説明

導電性ローラおよびその製造方法

【課題】感光体汚染や通電耐久性の悪化の発生が抑えられ、導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキが抑えられた導電性ローラと、これを安定して得ることのできる導電性ローラ製造方法を提供する。
【解決手段】導電性軸体の外周面上に一層以上の導電性弾性層を有する導電性ローラの製造方法において、ゴム成分と導電性フィラーとを少なくとも含む導電性弾性層形成用材料を混練する混練工程を有し、導電性フィラーはカーボンブラックを含み、混練工程において、「Y=(W×h)×(T×h)/Wt」で表されるYの値が3.0×108以上、3.0×1010以下である。ただし、式(1)において、W×hは混練における積算電力(Wh)を表し、T×hは混練において導電性弾性層形成用材料にかかった積算温度(℃h)を表し、Wtは導電性弾性層形成用材料の全質量(kg)を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ローラに関し、特に電子写真複写機などの感光体まわりの帯電ローラ及び転写ローラなどとして好適な、弾性層を有する導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機及び電子写真印刷機などの電子写真装置として、次のような方式のものが知られている。すなわち、感光体表面上を均一に帯電させ、次に感光体表面上に印刷パターンの静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成し、これを熱により記録用紙上に転写する方式のものが知られている。この方式の中で、感光体表面上の帯電方法としては一般的にコロナ放電方式が用いられている。しかし、コロナ放電方式はオゾンが発生する他、装置の小型化が難しい。
【0003】
近年、コロナ放電方式よりも小型化が容易でオゾンを発生させない接触帯電方式が検討され、一部で実用化されている。この接触帯電方式は、感光体表面に導電性を有する弾性ローラを所定の押圧力で当接させるものであり、帯電部材は感光ドラムとの均一密着性が必要なために、適度な弾性が求められる。従って、帯電部材にはゴム弾性を有する弾性層が使用され、更には弾性層には非感光体汚染性、耐熱性及び表面平滑性などが要求される。しかし、これを単一の材料、つまり単層のゴムローラで種々の要求特性を同時に満たすことは困難な場合がある。このため、それぞれの機能を導電性弾性層と導電性表面層に分担させた複数の層を組み合せた多層構成ローラを採用して、各種の要求特性を複合的に満たす方法も知られている。
【0004】
帯電部材の重要な特性として、体積固有抵抗が挙げられる。例えば1×104〜1×1010Ω・cmの範囲の半導電性領域が必要な場合、通常、導電性弾性層と導電性表面層との異なる体積固有抵抗の組み合わせにより、帯電部材の体積固有抵抗をこの範囲に調整している。また、導電性弾性層を低体積固有抵抗に、導電性表面層を高体積固有抵抗にすることにより、良好な画像が得られることが知られている。従って、導電性弾性層を1×106Ω・cm未満の低体積固有抵抗領域に調整することが望まれる。
【0005】
従来、導電性弾性層を低体積固有抵抗に調整するために、帯電部材のゴム組成物にエピクロルヒドリン系ゴムやアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムなどの極性ゴムを用い、ゴム中にイオン導電付与剤を添加することが知られている。これによりゴムマトリックス中のイオンキャリアー濃度を増加させ電気抵抗を下げることができる。
【0006】
このように、極性ゴム中にイオン導電付与剤を添加してゴムマトリックス中のイオンキャリアー濃度を増加させ電気抵抗を下げる方法としては、ゴム中にイオン導電付与剤を添加する方法が挙げられる。そこで、これまでにLi塩などの有機金属塩をイオン導電付与剤として極性ゴムに含有する方法が検討されてきた。この場合、導電性ゴムとしての抵抗値は低下するが、体積固有抵抗の環境変動が増加したり、また、有機金属塩は極性ゴムとの相溶性が悪く、多量添加すると染み出しなどが発生し、感光体を汚染したり通電耐久性が悪化したりする場合がある。この問題を解決するために、ゴム組成物に第4級アンモニウム塩(特許文献1参照)または第4級ホスホニウム塩(特許文献2参照)をイオン導電付与剤として含有させる方法も提案されている。これらの方法の場合、体積固有抵抗の環境条件による変化が小さく、かつゴム成分100質量部に対し10質量部以上添加すると1×107Ω・cm未満の体積固有抵抗が得られる。しかし、依然として、ローラ表面に染み出しなどが発生し、感光体汚染を起こす場合がある。
【0007】
このようなイオン導電付与剤による染み出しなどの問題を解決するための手段として、ゴム材料にフィラー系の導電性充填材を添加して体積固有抵抗を下げる方法が知られている。フィラー系の導電性充填材としては、一般的には導電性カーボンブラックを添加する方法が挙げられる。
【0008】
しかしながら、このような導電性弾性層を用いた導電性ローラにおいては、製造ロット間で体積固有抵抗が大きくばらつき、所望の抵抗値を安定して得ることが難しい。また、導電性ローラ内においても局所的抵抗のバラツキが生じることもある。これは、カーボンブラック配合量のわずかな差異や、温度や時間といったゴム材料の混練条件のわずかな差によって引き起こされるものである。
【0009】
この導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキを低減する手段として、高ストラクチャーの導電性カーボンブラックではなく、低ストラクチャー、大粒径のカーボンブラックを用いる方法(特許文献3参照)が提案されている。この方法では抵抗の環境依存性および電圧依存性は低減できる。しかし、ロット間の体積固有抵抗のバラツキについて更なる改善の余地がある。
【特許文献1】特開平11−209633号公報
【特許文献2】特開平9−101652号公報
【特許文献3】特開2003−345090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、感光体汚染や通電耐久性の悪化の発生を抑制可能で、ゴム材料の混練条件の差による導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキを抑え、安定して良好な導電性ローラを得ることのできる導電性ローラの製造方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、感光体汚染や通電耐久性の悪化の発生が抑えられ、導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキが抑えられた導電性ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により、導電性軸体の外周面上に一層以上の導電性弾性層を有する導電性ローラの製造方法において、
ゴム成分と導電性フィラーとを少なくとも含む導電性弾性層形成用材料を混練する混練工程を有し、
該導電性フィラーはカーボンブラックを含み、
該混練工程において、式(1)で表されるYの値が3.0×108以上、3.0×1010以下であることを特徴とする導電性ローラの製造方法が提供される。
【0013】
【数1】

【0014】
式(1)において、W×hは混練における積算電力(Wh)を表し、T×hは混練において導電性弾性層形成用材料にかかった積算温度(℃h)を表し、Wtは導電性弾性層形成用材料の全質量(kg)を表す。
【0015】
本発明により、上記方法によって製造された導電性ローラが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、感光体汚染や通電耐久性の悪化の発生を抑制可能で、ゴム材料の混練条件の差による導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキを抑え、安定して良好な導電性ローラを得ることのできる導電性ローラの製造方法が提供される。
【0017】
本発明により、感光体汚染や通電耐久性の悪化の発生が抑えられ、導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキが抑えられた導電性ローラが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
〔導電性軸体〕
導電性軸体(芯金)としては、例えば、鉄、銅及びステンレス等の金属、カーボン分散樹脂、金属あるいは金属酸化物分散樹脂等が用いられ、その形状としては、棒状及び板状等が使用できる。本発明における導電性軸体としては、ステンレススチール、めっき処理した鉄、黄銅及び導電性プラスチック、アルミニウム、銅、鉄、又はこれらを含む合金等の良導体が好適に用いられる。0.1mm〜1.5mm程度の厚さを有する金属管であっても、また棒状であってもよい。
【0020】
〔混練〕
ゴム成分と導電性フィラー、および必要に応じて各種添加剤を配合した導電性弾性層形成用材料を混練する混練工程において、混練装置としては導電性弾性層の材料を混練可能な公知の装置を適宜用いることができる。混練装置として、例えば、バンバリー型混合機や加圧ニーダー、あるいはインターミックスなどが挙げられ、温度制御が容易であることから加圧ニーダーを用いることが好ましい。
【0021】
混練工程における体積固有抵抗のバラツキは、混練中に加えられた応力と、温度をパラメーターとして制御することが可能である。実際には下記式(1)で表される、混練中のニーダー等の混練装置の積算電力と、混練中に導電性弾性層形成用材料に加えられた積算温度を乗じ、導電性弾性層形成用材料の質量で除した値であるYの値を3.0×108以上、3.0×1010以下とする。
【0022】
【数2】

【0023】
式(1)において、W×hは混練における積算電力(Wh)を表し、T×hは混練において導電性弾性層形成用材料にかかった積算温度(℃h)を表し、Wtは導電性弾性層形成用材料の全質量(kg)を表す。なお、Wは混練における電力(W)、hは混練時間(h)、Tは混練温度(℃)である。
【0024】
Yの値を上記範囲とすることで、好適な抵抗を持ち、体積固有抵抗のバラツキの少ない導電性ローラを安定して得ることができる。このとき、積算電力および積算温度は、素練り後、フィラーなどの所定の成分を配合し、混練を開始してからの数値である。材料を分割して仕込む場合には、積算電力と積算温度を乗じ、その時の導電性弾性層形成用材料の質量で除した値を積算してY値を計算する。例えば、導電性弾性層形成用材料をWt1とWt2ずつの2回に分けて投入し、Wt2を投入するまでの積算電力がW1×h1、Wt2を投入してからの積算電力をW2×h2とし、Wt2を投入するまでの積算温度をT1×h1、Wt2を投入してからの積算温度をT2×h2とした場合、Y値は次の式(2)で計算される。
【0025】
【数3】

【0026】
Yの値が3.0×108以上、3.0×1010以下の範囲にあるとき、体積固有抵抗が安定し、導電性ゴムローラを安定して製造できる。Yの値が3.0×108以上であれば、カーボンブラックの分散が良好となり、体積固有抵抗の変動が抑えられた導電性ローラを安定して製造することができる。Yの値が3.0×1010以下であれば、体積固有抵抗を下げるために多量のカーボンブラックの添加が必要となって加硫ゴム(弾性層)の硬度が高くなることを防止できる。また、Y値が3.0×1010以下であると体積固有抵抗が大きく変動することを防止でき、導電性ローラを安定して製造することができる。この理由は定かではないが、Yの値が大きいとバウンドラバーが発生し易くなり、バウンドラバーの存在量の差異によって抵抗が変動してしまうためであると考えられる。
【0027】
〔ゴム成分〕
導電性弾性層のゴム成分としては特に限定されず、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、水添アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、エピハロヒドリン系ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴムなどが挙げられる。なかでも、ゴム自体の体積固有抵抗が低く、所望の抵抗値を得やすいことから、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムおよびエピハロヒドリン系ゴムが好ましく、低コストで得られるアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムが特に好ましい。
【0028】
〔導電性フィラー〕
導電性弾性層に含有されるフィラー系の導電性充填材としては、カーボンブラックが必須成分であり、他の導電性フィラーを併用しても良い。導電性弾性層中のカーボンブラックの含有量は10質量%以上、50質量%以下であることが好ましい。カーボンブラックの含有量が10質量%以上であれば、体積固有抵抗を下げることが容易である。カーボンブラックの含有量が50質量%以下であれば、体積固有抵抗が大きく変動してしまい導電性ローラを安定して製造することが困難となることを容易に防止できる。
【0029】
導電性弾性層に使用できるカーボンブラック以外のフィラー系の導電性充填材としては、酸化チタン、酸化錫等の導電性酸化物;Cu、Ag等の金属;導電性酸化物や金属を粒子表面に被覆して導電化した導電粒子などが挙げられる。
【0030】
導電性弾性層に含有されるフィラー系の導電性充填材としては、DBP吸油量および平均粒子径が相異なる少なくとも2種類のカーボンブラックが用いることが好ましい。より好ましくはDBP吸油量および平均粒子径が相異なる3種類のカーボンブラックが用いられる。これは、高ストラクチャー且つ小粒径の高導電性カーボンブラック(A)によりある程度導電性弾性層の体積固有抵抗を低下させ、小粒径且つ中程度のストラクチャーのカーボンブラック(B)により体積固有抵抗の微妙な制御を行うためである。さらに、大粒径且つ低ストラクチャーのカーボンブラック(C)を同時に用いることにより、体積固有抵抗値を低下させることが容易となり、導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキを低減させることがより容易となる。
【0031】
上記カーボンブラック(A)は、配合量の変動や分散状態の差異が体積固有抵抗に比較的大きな影響を与える。従って、比較的少ない配合量で体積固有抵抗を下げるために効果的であり、体積固有抵抗を相対的にラフに調整するのに適する。カーボンブラック(B)は、配合量の変動や分散状態の差異が体積固有抵抗に比較的小さな影響を与える。従って、体積固有抵抗を相対的に微調整するのに適する。
【0032】
〔カーボンブラック(A)〕
カーボンブラック(A)としては、DBP吸油量が300ml/100g以上、600ml/100g以下であり、且つ平均粒子径が20nm以上、60nm以下、好ましくは30nm以上、50nm以下の範囲であるカーボンブラックを用いることができる。DBP吸油量が300ml/100g以上で、平均粒子径が60nm以下であると、導電性弾性層への導電性の付与を良好に行うことができ、低い体積固有抵抗値を得るのが容易である。工業的な入手容易性の観点から、DBP給油量が600ml/100g以下であるカーボンブラックが好ましい。また、DBP吸油量が300ml/100g以上、600ml/100g以下のカーボンブラックにおいて、工業的な入手容易性の観点から、平均粒子径が20nm以上、60nm以下のカーボンブラックが好ましい。
【0033】
カーボンブラック(A)の具体例としては、ケッチェンブラックEC300J、ケッチェンブラックEC600JD(いずれもライオン(株)製の商品名)などが挙げられる。
【0034】
カーボンブラック(A)の使用量は、導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、2質量部以上、10質量部以下が好ましく、2質量部以上、7質量部以下がより好ましい。使用量が2質量部以上だと、体積固有抵抗を低下させることが容易であり、10質量部以下であるとカーボンブラック(A)のわずかな配合量の差や分散状態の差異によって体積固有抵抗が大きく変動することを優れて防止でき、導電性ローラを安定して製造することが容易である。
【0035】
〔カーボンブラック(B)〕
カーボンブラック(B)としては、DBP吸油量が80ml/100g以上、150ml/100g以下であり、且つ平均粒子径が30nm以上、60nm以下の範囲であるカーボンブラックを用いることができる。DBP吸油量が80ml/100g以上で、平均粒子径が60nm以下であると、導電性弾性層への導電性の付与能力が低くなって体積固有抵抗値の制御が容易ではなくなることを優れて防止できる。DBP吸油量が150ml/100g以下で、平均粒子径が30nm以上であると、導電性弾性層への導電性の付与能力が高くなることを抑制でき、体積固有抵抗の微調整が容易である。
【0036】
カーボンブラック(B)の具体例としては、例えば、MAF(medium ab−rasion furnace)級、およびFEF(fast extruding furnace)級に分類されるカーボンブラックなどが挙げられる。
【0037】
カーボンブラック(B)の使用量は、導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、5質量部以上、40質量部以下が好ましく、10質量部以上、30質量部以下であることがより好ましい。使用量が5質量部以上であると、導電性弾性層への導電性の付与能力が良好で体積固有抵抗を制御することが容易である。40質量部以下であると、導電性弾性層の硬度が高くなることを優れて防止できる。
【0038】
〔カーボンブラック(C)〕
カーボンブラック(C)としては、DBP吸油量が10ml/100g以上、50ml/100g以下であり、且つ平均粒子径が100nm以上、300nm以下の範囲であるカーボンブラックを用いることができる。DBP吸油量が10ml/100g以上、50ml/100g以下で、平均粒子径が100nm以上であると、導電性弾性層への導電性の付与能力が高くなり導電性弾性層の体積固有抵抗のバラツキが増大することを優れて防止できる。工業的な入手容易性の観点から、DBP給油量が10ml/100g以上、かつ平均粒子径が300nm以下のカーボンブラックが好ましい。
【0039】
カーボンブラック(C)の具体例としては、例えば、FT(Fine Thermal)級、及びMT(Medium Thermal)級に分類されるカーボンブラックなどが挙げられる。
【0040】
カーボンブラック(C)の使用量は、導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、60質量部以下であることが好ましい。使用量が10質量部以上であれば体積固有抵抗値の低下を容易にする効果が良好に発現し、60質量部以下であれば導電性弾性層の硬度が高くなることを優れて防止できる。
【0041】
〔他の成分〕
本発明の導電性弾性層には、加硫剤及び必要に応じて加硫促進剤や、炭化カルシウムなどの充填剤、界面活性剤、可塑剤、難燃剤、老化防止剤、発泡剤及びシランカップリング剤などを適宜配合することができる。
【0042】
可塑剤を用いた場合には、染み出しなどによる感光体汚染防止のため、導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましい。
【0043】
〔導電性ローラ〕
本発明の導電性ローラを電子写真複写機及び電子写真印刷機などの電子写真装置における帯電部材として使用する場合、感光体表面上を均一に帯電させるためには、導電性ローラの抵抗値は5×103Ω以上1×106Ω以下であることが好ましい。また、導電性ローラは回転しながら被帯電体表面や記録媒体へ当接するため、このために望ましいローラ硬度に適宜調節することができる。ローラ硬度としては、50以上、80以下であることが好ましい。ローラ硬度は、マイクロゴム硬度計MD−1タイプA(商品名。高分子計器(株)製)で測定できる。
【0044】
また、上記のローラ硬度において、ローラの圧縮永久歪を小さくできることから、導電性弾性層は非発泡体ゴムであることが好ましい。
【0045】
〔表面被覆層〕
本発明の導電性ローラにおいて、導電性弾性層の表面には表面被覆層を設けても良い。表面被覆層は、感光体上にピンホール等の欠陥が生じた場合に、ここに帯電電流が集中して、帯電部材、感光体が破損することを防止するためのものである。その電気抵抗値としては例えば1×106〜1×1010Ω程度が要求される。
【0046】
表面被覆層は、一般的には、バインダー高分子に導電性フィラーを適宜量分散させることにより、所望の電気抵抗値としたものが用いられる。バインダー高分子としてはアクリル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、シリコーン等を用いることができる。導電性フィラーとしては、カーボンブラックやグラファイト等の炭素材料;酸化チタンや酸化錫等の導電性酸化物;Cu、Ag等の金属;導電性酸化物や金属を粒子表面に被覆して導電化した導電粒子;LiClO4、KSCN、NaSCN、LiCF3SO3等のイオン性電解質等を用いることができる。
【0047】
表面被覆層の形成方法としては、導電性ローラの表面被覆層を形成可能な公知の方法を適宜選んで採用できる。例えば、上記の様なバインダー高分子を溶剤に溶解または分散し、これに導電性フィラーを分散させた液を、ディッピング、ビーム塗工、ロールコーター、スプレー等の塗工法によって、弾性体層表面にコーティングして、乾燥・硬化する方法が採られる。
【0048】
〔導電性ローラの製造〕
本発明の導電性ローラは、混練工程から得られる材料を導電性軸体の外周面にチューブ状に成形し、これを加硫することによって得ることができる。例えば本発明の導電性ローラは次のように製造される。まず、導電性弾性層を構成する各成分を所定量配合し、加圧ニーダーにて混練りしてゴム組成物を製造する。このゴム組成物と導電性軸体(芯金)を、クロスヘッドを備えた押出し成型機を用いて共押出し成形し、導電性軸体の外周面にチューブ状にゴム組成物を成形する。次いでこのゴム組成物を加硫し、導電性軸体の外周面に導電性弾性層を有する導電性ローラを得る。
【0049】
加硫方法は蒸気加硫、オーブン加熱加硫、熱風加熱及びプレス加硫などが使用可能であり、その他の加硫方法であってもよい。加硫条件は使用する原料ゴムや各成分に応じて適宜選択し、通常、加硫温度は120〜180℃で、20〜120分加硫するのが好ましいが特に制限されるものではない。加硫後、研削して製造されるのが一般的であるが、特にこれに限定されるものではない。
【0050】
なお、本発明の導電性ローラには、必要に応じて、弾性体層や表面被覆層以外に、接着層、拡散防止層、下地層、プライマー層等の機能層を設けることもできる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0052】
〔実施例1〕
混練は加圧ニーダーDS3−10型(商品名。(株)モリヤマ製)を用いて実施した。
【0053】
導電性弾性層を形成するために使用した材料とその配合(質量部)を表1に示したが、材料の詳細は以下の通りである。また、表1に示したカーボンブラックの詳細は表5に示した。
・ゴム成分:アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、日本ゼオン(株)製、商品名「Nipol1042」、
・酸化亜鉛:ハイテック(株)製、商品名「酸化亜鉛2種」、
・ステアリン酸亜鉛:日本油脂(株)製、商品名「ジンクステアレート」、
・可塑剤:大日本インキ化学工業(株)製、商品名「ポリサイザーP202」
・加硫促進剤(DM):大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーDM」、
・加硫促進剤(TS):大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーTS」、
・加硫剤:鶴見化学工業(株)製、商品名「サルファックス200S」。
【0054】
まず、上記加圧ニーダーを用いてNBRを2分間素練りした。
【0055】
その後、表1に示す加硫系以外の各成分(加硫促進剤及び加硫剤以外の成分)を所定量配合し、回転数30rpmで12分間混練した。混練後、ロールで加硫剤および加硫促進剤を練り込んだ後、クロスヘッドを備えた押出し成型機を用いて導電性軸体と共押出し成形した。次に、連続加硫炉にて170℃、30分加硫した後、表面研磨することで導電性ローラを作製した。

さらに、同様の条件で繰り返し4回導電性ローラの作製を実施し、合計5本の導電性ローラを得た。
【0056】
ローラ硬度、およびローラ抵抗を以下の方法で測定し、算出したYの値とともに、表3に示した。表中、Max/minは、ローラ抵抗の測定値の最大値/最小値比である。
【0057】
<Y値の算出>
ニーダーの温度計より1秒毎の温度データを読み取り積算温度を計算した。この積算温度とニーダーにて表示された積算電力、を式(1)に代入してY値を計算した。
【0058】
<ローラ硬度>
ローラ硬度は、マイクロゴム硬度計MD−1タイプA(商品名。高分子計器(株)製)で測定した。5回作製したローラのローラ硬度の平均値を該ローラのローラ硬度とした。
【0059】
<ローラ抵抗>
ローラ抵抗測定は、N/N環境(23℃、相対湿度50%)下において、行った。ゴムローラ試験片を両端部に荷重500gを加え、芯金端部より200Vの直流電圧を印加し、回転速度30rpmにおいて、サンプリング周波数5Hzで1分間、ローラ抵抗値を連続して測定した。得られた抵抗値の最大値と最小値の平均値をローラ抵抗とした。
【0060】
<感光体汚染の評価>
さらに、上記のようにして得られた導電性ローラを使用し、その導電性弾性層の表面に表面被覆層を設けた導電性ローラを、電子写真方式のプリンターの画像形成装置における帯電ローラとして組み込んだ。これを、40℃、95%相対湿度環境で1月間保存したのち、白黒の標準パターンを出力し、画出し確認を行い、下記基準で感光体汚染を評価した。
○:画像不良が全く見られなかった。
×:可塑剤成分による感光体汚染と見られる画像不良が見られた。
【0061】
上記導電性ローラに表面被覆層を形成する場合は以下の方法を用いた。
【0062】
導電性酸化スズ粉体(商品名:SN−100P、石原産業社製)50質量部に、トリフルオロプロピルトリメトキシシランの1質量%イソプロピルアルコール溶液を500質量部と平均粒径0.8mmのガラスビーズ300質量部を加えた。これをペイントシェーカで70時間分散後、分散液を500メッシュの網で濾過し、次にこの溶液をナウターミキサーで攪拌しながら100℃の湯浴で暖めてアルコールを飛ばして乾燥させ、表面にシランカップリング剤を付与し表面処理導電性酸化スズ粉体を得た。
【0063】
ラクトン変性アクリルポリオール(商品名:プラクセルDC2009、ダイセル化学工業社製)200質量部を、500質量部のMIBK(メチルイソブチルケトン)に溶解し、固形分20質量%の溶液とした。このアクリルポリオール溶液200質量部に対して前記表面処理導電性酸化スズ粉体を50質量部、シリコーンオイル(商品名:SH−28PA、東レ・ダウコーニングシリコーン社製)を0.01質量部、ヘキサメチレンジシラザンで表面処理した微粒子シリカ(一次粒径0.02μm)を1.2質量部配合し、これに直径0.8mmのガラスビーズ200質量部を加えて、450mlのビンに入れてペイントシェーカを使い10時間分散した。
【0064】
この分散液370質量部にイソホロンジイソシアネートのブロックタイプのイソシアヌレート型3量体(商品名:ベスタナートB1370、デグサ・ヒュルス製)を33.5質量部とヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型3量体(商品名:デュラネートTPA−B80E、旭化成工業製)を21.5質量部混合し、ボールミルで1時間攪拌し、最後に500メッシュの網で溶液を濾過して表層塗料を得た。
【0065】
前記表層塗料をディッピンク法により前記導電性弾性体基層を有するゴムローラの表面に塗工した。引き上げ速度400mm/minで塗工し、30分間風乾した後、ローラの塗工時の軸方向を反転してもう一度引き上げ速度400mm/minで塗工し、もう一度30分間風乾した後、160℃で100分間乾燥して、導電性ローラに表面被覆層を形成した。
【0066】
<総合判定>
総合判定は下記基準で行い、◎と○を合格とした。
◎:5回作製したローラのローラ抵抗における最大値/最小値(Max/min)が2以下、
○:5回作製したローラのローラ抵抗における最大値/最小値(Max/min)が2を超え5未満、
×:5回作製したローラのローラ抵抗における最大値/最小値(Max/min)が5以上。
【0067】
〔実施例2〜9、比較例1〜8〕
表1および2に示す、各実施例および比較例の配合処方、混練時間に変更した以外は実施例1と同様の条件で、それぞれの例において導電性ローラを作製し、評価した。
【0068】
表3および4に各例におけるY値とともに評価結果を示した。表3および4より、本発明により、製造ロット間での抵抗のバラツキが小さく、安定して導電性ローラを製造できることがわかる。また、感光体汚染の問題も発生しない。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体の外周面上に一層以上の導電性弾性層を有する導電性ローラの製造方法において、
ゴム成分と導電性フィラーとを少なくとも含む導電性弾性層形成用材料を混練する混練工程を有し、
該導電性フィラーはカーボンブラックを含み、
該混練工程において、式(1)で表されるYの値が3.0×108以上、3.0×1010以下であることを特徴とする導電性ローラの製造方法。
【数1】

(式(1)において、W×hは混練における積算電力(Wh)を表し、T×hは混練において導電性弾性層形成用材料にかかった積算温度(℃h)を表し、Wtは導電性弾性層形成用材料の全質量(kg)を表す。)
【請求項2】
該導電性弾性層中のカーボンブラックの含有量が10質量%以上、50質量%以下である請求項1記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項3】
該導電性フィラーが、
(A)DBP吸油量が300ml/100g以上、600ml/100g以下であり、且つ平均粒子径が60nm以下の範囲であるカーボンブラック、および
(B)DBP吸油量が80ml/100g以上、150ml/100g以下であり、且つ平均粒子径が30nm以上、60nm以下の範囲であるカーボンブラック
を含み、且つ
該導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、
該カーボンブラック(A)が2質量部以上、10質量部以下の範囲で含有され
該カーボンブラック(B)が5質量部以上、40質量部以下の範囲で含有された
請求項1または2記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項4】
該導電性フィラーが、さらに
(C)DBP吸油量が50ml/100g以下であり、且つ平均粒子径が100nm以上、300nm以下の範囲であるカーボンブラック
を含み、且つ
該導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、カーボンブラック(C)が10質量部以上、60質量部以下の範囲で含有された請求項3記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項5】
該導電性弾性層に含有される可塑剤成分が、該導電性弾性層のゴム成分100質量部に対して、20質量部以下である請求項1から4の何れか一項記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項6】
該導電性弾性層が非発泡体ゴムからなる請求項1から5の何れか一項記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項7】
該導電性弾性層に含有されるゴム成分が、エピハロヒドリン系ゴムおよびアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムから選ばれた少なくとも一種である請求項1から6の何れか一項記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項記載の製造方法によって製造された導電性ローラ。

【公開番号】特開2008−52129(P2008−52129A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229491(P2006−229491)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】