説明

小型電動アクチュエータ用のコイルボビン及び小型電動アクチュエータの製造方法

【課題】略中空円柱形状に形成して内部にロータを収容するようにした場合でも巻線装置に確実にセットできるようにした小型電動アクチュエータ用のコイルボビンを提供する。
【解決手段】コイルボビン511は、内部にロータ540を収容し得る略中空円柱形状をなし、外面にロータの軸線方向と略平行な面内でコイルを巻回し得るコイル巻回溝528を有する。コイル巻回溝を挟む両側のうち、少なくとも片側の外周部に一対のチャック爪952を係合させる一対の凹部526がある。コイルボビンは、ロータの軸線方向に2分割され、各分割ボビン520、530にロータの軸端を回転自在に嵌める軸受孔が設けられている。巻線を行う場合、コイルボビンの内部にロータを収容し、凹部にチャック爪を係合してコイルボビンを把持し、その状態でコイルボビンを回転させながらコイル巻回溝にコイルを巻く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電動絞り装置の駆動手段として使用される小型電動アクチュエータ用のコイルボビン、及びそのコイルボビンを使用した小型電動アクチュエータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ等の撮影装置に組み込まれる電動絞り装置には、駆動手段として小型の電動アクチュエータが使用されている。この種の用途に用いられる電動アクチュエータとして、特許文献1に記載のアクチュエータは、ロータとステータとからなり、ステータは、ロータの中心軸を含む平面で半割りにされ且つ合体することで両者間にロータを回転自在に収容するコイルボビンと、コイルボビンの外周に巻回されたコイルと、コイルボビンの外周に装着された円筒状のヨークと、から構成されている。ロータは、ロータ軸の外周に、直径方向に着磁された永久磁石を一体に設けたものであり、コイルは、ロータの軸線方向と略平行な面内でコイルボビンの外周に巻回されている。
【0003】
また、特許文献2に記載の電動絞り装置では、ロ字形のコイルボビンを使用し、その側面開口からロータをコイルボビン内部に嵌め込むようにした電動アクチュエータが使用されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−254022号公報
【特許文献2】特開平11−183962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コイルボビンに巻線装置でコイルを巻回する場合、コイルボビンを巻線装置の回転軸上にセットして回転させながら巻線を行うのが一般的であり、特許文献1、2に記載のアクチュエータにおいても、製造段階でそのようにコイルボビンに対する巻線を行っているとみられるが、コイルボビンを略中空円柱形状に形成して内部にロータを収容するようにした場合、ロータを収容した状態でコイルボビンに巻線装置の回転軸を貫通させるのは無理であり、他の対策を講じる必要性が出てきた。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、略中空円柱形状に形成して内部にロータを収容するようにした場合でも巻線装置に確実にセットできるようにした小型電動アクチュエータ用のコイルボビン、及び、そのコイルボビンを使用した小型電動アクチュエータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の小型電動アクチュエータ用のコイルボビンは、内部にロータを回転自在に収容し得る略中空円柱形状をなし、外面に前記ロータの軸線方向と略平行な面内でコイルを巻回し得るコイル巻回溝を有し、該コイル巻回溝を挟む両側のうち、少なくとも片側の外周部に、一対のチャック爪を係合させることでコイルボビンを把持可能な一対の凹部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の小型電動アクチュエータ用のコイルボビンであって、前記ロータの軸線方向に2分割されており、各分割ボビンにそれぞれ、前記ロータの軸端を回転自在に嵌める軸受孔が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、コイルボビンの外周にコイルを巻回する工程を含む小型電動アクチュエータの製造方法において、請求項1または2に記載のコイルボビンの内部にロータを収容する工程と、該工程後、前記コイルボビンの外周部に設けられた凹部に一対のチャック爪を係合することでコイルボビンを把持する工程と、該チャック爪で把持した状態で前記コイルボビンを回転させながら前記コイル巻回溝にコイルを巻回する工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の小型電動アクチュエータの製造方法であって、前記コイルボビンのコイル巻回溝を挟む両側のうち、片側のみの外周部に方向性検出のための突片を設け、該突片の有無を整列装置で検出しながら、同じ方向を向いて並んだコイルボビンを整列装置上に準備し、その準備したコイルボビンを前記チャック爪で把持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、一対のチャック爪を凹部に係合させることにより、コイル巻回溝を挟む片側だけでコイルボビンを片持状に把持することができる。従って、そのままチャック爪を回転させることで、コイルボビンを回転させながら、外周のコイル巻回溝にコイルを巻き付けることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、コイルボビンをロータの軸線方向に2分割したので、各分割ボビンの軸受孔にロータの軸端を嵌めながら分割ボビンを合体させることにより、コイルボビンの中にロータを回転自在に収容することができる。従って、組立が簡単にできる。
【0013】
請求項3の発明によれば、コイルボビンの内部にロータを収容した後、一対のチャック爪を凹部に係合させることにより、コイル巻回溝を挟む片側だけでコイルボビンを片持状に把持することができ、そのままチャック爪を回転させることにより、コイルボビンを回転させながら、外周のコイル巻回溝にコイルを巻き付けることができる。従って、多数のコイルボビンを並べて配置した場合にも、同時にコイルボビンを回転させながら巻線を行うことができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、コイルボビンを一定の方向に揃えた状態でチャック爪で把持できるので、コイル巻回溝に駆動用と制動用の2種類のコイルを巻き付ける場合でも、区別しながら巻線を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態のコイルボビンを使用したアクチュエータを絞り羽根駆動手段として組み込んだ電動絞り装置の構成を示す分解斜視図、図2は同電動絞り装置における絞り基板の構成を示す斜視図、図3は同絞り基板の構成を示す平面図、図4は同電動絞り装置のアクチュエータの構成を示す分解斜視図、図5は同アクチュエータの本体ユニットの構成を示す分解斜視図、図6は同本体ユニットのコイル巻回前の状態であるボビンユニット(ロータを内部に組み込んだコイルボビン)の外観を示す斜視図、図7は同ボビンユニットの反対側の外観を示す斜視図、図8は同ボビンユニットの縦断面図である。
【0016】
図9は同ボビンユニットにコイルを巻回するに当たり一定の方向性をもってボビンユニットを整列させる方法の説明用の斜視図、図10は適正な方向性をもって整列しないボビンユニットを排除する場合の方法の説明用の斜視図、図11は適正に整列させたボビンユニットをチャッキングするチャック装置の前方から見た斜視図、図12は同チャック装置とボビンユニットの関係を示す斜視図、図13は同チャック装置でボビンユニットを把持
した状態を示す斜視図、図14は同チャック装置で把持した複数のボビンユニットをコイル巻回装置に装着した状態を示す斜視図、図15(a)は同ボビンユニットのコイル巻回溝の構成を示す断面図、(b)はコイル巻回溝にコイルを巻回した状態を示す断面図、図16は同電動絞り装置の完成状態を示す斜視図、図17は同完成状態におけるアクチュエータ取付部を特定の2つの平面で切って示す概略縦断面図、図18は同部分を別の平面で切って示す概略縦断面図、図19は図16と反対側に電線ユニットを引き出した例を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、この電動絞り装置は、樹脂成形品よりなる長方形板状の絞り基板100と、この絞り基板100の図中下面(一方の板面上)に互いに重ね合わせられた状態でスライド自在に組み付けられる一対の絞り羽根200、300と、絞り基板100の下面に絞り羽根200、300を組み付けた上で、絞り基板100の下面に絞り羽根200、300を覆うように被せられる羽根カバー400と、絞り基板100の上面の長手方向一端部に組み付けられる絞り駆動装置としてのアクチュエータ500と、アクチュエータ500につながる電線ユニット600と、からなる。
【0018】
絞り基板100には、絞り羽根200、300のスライドする平板状のスライドベース部101が設けられ、そのスライドベース部101の長手方向の一端部にアクチュエータ取付部102が設けられている。スライドベース部101には、光路を形成する開口部103が設けられ、スライドベース部101の絞り羽根配置側には、絞り羽根200、300をガイドするガイドピン(符号省略)と、羽根カバー400の係合爪104とが設けられている。
【0019】
また、羽根カバー400には、光路を形成する開口部401と、絞り基板100の係合爪104に係合する被係合部402と、絞り基板100のアクチュエータ取付部102の下面を覆う保護板部405と、保護板部405の周縁部に形成された風通しスリット406と、絞り基板100のアクチュエータ取付部102の係合部141(図3参照)に係合する被係合部407と、が設けられている。
【0020】
また、各絞り羽根200、300には、絞り開口を形成するための切欠状または孔状の透孔部201、301が設けられている。そして、絞り基板100上で絞り羽根200、300を長手方向に直線スライドさせることにより、前記の光路を絞り調節することができるようになっている。
【0021】
また、絞り羽根200、300の絞り開口を形成する透孔部201、301には、絞り最小のときにフィルタ機能を発揮するようにフィルタ(例えば、NDフィルタ)205、305が貼り付けられている。また、絞り羽根200、300の側縁部の近傍には、各側縁部と平行に長溝202、302が設けられている。そして、これら長溝202、302を絞り基板100のガイドピン(符号省略)に嵌めることで、絞り羽根200、300が絞り基板100の長手方向に沿って直線スライド自在に保持されている。
【0022】
絞り羽根200、300を駆動するための要素としては、まず、各絞り羽根200、300の長手方向の端部に、それぞれ絞り羽根200、300のスライド方向と直交する横溝204、304が設けられている。一方、絞り基板100のアクチュエータ取付部102に取り付けられるアクチュエータ500には、駆動レバー542が設けられている。この駆動レバー542は、両先端に絞り基板100側に突き出た駆動ピン543を有するもので、その中心部がアクチュエータ500のロータ軸(後述)に一体化されている。各駆動ピン543には、それぞれ絞り羽根200、300の長手方向の端部に設けた横溝204、304が係合しており、これにより、アクチュエータ500を回転駆動すると、駆動ピン543の回動により2枚の絞り羽根200、300が互いに反対方向に直線スライド
して、光路の絞り調節が行われるようになっている。
【0023】
次に図2、図3を参照しながら、絞り基板100のアクチュエータ取付部102について説明する。アクチュエータ取付部102には、略円形のアクチュエータ装着孔121が貫通している。アクチュエータ装着孔121の周縁の一部(スライドベース101の反対側)には、アクチュエータ500の挿入を案内する円弧状のガイド壁122が立設され、その下端には、前述した羽根カバー400を係止するための係合部141が形成されている。
【0024】
また、アクチュエータ装着孔121の周縁上の、周方向にほぼ等しい間隔をおいた4箇所(スライドベース101側の2箇所とその反対側の2箇所)には、上からアクチュエータ500を乗せることのできる突片状のアクチュエータ受座123が設けられ、各アクチュエータ受座123には、アクチュエータ500側のピン(図6の符号535aで示すピン)を挿入する係合孔123aが設けられている。
【0025】
また、アクチュエータ装着孔121の周縁上で、アクチュエータ受座123と干渉せず且つアクチュエータ装着孔121の中心を挟んで対向する2箇所には、アクチュエータ500をロックするための一対のロック爪(ヨーク係止爪)130が立設されている。ロック爪130の上部内面側には、上面が案内斜面となったフック131が設けられている。また、各ロック爪130の両側には、一対のガイド柱125が立設されている。これらガイド柱125は、後述するアクチュエータ500のヨーク570の外周を案内する案内面125aと、ロック爪130に向けてヨーク570の下端の鍔部573を案内する案内面125bとを有している。
【0026】
また、アクチュエータ取付部102の両側部には、電線クランプ部150が設けられている。この電線クランプ部150は、垂直アーム151と湾曲アーム152とからなる略C字形のもので、垂直アーム151と湾曲アーム152の先端間の隙間153から、両アーム151、152の撓みを利用して電線を湾曲アーム152の内側に挿入することにより、抜けないように電線を保持する機能を発揮する。垂直アーム151には、電線の挿入を容易にする案内斜面151aが設けられ、湾曲アーム152の先端内面側には抜け止め突起152aが設けられている。
【0027】
次にアクチュエータ500について、図4〜図8を参照しながら説明する。
このアクチュエータ500は、図4に示すように、所定の角度範囲を回動するロータ形式のもので、ロータ540と、ステータ(コイルボビン511、コイル591、592及びヨーク570を中心とするもので、ステータとしての符号は省略)と、回路基板580と、非通電時にロータ540の位置を吸着保持する磁性片590と、を有する。この磁性片590は、絞り羽根200、300が最大絞り位置(絞り切り位置)と最小絞り位置(全開位置)の中間位置になるように駆動レバー542を操作したとき、ロータ540の永久磁石545のN極とS極から等距離の位置に配されており、N極またはS極との間に吸引力を発生し、それによりロータに回転付勢力を与える機能を有する。
【0028】
ロータ540は、樹脂製のロータ軸541と、ロータ軸541に固定された永久磁石545と、ロータ軸541の下端に一体成形され且つ絞り羽根200、300と係合する駆動ピン543を先端に備えた駆動レバー542と、を有している。永久磁石545は、直径方向にN極とS極に分極された円筒状のもので、ロータ軸541はその中心部を貫通している。駆動レバー542は、ロータ軸541の回転中心から180度反対方向に延びるもので、ロータ軸541の回転中心より等距離の位置に、互いに円周方向に180度離間した関係で一対の駆動ピン543が設けられている。この場合、永久磁石545の磁極N、Sの方向と駆動レバー542の延びる方向は一致しており、その一致を容易にするため
に、ロータ軸541と永久磁石545には、互いに嵌まり合うことで周方向の位置決めを行う凹部546と凸部545aが設けられている。
【0029】
アクチュエータ500のステータは、樹脂製のコイルボビン511と、コイルボビン511の外周に巻回された駆動用と制動用のコイル591、592と、コイル591、592が巻回された状態でコイルボビン511の外周に嵌合された円筒状のヨーク570と、からなる。ヨーク570は、円筒周壁571の下端572外周に、円周方向に180度離間させて一対の鍔部573を突設したものである。
【0030】
コイルボビン511は、ロータ540の軸方向に2分割された上ボビン(ボビン半体)520と下ボビン(ボビン半体)530の結合体として構成されており、コイルボビン511の内部にロータ540が収容され、上ボビン520と下ボビン530の各軸受孔522、532に、ロータ軸541の上下軸端541b、541aが回転自在に嵌合されている。
【0031】
上ボビン520は、軸受孔522を有する上端壁521と、略円筒状の周壁部524、525と、コイル巻回溝528を2つに仕切る仕切壁527と、を有する。径の大きな周壁部525は、ヨーク570の円筒壁571の内周面に嵌合する部分であり、円周上の4箇所に間隔をおいて配置されている。一方、径の小さな周壁部524は、径の大きな周壁部525の間の凹んだ部分として形成されている。仕切壁527の両側も径の小さい周壁部524として形成されており、この部分が、径の大きい周壁部525と仕切壁527とで挟まれたコイル巻回溝528となっている。
【0032】
また、仕切壁527と直交する位置に一対配置されている径の小さな周壁部524の片方には、図7に示すように、その上端部と正面中央部に、後述するチャッキング時の位置決め用の切欠部524aと凹部524bが設けられている。また、径の大きな周壁部525には、図6に示すように、チャッキング時にチャック爪(図11〜図13の符号952で示すもの)を係合させる凹部526が設けられている。従って、チャック爪を係合する凹部526は、コイル巻回溝528を挟んだ両側にそれぞれ一対ずつ配備されていることになる。また、チャッキング時の位置決め用の切欠部524aと凹部524bを設けた側と反対側の径の小さな周壁部524の下端には、コイルボビン511の方向性を検出するための位置出し突片529が設けられている。この突片529は、整列装置でコイルボビン511の向きを揃えるときに利用する。
【0033】
また、4箇所に配置された径の大きな周壁部525の上端面には、扇形の基板受面523が設けられており、各基板受面523には、端子ピン561の差込孔523aが設けられている。アクチュエータ500の組立段階においては、図4に示すように、基板受面523に回路基板580が載せられ、差込孔523aに圧入されて各コイル591、592の両端に導通された端子ピン561が、回路基板580の絶縁基板581のスルーホール583に半田付けされることで、コイル591、592の両端と各導体パターン582とが相互に接続される。そして、図16に示すように、先端にコネクタ603を有した電線ユニット600の各電線601の基端602を導体パターン582の各ランドに半田付けすることにより、各電線601と各端子ピン561とが1対1で接続される。
【0034】
また、下ボビン530は、軸受孔532を有する下端壁531と、下端壁531の周縁部に立設された、上ボビン520との嵌合用の一対の円弧壁534と、下端壁531の外側に半径方向外方へ向けて突設された固定突片535と、固定突片535の下面に突設された差込ピン535aと、固定突片535の近傍に上向きに突設された上ボビン520との嵌合用ピン533と、円弧壁534と円弧壁534の間に確保された、駆動レバー542導出用の窓部538と、を有している。
【0035】
以上の構成の上ボビン520と下ボビン530を合体させることにより、内部にロータ540を収容し得る略中空円柱形状のコイルボビン511が構成され、上下ボビン520、530の合体の際に、ロータ軸541の上下軸端541b、541aを上下ボビン520、530の各軸受孔522、532に嵌合させることにより、図6〜図8に示す、ロータ540を内部に回転自在に収容したボビンユニット512が構成される。このボビンユニット512の段階で、上ボビン520と下ボビン530の合わせ目に確保された窓部538より駆動レバー542の先端が外部に導出されている。また、コイルボビン511の外面に、ロータ540の軸線方向と略平行な面内でコイル591、592を巻回し得るコイル巻回溝528が形成されている。また、この段階で、端子ピン561が装着されている。
【0036】
そして、このボビンユニット512にコイル591、592を巻回することで、ヨーク570に挿入する前段階の本体ユニット510が構成され、更にヨーク570に本体ユニット512を挿入して、本体ユニット512の上端に回路基板580を半田付けすることで、アクチュエータ500が構成されている。
【0037】
次にアクチュエータ500の組立手順を説明する。
前述のように、上ボビン520と下ボビン530を合体させることにより、コイルボビン511を構成することができる。その際、ロータ軸541の上下軸端541b、541aを、上下ボビン520、530の各軸受孔522、532に嵌合させながら、上ボビン520と下ボビン530を合体させることにより、図6〜図8に示すように、ロータ540を回転自在に内蔵したボビンユニット512を構成する。その段階で、端子ピン561を差込孔523aに圧入しておく。
【0038】
次に、ボビンユニット512のコイル巻回溝528にコイル591、592を巻回することで、本体ユニット510を構成する。それに当たり、まず、ボビンユニット512の方向を揃えるために、ボビンユニット512を整列装置に載せる。図9、図10は、整列装置900の要部を示すもので、図中左奥から右手前に向けて振動等によりボビンユニット512が搬送されてくる。
【0039】
整列装置900には、垂直な背面板901の前側に、下レール902と上レール903が設けられており、ボビンユニット512は、下レール902にコイル巻回溝528がスライド可能に嵌まることで、一定の姿勢で移動してくる。背面板901には、ボビンユニット512の位置出し突片529の嵌まるスライド溝905が設けられており、ボビンユニット512の背面側にその位置出し突片529がある場合は、そのスライド溝905に位置出し突片529が嵌まりながらボビンユニット512が移動してくる。
【0040】
なお、上レール903は、入口側903aから出口側903bにボビンユニット512が移動するに従い、徐々にコイル巻回溝528が上レール903に嵌まるような経路で形成されている。また、上レール903にコイル巻回溝528が確実に嵌まる位置の下レール902側には、適正な向きでないボビンユニット512を下に排除する落とし穴904が設けられている。背面板901のスライド溝905に位置出し突片529が嵌まっている場合は、スライド溝905と上レール903に支持されることで、ボビンユニット512は落とし穴904から落下しないが、スライド溝905に位置出し突片529が嵌まっていない場合は、係合箇所が上レール903のみとなるため、下レール902に形成された落とし穴904からボビンユニット512が落下する。
【0041】
従って、図10に示すように、位置出し突片529が正面を向いているときは、ボビンユニット512は途中で落下し、背面を向いているときは、最後まで搬送されることにな
る。つまり、後者が適正の向きとして、最後まで一定の姿勢で搬送されることになる。従って、この整列装置900を利用することにより、大量生産する場合にも、一定の方向性を持ってボビンユニット512をハンドリングすることができるようになる。
【0042】
図11、図12は、コイルの巻線を行うためのハンドリング用のチャック装置の構成図を示している。このチャック装置950は、ロッド951と、ロッド951の先端に設けられた一対のチャック爪952と、位置決め用の突片953と、位置決め凸部954と、を有している。
【0043】
巻線を行うに際しては、まず、前述の整列装置900でボビンユニット512の方向を揃え、同じ向きに揃えたボビンユニット512を、チャック爪952で把持する。つまり、図12、図13に示すように、コイルボビン511の外周部に設けられた2つの凹部526に、一対のチャック爪952を係合することで、ボビンユニット512を把持する。この場合のチャック装置950は、巻線機960に多数個装備されており、一列にボビンユニット512を並べることができる。そして、チャック爪952で把持した状態でボビンユニット512を回転させながら、図15に示すように、コイル巻回溝528にコイル591、592を巻回することで、本体ユニット510を構成する。この場合、コイル591、592は、ボビンユニット512の外周にロータ540の軸線方向と略平行な面内で巻回されることになる。
【0044】
次いで、チャック装置950から本体ユニット510を取り外し、図4に示すように、その外周に円筒状のヨーク570を嵌め、回路基板580や電線ユニット600を装着して、アクチュエータ500を構成する。そして、このアクチュエータ500を、図16に示すように、絞り基板100のアクチュエータ取付部102に上から装着することで、電動絞り装置を完成させる。なお、電線ユニット600の電線601は、図16に示すように、開口部103からアクチュエータ500を見て右側に引き出すこともできるし、図19に示すように、左側に引き出すこともできる。いずれの場合も、電線601を、絞り基板100上に設けた電線クランプ部150に上から挿入するだけで、確実にクランプすることができる。
【0045】
このようにアクチュエータ500を絞り基板100のアクチュエータ取付部102に装着した際、図17、図18に示すように、アクチュエータ500のコイルボビン511に設けた4つの固定突片535が、絞り基板100に設けた4つのアクチュエータ受座123の上面に乗り、固定突片535の下面のピン535aが、アクチュエータ受座123の係合孔123aに係合され、それにより、アクチュエータ500が位置決めされる。また同時に、ヨーク570の下端の鍔部573が絞り基板100側のヨーク係止爪130に係合ロックされることにより、ヨーク570とアクチュエータ受座123との間にコイルボビン511の固定突片535が挟持され、これにより、確実強固にアクチュエータ500が絞り基板100に固定されることになる。この状態で、アクチュエータ500の駆動レバー542の2つの駆動ピン543は、各位絞り羽根200、300の横溝204、304に係合される。
【0046】
以上のように、この電動絞り装置の場合、ロータ540を支持するコイルボビン511を、ロータの中心軸線を含む平面で半割りにして合体させるのではなく、ロータ540の軸方向に2分割した上ボビン520と下ボビン530の結合体により構成しているので、ロータ軸541を回転自在に支持する軸受孔522、532を半割りせずにすみ、完全な円形の軸受孔522、532にロータ軸541の軸端541a、541bを嵌めることができる。従って、全周に不連続箇所のない滑らかな軸受面でロータ軸541を回転支持することができ、作動の安定化を図ることができる。
【0047】
また、各軸受孔522、532にロータ軸541の軸端541a、541bを嵌めて上ボビン520と下ボビン530の両者を組み合わせればよいので、精度の揃った組立が簡単にできる。また、ロータ540の軸線方向と略平行な面内でコイル591、592を巻回しているので、ロータ540の軸線方向に2分割されたボビン511をコイル591、592で締め付けることができ、組立品の剛性アップを図ることができる。また、上ボビン520と下ボビン530の合わせ目に確保した窓部538より、ロータ軸541に一体成形した駆動レバー542の先端を外部に導出しているので、アクチュエータ500の軸方向寸法のコンパクト化を図ることができ、絞り装置全体の薄型化が図れる。
【0048】
また、アクチュエータ500の外周に位置するヨーク570を絞り基板100にヨーク係止爪130で固定することで、内部のコイルボビン511をヨーク570と絞り基板100との間に挟持しているので、絞り基板100とコイルボビン511とヨーク570の一体性が高まり、振動等に対して強くなる。また、ヨーク570ばかりでなく、コイルボビン511の支持の安定性も高まるので、作動の円滑化が図れる。また、ヨーク570の内側のコイルボビン511を直接爪で係止するのではないから、爪とコイルボビンを係合するために余分な寸法を確保する必要がなく、構造のコンパクト化が図れる。また、絞り基板100に直接コイル591、592につながる電線601をクランプすることができるので、電線601の配索性がよくなる。
【0049】
また、アクチュエータ500の組立の際に、一対のチャック爪952を凹部526に係合させることにより、コイル巻回溝528を挟む片側だけでコイルボビン511を片持状に把持するようにしているので、そのままチャック爪952を回転させ、コイルボビンを回転させながら、外周のコイル巻回溝528にコイルを巻き付けることができる。従って、多数のコイルボビン511(ボビンユニット512)を並べて配置した場合にも、同時に各コイルボビンに巻線を行うことができる。また、コイルボビン511に位置出し突片529を設けたことにより、コイルボビン511を一定の方向に揃えた状態でチャック爪952で把持できるようにしているので、コイル巻回溝528に駆動用と制動用の2種類のコイル591、592を巻き付ける場合でも、区別しながら巻線を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態のコイルボビンを使用したアクチュエータを絞り羽根駆動手段として組み込んだ電動絞り装置の構成を示す分解斜視図でる。
【図2】同電動絞り装置における絞り基板の構成を示す斜視図である。
【図3】同絞り基板の構成を示す平面図である。
【図4】同電動絞り装置のアクチュエータの構成を示す分解斜視図である。
【図5】同アクチュエータの本体ユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図6】同本体ユニットのコイル巻回前の状態であるボビンユニット(ロータを内部に組み込んだコイルボビン)の外観を示す斜視図である。
【図7】同ボビンユニットの反対側の外観を示す斜視図でる。
【図8】同ボビンユニットの縦断面図である。
【図9】同ボビンユニットにコイルを巻回するに当たり一定の方向性をもってボビンユニットを整列させる方法の説明用の斜視図である。
【図10】適正な方向性をもって整列しないボビンユニットを排除する場合の方法の説明用の斜視図である。
【図11】適正に整列させたボビンユニットをチャッキングするチャック装置の前方から見た斜視図である。
【図12】同チャック装置とボビンユニットの関係を示す斜視図である。
【図13】同チャック装置でボビンユニットを把持した状態を示す斜視図である。
【図14】同チャック装置で把持した複数のボビンユニットをコイル巻回装置に装着した状態を示す斜視図である。
【図15】(a)は同ボビンユニットのコイル巻回溝の構成を示す断面図、(b)はコイル巻回溝にコイルを巻回した状態を示す断面図である。
【図16】同電動絞り装置の完成状態を示す斜視図である。
【図17】同完成状態におけるアクチュエータ取付部を特定の2つの平面で切って示す概略縦断面図である。
【図18】同部分を別の平面で切って示す概略縦断面図である。
【図19】図16と別の方向に電線を引き出した場合を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
500 アクチュエータ
511 コイルボビン
520 上ボビン(分割ボビン)
522 軸受孔
526 チャッキング用の凹部
528 コイル巻回溝
529 位置出し突片
530 下ボビン(分割ボビン)
532 軸受孔
540 ロータ
541a 軸端
541b 軸端
591 コイル(駆動側)
592 コイル(制動側)
952 チャック爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にロータを回転自在に収容し得る略中空円柱形状をなし、外面に前記ロータの軸線方向と略平行な面内でコイルを巻回し得るコイル巻回溝を有し、該コイル巻回溝を挟む両側のうち、少なくとも片側の外周部に、一対のチャック爪を係合させることでコイルボビンを把持可能な一対の凹部が設けられていることを特徴とする小型電動アクチュエータ用のコイルボビン。
【請求項2】
請求項1に記載の小型電動アクチュエータ用のコイルボビンであって、
前記ロータの軸線方向に2分割されており、各分割ボビンにそれぞれ、前記ロータの軸端を回転自在に嵌める軸受孔が設けられていることを特徴とする小型電動アクチュエータ用のコイルボビン。
【請求項3】
コイルボビンの外周にコイルを巻回する工程を含む小型電動アクチュエータの製造方法において、
請求項1または2に記載のコイルボビンの内部にロータを収容する工程と、
該工程後、前記コイルボビンの外周部に設けられた凹部に一対のチャック爪を係合することでコイルボビンを把持する工程と、
該チャック爪で把持した状態で前記コイルボビンを回転させながら前記コイル巻回溝にコイルを巻回する工程と、
を備えることを特徴とする小型電動アクチュエータの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の小型電動アクチュエータの製造方法であって、
前記コイルボビンのコイル巻回溝を挟む両側のうち、片側のみの外周部に方向性検出のための突片を設け、該突片の有無を整列装置で検出しながら、同じ方向を向いて並んだコイルボビンを整列装置上に準備し、その準備したコイルボビンを前記チャック爪で把持することを特徴とする小型電動アクチュエータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−187878(P2008−187878A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21759(P2007−21759)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000231590)日本精密測器株式会社 (64)
【Fターム(参考)】