説明

導電性材料及びこれを用いたLiイオン二次電池用正極材料

【課題】導電性材料の電気抵抗を低減するとともに、この導電性材料を用いた電極材料や固体電解質、サーミスタ等のセンサーとしての機能を向上させる。
【解決手段】少なくとも酸化バナジウムと酸化リンとを含み、結晶相と非晶質相とで構成された結晶構造を有し、前記結晶相が単斜晶のバナジウム系酸化物を含み、前記結晶相の体積が前記非晶質相の体積より大きい導電性材料を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料及びこれを用いたLiイオン二次電池用正極材料に関する。
【背景技術】
【0002】
五酸化バナジウムを主成分とするバナジウム系ガラスは電気を流すガラス半導体であることが知られており、サーミスタ等へ使用する検討が進められている。
【0003】
特許文献1には、五酸化バナジウム50モル%以上を含み五酸化リンと酸化バリウムからなるガラス組成に、酸化セリウムと酸化錫並びに酸化鉛を添加したガラス状抵抗材料が開示されている。
【0004】
特許文献2には、五酸化バナジウム70モル%以上、五酸化リン5〜15モル%を含むガラスに13モル%以下の酸化銅を加えて得られるガラスから作られたサーミスタが開示されている。
【0005】
特許文献3には、バナジウム、バリウム、鉄を含む酸化物系ガラスをガラス転移温度以上、結晶化温度以下の温度で加熱し、ガラス骨格の歪を小さくすることで室温での電気抵抗が、10〜10Ω・cmのガラス半導体が開示されている。
【0006】
ここで、図1に五酸化バナジウム(V)の結晶構造モデルを示す。Vは斜方晶であり、図に示すように、VOピラミッドからなる層状構造をとることにより非水電解質二次電池の活物質への適用の検討が進められている。
【0007】
特許文献4には、バナジウムとリチウムまたは第一遷移金属の複合酸化物の結晶質相と非晶質相の2相を共存することで、高エネルギー密度で良好なサイクル特性を示すことが開示されている。
【0008】
特許文献5には、高導電性のリチウム含有鉄バナジウムリン酸塩からなるガラスとガラスセラミックスにすることで、電池のレート特性と低温特性の改善が開示されている。
【0009】
特許文献6には、Co、Mn、Niの少なくとも1種を含んだリチウム含有鉄バナジウムリン酸塩からなるガラス及びガラスセラミックスの少なくともいずれかを主体としてなる電極活物質を用いることにより、放電レート特性が高く、高エネルギー密度を示すことが開示されている。
【0010】
また、特許文献7には、Li1+xに相当する酸化リチウム・バナジウムであって、0.1≦x≦0.25の単斜晶系の結晶構造を備える活物質を用いることにより、電池の容量及びサイクル性能が大幅に向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭42−24785号公報
【特許文献2】特公昭39−9140号公報
【特許文献3】特許3854985号公報
【特許文献4】特許2973830号公報
【特許文献5】特開2007−42618号公報
【特許文献6】特開2009−16277号公報
【特許文献7】特表2005−506272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献3に係る材料を用いた場合の抵抗値200Ω・cmは電極材料や固体電解質としては抵抗値が高く、更なる低抵抗化が必要であった。
【0013】
また、特許文献5に係る電極活物質を非水系二次電池の活物質の場合でも、アニーリングして抵抗値を最小の290Ω・cm以下にすると、抵抗値の低下とともに電池容量が低下するなどの課題があった。また、電極活物質は、電池自動車用等の高容量化の要求に対して満足できるものがなく、現在も酸化物からなる活物質の研究が活発に行なわれている。
【0014】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、導電性材料の電気抵抗を低減するとともに、この導電性材料を用いた電極材料や固体電解質、サーミスタ等のセンサーとしての機能を向上させることを目的とする。
【0015】
また、本発明は、電気抵抗の低下に伴う電池容量の低下を生じさせないバナジウム系ガラスを用いた導電性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の導電性材料は、結晶相と非晶質相とを含む導電性材料であって、この導電性材料は少なくとも酸化バナジウムと酸化リンとを含む結晶化ガラスであって、前記結晶相が単斜晶のバナジウム系酸化物を含み、前記結晶相の体積が前記非晶質相の体積より大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の導電性材料は、抵抗値が200Ω・cm以下と低く、電極の機能と効率を向上することができる。なお、電極以外の各種用途においても、基本性能である抵抗値の低減は、機能および効率の高い製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】Vの結晶構造モデルを示す模式図である。
【図2】Mの結晶構造モデルを示す模式図である。
【図3A】本発明による実施例である導電性材料のSEM画像である。
【図3B】図3Aに示す導電性材料の拡大画像である。
【図3C】図3Aに示す導電性材料のSEM画像の模式図である。
【図3D】図3Bに示す導電性材料の拡大画像の模式図である。
【図4】図3Bの結晶相(Li0.3結晶)のSEM−EDX測定結果を示すグラフである。
【図5】図3Bの非晶質相(非晶質粒界)のSEM−EDX測定結果を示すグラフである。
【図6】本発明による実施例のリチウム電池の構造を示す断面図である。
【図7】Liイオンドープ装置を示す概略断面図である。
【図8】結晶の単位格子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、電極材料、固体電解質、サーミスタ等のセンサーに好適に用いられ、その電気伝導度を調整でき、また、高エネルギー密度で、充放電サイクル寿命が長い非水電解質二次電池の活物質に用いることができる導電性材料に関する。
【0020】
本発明の導電性材料は、結晶相(結晶質部)と非晶質相(非晶質部)とを含む導電性材料であって、この導電性材料は少なくとも酸化バナジウムと酸化リンとを含む結晶化ガラスであって、該結晶相が単斜晶のバナジウム系酸化物であり、さらに、該結晶相が該非晶質相より多いことを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上記目的を達成するため、上記の本発明に係る導電性材料に対して、または上記の本発明に係るガラス組成物に対して、以下のような改良や変更を加えることができる。
【0022】
(1)結晶相が単斜晶のM結晶子からなり、Mが一価の陽イオン、xが0.28〜0.76であり、しかも前記M結晶子のサイズが(111)面或いは(11−1)面の方向で50nm〜300nm以下であることを特徴とする。
【0023】
(2)単斜晶のM結晶子のM(一価の陽イオン)がLi、Na、K、Cu及びAgのいずれかであることを特徴とする。
【0024】
(3)結晶相の格子がa=1.003〜1.010nm、b=0.360〜0.364nm、c=1.520〜1.542nmで、しかもα=γ=90゜、β=105.5〜110.7゜である単斜晶であることを特徴とする。
【0025】
(4)結晶相の割合が63〜98%、及び前記非晶質相の割合が2〜37%以下であり、しかも前記非晶質相が酸化バナジウムと酸化リンを含むガラス相であることを特徴とする。
【0026】
(5)結晶相の粒界、前記単斜晶のM結晶子の粒界、或いは前記単斜晶のM結晶子の多数からなる多結晶粒子の粒界が前記非晶質からなることを特徴とする。
【0027】
(6)非晶質相にさらに酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化バリウム、酸化アンチモン及び酸化ビスマスのいずれか1種以上が含まれることを特徴とする。
【0028】
(7)単斜晶のM結晶子は、酸化バナジウムと酸化リンを含み、さらに酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化銅及び酸化銀のいずれかを含むガラス組成物を該ガラス組成物の結晶化(開始)温度以上で熱処理することによって析出させることを特徴とする。
【0029】
(8)ガラス組成物の組成が次の酸化物換算で、Vが62〜92重量%、Pが5〜20重量%、LiO、NaO、KO、CuO及びAgOのいずれかが1〜15重量%、WO、MoO、Fe、MnO、BaO、Sb及びBiのいずれか1以上が0〜20重量%以下であり、しかも転移温度が300℃以下、結晶化(開始)温度が400℃以下であることを特徴とする。
【0030】
(9)ガラス組成物の組成が次の酸化物換算で、Vが70〜80重量%、Pが8〜14重量%、LiO、NaO及びKOのいずれかが1〜5重量%、WOとFeの合計が10〜20重量%以下であり、しかも転移温度が300℃以下、結晶化(開始)温度が400℃以下であることを特徴とする。
【0031】
(10)導電性材料の比抵抗が25℃において200Ω・cm以下であることを特徴とする。
【0032】
(11)上記導電性材料を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池活物質。
【0033】
(12)リチウム二次電池活物質であって、上記導電性材料の結晶相である単斜晶のM結晶子においてxが0.28〜0.4であることを特徴とする。
【0034】
(13)リチウム二次電池活物質であって、上記導電性材料の結晶相である単斜晶のM結晶子においてM(一価の陽イオン)がLi、Na、及びKのいずれかであることを特徴とする。
【0035】
(14)リチウム二次電池活物質であって、上記導電性材料の結晶相である単斜晶のM結晶子において、格子のβが109.2〜110.7°であることを特徴とする。
【0036】
(15)リチウム二次電池活物質であって、上記導電性材料の結晶相の割合が80%〜95%で非晶質層の割合が5%〜20%であり、更に単斜晶のM結晶子のサイズが(111)面或いは(11−1)面の方向で100nm〜300nmであることを特徴とする。
【0037】
(16)リチウムイオン二次電池活物質であって、上記導電性材料の比抵抗が25℃において10〜100Ω・cmであることを特徴とする。
【0038】
(17)リチウムイオン二次電池活物質であって、前記導電性材料を作製後に、前記導電性材料の結晶相中にリチウムイオンをドープ(インターカレート)することを特徴する。
【0039】
(18)上記リチウム二次電池活物質であって、更にカーボン粉末が含まれることを特徴とする。
【0040】
(19)上記の導電性材料を用い、電極材料、固体電解質、サーミスタ等のセンサーを形成できる。
【0041】
本発明の導電性材料は、前記バナジウム系酸化物は、M結晶子(ここで、Mは、一価の陽イオンであり、xが0.28〜0.76である。)を含み、前記M結晶子の直径が(111)面或いは(11−1)面の方向で50nm〜300nmであることを特徴とする。
【0042】
本発明の導電性材料は、前記M結晶子のMがLi、Na、K、Cu及びAgの群から選択される1種類の元素を含むことを特徴とする。
【0043】
本発明の導電性材料は、前記結晶相の格子定数がa=1.003〜1.010nm、b=0.360〜0.364nm、c=1.520〜1.542nmで、α=γ=90゜、β=105.5〜110.7゜である単斜晶であることを特徴とする。
【0044】
本発明の導電性材料は、前記結晶相の体積の割合が63%〜98%であり、前記非晶質相が酸化バナジウムと酸化リンとを含む非晶質相であることを特徴とする。
【0045】
本発明の導電性材料は、前記結晶相の粒界、前記M結晶子の一次粒子の粒界、又は前記M結晶子の二次粒子の粒界が非晶質相であることを特徴とする。
【0046】
本発明の導電性材料は、前記非晶質相が、更に酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化バリウム、酸化アンチモン及び酸化ビスマスの群から選択される1種類以上を含むことを特徴とする。
【0047】
本発明の導電性材料は、前記M結晶子は、酸化バナジウムと酸化リンとを含み、更に酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化銅及び酸化銀の群から選択される1種類以上を含むガラス組成物を結晶化開始温度以上で熱処理することによって析出させたものであることを特徴とする。
【0048】
本発明の導電性材料は、前記ガラス組成物は、更に酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化バリウム、酸化アンチモン及び酸化ビスマスの群から選択される1種類以上を含むことを特徴とする。
【0049】
本発明の導電性材料は、前記ガラス組成物の組成が酸化物換算で、Vが62〜92重量%、Pが5〜20重量%、LiO、NaO、KO、CuO及びAgOのいずれか1種以上が1〜15重量%、WO、MoO、Fe、MnO、BaO、Sb及びBiの群から選択される1種類以上が0〜20重量%以下であり、転移温度が300℃以下であり、結晶化開始温度が400℃以下であることを特徴とする。
【0050】
本発明の導電性材料は、前記ガラス組成物の組成が酸化物換算で、Vが70〜80重量%、Pが8〜14重量%、LiO、NaO及びKOのいずれかが1〜5重量%、WOとFeとの合計が10〜20重量%以下であり、転移温度が300℃以下であり、結晶化開始温度が400℃以下であることを特徴とする。
【0051】
本発明の導電性材料は、25℃における比抵抗が200Ω・cm以下であることを特徴とする。
【0052】
本発明のLiイオン二次電池用正極材料は、上記の導電性材料の粉末を用いたことを特徴とする。
【0053】
本発明のLiイオン二次電池用正極材料は、前記M結晶子におけるxが0.28〜0.41であることを特徴とする。
【0054】
本発明のLiイオン二次電池用正極材料は、前記M結晶子におけるMがLi、Na及びKの群から選択される1種類を含むことを特徴とする。
【0055】
本発明のLiイオン二次電池用正極材料は、前記M結晶子における格子定数βが109.2〜110.7゜であることを特徴とする。
【0056】
本発明のLiイオン二次電池用正極材料は、前記結晶相の体積の割合が80%〜95%、前記M結晶子のサイズが(111)面又は(11−1)面の方向で100nm〜300nmであることを特徴とする。
【0057】
本発明のLiイオン二次電池用正極材料は、前記導電性材料の25℃における比抵抗が10〜100Ω・cmであることを特徴とする。
【0058】
本発明のLiイオン二次電池用正極材料は、前記導電性材料を作製後に、前記導電性材料の結晶相中にリチウムイオンをドープすることを特徴とする。
【0059】
本発明のLiイオン二次電池用正極材料は、更にカーボン粉末を含むことを特徴とする。
【0060】
以下、本発明に係る実施形態を説明する。ただし、本発明は、ここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、適宜組み合わせてもよい。
【0061】
(導電性材料)
本発明は、結晶相と非晶質相からなる結晶化ガラス組成物において、該結晶化ガラス組成物が少なくとも酸化バナジウムと酸化リンを含み、しかも、該結晶相が単斜晶のバナジウム系酸化物であり、さらに、該結晶相が該非晶質相より多いことを特徴とする導電性材料である。
【0062】
この導電性材料の結晶相の割合は63〜98%であり、非晶質相の割合は2〜37%である。結晶相の割合が63%未満では抵抗値が大きくなり、98%を越えると化学的安定性が劣化する。
【0063】
また、電池材料としては、結晶層の割合が80〜95%、及び非晶質相の割合は5〜20%である。電池容量を上げるには、M結晶相が多いほど良く、サイクル特性は、元素間が広い(構成元素の間隔が大きい)非晶質相が多いほど良い。
【0064】
これまでの検討の結果から、結晶率80%未満では電池容量が小さくなり、95%越えると化学的安定性が低下してサイクル特性が劣化することが分かってきている。
【0065】
また、前記結晶相の粒界、前記単斜晶のM結晶子(一次粒子)の粒界、或いは前記単斜晶のM結晶子の多数からなる多結晶粒子(二次粒子)の粒界が前記非晶質相からなっている。特に、電池材料としては、イオン間隔が広い非晶質相は、例えば、リチウムイオンの通り道となるために結晶の粒界にあることが望ましい。
【0066】
(結晶相)
図2に単斜晶のMの結晶構造モデルを示す。
【0067】
この単斜晶の結晶は、バナジウム酸化物の層状構造の層間を陽イオン(M)が規則的に結合した筒状の構造である。そのため、静電的相互作用により積層している斜方晶のVに比べ、本発明の結晶は化学的安定性に優れる。
【0068】
また、本発明に係る単斜晶の結晶層は、M結晶子からなり、Mは一価の陽イオンの状態で安定な金属元素である。Mは、安全性や入手のし易さから、Li、Na、K、Cu及びAgのうちいずれかが好ましい。
【0069】
前記xは、単斜晶の結晶を形成するためには0.28〜0.76が好ましい。特に、電池材料としては、xが大きくなると、Liイオンの入る空間が少なくなり、電池容量が小さくなるため、0.28〜0.41が好ましい。
【0070】
前記単斜晶のM結晶子のサイズが(111)面或いは(11−1)面の方向で((111)面或いは(11−1)面において)50nm〜300nmである。また、電池材料としては、結晶子サイズが大きすぎると、Liイオンの移動距離が大きくなるため、充放電速度が遅くなる。これに対して、結晶子サイズが小さくなると、電池容量が小さくなる。このため、結晶子のサイズとしては100nm〜300nmが好ましい。
【0071】
(ガラス組成および非晶質相)
ガラス組成物の組成は、酸化物換算で、Vが62〜92重量%、Pが5〜20重量%、LiO、NaO、KO、CuO及びAgOのいずれかが1〜15重量%、WO、MoO、Fe、MnO、BaO、Sb及びBiのいずれか1種以上が0〜20重量%である。
【0072】
五酸化バナジウムおよび五酸化リンは、本ガラス組成物の骨格を形成する物質である。この系のガラスは、バナジウム原子を中心に酸素原子を頂点とするVOの五面体ユニットより構成され、ユニット同士が酸素原子を介して二次元方向に共有結合し、層状構造になっており、この層間にPO四面体結合することでガラス化している。
【0073】
が62重量%より少ないと析出する結晶が少なく、抵抗値が小さくならない。また、Vが92重量%を越える場合、析出する結晶に高抵抗のVが多くなり好ましくない。
【0074】
が5重量%未満ではガラスを形成できず、Pが20重量%を越えると結晶化温度が高温化するため好ましくない。
【0075】
LiO、NaO、KO、CuO及びAgOは、焼成により単斜晶の結晶を作るための成分でもあり、V層間に入り込むことが分かっている。
【0076】
これらは、1重量%未満でも、15重量%を越える場合でも、単斜晶の結晶が析出しづらく好ましくない。1価の陽イオンの状態で安定な金属元素としては、電気陰性度が小さく、安定にガラス化しやすいアルカリ金属であるLi、Na、Kが好ましい。
【0077】
WO、MoO、Fe、MnO、BaO、Sb及びBiは、ガラス修飾成分である。ガラス非晶質相の特性、例えば耐水性、熱膨張、特性温度を調整する成分であり、適宜添加できる。添加量が多いほど耐水性は向上するが、25重量%を越えると、導電性材料中の単斜晶の結晶の割合が少なくなるため好ましくない。また、耐水性の低い材料は吸湿しやすいため、水分の影響を受け不安定になる。このため、容易に入手でき、かつ安全性が高い材料のWO、Feを10重量%〜20重量%添加するのが好ましい。
【0078】
(結晶相の生成)
本発明の導電性材料のガラス組成物は、転移温度が300℃以下、結晶化(開始)温度が400℃以下であり、結晶化(開始)温度以上で熱処理して結晶相を析出させることができる。結晶相は、結晶核の生成と結晶の成長の2段階で生成するため、熱処理条件で生成する結晶状態が異なる。結晶子の直径(結晶子径)を小さくするには、結晶核生成温度で長く保持し、十分に結晶核を析出させ、その後、成長させる。
【0079】
また、結晶子径を大きくするには、結晶核生成温度を速く通過させ、結晶核の数を少ない状態で高温に保持して結晶を成長させる方法が一般的である。焼成する手法としては、ヒーター加熱、レーザーアニール、誘導加熱等、非晶質ガラスを結晶化温度以上で加熱できる装置であれば特に限定はない。
【0080】
(非水系二次電池用活物質)
本発明の電極活物質は、他の電池構成材料、特に他方の電極を構成する電極活物質の選択等によって、正極活物質として用いることも、或いは、負極活物質として用いることもできる。
【0081】
以下、正極活物質としての例を説明する。
【0082】
本材料をリチウムイオンバッテリー(LIB)の正極活物質用粉末として使用する場合は、平均粒子径が1〜10μmの粉末であることが望ましい。1μm未満の粉末の場合、スラリー化の際、分散剤を多量に必要になり電池容量が小さくなる。一方、粉末が大きすぎると、粉末に含まれる粗大粒子によって塗膜の面粗さが荒くなってしまうため、平均粒子径が10μm以下の粉末が好ましい。さらに、平均粒子計が1〜7μmの粉末が好ましく、平均粒子計が2〜6μmの粉末が更に好ましい。
【0083】
スラリー化する場合、本材料80〜90質量%、導電補助材のカーボンブラック5〜10質量%、およびバインダーのフッ素系樹脂1〜10質量%を混合し、溶媒のノルマルメチルピロリドンを添加して15Pa・s程度のペーストを作製する。なお、この配合割合に限定されることはなく、要求される塗工性や密着性によって適宜選択できる。
【0084】
以下、本発明に係る実施形態を具体的な実施例に基づいて説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施例に限定されることはなく、適宜組み合わせてもよい。
【実施例】
【0085】
〔ガラス組成物に関する検討〕
(ガラス組成物の作製)
表1に作製・検討したガラス組成と特性を示す。いずれの成分も酸化物換算の質量比で表示した。各成分の原料は、五酸化バナジウム、五酸化リン、酸化鉄、三酸化アンチモン、三酸化タングステンを用い、リチウムについては炭酸リチウムを用いた。
【0086】
ガラス組成物の作製は、以下の手順で行った。
【0087】
原料化合物を表1の組成となるように配合・混合した混合粉末300gを白金ルツボに入れ、電気炉を用いて5〜10℃/min(℃/分)の昇温速度で1100℃まで加熱して2時間保持した。保持中は均一なガラスとするために攪拌した。次に、白金ルツボを電気炉から取り出し、予め200〜300℃に加熱しておいたステンレス板上に流し込んだ。
【0088】
No.1−02、1−03の組成は、ステンレス板状に流し込んだ時点で光沢がなく結晶化した。
【0089】
【表1】

(ガラス組成物の特性測定)
ガラスの特性温度は、ガラス粉末を用い、示差熱分析(DTA)によってピーク温度より求めた。測定用試料は、スタンプミルを用いて粉砕し、ガラス組成物の粉末を作製した。
【0090】
(導電性材料の作製)
得られたガラス組成物を10×10×4mmのサイズに加工して試料片とし、この試料片をアルミナ基板に載せて結晶化開始温度より50℃高い温度で50時間加熱し、結晶相を生成した導電性材料を作製した。
【0091】
(導電性材料の特性評価)
次いで、四探針法電気抵抗計Loresta AP(三菱化学製)を用いて、25℃における試料の比抵抗を測定した。
【0092】
また、焼成後の結晶相を含んだガラス組成物を粉砕して粉末状にし、広角X線回折装置(リガク製、RINT2500HL)を使用して結晶の同定、結晶率および結晶子径の測定を行った。結晶の同定および結晶率の測定条件は次の通りである。
【0093】
X線源はCuであり、その出力は50kV、250mAと設定した。モノクロメータ付の集中法光学系を使用して、ダイバージェンススリットは0.5deg、レシービングスリットは0.15mm、スキャッタリングスリットは0.5degを選択した。X線回折の走査軸は2θ/θ連動式で、連続走査による5≦2θ≦100degの範囲を、走査速度1.0deg/min、サンプリング0.01degの条件で測定を行った。結晶の同定はX線回折標準データ集であるICDDデータを用いて材料中に析出している結晶を同定した。
結晶率は得られた回折パターンの結晶起因の回折ピークと非晶質起因のハローとの割合を算出した。この割合は、結晶相及び非晶質相の体積の割合を表すと考える。
【0094】
結晶子径は同定した結晶起因の回折ピークの内、最も高いピーク強度の回折ピークを検出メインピークとし、Li0.3結晶は(11−1)面、V結晶は(001)面を用い、そこから結晶子径を算出した。
【0095】
以下、結晶子径の測定方法である。
【0096】
検出メインピーク近傍の角度でナロースキャンにより詳細な測定を行った。ナロースキャンの測定は、走査法に積算走査を用いて、走査範囲は検出メインピーク近傍に絞って測定した。ナロースキャンで得られた検出メインピークの半値幅からScherrerの式により結晶子径を算出した。また、本測定法では結晶子径100nm以上の測定ができないため、測定限界を越えたサンプルについてはTEM観察で結晶子径を確認した。
【0097】
(耐湿性試験)
耐湿性試験は、ガラス粉末を用い、85℃、85%の恒温恒湿槽に48hr(48時間)投入し、粉末が溶解したものと二次凝集し固まったものは×とした。粉末状態のまま外観が変わらなかったものを○とした。
【0098】
表2に測定結果を示す。
【0099】
表2において、「実施例」と記載した試料は、表1に示す焼成前のガラス組成物の組成に関して、「Vが63質量%〜88.8質量%」、「Pが7質量%〜17.4質量%」、「一価の陽イオンが1.1質量%〜14質量%」、「Fe、WO、Sb、BaO、MoO、MnO、Biの少なくとも1種が0質量%〜20質量%」という条件を満たすものである。一方、焼成前のガラス組成物の組成に関して、上記の組成の範囲を満たさない試料は、「比較例」と記載することにした。
【0100】
ここで、表1と表2とで試料番号の下2桁が等しい試料が、原料のガラス組成物と、その原料を用いて作製した導電性材料とに対応している。すなわち、例えば、表1の試料番号1−01と表2の試料番号2−01とが対応している。
【0101】
【表2】

(導電性材料の評価結果)
表1に示す試料番号1−04、1−05、1−06、1−08、1−11、1−12、1−13、1−15、1−16、1−17、1−18、1−19、1−20、1−21、1−22、1−23、1−25、1−26、1−27、1−28、1−29、1−30、1−31、1−32、1−33、1−34、1−36は、実施例に該当するガラス組成物である。
【0102】
表2に示す試料番号2−04、2−05、2−06、2−08、2−11、2−12、2−13、2−15、2−16、2−17、2−18、2−19、2−20、2−21、2−22、2−23、2−25、2−26、2−27、2−28、2−29、2−30、2−31、2−32、2−33、2−34、2−36は、本発明の実施例に該当する導電性材料の試料である。
【0103】
表2に示す実施例において、析出した主結晶(主な析出結晶)はそれぞれ、Li0.3、Na0.287、Na0.76、K0.33、Cu0.261(V)、Ag0.333(V)である。この結晶は、一価の陽イオン(M)とVとの化合物であり、Mで表される結晶である。ここで、xは0.28〜0.76である。また、結晶率は62%以上、結晶子径は50nm以上である。
【0104】
これらの組成物から得られた導電性材料は、導電率が200Ω・cm以下と良好な導電性を示した。
【0105】
これに対して、表2に示す比較例に該当する試料番号2−01、2−02、2−03、2−07、2−09、2−10、2−14、2−24、2−35、2−37、2−38の導電性材料は、析出した主結晶がVまたはLi0.97であり、Li0.3の結晶が析出しても結晶率が60%である。これらの比較例は、結晶化処理後の抵抗値も200Ω・cmより大きくなり、導電性材料として不適当と考えられる。
【0106】
(結晶格子の測定)
次に、抵抗値が200Ω・cm以下の試料のX線回折によって得られた回折パターンのピークから結晶の格子定数を算出した。
【0107】
図8は、結晶の単位格子を示す模式図である。
【0108】
本図において、結晶の単位格子における格子定数を定義する。
【0109】
図中、a軸、b軸、c軸における単位格子の長さをそれぞれ、a、b、cとし、これらの3軸のうち2軸がなす角の大きさ(角度)をそれぞれ、α、β、γとする。これらの長さ及び角度が単位格子の格子定数である。
【0110】
表3に試料の格子定数算出結果を示す。
【0111】
本実施例における導電性材料の結晶質部の格子定数は、a=1.003〜1.016nm、b=0.3580〜0.3639nm、c=1.510〜1.6435nm、α=γ=90゜、β=105.585〜110.4゜であり、単斜晶の結晶系であることが分かる。
【0112】
【表3】

(導電性材料の形態)
図3Aおよび3Bは、本発明による実施例である導電性材料2−12のSEM画像を示したものである(ここで、SEMはScanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡の略称である。)。図3Bは、図3Aを更に拡大した画像である。また、図3Cは、図3Aに示す導電性材料のSEM画像の模式図であり、図3Dは、図3Bに示す導電性材料の拡大画像の模式図である。
【0113】
図3A及び3Cにおいては、相隣るLi0.3結晶の二次粒子102の隙間に非晶質粒界103が形成されていることが分かる。ここで、「相隣る」とは、「互いに隣接する」の意である。
【0114】
図3B及び3Dにおいては、析出したLi0.3の結晶の一次粒子101が凝集してぶどうの房のような形状の二次粒子102を形成し、この二次粒子102の周囲に非晶質粒界103(ガラス非晶質相の層)を形成していることが分かる。また、図3Bにおいては、相隣るLi0.3結晶の一次粒子101の隙間に微細な非晶質粒界103が形成されていることが分かる。
【0115】
また、図4は、図3Bの結晶質部(Li0.3結晶)のSEM−EDX測定結果を示したグラフであり、図5は、図3Bの非晶質相(結晶質粒界)のSEM−EDX測定結果を示したグラフである(ここで、EDXはEnergy Dispersive X−ray spectrometer:エネルギー分散形X線分析装置の略称である。)。
【0116】
図4から、結晶相は、多量のバナジウム(V)と微量の鉄(Fe)とを含むことが分かる。また、図5から、非晶質相には、図4の結晶質相と比較して、鉄(Fe)の量が多く、リン(P)も含まれることが分かる。
【0117】
すなわち、焼成後の導電性材料において、非晶質相のリン濃度が焼成前の非晶質相よりも高くなっている。
【0118】
(リチウムイオン電池への適用に関する検討)
つぎに、リチウムイオン電池へ適用した例について説明する。
【0119】
図6は、リチウムイオン電池の一例を示す模式図である。
【0120】
以下、本図を参照して説明する。
【0121】
粉砕して平均粒子径5μmに調整した粉末(正極活物質2)85質量%、カーボンブラック(導電補助剤3)10質量%、バインダー5質量%を混合し、ノルマルメチルピロリドンを添加して15Pa・sの粘度にしたペーストを作製した。作製したペーストを正極集電体1のアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥させて正極層7を作製した。正極層7および正極集電体1を共にパンチで打ち抜いて正極電極9を作製した。
【0122】
負極活物質5を用いて負極集電体6の銅箔上に負極層8を形成し、更にロールプレスを行い、正極と同様にパンチで打ち抜いて負極電極10を作製した。
【0123】
正極電極9と負極電極10との間にセパレータ4を挟んでコイン形セルを作製した。
【0124】
ここで、電解液として1mol/l−LiBF/EC+DCE(1:3)を用い、リチウムイオンの供給源としてリチウム箔を用いた。
【0125】
0.1mA/cmの電流密度で4.2−1.5V(vs.Li/Li)の範囲でコインセルの充放電を行い、初期容量と50サイクル後の容量維持率を測定した。
【0126】
表4に結晶状態に対する電池特性の判定結果を示す。
【0127】
表中、電池特性に関しては、初期容量が330mAh/g未満を「×」、330mAh/g以上350mAh/g未満を「△」、350mAh/g以上370mAh/g未満を「○」、370mAh/g以上を「◎」とし、容量維持率は80%以下の場合全て「×」と評価した。
【0128】
また、活物質としての耐湿性については、表2に記載した結果を用いた。
【0129】
総合評価は、耐湿性と電池特性とで評価し、どちらかに「×」のあるものを「×」とし、耐湿性「△」で電池特性が「△」もしくは「○」を「△」とし、耐湿性「△」で電池特性が「◎」を「○」とし、耐湿性「○」で電池特性が「○」もしくは「◎」を「◎」とした。
【0130】
本表において、結晶率が80%以上の場合、電池特性の初期容量は全て330mAh/g以上となっている。ただし、結晶率が100%の場合、サイクル特性が低く、好ましくないことが分かった。また、結晶子径が50nm以上の場合、容量が大きくなり、100nm〜300nmが特に好ましいこが分かる。
【0131】
【表4】

(Liイオンのドープ)
図7にリチウムイオンドープ装置を示す。
【0132】
本図において、リチウムイオンドープ装置11は、SUS製であり、内部を真空に引きながら反応容器14の左右を独立に加熱できるようになっている。
【0133】
本装置の操作手順は次の通りである。
【0134】
リチウムイオンドープ装置11を窒素ガスでパージしたグローブボックス内に設置し、試料番号2−12の導電性材料(符号12)10gおよび金属リチウム(符号13)5gを互いに接触しないように反応容器14に挿入した。導電性材料12を挿入した反応容器14の左側部分をリボンヒーターで加熱して3時間真空引きした。次いで、反応容器14のバルブを閉じて真空ラインより外し、マントルヒーターで350℃に加熱し2週間反応させた。
【0135】
露点−90℃のグローブボックス内で反応容器14から取り出し、リチウムイオンの供給源としてリチウム箔を用いずに実施例4と同様にコインセル評価を実施した。
【0136】
その結果、電池容量372mAh/g、容量維持率82%と良好な特性を確認した。
【符号の説明】
【0137】
1:正極集電体、2:正極活物質、3:導電補助剤、4:セパレータ、5:負極活物質、6:負極集電体、7:正極層、8:負極層、9:正極電極、10:負極電極、11:リチウムドープ装置、12:導電性材料、13:金属リチウム、14:反応容器、101:一次粒子、102:二次粒子、103:非晶質粒界。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶相と非晶質相とを含む導電性材料であって、該導電性材料は少なくとも酸化バナジウムと酸化リンとを含む結晶化ガラスであって、前記結晶相が単斜晶のバナジウム系酸化物を含み、前記結晶相の体積が前記非晶質相の体積より大きいことを特徴とする導電性材料。
【請求項2】
前記バナジウム系酸化物は、M結晶子(ここで、Mは、一価の陽イオンであり、xが0.28〜0.76である。)を含み、前記M結晶子の直径が(111)面或いは(11−1)面の方向で50nm〜300nmであることを特徴とする請求項1記載の導電性材料。
【請求項3】
前記M結晶子のMがLi、Na、K、Cu及びAgの群から選択される1種類の元素を含むことを特徴とする請求項2記載の導電性材料。
【請求項4】
前記結晶相の格子定数がa=1.003〜1.010nm、b=0.360〜0.364nm、c=1.520〜1.542nmで、α=γ=90゜、β=105.5〜110.7゜である単斜晶であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項5】
前記結晶相の体積の割合が63%〜98%であり、前記非晶質相が酸化バナジウムと酸化リンとを含む非晶質相であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項6】
前記結晶相の粒界、前記M結晶子の一次粒子の粒界、又は前記M結晶子の二次粒子の粒界が非晶質相であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項7】
前記非晶質相が、更に酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化バリウム、酸化アンチモン及び酸化ビスマスの群から選択される1種類以上を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の導電性材料。
【請求項8】
前記M結晶子は、酸化バナジウムと酸化リンとを含み、更に酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化銅及び酸化銀の群から選択される1種類以上を含むガラス組成物を結晶化開始温度以上で熱処理することによって析出させたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項9】
前記ガラス組成物は、更に酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化バリウム、酸化アンチモン及び酸化ビスマスの群から選択される1種類以上を含むことを特徴とする請求項8記載の導電性材料。
【請求項10】
前記ガラス組成物の組成が酸化物換算で、Vが62〜92重量%、Pが5〜20重量%、LiO、NaO、KO、CuO及びAgOのいずれか1種以上が1〜15重量%、WO、MoO、Fe、MnO、BaO、Sb及びBiの群から選択される1種類以上が0〜20重量%以下であり、転移温度が300℃以下であり、結晶化開始温度が400℃以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載の導電性材料。
【請求項11】
前記ガラス組成物の組成が酸化物換算で、Vが70〜80重量%、Pが8〜14重量%、LiO、NaO及びKOのいずれかが1〜5重量%、WOとFeとの合計が10〜20重量%以下であり、転移温度が300℃以下であり、結晶化開始温度が400℃以下であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項12】
25℃における比抵抗が200Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の導電性材料の粉末を用いたことを特徴とするLiイオン二次電池用正極材料。
【請求項14】
前記M結晶子におけるxが0.28〜0.41であることを特徴とする請求項13記載のLiイオン二次電池用正極材料。
【請求項15】
前記M結晶子におけるMがLi、Na及びKの群から選択される1種類を含むことを特徴とする請求項13又は14に記載のLiイオン二次電池用正極材料。
【請求項16】
前記M結晶子における格子定数βが109.2〜110.7゜であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載のLiイオン二次電池用正極材料。
【請求項17】
前記結晶相の体積の割合が80%〜95%、前記M結晶子のサイズが(111)面又は(11−1)面の方向で100nm〜300nmであることを特徴とする請求項13〜16のいずれか一項に記載のLiイオン二次電池用正極材料。
【請求項18】
前記導電性材料の25℃における比抵抗が10〜100Ω・cmであることを特徴とする請求項13〜17のいずれか一項に記載のLiイオン二次電池用正極材料。
【請求項19】
前記導電性材料を作製後に、前記導電性材料の結晶相中にリチウムイオンをドープすることを特徴とする請求項13〜18のいずれか一項に記載のLiイオン二次電池用正極材料。
【請求項20】
更にカーボン粉末を含むことを特徴とする請求項13〜19のいずれか一項に記載のLiイオン二次電池用正極材料。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−14373(P2011−14373A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157394(P2009−157394)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000233572)日立粉末冶金株式会社 (272)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】