説明

導電性粒子の表面検査方法及び表面検査装置

【課題】 非導電性材料からなる球体の表面に導電膜が被覆されてなる導電性粒子の表面被覆の欠陥を迅速にかつ高精度に検出することを可能とする表面検査方法を提供する。
【解決手段】 非導電性材料からなる球体の表面を導電膜で被覆してなる導電性粒子3の表面欠陥を検査するにあたり、複数の導電性粒子3を重なり合わないように配置し、複数の導電性粒子3をX線カメラ6で撮影し、X線による画像を得、複数の導電性粒子3を撮影した画像における導電性粒子3の濃度に基づき、導電性粒子の表面の欠陥を検出する各工程を備え、上記表面被覆の欠陥を検出する工程において、表面被覆に欠陥が存在しない場合の導電性粒子の画像に対応した基準データと、X線カメラで撮影された導電性粒子の画像データとを比較することにより、表面欠陥の有無を検出する、導電性粒子3の表面検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば合成樹脂やセラミックスなどからなる非導電性の球体表面を金属などの導電膜で被覆してなる導電性粒子の表面被覆の欠陥を検出するための表面検査方法及び表面検査装置に関し、より詳細には、X線カメラを用いて導電性粒子の表面を検査する工程を含む、表面検査方法及び表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂からなる球体の表面に金属メッキ層を形成することにより、球状の導電性粒子が作製されている。この導電性粒子は、半導体素子などの電子部品素子を実装基板上の電極に電気的に接続する用途などに用いられている。従って、導電性粒子表面の金属メッキ層に欠落部分や傷が存在すると、電子部品素子と実装基板の電極との間の導通が確保されないおそれがあった。
【0003】
そこで、上記導電性粒子を作製した後に、表面の金属メッキ層に欠落部分や傷が存在するか否かを検査し、不良品を排除する必要があった。このような表面欠陥の検出に際しては、従来、球状の導電性粒子を半球状の窪みに配置し、導電性粒子表面をカメラで撮影し、さらに窪みの中で導電性粒子を回転させ、他の表面部分を撮影し、撮影により得られた二次元画像を検査することにより表面欠陥が検出されていた。
【0004】
しかしながら、上記の方法では、撮影されない表面部分をなくすには、撮影される表面部分が重複するように導電性粒子を回転させねばならなかった。そのため、球状の導電性粒子の全表面を迅速かつ容易に検査することが困難であった。
【0005】
他方、下記の特許文献1には、このような問題を解決するものとして、相互に平行に配置されており、かつ同一方向に回転駆動される一対のローラーと、ローラー間のエリアを撮影するラインセンサとを備える球体検査装置が開示されている。ここでは、一対の円筒状のローラーが隣り合っている部分において、球体の移動経路が構成されており、該移動経路に投入された球体が移動経路を転がりつつ進行する。また、一対のローラーが同一方向に回転されるため、球体は、ローラーの回転方向と反対方向に回転する。従って、上記移動経路を進行する間に、撮影領域が移動経路と平行となるように配置したラインセンサにより球体表面を撮影すれば、球体の全表面を容易にかつ確実に検査することができる。
【特許文献1】特開2003−294642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来の二次元的なカメラを用いた表面検査装置では、球体の全表面を確実にかつ迅速に検査することが困難であった。
【0007】
他方、特許文献1に記載の球体検査装置では、上記のように、隣り合うローラー間の移動経路を進行する間に、ローラーと反対方向に回転している球体がさらに移動経路に沿って転がりつつ進行するため、ラインセンサにより球体表面の全表面を確実に検査することができる。しかしながら、この方法では、球体を上記移動経路に沿って転がらせなければならず、従って、やはり球体の全表面を撮影するに際し、かなりの時間を必要とした。加えて、ラインセンサにより得られる画像は、線状であるため、線状の画像を上記移動経路と直交する方向に走査することにより球体の表面の画像が得られていた。従って、ラインセンサから得られる信号の処理が複雑にならざるを得なかった。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、球状の導電性粒子における導電膜による表面被覆の欠陥をより迅速にかつより確実に検査することを可能とする導電性粒子の表面検査方法及び表面検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る導電性粒子の表面検査方法は、非導電性材料からなる球体の表面を導電膜で被覆してなる球状の導電性粒子の表面欠陥を検査する方法であって、複数の前記導電性粒子を重なり合わないように配置する工程と、前記複数の導電性粒子をX線カメラで撮影し、複数の導電性粒子のX線による画像を得る工程と、前記複数の導電性粒子を撮影した画像における導電性粒子部分の濃度に基づき、導電性粒子の表面被覆の欠陥を検出する工程とを備え、前記表面被覆の欠陥を検出する工程において、表面被覆に欠陥が存在しない場合の導電性粒子の画像に対応した基準データと、前記X線カメラで撮影された導電性粒子の画像データとを比較することにより、表面欠陥の有無を検出することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る導電性粒子の表面検査方法のある特定の局面では、前記基準データと、撮影された前記導電性粒子の画像データとの比較に際し、前記基準データと撮影された画像データとの差分画像が求められ、該差分画像に基づいて表面欠陥の有無が検出される。
【0011】
本発明に係る導電性粒子の表面検査方法のさらに他の特定の局面では、X線カメラで撮影された導電性粒子の画像の周縁部分の濃度を、表面欠陥が存在しない場合の濃度と、表面欠陥が存在する場合の濃度との間のしきい値濃度により判別して、周縁部分における表面欠陥の有無を検出する工程がさらに備えられている。
【0012】
本発明に係る導電性粒子の表面検査方法のさらに別の特定の局面では、前記X線カメラで撮影された導電性粒子の画像における周縁部分の形状が円形以外の形状であるかを判別し、円形以外の形状である場合に表面欠陥が存在する不良品と判断する工程がさらに備えられている。
【0013】
本発明に係る導電性粒子の表面検査方法のさらに別の特定の局面では、前記複数の導電性粒子を複数のグループに分けて配置し、1つのグループに含まれている複数の導電性粒子中に表面欠陥を有する導電性粒子が存在すると判断された際に、当該導電性粒子が所属しているグループの複数の導電性粒子を不良品として除去する工程がさらに備えらている。
【0014】
本発明に係る表面検査装置は、請求項1に記載の導電性粒子の表面欠陥検査方法に用いられる表面欠陥検査装置であって、複数の導電性粒子が載置されるトレイと、前記トレイの上方からトレイに載置された複数の導電性粒子を撮影するX線カメラと、前記X線カメラに接続されており、X線カメラから得られた複数の導電性粒子の画像を、表面欠陥が存在しない場合の導電性粒子の画像に対応しており、予め定められた基準データと比較して導電性粒子における表面欠陥の有無を検出する検出手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る表面検査装置のある特定の局面では、前記検出手段において、予め定められた前記基準データと、撮影された導電性粒子の画像との差分画像が作製され、該差分画像に基づいて、表面欠陥の有無が検出される。
【0016】
本発明に係る表面検査装置のさらに他の特定の局面では、前記差分画像が、前記基準データにおける濃度から、撮影された導電性粒子の画像における濃度を減算することにより求められる。
【0017】
本発明に係る表面検査装置のさらに別の特定の局面では、前記導電性粒子の画像の外周縁の濃度を、表面欠陥が存在しない場合の濃度に相当する濃度と、表面欠陥が存在する場合の濃度との間のしきい値濃度に基づいて二値化し、周縁部の濃度がしきい値濃度よりも低い場合に表面欠陥有りと判断する第2の検出手段がさらに備えられている。
【0018】
本発明に係る表面検査装置のさらに他の特定の局面では、前記X線カメラで撮影された導電性粒子の画像の外周縁部の形状が円形であるか否かを判断し、円形以外の形状の場合に表面欠陥有りと判断する第3の検出手段がさらに備えられている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る導電性粒子の表面検査方法及び検査装置では、非導電性材料からなる球体の表面が導電膜で被覆された球状の導電性粒子が重なり合わないように配置される。そして、このように配置された複数の導電性粒子の画像がX線カメラで撮影される。複数の導電性粒子は、表面に導電層を有しており、内部は球状の非導電性材料である。従って、X線カメラで撮影された導電性粒子の画像として、導電膜に起因する部分の濃度に応じて、表面の導電膜に欠陥が存在しない場合には、ほぼ均一な濃度の円形の画像が得られることになる。
【0020】
これに対して、表面の導電膜に欠落部分や傷が存在した場合には、そのような欠陥が存在する部分に応じた領域において画像の濃度が薄くなる。この場合、X線は、導電性材料以外の材料は透過するため、導電性材料からなる被覆において、X線カメラ側の表面だけでなく、X線カメラとは反対側の表面において欠陥が生じている場合であっても、上記のような濃度の低下が生じる。従って、本発明によれば、X線カメラによる画像を利用するため、球体の導電性粒子を一方側から撮影するだけで、球体の導電性粒子の表面の導電膜における欠陥の有無を得られた画像の濃度に基づいて容易にかつ確実に検出することができる。
【0021】
すなわち、従来の球体の導電性粒子の表面欠陥の検査方法において二次元的なカメラを用いた場合には、全表面の欠陥を検出するのに導電性粒子を回転させねばならなかった。また、ラインセンサを用いた特許文献1に記載の検査方法においても、球体の導電性粒子を移動経路を進行させる間に転がし、かつ隣り合うローラーにより回転させる必要があった。すなわち、従来の表面検査方法では、いずれの方法においても、球状の導電性粒子を回転させて、全表面を撮影しなければならなかった。
【0022】
これに対して、本発明の表面検査方法及び表面検査装置では、X線を利用するため、球状の導電性粒子を回転させることなく、一方側から撮影するだけで、容易にかつ迅速に表面欠陥の有無を得られた画像から検出することが可能となる。よって、球状の導電性粒子の表面欠陥の有無を、導電性粒子を回転させる作業を何ら必要することなく、迅速にかつ高精度に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0024】
図1は本発明の一実施形態に係る導電性粒子の表面検査装置を説明するための概略構成図である。本実施形態の表面検査装置1は、トレイ2に配置された複数の導電性粒子間の表面の被覆の欠陥を検出するために用いられる。図2に示すように、導電性粒子3は、非導電性の球体4と、球体4の外表面を被覆するように設けられた導電膜5とを有する。
【0025】
球体4は、合成樹脂または絶縁性セラミックスなどの適宜の非導電性材料により構成される。好ましくは、柔軟性を有する合成樹脂により球体4が構成されている場合、導電性粒子3は、柔軟性は要求される用途に好適に用いられる。
【0026】
上記導電膜5は、金属膜などの適宜の導電性材料により構成されている。導電性粒子3は、例えばICなどの電子部品を実装基板上の電極に電気的に接続する用途に用いられる。本実施形態の表面検査装置1では、上記球体4の表面を被覆している導電膜5の欠落や傷などの表面欠陥がX線を利用して検出される。
【0027】
図3は、図1に示したトレイ2を略図的に示す斜視図である。図3に示すように、仕切り壁で隔てられた複数の収納凹部2aを有する。特に限定されるわけではないが、本実施形態では、複数の収納凹部2aは、マトリックス状に配置されている。図4に示すように、1つの収納凹部2a内に、複数の導電性粒子3が載置されるように、収納凹部2aの大きさが定められている。
【0028】
本実施形態では、上記1つの収納凹部2aの寸法は、10mm×10mm程度とされているが、この寸法は、収納される導電性粒子の大きさ及び数等によって適宜変更することができる。もっとも、本実施形態では、例えば粒径300μm程度の導電性粒子3を上記収納凹部に収納することにより、1つの収納凹部2a内に1000〜2000個程度の導電性粒子3を配置して良品または不良品の判別を行うことができる。従って、高速でかつ高精度に、導電性粒子3の表面欠陥の検出を行うことができる。
【0029】
なお、上記トレイ2は、合成樹脂などの適宜の非導電性材料により形成され得る。
【0030】
図1に戻り、1つの収納凹部2aの上方に、X線カメラ6が配置されている。X線カメラ6は、上記1つの収納凹部2aをX線で撮影するように配置される。また、トレイ2には、モータMを含む駆動装置7が接続されている。駆動装置7により、トレイ2は上記収納凹部2aが配置されているマトリックスの縦方向及び横方向に移動され得る。すなわち、駆動装置7により、X線カメラ6で撮影される領域を、1つの収納凹部2aから他の収納凹部2aに変更するように、トレイ2が駆動装置7で駆動される。
【0031】
また、本実施形態では、検出手段としての制御装置8が、上記X線カメラ及び駆動装置7に電気的に接続されており、制御装置8により、X線カメラ6による撮影及び駆動装置7によるトレイ2の移動が制御される。
【0032】
他方、トレイ2の上方には、吸着ヘッド9が配置されている。吸着ヘッド9は、駆動装置10に連結されている。また、吸着ヘッド9は、下面に開いた複数の吸引孔9aを有し、各吸引孔において、1つの導電性粒子3を吸着保持するように構成されている。従って、吸着ヘッド9は、図示しない吸引源に接続されている。また、吸着ヘッド9の下面には、1つの収納凹部2aに応じた領域に複数の導電性粒子3を吸着保持するように構成されている。そして、駆動装置10により、吸着ヘッド9に保持された複数の導電性粒子3が、1つの収納凹部2aの上方に移動され、該1つの収納凹部2aに吸着を解除することにより複数の導電性粒子3を載置させ得るように構成されている。
【0033】
また、上記駆動装置10により、吸着ヘッド9は、トレイ2の上方から離れた位置にある導電性粒子供給部(図示せず)まで移動され、該導電性粒子供給部に用意されている複数の導電性粒子3を下面に吸着保持し得るように構成されている。
【0034】
なお、上記吸着ヘッド9では、1つの吸引孔9aに、1つの導電性粒子3が吸引保持され得るように構成されており、かつ吸着ヘッド9は、1つの収納凹部2aの上方に移動され、上記吸着を解除することにより導電性粒子3を収納凹部2aに載置する。1つの収納凹部2aにおいて互いに重なり合わないように導電性粒子3が配置される大きさとなるように吸着ヘッド9の下面の導電性粒子3を吸着保持領域の面積が規定されている。よって、上記吸着ヘッド9から1つの収納凹部2aに複数の導電性粒子3を載置した場合、複数の導電性粒子3は1つの収納凹部2a内において重なり合わないように配置される。
【0035】
また、上記制御装置8は、X線カメラ6で撮影された画像に基づき、複数の導電性粒子3の表面被覆の欠陥を検出する。これを、図5及び図6を図1とともに参照しつつ本実施形態の表面検査方法を説明することにより明らかにする。
【0036】
本実施形態の導電性粒子の表面検査方法では、まず、上記吸着ヘッド9の下面に、各吸引孔9aから吸引することにより、前述した導電性粒子供給部において導電性粒子3を吸着保持する。そして、制御装置8により、駆動装置10が駆動され、吸着ヘッド9が、1つの収納凹部2aの上方に移動され、吸引を解除することにより、1つの収納凹部2aに複数の導電性粒子3が収納される。図4に示すように、このようにして、トレイ2の1つの収納凹部2に、複数の導電性粒子3が配置されることになる。この場合、前述したように吸着ヘッド9の下面の面積及び吸引孔9a,9a間の間隔が定められているため、収納凹部2a内において、複数の導電性粒子3は重なり合わないように載置されることになる。
【0037】
次に、制御装置8を駆動し、吸着ヘッド9を、上記導電性粒子3が載置された収納凹部2aの上方から遠ざける。
【0038】
しかる後、X線カメラ6により、複数の導電性粒子3が載置されている収納凹部2aを撮影する。この場合、必要に応じて、制御装置8により駆動装置7を駆動し、上記X線カメラ6を、導電性粒子3が収納されている収納凹部2aの上方に移動させる。
【0039】
X線カメラ6による撮影が、制御装置8により指示され、X線カメラ6で撮影された信号が、制御装置8に与えられる。
【0040】
導電性粒子3の外表面には、上記導電膜4による被覆が設けられている。他方、X線カメラで撮影された画像において、導電膜部分はある濃度を有するように撮影され、内部の非導電性材料からなる球体4においてはX線は透過する。従って、球体4の全外表面が導電膜5により完全に被覆されている場合、図5(a)に示す画像11が得られる。画像11は均一な濃度を有することになる。これは、X線カメラ6から、すなわち上方から撮影された際、導電性粒子3の上半分における導電膜と、X線カメラ6側からは影となっている下半分の導電膜双方の存在による濃度の画像が画像11として得られることになる。
【0041】
他方、導電性粒子3の半分において、導電膜4が部分的に欠落している欠落部が存在する場合、図5(b)に示す画像12が得られることになる。画像12では、欠落部分12aにおいては、残りの部分よりも濃度が薄くなる。これは、欠落部分12aにおいて導電膜が存在しないことによる。
【0042】
X線は、非導電性材料からなる球体4を通過するため、欠落部が、導電性粒子3の上半分ではなく、下半分に存在する場合においても、図5(b)に示した欠落部12aと同様に、導電膜が部分的に存在しないことにより濃度が薄い部分として欠落部が判別される。
【0043】
すなわち、本実施形態の表面検査方法では、X線を用いて撮影された画像により表面欠陥の有無が検出されるが、X線を用いているため、球状の導電性粒子3を回転させることなく、すなわち導電性粒子3を固定的に載置したままで、全表面の被覆の欠陥を容易にかつ迅速に検出することができる。
【0044】
本実施形態では、制御装置8においては、より具体的には、上記のように図5(a)に示した画像11に応じた基準データが制御装置8に予め記憶されている。この基準データは、導電性粒子3の表面における導電膜5の被覆に欠陥が生じない場合の画像データ、すなわち図5(a)に示したように、均一な濃度の円形の画像11に応じたデータである。
【0045】
他方、制御装置8においては、上記基準データとし、X線カメラ6で撮影された1つの導電性粒子3の画像12のデータとが比較され、その差により上記例えば欠落部12aのような表面欠陥の存在が検出される。この場合、本実施形態では、上記基準データと、撮影された画像データとの差分画像が求められ、該差分画像に基づいて、表面欠陥の有無が検出される。もっとも、差分画像を求める方法の他、画像11,12をある座標方向に走査しつつ、両者の濃度を各座標位置で比較することにより、欠落部の有無を判断してもよい。
【0046】
前述したように、特許文献1に記載の表面検査装置などでは、X線ではなく、通常の可視光線を利用して球状の導電性粒子の表面を撮影していたため、球状の導電性粒子の全表面を撮影するには、導電性粒子自体を回転させねばならなかった。そのため、装置及び操作が複雑にならざるを得なかった。これに対して、本実施形態では、X線を利用することにより、球状の導電性粒子3の表面の導電膜5による被覆の欠陥が検出されるため、球状の導電性粒子3を回転させる必要がない。よって、迅速にかつ高精度に導電性粒子3の表面の被覆の欠陥を検出することができる。
【0047】
なお、図5(b)では、部分的な欠落部12aにつき示したが、本発明は、スクラッチ傷などのような些細な導電性粒子3の表面における傷等をも検出することができる。すなわち、本発明における表面検査装置により検査される表面欠陥とは、導電膜が完全に部分的に欠落した欠落部だけでなく、スクラッチ傷のような導電膜の傷をも含むものとする。すなわち、傷が設けられており、部分的に導電膜の厚みが薄い場合であっても、上記のように、X線カメラで撮影された画像においては、傷が存在する部分において濃度が薄くなるため、上記と同様にして欠陥の有無を検出することができる。
【0048】
なお、上記実施形態では、導電性粒子3の画像全体を、欠陥が存在していない場合の基準データと比較することにより欠陥の有無が検出されていたが、好ましくは、上記粒子形態の表面欠陥の検査方法に加えて、制御装置8において、以下の検出工程をさらに実施してもよい。すなわち、球状の導電性粒子3のX線カメラ6で得られた画像では、実際には、隣り合う導電性粒子3,3が近接している場合、あるいは接触している場合、1つの導電性粒子3の撮影された画像の周縁部が正確に撮影できないことがある。例えば、図4に示されている導電性粒子3A,3Bはほぼ接触しており、このような導電性粒子3AをX線カメラ6で撮影した場合、導電性粒子3Aの周縁部分のうち、導電性粒子3Bと接触している部分を高精度に撮影することができないことがある。
【0049】
従って、好ましくは、導電性粒子3Aの周縁部、すなわち外周縁から一定の予め定められた幅の環状領域の濃度を、予め定められたしきい値濃度と比較することにより二値化し、それによって周縁部分における良品及び不良品の判別を行ってもよい。
【0050】
より具体的には、基準データと同様に、表面に欠陥が存在しない場合の上記環状領域の濃度と、環状領域において被覆が存在しない場合の濃度との間のしきい値濃度を予め制御装置8に設定しておき、撮影された画像における環状領域の濃度が、上記しきい値濃度よりも高いか低いかにより、図7に示す二値化されたデータ14を得てもよい。ここでは、欠落部では矢印Xで示すように、環状領域が分断しており、従って不良品と判断される。すなわち、制御装置8は、このような外周縁近傍の環状領域における上記二値化による第2の検出方法を実施するための第2の検出手段を構成していてもよい。
【0051】
上記のように、環状部分を二値化し、環状部分が連なっているか否か、すなわち環状部分の全ての領域において、しきい値濃度が超えているか否かにより、良品または不良品の判別を行う検出方法を組み合わせることが好ましい。
【0052】
また、本発明では、制御装置8は、上記X線カメラ6で撮影された画像信号の輪郭のみを取り出し、輪郭が円形であるか否かにより良品または不良品を判別する第3の検出方法を組み合わせて用いてもよい。すなわち、図6(a)に示す導電性粒子3の画像13のように、側方に大きな欠落部13aが存在する場合があり、このような場合、図6(a)の矢印Aで示すように、上方ではなく、側方から撮影された場合には、図6(b)に示す画像14が得られることになる。このように、大きな欠落部が側面に存在する場合、X線カメラ6で撮影されたカメラでは、図6(a)に示すように、円形から大きく損なわれた形状の画像13が得られる。従って、図6(a)に示した画像13が得られるような場合には、画像データの輪郭が円形か否かにより、容易に良品または不良品の判別を行うことができ、この場合においても、隣り合う導電性粒子が接触している場合などにおいて、外周縁部分を正確に検査することができない場合に、良品・不良品の判別精度を高めることができる。
【0053】
よって、上記第2及び/または第3の検出方法を、上記第1の検出方法と組み合わせることが望ましい。
【0054】
なお、本実施形態の表面検査方法では、1つの収納凹部に配置された複数の導電性粒子3がX線カメラ6で撮影され、制御装置8により、複数の導電性粒子3における表面被覆の欠陥が検出される。この場合、少なくとも1つの導電性粒子3が不良品と判断された場合、当該収納凹部2aに収納されている全ての導電性粒子3を不良品として除去することが、選別を容易とする上で好ましい。従って、好ましくは、1つの収納凹部2a内において、少なくとも1つの導電性粒子3において表面被覆が検出された際、該収納凹部2aに収納されている全ての導電性粒子3を除去すればよい。また、1つの収納凹部2a内に収納されている全ての導電性粒子3に表面欠陥が存在しない場合には、前述した吸着ヘッド9などの適宜の取り出し治具を用い、当該収納凹部2a内の導電性粒子3を良品として取り出せばよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る表面検査装置の概略構成図。
【図2】本発明の一実施形態で表面が検査される導電性粒子の正面断面図。
【図3】本発明の一実施形態で用いられる、複数の導電性粒子が収納される複数の凹部を有するトレイを示す斜視図。
【図4】トレイの1つの収納凹部2aに収納された導電性粒子3を示す部分切欠正面断面図。
【図5】(a)は、基準データとしての画像を説明するための模式図であり、(b)は、表面に欠落部が存在する場合の画像データを模式的に示す図。
【図6】(a)は、導電性粒子の側方に大きな欠落部が存在する場合の画像データを示す模式図であり、(b)は、(a)に示した画像が得られる導電性粒子を側方から撮影すると仮定した場合に得られる画像を示す模式図。
【図7】導電性粒子の外周縁近傍の環状領域を二値化することにより得られたデータの一例を示す模式図。
【符号の説明】
【0056】
1…表面検査装置
2…トレイ
2a…収納凹部
3,3A,3B…導電性粒子
4…球体
5…導電膜
6…X線カメラ
7…駆動装置
8…制御装置
9…吸着ヘッド
9a…吸引孔
10…駆動装置
11…基準データに応じた画像
12…撮影された画像
12a…欠落部
13…撮影された画像
13a…欠落部
14…データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性材料からなる球体の表面を導電膜で被覆してなる導電性粒子の表面欠陥を検査する方法であって、
複数の前記導電性粒子を重なり合わないように配置する工程と、
前記複数の導電性粒子をX線カメラで撮影し、複数の導電性粒子のX線による画像を得る工程と、
前記複数の導電性粒子を撮影した画像における導電性粒子部分の濃度に基づき、導電性粒子の表面被覆の欠陥を検出する工程とを備え、
前記表面被覆の欠陥を検出する工程において、表面被覆に欠陥が存在しない場合の導電性粒子の画像に対応した基準データと、前記X線カメラで撮影された導電性粒子の画像データとを比較することにより、表面欠陥の有無を検出することを特徴とする、導電性粒子の表面検査方法。
【請求項2】
前記基準データと、撮影された前記導電性粒子の画像データとを比較するに際し、前記基準データと撮影された画像データとの差分画像を求め、該差分画像に基づいて表面欠陥の有無を検出する、請求項1に記載の導電性粒子の表面検査方法。
【請求項3】
X線カメラで撮影された導電性粒子の画像の周縁部分の濃度を、表面欠陥が存在しない場合の濃度と、表面欠陥が存在する場合の濃度との間のしきい値濃度により判別して、周縁部分における表面欠陥の有無を検出する工程をさらに備える、請求項1または2に記載の導電性粒子の表面検査方法。
【請求項4】
前記X線カメラで撮影された導電性粒子の画像における周縁部分の形状が円形以外の形状であるかを判別し、円形以外の形状である場合に表面欠陥が存在する不良品と判断する工程をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性粒子の表面検査方法。
【請求項5】
前記複数の導電性粒子を複数のグループに分けて配置し、1つのグループに含まれている複数の導電性粒子中に表面欠陥を有する導電性粒子が存在すると判断された際に、当該導電性粒子が所属しているグループの複数の導電性粒子を不良品として除去する工程をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性粒子の表面検査方法。
【請求項6】
請求項1に記載の導電性粒子の表面欠陥検査方法に用いられる表面欠陥検査装置であって、
複数の導電性粒子が載置されるトレイと、
前記トレイの上方からトレイに載置された複数の導電性粒子を撮影するX線カメラと、
前記X線カメラに接続されており、X線カメラから得られた複数の導電性粒子の画像を、表面欠陥が存在しない場合の導電性粒子の画像に対応しており、予め定められた基準データと比較して導電性粒子における表面欠陥の有無を検出する検出手段とを備えることを特徴とする、表面検査装置。
【請求項7】
前記検出手段において、予め定められた前記基準データと、撮影された導電性粒子の画像との差分画像が作製され、該差分画像に基づいて、表面欠陥の有無が検出される、請求項6に記載の表面検査装置。
【請求項8】
前記差分画像が、前記基準データにおける濃度から撮影された導電性粒子の画像における濃度を減算することにより求められる、請求項7に記載の表面検査装置。
【請求項9】
前記導電性粒子の画像の外周縁の濃度を、表面欠陥が存在しない場合の濃度に相当する濃度と、表面欠陥が存在する場合の濃度との間のしきい値濃度に基づいて二値化し、周縁部の濃度がしきい値濃度よりも低い場合に表面欠陥有りと判断する第2の検出手段をさらに備える、請求項6〜8いずれか1項に記載の表面検査装置。
【請求項10】
前記X線カメラで撮影された導電性粒子の画像の外周縁部の形状が円形であるか否かを判断し、円形以外の形状の場合に表面欠陥有りと判断する第3の検出手段をさらに備える、請求項6〜9のいずれか1項に記載の表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−266941(P2006−266941A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86994(P2005−86994)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】