説明

導電性被膜の製造方法

【課題】本発明は、通常の紙基材やプラスチック基材、ガラス基材上に、低温かつ短時間で導電性被膜を製造可能であり、上記特性に加えて、好ましくは、10−6Ω・cmオーダーの低い体積抵抗値を有し、基材との密着性の優れた導電性被膜を提供することを目的とする。
【解決手段】保護物質で被覆された導電性物質と陰イオン交換能を有する物質を用いて、基材上に塗布および乾燥することにより被膜を形成する導電性被膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性物質を含んでなる導電性被膜に関する。本発明の導電性被膜は、導電回路などに使用できる。
【背景技術】
【0002】
導電性被膜は、ブラウン管、プラズマディスプレイパネル等の電磁波遮蔽、建材または自動車の赤外線遮蔽、電子機器や携帯電話の静電気帯電防止被膜、ガラスの曇り止め用熱線、回路基板等の配線、樹脂に導電性を付与するためのコーティング、回路そのもの等の広い範囲に用途を有する。これらの導電性被膜を形成する方法としては、金属の真空蒸着、化学蒸着、イオンスパッタリング等による方法、あるいは金属粒子を分散媒に分散させた金属コロイド溶液を塗布し、加熱焼成する方法などが従来知られている。これらの方法は操作が煩雑である、量産性に乏しい、高温での加熱が必要であるなどの問題点を含んでいる。
【0003】
一方、プリント基板等の配線を、導電膜のエッチングにより形成する方法も行われているが、エッチングは操作が煩雑で、高コストである上、廃液処理等の問題もあり、環境面からも好ましくない。また、使用できる基材が、プラスチックフィルム等のエッチング耐性のあるものに限定されるという欠点があった。また、導電性ペーストによる場合は、スクリーン印刷により配線等の導電回路を作成することが必要とされ、良好な導電性を得るためには、印刷後高温で加熱する必要があり、その体積抵抗値は、10-5Ω・cmオーダーが限界であった(特許文献1、2参照)。
【0004】
これに対して、最近では、銀ナノ粒子を用いることによって、0.1〜5μm程度の比較的薄い膜厚で10-6Ω・cmオーダーの体積抵抗値が得られることが知られている(非特許文献1、2参照)。しかし、この抵抗値を発現させるためには、ペーストを200℃程度の高温で数十分間加熱して焼結させる必要があり、コート紙などの通常の紙基材や、ポリエステル等のプラスチックフィルム基材に使用することは困難である。また、この方法は、形成された導電回路、導電性被膜と基材との密着性が劣り、クラックが入りやすい欠点がある(特許文献3、4参照)。
【特許文献1】特開2000−260224号公報
【特許文献2】特開2003−16836号公報
【特許文献3】特開2004−273205号公報
【特許文献4】特開2005−81501号公報
【非特許文献1】エレクトロニクス実装学会誌Vol.5、No.6(2002年)、523〜528ページ
【非特許文献2】日経ナノビジネスVol.22(2005.9.26)、2〜7ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は上記従来の問題を有しない種々の用途に利用可能な導電性被膜、およびこの導電性被膜の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
より具体的には、本発明は、通常の紙やプラスチック、繊維、ガラス等の基材上に、低温かつ短時間で導電性被膜を製造可能であり、上記特性に加えて、好ましくは、10-6Ω・cmオーダーの低い体積抵抗値を有し、基材との密着性の優れた導電性被膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、保護物質によって被覆された導電性物質と、陰イオン交換能を有する物質とを接触させることを特徴とする導電性被膜の製造方法に関する。
【0008】
また、本発明は、保護物質が分散剤を含んでなることを特徴とする導電性被膜の製造方法に関する。
【0009】
また、本発明は、分散剤が脂肪酸を含むことを特徴とする導電性被膜の製造方法に関する。
【0010】
また、本発明は、脂肪酸が、炭素数3〜22である飽和または不飽和の脂肪酸を含む上記導電性被膜の製造方法に関する。
【0011】
また、本発明は、導電性物質が、平均粒子径0.001〜10.0μmの導電性微粒子である上記導電性被膜の製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、導電性物質が、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、および鉄から選ばれた1種、または2種以上からなる合金、あるいは混合物である、上記導電性被膜の製造方法に関する。
【0013】
また、本発明は、基材上に、保護物質によって被覆された導電性物質を含む導電性被膜層を形成した後、前記導電性被膜層上に、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層を形成する上記導電性被膜の製造方法に関する。
【0014】
また、本発明は、基材上に、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層を形成した後、前記陰イオン交換層上に、保護物質によって被覆された導電性物質を含む導電性被膜層を形成する上記導電性被膜の製造方法に関する。
【0015】
また、本発明は、上記方法によって製造されてなる導電性被膜に関する。
【0016】
また、本発明は、基材上に、保護物質によって被覆された導電性物質を含む導電性被膜層、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層の順に積層されてなる積層体に関する。
【0017】
また、本発明は、基材上に、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層、保護物質によって被覆された導電性物質を含む導電性被膜層の順に積層されてなる積層体に関する。
【0018】
また、本発明は、脂肪酸が、炭素数3〜22である飽和または不飽和の脂肪酸を含む上記積層体に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の導電性被膜は導電性に優れており、好ましくは、10-6Ω・cmオーダーの体積抵抗値を有している。また、本発明の導電性被膜は、紙、各種プラスチックフィルム、繊維等に対する密着性に優れているため、基材の種類に関わらず、低温かつ短時間で導電性被膜を基材上に容易に製造することができる。
【0020】
また、本発明の導電性被膜製造法は、グラビア印刷、フレキソ印刷、インキジェット印刷を始めとした各種印刷方式に適した材料である導電性インキを用いることができるため、量産性良く、低コストで導電回路、導電性被膜を形成することが可能となる。
【0021】
本発明の導電性被膜は、非接触型ICメディアのアンテナ回路や、プリント基板の導電回路、印刷エレクトロニクス用導電材料、各種電極材、電磁波シールド用メッシュ形成、電磁波シールド用導電性薄膜、導電布等に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明について、実施の形態に基づいて更に詳しく説明するが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
先ず、本発明で用いられる導電性物質について説明する。
【0024】
本発明で用いられる導電性物質は、被膜に導電性を与えるものである。また、本発明の導電性物質は、保護物質によって被覆されていることを特徴とし、保護物質が分散剤を含むことが好ましく、更に、脂肪酸を含むことが好ましい。
【0025】
また、本発明で用いる導電性物質は、必要に応じて、他の添加剤や液状媒体、樹脂および/またはその前駆体等を含ませて、例えば、導電性インキとすることができる。また、前記導電性インキを基材上に塗布、印刷することによって、導電性被覆、導電性被膜層を形成するものである。
【0026】
なお、本発明において、被膜が基材上に形成される場合には、基材全面を覆う必要はなく、部分的に覆うものであったり、パターン状であったり、回路であったりしてもよい。
【0027】
本発明で用いられる導電性物質としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、鉄、コバルト、タングステン、チタン、インジウム、イリジウム、ロジウム、銀めっき銅、銀−銅複合体、銀−銅合金、アモルファス銅等の金属を用いることができる。なかでも、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、鉄が好ましく、更に、金、銀、銅、ニッケルが、更に、導電性、コストの点で銀が好ましい。また、導電性物質としては、上記金属で被覆した無機物粉末、酸化銀、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物等の金属酸化物、またはカーボンブラック、グラファイト等を用いることもできる。導電性物質は、1種を単独で、または2種類以上を合金、あるいは混合物、あるいは合金と合金以外との混合物として用いることもできる。
【0028】
本発明で用いられる保護物質によって被覆された導電性物質としては、例えば、上記金属の粉末を保護物質で被覆したものを用いることができ、平均粒子径は0.001〜10.0μmの範囲のものを用いることができる。
【0029】
上記範囲の導電性物質としては、例えば、湿式法、アトマイズ法、電解法等の通常の製法によって得られる粉末状の導電性物質(A)を挙げることができる。これらの導電性物質(A)の形状としては、例えば、フレーク状、鱗片状、板状、球状、略球状、凝集球状、樹枝状、箔状等いずれの形状のものも使用することができ、平均粒子径が1〜10.0μmのものを使用することができる。
【0030】
更に、本発明においては、保護物質によって被覆された導電性物質(B)として、例えば、液相法、気相法、溶融法、電解法等通常の製法によって得られる平均粒子径0.001〜0.10μmの導電性微粒子をより好ましく用いることができる。中でも、製造コスト、工数を考慮すると、金属化合物を液相中で超音波、紫外線や還元剤を用いて還元する液相法によって得られる導電性微粒子が好ましい。
【0031】
上記範囲の導電性微粒子を用いることによって、低温かつ短時間で導電性被膜の形成が可能となる。平均粒子径が規定値を超える導電性微粒子を用いた場合、導電性が低下するばかりでなく、低温での融着性が劣るため好ましくない。導電性被膜形成方法にもよるが、平均粒子径が0.001〜0.050μmの導電性微粒子を用いることが更に好ましい。
【0032】
なお、上記導電性物質、(A)および(B)の平均粒子径は、動的光散乱法を利用した粒子径分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、マイクロトラックまたはナノトラック等)により測定された値である。
【0033】
上記導電性物質(A)および(B)は、各々1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0034】
本発明の導電性物質は保護物質によって保護されているが、該保護物質は、導電性微粒子の凝集を防ぎ、例えば、導電性インキとした際に導電性物質の分散安定性を高めるために必要なものであり、導電性物質に対する親和性基を化合物中に1個または複数個有する化合物を使用することが好ましく、一般に、顔料分散剤、界面活性剤、脂肪酸として知られている化合物等を使用することができる。
【0035】
上記導電性物質に対する親和性基としては、導電性物質の種類によっても異なるが、一般的には、例えば、アミノ基、4級アンモニウム、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、チオール基、スルホン酸基等の極性基が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの親和性基は、化合物の主鎖に含まれていても、側鎖もしくは側鎖と主鎖の双方に含まれていても良い。
【0036】

顔料分散剤としては、特に限定されないが、一般に顔料分散剤として市販されているものを使用することができ、例えば、ソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース17000、ソルスパース24000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース35100、ソルスパース36000、ソルスパース41000(日本ルーブリゾール株式会社製)、EFKA4009、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4080、EFKA4010、EFKA4015、EFKA4050、EFKA4055、EFKA4060、EFKA4330、EFKA4300、EFKA7462(エフカアディティブズ社製)、アジスパーPB821、アジスパーPB711、アジスパーPB822、アジスパーPN411、アジスパーPA111(味の素ファインテクノ株式会社製)、TEXAPHOR−UV20、TEXAPHOR−UV21、TEXAPHOR−UV61(コグニスジャパン株式会社製)、Disperbyk−101、Disperbyk−103、Disperbyk−106、Disperbyk−110、Disperbyk−111、Disperbyk−161、Disperbyk−162、Disperbyk−163、Disperbyk−164、Disperbyk−166、Disperbyk−167、Disperbyk−168、Disperbyk−170、Disperbyk−171、Disperbyk−174、Disperbyk−180、Disperbyk−182(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。これらの顔料分散剤は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて使用してもよく、また、顔料分散剤と顔料分散剤以外の化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
界面活性剤は一般に、陰イオン系、非イオン系、両性イオン系、陽イオン系のものが知られるが、いずれのものも使用することができる。本発明において用いられる界面活性剤は、特に限定されないが、市販されている化合物等を使用することができる。
【0038】
陰イオン界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アルファオレインスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0039】
非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0040】
両性イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0041】
陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、N−メチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩等が挙げられる。
【0042】
また、フッ素系界面活性剤、アリル系反応性界面活性剤等の反応性界面活性剤、カチオン性セルロース誘導体、ポリカルボン酸、ポリスチレンスルホン酸等の高分子界面活性剤も用いることができる。これらは湿潤分散剤としても市販されており、例えば、EFKA5010、EFKA5044、EFKA5244、EFKA5054、EFKA5055、EFKA5063、EFKA5064、EFKA5065、EFKA5066、EFKA5070、EFKA5071、EFKA5207(エフカアディティブズ社製)、Disperbyk−101、Disperbyk−108、Disperbyk−130(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて使用してもよく、また、界面活性剤と界面活性剤以外の上記化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
本発明において使用される脂肪酸としては、特に限定されず、一般に脂肪酸として知られているものを使用することができる。
【0044】
直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等があげられる。
【0045】
直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等があげられる。中でも、安定性や低温分解性を考慮するとカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0046】
分岐脂肪酸としては、例えば、イソ酪酸、イソ吉草酸、2−エチルヘキサン酸、2−エチルイソヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、2−ブチルオクタン酸、2−イソブチルイソオクタン酸、2−ペンチルノナン酸、2−イソペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘキシルイソデカン酸、2−ブチルドデカン酸、2−イソブチルドデカン酸、2−ヘプチルウンデカン酸、2−イソヘプチルウンデカン酸、2−イソペプチルイソウンデカン酸、2−ドデシルヘキサン酸、2−イソドデシルヘキサン酸、2−オクチルドデカン酸、2−イソオクチルドデカン酸、2−オクチルイソドデカン酸、2−ノニルトリデカン酸、2−イソノニルイソトリデカン酸、2−デシルドデカン酸、2−イソデシルドデカン酸、2−デシルイソドデカン酸、2−デシルテトラデカン酸、2−オクチルヘキサデカン酸、2−イソオクチルヘキサデカン酸、2−ウンデシルペンタデカン酸、2−イソウンデシルペンタデカン酸、2−ドデシルヘプタデカン酸、2−イソドデシルイソヘプタデカン酸、2−デシルオクタデカン酸、2−デシルイソオクタデカン酸、2−トリデシルヘプタデカン酸、2−イソトリデシルイソヘプタデカン酸、2−テトラデシルオクタデカン酸、2−イソテトラデシルオクタデカン酸、2−ヘキサデシルヘキサデカン酸、2−ヘキサデシルテトラデカン酸、2−ヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−イソヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−ペンタデシルノナデカン酸、2−イソペンタデシルイソノナデカン酸、2−テトラデシルベヘン酸、2−イソテトラデシルベヘン酸、2−テトラデシルイソベヘン酸、2−イソテトラデシルイソベヘン酸等が挙げられる。
【0047】
3級脂肪酸としては、例えば、ピバリン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸、エクアシッド9(出光石油化学株式会社製)、エクアシッド13(出光石油化学株式会社製)などが挙げられる。
【0048】
これらの脂肪酸は、炭素数3〜22のものが好ましく用いられる。また、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、また、脂肪酸と脂肪酸以外の上記化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
上記保護物質は、金属微粒子100重量部に対する保護物質の総量で1〜2000重量部の範囲で用いることが好ましいが、10〜100重量部の範囲で用いることが更に好ましい。添加量が1重量部未満の場合、保護物質の効果が得られず、導電性微粒子の凝集を生じるためである。また、2000重量部を超える場合、安定化に寄与しない余剰の保護物質の存在が、導電性インキとして用いた場合の導電性や、物性に悪影響を与えるため好ましくない。
【0050】
本発明において、上記導電性微粒子の保護物質としては、脂肪酸を含むことが好ましい。脂肪酸を含んだ保護物質によって被覆された導電性微粒子を用いることによって、低温かつ短時間で導電性被膜の製造が可能となるためである。
【0051】
また、本発明の導電性微粒子(B)は、再溶解性、再分散性および再分散後の安定性が良好であるため、微粒子を被覆している保護物質の溶解性を損なわない範囲で、各種の液状媒体を使用して、導電性微粒子分散体とすることができる。得られた導電性微粒子分散体は、導電性インキとして、グラビア印刷、フレキソ印刷、インキジェット印刷といった各種印刷方式への適用が可能である。
【0052】
また、得られた導電性インキの物性、安定性、印刷インキとしての性能等を高めるために、必要に応じて、消泡剤、レベリング剤、滑剤、分散剤、樹脂および/またはその前駆体等を含ませてもよい。
【0053】
本発明で用いられる液状媒体としては、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、水等を使用することができ、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0054】
エステル系溶剤としては、例えば、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソアミル、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、アセトニルアセトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0055】
また、グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、およびこれらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0056】
脂肪族系溶剤としては、例えば、ノルマルパラフィン系溶剤として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、0号ソルベントL、M、H(新日本石油株式会社製)、ノルマルパラフィンSL、L、M(新日本石油株式会社製)、イソパラフィン系溶剤として、イソヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,2,5−トリメチルヘキサン、アイソゾール200、300、400(新日本石油株式会社製)、スーパゾルFP2、25、30、38(出光興産株式会社製)、シクロパラフィン系溶剤としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ナフテゾール160、200、220(新日本石油株式会社製)、AFソルベント4号、5号、6号、7号(新日本石油株式会社製)等が挙げられる。
【0057】
芳香族系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ナフタレン、テトラリン、ソルベントナフサ等が挙げられる。
【0058】
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、sec−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、イソアミルアルコール、t−アミルアルコール、sec−イソアミルアルコール、ネオアミルアルコール、ヘキシルアルコール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、シクロヘキサノール、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
【0059】
環状エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランが挙げられる。また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネートが挙げられる。
【0060】
上記液状媒体は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
次に、本発明で用いる陰イオン交換能を有する物質について説明する。
【0062】
本発明で用いる陰イオン交換能を有する物質は、必要に応じて他の添加剤や液状媒体、樹脂および/またはその前駆体等を含ませて、例えば、陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料とすることができる。また、基材上に塗布、印刷することにより、陰イオン交換層を形成するものである。
【0063】
本発明で用いる陰イオン交換能を有する物質とは、陰イオン交換反応を示す物質をいう。イオン交換反応とは、一般に、固体または液体中のイオンが、それと接する外部溶液中にある同符号のイオンと交換する現象である。
【0064】
本発明で用いる陰イオン交換能を有する物質は、イオン交換にあずかるイオン性基、イオン交換基を有するものを挙げることができる。例えば、陰イオン交換基としては、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、アミノ基や、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンを挙げることができる。
【0065】
上記陰イオン交換能を有する物質によって、本発明の保護物質で被覆された導電性物質を、分散安定化させている物質、例えば、イオン化した保護物質イオン等が、例えば、F、Cl、Br、I、ClO、ClO、SO2−、NO、CrO、CO2−、PO3−、HPO2−、HPO、OH等のイオンに速やかに交換されることにより、導電性物質の表面が露出されて、被膜形成温度が低温時でも、導電性を発現させるための導電性物質の融着、被膜化が可能となった。
【0066】
本発明の陰イオン交換能を有する物質としては、例えば、陰イオン交換樹脂、カチオン活性剤等のカチオン性化合物、無機陰イオン交換体等が挙げられる。
【0067】
陰イオン交換樹脂は、一般に、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体からなる橋かけ高分子母体を、クロロメチル化後アミノ化することにより作ることができる。クロロメチル基は、無水塩化アルミニウム触媒の存在下、クロロメチルエーテルを反応させることで容易に導入される。アミノ化は、クロロメチル基をアミンで処理する反応であるが、アミンの種類により各種の陰イオン交換樹脂ができる。
【0068】
トリメチルアミンを用いて第4アンモニウム基を導入したものが強塩基性I型、ジメチルエタノールアミンを用いて4級化したものが強塩基性II型といわれるが、いずれも使用することができる。また、第1級ないし第3級アミンを導入すると弱塩基性樹脂となるが、これも使用することができる。
【0069】
上記、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体は、懸濁重合により得られるが、透明で均質な橋かけ球状粒子のものを一般にゲル型と呼び、他方、水不溶性の芳香族炭化水素等の高沸点有機溶媒を加えて多孔質化したものはマクロポーラス型、生成した重合体をほとんど膨潤させない2−ブタノール等の有機溶媒を添加して得られた多孔体はMR型樹脂と呼ばれ、これらはいずれも使用することができる。
【0070】
カチオン性化合物としては、例えば、第4アンモニウム塩、または第4アンモニウム塩を有する化合物も使用することができる。第4アンモニウム塩は、一般に、第3アミンにハロゲン化アルキル作用させて作ることができる。この第4アンモニウム塩としては、窒素原子を環内に持つN−メチルピペリジンメチオジドや、キノリンメチオジド等の環状第4アンモニウム塩が挙げられ、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルピリジニウム、高級アミンのハロゲン酸塩等のカチオン活性剤が挙げられ、これらも使用することができる。
【0071】
また、これらの第4アンモニウム塩基を導入した樹脂化合物や、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、アミノ基や、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンを導入した樹脂化合物も同様に使用することができる。例えば、アクリル系樹脂や、ウレタン系樹脂、ポリアミン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アリルアミン重合樹脂、ジアリルアミン重合樹脂等である。更に、ジシアンジアミジンやジシアンジアミドの重合樹脂等や、樹脂を直接カチオン変性したカチオン変性樹脂等も挙げられ、これらも使用することができる。
【0072】
また、第4アンモニウム塩の酸基としては、例えば、F、Cl、Br、I、ClO、ClO、SO2−、NO、CrO、CO2−、PO3−、HPO2−、HPO、OH等いずれのものも用いることができる。
【0073】
無機イオン交換体、いわゆる固体塩基としては、例えば、活性炭や、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、ZnO/ZrO、MgO/TiO、CaO/P、SiO/CaO/MgO、SiO/Al、SiO/SrO、SiO/BaO、ZnO/SiO、TiO/ZrO、Al/TiO、SiO/ZrO、Al+ZrO、SiO/TiO、MoO/SiO、MoO/Al、Al/MgO等の複合酸化物、ゼオライト、Na/MgO、K/MgO、Na/Al等の金属蒸着金属酸化物、KNH/Al、EuNH/K−Y等のイミン担持金属酸化物、KF/Al、LiCO/SiO等のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0074】
更に、無機イオン交換体としては、例えばシリカ、コロイダルシリカ、チタニア上に、例えば酸化アルミニウム等で被覆して、表面の電荷をカチオン化したものなども使用することができる。
【0075】
上記陰イオン交換能を有する物質は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用して使用してもよい。
【0076】
次に、本発明で用いる陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料の製造方法について説明する。本発明で用いる塗料は、前記陰イオン交換能を有する物質を液状媒体に混合し、更に必要に応じて消泡剤、レベリング剤、滑剤、分散剤、樹脂および/またはその前駆体等を混合し、従来公知の方法で、例えばボールミル、アトライター、サンドミル、ジェットミル、3本ロールミル、ペイントシェーカー等を用いて分散するか、または、従来公知の方法で、例えば、ミキサー、ディソルバーを用いて撹拌、混合することにより、上記塗料を製造することができる。
【0077】
本発明の陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料には、導電性被膜を形成する基材、塗布方法に応じて液状媒体を使用することができる。液状媒体としては、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、水等を使用することができ、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0078】
エステル系溶剤としては、例えば、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソアミル、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、アセトニルアセトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0079】
また、グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、およびこれらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0080】
脂肪族系溶剤としては、例えば、ノルマルパラフィン系溶剤として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、0号ソルベントL、M、H(新日本石油株式会社製)、ノルマルパラフィンSL、L、M(新日本石油株式会社製)、イソパラフィン系溶剤として、イソヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,2,5−トリメチルヘキサン、アイソゾール200、300、400(新日本石油株式会社製)、スーパゾルFP2、25、30、38(出光興産株式会社製)、シクロパラフィン系溶剤としては、例えば、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ナフテゾール160、200、220(新日本石油株式会社製)、AFソルベント4号、5号、6号、7号(新日本石油株式会社製)等が挙げられる。
【0081】
芳香族系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ナフタレン、テトラリン、ソルベントナフサ等が挙げられる。
【0082】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、sec−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、イソアミルアルコール、t−アミルアルコール、sec−イソアミルアルコール、ネオアミルアルコール、ヘキシルアルコール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、シクロヘキサノール、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
【0083】
環状エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランが挙げられる。また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネートが挙げられる。
【0084】
上記液状媒体は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
また、本発明の陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料には、使用する基材に対する密着性や、導電性インキとの密着性を高める、あるいは導電性被膜を保護する目的で、その他の樹脂および/またはその前駆体を含ませることができる。その他の樹脂としては、例えばポリウレタン樹脂、(不飽和)ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ゼラチン、ギルソナイト、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、スチレン/無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリウレタン樹脂等から選ばれる1種または2種以上を、導電性被膜形成方法の種類及び使用基材の種類に応じて使用することができる。
【0086】
また、上記樹脂のうち、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂等は、アミン類、酸無水物類、メルカプト類、イミダゾール類、イソシアネート類、ジシアンジアミド類、ジヒドラジド類等の硬化剤と組み合わせることによって、得られた被膜の耐溶剤性や耐薬品性等の物性を高めることができる。
【0087】
樹脂の前駆体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物等のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種または2種以上を使用することができる。
【0088】
(メタ)アクリレート化合物のうち、単官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルホルムアミド、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルサクシネート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0089】
また、多官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ロジン変性アクリレート等が挙げられる。
【0090】
ビニルエーテル化合物のうち、単官能のビニルエーテル化合物として、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0091】
多官能のビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル、ビスフェノールAジエトキシジビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル等が挙げられる。
【0092】
また、先に例示した化合物以外のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、例えば、N−ビニルアセトアミド、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、2−メタリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、ステアリルアクリレート、テトラメチルピペジリルメタクリレート等が挙げられる。
【0093】
樹脂の前駆体を含む本発明の陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料に、電子線を照射して硬化する場合は、樹脂の前駆体(エチレン性不飽和二重結合を有する化合物)の分子鎖切断によってラジカル重合が起こるが、紫外線を照射する場合は、前記塗料に光重合開始剤を添加するのが一般的である。
【0094】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、アセトフェノン系、ベンゾイン系、アシルフォスフィンオキサイド系、ビスイミダゾール系、アクリジン系、カルバゾール−フェノン系、トリアジン系、オキシム系等の光重合開始剤を使用することができる。光重合開始剤は、樹脂の前駆体100重量部に対して、1〜20重量部の量で用いることができる。
【0095】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルキサントン等が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−[(4−メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセエトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルメチルケタール等が挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0096】
樹脂の前駆体を含む本発明の陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料には、更に、光重合開始剤と共に、光重合促進剤、増感剤を含ませることができる。光重合促進剤および増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル等の脂肪族や芳香族のアミン類が挙げられる。
【0097】
また、樹脂の前駆体を含む本発明の陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料には、塗料の安定性を高める目的で、(熱)重合禁止剤を含ませることができる。(熱)重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,6−t−ブチル−p−クレゾ−ル、2,3−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、アンスラキノン、フェノチアジン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
【0098】
更に、本発明の陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料には、必要に応じて陰イオン交換能を有する、および/または有さない、有機および/または無機微粒子を含ませることができる。例えば、上記塗料中に上記微粒子が含まれることによって、陰イオン交換能を有する物質が、陰イオン交換層中に均一に存在することによって、本発明の導電性微粒子と接触した際に、陰イオン交換反応が更に効率良く行われるためである。
【0099】
また、用いる上記陰イオン交換能を有する、および/または有さない微粒子の平均粒子径は、0.001〜20.0μmであることが好ましい。平均粒子径が20.0μmを超える微粒子を用いると、導電性発現効果が劣るだけでなく、塗料の安定性、物性等も低下するため好ましくない。
【0100】
上記陰イオン交換能を有する、および/または有さない無機微粒子としては、例えば、クレー、珪藻土、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルク、カオリン、焼成カオリン、サポナイト、モルデナイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄(II)、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化鉛、リン酸マグネシウム、塩化アルミニウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、モンモリロナイト等が挙げられる。これらの無機微粒子のなかでも、非晶質シリカ、コロイダルシリカが好ましい。
【0101】
有機微粒子としては、例えば、デンプン等の天然物、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン系、スチレン/アクリル系、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6−12等のナイロン系、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、4フッ化エチレン等のオレフィン系、ポリエステル系、フェノール系、ベンゾグアナミン系の樹脂微粒子が挙げられる。
【0102】
これらの微粒子は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0103】
最後に、本発明の導電性被膜の製造方法について説明する。
【0104】
本発明の導電性被膜は、保護物質で被覆された導電性物質と、陰イオン交換能を有する物質とを接触させることを特徴としているため、接触させることが可能であれば導電性被膜の製造方法や基材、導電性被膜の構成等は、特に限定されるものではなく、必要に応じて選択することができる。
【0105】
導電性被膜を形成するための基材としては、用途に応じて、紙、プラスチックフィルム、ガラス、繊維等、通常の基材を選択して使用することができる。
【0106】
紙基材としては、例えば、コート紙、非コート紙の他、合成紙、ポリエチレンコート紙、含浸紙、耐水加工紙、絶縁加工紙、伸縮加工紙等の各種加工紙が使用できるが、導電性被膜として安定した導電性を得るためには、コート紙、加工紙が好ましい。コート紙の場合は、平滑度の高いものほど導電性被膜の抵抗値が安定するため好ましい。
【0107】
プラスチック基材としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート等の通常使用されるプラスチックからなる基材を使用することができる。
【0108】
プラスチックフィルムの表面には、形成される導電性被膜の密着性を高めたり、塗布、印刷される導電性被膜や導電性回路等の印刷再現性等を高める目的で、必要に応じて、コロナ放電処理やプラズマ処理を施したり、またはポリウレタン、ポリイソシアネート、有機チタネート、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン等の樹脂コーティング剤を塗布したりすることができる。
【0109】
ガラス基材としては、一般に基板用ガラスとして使用されているものは、いずれも使用することができる。例えば、ソーダライムガラス、マイクロシートガラス、無アルカリガラス、硬質ガラス、バイコールガラス、石英ガラス等が挙げられる。
【0110】
繊維基材としては、例えば、綿、麻等の植物繊維、絹、羊毛等の動物繊維、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ビニロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン等の化学繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ等の再生繊維が挙げられる。また、繊維の構造体としては、例えば、織物、ニット、不織布等いずれのものも用いることができる。
【0111】
本発明において、導電性被膜の製造方法としては、例えば、(1):基材上に、保護物質で被覆された導電性物質を含んだ導電性被膜層を形成し、次に、上記導電性被膜層上に、陰イオン交換能を有する物質を含んだ陰イオン交換層を形成して導電性被膜を形成する方法や、(2):基材上に、陰イオン交換能を有する物質を含んだ陰イオン交換層を形成し、次に、上記陰イオン交換層上に、保護物質で被覆された導電性物質を含んだ導電性被膜層を形成して導電性被膜を形成する方法や、(3):保護物質で被覆された導電性物質と、陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を直接基材上に塗布、印刷する方法等が挙げられる。
【0112】
上記いずれの方法を用いても、低温かつ短時間で導電性被膜の形成が可能であり、基材の種類や、工程に合わせて選択すればよく、これらに限定されるものではない。
【0113】
本発明の導電性被膜の製造方法について、上記(1)の方法から具体的に説明する。
【0114】
先ず、基材上に、従来公知の方法で、本発明の保護物質で被覆された導電性物質を含んだ導電性インキを塗布、印刷する。例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、インキジェット印刷、スプレーコート、スピンコート、ダイコート、リップコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンコート、ロールコート、バーコート等の方法を用いて塗布後、使用する基材に応じて、50〜150℃程度の温度で、数秒から数10分程度乾燥することによって、導電性被膜層が得られる。乾燥方法は、熱風乾燥、遠赤外線乾燥等いずれの方法も用いることができる。
【0115】
次に、上記導電性被膜層上に本発明のイオン交換能を有する物質を含んだ塗料を塗布、印刷する。塗布方法は、基材、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、従来公知の方法、グラビア印刷、フレキソ印刷、インキジェット印刷、ディスペンサー印刷、スプレーコート、スピンコート、ダイコート、リップコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンコート、ロールコート、バーコート等の方法で、導電性被膜層上に塗布、印刷すればよい。その後、例えば室温25℃で数時間放置、または、真空乾燥により溶剤を除去した場合でも導電性被膜が得られるが、十分な導電性を得るためには、使用する基材に応じて、50〜150℃の乾燥温度で数秒〜数10分間乾燥させることで、低抵抗値を有する導電回路、導電性被膜を得ることができる。乾燥方法は、熱風乾燥、遠赤外線乾燥等いずれの方法も用いることができる。
【0116】
また、基材としてシュリンクフィルム等を使用した場合のように、どうしても温度がかけられない場合は、導電性被膜層上にイオン交換塗料被膜を形成した後、例えば40℃で一晩、オーブン中で加熱することで十分な導電性を得ることができる。
【0117】
以上の方法によって、基材に対する密着性、導電性に優れた導電性被膜を得ることができる。
【0118】
導電性被膜製造法(2)については、本発明の導電性インキ、および陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を塗布、印刷する順を、方法(1)と逆にすればよい。即ち、基材上に、陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を、上記方法(1)と同様に従来公知の方法を用いて塗布、印刷後、乾燥して陰イオン交換層を形成し、次に、本発明の導電性インキを用いて、方法(1)と同様に、従来公知の方法で塗布、印刷後、乾燥して導電性被膜層を形成することにより、方法(1)と同様に基材に対する密着性、導電性に優れた導電性被膜を得ることができる。
【0119】
導電性被膜製造法(3)については、本発明の導電性物質と陰イオン交換能を有する物質に、必要に応じて、消泡剤、レベリング剤、滑剤、分散剤、樹脂および/またはその前駆体等を混合し、従来公知の方法で、例えばボールミル、アトライター、サンドミル、ジェットミル、3本ロールミル、ペイントシェーカー等を用いて分散するか、または、従来公知の方法で、例えば、ミキサー、ディソルバーを用いて撹拌、混合することにより、導電性物質と陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得て、次に、前記塗料を、従来公知の方法で基材上に塗布、印刷後、乾燥して導電性被膜を得ることができる。
【0120】
本発明で用いられる導電性インキを用いて形成された導電回路などの導電性被膜は、加熱処理または加熱加圧処理を施すことにより、導電性インキ層の融着、金属化が促進されて、更に抵抗値を低減することが可能である。より高い導電性を得るためには、加熱加圧処理が好ましいが、使用する基材等の種類に応じていずれかの方法を選択すればよい。
【0121】
また、導電回路などの導電性被膜形成後に、更にその保護を目的として、オーバープリントワニス、各種コーティング剤等を塗工してもよい。これらの各種ワニス、コーティング剤としては、通常の熱乾燥型、活性エネルギー線硬化型のいずれも使用できる。
【0122】
また、導電性被膜上に接着剤を塗布した後、紙基材やプラスチックフィルムを接着、またはプラスチックの溶融押出し等によりラミネートして回路、被膜を保護することもできる。勿論、あらかじめ粘着剤、接着剤が塗布された基材を使用することもできる。
【実施例】
【0123】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を表す。
[導電性微粒子合成例1]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で撹拌しながらトルエン200部およびオレイン酸銀38.9部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)を添加し溶解させた。その後、20%コハク酸ジヒドラジド(以降SUDHと略記する)水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を滴下すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。更に反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水層を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、更にトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄・分離を繰り返し、銀微粒子分散体トルエン溶液を得た。得られた銀微粒子分散体の、銀微粒子の平均粒子径は7±2nmであり、銀濃度は73%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[導電性微粒子合成例2]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で撹拌しながらトルエン200部およびプロピオン酸銀18.1部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、オレイン酸2.8部(金属1molに対し0.1mol倍)を添加し溶解させた。その後、20%SUDH水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を添加すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。更に反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水層を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、更にトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄・分離を繰り返し、銀微粒子分散体トルエン溶液を得た。得られた銀微粒子分散体の、銀微粒子の平均粒子径は5±2nmであり、銀濃度は75%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[導電性微粒子合成例3]
原料の金属塩をペンタン酸銀20.9部に変更した以外は、合成例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の、銀微粒子の平均粒子径は5±1nmであり、銀濃度は82%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[導電性微粒子合成例4]
原料の金属塩をヘキサン酸銀22.3部に変更した以外は、合成例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の、銀微粒子の平均粒子径は5±2nmであり、銀濃度は80%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[導電性微粒子合成例5]
原料の金属塩をオクタン酸銀25.1部に変更した以外は、合成例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は6±2nmであり、銀濃度は70%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
【0124】
[導電性微粒子合成例6]
原料の金属塩をミリスチン酸銀33.5部に変更した以外は、合成例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は8±2nmであり、銀濃度は72%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
【0125】
[導電性微粒子合成例7]
原料の金属塩をステアリン酸銀39.1部に変更した以外は、合成例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は8±2nmであり、銀濃度は65%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
【0126】
[導電性微粒子合成例8]
原料の金属塩をブタン酸銀19.5部に変更した以外は合成例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銅微粒子分散体の銅微粒子の平均粒子径は5±2nmであり、銀濃度は75%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[導電性微粒子合成例9]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で撹拌しながらトルエン200部およびプロピオン酸銀18.1部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ株式会社製)1.1部(金属に対し10重量%)を20%トルエン溶液として添加し溶解させた。その後、20%SUDH水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を添加すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。更に反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水層を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、更にトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄・分離を繰り返し、銀微粒子分散体トルエン溶液を得た。得られた銀微粒子分散体の、銀微粒子の平均粒子径は5±2nmであり、銀濃度は68%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[導電性微粒子合成例10]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素ガスを導入しながら1M硝酸銀水溶液を100部仕込み、攪拌しながらソルスパース32000(日本ルーブリゾール株式会社製、重量平均分子量約50000)1.9部を、トルエン10.8部中に溶解させた溶液を滴下した。室温で30分攪拌した後、ジメチルアミノエタノール38.1部を滴下し、そのまま室温で一晩攪拌し反応を進行させた。水層を取り出し、数回蒸留水で洗浄・分離を繰返すことで過剰の還元剤と不純物の洗浄を行い、銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体は、ペースト状であり、銀微粒子の平均粒子径は25±10nmであり、銀濃度は50%であった。
[実施例1]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(三菱化学株式会社製「サフトマーST−3000」、固形分25%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1、重量比)40部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。次に、この陰イオン交換能を有する塗料を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上にバーコーターを用いて塗工、75℃で5分間乾燥することにより、乾燥後の塗膜厚さ6μmの陰イオン交換層を得た。
【0127】
次に、導電性微粒子合成例1に示される銀微粒子分散体を用いて、上記陰イオン交換層上に、ディスペンサー法によって幅3mmの回路パターンを印刷、熱風乾燥オーブン中120℃10分間乾燥させて導電性被膜を得た。
[実施例2]
その他の樹脂としてポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製「ポバールPVA−117」)7.5部、陰イオン交換能を有する物質として第4アンモニウム塩(花王株式会社製「コータミン24P」)2.5部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)90部を混合し、ディソルバーを用いて60分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。次に、この陰イオン交換能を有する塗料を用いて、スピンコート法でガラス基板上に塗工、75℃で5分間乾燥することにより、乾燥後の塗膜厚さ6μmの陰イオン交換層を得た。
【0128】
次に、導電性微粒子合成例2に示される銀微粒子分散体を用いて、上記陰イオン交換層上に、スピンコート法によって塗布、熱風乾燥オーブン中150℃10分間乾燥させて導電性被膜を得た。
[実施例3]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(明成化学工業株式会社製「パルセットJK−510」、固形分20%)15部、陰イオン交換能を有さない物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO」、固形分20%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。この陰イオン交換能を有する塗料を用いて、小型グラビア印刷機でポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)に、全面ベタ印刷して乾燥後、塗膜厚さ5μmの陰イオン交換層を得た。なお、印刷機の乾燥温度は60℃に設定した。
【0129】
次に、導電性微粒子合成例3に示される銀微粒子分散体を用いて、上記陰イオン交換層上に、小型グラビア印刷機を用いて幅3mmの導電回路パターンをグラビア印刷し、乾燥して導電性被膜を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で100℃に設定した。
[実施例4]
その他の樹脂としてポリアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックKW−1」、固形分20%)15部、陰イオン交換能を有する物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスAK」、固形分20%)60部、液状媒体(水/ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート=4/6)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。次に、この陰イオン交換能を有する塗料を用いて、インキジェット法により、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上に陰イオン交換能を有する塗料を印刷し、熱風乾燥オーブン中100℃10分間乾燥して、塗膜厚さ5μmの陰イオン交換層を得た。
【0130】
次に、導電性微粒子合成例3に示される銀微粒子分散体を用いて、上記陰イオン交換層上に、インキジェット法により幅3mmの導電回路パターンを印刷し、熱風乾燥オーブン中150℃10分間乾燥して導電性被膜を得た。
[実施例5]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例1に示される分散体を使用した以外は、実施例4と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例6]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例2に示される分散体を使用した以外は、実施例4と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例7]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例4に示される分散体を使用した以外は、実施例4と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例8]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(センカ株式会社製「パピオゲンP−105」、固形分60%)5部、陰イオン交換能を有さない物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO」、固形分20%)20部、陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスAK」、固形分20%)40部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)35部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。次にこの陰イオン交換能を有する塗料を用いて、CI型フレキソ印刷機(W&H製「SOLOFLEX」、アニロックス100線/インチ)でポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)に全面ベタ印刷を行い、乾燥後の塗膜厚さ5μmの陰イオン交換層を得た。なお、乾燥温度は実測値で70℃に設定した。
【0131】
次に、導電性微粒子合成例3に示される銀微粒子分散体を用いて、上記陰イオン交換層上に、フレキソ印刷機を用いて幅3mmの導電回路パターンを印刷し導電性被膜を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で100℃に設定した。
[実施例9]
導電性インキ印刷時の、フレキソ印刷機の乾燥温度を50℃に設定した以外は、実施例8と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例10]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(明成化学工業株式会社製「パルセットJK−510」、固形分20%)15部、陰イオン交換能を有さない物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO」、固形分20%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。次に、この陰イオン交換能を有する塗料を用いて、小型グラビア印刷機でポリエステル繊維に全面ベタ印刷して乾燥後、陰イオン交換層を得た。なお、印刷機の乾燥温度は60℃に設定した。
【0132】
次に、導電性微粒子合成例3に示される銀微粒子分散体を用いて、上記陰イオン交換層上に、小型グラビア印刷機を用いて全面ベタ印刷し、乾燥して導電性被膜を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で100℃に設定した。
[実施例11]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例5に示される分散体を使用した以外は、実施例3と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例12]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例6に示される分散体を使用した以外は、実施例3と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例13]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例7に示される分散体を使用した以外は、実施例3と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例14]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例8に示される分散体を使用した以外は、実施例3と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例15]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例9に示される分散体を使用した以外は、実施例3と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例16]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例10に示される分散体を使用した以外は、実施例3と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例17]
その他の樹脂としてポリアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックKW−1」、固形分20%)15部、陰イオン交換能を有する物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスAK」、固形分20%)60部、液状媒体(水/ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート=4/6)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。次に、この陰イオン交換能を有する塗料を用いて、インキジェット法により、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上に陰イオン交換能を有する塗料を印刷し、熱風乾燥オーブン中100℃10分間乾燥して、塗膜厚さ5μmの陰イオン交換層を得た。
【0133】
次に、導電性微粒子合成例10に示される銀微粒子分散体を用いて、上記陰イオン交換層上に、インキジェット法により幅3mmの導電回路パターンを印刷し、熱風乾燥オーブン中150℃10分間乾燥して導電性被膜を得た。
[実施例18]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例10に示される分散体を使用した以外は、実施例1と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例19]
導電性物質として、オレイン酸で表面処理したフレーク状銀粉(平均粒子径4.0μm)49.5部、陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(三菱化学株式会社製「サフトマーST−3000」、固形分25%)36部、その他の樹脂としてポリアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックKW−1」、固形分20%)5部、液状媒体(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)9.5部を混合し、プラネタリーミキサーを用いて30分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。
【0134】
次に、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上に、上記塗料を用いてスクリーン印刷により幅3mmの導電回路パターンを印刷し、熱風乾燥オーブン中100℃10分間乾燥して導電性被膜を得た。
[実施例20]
導電性物質として、導電性微粒子合成例1に示される銀微粒子分散体を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上に、ディスペンサー法によって幅3mmの回路パターンを印刷、熱風乾燥オーブン中100℃10分間乾燥させて導電性被膜層を得た。
【0135】
次に、陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(三菱化学株式会社製「サフトマーST−3000」、固形分25%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)40部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。次に、このイオン交換能を有する塗料を用いて、上記導電性被膜層上にバーコーターを用いて塗工、70℃で5分間乾燥することにより陰イオン交換層を形成し、導電性被膜を得た。
[実施例21]
導電性物質として、導電性微粒子合成例2に示される銀微粒子分散体を用いて、ガラス基板上に、スピンコート法によって塗布、熱風乾燥オーブン中100℃10分間乾燥させて導電性被膜層を得た。
【0136】
次に、その他の樹脂としてポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製「ポバールPVA−117」)7.5部、陰イオン交換能を有する物質として第4アンモニウム塩(花王株式会社製「コータミン24P」)2.5部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)90部を混合し、ディソルバーを用いて60分間撹拌してイオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。このイオン交換能を有する塗料を用いて、スピンコート法で上記導電性被膜層上に塗工、100℃で5分間乾燥することにより陰イオン交換層を形成し、導電性被膜を得た。
[実施例22]
導電性物質として、導電性微粒子合成例3に示される銀微粒子分散体を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上に、小型グラビア印刷機を用いて幅3mmの導電回路パターンを印刷し、乾燥して導電性被膜層を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で90℃に設定した。
【0137】
次に、陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(明成化学工業株式会社製「パルセットJK−510」、固形分20%)15部、陰イオン交換能を有さない物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO」、固形分20%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。
【0138】
次に、この陰イオン交換能を有する塗料を用いて、小型グラビア印刷機で上記導電性被膜層上に全面ベタ印刷、乾燥して陰イオン交換層を形成し導電性被膜を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で60℃に設定した。
[実施例23]
導電性物質として、導電性微粒子合成例3に示される銀微粒子分散体を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上に、インキジェット法により幅3mmの導電回路パターンを印刷し、熱風乾燥オーブン中100℃10分間乾燥して導電性被膜層を得た。
【0139】
次に、その他の樹脂としてポリアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックKW−1」、固形分20%)15部、陰イオン交換能を有する物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスAK」、固形分20%)60部、液状媒体(水/ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート=4/6)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。次に、この陰イオン交換能を有する塗料を用いて、インキジェット法により上記導電性皮膜層上に印刷、熱風乾燥オーブン中100℃5分間乾燥して陰イオン交換層を形成し、導電性被膜を得た。
[実施例24]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例1に示される分散体を使用した以外は、実施例23と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例25]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例2に示される分散体を使用した以外は、実施例23と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例26]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例4に示される分散体を使用した以外は、実施例23と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例27]
導電性物質として、導電性微粒子合成例3に示される銀微粒子分散体を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上に、CI型フレキソ印刷機(W&H製「SOLOFLEX」、アニロックス100線/インチ)を用いて幅3mmの導電回路パターンを印刷し導電性被膜層を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で100℃に設定した
次に、陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(センカ株式会社製「パピオゲンP−105」、固形分60%)5部、陰イオン交換能を有さない物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO」、固形分20%)20部、陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスAK」、固形分20%)40部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)35部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。次に、この陰イオン交換能を有する塗料を用いて、フレキソ印刷機で全面ベタ印刷を行い、陰イオン交換層を形成し、導電性被膜を得た。なお、乾燥温度は実測値で70℃に設定した。
[実施例28]
フレキソ印刷機の乾燥温度を全工程で50℃に設定した以外は、実施例27と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例29]
導電性物質として、導電性微粒子合成例3に示される銀微粒子分散体を用いて、ポリエステル繊維上に、小型グラビア印刷機を用いて全面ベタ印刷して乾燥後、導電性被膜層を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で90℃に設定した。
【0140】
次に、陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(明成化学工業株式会社製「パルセットJK−510」、固形分20%)15部、陰イオン交換能を有さない物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO」、固形分20%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。
【0141】
次に、この陰イオン交換能を有する塗料を用いて、小型グラビア印刷機で上記導電性被膜層上に全面ベタ印刷して乾燥後、陰イオン交換層を形成し導電性被膜を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で60℃に設定した。
[実施例30]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例5に示される分散体を使用した以外は、実施例22と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例31]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例6に示される分散体を使用した以外は、実施例22と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例32]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例7に示される分散体を使用した以外は、実施例22と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例33]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例8に示される分散体を使用した以外は、実施例22と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例34]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例9に示される分散体を使用した以外は、実施例22と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例35]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例10に示される分散体を使用した以外は、実施例23と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例36]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例10に示される分散体を使用した以外は、実施例20と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例37]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例10に示される分散体を使用した以外は、実施例22と同様にして導電性被膜を得た。
[比較例1]
基材としてポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)を用いて、導電性微粒子合成例10に示される銀微粒子分散体を用いて、該ポリエステルフィルム上に、ディスペンサー法によって幅3mmの回路パターンを印刷、熱風乾燥オーブン中120℃10分間乾燥させて導電性被膜を得た。
[比較例2]
その他の樹脂としてポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製「ポバールPVA−117」)15部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)85部を混合し、ディソルバーを用いて60分間撹拌して塗料を得た。次に、上記塗料を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上にバーコーターを用いて塗工、75℃で5分間乾燥することにより、乾燥後の塗膜厚さ7μmの塗料被膜層を得た。
【0142】
次に、導電性微粒子合成例10に示される銀微粒子分散体を用いて、上記塗料被膜層上に、ディスペンサー法によって幅3mmの回路パターンを印刷、熱風乾燥オーブン中120℃10分間乾燥させて導電性被膜を得た。
[比較例3]
その他の樹脂としてポリアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックKW−1」、固形分20%)15部、陰イオン交換能を有さない物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO」、固形分20%)60部、液状媒体(水/ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート=4/6)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して塗料を得た。次に、この塗料を用いて、インキジェット法により、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上に印刷し、熱風乾燥オーブン中100℃10分間乾燥して、塗膜厚さ5μmの塗料被膜層を得た。
【0143】
次に、導電性微粒子合成例2に示される銀微粒子分散体を用いて、上記塗料被膜層上に、インキジェット法により幅3mmの導電回路パターンを印刷し、熱風乾燥オーブン中150℃10分間乾燥して導電性被膜を得た。
[比較例4]
その他の樹脂としてポリアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックKW−1」、固形分20%)15部、陰イオン交換能を有さない物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO」、固形分20%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して塗料を得た。次に、この塗料を用いて、CI型フレキソ印刷機(W&H製「SOLOFLEX」、アニロックス100線/インチ)でポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)に全面ベタ印刷を行い、乾燥後の塗膜厚さ5μmの塗料被膜層を得た。なお、乾燥温度は実測値で70℃に設定した。
【0144】
次に、導電性微粒子合成例3に示される銀微粒子分散体を用いて、上記塗料被膜層上に、フレキソ印刷機を用いて幅3mmの導電回路パターンを印刷し導電性被膜を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で50℃に設定した。
[比較例5]
その他の樹脂としてポリアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックKW−1」、固形分20%)15部、陰イオン交換能を有さない物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO」、固形分20%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して塗料を得た。この塗料を用いて、小型グラビア印刷機でポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)に、全面ベタ印刷して乾燥後、塗膜厚さ5μmの塗料被膜層を得た。なお、印刷機の乾燥温度は60℃に設定した。
【0145】
次に、導電性微粒子合成例8に示される銀微粒子分散体を用いて、上記塗料被膜層上に、小型グラビア印刷機を用いて幅3mmの導電回路パターンをグラビア印刷し、乾燥して導電性被膜を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で100℃に設定した。
[比較例6]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例9に示される分散体を使用した以外は、比較例5と同様にして導電性被膜を得た。
[比較例7]
導電性物質として、導電性微粒子合成例10に示される銀微粒子分散体を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上に、ディスペンサー法によって幅3mmの回路パターンを印刷、熱風乾燥オーブン中100℃10分間乾燥させて導電性被膜層を得た。
【0146】
次に、その他の樹脂としてポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製「ポバールPVA−117」)15部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)85部を混合し、ディソルバーを用いて60分間撹拌して塗料を得た。次に、この塗料を用いて、上記導電性被膜層上にバーコーターを用いて塗工、70℃で5分間乾燥することにより、導電性被膜を得た。
[比較例8]
導電性物質として、導電性微粒子合成例2に示される銀微粒子分散体を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上に、インキジェット法により幅3mmの導電回路パターンを印刷し、熱風乾燥オーブン中100℃10分間乾燥して導電性被膜層を得た。
【0147】
次に、その他の樹脂としてポリアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックKW−1」、固形分20%)15部、陰イオン交換能を有さない物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO」、固形分20%)60部、液状媒体(水/ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート=4/6)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して塗料を得た。次に、この塗料を用いて、インキジェット法により、上記導電性被膜層上に印刷し、熱風乾燥オーブン中100℃5分間乾燥して、導電性被膜を得た。
[比較例9]
導電性物質として、導電性微粒子合成例3に示される銀微粒子分散体を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上に、CI型フレキソ印刷機(W&H製「SOLOFLEX」、アニロックス100線/インチ)を用いて幅3mmの導電回路パターンを印刷し導電性被膜層を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で50℃に設定した
次に、その他の樹脂としてポリアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックKW−1」、固形分20%)15部、陰イオン交換能を有さない物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO」、固形分20%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して塗料を得た。次に、この塗料を用いて、上記導電性被膜上にフレキソ印刷機で全面ベタ印刷、乾燥して導電性被膜を得た。なお、乾燥温度は実測値で50℃に設定した。
[比較例10]
導電性物質として、導電性微粒子合成例8に示される銀微粒子分散体を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上に、小型グラビア印刷機を用いて幅3mmの導電回路パターンを印刷し、乾燥して導電性被膜層を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で90℃に設定した。
【0148】
次に、その他の樹脂としてポリアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックKW−1」、固形分20%)15部、陰イオン交換能を有さない物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO」、固形分20%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して塗料を得た。
【0149】
次に、この塗料を用いて、小型グラビア印刷機で上記導電性被膜層上に全面ベタ印刷して乾燥後、導電性被膜を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で60℃に設定した。
[比較例11]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例9に示される分散体を使用した以外は、比較例10と同様にして導電性被膜を得た。
[比較例12]
導電性物質として、導電性微粒子合成例3に示される銀微粒子分散体を用いて、ポリエステル繊維上に、小型グラビア印刷機を用いて全面ベタ印刷して乾燥後、導電性被膜を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で90℃に設定した。
【0150】
実施例および比較例で得られた導電回路、導電性被膜の密着性、体積抵抗値、表面抵抗値、および耐折り曲げ性について、以下の方法で評価した。結果を表1〜5に示す。
[基材密着性]
ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「E5100」、厚さ100μm)、ガラス基板、またはポリエステル繊維上に形成された導電回路、導電性被膜に、セロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製、幅12mm)を貼り付け、セロハン粘着テープを急激に引き剥がした時、剥離した塗膜の程度を評価した。
【0151】
○:ほとんど剥離しない(剥離面積10%未満)
△:部分的に剥離した(剥離面積10%以上50%未満)
×:ほとんど剥離した(剥離面積50%以上)
[体積抵抗値]
得られた幅3mmの導電回路パターンを、30mm間隔で4箇所はさみ、その抵抗値を四探針抵抗測定器(三和電気計器株式会社製「DR−1000CU型」)で測定した。導電回路の膜厚を膜厚計(株式会社仙台ニコン製「MH−15M型」)で測定し、得られた抵抗値と膜厚から体積抵抗値を算出した。また、導電性被膜の場合は、被膜を3mm幅に加工した後、上記と同様にして体積抵抗値(Ω・cm)を測定した。
【0152】
なお、導電性被膜層、陰イオン交換層の順に積層した場合は、一部陰イオン交換層を剥離、導電性被膜層を露出させて抵抗値、膜厚を測定して体積抵抗値を算出した。
[表面抵抗値]
基材がポリエステル繊維の場合、導電性被膜を3mm×10cmに加工して、その2点間(10cm)の抵抗値(Ω)を、上記抵抗測定器を用いて測定した。なお、導電性被膜層、陰イオン交換層の順に積層した場合は、一部陰イオン交換層を剥離、導電性被膜層を露出させて抵抗値を測定した。
[耐折り曲げ性]
導電性インキ塗工物の体積抵抗値を測定した後、塗工面を内側にして180°折り曲げた後、今度は塗工面を外側にして180°折り返し、その後、再び体積抵抗値、または表面抵抗値を測定して折り曲げ前後での抵抗値の変化の度合いを評価した。
【0153】
○:体積抵抗値の変化が20%未満
△:体積抵抗値の変化が20%以上30%未満
×:体積抵抗値の変化が30%以上
【0154】
【表1】

【0155】
【表2】

【0156】
【表3】

【0157】
【表4】

【0158】
【表5】

実施例1〜37において得られた結果は、本発明の特徴である保護物質によって被覆された導電性物質と、陰イオン交換能を有する物質を接触させることにより、従来法では成し得なかった導電性が得られることを示している。
【0159】
特に、実施例6、実施例9、実施例14を、比較例3、比較例4、比較例5と比較した場合、同様に、実施例25、実施例28、実施例33を、比較例8、比較例9、比較例10と比較した場合、印刷方法や低温での乾燥条件にも関わらず、良好な導電性が得られることが判明した。保護物質としてプロピオン酸、ペンタン酸、ブタン酸、あるいはヘキサン酸等の低分子量脂肪酸を用いると、陰イオン交換能を有する物質による、陰イオン交換反応が速やかに行われ、導電性微粒子が融着、金属化しやすくなるため良好な導電性が得られると考えることができる。
【0160】
また、上記実施例で得られた導電性被膜は、層の構成、導電性被膜の製造方法によらず、基材に対する密着性も良好であり、折り曲げ後の抵抗値変化も小さく安定していた。
【0161】
実施例15、実施例16、実施例34、実施例35では、保護物質として脂肪酸と顔料分散剤の組合せ、および顔料分散剤のみを用いた導電性物質を使用したが、比較例2、比較例6、比較例11と比較すると、導電性は良好であり、明らかに陰イオン交換能を有する物質と接触させた効果が得られた。
【0162】
比較例の結果からも明らかなように、導電性微粒子を単独で用いる、または、陰イオン交換能を有する物質と組み合わせて用いない場合は、得られた導電性被膜は十分な性能を得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護物質によって被覆された導電性物質と、陰イオン交換能を有する物質とを接触させることを特徴とする導電性被膜の製造方法。
【請求項2】
保護物質が、分散剤を含んでなる請求項1記載の導電性被膜の製造方法。
【請求項3】
分散剤が、脂肪酸を含む請求項2記載の導電性被膜の製造方法。
【請求項4】
脂肪酸が、炭素数3〜22である飽和または不飽和の脂肪酸を含む請求項3記載の導電性被膜の製造方法。
【請求項5】
導電性物質が、平均粒子径0.001〜10.0μmの導電性微粒子である請求項1〜4いずれかに記載の導電性被膜の製造方法。
【請求項6】
導電性物質が、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、および鉄から選ばれた1種、または2種以上からなる合金、あるいは混合物である、請求項1〜5いずれかに記載の導電性被膜の製造方法。
【請求項7】
基材上に、保護物質によって被覆された導電性物質を含む導電性被膜層を形成した後、前記導電性被膜層上に、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層を形成する請求項1〜6いずれかに記載の導電性被膜の製造方法。
【請求項8】
基材上に、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層を形成した後、前記陰イオン交換層上に、保護物質によって被覆された導電性物質を含む導電性被膜層を形成する請求項1〜6いずれかに記載の導電性被膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8いずれかに記載の方法によって製造されてなる導電性被膜。
【請求項10】
基材上に、保護物質によって被覆された導電性物質を含む導電性被膜層、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層の順に積層されてなる積層体。
【請求項11】
基材上に、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層、保護物質によって被覆された導電性物質を含む導電性被膜層の順に積層されてなる積層体。
【請求項12】
保護物質が、炭素数3〜22である飽和または不飽和の脂肪酸を含む請求項10または11記載の積層体。


【公開番号】特開2007−317632(P2007−317632A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225942(P2006−225942)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】