説明

導電性材料前駆体およびその製造方法

【課題】十分な耐熱性を有し、導電性も高く、マイグレーションの起きにくい導電性材料を製造するための導電性材料前駆体を提供する。
【解決手段】耐熱性支持体上に少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体において、該物理現像核層と、該耐熱性支持体と該物理現像核層との間の下引き層の少なくとも一方がポリイミドおよび/またはポリアミドイミドを含有し、該物理現像核層が物理現像核として金属硫化物を含有することを特徴とする導電性材料前駆体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路等の用途に用いることができる導電性材料前駆体、特に耐熱性支持体を用いた導電性材料前駆体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化が強く求められる中、プリント基板を始めとする電気回路は益々高密度化、高精細化が求められてきている。
【0003】
電気回路を製造する方法としては例えば、1)銅、金、ITO、酸化スズ等の導電性材料で被覆された絶縁性基板に、2)感光性樹脂等のフォトレジスト剤を塗りつけ、3)所望のパターンのマスクをかけて紫外線等を照射して、4)フォトレジスト剤を硬化させ、5)未硬化部分を取り除いた後、6)化学エッチング等によって不要な銅箔部分を除去し電気回路を形成する方法(サブトラクティブ法)が知られている。この方法では工程が煩雑で、かつ高精細な画線を描くことは金属のエッチング工程を有している為困難であった。
【0004】
高精細な画線を描く方法としては、1)絶縁性基板に無電解めっき触媒を付与し、2)フォトレジスト剤を塗布し、露光及び現像し、3)無電解めっきを施し、導電パターンを形成し、4)めっきレジストを除去する方法(フルアディティブ法)、あるいは無電解めっきの効率の悪い点を改良するために、1)絶縁性基板に無電解めっき触媒を付与し、2)フォトレジスト剤を塗布し、露光及び現像し、3)電解めっきを施し、導電パターンを形成し、4)めっきレジスト等を剥離する方法(セミアディティブ法)等も知られている。やはりこの方法も工程が煩雑で、サブトラクティブ法同様使用したフォトレジスト剤全てを最終的に廃棄せざるを得ないという問題を有していた。
【0005】
簡易な工程で電気回路を製造する方法としては金属ペーストを基板上にスクリーン印刷法やインクジェット印刷法等で印刷し、焼結等させることで電気回路を形成する方法も知られている。しかしながら、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法では50μm以下の高精細な画線を描くことは困難であった。更にスクリーン印刷の場合、高精細な画線を連続して描こうとした場合、高精細な紗を使用しなければならないが、逆にその紗が詰まりやすいという問題を有している。インクジェット法の場合は特に電気回路を製造する場合だけでなく、民生用のインクジェットプリンタを含め、固形分を含有するインク組成物を印刷する場合には常にインクジェットノズルが詰まるという問題を有している。従って、印刷法を用いて電気回路を製造する場合には、その繰り返し再現性に問題を有していた。
【0006】
均一で高精細なパターンを簡易に、かつ安定に作ると言う観点において、近年導電性材料前駆体としてハロゲン化銀乳剤層を含有する銀塩写真感光材料を使用する方法が提案されている。例えば国際公開第01/51276号パンフレット、特開2004−221564号公報では銀塩写真感光材料を、1)像露光、現像処理した後、2)金属めっき処理を施すことで導電性材料を製造する方法の提案がなされている。これらの方法で得られた導電性材料は銀塩写真法を用いているため、高精細な画線を描くことは容易であり、繰り返し再現性も高く、工程も簡易で、非常に良好な性質を示すが、金属パターンがゼラチンを始めとする水溶性高分子をバインダーとして担持されているので、電気回路として用いようとしても耐熱性が低く、例えばハンダ接着しようとしても焦げてしまうという問題があり、実用性が無かった。
【0007】
また、同じく銀塩感光材料を使う方法として銀塩拡散転写法を用いる方法も提案されており、例えば特開2003−77350号公報や特開2005−250169号公報等がある。また耐熱性支持体としてポリイミドベースを用い銀塩拡散転写法により導電性材料を製造する方法としては特開2006−237322号公報(特許文献1)もある。特許文献1ではポリイミドベース表面をアルカリで加水分解するなどして親水化し、それにより物理現像核との密着性を上げている。銀塩拡散転写法の簡易な工程でかつ高精細な金属パターンを電気回路として用いるには十分な耐熱性および密着性を有する点において非常に優れた方法である。しかしこの方法ではポリイミドベース内部まで加水分解される場合があり、このため銀塩拡散転写法で作製した金属パターンの導電性が低く、その後電解めっきを行うことが困難な場合もあった。また銀塩拡散転写法により製造された導電性材料の金属パターンは銀を含有しているが、銀は電界により金属配線部から絶縁物中に移動するマイグレーション現象の最も起きやすい金属として知られている。加水分解されたポリイミドベースを用いる場合、ポリイミドベースの含水率が高くなるため、よりマイグレーションが起きやすくなるという欠点を有していた。さらにポリイミドベース以外の耐熱性支持体、例えば液晶ポリアリレート等には応用できないという欠点も有している。
【0008】
フレキシブル回路基盤を作製するのには耐熱性の高いポリイミド支持体が多く用いられるが、同時にポリイミド支持体は金属との密着性が悪いことも知られている。この欠点を改良するため種々の方法が提案されており、例えば特開2002−30216号公報(特許文献2)にはポリイミド支持体上に無電解めっき触媒を付与するのに、パラジウム化合物を含有するポリイミド前駆体溶液を塗布、乾燥し、水素供与体の存在下で紫外線照射することで該パラジウム化合物を還元し、その後に無電解めっきおよび電解めっきし、サブトラクティブ法で電気回路を作製する方法が提案されている。しかしこのような方法では絶縁物中にパラジウム粒子が分散した状態になる。サブトラクティブ法で電気回路を作成する場合には、サブトラクティブ法の中の銅のエッチング工程により、絶縁物中のパラジウム粒子は除去される。一方、銀塩拡散転写法を利用して導電性材料を製造した場合は、そのような工程は無いため、パラジウム粒子はポリイミド支持体上に残ったままとなるため、前述のマイグレーションが特に助長されてしまうという欠点を有している。この例の如く、従来のサブトラクティブ法等で有効な方法も銀塩拡散転写法では応用できないが為に、特に銀塩拡散転写法で問題となるマイグレーションの問題を解決する方法が求められていた。
【特許文献1】特開2006−237322号公報(1頁)
【特許文献2】特開2002−30216号公報(1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は十分な耐熱性を有し、導電性も高く、マイグレーション特性の改善された導電性材料前駆体、および導電性材料前駆体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は以下の発明により達成された。
1)耐熱性支持体上に少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体において、該物理現像核層と、該耐熱性支持体と該物理現像核層との間の下引き層の少なくとも一方がポリイミドおよび/またはポリアミドイミドを含有し、物理現像核層が金属硫化物を物理現像核として含有することを特徴とする導電性材料前駆体。
2)(1)記載の導電性材料前駆体を製造する製造方法であって、該物理現像核層を耐熱性支持体上、もしくは下引き層上に塗設した後に、180℃以上で加熱処理することを特徴とする導電性材料前駆体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、十分な耐熱性を有し、導電性も高く、マイグレーションの起きにくい導電性材料が得られる導電性材料前駆体、および導電性材料前駆体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の導電性材料前駆体は耐熱性支持体上に少なくとも物理現像核層、ハロゲン化銀乳剤層を耐熱性支持体に近い方からこの順で有する。さらには、非感光性層を耐熱性支持体から最も遠い最外層として、あるいは物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との間の中間層として有していても良い。また物理現像核層と耐熱性支持体との間に耐熱性支持体と現像後形成される金属パターンとの接着性を高めるため下引き層を設けることも可能である。本発明の導電性材料前駆体は、物理現像核層と下引き層の少なくとも一方にポリアミドイミドおよび/またはポリイミドを含有する。特に下引き層を設けずに物理現像核層のみにポリアミドイミドおよび/またはポリイミドを含有させる形態が、マイグレーションが起きにくく、かつ下引き塗設の工程が不要になる為、本発明においては最も好ましい。
【0013】
本発明の導電性材料前駆体の物理現像核層と下引き層の少なくとも一方にポリイミドを含有させるのには、ポリイミドが溶解した塗液を作製し、これによりこれらの層を塗設することが望ましい。しかしポリイミドは剛直な主鎖構造により不溶、不融の性質を持つため、ポリイミドの溶解した塗液を作製することは困難である。従って、本発明においては、芳香族多価カルボン酸とジアミンから合成される溶媒に可溶なポリアミック酸をポリイミド前駆体として用い、ポリイミド前駆体を含有する塗液を作製し、塗布、乾燥した後、後述する物理現像核層の塗設後に加熱処理してポリイミド前駆体をイミド化することで、ポリイミドを含有する物理現像核層および/または下引き層を設ける。
【0014】
本発明の導電性材料前駆体においては、ポリイミド前駆体としてのポリアミック酸として下記一般式(I)で表される構造を分子中に有するものを用いることができる。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(I)においてAr1は少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を表し、Ar2は少なくとも1つの炭素6員環を含む2価の芳香族残基を表す。nは15から3000の自然数を表す。
【0017】
前述の通り一般式(I)で示されるポリアミック酸は芳香族多価カルボン酸無水物成分とジアミン成分を等モル有機極性溶媒中で重合反応させることにより得られる。本発明で用いられる芳香族多価カルボン酸無水物をの具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0018】
また芳香族ジアミンとしては、例えばm−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、3,4′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、3,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、4,4′−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4′−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4′−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ベンゾフェノン、4,4′−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、ビス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル〕スルホン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。
【0019】
本発明の導電性材料前駆体において用いることのできるポリイミド前駆体としては前述の通り、一般式(I)で表される構造を分子中に有していれば何れでも使用でき、例えばシリコーン変性やフッ素変性されたポリイミド前駆体も用いることができる。しかし、本発明において用いる導電性材料前駆体の製造に用いる物理現像核層塗液および下引き層塗液は水系であることが好ましく、そのため本発明で用いるポリイミド前駆体としてのポリアミック酸は水溶性のものを用いることが特に好ましい。また、水系の塗工液を用いることは高価な極性溶媒の使用量を少なくできると言う観点からも好ましい。この様な水溶性ポリアミック酸としては例えば、特公平3−15659号公報に記載された2,3,5−トリカルボキシ−シクロペンチル酢酸系ポリイミド前駆体をアミド系溶媒中で合成し、トリエチルアミンやジエチルアミン等と反応させて得られる水溶性ポリアミック酸や、特開平8−3445号公報、特開平8−59832号公報、特開平8−291252号公報等に記載のポリアミック酸にアミノアルコ−ル系アミン化合物を反応させて得た水溶性ポリアミック酸、あるいは特開2002−226582号公報等に記載のポリアミック酸に1,2−ジメチルイミダゾ−ル及び/又は1−メチル−2−エチルイミダゾ−ルと反応させて得られる水溶性ポリアミック酸等が挙げられる。
【0020】
本発明において、簡便にはポリアミック酸組成物が極性有機溶媒に溶解されているポリイミドワニスとして上市されているものを入手することも可能である。それらは例えば、トレニース(東レ社製)、U−ワニス(宇部興産社製)、リカコート(新日本理化社製)、オプトマー(JSR社製)、SE812(日産化学工業社製)、CRC8000(住友ベークライト社製)等を代表的に挙げることができる。
【0021】
本発明の導電性材料前駆体において用いることのできるポリアミドイミドは前述のポリイミドとは異なり、極性有機溶媒や水に溶解させて塗工することも可能なので、イミド化が完了したポリアミドイミドの形で用いても良いし、あるいはイミド化の完了していないポリアミドイミド前駆体であるポリアミック酸の形で塗布液に含有させて塗設し、後述する物理現像核層の塗布後に加熱処理してイミド化することで用いることもできる。これらポリアミドイミドおよびその前駆体としてのポリアミック酸は公知の方法、例えば(1)イソシアネート法:酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体と芳香族イソシアネートより溶媒中で直接ポリアミドイミドを製造する方法(例えば特公昭44−19274号公報)、(2)酸クロライド法:酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライド、最も代表的には前記誘導体クロライドとジアミンから溶媒中でポリアミドイミド前駆体を製造する方法(例えば特公昭42−15637号公報)が用いられる。
【0022】
(1)イソシアネート法
酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体としては、例えば下記一般式(II)及び(III)で示す化合物を使用することができる。
【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
一般式(II)、(III)中、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、Y1は−CH2−、−CO−、−SO2−又は−O−を示す。これらは何れも使用することができるが、最も代表的には無水トリメリット酸が用いられる。また、これらの酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体は、目的に応じて単独又は混合して用いられる。
【0026】
次に、本発明のポリアミドイミドの製造に用いられる芳香族イソシアネートとしては、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4′−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート、ビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ビフェニル−3,3′−ジイソシアネート、ビフェニル−3,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート等を使用することができる。これらを単独でもこれらを組み合わせて使用することもできる。必要に応じてこの一部としてヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族、脂環式イソシアネート及び3官能以上のポリイソシアネートを使用することもできる。
【0027】
(2)酸クロライド法
酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライドとしては、例えば一般式(IV)及び(V)で示す化合物を使用することができる。
【0028】
【化4】

【0029】
【化5】

【0030】
一般式(IV)、(V)中、Xはハロゲン原子を示し、Y2は−CH2−、−CO−、−SO2−又は−O−を示す。ハロゲン原子としてはクロライドが好ましく、一般式(IV)、(V)で表される好ましい具体例を挙げるとヘミメリット酸無水物モノクロライド、トリメリット酸無水物モノクロライド、3,4,4′−ジフェニルメタントリカルボン酸無水物モノクロライド、3,4,4′−ジフェニルエーテルトリカルボン酸無水物モノクロライド、3,4,4′−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物モノクロライド等の多価カルボン酸の酸クロライドが挙げられる。このうちでもトリメリット酸無水物モノクロライドが最も好ましい。
【0031】
ジアミンは、特に限定されないが、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、および脂環族ジアミンのいずれもが用いられるが、芳香族ジアミンが好ましく用いられる。芳香族ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、オキシジアニリン、メチレンジアミン、ヘキサフルオロイソプロピリデンジアミン、ジアミノ−m−キシリレン、ジアミノ−p−キシリレン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、2,2′−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2′−ビス−(4−アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノビフェニル、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、イソプロピリデンジアニリン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4′−ビス−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2′−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]へキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド等が挙げられる。又ジアミンとして両末端にアミノ基を有するシロキサン系化合物、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノフェノキシメチル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)エチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)エチル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)プロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)プロピル)ポリジメチルシロキサン等を用いればシリコーン変性ポリアミドイミドを得ることができる。
【0032】
本発明においてポリイミドと同様に、ポリアミドイミドおよびポリアミドイミド前駆体(以下、これらをポリアミドイミド類と略す)として水溶性のものを用いることは好ましい形態である。これら水溶性ポリアミドイミド類としては例えば特開平10−67934号公報、特開2002−348470号公報、特開2002−284993号公報記載の水溶性ポリアミドイミド類を用いることができる。また、水溶性ポリアミドイミドとしては例えばHPC100等(日立化成社製)を用いることができる。
【0033】
また非水溶性のポリアミドイミドとしてはバイロマックス(東洋紡社製)、HPC200(日立化成社製)等を用いることができる。
【0034】
本発明において下引き層を導電性材料前駆体に設ける場合には、前述のポリイミド前駆体および/またはポリアミドイミド類を含有した下引き層塗液を作製し、耐熱性支持体に塗布、乾燥する。下引き層塗液の溶媒としては、用いるポリイミド前駆体および/またはポリアミドイミド類が溶解するものなら何れでも良く、そのような溶媒として水あるいは有機溶媒、例えばN−メチルピロリドン、N、N−ジメチルホルムアミド、キシレン、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド等を挙げることができる。その好ましいポリイミド前駆体および/またはポリアミドイミド類の使用量は0.01〜2g/m2、更に好ましくは0.05〜0.8g/m2である。また塗布性等を改良するために、バインダーとして各種高分子、例えばポリビニルアルコールやゼラチン等の水溶性高分子やポリ塩化ビニリデンやポリ塩化ビニル等の非水溶性高分子等を用いる溶媒に応じて含有させることもできるが、その量はポリイミド前駆体および/またはポリアミドイミド類の多くとも20質量%以下、好ましくは10質量%以下となるようにする。また、下引き層にはシランカップリング剤を含有させることもできる。シランカップリング剤としてはアミノ基、メルカプト基を有するシランカップリング剤が特に好ましい。本発明の導電性材料前駆体の下引き層にはこれらの他に界面活性剤や、ITOや酸化亜鉛、酸化錫等の導電性金属酸化物粒子、シリカ粒子等のマット剤を含有させることもできる。
【0035】
本発明においてポリイミド前駆体および/またはポリアミドイミド類を含有する下引き層を耐熱性支持体上に塗工する際の乾燥温度は高くとも250℃以下、好ましくは200℃以下、さらに好ましくは180℃以下で乾燥させる。乾燥時間は下引き層塗液に用いている溶媒に応じて変わり、これら溶媒が全て蒸発するような条件であれば良い。
【0036】
本発明の導電性材料前駆体に下引き層を設けない場合には物理現像核層にバインダーとしてポリイミドおよび/またはポリアミドイミドを含有させる。また、ポリイミドおよび/またはポリアミドイミドを含有する下引き層を設ける場合には物理現像核層にポリイミドおよび/またはポリアミドイミドを含有させても含有させなくとも良い。本発明の導電性材料前駆体の物理現像核層にポリイミドおよび/またはポリアミドイミドを含有させる場合には前述のポリイミド前駆体および/またはポリアミドイミド類を含有する物理現像核層塗液を作製し、塗設する。物理現像核層が含有するポリイミド前駆体および/またはポリアミドイミド類の好ましい量は物理現像核の10〜1000質量%、好ましくは50〜300質量%である。また塗布性等を改良するために、バインダーとして各種高分子、例えばポリビニルアルコールやゼラチン等の水溶性高分子やポリ塩化ビニリデンやポリ塩化ビニル等の非水溶性高分子等を用いる溶媒に応じて含有させることもできるが、その量はポリイミド前駆体および/またはポリアミドイミド類の多くとも20質量%以下、好ましくは10質量%以下となるようにする。
【0037】
本発明の導電性材料前駆体における物理現像核層の物理現像核としては、金属硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀、パラジウム、銅の硫化物が挙げられるが、特に硫化パラジウム核が好ましい。これらの物理現像核層は、真空蒸着法、カソードスパッタリング法、コーティング法によって耐熱性支持体上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1平方メートル当たり0.1〜10mg程度が好ましい。
【0038】
本発明において導電性材料前駆体の物理現像核層にはバインダーや物理現像核の他に界面活性剤、シランカップリング剤等を含有させることも出来る。
【0039】
本発明の導電性材料前駆体は耐熱性支持体上に、もしくは下引き層上に物理現像核層を塗設した後に加熱処理することが好ましい。かかる加熱処理は物理現像核層を塗布、乾燥後に別途加熱処理しても良いし、あるいは物理現像核層の乾燥温度を加熱処理するに足る条件にしておき、物理現像核層塗液の溶媒が蒸発しきった段階で加熱処理が始まるようにしても良い。この加熱条件としては180℃以上、好ましくは250℃以上である。加熱温度の上限は使用する耐熱性支持体のTgと、物理現像核層や下引き層に含有させるポリイミドおよび/またはポリアミドイミドの分解温度とのうち低い方である。好ましい加熱処理時間は3分から3時間、さらに好ましくは5〜90分である。
【0040】
本発明の導電性材料前駆体においては光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が設けられる。ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、そのまま用いることもできる。
【0041】
ハロゲン化銀乳剤層に用いられるハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)で記載されていような公知の手法を用いることができる。なかでも同時混合法の1種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤のハロゲン化物組成には好ましい範囲が存在し、塩化物を80モル%以上含有するのが好ましく、特に90モル%以上が塩化物であることが特に好ましい。
【0042】
ハロゲン化銀乳剤の製造においては、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩等、VIII族金属元素の塩もしくはその錯塩を共存させても良い。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法等当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。また本発明においてハロゲン化銀乳剤は必要に応じて色素増感することもできる
【0043】
本発明においてハロゲン化銀乳剤層はバインダーを含有する。本発明においては非水溶性高分子及び水溶性高分子のいずれもバインダーとして用いることができるが、水溶性高分子を用いることが好ましい。本発明における好ましいバインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。
【0044】
ハロゲン化銀乳剤層には、さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
【0045】
本発明の導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層と物理現像核層の間やハロゲン化銀乳剤層の上の層に非感光性層を設けることができる。また、カール調整の為等に耐熱性支持体に対してハロゲン化銀乳剤層と反対側に裏塗り層を設けることもできる。これらの非感光性層は、水溶性高分子を主たるバインダーとする層である。ここでいう水溶性高分子とは、現像液で容易に膨潤し、下層のハロゲン化銀乳剤層、物理現像核層まで現像液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択できる。
【0046】
具体的には、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。特に好ましい水溶性高分子は、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。本発明の効果を十分に得るためには、この非感光性層のバインダー量としては、ハロゲン化銀乳剤層の総バインダー量に対して20〜100質量%の範囲が好ましく、特に30〜80質量%が好ましい。
【0047】
これら非感光性層には、必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。また、処理後のハロゲン化銀乳剤層の剥離を妨げない限りにおいて、架橋剤により硬膜させることも可能である。
【0048】
本発明の導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料又は顔料を、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることは好ましい。ハレーション防止剤としては、好ましくは前述の物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層の間に必要に応じて設けられる中間層、または耐熱性支持体を挟んで設けられる裏塗り層に含有させることができる。イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのがよい。添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、たとえばハレーション防止剤として裏塗り層に含有させる場合、1平方メートル当たり、約20mg〜約1gの範囲が望ましく、好ましくは、極大吸収波長における光学濃度として、0.5以上である。
【0049】
本発明の導電性材料前駆体に用いられる耐熱性支持体としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、液晶ポリアリレート等の少なくともTgが180℃以上のプラスチック耐熱性支持体、あるいはガラス板等が挙げられる。さらに本発明においては帯電防止層等を必要に応じて設けることもできる。
【0050】
上記導電性材料前駆体を用い、導電性フィルムを作製するための方法は、例えば網目状パタンの銀薄膜の形成が挙げられる。この場合、ハロゲン化銀乳剤層は網目状パタンに露光されるが、露光方法として、網目状パタンの透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。上記したレーザー光で露光する方法においては、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードとも云う)を用いることができる。
【0051】
網目状パターンのような任意の形状パターンは透過原稿と上記前駆体を密着して露光、あるいは、任意の形状パターンのデジタル画像を各種レーザー光を用いた出力機で上記前駆体に走査露光した後、銀塩拡散転写現像液で処理することにより物理現像が起こり、未露光部のハロゲン化銀が溶解されて銀錯塩となり、物理現像核上で還元されて金属銀が析出して任意の形状パターンの銀薄膜を得ることができる。一方、露光された部分はハロゲン化銀乳剤層中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、不要になったハロゲン化銀乳剤層及び中間層、保護層等は下記の除去方法により除去されて、形状パターンの銀薄膜が表面に露出する。
【0052】
現像処理後の不要となったハロゲン化銀乳剤層等の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。また、剥離紙等で転写剥離する方法は、ハロゲン化銀乳剤層上の余分なアルカリ液(銀錯塩拡散転写用現像液)を予めローラ等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層等を剥離紙に転写させて剥離する方法である。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、あるいは紙の上にシリカのような微粒子顔料とポリビニルアルコールのようなバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものが用いられる。
【0053】
次に、銀塩拡散転写現像の現像液について説明する。現像液は、可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤を含有するアルカリ液である。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物である。
【0054】
現像液に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、米国特許第5,200,294号明細書に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0055】
これらの可溶性銀錯塩形成剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンを含有した処理液で現像を行った導電性フィルムの表面抵抗は比較的低い値が得られる。
【0056】
アルカノールアミンとしては、例えばN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0057】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0058】
現像液に用いられる還元剤は、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸及びその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。これらの還元剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0059】
可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり、0.001〜5モルが好ましく、より好ましくは0.005〜1モルの範囲である。還元剤の含有量は現像液1リットル当たり0.01〜1モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1モルの範囲である。
【0060】
現像液のpHは10以上が好ましく、更に11〜14が好ましい。所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ剤、燐酸、炭酸等の緩衝剤を単独、または組み合わせて含有させる。また、本発明の現像液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。
【0061】
前記露光及び現像処理により形成された導電性材料の銀画像部にさらに高い導電性を得るためや、あるいは銀画像の色調を変えるため等の種々の目的でめっき処理を行うことが可能である。本発明におけるめっき処理としては、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、又は無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができる。めっき処理によりどの程度導電性を付与するかは用いる用途に応じて異なる。
【0062】
本発明において無電解めっき処理を施す場合、無電解めっきに先立ち、無電解めっきを促進させる目的でパラジウムを含有する溶液で活性化処理することもできる。パラジウムとしては2価のパラジウム塩あるいはその錯体塩の形でも良いし、また金属パラジウムであっても良い。しかし、液の安定性、処理の安定性から好ましくはパラジウム塩あるいはその錯塩を用いることが良い。
【0063】
本発明における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術、例えば無電解ニッケルめっき、無電解コバルトめっき、無電解金めっき、無電解銀めっき等を用いることができるが、高い導電性を得るためには無電解銅めっきを行うことが好ましい。
【0064】
本発明における無電解銅めっき液には硫酸銅や塩化銅等銅の供給源、ホルマリンやグリオキシル酸、テトラヒドロホウ酸カリウム、ジメチルアミンボラン等還元剤、EDTAやジエチレントリアミン5酢酸、ロシェル塩、グリセロール、メソ−エリトリトール、アドニール、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、イミノ2酢酸、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン4酢酸、1,3−ジアミノプロパン−2−オール4酢酸、グリコールエーテルジアミン4酢酸、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の銅の錯化剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のpH調整剤等が含有される。さらにその他に浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジル、o−フェナントロリン、ネオクプロイン、チオ尿素、シアン化物等を含有させることも出来る。めっき液は安定性を増すためエアレーションを行う事が好ましい。
【0065】
無電解銅めっきでは前述の通り種々の錯化剤を用いることができるが、錯化剤の種類により酸化銅が共析し、導電性に大きく影響したり、あるいはトリエタノールアミン等銅イオンとの錯安定定数の低い錯化剤は銅が沈析しやすいため、安定しためっき液やめっき補充液が作り難い等ということが知られている。従って工業的に通常用いられる錯化剤は限られており、本発明においても同様の理由でめっき液の組成として特に錯化剤の選択は重要である。特に好ましい錯化剤としては銅錯体の安定定数の大きいEDTAやジエチレントリアミン5酢酸等が挙げられ、このような好ましい錯化剤を用いためっき液としては例えばプリント基板の作製に使用される高温タイプの無電解銅めっきがある。高温タイプの無電解銅めっきの手法については「無電解めっき 基礎と応用」(電気鍍金研究会編)p105等に詳しく記載されている。高温タイプのめっきでは通常60〜70℃で処理し、処理時間は無電解めっき後に電解めっきを施すかどうかで変わってくるが、通常1〜30分、好ましくは3〜20分無電解めっき処理を行うことで本発明の目的を達することが出来る。
【0066】
本発明において銅以外の無電解めっき処理を行う場合は例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)p406〜432記載の方法等を用いる事ができる。
【0067】
本発明においては電解めっきを施すこともできる。電解めっき法としては銅めっき、ニッケルめっき、亜鉛めっき、スズめっき等の公知のめっき方法を用いることができ、その方法として例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)記載の方法を用いることができる。どのめっき法を用いるかは製造する導電性材料の用途によって異なるが、導電性をさらに高めるためにめっきする場合、銅めっきやニッケルめっきが好ましい。銅めっきのめっき法として好ましい方法としては硫酸銅浴めっき法やピロリン酸銅浴めっき法、ニッケルめっき法としてはワット浴めっき法、黒色めっき法等が好ましい。
【0068】
本発明においてはめっき処理の後、酸化処理を行う事も可能である。酸化処理としては、種々の酸化剤を用いた公知の方法を用いる事ができる。酸化処理液には酸化剤としてEDTA鉄塩、DTPA鉄塩、1,3−PDTA鉄塩、β−ADA鉄塩、BAIDA鉄塩等の各種アミノポリカルボン酸鉄塩、重クロム酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、赤血塩等を用いることができるが、環境負荷が少なく、安全なアミノポリカルボン酸鉄を用いる事が好ましい。酸化剤の使用量は0.01〜1モル/L、好ましくは0.1〜0.3モル/Lである。その他に促進剤として臭化物、ヨウ化物、グアニジン類、キノン類、ヴァイツラジカル、アミノエタンチオール類、チアゾール類、ジスルフィド類、へテロ環メルカプト類等公知のものを用いる事もできる。
【0069】
本発明により製造された導電性材料の銀画像は後処理を施すこともできる。後処理液としては例えば還元性物質、水溶性リンオキソ酸化合物、水溶性ハロゲン化合物等の水溶液が一例としてあげられる。このような後処理液により50〜70℃、更に好ましくは60〜70℃で10秒以上、好ましくは30秒〜3分処理することで、銀画像パターンのX線回折による2θ=38.2°での半値幅が0.35以下となるようすれば、非常に高い導電性を得ることができ、また高温高湿下でもその抵抗値が変動しなくなるので好ましい。
【実施例1】
【0070】
本発明の実施例を以下に示す。本発明に使用される導電性材料前駆体を作製するために、東レ・デュポン社製のポリイミド樹脂フィルム、カプトン200Hを用いた。硫化パラジウムゾル液を下記の様にして作製し、得られたゾルを用いて下記物理現像核液N1を作製し、ポリイミド樹脂フィルム上に塗布し、300℃で1時間乾燥及び加熱した。
【0071】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40mL
蒸留水 1000mL
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000mL
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0072】
<物理現像核液N1/1m2当たり>
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
HPC1000(日立化成社製水溶性ポリアミドイミド樹脂。N−メチルピロリドン含有) 3.6mg(固形分1mg)
界面活性剤(S−1) 4mg
水を加えて7mLとする。
【0073】
【化6】

【0074】
続いて、上記物理現像核層を塗布した側と反対側に下記裏塗り層塗液を作製し、塗設した。
<裏塗り層塗液/1m2当たり>
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
染料1 200mg
界面活性剤(S−1) 400mg
水を加えて40mLとする。
【0075】
【化7】

【0076】
続いて、下記の中間層塗液1、ハロゲン化銀乳剤層塗液1、及び最外層塗液1を作製し、これをポリイミド樹脂フィルムに近い方からこの順に上記物理現像核層の上に塗布、乾燥し導電性材料前駆体を得た。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1gあたり0.5gのゼラチンを含む。
【0077】
<中間層塗液1/1m2当たり>
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
水を加えて10mLとする。
【0078】
<ハロゲン化銀乳剤層塗液1/1m2当たり>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
水を加えて40mLとする。
【0079】
<最外層塗液1/1m2当たり>
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 10mg
界面活性剤(S−1) 10mg
水を加えて15mLとする。
【0080】
このようにして得た導電性材料前駆体を、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、図1に示すような線幅100μm、長さ10cm、線間隔200μmの2本の細線、およびそれぞれの細線の両端に給電用の辺1cmの正方形からなるベタパッチ(後述の電解めっきの際の電極部になる箇所)が接続した構造の細線パタンの原稿を密着させて露光した。露光量は現像処理後の細線の線幅が100μmとなるように調整した。
【0081】
続いて下記の拡散転写現像液イを作製した。その後、先に露光した導電性材料前駆体を下記拡散現像液中に15℃で90秒間浸漬した後、続いて40℃の温水で水洗し、乾燥処理した。これにより2本の細線パタンが形成された導電性材料1を得た。
【0082】
<拡散転写現像液イ>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000mLに調整
pH=12.2に調整する。
【実施例2】
【0083】
特開平8−3445号公報の実施例1に従ってポリイミド前駆体としての水溶性ポリアミック酸を合成した。温度計および乾燥窒素導入口と攪拌装置を付した3000mLの4つ口フラスコに、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294.2g(1モル当量)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン94.2g(0.475モル当量)、ビス(3−アミノフェニル)スルホン117.9g(0.475モル当量)、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン12.4g(0.05モル当量)、およびγ−ブチロラクトン1556.1gを投入し、乾燥窒素流入下、60℃で4時間攪拌してポリアミック酸のγ−ブチロラクトン溶液(ポリマー濃度25質量%)を得た。γ−ブチロラクトン500gに2−ジメチルアミノエタノール3.4g(0.038モル当量)を添加した液に、液を攪拌しながら、ポリマー濃度10質量%に希釈したポリアミック酸のγ−ブチロラクトン溶液100g(ポリアミック酸0.019モル当量含有)を滴下し、白色の沈殿物を得た。濾過により沈殿物を分離し、トルエンで洗浄後、真空乾燥を行い、水溶性ポリアミック酸の粉末(ポリイミド前駆体)を得た。この粉末4gと水46gを混合し、60℃で攪拌して均質なポリアミック酸水溶液を得た。
【0084】
物理現像核処方として下記物理現像核液N2を用いる以外は実施例1と同様にして導電性材料2を得た。
【0085】
<物理現像核液N2/1m2当たり>
実施例1で使用した硫化パラジウムゾル 0.4mg
ポリアミック酸水溶液 12.5mg(固形分1mg)
界面活性剤(S−1) 4mg
水を加えて7mLとする。
【実施例3】
【0086】
実施例1で用いたのと同じポリイミド樹脂フィルムの上に下記の下引き層塗液L1を作製し、塗布した。その後室温で乾燥させ、さらに150℃で5分乾燥させた。
【0087】
<下塗り層塗液L1/1m2当たり>
HPC1000(日立化成社製水溶性ポリアミドイミド樹脂。N−メチルピロリドン含有) 1.4g(固形分量0.4g)
KE−30P(日本触媒社製シリカ微粒子) 20mg
界面活性剤S−1 3mg
水を加えて全量8mLにする。
【0088】
続いて下記物理現像核液N3を作製し、下引き層上に塗布し、50℃で5分乾燥した。この後300℃で1時間加温し、その後実施例1と同様に裏塗り層塗液を塗工し、さらに中間層塗液1、ハロゲン化銀乳剤層塗液1、最外層塗液1をこの順に塗布、乾燥した。得られた導電性材料前駆体を実施例1と同様に露光、現像し、導電性材料3を得た。
【0089】
<物理現像核液N3/1m2当たり>
実施例1で作製した硫化パラジウムゾル 0.4mg
界面活性剤(S−1) 4mg
水を加えて7mLにする。
【0090】
(比較の導電性材料4の作製)
実施例1で用いたのと同じポリイミド樹脂フィルムを5規定の水酸化カリウム水溶液に、40℃で2分間浸せきしたのち水洗、乾燥させた。次にこの表面をコロナ放電処理し、実施例3で用いた物理現像核液N3を塗布し、120℃で2分間乾燥した。
【0091】
得られた物理現像核塗布済みポリイミド樹脂フィルムに実施例1と同様に裏塗り層塗液を塗工し、さらに中間層塗液1、ハロゲン化銀乳剤層塗液1、最外層塗液1をこの順に塗布、乾燥した。得られた導電性材料前駆体を実施例1と同様に露光、現像し、導電性材料4を得た。
【0092】
(比較の導電性材料5の作製)
物理現像核液として下記方法に従って作製した銀ゾルを用いて作製した物理現像核液N4を用いる以外は実施例1と同様に導電性材料を作製し、導電性材料5を得た。
【0093】
<銀ゾルの調製>
A液 クエン酸(III) ナトリウム 14g
FeSO4・7H2O 7.5g
蒸留水を加えて60mLとする。
B液 硝酸銀 2.5g
蒸留水を加えて25mLとする。
A液を400rpmで攪拌しながら、B液を100ml/minの速度で加えた。過剰のクエン酸イオンや鉄イオンおよびナトリウムイオンを限外濾過器を用いて除去し、銀ゾル溶液を作成した。
【0094】
<物理現像核液N4/1m2当たり>
前記銀ゾル 0.4mg
HPC1000(日立化成社製水溶性ポリアミドイミド樹脂。N−メチルピロリドン含有) 3.6mg(固形分1mg)
界面活性剤(S−1) 4mg
水を加えて7mLとする。
【0095】
上記のようにして得られた導電性材料1〜5の100μm幅、10cmの細線の両端にあるベタパッチにテスターを当て、その抵抗値を測定した。この結果を表1に示す。続いて、下記の硫酸銅めっき液を用いて、2A/dm2で7分間めっきを行った。この時、細線に接続した片側のベタパッチを通して電源部と電気的に接続させ、該ベタパッチは硫酸銅めっき液中に浸漬させることで、給電部となるようした。
【0096】
<硫酸銅めっき液>
硫酸銅・5水和物 220g
硫酸 60g
1N.塩酸 1.4mL
全量を水で1000mLとする
【0097】
めっきされた導電性材料を60℃90%R.H.中で2本の細線の間に10V(直流)の電圧をかけ漏れ電流が電圧印加後10%変動するまでの時間を測定し、マイグレーションの評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1の結果に示されているように、本発明の導電性材料はマイグレーション性が良く、抵抗値も低いことが判る。
【実施例4】
【0100】
実施例3の下引き層塗液L1の代わりに下記下引き層塗液L2を作製し、これをポリイミド樹脂フィルム上に塗布、し、150℃で30分乾燥させる以外は実施例3同様に導電性材料を作製し、導電性材料6を得た。
【0101】
<下塗り層塗液L2/1m2当たり>
バイロマックスHR16NN(東洋紡社製ポリアミドイミド、N−メチルピロリドン溶媒) 2.85g(固形分0.4g)
KE−30P(日本触媒社製シリカ微粒子) 20mg
界面活性剤S−1 3mg
N−メチルピロリドンを加えて全量を8mLにする。
【実施例5】
【0102】
実施例3の下引き層塗液L1の代わりに下記下引き層塗液L3を作製し、これをポリイミド樹脂フィルム上に塗布し、150℃で30分乾燥させる以外は実施例3同様に導電性材料を作製し、導電性材料7を得た。
【0103】
<下塗り層塗液L3/1m2当たり>
U−ワニスA(宇部興産社製ポリイミド前駆体、N−メチルピロリドン溶媒) 2g(固形分0.4g)
KE−30P(日本触媒社製シリカ微粒子) 20mg
界面活性剤S−1 3mg
N−メチルピロリドンを加えて全量を8mLにする。
【実施例6】
【0104】
実施例3の下引き層塗液L1の代わりに下記下引き層塗液L4を作製し、これをポリイミド樹脂フィルム上に塗布し、150℃で30分乾燥させる以外は実施例3同様に導電性材料を作製し、導電性材料8を得た。
<下塗り層塗液L4/1m2当たり>
U−ワニスA(宇部興産社製ポリイミド前駆体、N−メチルピロリドン溶媒) 1g(固形分0.2g)
バイロマックスHR16NN(東洋紡製ポリアミドイミド、N−メチルピロリドン溶媒) 1.425g(固形分0.2g)
KE−30P(日本触媒社製シリカ微粒子) 20mg
界面活性剤S−1 3mg
N−メチルピロリドンを加えて全量を8mLにする。
【実施例7】
【0105】
実施例3の物理現像核塗液N3の代わりに物理現像核塗液N1を用いた以外は実施例3同様に導電性材料を作製し、導電性材料9を得た。導電性材料6〜9を導電性材料1〜5と同様に評価した結果、表2のようになった。
【0106】
【表2】

【0107】
表2より非水溶性のポリイミド前駆体およびポリアミドイミド類を用いても、あるいは両方とも用いても、導電性が高く、また高いマイグレーション特性を持たせられることが判る。さらに、表1および表2からポリイミドおよび/またはポリアミドイミドは物理現像核層のみに含有されていても、下引き層のみに含有されていても、あるいは物理現像核層と下引き層の両方に含有されていても良いことが判る。
【実施例8】
【0108】
物理現像核層の乾燥温度を260℃1時間とする以外は実施例1と同様にして導電性材料10を得た。
【実施例9】
【0109】
物理現像核層の乾燥温度を240℃1時間とする以外は実施例1と同様にして導電性材料11を得た。
【実施例10】
【0110】
物理現像核層の乾燥温度を190℃1時間とする以外は実施例1と同様にして導電性材料12を得た。
【実施例11】
【0111】
物理現像核層の乾燥温度を170℃1時間とする以外は実施例1と同様にして導電性材料13を得た。導電性材料10〜13を実施例1と同様に評価した結果を表3に示す。
【0112】
【表3】

【0113】
表3より物理現像核層を塗布したの加熱処理温度を180℃以上とすることでマイグレーション特性、銀の抵抗値が共に良くなることが判る。
【実施例12】
【0114】
使用する耐熱性支持体を日本石油社製LCフィルム(液晶アリレート系フィルム95μm)を用いる以外は実施例1と同様に導電性材料14を作製し、評価した。その結果、実施例1と同様の結果を得た。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施例で用いた、露光原稿である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性支持体上に少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体において、該物理現像核層と、該耐熱性支持体と該物理現像核層との間の下引き層の少なくとも一方がポリイミドおよび/またはポリアミドイミドを含有し、該物理現像核層が物理現像核として金属硫化物を含有することを特徴とする導電性材料前駆体。
【請求項2】
請求項1記載の導電性材料前駆体を製造する製造方法であって、該物理現像核層を耐熱性支持体上、もしくは下引き層上に塗設した後に、180℃以上で加熱処理することを特徴とする導電性材料前駆体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−305732(P2008−305732A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153473(P2007−153473)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】