説明

導電性ローラ及び画像形成装置

【課題】帯電特性、耐フィルミング性及び耐摩耗性が良好な導電性ローラ、並びに、高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】軸体2の外周面に形成された弾性層3と、前記弾性層3の外周面で、ポリアミド樹脂とアミノ基を有するシランカップリング剤とを含有する組成物を硬化してなるコート層4とを備えて成る導電性ローラ1、及び、この導電性ローラ1を備えた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導電性ローラ及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、帯電特性、耐フィルミング性及び耐摩耗性が良好な導電性ローラ、並びに、高品質の画像を形成することのできる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置には、各種導電性ローラが装着されている。
【0003】
具体的には、例えば、図2に示されるように、タンデム型カラー画像形成装置には、複数の現像ユニットB、C、M及びYが配置されており、現像ユニットBを例にして説明すると、像担持体11Bを一様に帯電させる帯電手段12Bの一例としての帯電ローラ、帯電した現像剤22Bを均一に像担持体11Bに供給する現像剤担持体23Bの一例としての現像ローラ、記録体16に転写された現像剤像を記録体16に定着させる定着手段30を構成する定着ローラ31等が装着されている。これらの導電性ローラは、電気特性によって、現像剤22Bを所望のように担持し、像担持体11B等の被当接体を一様に帯電させ、現像剤22Bを所望のように定着させること等によって、高品質の画像を形成することに貢献している。したがって、高品質の画像を形成するには、導電性ローラは、優れた電気特性等を有している必要がある。
【0004】
前記各種導電性ローラは、通常、軸体の外周面に形成された弾性層と弾性層の外周面に形成されたコート層とを備えている。このような導電性ローラの一例として、例えば、特許文献1の導電性ロールは、「金属シヤフト10の外周面に接着剤層(図示せず)を介し導電性弾性層12aが形成され、さらにその表面に導電性樹脂層11が形成されて構成されている」(特許文献1の第2頁右欄第40行〜第44行、図1等参照。)。この特許文献1に記載されている導電性ローラは、金属シヤフトにN−メトキシメチル化ナイロンからなる導電性樹脂層が形成されているに過ぎない(特許文献1の請求項1等参照。)。
【0005】
また、このような導電性ローラの別の一例として、例えば、特許文献2には、「導電性弾性体層及びアルコール可溶性ナイロンを含有する表層を備え、前記ナイロンの架橋度は85〜95%であることを特徴とする導電性ローラ」が記載されている(特許文献2の請求項1参照。)。この特許文献2に記載されている具体的な導電性ローラは、エチレンプロピレンゴムからなる導電性弾性体層と、導電性弾性体層上に設けられたアルコール可溶性ナイロンからなる表層とを備えている(特許文献2の実施例参照。)。
【0006】
近年、画像形成装置は各種改良が施され、例えば、画像の高精細化等が図られており、画像形成装置に採用される導電性ローラには高い水準の特性が要求されている。
【0007】
【特許文献1】特許第2649161号明細書
【特許文献2】特開平06−161229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、帯電特性、耐フィルミング性及び耐摩耗性が良好な導電性ローラを提供すること、並びに、高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供することに、ある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、軸体の外周面に形成された弾性層と、前記弾性層の外周面に、ポリアミド樹脂とアミノ基を有するシランカップリング剤とを含有する組成物を硬化してなるコート層とを備えて成る導電性ローラであり、
請求項2は、請求項1に記載の導電性ローラを備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る導電性ローラのコート層は、ポリアミド樹脂及びアミノ基を有するシランカップリング剤を含有する組成物を硬化して成るから、シランカップリング剤が有するアミノ基の電子供与性の効果とシランカップリング剤におけるシリコーン部分による離型効果とによって、コート層が摩耗しにくくなると共に、現像剤特に負帯電性現像剤への電荷付与能力が向上し、現像剤に与える損傷等を低減させることができる。その結果、この発明に係る導電性ローラは、コート層が摩耗しにくくなると共に、現像剤を所望のように帯電させることができ、損傷等した現像剤が導電性ローラの被当接体に固着することを防止することができる。したがって、この発明によれば、帯電特性、耐フィルミング性及び耐摩耗性が良好な導電性ローラを提供することができる。
【0011】
また、この発明によれば、この発明に係る画像形成装置はこの発明に係る導電性ローラを備えているから、高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明に係る一実施例である導電性ローラは、図1に示されるように、軸体2と、導電性弾性層(以下、単に、弾性層と称することがある。)3と、コート層4とを備え、例えば、図2に示される画像形成装置等に配設される。
【0013】
前記軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。また、軸体2は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、さらには、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。
【0014】
前記弾性層3は、前記軸体2の外周面に後述する導電性組成物を硬化して成る。この弾性層3は、20〜70のJIS A硬度を有しているのが好ましい。弾性層3が20〜70のJIS A硬度を有していると、導電性ローラ1と被当接体との接触面積を大きくすることができ、また、弾性層3の反発弾性及び圧縮永久ひずみが優れる。導電性ローラ1と被当接体との接触面積が向上し、弾性層3の反発弾性及び圧縮永久ひずみを所望のように向上させることができる点で、JIS A硬度は、30〜60であるのがより好ましく、35〜50であるのが特に好ましい。JIS A硬度は、JIS K6301に準拠して測定することができる。
【0015】
弾性層3は、10〜10Ω・cmの体積抵抗率を有しているのが好ましい。弾性層3が10〜10Ω・cmの体積抵抗率を有していると、弾性層3の外周面に非導電性のコート層4が形成されても、導電性ローラ1の帯電特性が優れ、例えば、現像剤担持体24の一例である現像ローラ導電性ローラ1を使用する場合には、現像剤を所望のように帯電させることができるから、現像剤を所望のように担持することができ、担持した現像剤を像担持体に所望のように供給することができる。導電性ローラ1の帯電特性がより一層優れる点で、弾性層3の体積抵抗率は、10〜10Ω・cmであるのがより好ましく、10〜10Ω・cmであるのが特に好ましい。弾性層3の体積抵抗率は、弾性層3に含まれる導電性付与剤の含有量等を調整することによって、前記範囲内に調整することができる。弾性層3の体積抵抗率は、JIS K6911に規定された方法に準じて、印加電圧を100Vに設定して測定することができる。
【0016】
前記弾性層3は、10〜10Ωの電気抵抗率を有しているのが好ましい。弾性層3が10〜10Ωの電気抵抗値を有していると、弾性層3の外周面にコート層4が形成されて導電性ローラ1としたときに、帯電特性に優れる。例えば、現像剤担持体24の一例である現像ローラとして導電性ローラ1を使用する場合には、現像剤を所望のように帯電させることができるから、現像剤を確実に担持することができ、担持した現像剤を像担持体に所望のように確実に供給することができる。現像剤の担持及び供給をより一層高い水準で所望のように達成することができる点で、電気抵抗値は、10〜10Ωであるのがより好ましく、10〜10Ωであるのが特に好ましい。弾性層3の電気抵抗値は、弾性層3(導電性ウレタン組成物)に含まれる導電性付与剤の含有量を調整することによって、前記範囲内に調整することができ、その測定方法は、電気抵抗計(商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A、株式会社アドバンテスト製)を用い、導電性ローラ1を水平に置き、5mmの厚さ、30mmの幅、及び、導電性ローラ1の弾性層3全体を載せることのできる長さを有する金メッキ製板を電極とし、500gの荷重を導電性ローラ1における軸体2の両端それぞれに支持させた状態にして、軸体2と電極との間にDC100Vを印加し、1秒後の電気抵抗計の値を読みとり、この値を電気抵抗値とする方法により、測定することができる。
【0017】
弾性層3は、被当接体との当接状態において、被当接体と弾性層3との均一なニップ幅を確保することができる点で、その厚さは、1mm以上であるのが好ましく、5mm以上であるのがより好ましい。一方、弾性層3の厚さの上限は、弾性層3の外径精度を損なわない限り特に制限されないが、一般に、弾性層3の厚さを厚くしすぎると、弾性層3の作製コストが上昇するから、実用的な作製コストを考慮すると、弾性層3の厚さは、30mm以下であるのが好ましく、20mm以下であるのがより好ましい。なお、弾性層3の厚さは、所望のニップ幅を達成するために、弾性層3の硬度、例えば、JIS A硬度等に応じて、適宜選択される。
【0018】
弾性層3を形成する導電性組成物は、ゴムと、導電性付与剤と、所望により各種添加剤とを含有する。前記ゴムは、特に限定されず、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴムが挙げられるが、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴムが耐熱性及び帯電特性等に優れる点で、また、ウレタンゴムが引張強さ及び耐摩耗性に優れる点で、好ましい。これらのゴムは、液状タイプであっても、ミラブルタイプであってもよく、弾性層3の成形方法、弾性層3に要求される特性等に応じて、適宜選択することができる。
【0019】
前記導電性付与剤は、導電性を有していれば特に限定されず、例えば、導電性粉末、イオン導電性物質等が挙げられる。導電性粉末としては、より具体的には、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンの他に、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン類、また、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、さらには、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられ、イオン導電性物質としては、より具体的には、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質等が挙げられる。これらの中でも、中性ないしアルカリ性のカーボンブラックが特に好ましい。導電性付与剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて、弾性層3としたときに所望の体積抵抗率となるように、適宜の含有量で添加される。例えば、導電性組成物における導電性付与剤の含有量は、前記ゴム100質量部に対して、2〜80質量部とすることができる。
【0020】
前記導電性組成物は、前記ゴム、導電性付与剤に加えて、通常、各種組成物に含有される各種添加剤を含有してもよく、各種添加剤としては、例えば、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0021】
導電性組成物は、二本ローラ、三本ローラ、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、前記ゴム、導電性付与剤及び所望により各種添加剤が均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0022】
導電性組成物は、成形金型に容易にかつ均質に注入することができる点で、例えば、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有しているのがよく、5〜200Pa・sの粘度を有しているのが特によい。導電性組成物の粘度は、通常、それらに含まれる各成分の種類及び/又は配合量によって、調整することができる。また、必要により、溶剤等により、粘度を調整することもできる。
【0023】
好ましく使用される導電性組成物として、例えば、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物及び付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。
【0024】
前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、(A)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、及び、(C)上記(B)成分に属するもの以外の導電性材料を含有する。これらの各成分(A)〜(C)は、例えば、特開2007−304410号公報に記載の「ミラブルタイプである以下のシリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。
【0025】
前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、(D)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(E)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cmである無機質充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。これらの各成分(D)〜(H)は、例えば、特開2007−271810号公報に記載の「液状シリコーン組成物」における各成分と基本的に同様である。
【0026】
好ましく使用される別の導電性組成物として、例えば、導電性ウレタンゴム組成物が挙げられる。導電性ウレタン組成物は、ポリオールとイソシアネート、これらを反応して得られるプレポリマー及びこれらを反応して得られるポリウレタンからなる群より選択される少なくとも1種のポリウレタン調製成分と前記導電性付与剤とを含有する。前記ポリオールは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよいが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、又は、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールであるのが、耐摩耗性、電気安定性及び耐水性等に優れる点で、好ましい。前記イソシアネートは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のイソシアネートであればよく、例えば、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート等が挙げられる。
【0027】
前記コート層4は、前記弾性層3の外周面に後述する組成物を硬化して成る。コート層4(すなわち、導電性ローラ1)は、30〜80のJIS A硬度を有しているのが好ましい。コート層4が30〜80のJIS A硬度を有していると、導電性ローラ1と被当接体との接触面積を大きくすることができ、また、コート層4の反発弾性及び圧縮永久ひずみが優れる。導電性ローラ1と被当接体との接触面積が向上し、コート層4の反発弾性及び圧縮永久ひずみを所望のように向上させることができる点で、JIS A硬度は、40〜70であるのがより好ましく、45〜60であるのが特に好ましい。JIS A硬度は、JIS K6301に準拠して測定することができる。
【0028】
コート層4は、メタノールを溶媒としてソックスレー抽出器を用いて4時間浸漬したときのゲル分率が93%以上であるのが好ましい。コート層4が93%以上のゲル分率を有していると、耐摩耗性及び帯電特性に優れ、高温硬質下における導電性ローラの耐久性にも優れる。また、コート層4が93%以上のゲル分率を有すると、コート層4が形成される弾性層3のオリゴマー成分がコート層4の表面に滲出することを効果的に防止することができ、画像形成装置に装着されたときに、導電性ローラ1が当接する当接体(例えば、導電性ローラ1を現像ローラとして装着したときは、像担持体)が、前記オリゴマー成分で汚染されることを効果的に防止することができる。これらの効果をより一層高い水準で実現することができる点で、コート層4のゲル分率は95%以上であるのが特に好ましい。ゲル分率の上限は、特に限定されないが、樹脂組成物に含有される成分の分散性を考慮すると、例えば、99%程度である。コート層4のゲル分率は次にようにして測定する。まず、コート層4から複数の試験片を切り出し、これらの試験片それぞれの質量を測定する。次いで、試験片に対して100倍の質量のメタノールにこれらの試験片を、23℃で4時間浸漬する。浸漬された試験片をメタノールから取り出し、試験片それぞれを150℃、1時間の条件で乾燥して、十分冷却した後、浸漬後の試験片それぞれの質量を測定する。浸漬前の試験片それぞれの質量に対する浸漬後の試験片の質量を求めて、100分率で表し、算術平均値をコート層4のゲル分率(%)とする。コート層4のゲル分率を調整するには、例えば、架橋触媒である有機酸の種類と添加量とを調整すればよい。
【0029】
コート層4は、1〜15μmの表面粗さRzを有しているのが好ましい。コート層4が1〜15μmの表面粗さRzを有していると、例えば、導電性ローラ1を現像ローラとして使用する際に、現像剤を所望のように担持し、像担持体に所望のように供給することができる。表面粗さRzは、2〜14μmであるのがより好ましく、2〜13μmであるのが特に好ましい。コート層4の表面粗さRzは、JIS B 0601―1984(十点平均粗さ)に準じ、先端半径2μmの測定プローブを備えた表面粗さ計(商品名「590A」、株式会社東京精密製)に、コート層4を備えた導電性ローラ1をセットし、測定長2.4mm、カットオフ波長0.8mm、カットオフ種別ガウシアンにより、少なくとも3点における表面粗さ測定し、これらの平均値を表面粗さRzとする。
【0030】
コート層4は、通常、0.1〜50μmの層厚を有しているのが好ましく、10〜20μmの層厚を有しているのがより好ましい。
【0031】
コート層4は導電性を有していても有していなくてもよく、コート層4(すなわち、導電性ローラ1)は、コート層4の導電性により、又は、弾性層3の導電性により、温度20℃、相対湿度50%における体積抵抗率が1012Ω・cm以下であるのが好ましい。導電性ローラ1が1012Ω・cm以下の体積抵抗率を有していると、帯電特性が優れ、例えば、現像剤担持体24の一例である現像ローラとして導電性ローラ1を使用する場合には、現像剤を所望のように帯電させることができるから、現像剤を所望のように担持することができ、担持した現像剤を像担持体に所望のように供給することができる。帯電特性がより一層優れる点で、導電性ローラ1の体積抵抗率は、1010Ω・cm以下であるのがより好ましく、10〜10Ω・cmであるのが特に好ましい。導電性ローラ1の体積抵抗率は、コート層4に含まれる導電性付与剤の含有量、及び/又は、弾性層3の体積抵抗率等を調整することによって、前記範囲内に調整することができ、その測定方法は、前記弾性層3の体積抵抗率と同様にして、測定することができる。
【0032】
また、コート層4(すなわち、導電性ローラ1)は、10〜10Ωの電気抵抗値を有していることが好ましい。導電性ローラ1が10〜10Ωの電気抵抗値を有していると、帯電特性をより一層向上させることができる。例えば、導電性ローラ1を現像剤担持体24の一例である現像ローラとして使用すると、現像剤を所望のように帯電させることができるから、現像剤を所望のように担持することができ、担持した現像剤を像担持体に所望のように供給することができる。現像剤の担持及び供給をより一層高い水準で所望のように達成することができる点で、電気抵抗値は、10〜10Ωであるのがより好ましく、10〜10Ωであるのが特に好ましい。導電性ローラ1の電気抵抗値は、前記弾性層3の電気抵抗値と同様にして、測定することができる。
【0033】
コート層4を形成する組成物は、ポリアミド樹脂と、アミノ基を有するシランカップリング剤とを含有する組成物である。
【0034】
ポリアミド樹脂は、ポリカルボン酸とポリアミンとを反応して得られる樹脂であればよく、また、ポリアミド樹脂の原料となるポリアミド調製成分であってもよく、さらには、前記ポリアミド樹脂と前記ポリアミド調製成分との混合物であってもよい。前記ポリアミド調製成分は、酸アミド(−CONH−)を繰り返し単位にもつポリアミドを形成することができる成分であればよく、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタム、ω−アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸、ポリカルボン酸とポリアミンとの混合物、又は、ポリカルボン酸とポリアミンとを反応して得られるプレポリマー等が挙げられる。
【0035】
前記ポリカルボン酸はポリアミドに通常用いられるカルボン酸を特に制限されずに用いることができ、例えば、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等のジカルボン酸等が挙げられる。また、前記ポリアミンはポリアミドに通常用いられるポリアミンを特に制限されずに用いることができ、例えば、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン等のジアミン等が挙げられる。
【0036】
前記ポリアミド樹脂は、例えば、ナイロンであるのが好ましく、例えば、ε−カプロラクタムを開環重合して得られるナイロン6、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとを重縮合して得られるナイロン66、セバシン酸とヘキサメチレンジアミンとを重縮合して得られるナイロン610、ω−アミノウンデカン酸を重縮合して得られるナイロン11、ω−ラウロラクタムを開環重合して得られるナイロン12又はこれらの共重合体等が挙げられる。また、これらのナイロンは、各種置換基を有していてもよく、例えば、アミド基に結合している水素原子を置換するメトキシメチル基等のアルキル基等が挙げられる。これらの中でも、特に、アルコール可溶性ナイロンが好ましい。
【0037】
アルコール可溶性ナイロンとしては、例えば、N−メトキシメチル化ナイロンが特に好適に挙げられる。このN−メトキシメチル化ナイロンは、ナイロン6のアミド基に結合している水素原子をメトキシメチル基で置換してなるナイロン6であり、メトキシメチル基によって置換される水素原子の割合(メトキシメチル基の置換割合)は、アミド基に結合している水素原子(通常、1つのアミド基に1つの水素原子が結合している。)の合計を100モルとしたときに、メトキシメチル基で置換された水素原子(すなわち、アミド基に導入されたメトキシメチル基)の合計モル数が10〜40モル%であるのが好ましく、20〜30モル%であるのが特に好ましい。なお、前記水素原子の割合は、例えば、NMR法によって、測定することができる。
【0038】
このN−メトキシメチル化ナイロンは、後述する触媒の存在下、N−メトキシメチル化ナイロンのN−メトキシメチル基からメトキシ基と、N−メトキシメチル化ナイロンの通常のアミド結合(−CONH−)から水素原子とが脱離して、N−メトキシメチル化ナイロンの2つのアミド結合にメチレン基(−CH−)の架橋(−CON−CH−NCO−)が形成される。このように、N−メトキシメチル化ナイロンは、メチレン架橋によって、分子内及び/又は分子間で架橋し、密なネットワークを形成する。したがって、N−メトキシメチル化ナイロンを含有する組成物を硬化して成るコート層4は、それ自体の引張強度及び耐摩耗性が向上すると共に、吸湿しにくくなり、高温高湿下での耐久性も向上する。
【0039】
前記ポリアミドは、硬化後(N−メトキシメチル化ナイロンの場合には、アミド結合の架橋後)10,000〜50,000の数平均分子量を有するのが好ましく、20,000〜45,000の数平均分子量を有するのがさらに好ましい。ポリアミドの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
【0040】
コート層4を形成する組成物に含有される前記アミノ基を含有するシランカップリング剤(以下、アミノシランカップリング剤と称することがある。)は、分子内に、加水分解性シリル基とアミノ基とをそれぞれ少なくとも1つ有していればよく、例えば、式 R−SiR(3−m) (式において、Rはアミノ基含有基であり、Rは有機基であり、Rは加水分解性基であり、mは0〜2の整数である。)で示されるアミノシランカップリング剤が挙げられる。
【0041】
前記アミノ基含有基Rは、アミノ基を含有する基であればよく、例えば、アミノアルキル基、アミノアリール基等が挙げられ、アミノ基含有基Rの炭素数は、特に限定されないが、例えば、1〜20程度であるのが好ましい。アミノ基含有基Rに含まれるアミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基(イミノ基を含む。)、3級アミノ基及び4級アミノ基のいずれでもよいが、帯電特性に優れる点で、1級アミノ基、2級アミノ基又は3級アミノ基であるのが好ましい。アミノ基含有基Rは2種以上のアミノ基を含んでもよい。前記アミノアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピル基、N,N−ジメチルアミノプロピル基及びこれらのアルキル又はアリール置換体等が挙げられ、前記アミノアリール基としては、例えば、アミノフェニル基、アミノベンジル基及びこれらのアルキル又はアリール置換体等が挙げられる。
【0042】
前記有機基Rは、例えば、炭素数1〜30程度の、アルキル基及びアリール基等が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0043】
前記加水分解性基Rは、水分の存在下でSi−R結合が容易に加水分解しうる基であればよく、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基等の加水分解性置換基が挙げられる。これらの中でも、入手が容易である点で、アルコキシ基であるのが好ましく、アルコキシ基として、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
【0044】
前記mは、0〜2の整数であり、アミノシランカップリング剤の硬化速度が速く、所望の特性を発揮することができる点で、0又は1であるのが好ましく、0であるのが特に好ましい。
【0045】
前記式で表されるアミノシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトシキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトシキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジオクチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジブチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ジブチルアミノプロピルジメチルモノメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N,N−ジメチルアミノフェニルトリメトキシシラン、トリメトキシシリル−3−プロピルフェニルアミン、トリメトキシシリル−3−プロピルベンジルアミン、トリメトキシシリル−3−プロピルピペリジン、トリメトキシシリル−3−プロピルモルホリン、トリメトキシシリル−3−プロピルイミダゾール等が挙げられる。
【0046】
前記組成物におけるアミノシランカップリング剤の含有量は、前記ポリアミド樹脂20質量部に対して0.3〜2.0質量部である。アミノシランカップリング剤の含有量が0.3質量部未満であると、現像剤特に負帯電性現像剤への電荷付与能力が低下し、現像剤に与える損傷等を効果的に低減させることができないことがある。すなわち、帯電特性及び/又は耐フィルミング性に劣ることがある。一方、アミノシランカップリング剤の含有量が2.0質量部を越えると、コート層4の強度が低下して使用中に亀裂が生じたり摩耗したりすることによって、弾性層3を形成する前記導電性組成物に含有されるゴム成分例えばシリコーンゴム成分がコート層4の表面に漏出し、被当接体を汚染することがある。より高水準の帯電特性及び耐フィルミング性を発揮し、被当接体の汚染を防止することができる点で、アミノシランカップリング剤の含有量は、0.5〜1.5質量部であるのが好ましい。
【0047】
前記組成物は、ポリアミド樹脂としてN−メトキシメチル化ナイロンを選択した場合には、N−メトキシメチル化ナイロンを架橋させる触媒を含有するのが好ましい。このような触媒は、特に限定されず、例えば、クエン酸及びp−トルエンスルホン酸等の有機酸、無機酸、エポキシ化合物、メラミン化合物等が挙げられる。これらの触媒は、通常、N−メトキシメチル化ナイロン20質量部に対して0.5〜3質量部含有される。
【0048】
前記組成物は、ポリアミド樹脂及びアミノシランカップリング剤に加えて、通常、組成物に含有される各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、前記弾性層3を形成する導電性組成物に含有される添加剤を特に限定されることなく挙げることができる。
【0049】
組成物は、前記のゴム混練り機等を用いて、ポリアミド樹脂及びアミノシランカップリング剤、所望により各種添加剤等を均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0050】
組成物は、弾性層3の外周面に容易に形成することができる点で、例えば、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有しているのがよく、5〜200Pa・sの粘度を有しているのが特によい。組成物の粘度は、通常、それらに含まれる各成分の種類及び/又は配合量によって、調整することができる。また、必要により、溶剤等により、粘度を調整することもできる。
【0051】
この発明に係る導電性ローラ1は、弾性層3とコート層4との間に、他の層を有してもよい。他の層としては、例えば、弾性層3とコート層4とを接着又は密着させるプライマー層等が挙げられる。プライマー層を形成する材料としては、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。また、これらの樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
【0052】
この発明に係る導電性ローラは、前記軸体2の外周面に弾性層3を形成し、さらに、弾性層3の外周面にコート層4を形成して、製造される。導電性ローラ1を製造するには、まず、軸体2が準備される。例えば、軸体2は公知の方法により所望の形状に調製される。この軸体2は、弾性層3が形成される前に、プライマーを塗布してもよい。軸体2に塗布されるプライマーとしては、特に制限はないが、前記弾性層3とコート層4とを接着又は密着させるプライマー層とを形成する材料と同様の樹脂及び架橋剤が挙げられる。プライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体の外周面に塗布される。
【0053】
弾性層3は、前記導電性組成物を、軸体2の外周面に加熱硬化して形成される。例えば、弾性層3は、公知の成形方法によって、加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。導電性組成物の硬化方法は導電性組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよく、また弾性層3の成形方法も押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、導電性組成物が付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、押出成形等を選択することができ、導電性組成物が付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、金型を用いる成形法を選択することができる。導電性組成物を硬化させる際の加熱温度は、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜500℃、特に120〜300℃、時間は数秒以上1時間以下、特に10秒以上〜35分以下であるのが好ましく、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜300℃、特に110〜200℃、時間は30分〜5時間、特に1〜3時間であるのが好ましい。また、必要に応じ、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜200℃で1〜20時間程度の硬化条件で、また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、120〜250℃で30〜70時間程度の硬化条件で、二次加硫してもよい。また、導電性組成物は既知の方法で発泡硬化させることにより、気泡を有するスポンジ状弾性層を容易に形成することもできる。
【0054】
このようにして形成された弾性層3は、所望により、その表面が研磨、研削されて、外径及び表面状態等が調整される。また、このようにして形成された弾性層3は、コート層4が形成される前に、前記プライマー層が形成されてもよい。
【0055】
コート層4は、このようにして形成された弾性層3、又は、所望により形成されたプライマー層の外周面に、前記組成物を塗工し、次いで、塗工された組成物を加熱硬化させて、形成される。組成物の塗工は、例えば、組成物の塗工液を塗工する塗布法、前記塗工液に弾性層3等を浸漬するディッピング法、前記塗工液を弾性層3等に吹き付けるスプレーコーティング法等の公知の塗工方法によって、行われる。組成物は、そのまま塗工してもよいし、組成物に、例えば、メタノール及びエタノール等のアルコール、キシレン及びトルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の揮発性溶媒、又は、水を加えた塗工液を塗工してもよい。この塗工液は、組成物を溶解又は懸濁させた塗工液であり、例えば、揮発性溶媒又は水を70質量%程度含有する。このようにして塗工された組成物を硬化する方法は、組成物の硬化等に必要な熱を加えられる方法であればよく、例えば、組成物が塗工された弾性層3等を加熱器で加熱する方法等が挙げられる。組成物を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、100〜200℃、特に120〜160℃、加熱時間は10〜120分間、特に30〜60分間であるのが好ましい。なお、前記塗工に代えて、前記組成物を弾性層3又はプライマー層の外周面に、押出成形、プレス成形、インジェクション成形等の公知の成形方法によって、積層すると共に、又は、積層した後に、積層された組成物を加熱する方法等が採用されることができる。なお、N−メトキシメチル化ナイロンの分子内及び/又は分子間架橋は、前記触媒の存在下、室温又は前記加熱温度の加熱によって、速やかに進行する。
【0056】
導電性ローラ1は、帯電特性、耐フィルミング性及び耐摩耗性が良好であるから、高品質の画像を形成することに十分に貢献することができる。したがって、導電性ローラ1は、画像形成装置用のクリーニングローラ、帯電ローラ、現像ローラ及び転写ローラに好適に用いられる。
【0057】
次に、この発明に係る導電性ローラ1を備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図2を参照して、説明する。この画像形成装置10は、図2に示されるように、各色の現像ユニットB、C、M及びYに装備された複数の像担持体11B、11C、11M及び11Yを転写搬送ベルト6上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、したがって、現像ユニットB、C、M及びYが転写搬送ベルト6上に直列に配置されている。これらの現像ユニットB、C、M及びYは、現像ユニットBは、像担持体11B例えば感光体(感光ドラムとも称される。)と、帯電手段12B例えば帯電ローラと、露光手段13Bと、現像手段20Bと、転写搬送ベルト6を介して像担持体11Bに当接する転写手段14B例えば転写ローラと、クリーニング手段17Bとを備えている。前記現像手段20Bは、一成分非磁性の現像剤22Bを収容する筐体21Bと、現像剤22Bを像担持体11Bに供給する現像剤担持体24B例えば現像ローラと、現像剤22Bの厚みを調整する現像剤量調節手段25B例えばブレードとを備えて成る。現像ユニットC、M及びYは現像ユニットBと基本的に同様に構成されている。定着手段15は、現像ユニットYの下流側に配置され、搬送されてくる記録体16を挟持するように対向配置された定着ローラ15aと加圧ローラ15bとを有する。画像形成装置10の底部には、記録体16を収容するカセット31が設置されている。
【0058】
画像形成装置10に使用される現像剤22B、22C、22M及び22Yはそれぞれ、摩擦により帯電可能な現像剤であれば、乾式現像剤でも湿式現像剤でもよく、また、非磁性現像剤でも磁性現像剤でもよい。各現像ユニットの筐体21B、21C、21M及び21Y内には、一成分非磁性の、黒色現像剤22B、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yが収納されている。画像形成装置10において、導電性ローラ1は、現像剤担持体24B、24C、24M及び24Y、すなわち、現像ローラとして装着されている。
【0059】
画像形成装置10は、以下のようにして記録体16にカラー画像を形成する。まず、現像ユニットBにおいて、露光手段13Bにより像担持体11Bの表面に静電潜像が形成され、現像剤担持体24Bにより供給された現像剤22Bで黒色の静電潜像が現像される。そして、記録体16が転写手段14Bと像担持体11Bとの間を通過する際に黒色の静電潜像が記録体16Bの表面に転写される。次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、静電潜像が黒像に顕像化された記録体16に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は、定着手段15によりカラー像が永久画像として記録体16に定着される。このようにして、記録体16にカラー画像を形成することができる。
【0060】
このタンデム型画像形成装置10において、現像剤担持体24としてこの発明に係る導電性ローラ1を用いると、導電性ローラ1は帯電特性、耐フィルミング性及び耐摩耗性が良好であるから、導電性ローラ1を備えたタンデム型画像形成装置10は、形成される画像の印字濃度が均一になるうえ、形成される画像にカブリが発生することを効果的に防止することができ、さらに、耐フィルミング性及び耐摩耗性にも優れるから、高品質の画像を所望のように形成することができる。
【0061】
前記画像形成装置10は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。なお、画像形成装置10においてはいずれも、この発明に係る導電性ローラ1を現像剤担持体24の一例である現像ローラとして用いた例を参照して、説明したが、画像形成装置に配設され、かつ、現像剤又は記録体等と接触しうるローラ、例えば、クリーニングローラ、帯電ローラ及び転写ローラ等として、この発明に係る導電性ローラ1を用いても、高品質の画像を形成することができる。
【0062】
画像形成装置10は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、この発明に係る導電性ローラ1が配設される画像形成装置は、各色の現像ユニットを備えた複数の像担持体を転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置に限られず、例えば、単一の現像ユニットを備えたモノクロ画像形成装置、像担持体上に担持された現像剤像を無端ベルトに順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置等であってもよい。また、画像形成装置10に用いられる現像剤22は、一成分非磁性現像剤とされているが、この発明においては、一成分磁性現像剤であってもよく、二成分非磁性現像剤であっても、また、二成分磁性現像剤であってもよい。
【実施例】
【0063】
(実施例1)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM22製、直径10mm、長さ275mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の表面にプライマー層を形成した。
【0064】
メチルビニルシリコーン生ゴム(商品名「KE−78VBS」、信越化学工業株式会社製)100質量部と、ジメチルシリコーン生ゴム(商品名「KE−76VBS」、信越化学工業株式会社製)20質量部と、カーボンブラック(商品名「アサヒサーマル」、旭カーボン株式会社製)10質量部と、煙霧質シリカ系充填材(商品名「AEROSIL OX−50」、平均一次粒径40nm、嵩密度1.3g/cm、日本アエロジル株式会社製)15質量部と、白金系触媒(商品名「C−19A」、信越化学工業株式会社製)0.5質量部と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(商品名「C−19B」、信越化学工業株式会社製)2.0質量部とを混合し、加圧ニーダーで混練して、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物を調製した。
【0065】
次いで、プライマー層を形成した軸体と前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物とを、クロスヘッド型押出成形機にて一体分出し、ギヤオーブンを用いて、250℃、30分間加熱した。その後、さらに、ギヤオーブンを用いて、200℃で4時間にわたって、二次加熱し、常温にて24時間放置した。次いで、円筒研削盤にて、形成した弾性層の直径が18mmとなるように、弾性層の表面を研磨した。このようにして形成した弾性層のJIS A硬度及び体積抵抗率(温度20℃、相対湿度50%)、電気抵抗率を前記方法により、測定したところ、JIS A硬度は40であり、体積抵抗率は2×10Ω・cmであり、電気抵抗率は5×10Ωであった。
【0066】
N−メトキシメチル化ナイロン(商品名「FR−101」、メトキシメチル基の置換割合30モル%、数平均分子量約20,000)20質量部と、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名「KBE−903」、信越化学工業株式会社製)0.5質量部と、酸触媒(クエン酸)3質量部と、カーボンブラック(商品名「デンカブラック」、電気化学工業株式会社製)10質量部とを、メタノール80質量部に混合して、コート層用の組成物を調整した。
【0067】
次いで、弾性層の表面に、シリコーン系プライマー(商品名「KBP−40」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマーが塗布された弾性層の表面に、前記コート層用の組成物を、スプレーコーティング法によって、一回塗布し、120℃で60分間加熱し、この組成物を架橋及び/又は硬化させて、層厚10μmのコート層4を形成した。このようにして、実施例1の導電性ローラを作製した。前記方法により測定したところ、コート層、すなわち、導電性ローラは、ゲル分率98%、JIS A硬度42、表面粗さRz4.7μm、体積抵抗率6×10Ω・cm、電気抵抗率2×10Ωの物性を有していた。
【0068】
(実施例2)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名「KBE−903」)に代えて、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(商品名「KBE−902」、信越化学工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の導電性ローラを製造した。このようにして製造された導電性ローラは、ゲル分率97%、JIS A硬度42、表面粗さRz3.6μm、体積抵抗率5×10Ω・cm、電気抵抗率8×10Ωの物性を有していた。
【0069】
(実施例3)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名「KBE−903」)に代えて、アミノシラン系カップリング剤(商品名「KBP−40」、信越化学工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の導電性ローラを製造した。このようにして製造された導電性ローラは、ゲル分率98%、JIS A硬度42、表面粗さRz4.3μm、体積抵抗率6×10Ω・cm、電気抵抗率2×10Ωの物性を有していた。
【0070】
(実施例4)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名「KBE−903」)に代えて、アミノシラン系カップリング剤(商品名「KBP−43」、信越化学工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の導電性ローラを製造した。このようにして製造された導電性ローラは、ゲル分率98%、JIS A硬度42、表面粗さRz4.8μm、体積抵抗率4×10Ω・cm、電気抵抗率3×10Ωの物性を有していた。
【0071】
(実施例5)
N−メトキシメチル化ナイロン(商品名「FR−101」)に代えて、N−メトキシメチル化ナイロン(商品名「FR−105」、メトキシメチル基の置換割合30モル%、数平均分子量45,000)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の導電性ローラを製造した。このようにして製造された導電性ローラは、ゲル分率99%、JIS A硬度42、表面粗さRz5.3μm、体積抵抗率5×10Ω・cm、電気抵抗率6×10Ωの物性を有していた。
【0072】
(実施例6)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名「KBE−903」)の含有量を0.5質量部から1.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の導電性ローラを製造した。このようにして製造された導電性ローラは、ゲル分率97%、JIS A硬度42、表面粗さRz4.3μm、体積抵抗率6×10Ω・cm、電気抵抗率5×10Ωの物性を有していた。
(実施例7)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名「KBE−903」)の含有量を0.5質量部から1.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例7の導電性ローラを製造した。このようにして製造された導電性ローラは、ゲル分率95%、JIS A硬度42、表面粗さRz4.2μm、体積抵抗率6×10Ω・cm、電気抵抗率8×10Ωの物性を有していた。
【0073】
(実施例8)
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物に代えて、ポリエーテルポリオール(商品名「ON−F40」、日本ポリウレタン工業株式会社製)100質量部に、ケッチェンブラック5質量部加えて、80℃で攪拌後、イソシアネート(商品名「コロネート−HX」、日本ポリウレタン工業株式会社製)18質量部(NCO/OH=0.9)を添加して調製した導電性ウレタン組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例8の導電性ローラを製造した。このようにして製造された導電性ローラは、ゲル分率98%、JIS A硬度43、表面粗さRz5.2μm、体積抵抗率3×10Ω・cm、電気抵抗率1×10Ωの物性を有していた。
【0074】
(比較例1)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名「KBE−903」)を用いることなくコート層用の組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の導電性ローラを製造した。このようにして製造された導電性ローラは、ゲル分率98%、JIS A硬度42、表面粗さRz4.4μm、体積抵抗率3×10Ω・cm、電気抵抗率2×10Ωの物性を有していた。
【0075】
(比較例2)
N−メトキシメチル化ナイロン(商品名「FR−101」)を用いることなくコート層用の組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の導電性ローラを製造した。このようにして製造された導電性ローラはゲル分率53%、JIS A硬度42、表面粗さRz5.2μm、体積抵抗率3×10Ω・cm、電気抵抗率3×10Ωの物性を有していた。
【0076】
(比較例3)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名「KBE−903」)に代えて、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM−503」、信越化学工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の導電性ローラを製造した。このようにして製造された導電性ローラは、ゲル分率98%、JIS A硬度42、表面粗さRz4.6μm、体積抵抗率5×10Ω・cm、電気抵抗率2×10Ωの物性を有していた。
【0077】
(印字濃度の均一性、カブリ、耐フィルミング性及び耐摩耗性の評価)
実施例1〜8及び比較例1〜3で製造した各導電性ローラを現像ローラとして、非磁性一成分電子写真方式のプリンターの現像機に配置し、室温、低温低湿(10℃、15%RH)次いで高温高湿(32℃、80%RH)の環境下で、連続して、黒ベタ印字及び白ベタ印字をそれぞれ実施した(前印刷工程)。この前印刷工程を実施した後に、室温において、さらに、印字率1%の横線パターンでA4用紙5,000枚を連続印刷し、次いで、白ベタ印字、黒ベタ印字の順で印字を行った(本印刷工程)。本印刷工程後の像担持体の表面を目視で観察し、フィルミングの有無、及び、現像ローラとして配置した導電性ローラの表面(5mm×10mm)を任意に3箇所選定し、光学顕微鏡により拡大観察し、コート層4の破損の有無を確認した。また、本印刷工程で印刷した5,000枚目の画像を取り出し、画像全体における印字濃度の均一性を目視で評価した。さらに、本印刷工程で印刷した白ベタ印字部分に現像剤の付着の有無(カブリ)を目視で確認した。
【0078】
印字濃度の均一性評価は、取り出した前記画像の印字濃度が均一であった場合を「○」、取り出した前記画像の印字濃度にムラがあり、又は、取り出した前記画像が低濃度であった場合を「×」とした。カブリ評価は、白ベタ印字部分に現像剤が付着していなかった場合を「○」、白ベタ印字部分に現像剤が付着していた場合を「×」とした。耐フィルミング性評価は、フィルミングが発生していなかった場合を「○」、フィルミングが発生していた場合を「×」とした。耐摩耗性評価は、導電性ローラのコート層4が破損していなかった場合を「○」、コート層4が破損していた場合を「×」とした。これらの評価結果を第1表に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
その結果、N−メトキシメチル化ナイロンとアミノシランカップリング剤とを含有するコート層用の組成物を硬化してなるコート層を備えた実施例1〜8の導電性ローラはいずれも、弾性層を構成するゴムの種類にかかわらず、印字濃度の均一性評価及びカブリ評価すなわち帯電特性に優れ、かつ、耐フィルミング性及び耐摩耗性を高い水準で両立していた。これに対して、比較例1及び3の導電性ローラは印字濃度の均一性、カブリ及び耐フィルミング性に劣り、比較例2の導電性ローラは耐フィルミング性及び耐摩耗性に劣った。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、導電性ローラの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、この発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0082】
1 導電性ローラ
2 軸体
3 導電性弾性層
4 コート層
6 転写搬送ベルト
10 画像形成装置
11B、11C、11M、11Y 像担持体
12B、12C、12M、12Y 帯電手段
13B、13C、13M、13Y 露光手段
14B、14C、14M、14Y 転写手段
15B、15C、15M、15Y クリーニング手段
16 記録体
20 現像手段
21B、21C、21M、21Y、34 筐体
22B、22C、22M、22Y 現像剤
23B、23C、23M、23Y 現像剤担持体
24B、24C、24M、24Y 現像剤規制部材
30 定着手段
31 定着ローラ
32 加圧ローラ
33 無端ベルト支持ローラ
35 開口部
41 カセット
42 支持ローラ
B、C、M、Y 現像ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面に形成された弾性層と、前記弾性層の外周面に、ポリアミド樹脂とアミノ基を有するシランカップリング剤とを含有する組成物を硬化してなるコート層とを備えて成る導電性ローラ。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性ローラを備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−157032(P2009−157032A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333904(P2007−333904)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】