説明

導電薄膜

【課題】エッチングによって一部が露出したガラス基板とエッチングされていない透明導電層との間に屈折率の差が大きいため、スペクトル上に顕著なバラツキが存在し、ユーザの視覚に不明瞭な画像又はブロックが生じ、若しくは顕著な境界線が現われてしまい、電子製品の品質が低下するという欠点を解決するとともに、高いデザイン自由度を有する導電薄膜を提供する。
【解決手段】基板10と、基板上に設けられた反射率調整構造12と、反射率調整構造上に設けられることで、基板との間に反射率調整構造が介在され、反射率調整構造の一部を被覆するための透明導電層14と、を備え、透明導電層は光が所定の入射角で入射された場合、第1の反射率で前記光を反射し、反射率調整構造は前記光が前記入射角で入射された場合、第2の反射率で前記光を反射し、第1の反射率と第2の反射率との差は所定の第1の閾値よりも小さいことを特徴とする導電薄膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電薄膜に関し、特にエッチング領域と非エッチング領域との間の色差を消去することができる導電薄膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製造技術の進歩や各種の応用面での発展に伴い、電子製品は、機能の多様性や高度に統合された利便性が提供されており、ユーザが容易に操作できるようになっている。例えば、ユーザがより簡単且つ直感的に電子製品を制御できるように、現在の電子情報製品には、従来の押ボタン式の制御ボタンの代わりに、タッチ式の表示パネルが設けられたものが広く用いられている。
【0003】
タッチパネルは、抵抗型、容量型、赤外線型、及び超音波型等のものに大きく分けられる。このうち、抵抗型タッチパネル及び容量型タッチパネルはよく用いられている。現在の応用面としては、容量型タッチパネルは、マルチタッチに適用可能な特性によってよりヒューマン的な制御モードが可能となり、市場やユーザに愛用されている。しかしながら、容量型タッチパネルは、タッチパネルに導体材質、例えば指でタッチして電子製品を操作する必要があるという欠点を有している。一方、抵抗型タッチパネルは、ユーザがタッチパネルに如何なる材質でタッチしても、電子製品の操作や制御を行うことができるため、タッチパネルの使用利便性が向上する。また、抵抗型タッチパネルは、コストが低く、且つ技術発展が成熟しているため、中位レベルの製品には多く利用されている。
【0004】
従来のタッチパネルは、ガラス基板の表面上に直接的に導電薄膜が堆積され、前記導電薄膜にタッチすることにより、信号を入力したりタッチ位置を検知したり等の機能を達成することができる。前記導電薄膜は、その上に回路パターンを得るために、黄色現像、エッチングの工程を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−016264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明に係る導電薄膜によれば、反射率調整構造の屈折率及び厚さを調整することにより、エッチングされた導電薄膜及びエッチングされていない導電薄膜がほぼ同様の反射率を有するようになることで、製造工程に残った残跡が目視で観察されなくなり、光学上の表示効果が向上する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板、反射率調整構造及び透明導電層を含む導電薄膜を提供する。前記反射率調整構造が前記基板上に設けられ、前記透明導電層が前記反射率調整構造上に設けられることで、前記反射率調整構造が前記透明導電層と前記基板との間に介在され、前記透明導電層が前記反射率調整構造の一部を被覆する。前記透明導電層は、光が所定の入射角で入射された場合、所定の第1の反射率で光を反射し、前記反射率調整構造は、前記光が前記入射角で入射された場合、所定の第2の反射率で前記光を反射し、前記第1の反射率と第前記2の反射率との差は所定の第1の閾値よりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る導電薄膜によれば、反射率調整構造及び透明導電層の屈折率及び厚さを調整することにより、エッチングされた導電薄膜及びエッチングされていない導電薄膜はほぼ同様の反射率を有するようになっている。ここで、導電薄膜がエッチング工程を経て最上層の透明導電層の一部の領域がエッチングされた場合、光が透明導電層及び反射率調整構造を介して導電薄膜に入射される反射率は、光が反射率調整構造のみを介して導電薄膜に入射される反射率とほぼ同様である。これにより、本発明に係る導電薄膜は、エッチング領域と非エッチング領域との間の色差を消去することができ、製造工程に残った残跡が目視で観察されなくなるため、光学上の表示効果を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の好ましい実施例に係る導電薄膜の模式図を示す。
【図2】本発明の好ましい実施例に係る導電薄膜の立体図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[導電薄膜の実施例]
図1及び図2を併せて参照して、図1は本発明の好ましい実施例に係る導電薄膜の模式図を示し、図2は本発明の好ましい実施例に係る導電薄膜の立体図を示す。図1、図2に示すように、本発明に係る導電薄膜1は、基板10、反射率調整構造12及び透明導電層14を備え、基板10上に反射率調整構造12及び透明導電層14が順次に設けられることで、反射率調整構造12が基板10と透明導電層14との間に介在される。以下、本発明に係る導電薄膜1の各部の構成について説明する。
【0011】
基板10は、ガラス又はPET(polyethylene terephthalate、ポリエチレンテレフタレート)の材料によって薄膜形状に形成されるが、それらの材料に限定されず、例えば、ジアセチルセルロース(diacetyl cellulose)薄膜、トリアセチルセルロース(triacetyl cellulose)薄膜、アセチルセルロースブチラート(acetyl cellulose butyrate)薄膜等のアセチルセルロース系薄膜、ポリカーボネート(polycarbonate)系薄膜、環状ポリオレフィン(polyolefin)系薄膜、アクリル酸(acrylic acid)樹脂系薄膜、ポリエチレンテレフタレート薄膜、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylene terephthalate、PBT)薄膜、ポリエチレンナフタレート(poly ethylene naphthalate)薄膜等のポリエステル(polyester)系薄膜、ポリサルフォン(polysulfone)系薄膜、ポリエーテルスルホン(polyether sulfone、PES)系薄膜、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)系薄膜、ポリイミド(polyimide)系薄膜、ポリエーテルイミド(polyether imide、PEI)系薄膜等の透明プラスチック薄膜であってもよい。上述した基板材料において、光透過率等の光学特性、加工性、機械的物性、低吸水率、耐熱性、耐気候性等の点を考慮すると、アセチルセルロース系薄膜、ポリカーボネート系薄膜、環状ポリオレフィン系薄膜、アクリル酸樹脂系薄膜及びポリエステル系薄膜が好ましく、特にトアセチルセルロース系薄膜、ポリカーボネート系薄膜、環状ポリオレフィン系薄膜、アクリル酸樹脂系薄膜及びポリエチレンテレフタレート薄膜がより好ましい。
【0012】
実施例において、基板10がガラス又はPETの材料によって製造された場合、基板10の屈折率は約1.52である。もちろん、上述した材料に限定されず、所属する技術分野において通常知識を有する者は、屈折率が1.52に近いその他の化合物の材料を用いて基板10を製造してもよい。ここで、本発明では、基板10の厚さは特に限定しないが、一般的には、基板10の厚さは約300μm以下である。さらに、基板10の一方の表面に反射率調整構造12を設けることができるほか、基板10の反対側の表面にその他の装置を接着するための接着剤層16をさらに形成してもよい。また、接着剤層16は、光学特性のよい材料、例えば、アクリル酸系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコン系接着剤等であってもよい。
【0013】
反射率調整構造12は、順次に積層されたハードコーティング層122、第1の屈折率層124及び第2の屈折率層126をさらに備え、ハードコーティング層122は基板10上に設けられ、第1の屈折率層124はハードコーティング層122と第2の屈折率層126との間に介在され、第2の屈折率層126は透明導電層14に接する。一つの例として、第1の屈折率層124は金属酸化物層であり、その材料が酸化チタン、ITO(Indium Tin Oxide、酸化インジウムスズ)、酸化タンタル、酸化スズのいずれか1種又は2種以上の組み合わせから製造されてもよい。第2の屈折率層126はシロキサン重合体(siloxane polymer)層であり、その材料が無機二酸化シリコン系化合物、ポリオルガノシロキサン(polyorganosiloxane)系化合物のいずれか1種又はそれらの組み合わせから製造されてもよい。
【0014】
実施例において、本発明においては、反射率調整構造12における各層の厚さ及び屈折率を選択することにより、導電薄膜1がエッチング工程を経た後に生じた色差を消去することができ、製造工程において導電薄膜1に残った残跡が目視で観察されなくなることが可能となる。一つの例として、本発明に係る第1の屈折率層124は、厚さが100Å〜300Åであり、屈折率が1.6〜2.0である。第2の屈折率層126は、厚さが500Å〜700Åであり、屈折率が1.42〜1.46である。ハードコーティング層の厚さ及び屈折率については、特に限定されるものではない。
【0015】
透明導電層14は、反射率調整構造12上に形成され、導電薄膜1の最外層に位置する。エッチング工程の後、透明導電層14は、一部の領域のみがエッチングされたことによって特定のパターンが形成されるため、エッチングされた領域には透明導電層14が存在されなくなった一方、エッチングされていない透明導電層14は、反射率調整構造12の一部を被覆し続ける。一つの例として、透明導電層14は、SnO2、ZnO2、In2O3又はITO等の材料からなり、厚さが150Å〜250Åである。一般的には、透明導電層14は、材質がITOである場合、厚さが180Åであってもよい。
【0016】
一方、透明導電層14は屈折率が1.9〜2.1である。上述した透明導電層14が導電性を有するため、応用時には接地過程を簡単化させるとともに製造工程の歩留まりを向上させることができる。また、透明導電層14が導電層であるため、電極を透明導電層14に容易に形成することができる。従って、本発明は、例えばタッチ式の表示ユニットに適用することが好ましいが、これに限られるものではない。実施例において、透明導電層14の厚さ及び屈折率は、ユーザが透明導電層14又は反射率調整構造12のいずれから導電薄膜1を観察しても製造工程において導電薄膜1に残った残跡が観察されないように、反射率調整構造12に応じて調整する必要がある。
【0017】
光の反射角度としては、光が所定の入射角で透明導電層14及び反射率調整構造12を介して導電薄膜1に入射された場合、前記光は所定の第1の反射率R1を有する。一方、光が同じ入射角で反射率調整構造12のみを介して導電薄膜1に入射された場合、前記光は第2の反射率R2を有する。第1の反射率R1と第2の反射率R2との差は所定の第1の閾値よりも小さい。実施例において、本発明の仕様で製造された導電薄膜1としては、前記第1の閾値が0.5よりも小さく、即ち、第1の反射率R1と第2の反射率R2との差が極めて小さいため、目視で観察されない効果を図ることができる。
【0018】
一方、光の透過角度としては、光が所定の入射角で透明導電層14及び反射率調整構造12を介して基板10に入射された場合、前記光は第1の透過率T1を有する。一方、光が同じ入射角で反射率調整構造12のみを介して基板10に入射された場合、前記光は第2の透過率T2を有する。第1の透過率T1と第2の透過率T2との差は所定の第2の閾値よりも小さい。実施例において、本発明の仕様で製造された導電薄膜1としては、第2の閾値が同様に0.5よりも小さく、即ち、第1の透過率T1と第2の透過率T2との差が極めて小さい。同様に、光が直線的に進行するため、光が基板10から入射された場合、ユーザが透明導電層14の外部から観察すると、製造工程において残った残跡は、目視で観察されない。
【0019】
一つの例として、導電薄膜1が接着剤層16を介して発光可能な表示装置の表面、例えばLCD、CRT及びタッチパネル等のディスプレイ又はその他の表示機器、若しくは上述した表示機器を有した電子製品に接着されることで、ユーザは、導電薄膜1を介して表示機器の表示画面を見た場合、製造工程に残った残跡によって干渉されることがない。
【0020】
上述のように、本発明の好ましい実施例に係る導電薄膜によれば、特定の範囲内の屈折率及び厚さを有した反射率調整構造及び透明導電層により、エッチングされた導電薄膜及びエッチングされていない導電薄膜はほぼ同様の反射率及び透過率を有するようになる。特に、光が透明導電層又は基板のいずれから導電薄膜に入射されても、本発明の仕様で製造された導電薄膜は、製造工程に残った残跡が目視で観察されない効果を図ることができる。これにより、本発明に係る導電薄膜は、エッチング領域と非エッチング領域との間の色差を消去することができることで、製造工程に残った残跡が目視で観察されなくなり、光学上の表示効果を向上することができる。
【0021】
上述したものは、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の実施の範囲を限定するためのものではなく、本発明の明細書及び図面内容に基づいてなされた均等な変更および付加は、いずれも本発明の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0022】
1 導電薄膜
10 基板
12 反射率調整構造
14 透明導電層
16 接着剤層
122 ハードコーティング層
124 第1の屈折率層
126 第2の屈折率層
R1、R2 反射率
T1、T2 透過率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた反射率調整構造と、
前記反射率調整構造上に設けられることで、前記基板との間に前記反射率調整構造が介在され、前記反射率調整構造の一部を被覆するための透明導電層と、
を備え、
前記透明導電層は、光が所定の入射角で入射された場合、所定の第1の反射率で前記光を反射し、
前記反射率調整構造は、前記光が前記入射角で入射された場合、所定の第2の反射率で前記光を反射し、
前記第1の反射率と前記第2の反射率との差は所定の第1の閾値よりも小さいことを特徴とする導電薄膜。
【請求項2】
前記反射率調整構造は、
前記基板上に設けられたハードコーティング層と、
前記ハードコーティング層上に設けられた第1の屈折率層と、
前記第1の屈折率層上に設けられ、前記透明導電層に接する第2の屈折率層と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の導電薄膜。
【請求項3】
前記第1の屈折率層は、厚さが100Å〜300Åであり、屈折率が1.6〜2.0であることを特徴とする請求項2に記載の導電薄膜。
【請求項4】
前記第2の屈折率層は、厚さが500Å〜700Åであり、屈折率が1.42〜1.46であることを特徴とする請求項2に記載の導電薄膜。
【請求項5】
前記第1の閾値は0.5であることを特徴とする請求項1に記載の導電薄膜。
【請求項6】
前記透明導電層は前記光が前記入射角で入射された場合、前記透明導電層における前記光は第1の透過率を有し、
前記反射率調整構造は前記光が前記入射角で入射された場合、前記反射率調整構造における前記光は第2の透過率を有し、
前記第1の透過率と前記第2の透過率との差は所定の第2の閾値よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の導電薄膜。
【請求項7】
前記第2の閾値は0.5であることを特徴とする請求項6に記載の導電薄膜。
【請求項8】
前記基板は、ガラス及びPETからなる群から選ばれた材料からなり、屈折率が1.52であることを特徴とする請求項1に記載の導電薄膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−25899(P2013−25899A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157104(P2011−157104)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(507103606)智盛全球股フン有限公司 (16)
【Fターム(参考)】