説明

導電性流体検知器

【課題】導電線の中間部の短絡、先端面の異物の付着或いは部材の変形突起との接触等によりもたらされる誤動作等が起こりにくく、かつ高い融点を有するアルミニウム等の溶融金属にも適用をとする。
【解決手段】導電性流体検知器は先端に接触端子6、6を有し、この接触端子6、6に接触した導電性流体による電気的導通を検知して導電性流体の存在を検知する。導電線4、4を金属チューブ状のシース1に収納し、導電線4、4とシース1との間にマグネシア粉末等の無機絶縁材粉末5を充填して絶縁したシースケーブルを使用する。このシース1の先端付近の側面を窓状に切り開いて開口部3を形成すると共に、この開口部3の中の無機絶縁材粉末5を導出して空洞のカバー部2を形成する。このカバー部2の中に前記無機絶縁材粉末5の端面から前記導電線4、4に接続された接触電極6、6を導出させ、さらにカバー部3の端面を覆う端面カバー7を設けた

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体状の金属等の導電性を有する流体の存在を検知するのに用いられる導電性流体検知器に関し、具体的には導電性流体を貯えた部位から導電性流体が漏洩したことを検知するもので、耐久性に優れ、ゴミや容器の変形等による誤動作がなく、安定して使用することが出来る高信頼性の導電性流体検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性流体検知器には種々のタイプがあるが、その基本原理は1本以上の導電線を平行に配置し、その導電線間または導電線と他の導体との間の電気特性の変化を検知するものが多く用いられている。
例えば、高速増殖炉を始めとして液体金属の漏れを検知する最も一般的な導電性流体検知器は電極式と呼ばれているものが多く使用されている。これはビーズ状の絶縁碍子に導電線を引き通しておいて、先頭の絶縁碍子の先端面から突出した接触電極が導電性流体に接触することによって生じる電気抵抗値の減少を検知することにより導電性流体の存在を検知するものである。この電極式導電性流体検知器は非常に単純のもので、導電性のある水漏洩検知手段としても多く利用されている。
【0003】
前記接触電極間で導通抵抗を測定し、導通時に警報を発する導電式導電性流体検知器は多くの制御機器メーカから市販されており、その電気回路上の問題は殆ど無い。しかし水以外の多くの導電性流体に適用する導電性流体検知器は適用する導電性流体に特有な様々な問題があり、それぞれの問題を解決しなければ導電性流体検知器として実際に使用することは出来ない。
【0004】
適用する導電性流体が水の場合、水は表面張力が小さく、多くの金属に対して濡れ性もよく、接触電極と測定機器との間の導電線に使用する絶縁体もプラスチックが十分使用出来る。耐熱や酸、アルカリ等に対する耐食性を考慮しなければならない場合でも、導体としてステンレス、銅、ニッケル等を使用し、絶縁体としてフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂を用いれば大概は事足りる。
【0005】
これに対して溶融アルミニウム等のような溶融金属の場合、金属それぞれの特質によって導体や絶縁体の材料や形状、その配置或いは機器への取り付け等に様々な課題がある。例えば融点の高いアルミニウムの腐食性問題がその典型である。また常温の金属であっても表面張力が大きく、電極に対する濡れ性も悪い水銀を接触電極に導くためには濡れ性が悪いフッ素系樹脂をコーティングした樋を使用したり、その樋から水銀を或る程度の量を集める水銀貯めを設けたりする等の対策が必要となる。
【0006】
図5に絶縁体としてのビーズ状の碍子21に導電線24、24を引き通し、先頭の碍子21の端面から導出した導電線24、24の先端部を接触端子25、25とした導電性流体検知器の従来例を示す。図5ではこのような導電性流体検知器を容器状の部材22に取り付け、この部材22の底部に流出してくる導電性流体を検知する。
【0007】
このような絶縁体としてのビーズ状の碍子21に導電線24、24を引き通した導電性流体検知器は構造が簡単でコストも低い。しかし導電線24、24を折り曲げた部分では碍子21の間が開いてしまい、針金、金属片、金属粉等の導電性を有する異物が碍子21の隙間に付着しやすく、これが誤動作の原因となる。また誤動作は先端の碍子21に設けられた接触電極25、25に至る導電線24、24の中間部での相互の接触等に伴う短絡によっても起こり得る。さらに、接触電極25、25が設けられた先端の碍子21の端面に金属粉等の導電性を有する異物が付着したり、さらには図5に示すように先端の碍子21の端面に設けられた接触電極25、25が部材22の突起状の変形部23に接触したりすることによっても誤動作が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−26264号公報
【特許文献2】特開2002−277341号公報
【特許文献3】特開2000−131178号公報
【特許文献4】特開平11−72408号公報
【特許文献5】特開平08−303964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記従来の導電性流体検知器における課題に鑑み、導電線の中間部の短絡、先端面の異物の付着或いは部材の変形突起との接触等によりもたらされる誤動作等が起こりにくく、かつ高い融点を有するアルミニウム等の溶融金属にも適用が可能な導電性流体検知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では前記の目的を達成するため、導電線4、4を金属チューブ状のシース1に収納し、導電線4、4とシース1との間にマグネシア粉末等の無機絶縁材粉末5を充填して絶縁したシースケーブルを使用する。さらにシース1と無機絶縁材粉末5から露出した導電線4、4の先端を接触端子6、6とすると共に、この接触端子6、6の先に前記シース1を延長してカバー部2を設け、このカバー部2に導電性流体を流入させる窓状の開口部3を設ける。加えてこのカバー部3の先端面を覆う端面カバー7を設ける。
【0011】
すなわち、本発明による導電性流体検知器は先端に接触端子6、6を有し、この接触端子6、6に接触した導電性流体による電気的導通を検知して導電性流体の存在を検知するものであって、導電線4、4を金属チューブ状のシース1に収納し、導電線4、4とシース1との間にマグネシア粉末等の無機絶縁材粉末5を充填して絶縁したシースケーブルを使用し、このシース1の先端付近の側面を窓状に切り開いて開口部3を形成すると共に、この開口部3の中の無機絶縁材粉末5を導出して空洞のカバー部2を形成し、このカバー部2の中に前記無機絶縁材粉末5の端面から前記導電線4、4に接続された接触電極6、6を導出させ、さらにカバー部3の端面を覆う端面カバー7を設けたものである。
【0012】
この場合、接触電極6、6はシース1の内部を通る導電線4、4と一体に連なったものであるのがよい。またカバー部2はシース1の先端部が一体に連なったものであるのがより。これらにより、シースケーブル以外に別部材を使用することなく導電性流体検知器を構成することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
このような導電性流体検知器は導電線4、4が連続的なシース1に覆われており、しかもシース1と導電線4、4の間に無機絶縁材粉末5が充填されているので、導電線4、4が異物に接触したり、導電線4、4同士が接触せず、短絡による誤動作を確実に防止することが出来る。さらに、接触電極6、6がカバー部2の内側に設けられており、加えてカバー部2の端面が端面カバー7で覆われているので、接触電極6、6への異物や突起状の変形部分の接触等が無く、やはり短絡による誤動作を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による導電性流体検知器とそのアダプター部の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明による導電性流体検知器の一実施例の先端部分の要部斜視図である。
【図3】本発明による導電性流体検知器の他の実施例の先端部分の要部斜視図である。
【図4】本発明による導電性流体検知器の他の実施例の先端部分の要部斜視図である。
【図5】導電性流体検知器の従来例をその使用例と共に示した概略断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明ではその目的を達成するため、無機絶縁ケーブルを使用し、そのシースの先端部にカバー部を設けてその中に接触端子を配置し、さらにこのカバー部の先端面を端面カバー7で覆った。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0016】
導電性流体検知器用のケーブル部材として無機絶縁ケーブルを使用する。これは図2に示すように、ステンレスチューブ等からなるチューブ状のシース1の中に1以上の導電線4、4を収納し、さらにシース1と導電線4、4との間にマグネシア粉末等の無機絶縁材粉末5を充填したものである。シースと導電線4、4及び導電線4、4同士は前記無機絶縁材粉末5により互いに絶縁される。
【0017】
図2に示した実施例ではシース1の中に2本の導電線4、4を収納した2芯のシースケーブルが使用されている。さらにこの例ではシース1の中心軸上にさらに細径のチューブ状のパイプがファイバスコープ導入用のモニタパイプ8として挿入されている。
【0018】
図2に示すように、ステンレス等からなるチューブ状のシース1の先端部の両側面を窓状にくり抜き、シース1の先端部の両側面に開口部3が設けられている。さらにこの開口部3の部分のシース1の内部の無機絶縁材粉末5が排出、除去され、その部分が空洞なカバー部2となっている。このカバー部2の内部において、一部除去された無機絶縁材粉末5の端面から導電線4、4の先端がカバー部2内に導出され、これら導出された導電線4、4の先端部を接触電極5、5とする。内部が空洞となったカバー部2の端面は閉じられ、この封止されて閉じられた部分が端面カバー7となっている。
【0019】
図1はこの導電性流体検知器の先端部とその導電線4、4を計測回路に接続するための電極リード線12、12に接続するアダプタ部とを示している。
導電線4、4の接触電極6、6側と反対側の端部はシース1と無機絶縁材粉末5から導出され、ソター11、11を介して電極リード線12、12に接続されている。電極リード線12、12としては例えば銅等の導電線を樹脂被覆等で覆った、いわゆるソフトケーブルを使用することが出来る。導電性流体検知器の導電線4、4は電極リード線12、12を介して計測回路に接続される。
【0020】
シース1のほぼ中心を貫通したモニタパイプ8の接触電極6、6側と反対側の端部はシース1と無機絶縁材粉末5から導出され、その導出された端部外周に円筒形の補強パイプ9が嵌合され、固定されている。この補強パイプ9の先端外周部にはネジが切られ、ここに袋ナット状の端面を閉じた円筒形のキャップ14がねじ込まれて取り付けられる。
【0021】
前記の導電線4、4が接続されたシース1の接触電極6、6側と反対側の端部には段付き円筒形のアダプタケース10の細径部が嵌め込まれ、溶接やロウ付け等の手段で固着されいる。このアダプタケース10の中には前記導電線4、4と電極リード線12、12との接続部が収納される。さらにこのアダプタケース10の内部にはエポキシ樹脂等の絶縁材13が充填されており、従ってこの絶縁材13の中に前記導電線4、4と電極リード線12、12の接続部が埋め込まれる。さらに図示の例ではモニタパイプ8と補強パイプ9の接合部も絶縁材13の中に埋め込まれる。
【0022】
このような構成を有する導電性流体検知器の使用方法は前述した従来のものと基本的に変わらない。接触電極6、6側を導電性流体の存在を検知しようとする個所に配置し、電極リード線12、12を計測回路に接続して接触電極6、6間の電気抵抗、通電電流値等の変化を観測する。接触電極6、6間の電気抵抗、通電電流値等の変化が生じたときに導電性流体が検知される。
【0023】
既に述べた通り、本発明によるシース1と無機絶縁材粉末5とにより導電線4、4の絶縁性が確保され、短絡による誤動作が防止される。さらに、接触電極6、6はカバー部2やその端面カバー7により保護されているので、やはり短絡による誤動作を防止することが出来る。
【0024】
図3と図4は本発明の導電性流体検知器の他の実施例を示すものである。これらの導電性流体検知器でもシース1の先端側に窓3を設け、この窓3のある部分の無機絶縁材粉末5を除去して空洞のカバー部2を形成し、このカバー部2の端面を端面カバー7で閉じている。この構造は基本的に前述した実施例と同様である。
【0025】
これらの導電性流体検知器では1本のシース1に4本の導電線4、4が収納された4芯の無機絶縁ケーブルを使用している。導電線4、4の先端部を前記カバー部2の中で無機絶材縁粉末5から導出し、接触端子6、6とする。そして、無機絶材縁粉末5から導出した導電線4、4の先端部を2本ずつロウ付け等の手段で接合し、導通している。これらの導電性流体検知器では1つの接触端子6、6ごとに2本の導電線4、4が割り当てられるところから、1本の導電線に断線等のトラブルがあっても使用することが出来、より高い信頼性を確保することが出来る。
【0026】
なお、図3に示した導電性流体検知器ではシース1のほぼ中心にモニタパイプ8を設けているが、図4に示した導電性流体検知器ではそのようなモニタパイプ8を設けていない。モニタパイプ8はその中にファイバースコープを挿入して導電性流体検知器の先端を目視観察したり、あるいはその中に熱電対等の測温素子やpH電極等を挿入して導電性流体検知器の先端の温度や水素濃度等を計測するのに使用する。そうした観察や計測が不要な場合はモニタパイプ8を設ける必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明による導電性流体検知器は、高い信頼性で導電性流体の存在を検知することが出来るので、例えば高速増殖炉を始めとして液体金属の漏れを検知するために使用することが出来る。
【符号の説明】
【0028】
1 シース
2 カバー部
3 開口部
4 導電線
5 無機絶縁材粉末
6 接触端子
7 端面カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に接触端子6、6を有し、この接触端子6、6に接触した導電性流体による電気的導通を検知して導電性流体の存在を検知する導電性流体検知器において導電線4、4を金属チューブ状のシース1に収納し、導電線4、4とシース1との間に無機絶縁材粉末5を充填して絶縁したシースケーブルを使用し、このシース1の先端付近の側面を窓状に切り開いて開口部3を形成すると共に、この開口部3の中の無機絶縁材粉末5を導出して空洞のカバー部2を形成し、このカバー部2の中に前記無機絶縁材粉末5の端面から前記導電線4、4に接続された接触電極6、6を導出させ、さらにカバー部3の端面を覆う端面カバー7を設けたことを特徴とする導電性流体検知器。
【請求項2】
接触電極6、6はシース1の内部を通る導電線4、4と一体に連なったものからなることを特徴とする請求項1に記載の導電性流体検知器。
【請求項3】
カバー部2はシース1の先端部が一体に連なって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性流体検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−7748(P2011−7748A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153963(P2009−153963)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000183945)助川電気工業株式会社 (79)
【Fターム(参考)】