説明

導電材およびその製造方法

【課題】柔軟で伸縮可能であり、かつ伸縮しても導電性の変化が少ない導電材を提供する。
【解決手段】本発明に係る導電材は、有機繊維からなる螺旋状をなす糸が焼成、炭化されて成り、伸縮可能であることを特徴とする。また、有機繊維からなる螺旋状をなす糸により織布、編布もしくは不織布状に形成された布状体が焼成、炭化されて成り、柔軟性を有し、伸縮可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性を有し、伸縮可能であり、かつ伸縮しても導電性の変化が少ない導電材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柔軟で伸縮性をもった導電材(例えば電極材)として、ゴムやエラストマー等の伸縮材料中に導電性フィラーを含有させてなる材料が知られている。
また、生体用電極や圧力センサー用電極等の各種電極用素材として導電性繊維と非導電性繊維を一定の割合で交編させて成る導電性を有する伸縮性ニットが報告されている(特許文献1)。
また、柔軟な紙を作るためにバネ状に形状固定した繊維を用いる報告がなされている。該報告では、セルロース系繊維である銅アンモニアレーヨン繊維を芯繊維であるポリビニルアルコール繊維に巻きつけた糸を、適切な長さに切断し、水に溶かして紙料化し、製紙法で抄紙して、シートに伸びと弾力を付与している(非特許文献1)。
【特許文献1】実開平6−59488号公報
【非特許文献1】工業材料2005Vol.53No.9p64−67
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
柔軟で伸縮性のある電極材として公知の導電性ゴムおよび導電性エラストマーにおいて、導電性と柔軟性および伸縮性は、導電性フィラーの含有量と不可分の関係にあり、導電性フィラーの含有量を増やし導電性を向上させると柔軟性と伸縮性が損なわれ、逆に導電性フィラーの含有量を減少させると導電性が低下するという課題がある。
【0004】
また、特許文献1に記載されている電極用素材は、経緯の伸縮性および導電性に明確な異方性があり、一方向に伸長された場合、他方向は収縮する編地の性質上、経緯二軸方向への伸縮は困難であり、電極としての使用に制限がある。
また、非特許文献1に記載の製紙法は、形状固定できる繊維が限定されており、なおかつ製紙後の繊維のバネ形状を保持できない問題がある。
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたもので、その目的とするところは、柔軟で伸縮可能であり、かつ伸縮しても導電性の変化が少ない導電材およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る導電材は、有機繊維からなる螺旋状をなす糸が焼成、炭化されて成り、伸縮可能であることを特徴とする。
また本発明に係る導電材は、有機繊維からなる螺旋状をなす糸により織布、編布もしくは不織布状に形成された布状体が焼成、炭化されて成り、柔軟性を有し、伸縮可能であることを特徴とする。この導電材は少なくとも二軸方向に伸縮可能である。
【0006】
前記有機繊維からなる螺旋状をなす糸の螺旋の巻き数が、10〜10回/mであると好適である。
前記有機繊維からなる螺旋状をなす糸が絹糸、特に絹紡糸であると好適である。
【0007】
また本発明に係る導電材の製造方法は、芯材に螺旋状に巻回した有機繊維からなる糸を、焼成し、炭化する過程で前記芯材を除去することにより、伸縮可能な導電材に形成することを特徴とする。
【0008】
また本発明に係る導電材の製造方法は、芯材に螺旋状に巻回した有機繊維からなる糸により、織布、編布もしくは不織布状に形成された布状体を、前記芯材を除去した後焼成し、炭化させることにより、柔軟性を有し、伸縮可能な導電材に形成することを特徴とする。
この場合、前記芯材に水溶性ビニロン糸を用い、前記布状体を湯浴中に浸漬して芯材を溶解して除去することができる。
【0009】
また本発明に係る導電材の製造方法は、芯材に螺旋状に巻回した有機繊維からなる糸により、織布、編布もしくは不織布状に形成された布状体を、焼成し、炭化する過程で前記芯材を除去することにより、柔軟性を有し、伸縮可能な導電材に形成することを特徴とする。
【0010】
上記各製造方法において、芯材に螺旋状に複数本巻回した有機繊維からなる糸を用いると好適である。
また、前記芯材に、前記有機繊維からなる螺旋状をなす糸の太さの2〜1000倍の太さのものを用いるとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る導電材およびその製造方法によれば、柔軟で伸縮可能であり、伸縮しても導電性の変化が少ない導電材を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明に係る導電材およびその製造方法の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
まず、導電材の第1の製造方法は、芯材に螺旋状に巻回した有機繊維からなる糸により、織布、編布もしくは不織布状に形成された布状体を、前記芯材を除去した後焼成し、炭化させることにより、柔軟性を有し、伸縮可能な導電材に形成することを特徴とする。
【0013】
すなわち、まず、有機繊維からなる糸を芯材に螺旋状に巻きつける。この芯材に巻きつけた状態の糸により、織布、編布もしくは不織布状の布状体に形成する。この場合、従来の織機、編機、不織布製造装置が利用可能である。
次いで、この布状体から芯材を除去する。
芯材を除去するには、芯材に水溶性糸を用い、布状体を湯浴中に浸漬して芯材を溶解して除去するようにすると容易に除去できる。溶解ならびに乾燥の条件を適宜調整することで、糸の螺旋状態は維持できる。
【0014】
次に芯材を除去した布状体を、炉中で、非酸化雰囲気下で焼成し、炭化させることによって布状の炭化物からなる導電材を製造することができる。焼成し、炭化することによって、糸の螺旋状態も固定される。
焼成温度、時間等の焼成条件を適宜設定することで、導電材の導電性を調整できる。すなわち、より高温で焼成すると導電性が向上し、低温で焼成すると導電性が低下する。導電材の用途によって、焼成条件を適宜設定するようにするとよい。
【0015】
有機繊維からなる糸は、天然繊維からなる糸、合成繊維からなる糸のいずれであってもよい。
天然繊維からなる糸は、絹糸を好適に用いることができる。すなわち、絹糸からなる布状体を焼成するとより柔軟性の高い布状焼成体が得られるからである。また絹糸のうち、螺旋の形態維持性から、絹紡糸が特に好適である。絹紡糸は短繊維を撚り合わせたものであって、腰が強くないので、螺旋状態を好適に維持する。
その他、天然繊維としてセルロース系の繊維を用いた糸も用いることができる。
【0016】
上記のようにして、炭化した螺旋状の糸による布状をなす導電材が得られ、この導電材は柔軟性を有し、また伸縮性を有し、伸縮した際の導電性の変化も少ない。織布もしくは編布の布状体を焼成したものは二軸方向に伸縮性を有し、不織布状の布状体を焼成したものは等方的に全ての方向に伸縮性を有する。
伸縮した際にも導電性の変化が少ないのは、伸縮したとしても、螺旋が伸縮するだけであって、螺旋の糸の長さ自体が変化するものではないからである。
【0017】
伸縮性については、螺旋糸でなく、単なる直線状の糸を用いた場合、織り布は斜め方向にわずかな伸縮性を有するが、経および緯方向への伸縮性はない。不織布においても等方的にわずかな伸縮性を有するのみである。編み布は伸縮性を有するものの、異方性があり、導電材の使用に制限が生じる。
本実施の形態の導電材は、炭化された螺旋の糸が伸縮する。したがって、例えばこの糸で構成された織り布は経緯二軸方向に互いに影響されることなく伸縮が可能となる。
【0018】
このように経緯二軸方向等に互いに影響されることなく伸縮が可能なことによって、導電材としての用途が広がる。
例えば、高分子シートからなる電歪アクチュエータの電極材として好適に用いることができる。この電歪アクチュエータは、高分子シートの両面に電極材を取り付け、両電極に通電することによって高分子シートが変形するものであるが、本実施の形態の導電材を電極材に用いることによって、該電極材が二軸方向等に自在に伸縮するので、高分子シートの変形を阻害することがない。
【0019】
また、生体に貼り付けて使用する各種センサの電極としても好適に用いることができる。すなわち、体の動きに追随して電極材も変形するので、センサ自体に悪影響を及ぼすことがない。
【0020】
芯材となる糸の太さは、芯材に螺旋状に巻回する糸の太さの2〜1000倍の太さのものを用いると好適である。芯材が太いほど、螺旋(コイル)の径が大きくなるので、柔軟性が増す。また、巻きつける糸が細いほど柔軟性が増す。芯材の太さを、巻きつける糸の太さの2〜1000倍の太さとすることによって、用途に合わせた種々の柔軟度の導電材とすることができる。
【0021】
また、有機繊維からなる螺旋状をなす糸の螺旋の巻き数を、10〜10回/mとするとよい。巻き密度が高いほど柔軟性が増す。
このように、螺旋状に形状固定された糸はコイルスプリング同様の伸縮性を有し、該糸の太さ、コイル径、巻き数、糸の材質等を変えることで、導電材の物理的(力学的)性質を制御可能となる。
また、導電材の導電性は、巻きつける糸の材質、焼成条件、導電材を構成する布の密度(単位長さ当たりの経糸あるいは緯糸の本数)を変えることで制御可能となる。
【0022】
なお、上記実施の形態では、芯材に螺旋状に巻回した有機繊維からなる糸により、織布、編布もしくは不織布状に形成された布状体を、前記芯材を除去した後焼成し、炭化させることにより電極材を形成したが、芯材の除去は、布状体を、焼成し、炭化する過程で分解して除去するようにしてもよい(第2の方法)。
すなわち、芯材に、焼成工程の温度でガス化して分解するような有機繊維材料を用いるようにする。このような有機繊維材料として、ポリエチレン糸を用いることができる。
【0023】
また、上記実施の形態では、芯材に螺旋状に巻回した有機繊維からなる糸により、織布、編布もしくは不織布状に形成された布状体を焼成して、布状をなす導電材に形成したが、芯材に螺旋状に巻回した有機繊維からなる糸を、焼成し、線状の導電材に形成してもよい。この場合、芯材を除去するには、芯材に螺旋状に巻回した有機繊維からなる糸を、焼成し、炭化する過程で芯材を除去するようにするとよい。すなわち、芯材に、焼成工程の温度でガス化して分解するような有機繊維材料を用いるようにする。このような有機繊維材料として、ポリエチレン糸を用いることができる。
【0024】
なお、上記いずれの実施の形態においても、芯材に螺旋状に巻回する糸の本数は2本(後記の実施例4のS撚りおよびZ撚り)、または3本(後記の実施例3の組紐)が好適である。ある一定の太さの芯材に対して、巻きつける糸が太いと巻き数が制限される。巻き数は、コイルの柔軟性や最大伸張率に関わるため、柔軟材料としては、太い芯材に細い巻き糸(炭素繊維化する糸)が好ましい。しかしながら、巻き糸が細いと導電性が低下する。そこで、巻き糸を複数本とすることで、柔軟性と導電性を両立させるようにするのが好ましい。
【0025】
なお、芯材に巻きつける糸が1本の1本糸では、導電性が低く、機械的強度も低いが、この糸により布状体に形成し、この布状体を焼成して導電材とする場合ならば1本糸でも使用可能である。また、線状の導電材として用いるには、1本糸の場合、太い糸を用いるとよい。
一方、4本以上の糸を巻回したものを用いる場合には、伸縮性がよくなく、芯材への被覆部分が多くなり、芯材の除去が困難になる。また、4本糸以上の場合、撚糸の生産性上も好ましくない。
【実施例】
【0026】
実施例1
芯材となる水溶性ビニロン糸(600デニール)の周囲に絹紡糸(EC140番双糸)を巻き数1500回/mで螺旋状に巻きつけた糸を、経糸および緯糸に用い、織り密度が経糸37本/吋×緯糸34本/吋の平織地を作製し、70℃湯浴中に浸漬して水溶性ビニロンを除去し、乾燥した後に、非酸化性雰囲気の炉中で、700℃を6時間保持して第一次焼成を行い、一旦常温まで冷却した後、1400℃を3時間保持して第二次焼成し、炭化させることで、炭素繊維からなる螺旋状の糸で構成された厚さ0.35mmの布状の導電材試料を得た。
【0027】
実施例2
芯材となる水溶性ビニロン糸(300デニール)の周囲に絹紡糸(EC140番双糸)を巻き数1500回/mで螺旋状に巻きつけた糸を、経糸および緯糸に用い、織り密度が経糸50本/吋×緯糸47本/吋の平織地を作製し、70℃湯浴中に浸漬して水溶性ビニロンを除去し、乾燥した後に、非酸化性雰囲気の炉中で、700℃を6時間保持して第一次焼成を行い、一旦常温まで冷却した後、1400℃を3時間保持して第二次焼成し、炭化させることで、炭素繊維からなる螺旋状の糸で構成された厚さ0.34mmの布状の導電材試料を得た。
【0028】
比較例1
天竺丸編地(絹紡糸MC210番双糸、32ゲージ)を非酸化性雰囲気の炉中で、700℃を6時間保持して第一次焼成を行い、一旦常温まで冷却した後、1400℃を3時間保持して第二次焼成し、炭化させることで、炭素繊維からなる厚さ0.15mmの焼成天竺丸編地試料を得た。
【0029】
比較例2
シルクフライス編地(絹紡糸EC140番双糸、22ゲージ)を非酸化性雰囲気の炉中で、700℃を6時間保持して第一次焼成を行い、一旦常温まで冷却した後、1400℃を3時間保持して第二次焼成し、炭化させることで、炭素繊維からなる厚さ0.32mmの焼成天竺丸編地試料を得た。
【0030】
〔伸長に対する外力および電気抵抗の測定〕
上記各導電材試料の伸長に対する外力および電気抵抗を測定した。幅10mmに切り出した短冊状の導電材試料を、10mmの間隔をおいて上部金属治具および下部金属治具で固定し、上部金属治具と絶縁材シャフトで接続されたデジタルフォースゲージを垂直に上昇させ、導電材試料の伸長時の外力を測定した。また、上部金属治具および下部金属治具を電源に接続し、当該導電材試料を含む回路を構成し、伸長時に測定された印加電圧と電流の関係からオームの法則を用いて電気抵抗値を算出した。
なお、以下、「伸長ひずみ」とは次の式で定義される値を指す。
伸長ひずみ=(伸長後の導電材長さ−伸長前の導電材長さ)/伸長前の導電材長さ。
伸長前の導電材の長さを10mmとした。
【0031】
測定結果を図1〜図6に示す。
図1および図2は、実施例1および実施例2で得られた螺旋状糸により構成された導電材試料の伸長ひずみに対する外力および電気抵抗値である。図1において、伸長ひずみに対する外力が小さいほど柔軟性の大きいことを意味する(同じ外力に対して伸長ひずみが大きい)。図1より、芯材となる糸の太い方(600デニール)が、得られた電極材の柔軟性が大きいことがわかる。また、図2より、導電材の抵抗値は、伸長ひずみの大きさにかかわりなくほぼ一定であることがわかる。すなわち、導電性は導電材の伸縮により大きな変化を示さないことがわかる。また図2より、布状導電材の布の密度が大きい方(実施例2:300デニール)が電気抵抗が低い、すなわち導電性に優れることがわかる。
【0032】
図3〜図6は、実施例1で得られた導電材試料、比較例1および2で得られた試料について、一軸方向における伸長ひずみに対する外力および電気抵抗値のプロット図である。
図3、図4より、経方向、緯方向いずれも、実施例1(螺旋状織地)の導電材の方が柔軟性に富むことがわかる。また、図5、図6より、実施例1の導電材の場合、経方向、緯方向のいずれの方向への伸長の場合も、電気抵抗がほぼ一定、すなわち導電性の変化が少ないことがわかる。
なお、図2、図5、図6からわかるように、実施例1の導電材は、いずれも電気抵抗が30Ω/cm以下であって、導電材として十分な導電性を備えていることがわかる。
【0033】
伸長時の観察より、比較例の単なる編地試料では垂直方向に伸長を受けると、水平方向に収縮が起こる。対して、実施例の導電材試料では、垂直方向に伸長を受けても水平方向への収縮は起こらなかった。これは、実施例の導電材試料においては、螺旋状の糸自身が単独で伸縮可能であるため、ある一軸方向の伸縮を、他方向の伸縮と無関係に行い得るためである。この結果は、実施例の導電材試料が、二軸方向に伸縮可能であることを示している。
【0034】
また、実施例の導電材試料は、伸長による測定間距離の増加にもかかわらず、電気抵抗値が一定の値を保った。この結果は、伸長に伴って試料全体の長さは変化するものの、当該導電材試料を構成する螺旋状の糸は引き伸ばされるだけであり、導電経路の長さは変化しないことに由来する。
【0035】
実施例3
芯材たるポリエチレン糸(400デニール)1本に、3本の絹紡糸(140番双糸)を巻きつけた組紐を作製し、非酸化性雰囲気の炉中700℃で6時間焼成した。
図7に、焼成前の上記組紐の拡大写真、図8に焼成後の組紐の拡大写真を示す。図7では、太く滑らかな表面をもつポリエチレン糸に、絹紡糸が絡むように存在しているのがわかる。図8に示す焼成物では、ポリエチレン糸が除去され、絹紡糸の焼成物である炭素繊維のみが残っている。この炭素繊維を、線状の導電材として用いることができる。
【0036】
実施例4
芯材たるポリエチレン糸(400デニール)の周囲に絹紡糸(EC140番双糸)1本をZ撚り方向に巻き数1500回/mで螺旋状に巻きつけ、その上から絹紡糸(EC140番双糸)1本をS撚り方向に巻き数1500回/mで螺旋状に巻きつけた試料を作製し、非酸化性雰囲気の炉中700℃を6時間保持して第一次焼成を行い、一旦常温まで冷却した後、非酸化性雰囲気の炉中1400℃を3時間保持して第二次焼成し、炭化させることで、炭素繊維からなる螺旋状の糸を得た。この炭素繊維を、線状の導電材として用いることができる。
【0037】
図9は焼成前の糸の拡大写真、図10は焼成後の糸の拡大写真である。焼成により、巻きつけられた絹紡糸は炭化し、芯材たるポリエチレン糸は除去されているのが分かる。
【0038】
[伸長に対する外力および電気抵抗の測定]
上記炭素繊維からなる螺旋状の糸の伸長ひずみに対する外力および電気抵抗を測定した。10mmの間隔をおいて、上部金属治具および下部金属治具に4本の当該糸試料を固定し、上部金属治具と絶縁材シャフトで接続されたデジタルフォースゲージを垂直に上昇させ、当該糸試料の伸長時の外力を測定した。また、上部金属治具および下部金属治具を電源に接続し、当該糸試料を含む回路を構成し、伸長時に測定された印加電圧と電流の関係からオームの法則を用いて電気抵抗値を算出した。
【0039】
測定結果を図11に示す。図11より、柔軟性を有し、伸縮可能な導電材を形成できることが確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】螺旋状糸により構成された導電材試料の伸長ひずみに対する外力のプロット図である。
【図2】螺旋状糸により構成された導電材試料の伸長ひずみに対する電気抵抗値のプロット図である。
【図3】各焼成試料の緯方向における伸長ひずみに対する外力のプロット図である。
【図4】各焼成試料の経方向における伸長ひずみに対する外力のプロット図である。
【図5】各焼成試料の緯方向における伸長ひずみに対する電気抵抗値のプロット図である。
【図6】各焼成試料の経方向における伸長ひずみに対する電気抵抗値のプロット図である。
【図7】実施例3で作製されたポリエチレン糸(400デニール)1本と絹紡糸(140番双糸)3本からなる組紐の拡大写真である。
【図8】実施例3で作製されたポリエチレン糸(400デニール)1本と絹紡糸(140番双糸)3本からなる組紐の焼成物の拡大写真である。
【図9】実施例4で作製されたポリエチレン糸(400デニール)1本と絹紡糸(140番双糸)2本からなる糸(組紐)の拡大写真である。
【図10】実施例4で作製されたポリエチレン糸(400デニール)1本と絹紡糸(140番双糸)2本からなる糸(組紐)の焼成物の拡大写真である。
【図11】実施例4の炭素繊維からなる螺旋状の糸の伸長ひずみに対する外力および電気抵抗を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維からなる螺旋状をなす糸が焼成、炭化されて成り、伸縮可能であることを特徴とする導電材。
【請求項2】
有機繊維からなる螺旋状をなす糸により織布、編布もしくは不織布状に形成された布状体が焼成、炭化されて成り、柔軟性を有し、伸縮可能であることを特徴とする導電材。
【請求項3】
二軸方向に伸縮可能であることを特徴とする請求項2記載の導電材。
【請求項4】
前記有機繊維からなる螺旋状をなす糸の螺旋の巻き数が、10〜10回/mであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の導電材。
【請求項5】
前記有機繊維からなる螺旋状をなす糸が絹糸であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の導電材。
【請求項6】
前記絹糸が絹紡糸であることを特徴とする請求項5記載の導電材。
【請求項7】
芯材に螺旋状に巻回した有機繊維からなる糸を、焼成し、炭化する過程で前記芯材を除去することにより、伸縮可能な導電材に形成することを特徴とする導電材の製造方法。
【請求項8】
芯材に螺旋状に巻回した有機繊維からなる糸により、織布、編布もしくは不織布状に形成された布状体を、前記芯材を除去した後焼成し、炭化させることにより、柔軟性を有し、伸縮可能な導電材に形成することを特徴とする導電材の製造方法。
【請求項9】
芯材に螺旋状に巻回した有機繊維からなる糸により、織布、編布もしくは不織布状に形成された布状体を、焼成し、炭化する過程で前記芯材を除去することにより、柔軟性を有し、伸縮可能な導電材に形成することを特徴とする導電材の製造方法。
【請求項10】
前記芯材に水溶性ビニロン糸を用い、前記布状体を湯浴中に浸漬して芯材を溶解して除去することを特徴とする請求項8記載の導電材の製造方法。
【請求項11】
芯材に螺旋状に複数本巻回した有機繊維からなる糸を用いることを特徴とする請求項7〜10いずれか1項記載の導電材の製造方法。
【請求項12】
前記芯材に、前記有機繊維からなる螺旋状をなす糸の太さの2〜1000倍の太さのものを用いることを特徴とする請求項7〜11いずれか1項記載の導電材の製造方法。
【請求項13】
前記有機繊維からなる螺旋状をなす糸の螺旋の巻き数を、10〜10回/mとすることを特徴とする請求項7〜12いずれか1項記載の導電材の製造方法。
【請求項14】
前記有機繊維からなる螺旋状をなす糸に絹糸を用いることを特徴とする請求項7〜13いずれか1項記載の導電材の製造方法。
【請求項15】
前記絹糸が絹紡糸であることを特徴とする請求項14記載の導電材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−112720(P2008−112720A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231955(P2007−231955)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】