説明

導電性部材、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置

【課題】熱処理による帯電性能の低下を防止する導電性部材を提供する。
【解決手段】導電性支持体1と、該導電性支持体1上に形成された電気抵抗調整層3と、該電気抵抗調整層3と像担持体が一定の空隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層3の両端側に当接して形成された空隙保持部材5,5と、を有する導電性部材10において、前記電気抵抗調整層3の両端部又は前記空隙保持部材5,5の何れか一方の当接部に設けられる嵌着用凸部31と、該一方の当接部に対向する前記電気抵抗調整層3の両端部又は前記空隙保持部材5,5の対向部に設けられ、かつ、該嵌着用凸部31を嵌合して固定する嵌着用凹部51と、を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において用いられる導電性部材及びそれを有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体(感光体)に対して帯電処理を行う帯電部材、及び、感光体上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として、導電性部材が用いられている。図7は、従来の帯電ローラを有する電子写真方式の画像形成装置の説明図である。
【0003】
図7において、120は、従来の電子写真方式の画像形成装置である。従来の電子写真方式の画像形成装置120は、静電潜像が形成される感光体ドラム101、感光体ドラム101に接触して帯電処理を行う帯電ローラ102、レーザ光等の露光手段103、感光体ドラム101の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ104、帯電ローラ102にDC電圧を印加するためのパワーパック105、感光体ドラム101上のトナー像を記録紙107に転写処理する転写ローラ106、転写処理後の感光体ドラム101をクリーニングするためのクリーニング装置108、及び、感光体ドラム101の表面電位を測定する表面電位計109から構成されている。
【0004】
また、従来の電子写真方式の画像形成装置120は、プロセスカートリッジ着脱方式の装置となっている。即ち、従来の電子写真方式の画像形成装置120は、感光体ドラム101、帯電ローラ102、現像ローラ104、及び、クリーニング装置108を含むプロセス機器を一括して画像形成装置本体に対して着脱自在のプロセスカートリッジ110としている。このプロセスカートリッジ110は、少なくとも、感光体ドラム101及び帯電ローラ102を備えていればよい。このプロセスカートリッジ110は、画像形成装置に対して所定の箇所に装着されることにより、画像形成装置本体側の駆動系及び電機系と接続状態となる。なお、図7では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、本明細書において必要としないので、省略してある。
【0005】
次に、従来の電子写真方式の画像形成装置120の基本的な作動動作について説明する。
【0006】
感光体ドラム101に接触された帯電ローラ102に対してDC電圧をパワーパック105から給電すると、感光体ドラム101の表面は、一様に高電位に帯電する。その直後に、画像光が感光体ドラム101の表面に露光手段103により照射されると、感光体ドラム101の照射された部分は、その電位が低下する。このような帯電ローラ102による感光体ドラム101の表面への帯電メカニズムは、帯電ローラ102と感光体ドラム101との間の微小空間におけるパッシェンの法則に従った放電であることが知られている。
【0007】
画像光は、画像の白/黒に応じた光量の分布であるので、かかる画像光が照射されると、画像光の照射によって感光体ドラム101の面に記録画像に対応する電位分布、即ち、静電潜像が形成される。このように静電潜像が形成された感光体ドラム101の部分が現像ローラ104を通過すると、その電位の高低に応じてトナーが付着し、静電画像を可視像化したトナー像が形成される。かかるトナー像が形成された感光体ドラム101の部分に、記録紙107が所定のタイミングでレジストローラ(図示せず)により搬送され、前記トナー像に重なる。そして、このトナー像が転写ローラ106によって記録紙に転写された後、該記録紙107は、感光体ドラム101から分離される。分離された記録紙107は、搬送経路を通って搬送され、定着ユニット(図示せず)によって、加熱定着された後、機外へ排出される。このようにして転写が終了すると、感光体ドラム101は、その表面がクリーニング装置108によりクリーニング処理され、さらに、クエンチングランプ(図示せず)により、残留電荷が除去されて、次回の作像処理に備えられる。
【0008】
図8は、従来の帯電部材の一例を示す部分破断図である。図8に示される、導電性指示体201と、該導電性指示体201上に形成された電気抵抗調整層202と、該電気抵抗調整層202の両端に形成されたリング状の空隙保持部材203,203と、を有する帯電部材210において、前記空隙保持部材203,203が、デュロメータ硬さ:HDD30〜HDD70、及び、テーバー式磨耗試験機の磨耗質量:10mg/1000サイクル以下、を満たす熱可塑性樹脂で構成されている帯電部材210を提案した(特許文献1参照)。
【0009】
上述した帯電部材210において、一般に空隙保持部材203,203は電気抵抗調整層202の端面に接触して固定されている。また、電気抵抗調整層202の部分は導電性の樹脂部材とステンレス製の芯金である導電性指示体201とをインサート成形で加工し、さらに、電気抵抗調整層202部分とは異なる材質にて成形加工された空隙保持部材203,203を電気抵抗調整層202の両端部に挿入して固定している。その後、所定の近接量を得るために切削加工を行うが、各部材の成形時の歪みを取る為に熱処理を行ってから、切削加工を行い、次工程で塗装、焼成している。
【特許文献1】特開2005−24830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した製造方法では、成形時の歪みを取るために熱処理を行うため、該熱処理によって電気抵抗調整層と空隙保持部材との間に隙間が生じると、以下のような問題が生じていた。なお、図9は熱処理により生じる問題を説明するための図であり、(a)は熱膨張前、(b)は熱膨張後をそれぞれ示している。
【0011】
図9(a)に示すように、熱処理による帯電部材210の熱膨張持は、電気抵抗調整層202が膨張方向Aに膨張し、この膨張により空隙保持部材203,203が電気抵抗調整層202の両端部の外側方向Xに向かって押し出される。その後、図9(b)に示すように、帯電部材210の冷却により電気抵抗調整層202は収縮方向Bに収縮して元の位置に戻るが、空隙保持部材203,203は押し出されたままの状態となってしまい、電気抵抗調整層202と空隙保持部材203,203との間に隙間Gが生じていた。そして、その隙間Gが発生した状態で製品に組み付けられると、その隙間Gにトナー剤が入り込み、そのトナーが凝集して感光体ドラム(静電潜像担持体)101の被帯電面に落下して、画像異常や帯電異常の原因となっていた。
【0012】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、熱処理による帯電性能の低下を防止する導電性部材、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載の導電性部材は、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と像担持体が一定の空隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端側に当接して形成された空隙保持部材と、を有する導電性部材において、前記電気抵抗調整層の両端部又は前記空隙保持部材の何れか一方の当接部に設けられる嵌着用凸部と、該一方の当接部に対向する前記電気抵抗調整層の両端部又は前記空隙保持部材の対向部に設けられ、かつ、該嵌着用凸部を嵌合して固定する嵌着用凹部と、を有していることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の導電性部材において、前記嵌着用凸部が、前記電気抵抗調整層又は前記空隙保持部材から突出する複数の嵌着用突起であることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の導電性部材において、前記嵌着用凸部が、前記導電性支持体の周囲に周設し、かつ、前記電気抵抗調整層又は前記空隙保持部材から突出するように形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の導電性部材において、前記空隙保持部材の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と前記導電性部材の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように、前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項4に記載の導電性部材において、前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が、前記導電性支持体上に設置された該空隙保持部材の外周面と前記導電性支持体上に設置された該電気抵抗調整層の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載の導電性部材において、前記導電性部材が円筒形状であることを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6の何れか1項に記載の導電性部材において、前記導電性部材が帯電部材であることを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項8記載のプロセスカートリッジは、請求項7に記載の帯電部材が被帯電体上に近接配置されるように設けられていることを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項9記載の画像形成装置は、請求項8に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように請求項1に記載した本発明によれば、電気抵抗調整層の両端側又は電気抵抗調整層の一方に嵌着用凸部、その他方に嵌着用凹部をそれぞれ形成するようにしたことから、熱処理によって電気抵抗調整層が膨張した後に収縮しても、嵌着用凸部と嵌着用凹部との嵌着によって電気抵抗調整層から空隙保持部材が離れないため、電気抵抗調整層と空隙保持部材との間に隙間が生じることを防止することができる。従って、電気抵抗調整層の熱膨張により発生する電機抵抗調整層と空隙保持部材との間に生じる隙間を抑制することができるため、トナーが凝集して像担持体の被帯電面に落下する問題を回避して、画像異常、帯電異常の発生等による帯電性能の低下防止に貢献することができる。また、嵌着用の凸部及び凹部によって実機環境に適した固定力を得ることができ、また、凹凸を形成する加工機にあった加工方法で形成することができるため、良好な帯電性能を確実かつ容易に得ることができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、嵌着用凸部を複数の嵌着用突起としたことから、実機環境に適した固定力をより一層確実に得ることができるため、良好な帯電性能を確実かつ容易に得ることができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、嵌着用凸部を導電性支持体の周囲に周設するように電気抵抗調整層又は空隙保持部材に形成するようにしたことから、嵌着用凸部を容易に形成することができるため、凹凸を形成する加工機にあった加工方法で形成することが可能となり、組立作業の向上にも貢献することができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、空隙保持部材の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と導電性部材の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように、電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が設けられているので、像担持体との間の空隙を精度良く一定に保つことができ、しかも、空隙保持部材が配置されている電気抵抗調整層が環境変動で寸法変化しても、電気抵抗調整層の変化に追従することができ、そのために、空隙変動を抑えることができる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、電気抵抗調整層の外周面に対する空隙保持部材の外周面の高低差が、導電性支持体上に設置された該空隙保持部材の外周面と導電性支持体上に設置された該電気抵抗調整層の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されているので、該空隙保持部材と該電気抵抗調整層との高低差の形成を一体加工で行うことができ、そのために、像担持体の外周面と電気抵抗調整層の外周面との間に形成される空隙の変動(振れ)を小さくして空隙の精度をより高めることができる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、導電性部材が円筒形状であるので、該導電性部材を回転駆動させることができ、そのために、同一箇所からの連続放電を防止して通電ストレスによる表面の化学的劣化を低減することができ、よって、長寿化をはかることができる。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、導電性部材を帯電部材としたので、像担持体表面を非接触で帯電させることができ、そのために、帯電部材の汚れ等を防止すると共に、帯電部材を硬い材質で形成することにより高精度にすることができ、よって、帯電ムラを防止することができる。
【0029】
請求項8に記載の発明によれば、帯電部材が被帯電体上に近接配置されるように設けられたプロセスカートリッジとするので、長期に渡って安定した画質を得ることでき、且つ、交換もユーザメンテナンスが可能であり簡素化される。
【0030】
請求項9に記載の発明によれば、プロセスカートリッジを有する画像形成装置とするので、画像異常、帯電異常の発生がない良好な帯電性能を得ることができるため、信頼性が高く、かつ、高画質な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、本発明の一実施の形態を示す導電性部材の断面図である。図2は、図1の導電性部材の組み付け例を説明するための図であり、(a)は組み付け前、(b)は組み付け後をそれぞれ示している。図3は、導電性部材を像担持体上に配置した状態を示す模式図である。図4は、本発明の一実施の形態を示す画像形成装置の説明図である。図5は、本発明の他の実施の形態を示す導電性部材の断面図である。図6は、図5の導電性部材の組み付け例を説明するための図であり、(a)は組み付け前、(b)は組み付け後をそれぞれ示している。
【0032】
図1及び図2において、10は、導電性部材(帯電ローラ)である。導電性部材10は、ニッケルメッキされた硫黄快削鋼(SUM)からなる外径10mmの導電性支持体(芯軸)1と、該導電性支持体1上に形成された電気抵抗調整層3と、該電気抵抗調整層3と像担持体(図3における6を参照。)が一定の空隙(図3におけるGを参照。)を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層3の両端部に形成された空隙保持部材5,5と、前記電気抵抗調整層3の両端部又は前記空隙保持部材5,5の何れか一方の当接部に設けられる嵌着用凸部31と、該当接部に対向する前記電気抵抗調整層の両端部又は前記空隙保持部材の対向部に設けられ、かつ、該嵌着用凸部31を嵌合して固定する嵌着用凹部51と、を有している。なお、嵌着とは、嵌めることによって部材を固定することを意味している。
【0033】
電気抵抗調整層3は、高分子型イオン導電材料が分散された熱可塑性樹脂組成物により形成されている。そして、電気抵抗調整層3の体積固有抵抗は、106〜109Ωcmであることが望ましい。109Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまい、106Ωcmよりも体積固有抵抗が低いと、像担持体6全体への電圧集中によるリークが生じてしまう。
【0034】
電気抵抗調整層3に用いられる熱可塑性樹脂組成物は特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS,ABS)等の汎用樹脂であれば、成形加工が容易であり好ましい。
【0035】
その熱可塑性樹脂組成物に分散させる高分子型イオン導電材料としては、ポリエーテルエステルアミド成分を含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドはイオン導電性の高分子材料であり、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。よって、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系導電剤を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う抵抗値のばらつきが生じない。また、高分子材料であるため、ブリードアウトが生じ難い。配合量については、抵抗値を所望の値にする必要があることから、熱可塑性樹脂が30〜70重量%、高分子型イオン導電剤が70〜30重量%とする必要がある。
【0036】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。電気抵抗調整層3としての導電性支持体1上への形成は、押出成形や射出成形等の手段で導電性支持体1に上記半導電性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。
【0037】
導電性支持体1上に電気抵抗調整層3のみを形成して導電性部材10を構成すると、電気抵抗調整層3にトナー及び、トナーの添加剤等が固着して性能低下する場合がある。このような不具合は、電気抵抗調整層3に表面層を形成することで、防止することができる。
【0038】
また、本発明の導電性部材10は、図3に示されているように、像担持体6に任意の圧力で当接されて配置される。空隙保持部材5,5は、画像形成領域を外した非画像形成領域に形成されている。この状態で帯電部材に電圧を印加することにより、像担持体6の帯電を行うことができる。導電性部材10を転写部材として使用する場合も、同様の形態で行うことができる。導電性部材10と像担持体6との間の空隙Gは、所定の値に保つ必要があり、好ましくは、100μm以下である。空隙Gが大きくなると、導電性部材10への電圧印加条件を高くする必要があるので、像担持体6の電気的劣化や異常放電が発生しやすくなる。
【0039】
また、空隙保持部材5,5は、像担持体6との空隙Gを環境及び、長期(経時)に渡って安定して形成する必要があり、そのためには、吸湿性、耐摩耗性が小さい材料が望ましいことから、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS,ABS)等の汎用樹脂、PC、ウレタン、フッ素等があげられる。そして、空隙保持部材5,5は、成型加工により成形されたものである。
【0040】
嵌着用凸部31は、当接面である電気抵抗調整層3の端面32から突出する複数の嵌着用突起として形成しており、その形状は電気抵抗調整層3の端面32に向かって直径が次第に減少する円錐状に形成している。なお、嵌着用凸部31は、電気抵抗調整層3と同一材料で一体的にモールド成形等により形成してもよいが、他の材料で形成して電気抵抗調整層3に固着するなど種々異なる形態とすることができる。
【0041】
なお、嵌着用凸部31である嵌着用突起の形状については、例えば、電気抵抗調整層3の端面32から延在する略棒状の基部の先端に、該基部の幅よりも大きな球、略三角錐などを形成するようにしてもよい。
【0042】
嵌着用凸部31の数については、実機環境で必要とする固定力等を考慮して設定されるものであり、例えば、高い固定力を必要とする場合はその数を多くし、また、低い固定力でよい場合はその数を少なくする。そして、本最良の形態では、導電性支持体1を対象中心として2つの嵌着用凸部31が対象の位置となるように、電気抵抗調整層3の端面32に設ける場合について説明する。
【0043】
このように嵌着用凸部31を複数の嵌着用突起としたことから、実機環境に適した固定力をより一層確実に得ることができるため、良好な帯電性能を確実かつ容易に得ることができる。
【0044】
嵌着用凹部51は、上述した嵌着用凸部31に対応する配置、数となるように、対向面である空隙保持部材5の端面52に形成している。そして、嵌着用凹部51の形状は、嵌着用凸部31の外形に対応した形状となっており、嵌合された嵌着用凸部31の端面32寄りの側面に当接して、嵌着用凹部51に嵌合された嵌着用凸部31が抜けない構造となっている。
【0045】
このように、電気抵抗調整層3に嵌着用凸部31及び空隙保持部材5,5に嵌着用凹部51をそれぞれ形成することで、一般的な圧入工法及び接着工法よりも引き抜き強度が増し、熱処理等に応じた電気抵抗調整層3の熱膨張により空隙保持部材5,5が外側方向Xに押し出されても、電気抵抗調整層3が収縮方向Bに収縮すると、嵌着用凸部31と嵌着用凹部51とによって電気抵抗調整層3に嵌着された状態で空隙保持部材5,5も収縮方向Bに移動するため、電気抵抗調整層3と空隙保持部材5,5との間に隙間が生じることを防止することができる。
【0046】
なお、本最良の形態では、嵌着用凸部31を電気抵抗調整層3の端面32に形成し、嵌着用凹部51を空隙保持部材5に形成する場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、空隙保持部材5に嵌着用突起、電気抵抗調整層3に嵌着用凹部を形成することもできる。その場合は、像担持体6の画像形成領域を考慮して電気抵抗調整層3を延在させるなどして嵌着用凹部を形成することもできる。
【0047】
図3に示されているように、本発明の導電性部材10には、空隙保持部材5,5の外周面51が像担持体6と当接したときに、該像担持体6の外周面と前記導電性部材10の外周面との間に一定間隔の空隙Gが形成されるように、前記電気抵抗調整層3の外周面に対する空隙保持部材5,5の外周面の高低差が設けられている。このように、空隙保持部材5,5の外周面が像担持体6と当接したときに、該像担持体6の外周面と電気抵抗調整層3の外周面との間に一定間隔の空隙Gが形成されるように、該電気抵抗調整層3の外周面に対する前記空隙保持部材5,5の外周面の高低差が設けられていると、像担持体6との間の空隙Gを精度良く一定に保つことができ、しかも、空隙保持部材5,5が配置されている電気抵抗調整層3が環境変動で寸法変化しても、電気抵抗調整層3の変化に追従することができ、そのために、空隙変動を抑えることができる。
【0048】
前記電気抵抗調整層3の外周面に対する前記空隙保持部材5,5の外周面の高低差は、前記導電性部材10上に設置された該空隙保持部材5,5の外周面と前記導電性支持体1上に設置された該電気抵抗調整層3の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成される。このように、前記電気抵抗調整層3の外周面に対する前記空隙保持部材5,5の外周面の高低差が、前記導電性部材10上に設置された該空隙保持部材5,5の外周面と前記導電性支持体1上に設置された該電気抵抗調整層3の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されると、像担持体6の外周面と電気抵抗調整層3の外周面との間に形成される空隙Gの変動(振れ)を小さくして空隙Gの精度をより高めることができる。
【0049】
本発明においては、前記導電性部材10が円筒形状である。このように、前記導電性部材10が円筒形状であと、該導電性部材10を回転駆動させることができ、そのために、同一箇所からの連続放電を防止して通電ストレスによる表面の化学的劣化を低減することができ、よって、長寿化をはかることができる。
【0050】
なお、本発明の導電性部材10及び像担持体6の形状は特に限定されず、像担持体6はベルト状、円筒状いずれの形式もとることができる。導電性部材10もブレード形状、円筒形状等種々の形状をとることができるが、ともに円筒形状であることが好ましい。両者が常に同一面で対向していると、通電ストレスによる表面の化学的劣化が生じてしまうが、両者を円筒形状として回転駆動させることで、この劣化を低減できるからである。
【0051】
本発明においては、前記導電性部材10は、好ましくは、帯電部材とされる。このように、前記導電性部材10が帯電部材とされると、像担持体表面を非接触で帯電させることができ、そのために、帯電部材の汚れ等を防止すると共に、帯電部材を硬い材質で形成することにより高精度にすることができ、よって、帯電ムラを防止することができる。
【0052】
次に、上述した導電性部材10の製造方法の一例としては、導電性支持体1上に抵抗調整層3及び嵌着用凸部31を射出成形によって形成し、その後、電気抵抗調整層3の嵌着用凸部31の各々を、空隙保持部材5,5の嵌着用凹部51に圧入しながら、電気抵抗調整層3の両側に空隙保持部材5,5を装着する。その後、その後、空隙保持部材5,5と抵抗調整層3の段差部のばらつきを小さくするために、空隙保持部材5,5と抵抗調整層3が一体で形成された状態において、各部材の成形時の歪みを取る為に熱処理を行ってから、切削、研削等の除去加工によって、外径を仕上げる。その後、空隙保持部材5,5を保護した状態で電気抵抗調整層3上に更に表面層(図示せず)を形成し、導電性部材10とする。
【0053】
本発明の導電性部材1によれば、電気抵抗調整層3の両端側に嵌着用凸部31、空隙保持部材5,5に嵌着用凹部51をそれぞれ形成するようにしたことから、熱処理によって電気抵抗調整層3が膨張した後に収縮しても、嵌着用凸部31と嵌着用凹部51との嵌着によって電気抵抗調整層3から空隙保持部材5,5が離れないため、電気抵抗調整層3と空隙保持部材5,5との間に隙間が生じることを防止することができる。
【0054】
従って、電気抵抗調整層3の熱膨張により発生する電機抵抗調整層3と空隙保持部材5,5との間に生じる隙間を抑制することができるため、トナーが凝集して像担持体の被帯電面に落下する問題を回避して、画像異常、帯電異常の発生等による帯電性能の低下防止に貢献することができる。また、嵌着用凸部31及び嵌着用凹部51によって実機環境に適した固定力を得ることができ、また、凹凸を形成する加工機にあった加工方法で形成することができるため、良好な帯電性能を確実かつ容易に得ることができる。
【0055】
また、上述した導電性部材(帯電部材)10は、被帯電体上に近接配置されるように設けられた着脱可能なプロセスカートリッジ(図5における110を参照。)とする。このように、導電性部材(帯電部材)10が被帯電体上に近接配置されるように設けられたプロセスカートリッジとすると、長期に渡って安定した画質を得ることができ、且つ、交換もユーザメンテナンスが可能であり簡素化される。
【0056】
本発明においては、前記プロセスカートリッジを有する画像形成装置とする。このように、請求項13に記載のプロセスカートリッジを有する画像形成装置とすると、信頼性が高く、かつ、高画質な画像を得ることができる。
【0057】
図4に示すように、本発明の画像形成装置においては、装置本体内の下部に給紙部22、その上方に像担持体6を有する作像部、及び、さらにその上方に排紙部となる対の排紙ローラ26,27をそれぞれ設けて、給紙部22から給紙した転写紙Pの左側の面に対応する作像部で画像を形成し、そして、その転写紙Pを排紙ローラ26,27によりビントレイ20あるいは排紙トレイ21に排出するようにしている。給紙部22には、上下2段にトレイ28,29が設けられていて、その各給紙段には給紙ローラ30がそれぞれ配設されている。23は書込みユニットであり、そこから像担持体6の一様に帯電された表面に光を照射して、そこに画像を書き込む。また、その像担持体6に対して転写紙搬送方向上流側には、転写紙のスキューを補正すると共に、像担持体6上の画像と転写紙の搬送タイミングを合わせるためのレジストローラ対13を設けている。
【0058】
さらに、像担持体6に対して転写紙搬送方向下流側には、定着ユニット25を設けている。作像部には、図4に示すように、前述した像担持体6が矢示A方向に回転可能に設けられており、その周囲には帯電装置(図8における102を参照。)と、その帯電装置により帯電された面に書込みユニット23により書込まれた像担持体6上の静電潜像を顕像化してトナー像とする現像装置(図8における104を参照。)と、そのトナー像を転写紙Pに転写する転写搬送ベルト7と、そのトナー像の転写後に像担持体6上に残った残留トナーを除去するクリーニング装置(図8における108を参照。)と、像担持体6上の不要な電荷を除電する除電ランプ(図示せず)とを、それぞれ配設している。この画像形成装置は、画像形成動作を開始させると、図4に示した像担持体6が矢印A方向に回転し、その表面が除電ランプにより除電されて基準電位に平均化される。次に、その像担持体6の表面は、帯電ローラ(図8における102を参照。)により一様に帯電され、その帯電面は、書込みユニット23から画像情報に応じた光の照射を受け、そこに静電潜像が形成される。その潜像は、像担持体6が矢示A方向に回転することにより現像装置(図8における104を参照。)の位置まで移動されると、そこで現像スリーブ(図示せず)によりトナーが付着されてトナー像(顕像)となる。
【0059】
一方、図4に示した給紙部22のトレイ28,29の何れかから給紙ローラ30により転写紙Pが給紙され、それがレジストローラ対13で一旦停止されて、その転写紙Pの先端と像担持体6上の画像の先端とが一致する正確なタイミングで搬送され、その転写紙Pに転写搬送ベルト7により像担持体6上のトナー像が転写される。その転写紙Pは、転写搬送ベルト7により搬送され、駆動ローラ部7aで転写紙Pの腰による曲率分離で、その転写搬送ベルト7から分離されて、定着ユニット25へ搬送され、そこで熱と圧力が加えられることによりトナーが転写紙Pに融着され、それが指定された排紙場所、すなわち排紙トレイ21あるいはビントレイ20の何れかに排出される。その後、像担持体6上に残った残留トナーは、次工程であるクリーニング位置まで回転移動し、クリーニング装置のクリーニングブレード(図8における108を参照。)により掻き取られ、再び次の作像工程に移る。
【0060】
なお、上述した本最良の形態においては、導電性部材10の嵌着用凸部を複数の嵌着用突起とした場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、種々異なる形態とすることができる。なお、上述した導電性部材10のところで説明したものと同一あるいは相当する部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0061】
例えば、導電性部材10は、図5及び図6に示すように、導電性支持体1と、電気抵抗調整層3と、空隙保持部材5,5と、電気抵抗調整層3の両端側の各々に形成している嵌着用凸部35と、該嵌着用凸部35に対応して空隙保持部材5,5に形成している嵌着用凹部55と、を有している。
【0062】
嵌着用凸部35は、導電性支持体1の周囲に周設し、かつ、電気抵抗調整層3の端面32から突出するように形成している。そして、その形状は、導電性支持体1の中心軸を中心として、電気抵抗調整層3の端面32に向かって直径が次第に減少する略円錐台状に形成している。なお、嵌着用凸部35は、導電性支持体3との間に隙間を形成して組み付け性の向上を図っても良いが、加工の面を考慮すると、隙間はない方が好ましい。また、嵌着用凸部35は、導電性支持体1の周囲に連続して形成しておく必要はなく、その周囲に部分的に形成するようにしてもよい。
【0063】
このように嵌着用凸部35を導電性支持体1の周囲に周設するように電気抵抗調整層3に形成するようにしたことから、嵌着用凸部35を容易かつ正確に形成することができるとともに、実機環境に適した固定力をより一層確実に得ることができるため、凹凸を形成する加工機にあった加工方法で形成することが可能となり、安価で良好な帯電性能を得るとともに、組立作業の向上にも貢献することができる。
【0064】
嵌着用凹部55は、上述した嵌着用凸部35に対応する形状の凹部となるように空隙保持部材5の端面52に形成している。そして、嵌着用凹部55の形状は、嵌着用凸部35の外形に対応しており、嵌合された嵌着用凸部35の端面32寄りの側面に当接して、電気抵抗調整層3から離れる外側方向Xへの空隙保持部材5の移動を規制する形状となっている。
【0065】
このように、電気抵抗調整層3に嵌着用凸部35及び空隙保持部材5,5に嵌着用凹部55をそれぞれ形成しても、一般的な圧入工法及び接着工法よりも引き抜き強度が増し、電気抵抗調整層3の熱膨張により空隙保持部材5,5が押し出されても、電気抵抗調整層3が収縮すると、嵌着用凸部35及び嵌着用凹部55によって空隙保持部材5,5も収縮方向に移動するため、電気抵抗調整層3と空隙保持部材5,5との間に隙間が生じることを防止することができる。
【0066】
従って、この導電性部材10を帯電部材としてプロセスカートリッジ、画像形成装置に適用しても、上述したプロセスカートリッジ、画像形成装置で説明したものと同等の作用効果を得ることができる。
【0067】
なお、上述した本実施の形態においては、導電性部材10を具体化した帯電ローラについて主として説明したが、本発明における導電性部材10は、本発明の目的に反しない限り、帯電ローラ以外の帯電部材、例えば、ブレードのようなものであってもかまわない。また、本発明の導電性部材10は、トナー担持体又は転写部材としてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態を示す導電性部材の断面図である。
【図2】図1の導電性部材の組み付け例を説明するための図であり、(a)は組み付け前、(b)は組み付け後をそれぞれ示している。
【図3】導電性部材を像担持体上に配置した状態を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示す画像形成装置の説明図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を示す導電性部材の断面図である。
【図6】図5の導電性部材の組み付け例を説明するための図であり、(a)は組み付け前、(b)は組み付け後をそれぞれ示している。
【図7】従来の帯電ローラを有する電子写真方式の画像形成装置の説明図である。
【図8】従来の帯電部材の一例を示す部分破断図である。
【図9】従来の導電性部材における熱処理による隙間の発生例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0069】
1 導電性支持体
3 電気抵抗調整層
5 空隙保持部材
6 像担持体
10 導電性部材
31,35 嵌着用凸部
51,55 嵌着用凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と像担持体が一定の空隙を保持するように該像担持体と当接して該電気抵抗調整層の両端側に当接して形成された空隙保持部材と、を有する導電性部材において、
前記電気抵抗調整層の両端部又は前記空隙保持部材の何れか一方の当接部に設けられる嵌着用凸部と、該一方の当接部に対向する前記電気抵抗調整層の両端部又は前記空隙保持部材の対向部に設けられ、かつ、該嵌着用凸部を嵌合して固定する嵌着用凹部と、を有していることを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記嵌着用凸部が、前記電気抵抗調整層又は前記空隙保持部材から突出する複数の嵌着用突起であることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記嵌着用凸部が、前記導電性支持体の周囲に周設し、かつ、前記電気抵抗調整層又は前記空隙保持部材から突出するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記空隙保持部材の外周面が像担持体と当接したときに、該像担持体の外周面と前記導電性部材の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように、前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の導電性部材。
【請求項5】
前記電気抵抗調整層の外周面に対する前記空隙保持部材の外周面の高低差が、前記導電性支持体上に設置された該空隙保持部材の外周面と前記導電性支持体上に設置された該電気抵抗調整層の外周面とに施された切削加工、研削加工等の除去加工による一体加工で形成されていることを特徴とする請求項4に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記導電性部材が円筒形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記導電性部材が帯電部材であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項8】
請求項7に記載の帯電部材が被帯電体上に近接配置されるように設けられていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項8に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−41026(P2007−41026A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221923(P2005−221923)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】