説明

導電性高分子アクチュエータおよびその駆動方法

【課題】 電解質托体層で電気分解が発生しない条件において応答速度を向上させた導電性高分子アクチュエータ、前記導電性高分子アクチュエータの駆動方法、前記導電性高分子アクチュエータを利用するロボットを提供することを目的とする。
【解決手段】 酸化還元反応により膨張収縮する導電性高分子膜に対して、酸化する場合には電解質托体層の電位窓の上限に相当する電位を、還元する場合には電解質托体層の電位窓の下限に相当する電位を加えるようにする。このようにすることで、電解質托体層に含まれるイオンの移動速度が最大限高まるようになり、電解質托体層で電気分解が発生しない条件において応答速度を向上させた導電性高分子アクチュエータが得られるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化還元反応に伴って伸縮する導電性高分子アクチュエータ、前記導電性高分子アクチュエータの駆動方法、前記導電性高分子アクチュエータを利用するロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用ロボットなど人間に近い場所において動作する機械に対する要求の高まりに伴い、人間の筋肉のようにしなやかな動作をする人工筋肉アクチュエータへの期待も大きくなっている。人工筋肉アクチュエータの候補として、これまでに様々な方式のアクチュエータが提案されているが、その中の一つとして、導電性高分子を用いたアクチュエータが提案されている。
【0003】
導電性高分子を用いた人工筋肉アクチュエータの一例としては、図6(A)〜(C)に示すようなたわみ変形を発生させるアクチュエータが提案されている。このアクチュエータは、導電性高分子膜であるポリアニリン膜体5a、5bで電解質托体層である固体電解質成形体2を挟み込む構造となっている。スイッチ4をオンすることで、電源3において設定された電位差がポリアニリン膜体5a、5b間に与えられ、一方のポリアニリン膜体5bには陰イオンが固体電解質成形体2から挿入されて伸長し、もう一方のポリアニリン膜体5aからは陰イオンが固体電解質成形体2へ離脱して縮小し、結果としてたわみ変形が発生するようになる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この構成では、電極として作用する二つの導電性高分子膜の変位量の差によりたわみ変形を発生させているが、一方で、電解質托体層を液体もしくはゲル状の物質とすることで、導電性高分子膜の変形が対向する電極の影響を受けないようにして、導電性高分子の伸縮変形を利用したリニアアクチュエータを実現する構成も知られている(例えば、非特許文献1参照)。このような導電性高分子アクチュエータは、2〜3Vの低電圧で筋肉に匹敵するような歪みを発生することから、人工筋肉としての実用化が期待されている。
【0005】
導電性高分子アクチュエータの駆動方法としては、電圧駆動と電流駆動が知られている。電圧駆動の利点としては、電解質托体層の電位窓の範囲で電圧を変化させることで、容易に安定な駆動を行うことができる。しかし、導電性高分子膜は、酸化還元反応に伴って出入りする電荷の量に応じて伸縮することから、電圧駆動ではヒステリシスが大きく、制御性が悪くなる。一方、電流駆動では、導電性高分子膜から出入りする電荷は電流と時間の積として求められることから、電荷を基準としたヒステリシスの小さい駆動が可能になる。しかし、電流駆動の場合、電圧が電解質托体層の電位窓の範囲を超えないように制御しながら駆動する必要がある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−169393号公報
【非特許文献1】Proceedings of SPIE,Vol.4695の8〜16ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
導電性高分子アクチュエータには、家庭用ロボットなどに求められる数Hzの駆動周波数では十分な変位が得られないという問題点がある。これは、導電性高分子アクチュエータが、導電性高分子膜の酸化還元反応に伴って伸縮するアクチュエータであるため、変位の発生には電解質托体層中のイオンの移動が必要となるが、駆動周波数が高くなるとイオンが移動するための時間が不足するようになるためである。イオンが移動する速度は、電解質托体層と、そこに印加される電圧によって決定される。しかし、電解質托体層にその電位窓の範囲を超える電圧を印加すると、電解質托体層において電気分解が発生するようになり、アクチュエータの寿命が低下するようになる。そのため、電解質托体層に印加できる電圧は電位窓の範囲に限定されることになり、応答速度の向上が妨げられることになる。
【0008】
前述した電流駆動の場合、駆動時に電解質托体層の電位窓を超えないように電圧を印加する必要があるため、電圧を抑える必要がある。また、電圧駆動の場合、電圧によって変位を変化させるので、最大限の電圧が常に印加されるわけではない。そのため、これらの駆動方法では応答速度の向上に限界がある。
【0009】
従って、本発明の目的は、かかる点に鑑み、電解質托体層で電気分解が発生しない条件において応答速度を向上させることができる導電性高分子アクチュエータ、前記導電性高分子アクチュエータの駆動方法、前記導電性高分子アクチュエータを利用するロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0011】
本発明によれば、導電性高分子膜と、前記導電性高分子膜と電解質托体層を介して接続される電極とを備え、前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与えることで、酸化還元反応に伴う導電性高分子の膨張収縮変形が発生する導電性高分子アクチュエータの駆動方法において、前記導電性高分子膜に与える電位を、前記導電性高分子膜を酸化するときには前記電解質托体層の電位窓の上限に相当する電位とし、前記導電性高分子膜を還元するときには前記電解質托体層の電位窓の下限に相当する電位とすることを特徴とする導電性高分子アクチュエータの駆動方法を提供する。
【0012】
また、導電性高分子膜と、前記導電性高分子膜と電解質托体層を介して接続される電極と、前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与える駆動電源とを備え、前記駆動電源により前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与えることで、酸化還元反応に伴う導電性高分子の膨張収縮変形が発生する導電性高分子アクチュエータにおいて、
前記導電性高分子アクチュエータを伸張するときには前記導電性高分子膜に前記電解質托体層の電位窓の上限に相当する電位を与え、前記導電性高分子アクチュエータを収縮するときには前記導電性高分子膜に前記電解質托体層の電位窓の下限に相当する電位を与えるように前記駆動電源を制御する制御装置を備えることを特徴とする導電性高分子アクチュエータを提供する。
【0013】
また、前記本発明の導電性高分子アクチュエータにより駆動されるロボットアームを有するロボットを提供する。
【発明の効果】
【0014】
よって、本発明によれば、導電性高分子アクチュエータの応答速度を向上させることができるようになる。すなわち、導電性高分子アクチュエータの駆動を電位窓の限界の電位ではなく、それよりも狭くかつ電解質托体層における電気分解を確実に防止しうる、電位窓の上限及び下限に相当する電位でそれぞれ行うことから、電解質托体層に含まれるイオンの移動速度を向上させることができるようになる。それにより、導電性高分子アクチュエータの伸縮における応答速度を、電解質托体層で電気分解が発生しない条件において向上させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
【0016】
本発明の第1態様によれば、導電性高分子膜と、前記導電性高分子膜と電解質托体層を介して接続される電極とを備え、前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与えることで、酸化還元反応に伴う導電性高分子の膨張収縮変形が発生する導電性高分子アクチュエータの駆動方法において、前記導電性高分子膜に与える電位を、前記導電性高分子膜を酸化するときには前記電解質托体層の電位窓の上限に相当する電位とし、前記導電性高分子膜を還元するときには前記電解質托体層の電位窓の下限に相当する電位とすることを特徴とする導電性高分子アクチュエータの駆動方法を提供する。
【0017】
このような構成によれば、導電性高分子アクチュエータの駆動を印加可能な電位窓の限界の電位ではなく、それよりも狭くかつ電解質托体層における電気分解を確実に防止しうる、電位窓の上限及び下限に相当する電位で行うことから、電解質托体層に含まれるイオンの移動速度を安定して向上させることができるようになる。それにより、伸縮における応答速度を、電解質托体層で電気分解が発生しない条件において向上させることができる導電性高分子アクチュエータの駆動方法を得ることができる。
【0018】
本発明の第2態様によれば、導電性高分子膜と、前記導電性高分子膜と電解質托体層を介して接続される電極と、前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与える駆動電源とを備え、前記駆動電源により前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与えることで、酸化還元反応に伴う導電性高分子の膨張収縮変形が発生する導電性高分子アクチュエータにおいて、前記導電性高分子アクチュエータを伸張するときには前記導電性高分子膜に前記電解質托体層の電位窓の上限に相当する電位を与え、前記導電性高分子アクチュエータを収縮するときには前記導電性高分子膜に前記電解質托体層の電位窓の下限に相当する電位を与えるように前記駆動電源を制御する制御装置を備えることを特徴とする導電性高分子アクチュエータを提供する。
【0019】
このような構成によれば、導電性高分子アクチュエータの駆動を印加可能な電位窓の限界の電位ではなく、それよりも狭くかつ電解質托体層における電気分解を確実に防止しうる、電位窓の上限及び下限に相当する電位で行うことから、電解質托体層に含まれるアニオンの移動速度を安定して向上させることができるようになる。それにより、伸縮における応答速度を、電解質托体層で電気分解が発生しない条件において向上させることかできるアニオン駆動の導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
【0020】
本発明の第3態様によれば、導電性高分子膜と、前記導電性高分子膜と電解質托体層を介して接続される電極と、前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与える駆動電源とを備え、前記駆動電源により前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与えることで、酸化還元反応に伴う導電性高分子の膨張収縮変形が発生する導電性高分子アクチュエータにおいて、前記導電性高分子アクチュエータを伸張するときには前記導電性高分子膜に前記電解質托体層の電位窓の下限に相当する電位を与え、前記導電性高分子アクチュエータを収縮するときには前記導電性高分子膜に前記電解質托体層の電位窓の上限に相当する電位を与えるように前記駆動電源を制御する制御装置を備えることを特徴とする導電性高分子アクチュエータを提供する。
【0021】
このような構成によれば、導電性高分子アクチュエータの駆動を印加可能な電位窓の限界の電位ではなく、それよりも狭くかつ電解質托体層における電気分解を確実に防止しうる、電位窓の上限及び下限に相当する電位で行うことから、電解質托体層に含まれるカチオンの移動速度を安定して向上させることができるようになる。それにより、伸縮における応答速度を、電解質托体層で電気分解が発生しない条件において向上させることができるカチオン駆動の導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
【0022】
本発明の第4態様によれば、前記制御装置によりオンオフ制御されかつ前記駆動電源と前記導電性高分子膜との間の電気の流れを遮断するスイッチをさらに備えていることを特徴とする第2態様もしくは第3態様に記載の導電性高分子アクチュエータを提供する。
【0023】
このような構成によれば、導電性高分子アクチュエータの非動作時には導電性高分子膜と駆動電源との接続を、前記制御装置の制御の基に前記スイッチにより遮断できるようになる。よって、動作時には電解質托体層で電気分解が発生しない条件において応答速度を向上させつつ、非動作時には消費電力を削減できる導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
【0024】
本発明の第5態様によれば、前記導電性高分子膜に流れ込む電流量を測定して前記制御装置に測定結果を出力する電流測定装置をさらに備え、前記制御装置は、前記電流測定装置で測定された電流量を基に前記導電性高分子膜に流れ込んだ電荷量を演算することを特徴とする第2態様〜第4態様のいずれか一つに記載の導電性高分子アクチュエータを提供する。
【0025】
このような構成によれば、導電性高分子膜に流れ込んだ電荷量が前記電流測定装置により明らかになるので、この電荷量の値を基に導電性高分子アクチュエータの変位が前記制御装置で見積もれるようになり、変位の測定を行わない場合でも変位を予想できるようになる。よって、電解質托体層で電気分解が発生しない条件において応答速度を向上させつつ、ヒステリシスの少ない動作が可能な導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
【0026】
本発明の第6態様によれば、前記制御装置は、前記電流測定装置での前記測定結果に基づき演算されて求められた電荷量であって前記導電性高分子膜に流れ込む電荷量に応じて、前記電解質托体層の電位窓の上限又は下限に相当する電位を与えるように、前記駆動電源と前記スイッチのどちらかもしくは両方を制御することを特徴とする第5の態様に記載の導電性高分子アクチュエータを提供する。
【0027】
本発明の第7態様によれば、導電性高分子膜と、前記導電性高分子膜と電解質托体層を介して接続される電極と、前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与える駆動電源とを備え、前記駆動電源により前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与えることで、酸化還元反応に伴う導電性高分子の膨張収縮変形が発生する導電性高分子アクチュエータにおいて、前記導電性高分子膜に一方の端子が接続されるコンデンサと、前記導電性高分子膜の電位が、前記導電性高分子アクチュエータを伸張するときには前記電解質托体層の電位窓の上限に相当する電位となり、前記導電性高分子アクチュエータを収縮するときには前記電解質托体層の電位窓の下限に相当する電位となるように、前記コンデンサのもう一方の端子の電位を調整するように前記駆動電源を制御する制御装置とを備えることを特徴とする導電性高分子アクチュエータを提供する。
【0028】
このような構成によれば、導電性高分子アクチュエータの駆動を印加可能な電位窓の限界の電位ではなく、それよりも狭くかつ電解質托体層における電気分解を確実に防止しうる、電位窓の上限及び下限に相当する電位で行うことから、電解質托体層に含まれるアニオンの移動速度を安定して向上させることができるようになる。それにより、伸縮における応答速度を、電解質托体層で電気分解が発生しない条件において向上させることができるアニオン駆動の導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
【0029】
本発明の第8態様によれば、導電性高分子膜と、前記導電性高分子膜と電解質托体層を介して接続される電極と、前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与える駆動電源とを備え、前記駆動電源により前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与えることで、酸化還元反応に伴う導電性高分子の膨張収縮変形が発生する導電性高分子アクチュエータにおいて、前記導電性高分子膜に一方の端子が接続されるコンデンサと、前記導電性高分子膜の電位が、前記導電性高分子アクチュエータを伸張するときには前記電解質托体層の電位窓の下限に相当する電位となり、前記導電性高分子アクチュエータを収縮するときには前記電解質托体層の電位窓の上限に相当する電位となるように、前記コンデンサのもう一方の端子の電位を調整するように前記駆動電源を制御する制御装置とを備えることを特徴とする導電性高分子アクチュエータを提供する。
【0030】
このような構成によれば、導電性高分子アクチュエータの駆動を印加可能な電位窓の限界の電位ではなく、それよりも狭くかつ電解質托体層における電気分解を確実に防止しうる、電位窓の上限及び下限に相当する電位で行うことから、電解質托体層に含まれるカチオンの移動速度を安定して向上させることができるようになる。それにより、伸縮における応答速度を、電解質托体層で電気分解が発生しない条件において向上させることができるカチオン駆動の導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
【0031】
本発明の第9態様によれば、前記制御装置によりオンオフ制御されかつ前記コンデンサと前記導電性高分子膜との間の電気の流れを遮断するスイッチをさらに備えていることを特徴とする第7態様もしくは第8態様に記載の導電性高分子アクチュエータを提供する。
【0032】
このような構成によれば、導電性高分子アクチュエータの非動作時には導電性高分子膜と駆動電源との接続を、前記制御装置の制御の基に前記スイッチにより遮断できるようになる。よって、動作時には電解質托体層で電気分解が発生しない条件において応答速度を向上させつつ、非動作時には消費電力を削減できる導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
【0033】
本発明の第10態様によれば、前記コンデンサの電圧を測定して前記制御装置に測定結果を出力する電圧測定装置をさらに備え、前記制御装置は、前記電圧測定装置で測定された電圧を基に前記導電性高分子膜に流れ込んだ電荷量を演算することを特徴とする第7態様〜第9態様のいずれか一つに記載の導電性高分子アクチュエータを提供する。
【0034】
このような構成によれば、前記電圧測定装置により導電性高分子膜に流れ込んだ電荷量が明らかになるので、この電荷量の値を基に導電性高分子アクチュエータの変位が前記制御装置により見積もれるようになり、制御を行わない場合でも変位を予想できるようになる。よって、電解質托体層で電気分解が発生しない条件において応答速度を向上させつつ、ヒステリシスの少ない動作が可能な導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
【0035】
本発明の第11態様によれば、前記制御装置は、前記電圧測定装置での前記測定結果に基づき演算されて求められた電荷量であって前記導電性高分子膜に流れ込む電荷量に応じて、前記電解質托体層の電位窓の上限又は下限に相当する電位を与えるように、前記駆動電源と前記スイッチ機構のどちらかもしくは両方を制御することを特徴とする第10態様に記載の導電性高分子アクチュエータを提供する。
【0036】
このような構成によれば、電荷量を基準としたヒステリシスの少ない状態で前記制御装置により制御することができるようになるので、電解質托体層で電気分解が発生しない条件において応答速度を向上させつつ、制御が容易な導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
【0037】
本発明の第12態様によれば、第1〜11のいずれか1つの態様に記載の導電性高分子アクチュエータにより駆動されるロボットアームを有するロボットを提供する。
【0038】
このような構成によれば、前記第1〜11のいずれか1つの態様に記載の導電性高分子アクチュエータにより駆動されるロボットアームを有するロボットを構成することができて、前記導電性高分子アクチュエータの作用効果を奏することができるロボットを得ることができる。
【0039】
以下、本発明の種々の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0040】
(第1実施形態)
図1A〜図1Cは、本発明にかかる第1実施形態の導電性高分子アクチュエータの一例としての人工筋肉アクチュエータ1の概略を示した断面図である。また図2にその外形図を示す。
【0041】
図1A〜図1Cにおいて、11は酸化還元反応に伴って膨張収縮変形する導電性高分子膜からなる矩形の伸縮体である導電性高分子の伸縮板であり、円筒形でかつ底付きのケース21、円板状のフタ22によって囲まれた空間を満たす電解質托体層である電解液13の液中の大略中央部に配置されている。電解液としては、NaPF、TBAPFなどの電解質を水、もしくはプロピレンカーボネートなどの有機溶媒に溶解させたものや、BMIPFなどのイオン性液体が利用可能である。アニオンとしてPFを含む電解質は、導電性高分子であるポリピロールとの組み合わせで大きな変位が得られることから望ましい。
【0042】
導電性高分子の伸縮板11を構成する導電性高分子膜としては、ポリピロール、ポリアニリン、又はポリメトキシアニリン等が利用可能だが、ポリピロールは変位が大きい点で望ましい。また、導電性高分子の伸縮板11の厚みは数十μm以下であるのが望ましい。それより厚いと、導電性高分子の伸縮板11におけるイオンの出入りは表面付近にとどまるようになるため、導電性高分子の伸縮板11の内部では酸化還元時における膨張収縮変形が表面に比べて小さくなってしまい、人工筋肉アクチュエータ1の変位は減少するようになるためである。
【0043】
導電性高分子の伸縮板11の長手方向の両端には、ロッド23a、23bが接続されており、ロッド23aは、フタ22に設けられたシール部材24aを貫通して、ロッド23bは、ケース21に設けられたシール部材24bを貫通して、それぞれ、フタ22及びケース21の外部に突出している。
【0044】
導電性高分子の伸縮板11に接続された配線は、フタ22に備えられたシール部材24cを貫通したのち、スイッチ4及び電流測定装置26を経て駆動電源3に接続されている。電源3のもう一方の極には、対電極25が接続されている。対電極25は、フタ22に備えられたシール部材24dを通して、ケース21内の空間に充填された電解液13と接している。
【0045】
また、電源3及びスイッチ4は、制御装置29によって、電流測定装置26の情報を基に、適宜、電圧調整がされるようにオンオフされ、人工筋肉アクチュエータ1の動作が制御される。
【0046】
次に、この人工筋肉アクチュエータ1の作用を説明する。
【0047】
導電性高分子の伸縮板11が収縮する原因としては、アニオン(陰イオン)の出入り、カチオン(陽イオン)の出入り等が挙げられるが、図1A、図1B及び図1Cによる動作原理の説明では、アニオンの出入りにより膨張収縮が発生する場合について述べることにする。
【0048】
図1Aはスイッチオフの状態で導電性高分子の伸縮板11に電圧を印加していない状態を示し、図1Bはスイッチオンの状態で導電性高分子の伸縮板11に正の電位を印加した場合を示している。導電性高分子の伸縮板11に電圧が印加されると、電圧無印加時に電解質托体層である電解液13に均質に存在したアニオンが、正電極側の導電性高分子の伸縮板11側に引き寄せられ、導電性高分子の伸縮板11内に入り込む酸化過程が開始されるようになる。この酸化過程に伴って導電性高分子の伸縮板11が伸長し、ロッド23a、23bによって導電性高分子の伸縮板11の伸び方向の変位が取り出せるようになる。また、図1Cはスイッチオンの状態で導電性高分子の伸縮板11に負電圧を印加した場合を示す。導電性高分子の伸縮板11に電圧が印加されると、導電性高分子の伸縮板11に存在したアニオンは、対向する対電極25の方に引き寄せられ、電解質托体層である電解液13中に離脱する還元過程が開始されるようになり、この還元過程に伴って導電性高分子の伸縮板11は収縮し、ロッド23a、23bによって縮み方向の変位が取り出せるようになる。
【0049】
一方で、人工筋肉アクチュエータ1を安定して動作させるためには、電解液13において電気分解などの反応が発生しない安定な電位範囲である電位窓に位置する電位において、導電性高分子の伸縮板11の酸化又は還元を行う必要がある。この電位窓は、例えば水溶液の場合における理論値は図3のようになる。図3の縦軸に示された電位は、標準水素電極の電位を基準とした値である。高電位側の線Iは、大気圧において酸素が発生する電位である。また、低電位側の線IIは、大気圧において水素が発生する電位である。水溶液において電気分解が発生しないようにするためには、この二つの線Iと線IIの間で示される電位窓の範囲IIIにおいて駆動を行う必要がある。水溶液における電位窓は、図3の横軸に示されるようにpHによって変化するとともに、電極の種類によっても変化する。水素発生電位が理論値からずれる大きさは水素過電圧と呼ばれ、同様に酸素発生電位の理論値からのずれは酸素過電圧と呼ばれている。例えば、白金電極では水素過電圧は小さく、ほぼ理論値通りとなる。一方、水銀電極では水素過電圧が大きいため、水素発生電位は理論値より1V以上小さくなることが知られている。また、酸素過電圧については、ニッケルが小さく、白金が大きくなることが知られている。そのため、電位窓はアクチュエータ1の動作状態における計測結果をもとに決定するのが望ましい。例えば、導電性高分子の伸縮板11に加える電位を、電流が定常状態であると見なせるぐらいゆっくりと変化させたときの電流―電位曲線を測定し、その結果において電流値がほぼ0となる範囲を、電位窓とすればよい。なお、ここでは水溶液の電位窓について述べたが、非水系の有機溶媒やイオン性液体などの電解液についても、それぞれ固有の電位窓が存在する。例えば、有機溶媒であるアセトニトリルやプロピレンカーボネートは、飽和カロメル電極の電位を基準として、おおよそ−2Vから+2Vの範囲が電位窓となる。また、イオン性液体であるBMIPFは、Ag/Ag電極の電位を基準として、おおよそ−2.5Vから+2.5Vの範囲が電位窓となる。水を含まない有機溶媒やイオン性液体の場合、水溶液とは異なり水素過電圧や酸素過電圧による影響は存在しない。
【0050】
そこで、電源3は、人工筋肉アクチュエータ1に伸び方向の変位を発生させるときには、導電性高分子の伸縮板11に電位窓における上限に相当する電位を与えるようにする。逆に、人工筋肉アクチュエータ1に縮み方向の変位を発生させるときには、導電性高分子の伸縮板11に電位窓における下限に相当する電位を与えるようにする。このようにすることで、電解質托体層である電解液13で電気分解が発生しない条件において導電性高分子の伸縮板11に出入りする時間当たりのアニオンの量を最大にすることができる。また、このときのアニオンの動きに応じて流れた電流が電流測定装置26によって計測されることになる。この電流値を制御装置29で積分することで、導電性高分子の伸縮板11に出入りした電荷量が制御装置29によって演算できるようになる。導電性高分子の伸縮板11で発生する変位は導電性高分子の伸縮板11に出入りした電荷の量にほぼ比例することになるので、導電性高分子の伸縮板11の発生変位の測定を行わなくても、発生変位が予想できるようになる。ここで、電解質托体層における電気分解を確実に防止する見地から、前記電位窓における前記上限に相当する電位とは、電解液13において電気分解などの反応が発生しない安定な電位範囲である電位窓のうちの最大電位に対して5%だけ小さい電位のことであり、前記下限に相当する電位とは、前記電位窓のうちの最小電位に対して5%だけ大きい電位のことであり、実際に有効な電位の制御範囲すなわち実際に有効な電位窓の範囲としては、印加可能な電位範囲の90%となる。ただし、この前記電位窓の電位範囲の90%である、実際の有効な電位の制御範囲は経時変化(例えば大気中の酸素や水と反応することによる電解質托体層の劣化など)により変化するため、経時変化に伴い狭くしていくことが好ましい場合もある。
【0051】
また、電源3及びスイッチ4の状態は、制御装置29によって演算された電荷量を基に制御装置29によって制御される。導電性高分子の伸縮板11の変位はアニオンの出入りによる膨張収縮によって生じることから、導電性高分子の伸縮板11で発生する変位は導電性高分子の伸縮板11に出入りした電荷の量にほぼ比例することになるので、電圧を基準に駆動する場合に比べると、容易に制御性能を向上できるようになる。スイッチ4については、その状態を制御装置29によってオフにすることで、導電性高分子の伸縮板11内に蓄えられた電荷量が変化しないようになるので、電源3を停止させつつ人工筋肉アクチュエータ1を静止させることができる。もちろん、スイッチ4を制御装置29によってオフする代わりに、電源3を電流測定装置26において計測される電流値が零となるように制御装置29によって制御することで、導電性高分子の伸縮板11内に蓄えられた電荷量を一定としても良いが、スイッチ4を制御装置29によってオフにするほうが電源3も停止させることができるので、消費電力の点から望ましい。
【0052】
なお、以上の説明では対電極25の電位について述べなかったが、対電極25についてもその電位が電位窓に含まれる必要がある。しかし、対電極25の表面積を導電性高分子の伸縮板11の表面積の数倍以上、望ましくは数十倍以上に大きくすることによって、その電位変動は抑制することができるので、導電性高分子の伸縮板11の電位にのみ注意すればよいことになる。
【0053】
以上のように、第1実施形態によれば、導電性高分子アクチュエータである人工筋肉アクチュエータ1の駆動を、印加可能な電位窓の限界の電位ではなく余裕を見た範囲内の電位の最大電位と最小電位、言い換えれば、印加可能な電位窓の限界の電位よりも狭くかつ電解質托体層における電気分解を確実に防止しうる、電位窓の上限及び下限にそれぞれ相当する電位でそれぞれ行うことから、電解質托体層に含まれるアニオンの移動速度を安定して向上させることができるようになる。また、電流測定装置26により電流値を計測することによって導電性高分子膜に流れ込んだ電荷量が明らかになるので、この値を基に導電性高分子アクチュエータの変位が見積もれるようになり、電荷量を基準としたヒステリシスの少ない状態で制御することができるようになる。さらに、導電性高分子アクチュエータの非動作時には導電性高分子膜と駆動電源との接続を遮断できるようになる。これにより、動作時には電解質托体層で電気分解が発生しない条件において応答速度を向上させつつ、制御が容易で、非動作時には消費電力を削減できる導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
【0054】
なお、第1実施形態では、電解質托体層を液体としたが、必ずしも液体である必要はなく、ゲル状の固体電解質であっても良い。また、第1実施形態では、アニオン駆動の場合について説明したが、カチオン駆動の場合においても電位と変位の関係を反転させるだけで同様に実施可能である。すなわち、カチオン駆動の場合、アニオン駆動とは逆に、導電性高分子の伸縮板11に負の電位が印加されたときに電解質托体層である電解液13から導電性高分子の伸縮板11にカチオンが入り込み、伸張するようになり、正の電位が印加されたときにカチオンが導電性高分子の伸縮板11から電解液13に離脱して収縮するようになる。それ以外の点に関してはアニオン駆動と同様である。これらいずれの場合についても、本発明に含まれる。
【0055】
また、第1実施形態における人工筋肉アクチュエータを複数本用いたロボットアームの構成例を図4に示す。人工筋肉アクチュエータ1a〜1hを2本1組として拮抗筋構造とする。ロボットアームの各駆動部の片側の人工筋肉アクチュエータを伸張(又は収縮)、ロボットアームの各駆動部のもう片側の人工筋肉アクチュエータを収縮(又は伸張)することで、ロボットアームの各駆動部の軸101〜104に正(逆)回転運動をそれぞれ発生させることができる。具体的には、図4の構成では、人工筋肉アクチュエータ1a、1bによって上下軸101が正逆回転し、以下同様に人工筋肉アクチュエータ1c、1dによって軸102が、人工筋肉アクチュエータ1e、1fによって軸103が、人工筋肉アクチュエータ1g、1hによって軸104がそれぞれ正逆回転するようになっている。
【0056】
詳しくは、4自由度のロボットアームは、固定壁301に対して、上下方向軸沿いに横方向沿いの平面内で正逆回転する第1関節の上下軸101と、上下方向沿いの平面内で正逆回転する第2関節の軸102と、第2腕308と第1腕311との間で相互に正逆回転とする第3関節の軸103と、第1腕311と手313との間で相互に正逆回転とする第4関節の軸104とより構成されている。
【0057】
第1関節101では、上下端部が軸受け304と305で回転自在にかつ上下方向沿いに支持された回転軸303の両側に円形支持体302,302が回転自在に連結され、かつ、人工筋肉アクチュエータ1a、1b(ただし、人工筋肉アクチュエータ1bは人工筋肉アクチュエータ1aの背後に配設されるため図示せず。)の各一端部が固定壁301に連結されるとともに各他端部が前記各円形支持体302の支持軸102(第2関節の軸102)に連結されている。よって、人工筋肉アクチュエータ1a、1bの拮抗駆動により、第1関節の上下軸101回りに横方向沿いの平面内でロボットアームの第1腕311と第2腕308と手313とを一体的に正逆回転運動させることができる。なお、上側の軸受け305は支持棒306で固定壁301に支持されている。
【0058】
第2関節では、回転軸303の両側に固定された2つの円形支持体302,302に、第2腕用リンク308の一端が固定されている。第2腕用リンク308の円形支持体302,302と、回転軸303の一端に直交して固定された支持体307,307との間には、人工筋肉アクチュエータ1c、1dが連結されて、人工筋肉アクチュエータ1c、1dの拮抗駆動により、第2関節の支持軸102である横軸回りに上下方向沿い面内でロボットアームの第1腕311と第2腕308と手313とを一体的に正逆回転させる。
【0059】
第3関節では、第2腕308沿いでかつ支持体310と支持体309,309との間に人工筋肉アクチュエータ1e、1fが連結されて、人工筋肉アクチュエータ1e、1fの拮抗駆動により、第3関節の支持軸103である横軸回りに上下方向沿い面内で第1腕311と手313とを一体的に正逆回転させる。
【0060】
第4関節では、第1腕311沿いでかつ支持体310と、手313の一端に固定された支持体312との間に人工筋肉アクチュエータ1g、1hが連結されて、人工筋肉アクチュエータ1g、1hの拮抗駆動により、第4関節の支持軸104である横軸回りに上下方向沿い面内で手313を正逆回転させる。
【0061】
人工筋肉アクチュエータ1a、1b、人工筋肉アクチュエータ1c、1d、人工筋肉アクチュエータ1e、1f、人工筋肉アクチュエータ1g、1hのそれぞれは、図示しない制御コンピュータ(各人工筋肉アクチュエータの図1に示す制御装置29が統合された制御装置に相当。)により、それぞれの電源3の電圧やスイッチ4の状態が適宜制御され、人工筋肉アクチュエータ1a、1b、人工筋肉アクチュエータ1c、1d、人工筋肉アクチュエータ1e、1f、人工筋肉アクチュエータ1g、1hのそれぞれの収縮・伸張動作が制御される。
【0062】
このような構成とすることで、多自由度を生かし、人間の腕のようにしなやかな動きをするロボットアームが得られる。これにより、特に家庭用途に適したロボットアームを実現することができる。
【0063】
(第2実施形態)
図5A〜図5Cは、本発明にかかる第2実施形態の導電性高分子アクチュエータの一例としての人工筋肉アクチュエータ1の概略を示した断面図である。なお、前述した第1実施形態と同様な機能を果たす部分には、同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0064】
第2実施形態では、第1実施形態における電源3とスイッチ4の間に容量成分要素の一例であるコンデンサ27が挿入されている。また、コンデンサ27の両端の電圧を測定する電圧測定装置28が、第1実施形態における電流測定装置26の代わりにコンデンサ27と並列して設けられている。
【0065】
電源3、スイッチ4は、制御装置29によって、電圧測定装置28の情報を基に、適宜、電圧調整がされるようにオンオフされ、人工筋肉アクチュエータ1の動作が制御される。
【0066】
次に、この人工筋肉アクチュエータ1の作用を説明する。
【0067】
第1実施形態と同様に、アニオンの出入りにより変位が発生する場合について述べることにする。電源3は、人工筋肉アクチュエータに伸び方向の変位を発生させるときには、導電性高分子の伸縮板11に電位窓における上限に相当する電位を与えるようにする。逆に、人工筋肉アクチュエータ1に縮み方向の変位を発生させるときには、導電性高分子の伸縮板11に電位窓における下限に相当する電位を与えるようにする。その際、電源3が発生すべき電圧は、電圧測定装置28によって計測された電圧値を基に制御装置29によって決定される。すなわち、電源3が発生すべき電圧は、第1実施形態において電圧3が発生していた電圧からコンデンサ27の電圧を引いた値となる。このようにすることで、電解質托体層である電解液13で電気分解が発生しない条件において導電性高分子の伸縮板11に出入りする時間当たりのアニオンの量を最大にすることができる。また、このときの導電性高分子の伸縮板11に出入りした電荷の量は、電圧測定装置28による計測値の変化とコンデンサ27の容量によって容易に制御装置29によって演算できるようになる。
【0068】
以上のように、第2実施形態によれば、導電性高分子アクチュエータの駆動を、印加可能な電位窓の限界の電位ではなく余裕を見た範囲内の電位の最大電位と最小電位、言い換えれば、印加可能な電位窓の限界の電位よりも狭くかつ電解質托体層における電気分解を確実に防止しうる、電位窓の上限及び下限にそれぞれ相当する電位でそれぞれ行うことから、電解質托体層に含まれるアニオンの移動速度を向上させることができるようになる。また、電圧測定装置28により電圧値を計測することによって導電性高分子膜に流れ込んだ電荷量を容易に得ることができるようになるので、この値を基に導電性高分子アクチュエータの変位が見積もれるようになり、電荷量を基準としたヒステリシスの少ない状態で制御することができるようになる。さらに、導電性高分子アクチュエータの非動作時には導電性高分子膜と駆動電源との接続を遮断できるようになる。これにより、動作時には電解質托体層で電気分解が発生しない条件において応答速度を向上させつつ、制御が容易で、非動作時には消費電力を削減できる導電性高分子アクチュエータを得ることができる。
【0069】
なお、第2実施形態では、アニオン駆動の場合について説明したが、電位と変位の関係を反転させたカチオン駆動の場合においても同様に実施可能である。これらいずれの場合についても、本発明に含まれる。
【0070】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明にかかる導電性高分子アクチュエータは、導電性高分子アクチュエータの伸縮における応答速度を、電解質托体層で電気分解が発生しない条件において向上させられるものであり、人工筋肉アクチュエータ等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1A】本発明の第1実施形態による人工筋肉アクチュエータにおいて、スイッチオフの状態で導電性高分子の伸縮板に電圧を印加していない状態での前記人工筋肉アクチュエータの概略を示す断面図である。
【図1B】前記第1実施形態による人工筋肉アクチュエータにおいて、導電性高分子の伸縮板に正の電位を印加した場合での前記人工筋肉アクチュエータの概略を示す断面図である。
【図1C】前記第1実施形態による人工筋肉アクチュエータにおいて、導電性高分子の伸縮板に負電圧を印加した場合での前記人工筋肉アクチュエータの概略を示す断面図である。
【図2】前記第1実施形態による人工筋肉アクチュエータの概略を示す外形の斜視図である。
【図3】前記第1実施形態による人工筋肉アクチュエータの電位窓の一例としての、水溶液の場合における電位範囲の理論値を示した図である。
【図4】本発明の第1実施例における人工筋肉アクチュエータを用いたロボットアームの概略図である。
【図5A】本発明の第2実施形態による人工筋肉アクチュエータにおいて、スイッチオフの状態で導電性高分子の伸縮板に電圧を印加していない状態での前記人工筋肉アクチュエータの概略を示す断面図である。
【図5B】本発明の第2実施形態による人工筋肉アクチュエータにおいて、導電性高分子の伸縮板に正の電位を印加した場合での前記人工筋肉アクチュエータの概略を示す断面図である。
【図5C】本発明の第2実施形態による人工筋肉アクチュエータにおいて、導電性高分子の伸縮板に負電圧を印加した場合での前記人工筋肉アクチュエータの概略を示す断面図である。
【図6】(A)〜(C)はそれぞれ従来構成の人工筋肉アクチュエータの概略を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h 人工筋肉アクチュエータ
2 固体電解質成形体
3 電源
4 スイッチ
5a、5b ポリアニリン膜体
11、11a、11b、11c 導電性高分子の伸縮板
13 電解液
21 ケース
22 フタ
23a、23b ロッド
24a、24b、24c、24d シール部材
25 対電極
26 電流測定装置
27 コンデンサ
28 電圧測定装置
29 制御装置
101、102、103、104 回転軸
301 固定壁
302 円形支持体
303 回転軸
304、305 軸受け
306 支持棒
307 支持体
308 第2腕
309、310 支持体
311 第1腕
312 支持体
313 手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子膜と、前記導電性高分子膜と電解質托体層を介して接続される電極とを備え、前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与えることで、酸化還元反応に伴う導電性高分子の膨張収縮変形が発生する導電性高分子アクチュエータの駆動方法において、
前記導電性高分子膜に与える電位を、前記導電性高分子膜を酸化するときには前記電解質托体層の電位窓の上限に相当する電位とし、前記導電性高分子膜を還元するときには前記電解質托体層の電位窓の下限に相当する電位とすることを特徴とする導電性高分子アクチュエータの駆動方法。
【請求項2】
導電性高分子膜と、前記導電性高分子膜と電解質托体層を介して接続される電極と、前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与える駆動電源とを備え、前記駆動電源により前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与えることで、酸化還元反応に伴う導電性高分子の膨張収縮変形が発生する導電性高分子アクチュエータにおいて、
前記導電性高分子アクチュエータを伸張するときには前記導電性高分子膜に前記電解質托体層の電位窓の上限に相当する電位を与え、前記導電性高分子アクチュエータを収縮するときには前記導電性高分子膜に前記電解質托体層の電位窓の下限に相当する電位を与えるように前記駆動電源を制御する制御装置を備えることを特徴とする導電性高分子アクチュエータ。
【請求項3】
導電性高分子膜と、前記導電性高分子膜と電解質托体層を介して接続される電極と、前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与える駆動電源とを備え、前記駆動電源により前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与えることで、酸化還元反応に伴う導電性高分子の膨張収縮変形が発生する導電性高分子アクチュエータにおいて、
前記導電性高分子アクチュエータを伸張するときには前記導電性高分子膜に前記電解質托体層の電位窓の下限に相当する電位を与え、前記導電性高分子アクチュエータを収縮するときには前記導電性高分子膜に前記電解質托体層の電位窓の上限に相当する電位を与えるように前記駆動電源を制御する制御装置を備えることを特徴とする導電性高分子アクチュエータ。
【請求項4】
前記制御装置によりオンオフ制御されかつ前記駆動電源と前記導電性高分子膜との間の電気の流れを遮断するスイッチをさらに備えていることを特徴とする請求項2もしくは請求項3に記載の導電性高分子アクチュエータ。
【請求項5】
前記導電性高分子膜に流れ込む電流量を測定して前記制御装置に測定結果を出力する電流測定装置をさらに備え、前記制御装置は、前記電流測定装置で測定された電流量を基に前記導電性高分子膜に流れ込んだ電荷量を演算することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータ。
【請求項6】
前記制御装置は、前記電流測定装置での前記測定結果に基づき演算されて求められた電荷量であって前記導電性高分子膜に流れ込む電荷量に応じて、前記電解質托体層の電位窓の上限又は下限に相当する電位を与えるように、前記駆動電源と前記スイッチのどちらかもしくは両方を制御することを特徴とする請求項5に記載の導電性高分子アクチュエータ。
【請求項7】
導電性高分子膜と、前記導電性高分子膜と電解質托体層を介して接続される電極と、前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与える駆動電源とを備え、前記駆動電源により前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与えることで、酸化還元反応に伴う導電性高分子の膨張収縮変形が発生する導電性高分子アクチュエータにおいて、
前記導電性高分子膜に一方の端子が接続されるコンデンサと、前記導電性高分子膜の電位が、前記導電性高分子アクチュエータを伸張するときには前記電解質托体層の電位窓の上限に相当する電位となり、前記導電性高分子アクチュエータを収縮するときには前記電解質托体層の電位窓の下限に相当する電位となるように、前記コンデンサのもう一方の端子の電位を調整するように前記駆動電源を制御する制御装置とを備えることを特徴とする導電性高分子アクチュエータ。
【請求項8】
導電性高分子膜と、前記導電性高分子膜と電解質托体層を介して接続される電極と、前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与える駆動電源とを備え、前記駆動電源により前記導電性高分子膜と前記電極との間に電位差を与えることで、酸化還元反応に伴う導電性高分子の膨張収縮変形が発生する導電性高分子アクチュエータにおいて、
前記導電性高分子膜に一方の端子が接続されるコンデンサと、前記導電性高分子膜の電位が、前記導電性高分子アクチュエータを伸張するときには前記電解質托体層の電位窓の下限に相当する電位となり、前記導電性高分子アクチュエータを収縮するときには前記電解質托体層の電位窓の上限に相当する電位となるように、前記コンデンサのもう一方の端子の電位を調整するように前記駆動電源を制御する制御装置とを備えることを特徴とする導電性高分子アクチュエータ。
【請求項9】
前記制御装置によりオンオフ制御されかつ前記コンデンサと前記導電性高分子膜との間の電気の流れを遮断するスイッチをさらに備えていることを特徴とする請求項7もしくは請求項8に記載の導電性高分子アクチュエータ。
【請求項10】
前記コンデンサの電圧を測定して前記制御装置に測定結果を出力する電圧測定装置をさらに備え、前記制御装置は、前記電圧測定装置で測定された電圧を基に前記導電性高分子膜に流れ込んだ電荷量を演算することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータ。
【請求項11】
前記制御装置は、前記電圧測定装置での前記測定結果に基づき演算されて求められた電荷量であって前記導電性高分子膜に流れ込む電荷量に応じて、前記電解質托体層の電位窓の上限又は下限に相当する電位を与えるように、前記駆動電源と前記スイッチのどちらかもしくは両方を制御することを特徴とする請求項10に記載の導電性高分子アクチュエータ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の導電性高分子アクチュエータにより駆動されるロボットアームを有するロボット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−67719(P2006−67719A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248213(P2004−248213)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】