説明

小型真空ポンプ

【課題】固体、血液などの液体および気体、またはその組合せを給送するポンプ・システムは、負圧上昇率が遅く、使い捨てでないため汚染防止が困難であり、大きく嵩張って費用がかかり、機能実行に非効率であった。
【解決手段】駆動装置40と、自身に接続され、手動で切り離すことができるポンプ・システムは、2室または3室キャニスタ1、18、21で構成され、その中で固体、液体および気体を相互から分離することができる。キャニスタに取り付けられ、それを大気から密封する高度に可撓性の薄膜24が、往復運動および給送時にこの分離を容易にする。ポンプ・システムの構成要素は、使い捨てであるよう設計され、2室または3室キャニスタは、サイズがはるかに小さく、非常に効率的なポンプ・システムを提供する。ポンプは、医療用途に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に医学の分野で有用な真空ポンプに関する。特に、本明細書で開示するポンプは、駆動装置と、使用後には吸引される物質と接触する全てのポンプ構成要素を含まれた物質とともに簡単に廃棄できるため、駆動装置から簡単に取り外すことができる使い捨てのポンプ・システムとを含む。ポンプは、連続的な真空圧を維持しながら吸引できる物質の体積に制限されない。医学的手術中または救急気道浄化中に、血液などの体液または嘔吐物が吸引される。真空ポンプは、チューブを通して体液が引き込まれ、「吸引カテーテル」と呼ばれる吸引キャニスタ内に負圧を生成するため使用される。医学では「吸引器」とも呼ばれる従来の真空ポンプは、硬質の真空キャニスタを含み、この中に吸引された流体が収集され、高い負圧でその形状および剛性を維持する。吸引キャニスタには、使い捨てのものもあり、洗浄、消毒および再使用するために取り外せるものもある。
【背景技術】
【0002】
上述したタイプの吸引器は、以下のような幾つかの欠点を特徴とする。
1.大量の流体を収集する場合、吸引キャニスタは、容積が比較的大きくなければならない。最も一般的には、容積が最大5リットルのキャニスタを使用する。大きいキャニスタは、吸引する物質を引き込むのに十分なだけ強力な負圧をキャニスタ内に生成する前に、大きい体積の空気をキャニスタから除去しなければならないので、負圧上昇率を遅くする。
2.吸引キャニスタ内の空気はポンプを通して引き込まれるので、使用後に吸引キャニスタを廃棄する場合でも、薄膜、弁、シリンダまたはピストンなどの使い捨てではないポンプ構成要素の汚染を防止することは、非常に困難である。汚染されたポンプは、これを通って流れる空気が雰囲気中に排出されるので、健康被害を生じる。
3.吸引器は、体液および嘔吐物を引き込むのに使用され、これは固体を含むことがある。吸引中に、空気もポンプに引き込まれる。真空ポンプは、一般的に空気または流体の給送に効率的であるが、大部分のポンプは、3タイプ全部の物質を給送するには非効率的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、従来通りの真空装置は、大きく、嵩張って、費用がかかり、その機能を実行する際に非効率的である。
【0004】
本発明では、「ポンプ・システム」という用語は一般的に、以下の構成要素を有するシステムを指す。つまり、吸引キャニスタ、吸引入口、廃棄物出口、および吸引力生成用一体手段である。「使い捨ての真空ポンプ」という用語は一般的に、駆動装置以外の全ての構成要素が安価で、したがって廃棄することができるポンプを指す。しかし、使い捨ての構成要素を再使用したい(または同様の使い捨てではない構成要素を使用したい)人は、そうする。「駆動装置」という用語は一般的に、電気モータに含まれるポンプ構成要素、またはハウジング内に含まれる一方、ポンプ・ピストンまたは薄膜を往復運動させることができる他の手段を指す。「体液」という用語は、血液、嘔吐物または粘液を指す。「3タイプの物質」、「3タイプの媒質」および「3状態の物質」という用語は、液体、固体および気体を指す。「物質」、「媒体」および「材料」という用語は、吸引される材料を指すため交換可能な状態で使用される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、空気または気体、液体および固体を給送することができ、3タイプの物質を分離して、低コストの袋に液体を収集しながら効率的な給送を可能にすることができる改良型の真空ポンプを提供することができる。
【0006】
さらなる実施形態は、身体物質または他の給送される媒質と接触する全ての構成要素を容易に切り離すことができ、ポンプの駆動手段から外して殺菌または廃棄することができるポンプを提供することができる。これにより、汚染されていず使い捨てでない駆動装置になる。使い捨てのキャニスタを有する先行技術のポンプでは、吸引された空気がポンプを通り、このためポンプの内側が、汚染されているかもしれない空気と接触する。ポンプの内側は、従来は洗浄のためのアクセスができなかった。
【0007】
本発明の実施形態は、さらに、高い負圧または吸引圧を極めて高速で生成するが、比較的小さい真空キャニスタおよび低容量のポンプでそれを実行する真空ポンプを提供することができる。
【0008】
その寸法に関係なく、物理的にこれより大きい真空ポンプよりはるかに高い性能および容量を有する物理的に小型の真空ポンプを提供することが、さらに好ましい。また、従来の真空キャニスタとは異なり、満杯にならない真空キャニスタの容積に関係なく、連続的に真空を生成する真空ポンプを提供することが望ましい。
【0009】
真空ポンプは、駆動装置と、この駆動装置に接続され、そこから手動で切り離すような構成である使い捨てのポンプ・システムを含み、使い捨てポンプ・システムは、
(a)3室キャニスタを含み、入口は第1室に通じ、第1室は固体を保持して、これが第1室から第2室へと通過するのを防止する手段を有し、第2室はその出口に逆止め弁を有し、弁は、液体および気体が通過して第2室から出ることを可能にし、第3室は空気を排出するための出口、および液体を排出するための追加出口を有し、第3室はさらに、その入口に逆止め弁を有し、これによって弁を通して物体が出るのを防止しながら、液体および気体が弁を通して入るのを可能にし、さらに、
(b)3室キャニスタに取り付けられ、これを周囲から密封する高度に軟質の薄膜を含み、軟質薄膜は、弁が設置された3室キャニスタを有する隔壁に取り付けられ、さらに、
(c)薄膜に取り付けられた駆動部材を含み、駆動部材の往復運動が薄膜の往復運動を誘発し、さらに、
(d)使い捨てポンプ・システムを駆動装置のハウジングに装着し、係合する手段を含み、手段は、同時にポンプ駆動部材を駆動装置に結合することができる。
【0010】
駆動装置は駆動部材に結合され、駆動装置はクランクを回転する電気モータを含み、クランクは、駆動装置が起動すると、クランクおよび駆動部材の往復運動を誘発するような方法で往復手段に接続される。ポンプ・システムは、迅速かつ容易な方法で(好ましい実施形態では手首を1回単純に捻る動作で)駆動装置に取り付け、そこから外すことができる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によると、3室キャニスタは約100ccの容量を有する。
【0012】
さらに本発明の好ましい実施形態によると、ポンプは、第2室に存在する真空孔出口を含み、出口は、第1および第2室内の圧力を監視するため、チューブで外部真空ゲージに接続される。
【0013】
また、本発明の好ましい実施形態によると、第1室内で固体を保持する手段が、篩に含まれる。
【0014】
さらに、本発明の好ましい実施形態によると、非常に軟質の薄膜は、大量の流体が自身内に含まれると、降伏するか伸張することができる。高い負荷を受けると、薄膜は伸張することができ、その面積の一部分(50%など)のみ効果的に往復し、残りの表面は静止したままである。
【0015】
さらに本発明の好ましい実施形態によると、真空ポンプは追加的に、3室キャニスタを密封し、空気または材料がキャニスタへ、またはキャニスタから漏れるのを防止し、さらに第1および第2室の真空が失われるのを防止する手段を含む。
【0016】
本発明の実施形態によると、ポンプは追加的に、第3室の液体出口に取り付けられ、排出された液体を収集するための使い捨て廃棄物容器を含む。好ましい実施形態では、使い捨て廃棄物容器は廃棄物袋で、任意の適切なサイズを有する。幾つかの好ましい実施形態では、廃棄物袋の容量は500ccと5リットルの間である。廃棄物収集袋は、低コストの廃棄物容器である、大気圧でこれが収容する体液とともに、ポンプ・システムと一緒に容易に廃棄される。
【0017】
さらに、本発明の好ましい実施形態によると、ポンプ・システムを駆動ハウジングに装着し、係合させる手段は、3室キャニスタの下部分から突出する装着ベースを含み、装着ベースは、駆動装置ハウジングと対合し、取り付けられるようになっている。好ましい実施形態では、装着ベースを駆動装置ハウジングまたはその対合部分に対して捻ると、この2つが物理的に結合する。
【0018】
さらに、本発明の好ましい実施形態によると、駆動装置はクランクを回転し、往復するロッド・受器がクランクに接続され、ロッド・受器は駆動部材と対合するようになっている。好ましい実施形態では、ロック・クリップが駆動部材をロッド・受器に固定する。装着ベースの駆動装置ハウジングへの結合は、駆動部材のロッド・受器への固定と同時に、1回の動作で実行される。
【0019】
追加的に、ポンプ・システムおよび駆動装置は、携帯用でよく、バッテリ電力で動作することができる。
【0020】
さらに、ポンプ・システムは追加的に、ポンプ・システムを給送され収容された物質とともに容易に廃棄するため、ポンプ・システムを密封する手段を含む。さらに本発明の好ましい実施形態によると、ポンプは、自身を通る物質の連続流を生成しながら、連続した真空圧を維持することができる。
【0021】
ポンプは、第1および第2室内で測定した状態で、水銀柱約650mmの真空圧を生成することができる。
【0022】
追加的に、好ましい実施形態によると、ポンプはさらに、第1室にある入口に接続された吸引カテーテル・チューブを含み、これによって物質が3室キャニスタに入ることができる。
【0023】
一般的な薄膜ポンプと異なり、本発明の薄膜は軟質で、硬質ピストンによって制限されない。薄膜が軟質なので、硬質駆動部材の往復運動に関係なく、伸張し、給送される物質に一致することができる。したがって、薄膜が抵抗に遭遇すると、これは伸張して降伏し、往復駆動部材の連続運動を可能にする。
【0024】
3室キャニスタ、薄膜および逆止め弁は、駆動部材を往復させる駆動装置に容易に取り付けることができる一体ポンプ・システムを含むので有利である。上述したように、このような駆動装置は、駆動部材が接続されたクランクを有する出力シャフトを備えた電気モータでよい。したがって、電気モータは、通電されるとキャニスタの1室から他の室への給送を実行する。ポンプ・システムは、使用後に駆動装置から容易に切り離して、殺菌するか廃棄することができる。ポンプの心臓部およびそれに関連する室およびチューブ導管を駆動モータから完全に分離することができるので、給送された物質と接触するポンプの構成要素を全て、廃棄するか殺菌することができる。当業者には、電気モータ以外の手段を使用して、駆動部材の往復運動を誘発してよいことが明白である。
【0025】
3室キャニスタは、室に入る固体が捕捉され、さらにポンプに入ることができず、弁およびチューブを閉塞することによってその性能を実行するような方法で構築される。当業者には、給送される物質が固体を含んでいないような場合は、これがポンプの逆止め弁に到達するのを防止する必要はなく、したがって本明細書で記載されるポンプ・システムは、第1室がなくても同様にきちんと機能することが明白である。したがって、このような場合に使用すべき室が2つだけのポンプについても、以下で説明する。追加的に、給送される空気は、流体から分離されて、雰囲気に放出され、したがって空気ではなく液体が廃棄物袋に収集され、それにより廃棄物袋の容積を効率的に使用する。したがって、流体を吸引または収集するポンプの能力は、流体が引き込まれる室のサイズによって制限されず、小さい室でも大量の流体の給送に使用することができ、廃棄物袋の容量によってのみ制限される。これは、キャニスタまたは室のサイズが吸引できる物質の量を制限し、大きいキャニスタを使用してこの制限を克服すると、ポンプによる大型キャニスタの排水が時間のかかるプロセスになってしまう先行技術のポンプとは対照的である。
【0026】
本発明は、医学の分野で使用し、体液、嘔吐物および粘液を吸引することができるが、本発明の範囲は医学用途のみに制限されず、真空ポンプは他の分野にも使用することができる。ポンプの重要な特徴は、給送される材料と接触した全ての構成要素を経済的に取り外して、交換し、したがって有害な汚染を防止できることである。したがって、ポンプは、先行技術のポンプでは使用後の洗浄が困難な化学の分野にも用途がある。
【0027】
また、本発明の代替態様では、駆動装置、および駆動装置に接続され、手動で切り離すことができる使い捨てのポンプ・システムを含む、液体および気体を給送する(好ましくは固体の給送に使用しない)真空ポンプが提供され、使い捨てポンプ・システムは、
(a)2室キャニスタを含み、第1室は入口と、第1室の出口にある逆止め弁とを有し、弁によって液体および気体が通過して第1室から出ることができ、第2室は、空気を排出するための出口と、液体を排出する追加的出口とを有し、第2室はさらに、逆止め弁を介して接続され、これによって液体または気体が弁を通って入ることができる一方、液体または気体が弁を通って出るのを防止し、さらに、
(b)2室キャニスタに取り付けられて、これを大気に対して密封する非常に軟質の薄膜を含み、軟質薄膜は、弁が設置された2室キャニスタを有する隔壁に取り付けられ、さらに、
(c)薄膜に取り付けられた駆動部材を含み、駆動部材の往復運動が薄膜の往復運動を誘発し、さらに、
(d)使い捨てポンプ・システムを駆動装置のハウジングに装着し、係合する手段を含み、手段は、同時に駆動部材を駆動装置に結合することができる。
【0028】
真空ポンプ内で、駆動装置はポンプ・システムに結合され、したがって駆動装置を起動すると、軟質薄膜の往復運動を誘発し、ポンプ・システムは、迅速かつ簡単な方法で駆動装置に取り付けるか、これから取り外すことができる。
【0029】
当業者には、本発明の好ましい実施形態が、幾つかの特徴を含むが、本発明の開示された特徴の部分的適用は、本発明の範囲を制限するものではなくことが明白である。例えば、薄膜を給送用のピストンと置換することができ、排出口は、廃棄物袋がなくても機能することができ、液体および気体の出口を1つの出口に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】廃棄物袋に接続された3室キャニスタを有し、電気モータ駆動装置による薄膜の往復運動によって吸引力が生成される好ましい使い捨て真空ポンプの断面図である。
【図2】一体ユニットとして廃棄すべき「駆動装置」から切り離された「ポンプ・システム」の断面図である。
【図3】使い捨て構成要素を迅速に捻って係合し、切り離すための差し込み構成を有する装着ベースの図である。
【図4】ポンプ駆動部材を電気モータの受器・ロッドに取り付けるのに使用するロック機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明をさらによく理解するために、次にその実施形態を、添付図面に関して例示により説明する。以下の詳細な説明は、本発明の特定の好ましい実施形態を例示することのみを意図していることが理解される。請求の範囲に記載される本発明の範囲を決して制限するものではない。
【0032】
次に図1を参照すると、幾つかの異なる機能を実行するために使用される3室キャニスタ10を含む真空ポンプが提供される。3室キャニスタ10は、その第1室1に入口11を有する。吸引チューブ・カテーテル12が入口11に接続される。第2室18内では、真空排気口13が真空ゲージ14に接続される。第3室18内では、空気排出出口15があり、これは雰囲気に対して開放されている。第1室1は篩16を含み、これは固体17が「液体室」とも呼ばれる第2室18に入るのを防止する。2つの逆止め傘形弁19および20が、それぞれ第2室18および第3室21の底部にある。第3室21は大気圧であり、液体出口22を有する。3室キャニスタ10の底部には、装着ベース23が取り付けられ、これはキャニスタおよび関連のチューブ12を駆動ハウジング40に、または駆動ハウジングに接続したドッキング手段に装着するために使用する。装着ベース23は、薄膜を3室キャニスタ10の下側に固定するのにも使用する。薄膜24は棒形の一体駆動部材25を有し、これは受器・ロッド26の対応する空隙に挿入され、軸受け28に結合したクランク27を介して旋回自在にモータ39に取り付けられる。モータ39を起動すると、クランク28がモータ39によって回転し、これは受器・ロッド26を往復させ、これによって薄膜24は、これによって形成されるキャビティ29の容積を増減させる。これは自身内に真空を生成し、逆止め傘形弁19および20を通過する空気または流体をこれに向かって吸い込み、したがって給送することができる。
【0033】
好ましい実施形態は、薄膜24を往復運動させる手段としてモータとクランクの組合せについて説明するが、薄膜の往復運動を生成するために他の駆動手段を使用できることが明白である。
【0034】
空気、液体および固体は、吸引チューブ12を通って3室キャニスタ10に入り、チューブは例示により嘔吐物を除去するために患者の口に挿入することができる。給送される3状態の物質は、入口11を通って3室キャニスタ10に入る。固体17は、篩16の手段によって第1室1よりさらに移動することができない。液体および空気は第2室(液体室)18に入り、これは薄膜24の往復運動時に真空下にあり、これを逆止め傘形弁20に通して第3室21に入れる。液体室18内の真空レベルは、導管30を介して真空排出口13に接続された真空ゲージ14によって監視される。第3室21に入った空気と液体が分離され、ここで液体は排出チューブ32を通して廃棄物袋31に排出され、空気は空気放出出口15を通って雰囲気へと追い出される。
【0035】
以上の記述から、3室キャニスタ10はポンプの心臓部であり、これに薄膜24を取り付けて、逆止め傘形弁19および20とともにポンプ機能を実行することが明白である。3室キャニスタを構成する3つの室のうち、1つのみ、つまり液体室18が真空となる。3室キャニスタは、篩16によって区切られ、第1室1および第3室21は基本的に大気圧である。
【0036】
本明細書で説明するポンプは、液体、固体および空気または3つの混合物を吸引し、3つの物質タイプそれぞれを個々の送付先へと分離する能力において特異である。吸引した固体でポンプが閉塞するのを防止して、処分するために気体ではなく液体のみを収集し、したがって処分する廃棄材料の体積を、およびこの廃棄材料を保持するキャニスタの容積を最小にするため、3タイプの物質が分離される。空気および液体は、給送される液体を含む廃棄物袋31の容積によってのみ制限される任意の体積で、連続的にポンプを通して給送できることも特に重要である。
【0037】
空気および液体を給送するポンプの能力は、1タイプの物質のみを給送するのに効率的である点で従来のポンプとは異なり、薄膜24が可撓性であることによって強化される。ピストンまたはリブによって硬質化されて、排除量を減少させる過度の屈曲を防止する従来のポンプの薄膜とは異なり、本発明で記載される薄膜24は特に可撓性であり、したがって液体の給送時などに存在するような重い負荷に遭遇すると、降伏することができる。この薄膜の可撓性は、追加的な大きい利点も提供する。つまり給送ボリューム29内の真空度が高い場合、薄膜24は伸張して、好ましい実施形態では電気モータ39を含む「駆動装置」への負荷が最小の状態で、受器・ロッド26が往復運動できるようにする。
【0038】
高い真空レベルを獲得するため、図2に示すように薄膜24が行程の上端にある場合、給送キャビティ29から全ての空気を抽出する必要がある。この機能は、従来の真空ポンプでは、液体または固体がポンプ室に入る時に、ポンプの損傷を引き起こす。ポンプの出口弁を通して十分な高速で排出できないからである。開示された本発明では、薄膜24が可撓性であるので、液体または固体が存在する結果として生じる抵抗に遭遇した時に、降伏するか、膨らむことができ、過度の力やその結果の損傷を防止する。
【0039】
薄膜24の可撓性のさらなる重要な機能は、伸張して降伏する能力であり、したがって給送キャビティ29内の真空レベルが高い場合、薄膜24の比較的小さい有効面積のみ往復運動して伸張し、往復運動するためにモータ39から必要な出力が小さくなる。
【0040】
図2では、モータ39、クランク27および往復運動する受器・ロッド26を含む駆動装置ハウジング40が、他の全部品から切り離した状態で図示されている。というのは、駆動装置は再使用されるが、給送される物質と直接接触した他の部品は全て、処分するよう予定され、「使い捨てポンプ・システム」と呼ばれる。使い捨てポンプ・システムは、基本的にキャニスタ、薄膜、関連の弁、使い捨ての廃棄物袋、および関連のチューブを含み、処分するために全ての出口を密封した後の状態で、図2に図示されている。吸引チューブ12は、栓33で閉塞され、液体が漏出するのを防止する。導管30は、真空ゲージ14(図1)から切り離されて、空気排出出口15に取り付けられ、3室キャニスタ10から漏れる可能性がある通路を全て密封する。
【0041】
好ましい実施形態で唯一の使い捨てでないハードウェアである駆動装置40は、給送される媒質のいずれとも接触しないことが、当業者には理解される。これは、吸引した空気が通過し、したがって感染性空気で汚染されているかもしれない従来の吸引器または吸引ポンプとは異なる。
【0042】
使い捨てポンプ・システムを駆動装置40に取り付けて装着する方法および手段が、図2および図3に図示され、これにより装着ベース23が、図2に示すようにリテーナ41の上部に配置される。リテーナ41は駆動装置40の棚または階段状部品から突出して、大きいマッシュルーム形の頭部を有し、これは図3にも見られるベース23のフランジにある比較的大きい開口を通過する。3室キャニスタ10を、装着ベースとともに時計回りに回転すると、リテーナ41の大きい頭部がスロット45(図3)と係合し、45°の捻りを用いて差し込みタイプの締め付け動作で装着ベース23を駆動装置40に取り付ける。この動作は、キャップをガラス瓶に取り付けるのと同様である。図1および図2に示す駆動部材は、装着ベース23を駆動装置ハウジング40に取り付けるのと同時に、受器・ロッド26に挿入する。
【0043】
図4を参照すると、ばね式ロック・クリップ46が、駆動部材25にあり予め整列したスロット48および受器・ロッド26と係合すると、ロック・クリップは、駆動部材25を受器・ロッド26に締め付けて、ロックする。装着ベース23の駆動装置40からの切り離しは、駆動部材25の受器・ロッド26からの切り離しと同時に、図4で示すように駆動部材25でロック・クリップ46をそのスロット47から押し出すことにより、両者を反時計回りに回転して実行し、駆動部材25と受器・ロッド26間の締め付けを解消する。この動作は、反時計回りに捻って持ち上げることにより、瓶からキャップを外すのと同様である。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、キャニスタ10を駆動装置40に係合するために一つの形態しか説明していないが、これらの部品を迅速に締め付ける他の同様の方法を効果的に使用できることが、当業者には明白である。
【0045】
しかし、上述した係合方法は、留意すべき重要な特徴を有する。受器・ロッド26は、駆動部材25が挿入された時にその下位置にあるので、スロット48および48は、モータ29に通電され、クランク27(図1および図2)が受器・ロッド26を上昇させ、ロック・クリップ46がスロット47および48を締め付けられるようにした場合のみ整列する。したがって、駆動部材25を受器・ロッド26に挿入することにより、2つを相互に締め付けるのではなく、係合させることができる。
【0046】
本発明は、以上で例示により図示し、説明したことによって制限されないことが、当業者には理解される。むしろ、本発明の範囲は、請求の範囲によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動要素に接続されたモーターを伴う駆動ユニットと、前記駆動ユニットに取り付け、取り外すことができるポンプ・ユニットとを備えるポンプ装置であって、ポンプ入口とポンプ出口とを備える前記ポンプ・ユニットが、ポンプ室と、往復運動可能ポンプ部材とを含み、前記ポンプ部材が、前記ポンプ室の部分を画定し、前記ポンプ室が、前記駆動ユニットの動作で、前記ポンプ部材の両方向強制往復運動によって給送するために膨脹および収縮するような構成であり、
前記ポンプ・ユニットおよび前記駆動ユニットは、前記ポンプ・ユニットを前記駆動ユニットに取り付けると、前記ポンプ部材および前記駆動要素が、少なくとも前記駆動ユニットの動作中に、前記駆動要素と前記ポンプ部材とが結合され更に前記駆動要素によって前記ポンプ部材を往復運動させる位置になるよう構築され、ポンプ装置は更に、前記ポンプ出口に接続されて前記ポンプ・ユニットにより給送される物質を収容する廃棄物容器を有し、
前記ポンプ部材は、前記ポンプ室に固定された周囲と、中心とを備える可撓性の薄膜であり、前記ポンプ室は、前記中心が遠位位置へと移動すると、最大容積まで膨脹することができ、前記中心が近位位置へと移動すると、最小容積まで収縮することができ、
前記可撓性の薄膜は、前記中心が前記遠位位置に近づき、前記ポンプ室を充填する流体の量が前記最大容積より小さくなると、降伏するよう伸張可能であり、それによって前記駆動ユニットが前記遠位位置を通して前記ポンプ部材を往復運動させることができる装置。
【請求項2】
駆動ユニットの前記駆動要素が、結合手段による前記往復運動可能ポンプ部材との前記係合を実行するようになっている往復要素である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記結合手段が、前記往復運動要素と前記ポンプ部材のうち一方にあるロッドと、前記往復運動要素と前記ポンプ部材のうち他方にある受器とを含み、前記ロッドおよび前記受器が、締め付け具によって相互にロックするようになっていて、それにより前記係合を提供する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ロッドが、前記ポンプ・ユニットの前記駆動ユニットへの前記取り付け中に、前記受器に入る、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
請求項1の装置とともに使用する取り付けおよび取り外し可能なポンプ・ユニットで、さらに、
下端に流体入口を有する第1区画を含み、前記流体入口が、第1逆止め弁を介して前記ポンプ室と連絡し、これにより流体が前記ポンプ室に流入することだけができ、さらに、
流体出口を有する第2区画を含み、前記第2区画が、第2逆止め弁を介して下端にて前記ポンプ室と連絡し、これにより流体が前記ポンプ室から流出することだけができるポンプ・ユニット。
【請求項6】
前記可撓性の薄膜は、前記ポンプ室が収縮状態になると、前記ポンプ室に保持される前記最小容積を超える量の流体または固体を収容するため、前記周囲と前記中心の間で降伏し、外側に膨脹するよう伸張可能であり、それによって前記駆動ユニットが、前記近位位置を通して前記中心を往復運動させることができる、請求項1に記載のポンプ・ユニット。
【請求項7】
前記ポンプ・ユニットは、前記ポンプ入口に接続されて前記ポンプ・ユニットにより給送される物質を収容する廃棄物収集容器を備える、請求項1に記載のポンプ・ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−264385(P2009−264385A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127552(P2009−127552)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【分割の表示】特願2003−520985(P2003−520985)の分割
【原出願日】平成14年8月12日(2002.8.12)
【出願人】(504056439)
【Fターム(参考)】