説明

導電性粘着テープ

【課題】より微細な形状(特に、細幅形状)で使用された場合であっても、優れた粘着性と高い電気伝導性を有し、なおかつ、長期間の使用や過酷な環境下での使用においても、抵抗値の経時変化が小さく、安定した電気伝導性を発揮する導電性粘着テープを提供する。
【解決手段】金属箔の少なくとも片面側に導電性フィラーを含有する粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層表面における前記導電性フィラーの表面露出率が2〜5%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粘着テープに関する。より詳しくは、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途等に使用するための導電性粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性接着シートや導電性粘着テープは電気伝導性(導電性)(特に、厚み方向の電気伝導性)を有するため、電子機器等において離隔した2か所間を電気的に導通させる用途や、電磁波シールド用途等に利用されている。かかる導電性接着シートや導電性粘着テープとしては、金属箔と該金属箔の少なくとも一方の表面に導電性粒子を含有する接着剤層や粘着剤層を有するもの(例えば、特許文献1〜4参照)や、金属箔と該金属箔の片面に設けた粘着剤層とからなり、前記金属箔の粘着剤層被覆側には前記粘着剤層を貫通し、かつその先端に端子部を持つ導通部が設けられた導電性粘着テープ(例えば、特許文献5〜8参照)などが広く知られている。
【0003】
上記特許文献1〜3に記載の導電性接着シートは、接着処理時に加熱・加圧工程が必要となり、接着作業に時間がかかる問題がある。この点、特許文献4〜8に記載の導電性粘着テープは、被着体に貼付するだけで接着作業が完了し、別途、接着の為に加熱・加圧工程を必要としないとの利点がある。
【0004】
一方、近年の電子機器の小型化や、当該電子機器に用いられるプリント基板における配線のファインピッチ化、コストダウンの要請等により、これらの電子機器に用いられる導電性粘着テープのサイズはより微細となる傾向にある。このため、上記導電性粘着テープには、より微細な形状(特に、細幅形状)で用いた場合であっても、貼り合わせ等における作業性や接着性を低下させないことが求められている。さらにまた、近年の電子機器の高機能化や使用態様の多様化に伴って、上記導電性粘着テープには、電子機器がより長い期間、より過酷な環境条件下(例えば、高温高湿条件下など)で使用された場合であっても、安定した電気伝導性を発揮し続けることが求められている。
【0005】
しかしながら、従来の導電性粘着テープは、特に細幅の形状で用いた場合、電子機器の製造直後には十分な電気伝導性を発揮するものの、長期間の使用や過酷な環境条件下での使用により、徐々に抵抗値が上昇し、十分な長期導通信頼性を発揮できないという問題を有していた。また、長期導通信頼性を確保するためにフィラーを多量に添加すると粘着力が低下するという問題も有していた。このように、細幅の形状で用いた場合であっても高い電気伝導性と粘着力を両立し、なおかつ長期間の使用や過酷な環境条件下での使用においても、安定した電気伝導性を発揮する導電性粘着テープは得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−206843号公報
【特許文献2】特開2007−214533号公報
【特許文献3】国際公開第2007/125903号
【特許文献4】特開2009−79127号公報
【特許文献5】実公昭63−46980号公報
【特許文献6】特開平8−185714号公報
【特許文献7】特開平10−292155号公報
【特許文献8】特開平11−302615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、より微細な形状(特に、細幅形状)で使用された場合であっても、優れた粘着性と高い電気伝導性を両立し、なおかつ、長期間の使用や過酷な環境下での使用においても、抵抗値の経時変化が小さく、安定した電気伝導性を発揮する導電性粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、特定構成の導電性粘着テープにおいて、粘着剤層表面における導電性フィラーの表面露出率を特定範囲に制御することによって、細幅で使用された場合においても、優れた粘着性と高い電気伝導性を両立し、長期間の使用や過酷な環境下での使用においても、安定した電気伝導性を発揮する導電性粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、金属箔の少なくとも片面側に導電性フィラーを含有する粘着剤層を有する導電性粘着テープであって、下記の方法により測定される、前記粘着剤層表面における前記導電性フィラーの表面露出率が2〜5%であることを特徴とする導電性粘着テープを提供する。
[表面露出率の測定方法]
導電性粘着テープの前記粘着剤層表面を、0.5%ルテニウム酸水溶液を用いて室温で30分間蒸気染色する。その後、スパッタ装置「E−3200」((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、前記粘着剤層表面のPt−Pdスパッタリング処理を行い、観察用試料を作製する。
走査型電子顕微鏡(FE−SEM)「S−4800」((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧5kV、測定倍率200倍の条件で、観察用試料の前記粘着剤層表面側の反射電子像(観察範囲:450×575μm2)を測定する。
得られた反射電子像について、画像処理ソフト「Winroof」(三谷商事(株)製)を用いて二値化し、導電性フィラーに帰属する無機層部分の面積の割合を算出し、表面露出率を測定する。
【0010】
さらに、前記の導電性粘着テープは、下記のヒートサイクル試験において測定される、1サイクル目の抵抗値の最大値が0.1Ω以下であり、抵抗値上昇率が100%以下であることが好ましい。
[ヒートサイクル試験]
貼付部分のサイズが5mm×2mm(面積:10mm2)となるように、導電性粘着テープの前記粘着剤層側を、銀メッキに貼付し、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキに2Aの定電流を流す。これを、槽内の設定温度を25℃から−40℃まで降温した後−40℃で10分間保持し、次いで、85℃まで昇温した後85℃で10分間保持し、再び降温して25℃に達するまでを1サイクルとしてこれを繰り返す設定とした恒温槽内に入れて冷却および加熱し、この間、前記貼付部分の抵抗値を連続的に測定する。抵抗値上昇率は、200サイクル目の抵抗値の最大値と1サイクル目の抵抗値の最大値から、下記式を用いて算出する。
[抵抗値上昇率]=100×([200サイクル目の抵抗値の最大値]−[1サイクル目の抵抗値の最大値])/[1サイクル目の抵抗値の最大値]
【0011】
さらに、前記の導電性粘着テープにおいては、前記粘着剤層の厚みが10〜100μmであることが好ましい。
【0012】
さらに、前記の導電性粘着テープにおいては、前記粘着剤層が、導電性フィラーを含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層であって、前記導電性フィラーの含有量が、導電性フィラーを除く粘着剤組成物の全固形分(100重量部)に対して、25〜250重量部であることが好ましい。
【0013】
さらに、前記の導電性粘着テープにおいては、前記粘着剤層が、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層であることが好ましい。
【0014】
さらに、前記の導電性粘着テープは、幅が1.0mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0015】
さらに、前記の導電性粘着テープは、引張速度300mm/分で測定される、前記粘着剤層表面のアルミ板に対する180°引き剥がし粘着力が0.1N/2mm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の導電性粘着テープは、細幅で使用された場合においても、優れた粘着性と高い電気伝導性を両立する。また、本発明の導電性粘着テープは、長期間にわたる使用や過酷な環境条件下での使用においても、抵抗値の経時変化が小さく、安定した電気伝導性を発揮することができる。このため、本発明の導電性粘着テープは、小型化、ファインピッチ化された製品(電子機器等)に対して使用した場合の作業性が良好であり、コスト面でも有利である。また、使用される製品中で高い導通信頼性(長期導通信頼性)を発揮することができる。本発明の導電性粘着テープは、広幅から細幅まで多岐に渡る形状で使用することが可能であり、汎用性が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の導電性粘着テープのヒートサイクル試験において用いられる評価用基板の一例を示す模式図(平面図)である。
【図2】図2は、本発明の導電性粘着テープのヒートサイクル試験において用いられる評価用基板における電気回路の等価回路を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の導電性粘着テープのヒートサイクル試験において用いられる抵抗評価用サンプルの一例を示す模式図(図1の貼付部分13における断面図)である。
【図4】図4は、本発明の導電性粘着テープのヒートサイクル試験における設定温度(ヒートサイクル条件)の、2サイクル目までのプロファイルを示す図である。
【図5】図5は、実施例のヒートサイクル試験において用いた評価用基板を示す模式図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の導電性粘着テープは、金属箔の少なくとも片面側に導電性フィラーを含有する粘着剤層を有する粘着テープであって、後述の方法により測定される、前記粘着剤層表面における前記導電性フィラーの表面露出率が2〜5%である。本発明の導電性粘着テープにおいては、上述の導電性フィラーを含有し、表面における前記導電性フィラーの表面露出率が2〜5%である粘着剤層のことを、「本発明の粘着剤層」と称する場合がある。
【0019】
なお、本明細書において、「導電性粘着テープ」という場合にはシート状のもの、即ち、「導電性粘着シート」も含まれるものとする。また、本明細書においては、粘着剤層表面のことを「粘着面」と称する場合がある。
【0020】
本発明の導電性粘着テープは、テープの片面のみが粘着面となっている片面粘着テープであってもよいし、テープの両面が粘着面となっている両面粘着テープであってもよい。片面粘着テープの場合、本発明の導電性粘着テープとしては、例えば、金属箔の片面側に本発明の粘着剤層を有する粘着テープが挙げられる。一方、両面粘着テープの場合、金属箔の両面側に本発明の粘着剤層を有していてもよいし、金属箔の一方の表面側に本発明の粘着剤層を有し、他方の表面側に本発明の粘着剤層以外の粘着剤層(「他の粘着剤層」と称する場合がある)を有していてもよい。中でも、本発明の導電性粘着テープは、長期導通信頼性確保の観点で、金属箔の片面側に本発明の粘着剤層を有する片面粘着テープが好ましい。
【0021】
[金属箔]
本発明の導電性粘着テープを構成する金属箔としては、自己支持性を有し、かつ電気伝導性を示す金属箔であればよく、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄、鉛やこれらの合金などからなる金属箔を使用することができる。中でも、導電性、コスト、加工性の観点から、アルミニウム箔、銅箔が好ましく、より好ましくは銅箔である。なお、上記金属箔は、錫メッキや銀メッキ、金メッキ等の各種表面処理が施されていてもよい。即ち、腐食による電気伝導性の低下や外観不良等を抑制する観点で、上記金属箔としては、錫メッキによるコーティングが施された銅箔(錫コート銅箔)が特に好ましい。
【0022】
上記金属箔の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、5〜500μmが好ましく、より好ましくは8〜200μm、さらに好ましくは10〜150μmである。
【0023】
[本発明の粘着剤層]
本発明の粘着剤層は、本発明の導電性粘着テープにおける必須の粘着剤層である。一般に、本発明の導電性粘着テープの本発明の粘着剤層表面を導体等の被着体に貼付すると、該被着体と本発明の導電性粘着テープの金属箔の間に電気的導通が確保される。この場合、本発明の粘着剤層は被着体と金属箔の間を通電させる役割を担っている。
【0024】
本発明の粘着剤層は、導電性フィラーを必須成分として含有する。本発明の粘着剤層としては、特に限定されないが、例えば、導電性フィラー及びベースポリマーを含有し、さらに必要に応じて、粘着付与樹脂、架橋剤、架橋促進剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤など公知の添加剤を本発明の特性を損ねない範囲で含有する粘着剤組成物(導電性粘着剤組成物)から形成された粘着剤層が挙げられる。
【0025】
上記ベースポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、天然ゴムや各種の合成ゴム[例えば、ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエン(SB)ゴム、スチレン・イソプレン(SI)ゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンや、これらの変性体等]などのゴム系ポリマー;アクリル系ポリマー;シリコーン系ポリマー;ビニルエステル系ポリマーなどの公知の粘着剤に用いられるベースポリマーを用いることができる。
【0026】
上記の中でも、ベースポリマーとしては、耐久性、耐候性、耐熱性の観点から、アクリル系ポリマー(アクリル系重合体)が好ましい。即ち、本発明の粘着剤層は、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有するアクリル系粘着剤層であることが好ましく、特に、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層(アクリル系粘着剤層)であることが好ましい。上記アクリル系粘着剤層(100重量%)中のアクリル系ポリマーの含有量は、特に限定されないが、30〜75重量%であることが好ましく、より好ましくは50〜75重量%である。
【0027】
上記アクリル系ポリマーは、特に限定されないが、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分(単量体成分)として構成されるアクリル系ポリマーであることが好ましい。なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味し、他も同様である。
【0028】
上記の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、単に「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と称する場合がある)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどのアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、より好ましくはアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸n−ブチル(BA)である。
【0029】
上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル[アルコキシアルキル(メタ)アクリレート]としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチルなどが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、アクリル酸2−メトキシエチル(2MEA)、アクリル酸エトキシエチルなどが好ましい。
【0030】
上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、50〜100重量%が好ましく、より好ましくは55〜100重量%、さらに好ましくは60〜99.9重量%である。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの両方が用いられている場合には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量と(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの含有量の合計量(合計含有量)が上記の範囲を満たしていればよい。
【0031】
上記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル以外にも、極性基含有モノマー(特に、カルボキシル基含有モノマー)を共重合モノマー成分として構成されることが好ましい。さらに、必要に応じて、多官能性モノマー等のその他の共重合モノマー成分を構成成分として含んでいてもよい。
【0032】
上記の極性基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体(無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有単量体も含む);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどのヒドロキシル基(水酸基)含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系単量体;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体などが挙げられる。上記の極性基含有単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、極性基含有単量体としては、カルボキシル基含有単量体が好ましく、より好ましくは、アクリル酸(AA)である。
【0033】
上記の極性基含有単量体の含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0.1〜30重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%である。
【0034】
上記の多官能性単量体としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0035】
上記の多官能性単量体の含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0.5重量%以下(例えば、0〜0.5重量%)が好ましく、より好ましくは、0〜0.3重量%以下である。多官能性単量体の含有量を0.5重量%以下とすることにより、粘着剤層の凝集力が高くなり過ぎず、粘着性が向上する。なお、架橋剤を用いる場合には多官能性単量体を用いなくてもよいが、架橋剤を用いない場合には、多官能性単量体の含有量は0.001〜0.5重量%が好ましく、より好ましくは0.002〜0.1重量%である。
【0036】
また、極性基含有単量体や多官能性単量体以外のその他の共重合性単量体としては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0037】
上記アクリル系ポリマーは、上記のモノマー成分を公知乃至慣用の重合方法により重合して調製することができる。アクリル系ポリマーの重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合法や活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。上記の中でも透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましく、より好ましくは溶液重合方法である。
【0038】
上記の溶液重合に際しては、各種の一般的な溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。溶剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
上記アクリル系ポリマーの重合に際して用いられる重合開始剤などは、特に限定されず、公知乃至慣用のものの中から適宜選択して使用することができる。より具体的には、重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系重合開始剤などの油溶性重合開始剤が好ましく例示される。重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量としては、特に限定されず、従来、重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0040】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、30万〜120万が好ましく、より好ましくは35万〜100万、さらに好ましくは40万〜90万である。アクリル系ポリマーの重量平均分子量を30万以上とすることにより、良好な粘着性を発揮することができる。一方、120万以下とすることにより、塗工性が良好となる。アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間の他、モノマー濃度、モノマー滴下速度などによりコントロールすることができる。
【0041】
本発明の粘着剤層における導電性フィラーは、本発明の粘着剤層に電気伝導性を発揮させる役割を担う。前記導電性フィラーとしては、公知慣用のものを使用することができ、例えば、ニッケル、鉄、クロム、コバルト、アルミニウム、アンチモン、モリブデン、銅、銀、白金、金などの金属、これらの合金若しくは酸化物、カーボンブラックなどのカーボンからなるフィラー、または、これらをポリマービーズ、樹脂などに被覆したフィラーが例示される。上記の中でも、導電性フィラーとしては、金属フィラー及び/又は金属被覆フィラーが好ましい。特に、長期導通信頼性の観点で、銀フィラーが好ましい。
【0042】
上記導電性フィラーの形状としては、特に限定されないが、球状及び/又はスパイク状が好ましく、より好ましくは球状である。球状及び/又はスパイク状の導電性フィラーを用いることにより、粘着剤層中で均一分散しやすくなるため、導電性粘着テープの粘着性と電気伝導性とを両立しやすくなる場合がある。フィラメント状、フレーク状や樹脂状の導電性フィラーを用いる場合には、分散性が低下して粗大凝集体となったり、導電性フィラーが粘着剤層中で粘着面と水平方向に並んでしまい、厚み方向の電気伝導性を発揮しにくくなるため、粘着性と電気伝導性を両立できない場合がある。また、外観不良となる場合がある。上記導電性フィラーのアスペクト比は、特に限定されないが、例えば、1.0〜2.0が好ましく、より好ましくは1.0〜1.5である。なお、上記アスペクト比は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
【0043】
上記導電性フィラーとしては、市販品を用いることもできる。具体的には、例えば、商品名「Ag−HWQ−400」(福田金属箔粉工業(株)製、銀フィラー)などの導電性フィラーを用いることができる。
【0044】
上記導電性フィラーの含有量は、導電性フィラーを除く粘着剤組成物の全固形分(100重量部)に対して、25〜250重量部が好ましく、より好ましくは30〜150重量部、さらに好ましくは35〜100重量部である。導電性フィラーの含有量を25重量部以上とすることにより、電気伝導性が向上する。一方、導電性フィラーの含有量を250重量部以下とすることにより、導電性フィラーの凝集が抑制され、粘着面が粗くなり過ぎないため、長期導通信頼性と粘着力を両立できる。さらに、コスト面でも有利である。
【0045】
本発明の粘着剤層を形成するための粘着剤組成物(導電性粘着剤組成物)は、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を用いることにより、粘着剤層を構成するベースポリマー(特に、アクリル系ポリマー)を架橋させ、粘着剤層の凝集力を一層大きくすることができる。架橋剤としては、特に限定されず、公知乃至慣用のものの中から適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、多官能性メラミン化合物(メラミン系架橋剤)、多官能性エポキシ化合物(エポキシ系架橋剤)、多官能性イソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤)が好ましく使用される。上記の中でも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく、より好ましくはイソシアネート系架橋剤である。架橋剤は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0046】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。
【0047】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」を用いることができる。
【0048】
上記粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤層の場合には、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して、0〜10重量部が好ましく、より好ましくは0〜5重量部である。
【0049】
さらに、上記粘着剤組成物は、粘着性向上の観点から、粘着付与樹脂を含有することが好ましい。上記粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、石油系粘着付与樹脂などが挙げられる。中でも、ロジン系粘着付与樹脂が好ましい。上記粘着付与樹脂は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
上記テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
【0051】
上記フェノール系粘着付与樹脂としては、例えば、各種フェノール類(例えば、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなど)とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂など)、前記フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、前記フェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックの他、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジン変性フェノール樹脂などが挙げられる。
【0052】
上記ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合などにより変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンの他、その他の化学的に修飾されたロジンなど)の他、各種のロジン誘導体などが挙げられる。なお、前記ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物や、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物などのロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン類や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩などが挙げられる。
【0053】
上記石油系粘着付与樹脂としては、例えば、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂(脂肪族環状石油樹脂)、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加石油樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の公知の石油樹脂を用いることができる。具体的には、芳香族系石油樹脂としては、例えば、炭素数が8〜10であるビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、インデン、メチルインデンなど)が1種のみ又は2種以上用いられた重合体などが挙げられる。芳香族系石油樹脂としては、ビニルトルエンやインデン等の留分(いわゆる「C9石油留分」)から得られる芳香族系石油樹脂(いわゆる「C9系石油樹脂」)を好適に用いることができる。また、脂肪族系石油樹脂としては、例えば、炭素数4〜5のオレフィンやジエン[ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1等のオレフィン;ブタジエン、ピペリレン(1,3−ペンタジエン)、イソプレン等のジエンなど]が1種のみ又は2種以上用いられた重合体などが挙げられる。脂肪族系石油樹脂としては、ブタジエン、ピペリレンやイソプレン等の留分(いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」など)から得られる脂肪族系石油樹脂(いわゆる「C4系石油樹脂」や「C5系石油樹脂」など)を好適に用いることができる。脂環族系石油樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂(いわゆる「C4系石油樹脂」や「C5系石油樹脂」など)を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン、エチリデンビシクロヘプテン、ビニルシクロヘプテン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、リモネンなど)の重合体又はその水素添加物、前記の芳香族系炭化水素樹脂や、下記の脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂などが挙げられる。脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、スチレン−オレフィン系共重合体などが挙げられる。脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、いわゆる「C5/C9共重合系石油樹脂」などを用いることができる。
【0054】
上記粘着付与樹脂としては、市販品を用いることが可能であり、例えば、商品名「ハリエスター」(ハリマ化成(株)製)、商品名「エステルガム」、「ペンセル」(荒川化学工業(株)製)、製品名「リカタック」((株)理化ファインテク製)などを使用することができる。
【0055】
上記粘着剤組成物中の粘着付与樹脂の含有量は、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤層の場合には、アクリル系ポリマー(100重量部)に対して、10〜50重量部が好ましく、より好ましくは15〜45重量部である。
【0056】
上記粘着剤組成物は、さらに、必要に応じて、架橋促進剤、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤や溶剤(前述のアクリル系ポリマーの溶液重合の際に使用可能な溶剤など)を含有していてもよい。
【0057】
上記粘着剤組成物は、例えば、導電性フィラー、アクリル系ポリマー(又はアクリル系ポリマー溶液)、架橋剤、溶剤やその他の添加剤を混合することにより、調製することができる。
【0058】
本発明の粘着剤層の形成方法としては、特に限定されないが、前述の粘着剤組成物を、金属箔又はセパレータに塗布(塗工)し、必要に応じて、乾燥及び/又は硬化する方法を挙げることができる。
【0059】
なお、粘着剤層を形成する際の塗布(塗工)には、公知のコーティング法を用いることが可能であり、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどを用いることができる。
【0060】
本発明の粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、テープ特性や作業性、用途を考えると、例えば、10〜100μmが好ましく、より好ましくは15〜80μm、さらに好ましくは20〜40μmである。厚みを10μm以上とすることにより、貼付時に発生する応力が分散されやすく、剥がれが生じにくくなる。一方、厚みを100μm以下とすることにより、長期間の使用や過酷な環境条件下での使用においても、十分な長期導通信頼性を確保できる。また、製品の小型化や薄膜化に有利となる。
【0061】
後述のように、本発明の導電性粘着テープにおいては、導電性フィラーの表面露出率が特定範囲に制御されている必要があり、具体的には、導電性フィラーの表面露出率が小さすぎると(2%未満)、通電パスが十分に形成されず、導電性及び長期導通信頼性が確保できない。逆に、導電性フィラーの表面露出率が大きすぎると(5%を超える)、粘着剤層の被着体に対する接触面積が減少し、十分な粘着性を確保できない。このような表面露出率の制御のためには、本発明の粘着剤層の厚みと導電性フィラーの含有量の関係を制御することが有効であり、これらのバランスを取ることによって、導電性粘着テープが細幅で使用された場合であっても、十分な電気伝導性および粘着性(接着性)を両立できる。さらに、長期間の使用や過酷な環境下での使用において、安定した電気伝導性を発揮できる。
【0062】
従って、本発明の粘着剤層の厚みは、導電性フィラーの添加部数(含有量)との兼ね合いで決定されることが好ましい。例えば、粘着剤層厚みが30μmの際には、導電性フィラーの含有量を35〜100重量部程度とすることによって、粘着剤層側の表面に十分な導電パスが形成され、長期導通信頼性を確保できる。さらに、粘着剤層側の表面には粘着剤層も十分に存在するため粘着性も確保でき、長期導通信頼性と粘着性を両立した導電性粘着テープを作製することができる。また、例えば、厚みが50μmの粘着剤層の場合、導電性フィラーの添加部数が導電性フィラーを除く粘着剤組成物の全固形分(100重量%)に対して35重量部であると、長期導通信頼性が確保できないのに対し、添加部数が200重量部であれば長期導通信頼性が確保できる。
【0063】
本発明の粘着剤層の、動的粘弾性測定により測定される0〜40℃の範囲における貯蔵弾性率(G’)は、特に限定されないが、例えば、1×104Pa以上、1×106Pa未満が好ましい。前記貯蔵弾性率を1×104Pa以上とすることにより、十分な凝集力を有し、リワークが可能となる。一方、前記貯蔵弾性率を1×106Pa未満とすることにより、被着体から浮き剥がれが生じにくい。
【0064】
また、本発明の粘着剤層の、動的粘弾性測定により測定される損失正接(tanδ)のピーク温度は、特に限定されないが、例えば、0℃以下が好ましく、より好ましくは−10℃以下である。tanδのピーク温度が0℃を超えると、低温時に粘着剤層が硬くなり、貼り付け作業性が著しく低下したり、段差吸収性が低下する場合がある。なお、上記貯蔵弾性率およびtanδのピーク温度は、動的粘弾性測定により測定される。例えば、本発明の粘着剤層を厚さが約1.5mm程度になるように複数層積層させ、Reometric Scientific社製「Advanced Reometric Expansion System(ARES)」にて、せん断モードで、周波数1Hzの条件で、−70〜200℃の範囲で昇温速度5℃/分で測定することができる。
【0065】
[他の粘着剤層]
本発明の導電性粘着テープが他の粘着剤層を有する場合、他の粘着剤層としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤から形成された公知慣用の粘着剤層が挙げられる。上記粘着剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
[導電性粘着テープ]
本発明の導電性粘着テープは、上記の金属箔、本発明の粘着剤層、他の粘着剤層以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0067】
本発明の導電性粘着テープの厚みは、特に限定されないが、例えば、25〜600μmが好ましく、好ましくは30〜200μm、より好ましくは40〜140μmである。厚みを600μm以下とすることにより、製品の薄膜化に有利となる。一方、厚みを25μm以上とすることにより、作業性が向上する。なお、「本発明の導電性粘着テープの厚み」には、セパレータ(剥離ライナー)の厚みは含めない。
【0068】
本発明の導電性粘着テープの幅は、特に限定するものではないが、本発明の効果をより効果的に実現できる観点からは、例えば1.0mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは1.5mm以上6mm以下である。本発明の導電性粘着テープは、幅が10mm以下であっても作業性(特に貼付・接着作業時の粘着性)を低下させることなく使用できることを特徴としている。このため、本発明の導電性粘着テープは、より小型化、ファインピッチ化された電子機器等に対して好ましく使用することができる。また、本発明の導電性粘着テープは、細幅であっても高い粘着性および優れた電気伝導性を発揮できるため、コスト面で有利である。
【0069】
本発明の導電性粘着テープの、本発明の粘着剤層表面における導電性フィラーの表面露出率(表面露出面積率)は、2〜5%であり、好ましくは3〜5%、より好ましくは4〜5%である。上記の表面露出率を2%以上とすることにより、特に導電性粘着テープの幅が1.0mm以上10mm以下といった細幅の場合であっても、被着体に本発明の粘着剤層側を貼付した際の電気伝導性に優れ、長期間の使用や過酷な環境下での使用においても、抵抗値の経時的上昇が抑制されて安定した電気伝導性を発揮できる。一方、上記表面露出率を5%以下とすることにより、特に導電性粘着テープの幅が1.0mm以上10mm以下といった細幅の場合であっても、本発明の粘着剤層表面の粘着力を確保し、長期導通信頼性も確保できる。
【0070】
本発明の導電性粘着テープの、本発明の粘着剤層表面における導電性フィラーの表面露出率は、下記の[表面露出率の測定方法]に従って測定することができる。
[表面露出率の測定方法]
導電性粘着テープの粘着剤層表面(本発明の粘着剤層表面)を、0.5%ルテニウム酸水溶液を用いて室温で30分間蒸気染色する。その後、スパッタ装置「E−3200」((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、粘着剤層表面のPt−Pdスパッタリング処理を行い、観察用試料を作製する。
走査型電子顕微鏡(FE−SEM)「S−4800」((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧5kV、測定倍率200倍の条件で、観察用試料の本発明の粘着剤層表面側の反射電子像(観察範囲:450×575μm2(450μm×575μm))を測定する。
得られた反射電子像について、画像処理ソフト「Winroof」(三谷商事(株)製)を用いて二値化し、導電性フィラーに帰属する無機層部分の面積の割合を算出し、表面露出率を測定する。
二値化処理については、導電性フィラーおよび導電性フィラー以外の背景(粘着剤層)を異なる色で区別することができれば、例えば導電性フィラーの領域を白(0)としてもよいし、黒(1)としてもよい。
【0071】
上記の表面露出率は、例えば、導電性フィラーの添加量、粘着剤層の厚みなどにより制御することができる。例えば、糊厚(粘着剤層厚み)を30μmとした場合、導電性フィラーの添加部数を35重量部〜100重量部とすることにより、作業性を考慮した粘着力及び長期導通信頼性を確保することができる。糊厚を50μmとした場合では、導電性フィラーの添加部数を150重量部〜200重量部とすることにより、作業性を考慮した粘着力及び長期導通信頼性を確保することができる。糊厚と導電性フィラーの添加部数によって、表面露出率が制御でき、それによって粘着力及び長期導通信頼性を確保したテープを設計することができる。
【0072】
本発明の導電性粘着テープの、本発明の粘着剤層表面における導電性フィラーの表面露出率は、本発明の粘着剤層側の表面の面積に対する導電性フィラーの露出面積(導電性フィラーに帰属する無機層の露出面積)の割合を定量的に表したものである。本発明においては、上記の表面露出率が、導電性粘着テープの電気伝導性と粘着性、さらには長期間の使用や過酷な環境条件下での使用における安定した電気伝導性の制御の指標となることを見出した。さらに、特に導電性粘着テープが細幅の場合であっても、高い電気伝導性及び優れた粘着性を発揮させ、かつ安定した電気伝導性を発揮させるために制御すべき表面露出率の範囲を見出した。
【0073】
これに対して、従来の、金属箔と該金属箔の少なくとも一方の表面に導電性粒子を含有する接着剤層や粘着剤層を有する導電性粘着テープは、特に、細幅の形状で用いた場合に、テープ強度の確保や導電性フィラーの添加部数が少ないため、長期導通信頼性を確保できていなかった。本発明では、導通信頼性を確保するための本質として導電性フィラーの表面露出率(導電パス)に着目し、これを定量化することにより、細幅の場合であっても優れた粘着力と高い電気伝導性、特に長期導通信頼性が確保された導電性粘着テープの設計が可能となった。本発明の導電性粘着テープは、広幅から細幅まで多岐に渡る形状で使用した場合であっても優れた長期導通信頼性を発揮できるため、汎用性が高い。
【0074】
本発明の導電性粘着テープにおける本発明の粘着剤層表面の、引張速度300mm/分で測定される、アルミ板に対する180°引き剥がし粘着力は、0.1N/2mm以上(例えば、0.1〜1N/2mm)であり、好ましくは0.2〜0.9N/2mm、より好ましくは0.2〜0.8N/2mmである。180°引き剥がし粘着力を0.1N/2mm以上とすることにより、仮貼りが可能となる。一方、180°引き剥がし粘着力を1N/2mm以下とすることにより、長期導通信頼性をより確保しやすくなる。なお、上記180°引き剥がし粘着力は、JIS Z0237(2000)に準拠し、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機による、アルミ板を被着体とした180°剥離試験(引張速度:300mm/分、被着体への圧着条件:2kgローラーを1往復)により測定することができる。
【0075】
なお、上記の180°引き剥がし粘着力は、例えば、表面露出率(導電性フィラーの添加量、粘着剤層の厚み)などによって制御することができる。
【0076】
本発明の導電性粘着テープは、特に限定されないが、後述のヒートサイクル試験において測定される、1サイクル目の抵抗値の最大値が0.1Ω以下(例えば、0.0001〜0.1Ω)であることが好ましく、より好ましくは0.003〜0.1Ωである。上記の1サイクル目の抵抗値の最大値を0.1Ω以下とすることにより、十分な電気伝導性を発揮することができる。なお、本明細書においては、上記の1サイクル目の抵抗値の最大値を、「初期抵抗値」と称する場合がある。
【0077】
本発明の導電性粘着テープは、特に限定されないが、後述のヒートサイクル試験において測定される、200サイクル目の抵抗値の最大値と初期抵抗値から算出される抵抗値上昇率が、100%以下であることが好ましく、より好ましくは80%以下である。なお、抵抗値上昇率は下記式を用いて算出される。
[抵抗値上昇率(%)]=100×([200サイクル目の抵抗値の最大値(Ω)]−[初期抵抗値(Ω)])/[初期抵抗値(Ω)]
【0078】
上記の抵抗値上昇率は、導電性粘着テープを長時間使用した場合や過酷な環境条件下で使用した場合に、どれだけ安定した電気伝導性を発揮するかの指標となる。抵抗値上昇率が100%以下であると、安定的に通電させ続けることが可能であり、当該導電性粘着テープを用いた製品は高い信頼性を発揮すると考えられる。一方、抵抗値上昇率が100%を超えると、長時間の使用や過酷な環境条件下での使用においては、急激に抵抗値が上昇して導通不良を起こす危険性があり、製品の信頼性が低下すると考えられる。
【0079】
なお、上記の初期抵抗値及び抵抗値上昇率は、例えば、表面露出率(導電性フィラーの添加量、粘着剤層の厚み)等により制御することができる。
【0080】
上記ヒートサイクル試験は、銀メッキが施された導体パターンに導電性粘着テープを貼付して形成された電気回路を有する評価用基板において、前記電気回路に定電流を流しながら、前記評価用基板を低温と高温とを周期的に変化させる温度雰囲気条件下に暴露し、導電性粘着テープの金属箔と銀メッキが施された導体パターンの間の抵抗(即ち、導電性粘着テープと銀メッキが施された導体パターンとの貼り合わせ部分(貼付部分)の接触抵抗)を連続的に測定する試験である。
【0081】
上記の1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)および200サイクル目の抵抗値の最大値は、次のようにして測定することができる。導電性粘着テープの本発明の粘着剤層側を、貼付部分のサイズが5mm×2mm(面積:10mm2)となるように銀メッキ(銀メッキが施された導体パターン)に貼付し、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキ(銀メッキが施された導体パターン)に2Aの定電流を流す。これを、槽内の設定温度(ヒートサイクル条件)を25℃から−40℃まで降温した後−40℃で10分間保持し、次いで、85℃まで昇温した後85℃で10分間保持し、再び降温して25℃に達するまでを1サイクルとしてこれを繰り返す設定とした恒温槽内に入れて冷却および加熱し、この間、前記貼付部分の抵抗値(接触抵抗値)を連続的に測定する。より具体的には、下記の[ヒートサイクル試験]に従って測定することができる。
[ヒートサイクル試験]
(評価用基板の作製)
銀メッキが施された導体パターンが形成されたガラスエポキシ基板を用い、前記銀メッキが施された導体パターンに導電性粘着テープを貼り合わせ、さらに、前記銀メッキが施された導体パターンに定電流電源および電位計を接続することによって電気回路を形成して、評価用基板を作製する。図1には、具体的な評価用基板の構成の一例を示す。ガラスエポキシ基板18a上に、銀メッキが施された導体パターン(以下、単に「導体パターン」と称する場合がある)11a〜dが形成されており、導体パターン11a〜11dに対して、導電性粘着テープ12(幅:2mm)を、5kgのローラーを1往復させることによって貼付(圧着)する。この際、導体パターン11bと導電性粘着テープとの貼付部分13のサイズが5mm×2mm(面積:10mm2)となるように貼付する。この貼付部分13により、導体パターン11bと導電性粘着テープ12の金属箔との間の電気的導通(厚み方向の電気的導通)が確保される。
次いで、導体パターン11bと11dを定電流電源14に接続し、導体パターン11aと11bを電位計15に接続して電気回路を形成し、評価用基板を作製する。なお、特に限定されないが、例えば、前記導体パターンと定電流電源、電位計の接続は、リード線の使用やはんだ付け等の通常の接続手段を利用することによって実施することができる。図2には、図1に示す評価用基板における電気回路の等価回路を示す。図2における17は、図1における貼付部分13の抵抗(接触抵抗)を表す。
(抵抗評価用サンプルの作製)
上記評価用基板における電気回路のうち、少なくとも導体パターンと導電性粘着テープとの貼り合わせ部分(貼付部分)を、ガラスエポキシ基板とガラス板の間でエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)により封止し、抵抗評価用サンプルを作製する。図3には、抵抗評価用サンプルの模式図(図1の貼付部分13における断面図)を示す。抵抗評価用サンプルは、少なくとも導体パターン11bと導電性粘着テープ12による貼り合わせ部分(貼付部分)13が、ガラスエポキシ基板18aおよびガラス板18bの間で、EVA(EVAの硬化物)19によって封止された構成を有する。なお、図1には、EVA(EVAの硬化物)によって封止される領域(封止領域)16の一例を示す。上述のEVAによる封止は、特に限定されないが、例えば、以下のようにして実施することができる。図1に示す評価用基板における封止領域16上に、熱硬化性エチレン−酢酸ビニル共重合体のフィルム(EVAフィルム)(例えば、酢酸ビニル含有量28%の熱硬化性EVAフィルム)を載せ、さらにその上からガラス板を重ねて、「評価用基板/EVAフィルム/ガラス板」の構成を有する積層体とする。前記積層体を、真空プレス機を使用して、まず150℃の状態でプレスを行わず40秒間真空引きを行い、次いで、真空引きをしたままの状態で150℃にて0.1MPaの圧力で400秒間プレスし(真空引きは引き始めてから400秒間で終了させる)、その後真空プレス機から前記積層体を取り出して、150℃オーブンで40分間加熱し、EVAを熱硬化させる。
このように、少なくとも導体パターンと導電性粘着テープとの貼り合わせ部分(貼付部分)をEVAによって封止することによって、貼付部分が固定されるため、誤差が小さく安定した測定結果を得ることができる。
(チャンバー(恒温槽)内の雰囲気温度設定)
チャンバー内の設定温度(ヒートサイクル条件)を下記のようにする。なお、特に限定されないが、下記設定にてチャンバー内の雰囲気温度を変化させる間には、チャンバー内の湿度(相対湿度)の制御は行わなくてもよい。
開始温度を25℃とし、25℃から100℃/時間の速度で−40℃まで降温し、−40℃で10分間保持する。次に、−40℃から100℃/時間の速度で85℃まで昇温し、85℃で10分間保持する。その後再び100℃/時間の速度で降温し、25℃に達するまでを1サイクルとし、これを少なくとも200回繰り返す設定とする。なお、1サイクルに要する時間は170分である。図4には、上記のチャンバー内の設定温度(ヒートサイクル条件)の、2サイクル目までのプロファイルを示す。なお、この設定温度(ヒートサイクル条件)は、IEC規格のIEC61215(第2版)、IEC61646(第2版)に準じたものである。
上記のチャンバー(恒温槽)としては、公知慣用のチャンバーを用いることができ、特に限定されないが、例えば、商品名「PL−3KP」(エスペック(株)製)、商品名「PWL−3KP」(エスペック(株)製)などの市販品を用いることができる。
(抵抗値の測定)
上記抵抗評価用サンプルにおける電気回路に対し、定電流電源(図1における定電流電源14)により2Aの定電流を流し(即ち、図1における貼付部分13に2Aの定電流を流し)、抵抗評価用サンプルを槽内の雰囲気温度を25℃としたチャンバー内に入れる。次に、上記の設定温度(ヒートサイクル条件)により、抵抗評価用サンプルの冷却および加熱を繰り返し、この間、電位計15によって電圧を連続的に測定(例えば、サンプリング周期:5〜10回/10分)することにより、貼付部分13の抵抗値を連続的に取得する。これにより、1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)、200サイクル目の抵抗値の最大値を測定し、上記の抵抗値上昇率を算出する。
【0082】
本発明の導電性粘着テープは、粘着面がセパレータ(剥離ライナー)により保護されていてもよい。上記セパレータとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有するセパレータ基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や、無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。上記剥離処理層を有するセパレータ基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。上記フッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。なお、セパレータは公知慣用の方法により形成することができる。また、セパレータの厚み等も特に限定されない。
【0083】
本発明の導電性粘着テープは、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途や、電気・電子機器やケーブルの電磁波シールド用途等に好適に使用される。特に、様々な環境下での使用や長期間の使用において、抵抗値が上昇することなく、安定な電気伝導性を発揮することが要求される用途、具体的には、例えば、プリント配線基板の接地、電子機器の外装シールドケースの接地、静電気防止用のアース取り、電源装置や電子機器等(例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどの表示装置、太陽電池など)の内部配線等に使用することができる。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0085】
アクリル系ポリマーAの製造例
アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)70重量部、アクリル酸n−ブチル(BA)30重量部、アクリル酸(AA)3重量部が混合されたモノマー混合物を作製した。このモノマー混合物100重量部に対して、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.2重量部、及び重合溶媒として酢酸エチル186重量部をセパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。このようにして、重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し、10時間反応させた後、トルエンを加えて濃度調整し、固形分濃度30重量%のアクリル系ポリマー溶液(「アクリル系ポリマー溶液A」と称する場合がある)を得た。該アクリル系ポリマー溶液Aにおけるアクリル系ポリマー(「アクリル系ポリマーA」と称する場合がある)の重量平均分子量は約52万であった。
【0086】
実施例1
アクリル系ポリマー溶液Aに、アクリル系ポリマーA:100重量部に対して、架橋剤として「コロネートL」(日本ポリウレタン工業(株)製、イソシアネート系架橋剤)2重量部、粘着付与樹脂として重合ロジンペンタエリスリトールエステル(荒川化学(株)製、「ペンセル D−125」)30重量部を配合し、アクリル系粘着剤組成物溶液(固形分濃度:46.8重量%)を作製した。導電性フィラーとして「Ag−HWQ−400」(福田金属箔粉工業(株)製、銀フィラー、フィラー径d50:13.2μm、フィラー径d95:43.0μm、球状)を、アクリル系粘着剤組成物を構成している固形分100重量部に対して35重量部配合し、攪拌機で10分間混合して、粘着剤組成物(導電性粘着剤組成物)を得た。即ち、導電性フィラーの含有量は、導電性フィラーを除く粘着剤組成物の全固形分(100重量部)に対して、35重量部である。
上記で得られた粘着剤組成物を、厚さ163μmのセパレータ(剥離紙)(王子製紙(株)製、「110EPS(P)ブルー」)上に、乾燥後の厚さが30μmになるように流延塗布し、常圧下、120℃で5分間加熱乾燥して粘着剤層を形成した。次いで、粘着剤層表面に厚さ35μmの錫コート銅箔を貼り合わせ、40℃で1日間エージングし、その後、幅を2mmにカットして、導電性粘着テープを得た。
【0087】
実施例2
導電性フィラーの配合量を70重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粘着テープを得た。
【0088】
実施例3
導電性フィラーの配合量を100重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粘着テープを得た。
【0089】
実施例4
導電性フィラーの配合量を70重量部、粘着剤層(乾燥後の粘着剤層)の厚さを20μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粘着テープを得た。
【0090】
比較例1
導電性フィラーの配合量を100重量部、粘着剤層(乾燥後の粘着剤層)の厚さを20μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粘着テープを得た。
【0091】
比較例2
導電性フィラーの配合量を24重量部に変更した以外は実施例1と同様にして、導電性粘着テープを得た。
【0092】
[評価]
実施例及び比較例で得られた導電性粘着テープについて、以下の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0093】
(1)表面露出率
実施例及び比較例で得られた導電性粘着テープの粘着剤層表面を、0.5%ルテニウム酸水溶液を用いて室温で30分間蒸気染色した。その後、スパッタ装置「E−3200」((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、本発明の粘着剤層表面のPt−Pdスパッタリング処理を行い、観察用試料を作製した。
走査型電子顕微鏡(FE−SEM)「S−4800」((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧5kV、測定倍率200倍の条件で、観察用試料の本発明の粘着剤層表面側の反射電子像(観察範囲:450×575μm2)を測定した。
得られた反射電子像について、画像処理ソフト「Winroof」(三谷商事(株)製)を用いて二値化し、本発明の粘着剤層側の表面の面積に対する、導電性フィラーに帰属する無機層部分の面積の割合を算出し、表面露出率を測定した。
【0094】
(2)初期抵抗値及び抵抗値上昇率(ヒートサイクル試験)
[評価用基板の作製]
実施例および比較例で得られた導電性粘着テープを、幅2mm×長さ60mmのサイズに切り出し、セパレータを剥離して導電性粘着テープ片を得た。
銀メッキが施された導体パターン(Cu18μm/Ni3〜7μm/Au0.03μm/Ag5μm)21a〜hが、図5に示す配置で形成されたガラスエポキシ基板(厚さ:1.6mm)を用い、前記導体パターンへの導電性粘着テープの貼付部分23a〜dのサイズがそれぞれ5mm×2mm(面積:10mm2)となるように、5kgのローラーを1往復させて、導電性粘着テープ片(22a、22b)を貼付(圧着)した。次いで、前記導体パターン21a〜hに定電流電源(24a、24b)および電位計(25a〜d)を、リード線を用いてはんだ付けによって接続した。
なお、図5に示す評価用基板における電気回路は、図1の評価用基板における電気回路を2個配列したものに相当する。
[抵抗評価用サンプルの作製]
図5に示す評価用基板における領域26に、酢酸ビニル含有量28%の熱硬化型EVAフィルム(厚さ:0.6mm)を重ね、さらに上からガラス板(厚さ:3.2mm)を重ねて、「評価用基板/EVAフィルム/ガラス板」の構成を有する積層体を得た。当該積層体を、真空プレス機を使用して、まず150℃の状態でプレスを行わず40秒間真空引き行い、その後真空引きしたままの状態で150℃にて0.1MPaの圧力で400秒間プレスし(真空引きは引き始めてから400秒間で終了させる)、その後プレス機から前記積層体を取り出して、150℃オーブンで40分間加熱して、EVAを熱硬化させることにより、抵抗評価用サンプルを得た。
[チャンバー内の雰囲気温度設定]
チャンバーとして、商品名「PL−3K」(エスペック(株)製)を用い、チャンバー内の設定温度(ヒートサイクル条件)を下記のように設定した。なお、下記条件にて冷却および加熱を繰り返す間、チャンバー内の湿度(相対湿度)については特に制御を行わず、開始時点におけるチャンバー内の相対湿度は50%RHであった。
開始温度を25℃とし、25℃から100℃/時間の速度で−40℃まで降温し、−40℃で10分間保持する。次に、−40℃から100℃/時間の速度で85℃まで昇温し、85℃で10分間保持する。その後再び100℃/時間の速度で降温し、25℃に達するまでを1サイクルとし、これを200回繰り返す設定とした。
[抵抗値の測定]
上記抵抗評価用サンプルを、定電流電源(24a、24b)によって2Aの定電流を流した状態(即ち、図5における貼付部分23a〜dに2Aの定電流を流した状態)で、槽内の雰囲気温度を25℃に調整した上記チャンバー内に入れ、上記ヒートサイクル条件にて冷却および加熱を繰り返した。この間、電位計(25a〜d)によって電圧を連続的に測定し(サンプリング周期:1回/1分)、貼付部分23a〜dの抵抗値(接触抵抗値)を連続的に取得した。これにより、1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)および200サイクル目の抵抗値の最大値を測定し、抵抗値上昇率を算出した。表1には、貼付部分23a〜dのそれぞれにおいて測定された、初期抵抗値および抵抗値上昇率の平均値(N=4)を示した。
【0095】
(3)180°引き剥がし粘着力
実施例および比較例で得られた導電性粘着テープを幅2mm×長さ200mmのサイズに切り出し、セパレータを剥離して、これを測定用サンプルとした。
上記測定用サンプルについて、180°剥離試験を行った。23℃、50%RHの雰囲気下、測定用サンプルの粘着面と試験板(アルミ板)を、2kgのゴムローラー(幅:約30mm)を1往復させることによって貼り合わせた。30分経過後、引張試験機を使用して、測定用サンプルを剥離した際の荷重を測定し、表1の「粘着力」の欄に示した。
測定は、23℃、50%RHの雰囲気下、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で行った。なお、測定回数は3回(N=3)とし、平均値を算出した。
【0096】
【表1】

【0097】
表1の結果から明らかなように、本発明の導電性粘着テープ(実施例)は、細幅の場合でも高い粘着力を有し、なおかつ初期抵抗値が小さく、優れた電気伝導性を有していた。さらに、ヒートサイクル試験において測定された抵抗値上昇率が小さく、なおかつ抵抗値上昇率が低いため、長期間の使用や過酷な条件下での使用においても安定した電気伝導性を発揮し、長期導通信頼性に優れるものであった。一方、導電性フィラーの表面露出率が高過ぎる場合(比較例1)は、粘着力が不足していた。また、導電性フィラーの表面露出率が低過ぎる場合(比較例2)は、初期抵抗値からの抵抗値上昇率が高く電気伝導性および長期導通信頼性が不良であった。
【符号の説明】
【0098】
11a〜d 銀メッキが施された導体パターン(導体パターン)
12 導電性粘着テープ
13 貼付部分
14 定電流電源
15 電位計
16 エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)によって封止される領域(封止領域)
17 貼付部分の抵抗(接触抵抗)
18a ガラスエポキシ基板
18b ガラス板
19 エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)の硬化物
21a〜h 銀メッキが施された導体パターン(導体パターン)
22a、22b 導電性粘着テープ(導電性粘着テープ片)
23a〜d 貼付部分(導電性粘着テープと導体パターンの貼り合わせ部分)
24a、24b 定電流電源
25a〜d 電位計
26 エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)によって封止される領域(封止領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の少なくとも片面側に導電性フィラーを含有する粘着剤層を有する導電性粘着テープであって、下記の方法により測定される、前記粘着剤層表面における前記導電性フィラーの表面露出率が2〜5%であることを特徴とする導電性粘着テープ。
[表面露出率の測定方法]
導電性粘着テープの前記粘着剤層表面を、0.5%ルテニウム酸水溶液を用いて室温で30分間蒸気染色する。その後、スパッタ装置「E−3200」((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、前記粘着剤層表面のPt−Pdスパッタリング処理を行い、観察用試料を作製する。
走査型電子顕微鏡(FE−SEM)「S−4800」((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧5kV、測定倍率200倍の条件で、観察用試料の前記粘着剤層表面側の反射電子像(観察範囲:450×575μm2)を測定する。
得られた反射電子像について、画像処理ソフト「Winroof」(三谷商事(株)製)を用いて二値化し、導電性フィラーに帰属する無機層部分の面積の割合を算出し、表面露出率を測定する。
【請求項2】
下記のヒートサイクル試験において測定される、1サイクル目の抵抗値の最大値が0.1Ω以下であり、抵抗値上昇率が100%以下である請求項1に記載の導電性粘着テープ。
[ヒートサイクル試験]
貼付部分のサイズが5mm×2mm(面積:10mm2)となるように、導電性粘着テープの前記粘着剤層側を銀メッキに貼付し、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキに2Aの定電流を流す。これを、槽内の設定温度を25℃から−40℃まで降温した後−40℃で10分間保持し、次いで、85℃まで昇温した後85℃で10分間保持し、再び降温して25℃に達するまでを1サイクルとしてこれを繰り返す設定とした恒温槽内に入れて冷却および加熱し、この間、前記貼付部分の抵抗値を連続的に測定する。抵抗値上昇率は、200サイクル目の抵抗値の最大値と1サイクル目の抵抗値の最大値から、下記式を用いて算出する。
[抵抗値上昇率]=100×([200サイクル目の抵抗値の最大値]−[1サイクル目の抵抗値の最大値])/[1サイクル目の抵抗値の最大値]
【請求項3】
前記粘着剤層の厚みが10〜100μmである請求項1又は2に記載の導電性粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層が、導電性フィラーを含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層であって、前記導電性フィラーの含有量が、導電性フィラーを除く粘着剤組成物の全固形分(100重量部)に対して、25〜250重量部である請求項1〜3のいずれかの項に記載の導電性粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層が、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層である請求項1〜4のいずれかの項に記載の導電性粘着テープ。
【請求項6】
粘着テープの幅が1.0mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の導電性粘着テープ。
【請求項7】
引張速度300mm/分で測定される、前記粘着剤層表面のアルミ板に対する180°引き剥がし粘着力が0.1N/2mm以上である請求項1〜6のいずれかの項に記載の導電性粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−7093(P2012−7093A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144991(P2010−144991)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】