該導電性高分子の固形重量を基準として10〜1000重量%の割合で添加された、分子中に光硬化性官能基を3以上およびポリオキシエチレン単位を2〜4個含有し、そのオキシエチレン単位の合計の繰返し単位数が10以上30以下である水溶性光硬化性化合物、および、
(c)該導電性高分子の固形分に対して10〜1000重量%の割合で添加された、グリシジル基を有するアルコキシシラン化合物、
を含有する組成物から形成されてなる透明導電塗膜層が積層された導電性フィルムであって、該導電性フィルムの、温度60℃かつ湿度90%で240時間処理した後の表面抵抗の変化率が150%以下である導電性フィルム。」が提供される。
【0011】
また好ましい態様として、
・光硬化性官能基が(メタ)アクリレート基であること、
・導電性フィルムの全光線透過率が60%以上で、かつ表面抵抗10〜1×10Ω/□の範囲にあること、
・基材フィルムと透明導電塗膜層との間に、ポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂を構成成分として含有するアンカーコート層を有すること、
・基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートで構成されること、
の少なくともいずれか一つを具備する導電性フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導電性フィルムは、透明導電塗膜層を形成する材料として水溶性でかつ光硬化性官能基を3個以上有する光硬化性化合物を併用しているので、得られる透明導電塗膜層は優れた耐湿熱性を呈する。また、本発明で用いられる水溶性の光硬化性化合物は、その使用量が少なくても十分な効果が得られるので、透明性と導電性とを維持しながら優れた耐湿熱性を兼備させることができる。したがって、本発明の導電性フィルムは上述の特性を生かして、透明タッチパネル、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンス素子等の透明電極や電磁波シールド材として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の導電性フィルムを、まず図面を用いて説明する。図1は、本発明の導電性フィルムの断面図、すなわち層構成の一例を示すものである。図1中、符号1は基材フィルム、符号2は必要に応じて設けられるアンカーコート層、符号3は透明導電塗膜層、符号4は必要に応じて設けられるハードコート層を示す。図1から分かるように、本発明の導電性フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に必要に応じてアンカーコート層を設けた上に透明導電塗膜層が積層されたものである。このような構成を有するものであれば、例えばハードコート層等の他の機能層が、本発明の目的を損なわない限りにおいて形成されていてもよく、図1(b)には透明導電塗膜層を形成した面とは反対側にアンカーコート層およびハードコート層が設けられた例が示されている。
【0014】
このように本発明の導電性フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に、後述する組成物から形成されてなる透明導電塗膜層が積層されていることが必要である。さらに、温度60℃かつ湿度90%の条件下で240時間処理した後の下記で定義される表面抵抗の変化率が150%以下であることが必要である。この変化率が150%を超える場合には耐環境性が不十分となり、長期間安定に使用することが難しくなる。このような変化率は、後述する光硬化性化合物やアルコキシシラン化合物の使用量を適宜設定することにより容易に調整できる。
【0015】
本発明の導電性フィルムは、さらにその全光線透過率(JIS K7150に準拠して測定)が60%以上、好ましくは65%以上、特に70%以上であることが望ましい。かくすることにより、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として、好適に使用することが可能となる。なお、この全光線透過率は、後述する基材フィルムや透明導電塗膜層の膜厚を適宜設定することにより調整できる。
【0016】
また、本発明の導電性フィルムの透明導電塗膜層の表面抵抗は10〜1×10Ω/□の範囲にあることが、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として用いたときの電極としての機能や、電磁波シールド特性の観点から好ましい。さらに好ましい表面抵抗は10〜5×10Ω/□の範囲である。
【0017】
以下、本発明の導電性フィルムを形成する透明導電塗膜層について、さらに詳述する。
本発明における透明導電塗膜層は、表面抵抗を下げられ、かつ透明性も具備するもので、下記一般式
【化2】

で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェン(以下、“ポリ(3,4−ジ置換チオフェン)”と称することがある)と、ポリアニオンとから構成される導電性高分子を含有する組成物から形成される。すなわち、この導電性高分子はポリ(3,4−ジ置換チオフェン)とポリアニオンとの複合化合物である。
【0018】
この導電性高分子を構成するポリ(3,4−ジ置換チオフェン)のRおよびRは、相互に独立して水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数が1〜12のアルキレン基を表す。RおよびRが一緒になって形成される、置換基を有してもよい炭素数が1〜12のアルキレン基の代表例としては、1,2−アルキレン基(例えば、1,2−シクロヘキシレンおよび2,3−ブチレンなど)があげられる。また、RおよびRが一緒になって形成される炭素数が1〜12のアルキレン基の好適な例としては、メチレン、1,2−エチレンおよび1,3−プロピレン基があげられ、1,2−エチレン基が特に好適である。具体例としては、アルキル置換されていてもよいメチレン基、炭素数1〜12のアルキル基もしくはフェニル基で置換されていてもよい1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基が挙げられる。
【0019】
一方、該導電性高分子を構成するポリアニオンとしては、例えば高分子状カルボン酸類(例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸など)、高分子状スルホン酸(例えばポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸など)などがあげられる。これらの高分子状カルボン酸またはスルホン酸類は、ビニルカルボン酸またはビニルスルホン酸類と他の重合可能な低分子化合物、例えばアクリレート類、スチレンなどとの共重合体であってもよい。これらのポリアニオン中でも、ポリスチレンスルホン酸およびその全べてもしくは一部が金属塩であるものが好ましく用いられる。
【0020】
本発明の透明導電塗膜層を形成するための組成物(コーティング組成物)は、上述の導電性高分子を水に分散させた分散液として用いられるが、得られる透明導電塗膜層の耐湿熱性を向上させるために、光硬化性官能基を3以上およびポリオキシエチレン単位を含有し、そのオキシエチレン単位の合計の繰返し単位数が10〜30、好ましくは15〜25である水溶性光硬化性化合物を、該導電性高分子の固形重量を基準として10〜1000重量%、好ましくは20〜500重量%含有している必要がある。なお、水溶性光硬化性化合物のポリオキシエチレン単位の数は、分子中に1個でも構わないが、2〜4個に分かれて存在することが好ましい。
【0021】
ここで、水溶性光硬化性化合物中の光硬化性官能基の数が2以下の場合には、硬化後の架橋密度が不十分となって耐湿熱性の改善効果が不十分となるので好ましくない。一方、光硬化性官能基の数の上限は特に制限する必要はないが、該化合物の入手性やコストの観点から通常は6以下のものが用いられる。
【0022】
また、分子中のオキシエチレン単位の合計繰返し単位数が10未満の場合には水溶性が不十分となってコーティング組成物の安定性が悪化するので好ましくなく、逆に30を超える場合には、光硬化性化合物の分子量が大きくなりすぎるために架橋密度が低下し、その結果耐湿熱性の改善効果が不十分となるので好ましくない。
【0023】
本発明において上記光硬化性化合物を架橋反応/硬化させるためには光重合開始剤を添加するのが好ましい。光重合開始剤の例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フロオレノン、アントラキノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0024】
かかる光重合開始剤の添加量は10重量%以下であることが好ましい。添加量が10重量%を超えてしまうと、光重合開始剤が可塑剤として働きハードコート層の強度を低くしてしまう恐れがある。
【0025】
さらに、該水溶性の光硬化性化合物の添加量が、前記導電性高分子の固形重量を基準として10重量%未満の場合には、得られる透明導電塗膜層の耐湿熱性が不十分となるので好ましくなく、逆に1000重量%を超える場合には得られる透明導電塗膜層の導電性能が悪化するので好ましくない。
【0026】
なお、光硬化性官能基としては、例えばアクリル基、メタクリル基、エポキシ基、オキセタン基などを例示することができるが、なかでもアクリル基およびメタクリル基(以下、総称して(メタ)アクリル基と称することがある)が好ましい。
【0027】
かかる水溶性の光硬化性化合物としては、例えば下記化合物を好ましいものとして例示することができる。
【化3】

【化4】

【化5】

【0028】
また、透明導電塗膜層を形成するための組成物は、上述の導電性高分子の固形重量を基準として、さらにグリシジル基を有するアルコキシシランを10〜1000重量%、好ましくは20〜300重量%、さらに好ましくは30〜200重量%の割合で含有している必要がある。該アルコキシシランの割合が10重量%未満の場合には得られる透明導電塗膜層の塗膜強度や耐水性・耐溶剤性が低下し、一方、1000重量%を超える場合には得られる透明導電塗膜層の導電性能が低下するので好ましくない。
【0029】
かかるアルコキシシランとしては、例えばグリシドキシ基を有するトリアルコキシシランを例示することができるが、なかでも、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0030】
なお、該アルコキシシランの加水分解/縮合を効率よく進行させるためには触媒を併用することが好ましい。触媒としては酸性触媒または塩基性触媒のいずれをも用いることができる。酸性触媒としては、酢酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸、しゅう酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸等が好適である。一方塩基性触媒としてはアンモニア、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の有機アミン化合物、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物などが好適である。
【0031】
さらに必要に応じて、溶解性や基材フィルムへの濡れ性を改善する目的、固形分濃度を調整する目的などで、水と相溶性のある適当な溶媒を添加することができる。例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)、アミド類(ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド)などが好ましく用いられる。
【0032】
また、上記のコーティング組成物の基材フィルムに対する濡れ性を向上させる目的で、少量の界面活性剤を加えてもよい。好ましい界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、およびフッ素系界面活性剤(例えばフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、パーフルオロアルキル4級アンモニウム塩、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなど)があげられる。
さらに、本発明の目的を阻害しない範囲内で、バインダー樹脂を併用しても構わない。
【0033】
つぎに、本発明の透明導電塗膜層を形成する際の塗布方法としては、それ自体公知の方法を採用できる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などが好ましく挙げられる。バインダー樹脂を併用した場合には、透明導電塗膜層の塗設はそれぞれの成分を含む塗液を基材フィルムに塗布し、加熱乾燥させて塗膜を形成させる。加熱条件としては80〜160℃で10〜120秒間、特に100〜150℃で20〜60秒間が好ましい。次いで、紫外線照射または電子線照射を行なう。紫外線の照射量としては通常10〜2000mJ/cm、好ましくは50〜1500mJ/cm、さらに好ましくは100〜1000mJ/cmの範囲である。
【0034】
また、透明導電塗膜層を形成するためのコーティング組成物を基材フィルム上に塗布する際には、必要に応じて、さらに密着性・塗工性を向上させるための予備処理として、コロナ放電処理、プラズマ放電処理などの物理的表面処理を施しても構わない。
【0035】
透明導電塗膜層の厚みは0.01〜0.30μmの範囲、特に0.02〜0.25μmの範囲であることが好ましい。該塗膜層の厚さが薄すぎると十分な導電性が得られないことがあり、逆に厚すぎると全光線透過率が不足したり、ブロッキングを起こしたりすることがある。
【0036】
本発明においては、必要に応じて、前記透明導電塗膜層と基材フィルムとの間にアンカーコート層を設けてもよい。かかるアンカーコート層を形成する成分は、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール/ポリエチレン共重合体など、透明性を備えるものであれば特に制限はされないが、密着性の観点から、特にポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂の両方を構成成分として含有するものが好ましい。
【0037】
ここで用いられるポリエステル樹脂も特に制限はなく、以下に示す多塩基酸とポリオールとからなるポリエステルを例示することができるが、特に水(多少の有機溶剤を含有していてもよい)に可溶性または分散性のポリエステルが好ましい。
【0038】
ポリエステル樹脂の多塩基酸成分としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等を挙げることができる。なかでも、これら酸成分を2種類以上含有する共重合ポリエステルが好ましい。なお、若干量であればマレイン酸、イタコン酸等の不飽和多塩基酸成分や、p−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。
【0039】
またポリオール成分としては例えば、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ジメチロールプロパン等や、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0040】
一方オキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂も、水(多少の有機溶剤を含有していてもよい)に可溶性または分散性のアクリル樹脂が好ましい。かかるオキサゾリン基とポリアルキレンオキシ鎖とを有するアクリル樹脂としては例えば、以下に示すモノマーを共重合成分として含むものをあげることができる。
【0041】
まずオキサゾリン基を有するモノマーとしては、例えば2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中で2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手しやすく好適である。かかるオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を用いることによりアンカーコート層の凝集力が向上し、透明導電塗膜層との密着性がより強固になる。さらにフィルム製膜工程内や透明導電塗膜層加工工程における金属ロールに対する耐擦傷性を基材フィルム表面に付与できる。なお、オキサゾリン基を含有するモノマーの含有量は、該アクリル樹脂中の含有量として2〜40重量%、好ましくは3〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
【0042】
次にポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸のカルボキシル基にアルキレンオキシドを付加反応させたものを挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖はポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド等を挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位は3〜100であることが好ましい。かかるポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を用いることによりアンカーコート層中のポリエステル樹脂とアクリル樹脂の相溶性がポリアクリレンオキシド鎖を含有しないアクリル樹脂と比較してよくなり、アンカーコート層の透明性を向上させることができる。ここでポリアルキレンオキシド鎖の繰返し単位が3より小さいとポリエステル樹脂とアクリル樹脂との相溶性が低下してアンカーコート層の透明性が低下し、逆に100より大きいとアンカーコート層の耐湿熱性が下がり、高湿度、高温下での透明導電塗膜層との密着性が悪化する。なお、ポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーの含有量は、該アクリル樹脂中の含有量として3〜40重量%、好ましくは4〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%の範囲である。
【0043】
アクリル樹脂のその他の共重合成分としては、例えば以下のモノマーを挙げることができる。すなわちアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等のカルボキシ基またはその塩を有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、アクリロイルモルフォリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマル酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等であるが、これらのモノマーに限定されるものではない。
【0044】
アンカーコート層を形成するポリエステル樹脂のアンカーコート層中の含有割合は5〜95重量%であることが好ましく、特に50〜90重量%であることが好ましい。アンカーコート層を形成するオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂のアンカーコート層中の含有割合は5〜90重量%であることが好ましく、特に10〜50重量%であることが好ましい。ポリエステル樹脂が95重量%を超える、もしくはオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂が5重量%未満になるとアンカーコート層の凝集力が低下し、透明導電塗膜層の密着性が不十分になる場合がある。
【0045】
上記アンカーコート層(以下「塗膜」ということがある)を基材フィルム上に形成させるために、上記の成分を水溶液、水分散液または乳化液等の水性塗液の形態として使用することが好ましい。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記成分以外に他の成分、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を添加することもできる。特に滑剤を添加することにより、耐ブロッキング性をさらに良好なものとすることができる。
【0046】
アンカーコート層の塗工に用いる水性塗液の固形分濃度は通常20重量%以下であるが特に1〜10重量%であることが好ましい。この割合が1重量%未満であると、基材フィルムへの濡れ性が不足することがあり、一方20重量%を超えると塗液の貯蔵安定性やアンカーコート層の外観が悪化することがある。
【0047】
アンカーコート層の膜厚は、十分な密着向上効果を発現しかつ透明性を損なわない範囲であれば特に制限されないが、通常は0.001〜0.10μm、好ましくは0.005〜0.090μm、特に好ましくは0.01〜0.085μmの範囲が適当ある。
【0048】
次に本発明における基材フィルムは特に制限する必要はないが、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート(以下、PETと称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下、PENと称することがある。)などのポリエステル(全酸成分を基準として20モル%以下、好ましくは10モル%以下の第3成分を共重合していてもよい)やアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボニル基等の官能基で一部変性した樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などからなるフィルムが好適である。これらの基材フィルムのうち、機械特性や透明性、生産コストの点からポリエステル(PET、PENおよびそれらの共重合ポリエステル)フィルムが特に好ましい。基材フィルムの厚みも特に制限されないが、500μm以下が好ましい。500μmより厚い場合には剛性が強すぎて、得られたフィルムをディスプレイなどに貼付ける際の取扱い性が低下しやすい。
【0049】
基材フィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合には、アンカーコート層を設けるための上述の水性塗料塗布は、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で実施するのが好ましい。特に、配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。
【0050】
ここで配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向、また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。
【0051】
なかでも未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムにアンカーコート層を形成するための水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0052】
アンカーコート層を形成するための水性塗液を基材フィルムに塗布する際には、密着性や塗布性を向上させるための予備処理として、フィルム表面にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。
【0053】
かかる界面活性剤は、上記アンカーコート層を形成する水性塗液の基材フィルムへの濡れを促進するものであり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪族エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は塗膜を形成する組成物中に0.1〜10重量%含まれていることが好ましい。
【0054】
アンカーコート層を形成する際の塗布方法としては、それ自体公知の方法を採用すればよい。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などを例示することができ、これらの方法を単独または組み合わせて用いることができる。なお、塗膜は必要に応じてフィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0055】
本発明の導電性フィルムは、上述のとおり基材フィルムの少なくとも片面に前述の透明導電塗膜層が積層されていることが必要であるが、該透明導電塗膜層が形成される側と反対の面には必要に応じてアンカーコート層、ハードコート層などの塗膜を設けることもできる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法にしたがった。
(1)膜厚
アンカーコート層および透明導電塗膜層の厚みは、反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名「FE−3000」)を用いて波長300〜800nmの反射率を測定し、代表的な屈折率の波長分散の近似式としてn−k Cauchyの分散式を引用し、スペクトルの実測値とフィッティングさせることにより膜厚を求めた。
(2)表面抵抗
三菱化学社製Lorester MCP−T600を用いて、JIS K7194に準拠して測定した。測定は任意の箇所を5回測定し、それらの平均値とした。
(3)表面抵抗変化率
表面抵抗を測定したサンプルを、60℃×90%の恒温恒湿層に入れて240時間の処理を行った後に再度表面抵抗を測定し、下記式にしたがって表面抵抗変化率を算出した。
表面抵抗変化率(%)=(処理後の表面抵抗/処理前の表面抵抗)×100
この式で表される表面抵抗変化率が小さいほど耐湿熱性が良好であることを意味する。
(4)全光線透過率
JIS K7150にしたがい、スガ試験機(株)製のヘイズメーターHCM−2Bにて測定した。
【0057】
[実施例1]
<基材フィルムおよびアンカーコート層の形成>
溶融ポリエチレンテレフタレート(〔η〕=0.62dl/g、Tg=78℃)をダイより押し出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍延伸した後、その両面に下記のポリエステル60部、アクリル30部、添加剤5部、濡れ剤5部からなる塗液をイオン交換水で濃度8%に調整したアンカーコート層形成用塗液を、ロールコーターで均一に塗布した。次いで塗工後にこのフィルムを横方向に125℃で3.6倍延伸し、220℃で幅方向に3%収縮させ熱固定を行い、アンカーコート層が形成された、厚さ188μmの基材フィルムを得た。なお、アンカーコート層の厚さは0.04μmであった。
【0058】
<アンカーコート層形成用塗液の成分>
ポリエステル:酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸65モル%/イソフタル酸30モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=80℃、平均分子量13000)。
【0059】
なお、かかるポリエステルは特開平6−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記のとおり製造した。すなわち2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル44部、イソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール34部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃までに上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。
【0060】
アクリル:メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されている(Tg=50℃)。
【0061】
なお、かかるアクリルは特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記のとおり製造した。すなわち、四つ口フラスコに、界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム3部およびイオン交換水181部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、さらにモノマー類であるメタクリル酸メチル23.3部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン22.6部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート酸40.7部、アクリルアミド13.3部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるように調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が35%のアクリルの水分散体を得た。
【0062】
添加剤:シリカフィラー(平均粒系100nm)(日産化学株式会社製:商品名スノーテックスZL)
濡れ剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名ナロアクティーN−70)
【0063】
<透明導電塗膜層の形成>
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%を含んでなる導電性高分子の水分散体(BaytronP:バイエルAG製)97部に対して3部のジエチレングリコール、0.5部のγ―グリシドキシトリメトキシシラン、水溶性の光硬化性化合物として0.38部のA−GLY−20E(新中村化学工業株式会社製、前記化学式(化3)で示される構造を持ち、l+m+n=20)、光重合開始剤として0.015部のイルガキュア184(チバスペシャリティ製)を混合後に1時間攪拌した塗液を、マイヤーバーを用いて上記のアンカーコート層を設けた基材フィルム上に塗工し、140℃で1分間の乾燥を行い、その後連続して300mJ/cmのUV照射を行い、透明導電塗膜層を得た。透明導電塗膜層の厚みは0.08μmであった。得られた導電性フィルムの特性を表1に示す。
【0064】
[実施例2]
水溶性の光硬化性化合物として0.38部のAT−20E(新中村化学工業株式会社製、前記化学式(化4)で示される構造を持ち、l+m+n=20)を用いる以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0065】
[比較例1]
水溶性の光硬化性化合物として0.38部のA−GLY−9E(新中村化学工業株式会社製、前記化学式(化3)で示される構造を持ち、l+m+n=9)を用いる以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0066】
[比較例2]
水溶性の光硬化性化合物として0.38部のATM−35E(新中村化学工業株式会社製、前記化学式(化5)で示される構造を持ち、l+m+n+o=35)を用いる以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0067】
[比較例3]
水溶性の光硬化性化合物として0.38部のA−BPE−20(新中村化学工業株式会社製、下記化学式(化6)で示される構造を持ち、l+m=20)を用いる以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【化6】

【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
以上に説明した本発明の導電性フィルムは、優れた導電性を維持しながら、高い耐湿熱性を有しているので、タッチパネル、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、無機エレクトロルミネッセンス素子等の透明電極や電磁波シールド材として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の導電性フィルムの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 基材フィルム
2 アンカーコート層
3 透明導電塗膜層
4 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に、
(a)下記一般式で表される単位を主たる繰返し単位とするポリカチオン状のポリチオフェンとポリアニオンとからなる導電性高分子、
【化1】

(式中、RおよびRは、相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
(b)該導電性高分子の固形重量を基準として10〜1000重量%の割合で添加された、分子中に光硬化性官能基を3以上およびポリオキシエチレン単位を含有し、そのオキシエチレン単位の合計の繰返し単位数が10〜30である水溶性光硬化性化合物、および、
(c)該導電性高分子の固形分に対して10〜1000重量%の割合で添加された、グリシジル基を有するアルコキシシラン化合物、
を含有する組成物から形成されてなる透明導電塗膜層が積層された導電性フィルムであって、該導電性フィルムの、温度60℃かつ湿度90%で240時間処理した後の表面抵抗の変化率が150%以下である導電性フィルム。
【請求項2】
光硬化性官能基が(メタ)アクリレート基である請求項1記載の導電性フィルム。
【請求項3】
導電性フィルムの全光線透過率が60%以上で、かつ表面抵抗が10〜1×10Ω/□である請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
基材フィルムと透明導電塗膜層との間に、ポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂を構成成分として含有するアンカーコート層を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の導電性フィルム。
【請求項5】
基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートで構成される請求項1ないし4のいずれかに記載の導電性フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−62418(P2008−62418A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240021(P2006−240021)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】